JP3838883B2 - 脂環式ケトン化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アダマンタノン等の脂環式ケトン化合物を製造する方法、及び該製造方法により得られた脂環式ケトン化合物から脂環式アルキルエステル化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂環式アルキルエステル化合物は、電子材料の原料や医農薬中間体として有用な化合物である。たとえば、脂環式アルキルエステル化合物の一種であるアルキルアダマンチルエステル化合物を原料として得られるレジストには、半導体製造プロセスにおけるドライエッチング耐性が高いことが報告され(例えば特開平5−265212号公報)、半導体用レジスト材料としての可能性が注目されている。
【0003】
アダマンタノン等の脂環式ケトン化合物は、上記脂環式アルキルエステル化合物の原料として重要な化合物であり、その用途との関連で、高純度化の要求が高くなっている。
【0004】
また、電子材料等の分野においては競争が激しく、製造コスト低減の要求も厳しくなっており、廉価な原材料を用いて簡便な方法で高純度の製品を得ることが極めて重要となっている。例えば、アダマンタノンの製造においても、アダマンタノール等の誘導体を用いること無く、アダマンタンから高純度のアダマンタノンを直接且つ簡便に得る方法が望まれている。
【0005】
従来、アダマンタンからのアダマンタノンの製造方法としては、ヒドロキシフタルイミド等を触媒として用いアダマンタンを酸素酸化する方法が知られている(特開平10−309469号公報等)。しかし、該製造方法におけるアダマンタノンの収率は約30%と低く、満足の行くものはなかった。
【0006】
また、比較的高収率でアダマンタノンを得ることができる製造方法として、アダマンタンを濃硫酸で酸化した後、水蒸気蒸留により精製してアダマンタノンを得る方法が知られている(オーガニックシンセシス1973年53号8ページ)。該方法によれば47〜48%という比較的高い収率で目的物を得ることができるが、水蒸気蒸留という煩雑な精製工程を必要とするという問題がある。また、同じくアダマンタンを硫酸により酸化する方法について、特定の条件を採用することにより反応収率が向上することも報告されている(特開平11−189564号公報)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
アダマンタンを濃硫酸または発煙硫酸で酸化してアダマンタノンを製造する方法(以下、濃硫酸法ともいう。)は、高収率化が望め、しかも廉価な原料を使用する点で魅力的な製造方法であるが、高純度品を簡便に得る方法は確立されていない。
【0008】
本発明は、濃硫酸法において、簡単な抽出操作で実質的に精製工程が不要となる程度に高純度のアダマンタノン等の脂環式ケトン化合物を得る方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記の問題を解決するために鋭意検討を行った結果、脂環式炭化水素を濃硫酸法で製造する場合において、酸化反応後の反応液を水に注いでから有機溶媒で抽出する際、硫酸の濃度を通常より高く調整することによって、反応液に不純物が含まれている場合であっても目的物である脂環式ケトン化合物を選択的にしかも効率よく抽出できること、更により副生物が多く生成し易い発煙硫酸を用いて酸化した場合にも抽出時の硫酸濃度を同様に制御することにより高純度品を容易に得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、脂環式炭化水素化合物と濃硫酸または発煙硫酸とを接触させることにより該脂環式炭化水素化合物を酸化して脂環式ケトン化合物及び濃硫酸または発煙硫酸を含む混合物を得、次いで得られた該混合物と水及び有機溶媒とを混合した後に水層と脂環式ケトン化合物を含む有機層とを分離し、分離された有機層から脂環式ケトン化合物を回収する脂環式ケトン化合物の製造方法であって、有機層を分離する際の水層の硫酸濃度を60〜90質量%とすることを特徴とする脂環式ケトン化合物の製造方法である。
【0011】
従来の濃硫酸を用いた製造方法においては、水と混合する際の発熱等を考慮して大過剰の水に反応生成物を添加してから有機溶媒により目的物を抽出するのが通常であり、この様な方法を採用した場合には、抽出時の水層の硫酸濃度は低い(通常、約40質量%)ものとなっている。
【0012】
これに対し、本発明では抽出時の水層の硫酸濃度を非常に高い特定の濃度範囲とするものであり、このことによって、反応液中の目的物を選択的に抽出することが可能となり、結果として、蒸留や再結晶という特別な精製工程を経ることなく抽出という簡単な操作で高純度の目的物を得ることができる。この様な優れた効果が得られる原因は明らかでないが、目的物と不純物とで特定の濃度の硫酸に対する溶解性が異なるためと考えられる。
