JP3834215B2 - ゲル被覆種子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル被覆種子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲル被覆種子技術は、種子の低出芽率を見越した、圃場への過剰量の播種、及び、出芽後の間引きと云う従来の労働集約農業を改善し、被覆ゲル層を構成する水分その他の成分により1粒の種から確実に苗を、延いては収穫を得ることができる全く画期的な技術であり、この確実さ故に、優秀でありながらも極めて高価なF1種子の利用を可能とし、結果として収量と品質の大幅な向上を達成することができる。このようなゲル被覆種子は、近隣アジア諸国から輸入されている高品位かつ安価な野菜・花卉によりその存続自体が大きく脅かされている現在の日本農業において、まさに福音とも云うべき技術である。
【0003】
このようなゲル被覆種子は当初、被覆ゲル層をアルギン酸系水性ゲルからのみ構成していたが、アルギン酸系水性ゲルは比較的硬質で、内包される植物の芽や根の成長が困難になったり、あるいは、突出(被覆ゲル層から外部に芽や根がでること)ができず枯死する場合があるなど、苗立ちに問題があったため、被覆ゲル層内に吸水性ポリマーと水とからなる粒子を配するなどの対策がとられるようになってきた。
【0004】
このようなアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子は例えば次のように作製される。
アルギン酸ナトリウムを濃度が0.9重量%となるように、また粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマー(デンプン−アクリル酸グラフト共重合体)を最終濃度が0.2重量%となるようそれぞれはかり取り、これらに水を加えてアルギン酸ナトリウムを充分に溶解させる。このとき吸水ポリマーは吸水して粒状になり、攪拌により分散する。この分散液(含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液)を用いて、その液滴を中空管下端に形成し、この液滴中に中空管内部から種子を供給して液滴内に種子を導入するとともに、この液滴を12〜14重量%の濃度の多価金属イオンを含む溶液、たとえば、塩化カルシウム水溶液(硬化液)中に滴下させて、水に対して不溶化された被覆ゲル層を有するゲル被覆種子が得られる。
【0005】
しかしながら、このように得られる被覆ゲル層の強度が強く、よりよい苗立ちを達成することを目的に、種子の生育の抵抗となる被覆ゲル層内のアルギン酸による立体網目構造を弱くするために、その濃度を低下させたゲル被覆種子を試作した。
【0006】
しかしこの際、被覆ゲル層の強度が低下し、機械播種等の取り扱いなどでホッパーを用いると、つぶれて変形してホッパーつまりが生じる、表層がブドウの皮がむけるように剥離して精密機械播種ができず、ゲル被覆種子本来の効果が得られないなど取扱性が悪くなる。
【0007】
そのため、アルギン酸塩使用量を減らした状態で、充分な強度を付与する目的で、吸水性ポリマーの配合量を大幅に増やす対策を講じた。
この対策により、通常の使用では充分な強度を有する被覆ゲル層を形成することができたが、ゲル被覆種子の貯蔵の目的で被覆ゲル層の乾燥を行い、その後播種するために吸水させて被覆ゲル層の復元を計ると完全には復元せず、被覆ゲル層はスポンジ状となりその強度は著しく低いものとなり、取り扱いに耐えないものとなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、製造直後も、貯蔵乾燥後の復元後も取り扱いに充分な強度を有しながら良好な苗立ち性を有するゲル被覆種子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決すべく、従来用いられてきたスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーについて着目し鋭意検討した結果、一旦吸水した後の吸水性ポリマーを乾燥し、再度吸水・復元させる場合において、ゲル化剤である多価金属イオンに接触した吸水性ポリマーは吸水・復元が殆ど進行せず、そのためにゲル被覆種子の被覆ゲル層の吸水・復元時に、アルギン酸による三次元網目構造部分のみが復元して、結果としてスポンジ状となり、その結果被覆ゲル層として必要な強度が得られないことを見出して本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明のゲル被覆種子は上記課題を解決するため、請求項1に記載の通り、多価金属イオンによってゲル化されてなるアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子において、該吸水性ポリマーが前記多価金属イオンに対する耐性を有する吸水性ポリマーであるゲル被覆種子である。
【0011】
本発明に係るゲル被覆種子は、このような構成により、特開平5−56707号公報などで提案されている従来のゲル被覆種子より吸水性ポリマーの配合量を増やした場合でも乾燥・貯蔵後に吸水させたときめ復元が極めて良好であり、製造直後も、また、乾燥・貯蔵後の復元後も取り扱いに充分な強度を有し、良好な苗立ち性を有するゲル被覆種子が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、アルギン酸系水性ゲルを形成する多価金属イオンとは、2価以上の金属イオンであり、かつ、農業用途に用いることができるすなわち非重金属イオンであって、たとえば、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄イオンなどが挙げられる
