JP3832000B2 - 異形断面再生セルロース繊維およびその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−メチルモルホリン−N−オキシド(以下、NMMOと略記する)を含む溶媒にセルロースを溶解した紡糸原液を用いて得られる異形断面の再生セルロース繊維、およびその製法に関し、特に光沢や染色性、風合いに優れると共に、耐フィブリル性の高められた高品質の再生セルロース繊維を得る技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
NMMOを含む溶剤を用いた再生セルロース繊維の製法は、例えば特公昭57−11566号や同60−28848号などにも記載されている如く古くから知られている。ところが上記溶媒を用いた従来の製法では、得られる再生セルロース繊維がフィブリル化を起こし易いという大きな欠点を有しており、汎用化の障害となっていた。ところがこの方法は、環境に与える悪影響が少なく且つ経済的にも無駄のない方法であり、また得られる再生繊維の物性もある程度良好であるところから、最近再び注目を集めている。
【0003】
一方、上記フィブリル化の問題についても改良研究が進められ、例えば特表平8−501356号、同7−508320号、特開平8−49167号に見られる如く幾つかの特許出願もなされているが、現実には実用規模で満足のいく効果を得るまでには至っていない。
【0004】
また、上記溶剤を用いて得られる再生セルロース繊維を衣料分野等に適用する場合、繊維そのもの或は織・編物としたときの光沢や染色性等を含めた風合いを高める上で、横断面を略真円状のものから異形にすることが有効と考えられるが、NMMO含有溶剤を用いた異形横断面形状の再生セルロース繊維については現在のところ全く検討されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の様な状況に着目してなされたものであって、その目的は、前述したNMMO含有溶剤を用いた再生セルロース繊維の製法の特徴を活かし、その繊維特性を、その横断面形状を異形化することによって更に改善すると共に、その欠点として指摘されるフィブリル化の問題を解消し、衣料用を始めとして優れた物性と風合いなどの外観に優れた再生セルロース繊維を提供すると共に、その様な繊維を安定して製造することのできる製法を確立しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の異形断面再生セルロース繊維とは、NMMOを含む溶剤にセルロースを溶解した紡糸原液を用いて製造された再生セルロース繊維であって、その横断面の異形度が1.2以上であるところにその特徴が存在する。
【0007】
このセルロース繊維の中でも、該繊維中に含まれるセルロースの平均重合度が400以下であり、且つ該セルロースのうち5〜30重量%が重合度500以上であるものは、優れた物性と風合い等の外観特性を有しているばかりでなく耐フィブリル性においても非常に優れたものであり、衣料用途等に広く利用することができる。
【0008】
また本発明の製法は、上記特性を備えた異形断面再生セルロース繊維を製造する方法であって、NMMOを含む溶剤にセルロースを溶解した紡糸原液を用いて再生セルロースを製造するに際し、異形断面の紡糸口金を用いて、乾湿式紡糸法によって紡糸を行ない、横断面の異形度が1.2以上の再生セルロース繊維を製造するところに要旨が存在する。この方法を実施する際にも、紡糸原液中のセルロースの平均重合度を400以下に抑えると共に、該セルロースのうち5〜30重量%を重合度500以上に調整すれば、異形度の調整と共に得られる繊維の耐フィブリル性を高めることができるので好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明者らは前述の様な従来技術の欠点、特にNMMOを含む溶媒を用いた再生セルロースに指摘されるフィブリル化を防止すべく、様々の角度から改良研究を進めてきた。その結果、上記溶媒を用いて再生セルロースを製造する際に、紡糸工程で疑似液晶化現象を起こす様な紡糸原液を使用すると、得られる再生セルロース繊維はフィブリル化の極めて少ないものになるという、これまで何人も認識していなかった新たな事実を見出した。
【0010】
