JP3835848B2 - 乳酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乳酸の製造方法に関するもので、より詳細には、菌体を非常によくほぐれた状態で培養することが可能であり、酸素や基質などの物質移動速度を増大せしめて、物質生産速度を向上させることが可能な乳酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
乳酸は、食品添加剤、醸造用原料、医薬や農薬用の原料、化学品やプラスチックの合成原料等として有用な物質であり、化学的合成法と、発酵法とにより製造されている。
【0003】
後者の発酵法では、乳酸生成能を有する糸状菌を、糖類等を含む液体培地に接種し、通気による攪拌を行いつつ培養・発酵を行う方法が用いられており、糸状菌を支持体乃至担体に担持させて用いることもよく行われている。
【0004】
特開昭57−144985号公報には、ゲル状担体に固定化したL−乳酸生成能を有する菌体を乳酸の発酵に用いることが記載されている。
【0005】
特開平6−253871号公報には、乳酸生産微生物を担持した繊維の集合体、特に乳酸生産微生物を担持した生体適合性を有する不織布に乳酸発酵液を接触させることにより、乳酸を製造することが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
糸状菌を深部培養(液体培養)で生育させると、菌糸がからみついて塊状となったペレットから培養液中に均一に分散するパルプ状まで様々な形態をとる。深部培養における菌糸の形態は工業的物質生産に影響を与えるため、生産性の高い菌糸形態を誘導することが、高収率発酵生産の大きなカギとなる。
【0007】
現在、培養条件など乳酸の製造方式により、菌体の形態を制御しようとしているが、その条件を得ることは困難であり、期待した形態が得られても微妙な環境の変化により影響を受けやすい。糸状菌、特にカビの中には深部培養中、大小の球状をしたペレットを形成するものが多いが、その大きさによってはペレット内部の菌体に酸素あるいは基質の拡散律速が生じる。
【0008】
出願人は、セピオライト等のホルマイト系粘土鉱物に糸状菌を担持させて培養を行うと、酸素や基質などの物質移動速度が増大し、物質生産速度も向上し、更に菌体の分離も有効に行われることを見いだした(特開平7−115961号公報)。
【0009】
本発明者らは、この方法を乳酸の製造方法に適用したが、セピオライト未添加の場合に比して、セピオライト添加の場合には、菌体が安定な分散状態に保たれる時間が若干延長されるものの、最終的には菌体の固まりが発酵装置の器壁に粘着し、更には生産速度も低下する等のトラブルを生じるのを免れなかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、菌体を非常によくほぐれた状態で培養することが可能であり、酸素や基質などの物質移動速度を増大させることができ、これにより物質生産速度や収量を顕著に増大させることが可能な発酵法による乳酸の製造方法を提供するにある。
本発明の他の目的は、菌体に対する増殖阻害や粘度の上昇等がなく、良好な作業性と生産性とを以て、乳酸を発酵生産できる方法を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、乳酸生成能を有する糸状菌或いはその胞子を接種した液体培地にホルマイト系粘土鉱物を添加して培養を行い、培養開始後菌体の増殖速度が緩やかになった時点で凝集剤を添加し、pHが低下しないようにアルカリ性物質を添加しつつ発酵を行わせることを特徴とする乳酸の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の製造方法においては、
1.ホルマイト系粘土鉱物が繊維径が70乃至400オングストロームで繊維長が0.2乃至400μmであるセピオライトであること、
2.ホルマイト系粘土鉱物を液体培地に1乃至50g/L、特に1乃至10g/Lの濃度となるように添加すること、
3.凝集剤がアニオン系、ノニオン系または両性系の凝集剤であること、
4.凝集剤を液体培地に1乃至20mg/L、特に1乃至10mg/Lの濃度となるように添加すること、
5.培地のpHを4乃至8、特に5乃至7に維持しつつ発酵を行わせること、
6.通気による撹拌を行いつつ培養及び発酵を行うこと、
7.アルカリ性物質が炭酸カルシウムであること、
が好ましい。