【0013】
本発明のゲル被覆種子において、このような多価金属イオンに対する耐性を有する吸水性ポリマーとは、たとえば多価金属イオンがカルシウムイオンの場合、0.9重量%の濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液中で吸水し粒状となった吸水性ポリマー粒を20重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液中に入れ、1分後に塩化カルシウム水溶液から濾別して取り出し、この塩化カルシウム水溶液接触前後の重量変化が10%以下の場合を云う。
上記の重量変化が10%超の場合には乾燥・貯蔵復元性が劣り、本発明の効果が得られない。
【0014】
このような多価金属イオンに対して耐性を有するの吸水性ポリマーとしては、主としてスルホン酸系吸水性ポリマー、ノニオン系吸水性ポリマー、カルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマーなどが挙げられ、このうち、カルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマーが毒性がなく、生分解性で環境汚染の問題が発生しない等の理由により好ましい。
【0015】
これ以外の、例えばスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーなどではカルシウムイオンによりポリマー中の親水基同士が架橋し、収縮してしまい再吸水できなくなると考えられる。
【0016】
なお、このような耐カルシウムイオン性の吸水性ポリマーは通常0.2重量%添加するが、苗立ちを良好とするため0.5重量%以上0.8重量%以下とすることが望ましい。本発明のゲル被覆種子においては後者のように吸水性ポリマーの量の増加させたときにもその被覆ゲル層の形成直後に良好な強度と取扱性を有することができ、かつ、乾燥貯蔵後の吸水によってその強度と取扱性を完全に復元することができる。
【0017】
さらに、耐カルシウムイオン性の吸水性ポリマーの使用量を、上記のように0.5重量%以上0.8重量%以下としたときには硬化液である塩化カルシウム水溶液の濃度の許容範囲が広がる。
【0018】
ここで、従来のゲル被覆種子(アルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子も含む)の製造に用いられてきた塩化カルシウム水溶液の溶液濃度は厳密な管理が必要であった。
【0019】
すなわち、塩化カルシウム濃度が12重量%未満であると被覆ゲル層の強度が弱くなりすぎ、取扱性が著しく劣り、機械播種ができなくなるなどの問題が生じた。他方、塩化カルシウム濃度が14重量%を越えると、種子の発芽後に、被覆ゲル層を芽や根が成長することが困難になったり、あるいは突出できなかったりする種子が激増する。このため塩化カルシウム水溶液中の塩化カルシウム濃度を12〜14重量%と云う狭い範囲で管理する必要があったが、ゲル被覆種子の製造数に従ってその濃度は徐々にではあるが低下する。さらに、水の蒸発などにより、その濃度は変動する。このように使用可能な範囲が非常に狭いため、溶液比重により管理する場合であっても、極めて厳密に行う必要があった。
【0020】
しかし、上記のように、水性ゲル形成性溶液製造時の、耐カルシウムイオン性の吸水性ポリマーの使用量を0.5重量%以上0.8重量%以下としたときには、硬化液である塩化カルシウム水溶液中の塩化カルシウム濃度は10重量%以上20重量%以下の範囲であれば良好な硬度の被覆ゲル層が得られ、このように、特に高濃度側に範囲が広くなり、結果として濃度管理が非常に容易となり、延いては品質管理が容易になる。
【0021】
一方、アルギン酸ナトリウムは含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液濃度が通常0.9〜1.3重量%となるように用いる。
しかし、上記のように耐力ルシウムイオン性の吸水性ポリマーの使用量を0.5重量%以上0.8重量%以下としたときには、その使用量を減らして0.5%以上0.6重量%以下の範囲とすることが可能であり、このとき、得られるゲル被覆種子はより高い苗立ち性を有しながら、その被覆ゲル層の形成直後、及び、乾燥貯蔵後の吸水復元後のいずれであっても良好な強度と取扱性を有することができる。
【0022】
本発明のゲル被覆種子は吸水性ポリマーの種類が異なる他は従来技術に係るゲル被覆種子と同様に作製することができる。
作製されたゲル被覆種子は必要な時に必要な場所に播種できるよう、乾燥させることにより長期間保存可能とすることができる。
【0023】
乾燥は種子に悪影響を及ぼさないよう比較的低い乾燥温度、望ましくは常温で行うが、乾燥に長時間かかるとゲル被覆種子内の種子が発芽してしまう。そのために、通風状態にして乾燥時間を短縮することが望ましい。このように乾燥されたゲル被覆種子は、常温あるいは冷蔵して保管する。
【0024】
播種前にゲル被覆種子を水に浸漬するなどの手段により、被覆ゲル層を復元させる。このとき温度や被覆ゲル層の厚さによって異なるが、通常3〜16時間程度で復元する。
【0025】
なお、復元は原則的に直径のばらつきがなく、それぞれが球形に戻ればば良い。このとき、乾燥前のゲル被覆種子の直径100に対して、通常70〜170程度の範囲の球形に復元し、かつ、ゲル被覆種子間で大きさのばらつきが小さければ、播種機の目皿を交換することにより機械播種に対応できる。なお、一般に、復元したゲル被覆種子の直径が小さすぎる場合には被覆ゲル層が堅くなって突出できず、大きすぎる場合には柔らかくて必要な強度がなく、ホッパーなどの取り扱いができなくなる。