しかも、上記の様な疑似液晶化現象を生じる紡糸原液を使用し、異形断面の紡糸口金を用いて乾湿式紡糸を行なうと、横断面形状が異形で光沢や染色性、風合い等の非常に優れた再生セルロース繊維が容易に得られることを知った。
【0011】
そして更に研究を進めたところ、紡糸工程で上記の様な疑似液晶化現象を生じさせるには、紡糸原液中に溶解しているセルロースの重合度が極めて重要であり、該セルロースの平均重合度を特定すると共に、高重合度のセルロースと低重合度のセルロースを特定の比率で含有するものを使用すればよく、その様な混合セルロース溶液を紡糸原液として用いて紡糸を行なうと、フィブリル化が極めて少なく、しかも異形断面を有する良質の再生セルロース繊維が確実かつ容易に得られることをつきとめた。ここで「疑似液晶化現象」とは、紡糸時の流動場や伸長場においてセルロースが液晶状の転移を生じる現象を言う。
【0012】
なお、NMMO含有溶剤を用いて得られる公知の再生セルロース繊維は、いずれも横断面形状が略円形であり、異形断面のものは知られていない。そこで本発明では、従来技術と差別化する意味から、断面異形度を1.2以上に規定するが、この様な異形度の再生セルロース繊維は、従来の断面略円形の再生セルロースに比べると、再生セルロース繊維自身およびこれを用いた織編物としての光沢や染色性、風合い等において非常に優れたものとなり、それら特性面からしても従来の再生セルロース繊維とは明確に区別することのできる新たな発明として認識すべきものである。
【0013】
上記の様な特性の異形断面再生セルロース繊維は、NMMOを含む溶媒を用い、これにセルロースを溶解した紡糸原液を使用すると共に、異形断面の紡糸口金を用いて乾湿式紡糸することによって得られるが、この際紡糸原液中に溶解しているセルロースの平均重合度と高重合度セルロースの含有比率を適正に調整してやれば、紡糸工程で疑似液晶化現象を起こし、耐フィブリル性においても非常に優れた再生セルロース繊維を得ることが可能となる。
【0014】
即ち上記再生セルロース繊維を製造するに当たっては、紡糸原液に溶解しているセルロースの平均重合度を400以下とすると共に、該セルロース中に占める重合度500以上の高重合度セルロースの含有比率を5〜30重量%の範囲に納めるのがよく、この様に重合度の異なるセルロース混合物を使用すると、紡糸工程で高重合度のセルロース成分が相分離により伸び切り鎖を主体とする構造を形成し、その隙間を低重合度のセルロースが埋め、得られる再生セルロース繊維はあたかもコンポジット状の構造を形成することになり、フィブリル化が抑えられるものと思われる。
【0015】
つまり、高重合度セルロースが疑似液晶化現象を起こす主体となって長手方向に収斂して力学的特性を担い、一方、低重合度セルロースはその隙間を埋めて風合いなど衣料としての要求特性を高める作用を担い、それらの相加的乃至相乗的作用効果によって、紡糸口金の形状に応じた異形度が与えられると共に、優れた強度特性や風合いが与えられ、コンポジット状に複合された繊維構造によりフィブリル化を可及的に抑えることが可能となるのである。
【0016】
こうしたコンポジット状構造を確保すると共に、紡糸作業を円滑に行なうには、紡糸原液中に溶解しているセルロースの平均重合度を400以下に抑えるのがよく、また紡糸工程で疑似液晶化現象を確実に生じさせ、得られる再生セルロース繊維として十分な長手方向の力学的特性を確保するには、上記セルロース中に占める重合度500以上の高重合度セルロースの含有比率を5重量%以上にすることが極めて有効となる。即ち、高重合度セルロースの含有率が5重量%未満では、紡糸工程で上記の様な疑似液晶化現象が起こり難くなり、相分離によるフィブリル化防止効果が不十分になるばかりでなく、長手方向の力学的特性も乏しくなり、一方、重合度500以上の高重合度セルロースの含有比率が30重量%を超えると、紡糸工程で疑似液晶化現象は発生しても相分離が起こらず、本発明で意図する様な異形断面の再生セルロースが得られ難くなるばかりでなく、フィブリル化防止効果も得られ難くなる。上記の観点から、重合度500以上の高重合度セルロースのより好ましい含有比率は5〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%の範囲である。
【0017】