【0013】
また、他の本発明は、前記本発明の脂環式ケトン化合物の製造方法によって得られた脂環式ケトン化合物と、アルキルリチウム、グリニヤール試薬、並びにハロゲン化アルキル化合物及び金属リチウムから選ばれる少なくとも一種のアルキル化試薬とを反応させて脂環式アルキルアルコキシド化合物を得、次いで得られた脂環式アルキルアルコキシド化合物と酸ハロゲン化物とを反応させて脂環式アルキルエステル化合物を得ることを特徴とする脂環式アルキルエステル化合物の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法では、先ず脂環式炭化水素化合物と濃硫酸又は発煙硫酸とを接触させることにより該脂環式炭化水素化合物を酸化して脂環式ケトン化合物及び濃硫酸又は発煙硫酸を含む混合物を得る。
【0015】
このとき原料化合物として使用する脂環式炭化水素化合物は、環状炭化水素化合物で、不飽和結合を有さない化合物であれば特に限定されないが、酸化される位置が限られており、単一の脂環式ケトン化合物が得られ易いという観点から、対称性が高い飽和の環状炭化水素化合物であるのが好適である。このような脂環式炭化水素化合物を具体的に例示すれば、アダマンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。これら化合物の中でも、酸化反応が選択的に効率よく進行し、しかも得られる脂環式ケトン化合物が医農薬、あるいは電子材料等の中間体として有用であり、高純度のものが望まれているアダマンタンを用いるのが最も好適である。
【0016】
上記のような脂環式炭化水素化合物と濃硫酸や発煙硫酸とを接触させて該脂環式炭化水素化合物を酸化して脂環式ケトン化合物を得る方法は、従来の濃硫酸法による脂環式ケトン化合物の製造方法と特に変わるところはなく、前記のオーガニックシンセシス1973年53号8ページに記載の方法や、特開平11−189564号公報に記載された方法等、公知の方法が制限なく適用できる。
【0017】
例えば、脂環式炭化水素化合物の酸化は、脂環式炭化水素化合物と濃硫酸とを溶媒の非存在下で混合攪拌し、加熱することにより好適に行なうことができる。このとき濃硫酸としては96質量%以上の濃度が望ましく、発煙硫酸も使用できる。また、脂環式炭化水素化合物の使用量は特に限定されないが、濃硫酸又は発煙硫酸1kgに対して0.1〜5モルの範囲で使用するのが好適である。また、反応温度や反応時間は酸化すべき脂環式炭化水素化合物の種類によるが、50℃〜100℃で0.5時間〜48時間程度反応させるのが好ましく、反応の進行を確認しながら昇温していく方法がより好ましい。
【0018】
上記のような方法により、脂環式炭化水素化合物中の−CH2−基が−C(=O)−基に酸化されて対応する構造の脂環式ケトン化合物(目的物)と濃硫酸又は発煙硫酸とを含む混合物からなる反応液を得ることができる。
【0019】
本発明では、上記の様にして得られた反応液(脂環式ケトン化合物と濃硫酸又は発煙硫酸とを含む混合物)と水及び有機溶媒とを混合した後に水層と脂環式ケトン化合物を含む有機層とを分離するが、有機層を分離する際の水層の硫酸濃度(水の質量と硫酸の質量の合計に対する硫酸の質量%で定義される。)を60〜90質量%に制御することが必須である。分離の際の硫酸濃度が60質量%未満の場合には、不純物が有機層に入り込んでしまい、抽出操作のみで高純度の目的物を得ることができない。また、上記硫酸濃度が90質量%を越えるときには、有機溶媒で目的物を抽出することが実質的に不可能である。上記硫酸濃度を90質量%以下とすることにより、目的物を回収することが可能となる。得られる目的物の純度及び収量の多さの観点から、より好適な水層の硫酸濃度は70〜80質量%である。
【0020】
反応液を水及び有機溶媒と混合する方法は得に限定されないが、安全性および操作性の観点から、反応液を水及び/または氷(以下、単に水等ともいう。)に注いでから有機溶媒を添加し、混合するのが好適である。この際の使用する水等の量は、後で硫酸濃度を調節する必要が無いことから、氷が全て溶けた場合の水層の硫酸濃度が60〜90質量%、特に70〜80質量%になるような量であるのが好適である。なお、上記好適な量を超える量の水等を用い、その後濃硫酸を加えて水層の硫酸濃度を60〜90質量%になるように調節することも勿論可能である。
【0021】
また、本発明で用いる抽出用の有機溶媒は、硫酸と反応せず、目的物の脂環式ケトン化合物を溶解し硫酸に不溶のものであれば特に限定されず、公知の有機溶媒の中から抽出されるべき脂環式ケトン化合物の溶解性を考慮して適宜選択すればよい。本発明で好適に使用できる有機溶媒を具体的に例示すれば、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、アニソールなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等が挙げられる。