【0026】
【実施例】
以下に本発明のゲル被覆種子について比較例及び実施例を示して具体的に説明する。
【0027】
(比較例1)
アルギン酸ナトリウム及び粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマー(「吸水ポリマーA」と云う。)をそれぞれ液中濃度が0.9重量%及び0.2重量%となるようにはかり取り、水を添加し充分に攪拌した。この含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液中に分散している含水した吸水ポリマー粒を顕微鏡で観察したところ、その直径は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった。
【0028】
この分散液を用いて、その液滴を中空管下端に形成し、この液滴中に中空管内部からネギ種子を供給して液滴内に種子を導入するとともに、この液滴をそれぞれ10重量%、12重量%、14重量%あるいは16重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液(硬化液)中に滴下させて、それぞれアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子(硬化液濃度4種類に対してそれぞれ189個ずつ)を得た。なお、これら得られたゲル被覆種子の大きさは直径がおよそ1cmの略球形である(以下同じ)。
【0029】
これらゲル被覆種子の内、10重量%の硬化液を用いたものは明らかに被覆ゲル層が柔らかく、ホッパによる取り扱いに適用できないものであった。一方、16重量%の硬化液を用いたゲル被覆種子の被覆ゲル層は固すぎて、播種を行っても突出しないことが完全に予想されたため、これら10重量%あるいは16重量%の濃度の硬化液を用いた種子については以降の検討を行わなかった。
【0030】
上記ゲル被覆種子の内、硬化液濃度を12重量%または14重量%として作製したものについて、一旦通風乾燥し、その後室温の水に7時間浸漬して被覆ゲル層を復元させた。
【0031】
このときの復元は、ゲル被覆層の乾燥前重量を100としたときに120以上148以下であり、直径が最大で1割程度増えただけ、外観上も完全な球状への復元であり、表面の剥離、亀裂等もなく、またばらつきもない、満足できるものであった(以下、同レベルの復元を「満足できる」と評価する)。さらに破断応力を調べた結果、ホッパ等での取り扱い、あるいは、播種後の突出にも充分対応できるものと考えられたので、さらに、それらの苗立ち率を調べた。
【0032】
(比較例2)
苗立ち率を向上させるため上記比較例1の条件より吸水ポリマーAの配合を多くした。すなわちアルギン酸ナトリウム及び粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーAをそれぞれ液中濃度が0.9重量%及び0.8重量%となるようにはかり取り、水を添加し充分に攪拌した。このとき液中に分散している含水した吸水ポリマー粒を観察したところ、その直径は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった。
【0033】
この分散液を用いて、比較例1同様に、10重量%、12重量%、14重量%あるいは16重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液(硬化液)を用いて4種各189個のゲル被覆種子(硬化液濃度4種類に対してそれぞれ189個ずつ)を得た。
【0034】
これらゲル被覆種子の内、比較例1同様10重量%あるいは16重量%の硬化液を用いたものは明らかに使用不適なものであったので以降の検討を行わなかった。
【0035】
残りの、硬化液濃度を12重量%または14重量%として作製したものについては、一旦通風乾燥し、その後室温の水に7時間浸漬して被覆ゲル層を復元させた。しかし、復元した被覆ゲル層はスポンジ状でホッパや自動播種機等での取り扱いに充分な強度が得られず、以降の検討を行わなかった。
【0036】
(実施例1)
上記比較例1同様に、ただし、粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーの代わりに粉状のカルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマー(「吸水性ポリマーB」とも云う)を用いて、アルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子を得た。なお、含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液中の吸水性ポリマー粒の直径は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった。
【0037】
なお、この吸水性ポリマーBを0.9重量%の濃度のアルギン酸ナトリウム水溶液中で吸水し粒状とした吸水性ポリマー粒を20重量%の濃度の塩化カルシウム水溶液中に入れ、1分後に塩化カルシウム水溶液から濾別して取り出し、この塩化カルシウム水溶液接触前後の重量変化を調べたところがー5%であった。
【0038】
このとき、硬化液の濃度が10、12、14あるいは16重量%のいずれであっても充分な取扱性を有する被覆ゲル層が得られ、また、これら全てで突出可能であると考えられたので、さらに塩化カルシウム水溶液の濃度を8重量%、及び、20重量%として、同様にゲル被覆種子を各112個ずつ作製した(4種各112個)。その結果8重量%の硬化液を用いた場合にはそのゲル被覆種子の取扱性が劣ったため以降の検討は行わなかったが、20重量%の硬化液を用いたゲル被覆種子の被覆ゲル層については若干硬いと思われたが、使用可能なものと考えられ、上記のゲル被覆種子同様に−旦乾燥させた後さらに吸水復元させたところ、その復元は満足できるレベルであったので、さらにそれらの苗立ち率を調べた。