なお本発明では、上記の様に低重合度セルロースの使用比率が多く、それにつれて再生セルロースの強度はやや低めになる傾向があるが、本発明の主たる用途である衣料用途では、産業資材用途の如くそれほど高レベルの繊維強度は要求されず、むしろ風合いや耐フィブリル性等が重視されるので、実用化に当たり強度不足が問題となることはない。
【0018】
本発明で使用する高重合度セルロースは、紡糸原液としたときの重合度が500以上を示すものであればその種類は特に制限されないが、最も一般的なのは木材パルプを原料とする重合度750以上のセルロースである。しかし、上記重合度の要件を満たすものであれば、リンタや木綿繊維等であっても勿論構わない。一方低重合度のセルロースとしては、レーヨン繊維の回収物等が好ましく用いられるが、このほか古紙や回収された古木綿等の回収品から得られるセルロース等を使用することができる。これらの原料セルロースは、エタノール等を用いて湿潤させてから粉砕もしくは裁断し、乾燥して用いられる。
【0019】
そして紡糸原液を調製するに当たっては、該原液中のセルロースの平均重合度が400以下で且つ重合度500以上の高重合度セルロースの含有比率が5〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%の範囲となる様に、上記高重合度セルロースと低重合度セルロースの配合比率を調整すればよい。
【0020】
紡糸原液の調製に用いられる溶媒としてはNMMOを含む溶媒が使用されるが、好ましいのはNMMOと水の混合溶媒であり、中でも特に好ましいのはNMMO/水の混合比率が90/10〜40/90重量比の混合物である。
【0021】
そしてこれらの溶媒に、前記セルロースの濃度が好ましくは10〜25重量%となる様に添加し、通常80〜135℃程度の温度でシアーミキサー等で溶解することにより紡糸原液の調製が行なわれる。紡糸原液のセルロース濃度が低過ぎると、疑似液晶化現象が起こらなくなって本発明で意図する様な効果が得られなくなり、逆に高過ぎると粘度が高くなり過ぎて紡糸が困難になるので、紡糸原液のセルロース濃度は、上記の様に10〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%の範囲となる様に調整することが望ましい。
【0022】
原料セルロースは、該溶解工程で若干の重合度低下を起こすので、本発明で規定するセルロースの前記重合度は、該溶解工程を経た後の状態で測定し、その平均重合度と高重合度物の含有比率が前述の要件を満たす様に、溶解原料として用いる高重合度セルロースと低重合度セルロースの配合量を調整すればよい。このとき、溶解時におけるセルロースの重合度低下やNMMOの分解を抑える為、例えば過酸化水素、修酸またはその塩、没食子酸、メチルジ没食子酸、グリコシド等の安定剤を添加することは好ましい態様として推奨される。
【0023】
セルロース原料をNMMOと水の混合溶媒に溶解した溶液は、比較的低粘度であって高濃度の溶液が得られ易く、その粘性も湿式紡糸に好適なものになることは、例えば「繊維学会誌」51,423(1995)にも記載されている通りである。
【0024】
こうして得られる高粘度(溶解温度での零剪断粘度が5,000ポイズ程度以上)の溶液は、薄膜エバポレータで脱泡した後、濾過してから紡糸部へ供給される。高粘度の紡糸原液は紡糸ヘッドへ送られ、ギアポンプで計量されてスピンパックへ供給される。紡糸温度は90〜135℃の範囲が好ましく、90℃未満ではドープ粘度が高過ぎるため紡糸が困難となり、また135℃を超えて過度に高温になるとセルロースの分解により重合度が低下し、得られる再生繊維の物性、殊に引張強力が乏しくなる。
【0025】
紡糸に用いるオリフィスは、ドープの安定性を高めるためL/Dを長くすることも有効であるが、そうすると紡糸背圧が高くなるという問題が生じてくるので、好ましくは導入角の小さいテーパ状のオリフィスを使用し、乱流の発生を抑制することが望ましい。
【0026】
このとき、横断面形状が異形の再生セルロース繊維を得るには、紡糸口金として例えば図1(A)〜(D)に示す様な異形口金が使用されるが、この様な異形口金を使用すると紡糸ドープの曳糸性が悪くなるため、通常の形状の紡糸ノズルでは、紡糸口金を出てから凝固液に浸入するまでのエアーギャップ中で十分な紡糸延伸倍率が得られ難くなり、前述の様に重合度を調整したセルロースを用いた紡糸原液を使用した場合でも疑似液晶化現象が起こりにくく、断面異形度の調整や耐フィブリル性の向上効果が有効に発揮され難くなる。