【0013】
【発明の実施形態】
本発明の乳酸の製造方法においては、乳酸生成能を有する糸状菌の担体として、セピオライトで代表されるホルマイト系粘土鉱物を選択したこと、及びこのホルマイト系粘土鉱物を添加した液体培地での培養に際し、培養開始後菌体の増殖速度が緩やかになった時点で凝集剤を添加することが顕著な特徴である。
【0014】
セピオライト等の鎖状粘土鉱物は繊維状であり、しかも三次元の鎖状構造を有し、その隙間に空孔を有するため、通常の粘土鉱物やその他の無機担体に比べて、糸状菌との絡みをよくして、糸状菌の固定を強固且つ安定なものと共に、固定菌体を多孔質なものとして、菌体へ培養液や酸素の供給性を向上させ、また濾過性を向上させ得る。
【0015】
本発明では、菌体の培養段階の終期に、液体培地に凝集剤を添加することにより、後述する例に示すとおり、凝集剤を未添加の場合に比して、乳酸の生産速度を顕著に向上させ、最終的な収量をも増大させることができる。
【0016】
液体培地にセピオライトのみを配合した場合、最終的に菌体が大きな塊に凝集し、装置の器壁等に付着し、生産速度も低下することは既に指摘したところであるが、本発明では、この培地に凝集剤を添加することにより、大きな塊の生成が抑制され、生産速度及び収量の向上が得られるのである。
【0017】
一般に、凝集剤は液体中の浮遊物等を凝集させるものであるから、上記培地中に凝集剤を添加すると、菌体の凝集が促進されることが予測されるのである、本発明で用いる培地では、全く意外なことに、菌体の強固な凝集が防止され、発酵の最終段階まで、ほぐれた分散状態が維持されるのである。
【0018】
本発明者らの観察によると、凝集剤の添加は、ホルマイト系粘土鉱物に固定された糸状菌体の軽度なフロック状凝集をもたらすが、このフロック状凝集状態はきわめて安定であると共に、流動性や分散安定性にも優れたものであり、酸素や基質などの物質移動速度や物質生産速度が高い状態に維持されるものと信じられる。
【0019】
本発明に用いる鎖状粘土鉱物は、セピオライト、アタパルジャイト及びパリゴルスカイト等に代表される繊維状ケイ酸マグネシウム粘土鉱物であるが、これらは、三次元の鎖状の構造を有し、タルクのような二次元の結晶構造物とは異なり、この鎖状構造の隙間にできる空孔がBET法比表面積で100乃至350m 2 /gの範囲になるような大きな比表面積を有し、しかも吸着作用を有する多孔質の粘土鉱物である。
【0020】
またセピオライト等は、同じく多孔質粘土鉱物であるモンモリロナイトに代表される通常の層状粘土鉱物とは異なり、水溶系で膨潤しないことも大きな特徴である。
【0021】
このようなセピオライト等の鎖状粘土鉱物が持つ特徴によって、即ち、繊維状であること及びこのものが多孔質であることが、通常の粘土鉱物やその他の無機担体に比べて、糸状菌との絡みをよくして、糸状菌の固定を強固且つ安定なものと共に、固定菌体を多孔質なものとして、菌体へ培養液や酸素の供給性を向上させ、また濾過性を向上させ得る。
【0022】
本発明では、上記鎖状粘土鉱物は、単独で使用できる他、ハロイサイト、アスベスト等の二層構造の繊維状鉱物、又は鹿沼土、赤玉土などを含む火山性の繊維状鉱物と組み合わせで用いることができる。また必要に応じてこの繊維状粘土鉱物にゼオライト、又は酸性白土に代表される吸着性の粘土鉱物やクリストバライト、石英、長石等の岩石類を併用してもよい。
【0023】
本発明において、好適に使用されるセピオライトは、式(1)
(OH2 )4 (OH)4 Mg8 Si 12 O 30 ・6〜8H2 O (1)
で表される化学構造を持ち、タルクのような二次元の結晶構造物がレンガを交互に積み重ねたような鎖状の結晶構造を形成している。
またこの鎖状の隙間に出来た空孔によって繊維状であるが他の繊維状鉱物とは異なり大きな比表面積と吸着性を有することも大きな特徴である。
【0024】
本発明においては、比表面積が100乃至350m2 /gの範囲にあり、吸油量が100乃至300ml/100gの範囲にあるセピオライトが好適に使用される。比表面積がこの範囲より小さいと汚泥の凝集力が小さく、一方この範囲よりも大きくて、それ以上の効果は得られない。
【0025】
また、本発明に好適に使用される繊維状のセピオライトは、一般に繊維経が70乃至400オングストローム、繊維長が0.2乃至400μmで、アスペクト比が5乃至500の範囲にあることが好ましい。
【0026】
下記表1にセピオライト(110℃で2時間の乾燥品)の一般的化学組成の一例を示す。