【0039】
(実施例2)
上記比較例2同様に、ただし粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーの代わりにカルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマーを用いてアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子を、ただし、硬化液の濃度を8、10、12、14、16あるいは20重量%として、6種各112個ずつ得た(なお、含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液中の吸水ポリマー粒の直経は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった)。これら得られたゲル被覆種子の内、取扱性が明らかに劣った8重量%の硬化液を用いたもの以外のゲル被覆種子について、上記のゲル被覆種子同様に一旦乾燥させた後さらに吸水復元させたところ充分に満足できるレベルで復元したので、さらに、それらの苗立ち率を調べた。
【0040】
(実施例3及び比較例3)
上記実施例2同様に、ただし、アルギン酸ナトリウムの使用濃度を0.5重量%としカルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマーの使用濃度は実施例2と同様にして得た含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液を用いてを用いてアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子を、ただし、硬化液の濃度を8、10、12、14、16あるいは20重量%として、6種各112個ずつ得た(このとき含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液中の吸水ポリマー粒の直径は0.2mm以下0.1mm以上で平均は0.15mmであった。)。
【0041】
これら得られたゲル被覆種子のうち、取扱性が明らかに劣った8重量%の硬化液を用いたもの以外のゲル被覆種子について、上記のゲル被覆種子同様に一旦乾燥させた後さらに吸水復元させたところ充分に満足できるレベルで復元したので、さらにそれらの苗立ち率を調べた(実施例3)。
【0042】
一方、アルギン酸ナトリウムの使用濃度を0.5重量%とし粉状のスターチ・ポリアクリレート系吸水性ポリマーの使用濃度は比較例2と同様にして得た含水した吸水性ポリマーからなる粒を分散したゲル形成性液を用いてゲル被覆種子の作製を試みたが、8〜20重量%の硬化液濃度ではいずれも取り扱い上に充分な硬度を有するゲル被覆種子が得られず、以下の検討を断念した(比較例3)。
【0043】
(苗立ち率の調査)
上記で得られたアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子くトマト種子)についてその苗立ち率を調べた。
【0044】
すなわち、圃場に播種したゲル被覆種子が発芽し、突出し、さらに圃場土中から出芽し、その第一葉が完全に展開した、欠陥のない植物体となった状態を「苗立ち」したと云い、全播種数に対する「苗立ち」の割合(%)を「苗立ち率」とした。
【0045】
【表1】
【0046】
上記実施例及び比較例から、本発明のゲル被覆種子によれば、吸水性ポリマーの配合量を多くした場合であっても、乾燥・貯蔵後の被覆ゲル層の完全な復元が可能であり、かつ、そのときアルギン酸濃度を低下させて苗立ち率を著しく向上させることが可能となることが判る。また、生産管理上非常に有利であることに、従来技術では非常に厳密な管理が必要であった硬化液の濃度の許容範囲が広いことも判る。
【0047】
【発明の効果】
本発明のゲル被覆種子は、多価金属イオンによってゲル化されてなるアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子において、該吸水性ポリマーが前記多価金属イオンに対する耐性を有する吸水性ポリマーである構成を有し、このことにより、吸水性ポリマーの配合量を多くした場合であっても、乾燥・貯蔵後の被覆ゲル層の満足できるレベルヘの復元が可能であり、ゲル被覆種子ならでは精密機械播種が可能となる。さらに、そのときアルギン酸濃度を低下させて苗立ち率を著しく向上させることが可能となり、また、従来技術では非常に厳密な管理が必要であった硬化液の濃度の許容範囲が広い優れたゲル被覆種子である。
Claims (3)
- 多価金属イオンによってゲル化されてなるアルギン酸系水性ゲルからなる被覆ゲル層に、含水した吸水性ポリマーからなる粒を配してなるゲル被覆種子において、該吸水性ポリマーが前記多価金属イオンに対する耐性を有する吸水性ポリマーであることを特徴とするゲル被覆種子。
- 該吸水性ポリマーがカルボキシメチルセルロース系吸水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のゲル被覆種子。
- 上記多価金属イオンがカルシウムイオンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゲル被覆種子。
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