【0022】
これら有機溶媒の使用量は、目的物の脂環式ケトン化合物を全て溶解する量であれば特に限定されないが、操作性およびその後の溶媒の乾燥や除去の手間を考慮すると、脂環式ケトン化合物の濃度が抽出溶媒に対する飽和濃度の25%〜75%となるような量であるのが好適である。
【0023】
反応液を水等に注いだ後、上記有機溶媒を加えて良く攪拌してから静置し、有機層と水層を分離し、分液操作により有機層を分離回収した後、必要に応じて水又は中性塩の水溶液を用いて洗浄を行ない、共沸脱水するか、または硫酸ナトリウムや塩化カルシウム等の乾燥剤を用いて該有機層を乾燥し、乾燥剤を除去した後、溶媒を除去することにより高純度の脂環式ケトン化合物を得ることができる。
【0024】
上記の様にして得られた高純度の脂環式ケトン化合物は、脂環式アルキルエステル化合物を合成する際の原料として好適に使用することができる。例えば、上記脂環式ケトン化合物と、(1)アルキルリチウム、(2)グリニヤール試薬、並びに(3)ハロゲン化アルキル化合物及び金属リチウムから選ばれる少なくとも一種のアルキル化試薬とを反応させて脂環式アルキルアルコキシド化合物を得、次いで得られた脂環式アルキルアルコキシド化合物と酸ハロゲン化物とを反応させることにより脂環式アルキルエステル化合物を得ることができる。
【0025】
この時使用するアルキル化試薬としては、(1)アルキルリチウム、(2)グリニヤール試薬、並びに(3)ハロゲン化アルキル化合物及び金属リチウム(すなわち、両者の組み合わせ)から選ばれる少なくとも一種であれば特に限定されず、導入したいアルキル基の種類に応じた各種化合物が適宜用いられる。アルキル化試薬として好適に使用できる化合物を具体的に例示すれば、アルキルリチウムとしては、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウム等が;グリニヤール試薬としては、臭化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム等が;ハロゲン化アルキルとしては、よう化メチル、臭化エチル等が挙げられる。
【0026】
これらアルキル化試薬と脂環式ケトン化合物とを反応させて脂環式アルキルアルコキシド化合物を得る方法は特に限定されず、例えば、脂環式ケトン化合物に対してほぼ等モル又は小過剰のアルキル化試薬を有機溶媒中で反応させることにより好適に行なうことができる。この時の溶媒としては、該アルキル化剤と反応しない溶媒であれば公知の有機溶媒が制限なく使用できる。好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0027】
また、上記反応の反応条件は得に限定されないが、アルキル化試薬の使用量は、脂環式ケトン化合物1モルに対して、0.9〜1.5モル、特に1.0〜1.3モルであるのが好適である。但し、アルキル化試薬として上記(3)のハロゲン化アルキル化合物と金属リチウムとの組み合わせを使用する場合のハロゲン化アルキル化合物及び金属リチウムの好適な使用量は、それぞれ脂環式ケトン化合物1モルに対して、0.8〜2.0モルおよび1.5〜2.5グラム原子、特に1.0〜1.2モルおよび1.8〜2.0グラム原子である。また、反応温度は特に限定されず用いるアルキル化剤の種類により適宜決定すればよいが、上記(1)又は(2)のアルキル化試薬を用いる場合には通常20〜80℃で行われる。また、上記(3)のアルキル化試剤を用いる場合において、ハロゲン化アルキルとしてヨウ化物を用いる場合は、−80〜20℃で反応させるのが好適であり、臭化物や塩化物を用いる場合には0〜100℃で反応させるのが好適である。また、反応時間は用いるアルキル化剤の種類にもよるが、通常、0.5〜24時間である。
【0028】
このようにして得られた脂環式アルキルアルコキシド化合物は、一般には単離することなく酸ハロゲン化物との反応に使用させる。このとき使用する酸ハロゲン化物としては目的物となる脂環式アルキルエステル化合物の種類に応じて対応する構造の酸ハロゲン化物を使用すればよい。好適に使用できる酸ハロゲン化物を例示すれば、アセチルクロリド、メタクリル酸クロリド、塩化ベンゾイル等が挙げられる。
【0029】
脂環式アルキルアルコキシド化合物と酸ハロゲン化物との反応方法は得に限定されず、公知の方法が使用できる。例えば、溶媒の存在下で両者を混合することにより好適に行なうことができる。このとき、酸ハロゲン化物の使用量は、脂環式アルキルアルコキシド化合物1モルに対して、0.9〜2.0モル、特に1.0〜1.3モル使用であるのが好適である。なお、酸ハロゲン化物を過剰量使用する場合には、過剰量の酸ハロゲン化物1モルに対して1モル以上の3級アミン化合物を加えておくことも可能であり、特に目的とする脂環式アルキルエステル化合物が酸に対して不安定な場合には、このような量の3級アミン化合物を添加するのがより好適である。このとき3級アミン化合物としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロ[2.2.2.]オクタン等が使用できる。また、反応温度および反応時間は、酸ハロゲン化物の種類にもよるが、一般には20〜100℃で0.5〜24時間反応させればよい。