【0027】
そこで、上記の様な異形口金を用いた場合でも十分な紡糸延伸倍率を確保することのできる手段について検討を続けた結果、例えば図2に示す如く紡糸口金におけるノズル先端部への導入部のテーパ−角度αを十分に小さくすれば、オリフィス内で生じる乱流を抑制でき、口金先端形状が異形状であっても十分な延伸倍率を確保することができ、それにより疑似液晶現象が発現して異形断面化が達成されると共に耐フィブリル化も効果的に高められることが確認された。こうした効果を得るには、前記導入部のテーパー角度αを好ましくは45度以下、より好ましくは35度以下にすることが望ましいが、デーパー角αを余りに小さくすることは機械加工上困難であるばかりでなく、該導入部への入口部で乱流が生じ易くなり却って曳糸性を阻害する傾向が生じてくるので、10度程度までに止めることが望ましい。曳糸性や加工性等を総合的に考慮してより好ましいテーパー角度は15〜30度の範囲である。
【0028】
口金から吐出されたドープは、所謂エアーギャップ(吐出部から吐出したドープが凝固液に浸入するまでの区間)で引き伸ばされるが、上記の様なテーパ状オリフィスを使用すると、十分な紡糸ドラフトを与えることができ、その結果として疑似液晶化現象が確実に発現され、所定の異形度が与えられると共に耐フィブリル性も高められることとなる。
【0029】
そこで本発明を実施する際には、高粘度の紡糸原液の溶液粘度を下げるため高温で紡糸し、且つ紡糸温度よりも低い温度で凝固させるため、例えば特表平8−500863号公報に記載されている如く、紡糸ノズルから出た吐出ドープが凝固浴に浸入するまでの間にエアーギャップを設けた乾湿式紡糸法を採用することが必要となる。即ち、本発明を実施する際にこの様な乾湿式防止法を採用すると、上記の様な高重合度セルロースと低重合度セルロースを含む高濃度溶液中の高重合度セルロースが、上記エアギャップ部に形成される流動場ないし伸長場で相転移と相分離を引き起こし、この部分で疑似液晶化現象を生じて高重合度セルロースが繊維骨格を形成し、異形断面の再生セルロース繊維が得られ易くなるばかりでなく、得られる再生セルロースは、低重合度のセルロースを多量含むものであっても、十分な強度を示すものとなる。なお紡糸速度は特に制限されないが、通常は100m/分以上、好ましくは150m/分以上で行なうことが望ましい。
【0030】
該エアギャップは、通常の空気の如く非凝固性の気体が存在するだけのエアギャップであれば、分子緩和を抑えつつ大きな変形速度が得られる様に、口金と凝固液面との間隔を5〜50mm程度に設定すれば良い。あるいは、クエンチチャンバー等を用いて吐出糸条を積極的に冷却する方式を採用すると、分子緩和が起こらないので該エアギャップは長くてもよく、特に高速で紡糸する場合はむしろこの方が好ましい。
【0031】
凝固浴としてはNMMOの水溶液を使用するのがよく、好ましくはNMMO濃度が10〜50重量%の水溶液を使用することが望まれる。しかしてNMMO濃度が10重量%未満では、蒸発するNMMOの回収率が低くなって不経済になるし、逆に50重量%を超えて過度に高濃度にするとフィラメントが凝固不足になるからである。凝固浴のより好ましいNMMO濃度は15〜40重量%の範囲である。また、凝固浴の好ましい温度は−20〜20℃、より好ましくは−10〜15℃の範囲であり、20℃を超えると凝固不足となって繊維性能が悪くなり、一方凝固浴を−20℃を下回る温度にまで過度に冷却してもそれ以上に繊維性能が高められる訳ではないので、それ以上に冷却することは経済的に無駄である。
【0032】
凝固浴を通過した糸条は、引き続いて水洗・乾燥工程へ送られるが、このとき、ネットコンベア等の捕集装置を用いて糸条を捕集して処理することは、設備を簡素化する上で極めて有効である。さらに、ネットコンベアによる捕集を一層容易にするため、例えば特公昭47−29926号に開示されている様な公知のダブルキックバックロールやアスピレータ等を使用することも、好ましい方法として推奨される。また、得られる再生セルロース繊維を短繊維として使用する場合、クリンパーを工程中に設けて捲縮を付与することも有効である。クリンパーとしては所謂スタッフィングボックス型のクリンパーが好ましいが、ギアークリンパーであっても勿論構わない。ボックス型のクリンパーを使用する場合は、ネットコンベアの捕集装置としても用いることができる。