表1 セピオライトの一般的化学組成
SiO2 52.50(重量%)
MgO 22.8
Al2 O3 1.7
Fe2 O3 0.8
CaO 0.8
H2 O+ 10.5
H2 O- 11.0
【0027】
本発明において用いる糸状菌は、乳酸生成能を有する糸状菌であれば何れでもよく、ラクトバチルス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属、ビフィドバクテリウム属等の乳酸菌類や、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、バチルス属、スクロトリヂウム属、スポロラクトバチルス属等の菌類や、リゾプス属等のカビ等が挙げられ、これらは単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。好適なものは、リゾプス・オリザエ(Rhizopus Oryzae)である。
【0028】
本発明に用いる液体培地は、乳酸生成能を有する糸状菌を生育できるものであれば、特に制限なく使用することができる。この液体培地は、乳酸の原料となる栄養成分と菌体の生育に必要な無機成分(ミネラル分)を含有するものであり、栄養成分としては、グルコース等の糖類、デンプン等の多糖類が使用される。無機塩としては、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、食塩、硫酸亜鉛、燐酸二水素カリウム等が挙げられる。炭素源濃度は、特に制限されないが、100乃至250g/L、好ましくは100乃至150g/L程度が適している。
【0029】
ホルマイト系粘土鉱物は、上記液体培地に1乃至50g/L、特に1乃至10g/L、更に好ましくは2乃至7g/Lの濃度となるように添加するのがよく、上記範囲よりも少ない量では、添加による効果が認められなく、上記範囲よりも多い量では、生産速度の低下が生じるようになる。
【0030】
液体培地に対する菌体或いはその胞子の接種方式には特に制限はなく、前述した菌体或いはその胞子を、無菌水或いは生理食塩水等に懸濁させ、この懸濁液を液体培地に接種すればよい。
【0031】
本発明に使用する菌体は好気性であるので、通気による撹拌を行いつつ培養及び発酵を行うのが好ましい。即ち、空気等の酸素含有ガスを菌体に供給し、同時に気泡の上昇による培地の攪拌を行い、菌体に酸素や基質などの物質供給を一様に行うようにするのがよい。
【0032】
この目的に、エアリフト型バイオリアクターを使用することができ、通気に伴う気泡発生を抑制するために、系中に消泡剤を添加することができる。消泡剤としては、シリコーン系界面活性剤等が使用される。
【0033】
エアリフト型バイオリアクターの一例を示す図1において、培養発酵液を収容する筒状の反応容器16の内部には、ドラフトチューブ5が、両端部と反応容器との間に隙間が形成されるように設けられている。反応容器16の底部中心には、たとえば燒結ガラス等で形成され、液体培地中に空気を分散させるためのスパージャー6が設けられている。反応容器16の外周には、冷却用ジャケット4が設けられており、これに冷却水を通ずることにより、容器内の液体培地を一定温度に維持できるようになっている。
【0034】
スパージャー6は、流量計7を介してエアコンプレッサー8に接続され、一定流量の空気が容器の底部から液体培地中に気泡として供給される。反応容器の上部には、コンデンサー12が設けられており、反応容器内の過剰の空気はコンデンサー12で液体が除去された後、外部に排出される。また、反応容器の上部には、培地中の溶解酸素を検出するDO電極13、泡レベルを検出する消泡剤センサー14及び液体培地の液レベルを検出する検出センサー15が設けられている。
【0035】
消泡剤センサー14は消泡剤コントローラー2に接続されており、消泡剤貯槽1からポンプ3を経て、泡レベルに応じて消泡剤を供給できるようになっている。
【0036】
また、レベルセンサー15はレベルコントローラー10に接続されており、滅菌水タンク11から液体培地のレベルに応じて、ポンプ3により液面が一定となるように、滅菌水を供給し得るようになっている。
【0037】
更に、DO電極13は、DOメーター9に接続されており、DOメーターの指示に基づいて、通気の程度を調節し得るようになっている。
【0038】