【0030】
このようにして得られた脂環式アルキルエステル化合物は、例えば水洗、乾燥、溶媒留去等の通常の後処理を行い、通常の精製方法、例えばカラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶などの方法を用いることにより単離することができる。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限される物ではない。
【0032】
実施例1
96%硫酸480mlに30%発煙硫酸120mlを加えて98%硫酸とし、ここにアダマンタン100gを加えて激しく攪拌しながら70℃に加熱した。次に2時間かけて80℃まで温度を上げ、最後に82℃で1時間攪拌した。反応液をサンプリングし、1−アダマンタノールがガスクロマトグラフィーの面積比で3%以下になっていることを確認して反応液を冷却した。その後、この反応液のうちの250gを水層の硫酸濃度が72質量%になるように、水65.6gに注ぎ、塩化メチレン250mlで2回抽出した。有機層を10%水酸化ナトリウム水溶液と食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥してから塩化メチレンを留去して固形物約15.2gを得た。得られた固形物についてドデカンを内部標準に用いてガスクロマトグラフィーで分析したところ、2−アダマンタノンの純度は96%であった。
【0033】
実施例2
実施例1で得られた反応液250gについて、水層の硫酸濃度が78質量%になるように水43.2gに注ぐ他は実施例1と同様にして行なったところ固形物14.6gが得られた。得られた2−アダマンタノンの純度は98%であった。
【0034】
比較例1
実施例1と同様にして得た反応液250gを水層の硫酸濃度が58質量%になるように水135.7gに注いだところ、多量のタールが析出した。その後、実施例1と同様にして抽出、洗浄、乾燥操作を行ない、溶媒を留去し、固形物21.8gを得た。得られた2−アダマンタノンの純度を内部標準法で定量したところ、その純度は67%であった。
【0035】
比較例2
比較例1で得た反応液250gに水を加えること無く塩化メチレン250mlで2回抽出し、実施例1と同様に洗浄、乾燥、及び溶媒留去を行なったが、2−アダマンタノンはほとんど得られなかった。
【0036】
実施例3及び4
実施例1と同様にして得た反応液250gについて、該反応液と混合する水の量を、混合時の水層の硫酸濃度換算で、それぞれ67質量%(実施例3)、85質量%(実施例4)とする他は実施例1と同様にして固形物を得た。得られた2−アダマンタノンの重量および純度は、それぞれ15.5g、97%(実施例3)、及び12.2g、98%(実施例4)であった。
【0037】
実施例4では、2−アダマンタノンの収量が若干低下しているが、精製に要する設備や手間を考慮すると、収量より簡便に高純度品が得られることが優先することもあり、このような収量の低下は本発明の価値を否定するものではない。
【0038】
実施例5〜7
98%濃硫酸1kgにアダマンタン100gを懸濁し、50℃で6時間、さらに60℃で23時間攪拌し、反応の進行をガスクロマトグラフィーで確認して冷却した。この溶液20gを塩化メチレン130gと表1に示す量の水との分散液中に冷却しながら滴下して表1に示す硫酸濃度に調整し、静置して塩化メチレン層を分液した。硫酸層は再び塩化メチレン130gで抽出し、有機層を合わせて10%水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で洗浄した。塩化メチレンを留去してその固形分の重量と純度を測定したところ、表1に示す結果を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例8及び比較例3
発煙硫酸(三酸化硫黄25%含有)36g(三酸化硫黄として9g、0.11mol)を10℃以下に冷却し、アダマンタン10g(0.07mol)を加え、10℃以下で3時間攪拌した。その後、50℃に昇温し、4時間かけて80℃まで加熱した。反応の進行をガスクロマトグラフィーで確認して冷却した。この溶液15gを塩化メチレン150gと表2に示す量の水との分散液中に冷却しながら滴下して表2に示す硫酸濃度に調整し、室温で一晩攪拌した。その後、静置して塩化メチレン層を分液し、塩化メチレン層を10%水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で洗浄した。塩化メチレンを留去してその固形分の重量とガスクロマトグラフィーの内部標準法における純度を測定したところ、表2に示す結果を得た。