【0033】
ネットコンベアを用いて水洗・乾燥された繊維束は、長繊維として得る場合はワインダーで所定繊度の糸条として巻き上げられ、短繊維として得る場合は束ねられた長繊維を直ちに若しくは別途カッターで切断して得ればよい。カッターとしては、ロータリカッターやギロチンカッター等が一般的に用いられる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、下記実施例、比較例で採用した各性能の測定法は次の通りである。
【0035】
[セルロースの重合度の測定]
高分子学会編「高分子材料試験法2」第267頁、共立出版(1965)に記載の銅エチレンジアミン法により測定。
【0036】
[異形度の測定]
繊維断面を顕微鏡撮影し、トレーシング紙を用いて外周長(L)を求め、且つ外接円の周長(Lo)を測定して、L/Loによって異形度を求める。
【0037】
実施例1
セルロースとしてレーヨン用パルプを使用し、その15重量部をNMMO:73重量部と水:12重量部の混合液に110℃で溶解し、紡糸原液とした。この紡糸原液を使用し、図2(A)〜(C)に示す吐出部の形状および導入角の異なる紡糸口金を使用し、表1に示す条件で乾湿式紡糸を行ない、得られたフィラメントを水洗・乾燥して巻き取り、夫々について繊維の物性と異形度を測定し、表1に示す結果を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
表1からも明らかである様に、紡糸口金の導入角αが小さく、エアーギャップ長および冷却風条件として適切な条件を採用した場合(符号A)に限り、紡糸が可能で且つ優れた糸質と異形断面の再生セルロースを得ることができる。
【0040】
実施例2
高重合度のセルロースとしてレーヨン用パルプを、また低重合度のセルロースとしてレーヨン繊維を使用し、前者対後者を20/80の重量比で配合した混合セルロース15重量部を、NMMO:73重量部と水:12重量部の混合液に110℃で減圧溶解した。高重合度セルロースおよび低重合度セルロースの各単独ドープから水で沈殿凝固させて得た各セルロースの重合度は、高重合度セルロースで重合度750、低重合度セルロースで重合度300であり、平均重合度は368であった。
【0041】
この紡糸原液を使用し、表2に示す条件で乾湿式紡糸を行ない、得られたフィラメントを水洗・乾燥して巻き取って物性と異形度を測定した。結果は表2に併記する通りであり、繊維物性および断面異形度の高い再生セルロース繊維が得られている。
【0042】
【表2】
【0043】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、溶媒としてNMMOを含む溶媒を用いて、これまで提供されたことのない異形断面で光沢、染色性、風合い等に優れた再生セルロース繊維を提供すると共に、原料セルロースとして、高重合度のセルロースと低重合度のセルロースを所定の比率で併用することによりフィブリル化の問題も解消し、強度的にもまた風合い等においても優れた性能の再生セルロース繊維を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用される紡糸口金の先端形状を例示する説明図である。
【図2】実験で用いた紡糸ノズルの吐出口の形状を示す説明図である。
Claims (2)
- N−メチルモルホリン−N−オキシドを含む溶剤にセルロースを溶解した紡糸原液を用いて製造された再生セルロース繊維であって、該繊維中に含まれるセルロースの平均重合度が400以下であり、且つ該セルロースのうち5〜30重量%が重合度500以上であり、その横断面の異形度が1.2以上であることを特徴とする異形断面再生セルロース繊維。
- N−メチルモルホリン−N−オキシドを含む溶剤にセルロースを溶解した紡糸原液を用いて再生セルロースを製造するに当たり、紡糸原液中で平均重合度が400以下であり、且つ5〜30重量%が重合度500以上であるセルロースを用い、異形断面の紡糸口金を用いて、乾湿式紡糸法によって紡糸を行ない、横断面の異形度が1.2以上である再生セルロース繊維を製造することを特徴とする異形断面再生セルロース繊維の製法。
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