このエアリフト型バイオリアクターにおいては、乳酸の培養発酵培地に糸状菌乃至その胞子を接種し、ホルマイト系粘土鉱物をこの培地に接種し、この培地にスパージャー6を通して空気を吹き込む。
【0039】
これにより、吹き込まれた空気等の酸素含有ガスは気泡となり、ドラフトチューブ5内を上昇し、この上昇流によって、ドラフトチューブ5内を上昇し、ドラフトチューブ5外を下降する循環流が形成される。これにより、液体培地と菌体との間には十分な混合攪拌とが行われ、酸素や基質などの菌体への供給が十分に行われて、菌体の培養と、乳酸の発酵生成とが行われる。
【0040】
本発明における乳酸の製造は、前段の菌体の培養過程と、後段の乳酸の発酵過程との二段で行われる。これらの培養及び発酵過程で、培地の温度は、20乃至45℃、特に25乃至40℃の範囲に維持することが好ましい。
【0041】
菌体の培養過程と、発酵過程とは、決して厳密なものではないが、菌体の増殖が緩やかになった時点で、培養工程の終点を知ることができる。この時間は一般的にいって、40乃至80時間、特に48乃至72時間程度のものである。
【0042】
本発明では、菌体増殖のおそくなった時点で液体培地に凝集剤を添加する。凝集剤としては、それ自体公知の任意の凝集剤が使用されるが、アニオン系、ノニオン系または両性系の凝集剤であることが好ましい。
【0043】
凝集剤の適当な例は、これに決して限定されないが次の通りである。
アニオン系凝集剤としては、例えばポリアクリル酸ナトリウム、又はポリアクリル酸ナトリウムと、ポリアクリルアミドとの共重合体、ゼラチン、膠、カゼイン、ポリメタクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、カルボキシメチル澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリアクリルニトリル部分加水分解物、アクリルアミドーアクリル酸共重合体、無水マレイン酸ービニルエーテル共重合体、無水マレイン酸ー酢酸ビニル共重合体、キトサン、スチレンスルホン酸ナトリウム共重合体等が使用される。
ノニオン系凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、澱粉、シアノ化澱粉、グアーゴム、トラガントゴム、ガラヤゴム、アラビアゴム、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ビーガム、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレン共重合体、等があげられる。
両性系凝集剤としては、メタアクリル酸エステルとポリアクリル酸ソーダの混合物もしくは共重合体、アクリル酸エステルとポリアクリル酸ソーダの混合物もしくは共重合体等があげられる。
勿論、これらの凝集剤は、単独でもあるいは2種以上の組合せでも使用することが出来る。
【0044】
凝集剤の使用量は、軽度のフロックを形成させるものであるから、微量であってよく、一般に液体培地に1乃至20mg/L、特に1乃至10mg/L、更に好ましくは2乃至8mg/Lの濃度となるように添加するのがよい。凝集剤の使用量が上記範囲よりも少ないときには、菌体の大きな塊の生成が避けられなく、また、上記範囲よりも多いと、凝集剤添加時にデンスな凝集が生じて、何れの場合にも乳酸の生産速度が低下する傾向がある。
【0045】
菌体の増殖が緩やかになった時点で、乳酸の製造が開始される。培地の温度は、培養過程と同様に、20乃至45℃、特に25乃至40℃の範囲が適当である。乳酸の生産に伴って、培地のpHが酸性側に移行するので、アルカリ性物質を適宜添加して、培地のpHが発酵に好適な範囲、一般に4乃至8、特に5乃至7の範囲に保たれるようにする。
【0046】
アルカリ性物質としては、炭酸カルシウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が使用でき、特に炭酸カルシウムが好適である。
【0047】
培地中の栄養分が消費された時点で発酵課程が修了する。この過程は、菌株の種類や、原料の種類或いは濃度によっても相違するが、一般に48乃至80時間程度である。
【0048】
かくして得られた発酵液を濾過等により菌体から分離し、乳酸カルシウムを硫酸等で中和し、副生石膏を分離して、粗乳酸とし、これをそれ自体公知の手段で濃縮、精製して製品とする。
【0049】
以下に実施例をもって本発明の実施の態様を説明するが、これらは単なる例示であって本発明を何ら制限するものではない。また、実施例におけるグルコース及び乳酸の定量は以下の方法で行った。