【0041】
【表2】
【0042】
なお、本実施例8と比較例3では、2−アダマンタノンの収率があまり良くないが、これは発煙硫酸を用いたために多量のタールが生成したためであり、本実施例8及び比較例3の比較から分かるように、このような不純物の多い反応溶液からも容易に高純度品が得られる。
【0043】
実施例9
実施例1で得られた2−アダマンタノン15g(0.1mol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解し、あらかじめ調整した臭化メチルマグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(1mol/L)100mLを40℃以下で滴下した。ガスクロマトグラフで反応の進行を確認し、反応液にトリエチルアミン2.5g(0.025mol)とメタクリル酸クロリド13g(0.125mol)を加え、50℃で3時間攪拌した。ガスクロマトグラフで反応の進行を確認し、水10mLを加えて反応を停止した。その後、テトラヒドロフランを減圧留去したのちヘプタン50mLを加え、1N塩化アンモニウム水溶液、10%水酸化ナトリウム水溶液、イオン交換水で順次洗浄した。その後、ヘプタンを減圧留去することにより24gの粗生成物を得た。該粗生成物にジエチレングリコール1.5gを加えてから減圧蒸留(92℃/0.4mmHg)したところ、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート12g(0.51mol,51%)が得られた。
【0044】
実施例10
実施例3で得られた2−アダマンタノン15g(0.1mol)をテトラヒドロフラン50mLに溶解し、臭化エチル12g(0.11mol)を加えた。溶液を激しく攪拌しながら金属リチウムを0.1gずつ、溶液の温度が30℃を超えないように加え、合計1.3g(0.19mol)を加えた。反応の進行をガスクロマトグラフで確認し、目視で金属リチウムが消失したことを確認してから反応液にメタクリル酸クロリド10g(0.1mol)を加えた。ガスクロマトグラフで反応が十分に進行したのを確認してから反応液にメタノール3mLと5%水酸化ナトリウム水溶液3mLを加えて室温で1時間攪拌し、反応を停止した。その後、有機溶媒を減圧留去したのち、ヘキサンを200mL加え、得られた溶液を10%水酸化ナトリウム水溶液、20%食塩水で順次洗浄した。その後、ヘキサンを減圧留去して粗生成物を得、イソプロパノールから再結晶して2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート7.2g(0.029mol,29%)を得た。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、蒸留や再結晶といった専用の設備や手間を要する精製工程を経ることなく、高純度の脂環式ケトン化合物を脂環式炭化水素化合物という一次原料から容易に得ることができる。例えば、本発明の製造方法を採用することにより、医農薬中間体や電子材料原料等として有用な高純度アダマンタノンをアダマンタンから容易に製造することが可能となる。
【0046】
また、この様にして得られた脂環式ケトン化合物を原料として用いて脂環式アルキルエステル化合物を製造することにより、全製造工程を通してみたときに前記原料脂環式ケトン化合物の精製工程を省略することができる。
Claims (3)
- 脂環式炭化水素化合物と濃硫酸または発煙硫酸とを接触させることにより該脂環式炭化水素化合物を酸化して脂環式ケトン化合物及び濃硫酸または発煙硫酸を含む混合物を得、次いで得られた該混合物と水及び有機溶媒とを混合した後に水層と脂環式ケトン化合物を含む有機層とを分離し、分離された有機層から脂環式ケトン化合物を回収する脂環式ケトン化合物の製造方法であって、有機層を分離する際の水層の硫酸濃度を60〜90質量%とすることを特徴とする脂環式ケトン化合物の製造方法。
- 脂環式炭化水素化合物がアダマンタンであり、得られる脂環式ケトン化合物が2−アダマンタノンである請求項1記載の脂環式ケトン化合物の製造方法。
- 請求項1又は請求項2記載の製造方法によって得られた脂環式ケトン化合物と、アルキルリチウム、グリニヤール試薬、並びにハロゲン化アルキル化合物及び金属リチウムから選ばれる少なくとも一種のアルキル化試薬とを反応させて脂環式アルキルアルコキシド化合物を得、次いで得られた脂環式アルキルアルコキシド化合物と酸ハロゲン化物とを反応させて脂環式アルキルエステル化合物を得ることを特徴とする脂環式アルキルエステル化合物の製造方法。
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