【0050】
(1)グルコースの定量法
培養液を2000倍希釈。
1mリットルとり、80%フェノール水溶液を0.5mリットル添加。
そこに5mリットル濃硫酸を加える。
30〜40分放置。500nmで比色定量。
(2)乳酸の定量法
試料1mリットルにトリクロロ酢酸を加え、3000rpmで10分間遠心分離し、その上澄み液を採取し希釈した。その溶液の1mリットルを3%硫酸銅溶液に添加し、水酸化カルシウムを加えて室温で放置した。その後、遠心分離器にかけ、その上澄み液を採取し、硫酸銅及び硫酸を加える。次に沸騰浴で5分間加熱した後冷却し、p−ヒドロキシフェニルを添加、30℃水浴中で30分放置し、さらに沸騰浴に90秒入れた後冷却し560nmの波長で比色定量を行った。
【0051】
(実施例1)
<攪拌式培養槽における乳酸の発酵生産>
L(+)−乳酸生産株であるRhizopus oryzae NRRL395 を10 7 spores/ml の濃度になるように生理食塩水に懸濁し、培地液量の1%を以下の培地に接種した。グルコース120g/L、硫酸アンモニウム3.02g/L、リン酸二水素カリウム0.25g/L、硫酸亜鉛七水和物0.04g/L、硫酸マグネシウム七水和物0.15g/L、セピオライト3g/L。
培養は35℃、攪拌速度は300rpmで行った。培養開始後菌体の増殖速度が緩やかになった付近で凝集剤としてポリエチレンオキシドを5mg/Lの濃度になるように添加し、その後生産された乳酸によりpHが低下しないように炭酸カルシウムを加えた。
培養の経過を図2に示す。無添加(比較例1)の場合と比較して乳酸の生産速度は非常にはやく最終的な生産量は無添加の場合が69.6g/Lであるのに対しセピオライトと凝集剤を添加したものは115.1g/Lであった。従って乳酸濃度は無添加の場合の約1.67倍に上昇した。
セピオライトおよび凝集剤を添加すると菌体は培養終了時までほぐれた形態を安定に保った。
【0052】
(実施例2)
実施例1において、セピオライトと凝集剤(ポリエチレンオキシド)の割合を変化させて同様に行った。その結果を図3に示す。
【0053】
(比較例1)
実施例1において、セピオライト及び凝集剤(ポリエチレンオキシド)を添加しないで同様に行った。その結果を図2に示す。
結果として、菌体が大きな塊となって、乳酸の生産量は低く、リアクター内の邪魔板や攪拌軸などに菌体が付着して装置に負担を与えた。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、凝集剤(ポリエチレンオキシド)を添加しないで同様に行った。その結果を図2に示す。
結果として、菌体が大きな塊となって、乳酸の生産量は、図2から明らかなように実施例1と比較例1の間になった。また、リアクター内の邪魔板や攪拌軸などに菌体が付着した量は、比較例1に比べて少ないが装置に負担を与えた。
【0055】
(実施例3)
<エアリフト型バイオリアクターにおける乳酸発酵生産>
エードプラスを添加することにより培養中の培養液の粘度はほとんど水と同様に保つことが可能であるため粘性の低い場合に有利とされるエアリフト型バイオリアクター(図1)における培養を試みた。方法は実施例1と同様に行った。その結果を図4に示した。セピオライトと凝集剤としてポリエチレンオキシドを5mg/Lの濃度になるように添加した場合、56時間後に116.6g/Lの乳酸生産量を示した。
【0056】
(実施例4)
<凝集剤を変えた場合(エアリフト)>
L(+)−乳酸生産株であるRhizopus oryzae NRRL395 を107 spores/ml の濃度になるように生理食塩水に懸濁し、培地液量の1%を培地に接種した。培地の成分は実施例1と同様であり、セピオライトの添加量は5g/Lとした。
培地温度は、35℃、通気は0.5〜1.0vvmで行った。培養開始後菌体増殖速度が穏やかになった付近で凝集剤(ポリリン酸ナトリウム)を培地に対し、7mg/Lの濃度になるように添加し、その後生産された乳酸によりpHが低下しないように炭酸カルシウムを加えた。
最終的な乳酸生産量はポリエチレンオキシド添加時より若干劣って98.3g/Lであったが、菌体はほぐれた形態を保った。
【0057】
(比較例3)
実施例3において、セピオライト及び凝集剤(ポリエチレンオキシド)を添加しないで同様に行った。その結果を図4に示す。
無添加の場合は通気口に付着して塊状に増殖したため菌体への基質や酸素の供給が妨げられ、生産速度も減少した。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、ホルマイト系粘土鉱物を培養液に加えて乳酸生成能を有する糸状菌を増殖させ、発酵に先立ってこれに凝集剤を添加することにより、菌体を非常によくほぐれた状態で培養、発酵を行わせることが可能となった。
【0059】
添加するホルマイト系粘土鉱物及び凝集剤は非常に微量であるため菌体に対する増殖阻害、粘度上昇などの悪い影響はない。
菌体をほぐれた状態にすることにより、表面の菌体のみが生産に携わる塊状の形態をとったときと比較して、酸素や基質などの物質移動速度が増大したため、物質生産速度は向上する。
この方法で培養を行った場合、菌体はホルマイト系粘土鉱物を内部に含んでゆるく凝集したフロックを形成しているため、菌体と培養液の分離が容易である。
したがって回分、半回分、連続などあらゆる培養方法に応用が可能である。
連続培養が可能になれば、これまで廃棄処分されていた菌体の再利用が可能となる。
生産性の向上だけでなく発酵生産物の回収精製において菌体分離性が改善されたため、回収、精製に必要なコストの極小化が可能である。
培養液自体の粘度をおさえるため、菌糸が複雑に絡み合って培養液の粘性が必然的に高くなる糸状菌の培養において、培養液の物性を改善するうえでも有効である。
菌体の形態を制御することが可能となり、菌体の剪断などによるダメージのより少ないエアリフト型バイオリアクターの使用が可能となり、さらに生産性の向上をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に使用したエアリフト型バイオリアクターの一例を示す配置図である。
【図2】攪拌式バイオリアクターによる乳酸生産の経時変化を示した図である。
【図3】セピオライトと凝集剤の比と乳酸生産量の関係を示した図である。
【図4】エアリフト型バイオリアクターにおける乳酸生産の経時変化を示した図である。
【記号の説明】
1 消泡剤貯槽
2 消泡剤コントローラー
3 ポンプ
4 冷却用ジャケット
5 ドラフトチューブ
6 スパージャー
7 流量計
8 エアコンプレッサー
9 DOメーター
10 レベルコントローラー
11 滅菌水タンク
12 コンデンサー
13 DO電極
14 消泡剤センサー
15 レベルセンサー
16 反応容器
Claims (8)
- 乳酸生成能を有する糸状菌或いはその胞子を接種した液体培地にホルマイト系粘土鉱物を添加して培養を行い、培養開始後菌体の増殖速度が緩やかになった時点で凝集剤を添加し、pHが低下しないようにアルカリ性物質を添加しつつ発酵を行わせることを特徴とする乳酸の製造方法。
- ホルマイト系粘土鉱物が繊維径が70乃至400オングストロームで繊維長が0.2乃至400μmであるセピオライトである請求項1記載の製造方法。
- ホルマイト系粘土鉱物を液体培地に1乃至50g/Lの濃度となるように添加する請求項1又は2に記載の製造方法。
- 凝集剤がアニオン系又はノニオン系の凝集剤である請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
- 凝集剤を液体培地に1乃至20mg/Lの濃度となるように添加する請求項1乃至4の何れかに記載の製造方法。
- 培地のpHを4乃至8に維持しつつ発酵を行わせる請求項1乃至5の何れかに記載の製造方法。
- 通気による撹拌を行いつつ培養及び発酵を行う請求項1乃至6の何れかに記載の製造方法。
- アルカリ性物質が炭酸カルシウムである請求項1乃至7の何れかに記載の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007215427A (ja) * | 2006-02-14 | 2007-08-30 | Musashino Chemical Laboratory Ltd | 乳酸の製造方法 |
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1996
- 1996-03-29 JP JP07694296A patent/JP3835848B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH09266793A (ja) | 1997-10-14 |
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