JP3831289B2 - 重合反応プロセスの温度制御方法及び装置 - Google Patents

重合反応プロセスの温度制御方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合反応プロセスの温度制御方法に係り、特に反応熱により温度上昇を伴うプロセスの温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油化学などのプロセス制御の分野において、重合反応プロセスの制御は自動化が困難なものの一つである。例えば、反応器内部温度の昇温から定温制御に切り替える操作では、オペレータの勘と経験に頼るところが大きい。しかし、最近は多品種少量生産が求められ、これまでのような勘と経験に頼る制御方法では対応しきれなくなってきている。
【0003】
反応器の内部温度制御は、製品品種ごとに反応温度が設定される。温度制御は反応器外部より熱を与えて、前述の反応温度を維持する。外部からの熱供給としては反応器廻りのジャケットに温水冷水などの熱媒体を通しておこなう場合が多い。多くの場合、反応温度フィードバック制御により、ジャケット(入口)温度の設定値を求め、この設定値に従いジャケット流量バルブの開度を調節する、いわゆるカスケード制御系の構成をとる。
【0004】
しかし、外部からの熱が反応器内部に速やかに到達するものではなく、熱損失や時間遅れがある。さらに、重合反応の進展において反応熱が生じ、その結果反応器内部の温度を上昇させる。このように外部からの温度調節の遅れと反応器内部での自己発熱を同時に考慮しなければならない。
【0005】
この問題に対して、反応モデルを用いて自動制御を実現する方法が、例えば、花熊、長迫、佐々木:バッチ重合反応器における制御系の設計と応用:システム/制御/情報、Vol.35,No.3,pp.145〜150(1991)が提案されている。ここでは、反応温度パタンに応じて、ジャケット温度の最適パタンを予め決定し制御することで、安定した自動制御を実現している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、ジャケットからの熱伝達の遅れと、反応器内部の反応熱による温度上昇の影響が考慮されている。しかし、ジャケット温度パタンを決定するため、高精度のモデル化が製品品種毎に必要となる。そのためモデル構築のための労力が大きく、それらを取り扱う品種の分だけモデルが必要となり、管理コストが膨大となる。また、運転時間が経過すると反応器の熱伝達率が変化するため、ジャケット温度パタンも変化するので、あらためて調整することが必要になる。
【0007】
以上のように、従来の重合反応プロセスの温度制御方法としては、運転操作パタン導出に用いるモデルに高い精度が求められるため労力が大きいという課題がある。さらに、プロセスの経年変化に対する考慮もなされていない。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、簡単なモデルによる温度予測結果を活用し、かつプロセスの経年変化に対する対策を盛り込んだ、重合反応プロセスの温度制御方法及び装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、ジャケットの温度制御を介して、反応熱が生じる重合プロセスの反応温度を昇温制御から定温制御のための反応温度フィードバック制御に切換える重合反応プロセスの温度制御方法において、反応器への加熱温度とジャケット温度計測値との差分を少なくするようにジャケット温度を制御中に、前記反応温度が第1の判定温度T0になると、ジャケット温度設定値を加熱温度から冷却温度に切り替え、前記反応温度の時間変化を反応温度の時間微分値に基づいて予測し、その予測結果により冷却温度を補正し、補正した冷却温度で前記反応温度の上昇を保つ。さらに、前記反応温度とジャケット温度に基づいて第2の判定温度T1を決定し、前記反応温度が第2の判定温度T1に到達した時点で前記反応温度フィードバック制御に切換える。
【0010】
また、前記補正した冷却温度により前記反応温度が低下傾向となる場合は、前記反応温度が上昇するように前記冷却温度を再補正する。
【0011】
また、前記反応温度の時間変化を前記時間微分値に基づいて予測し、前記反応温度の上昇が大きい場合は第2の判定温度をT1より大なる値に補正し、前記反応温度の上昇が小さい場合はT1より小なる値に補正する。
【0012】
本発明によれば、重合温度プロセスの温度制御を行うに当たり、簡単なモデルを用いて反応温度変化を予測し、その結果に基づき、冷却温度を適切に補正し、また、反応温度フィードバック制御の投入時期を適切に決定するので、安定した重合反応プロセスの温度制御が可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例に係り、重合反応プロセスの温度制御方式の全体構成を示す。制御対象となる重合反応器10、ジャケット20、反応温度計30、ジャケット入口温度計40、ジャケット循環ポンプ50、温水バルブ60、冷水バルブ70、スプリットレンジ80、およびジャケット温度制御器90から構成される。重合反応器10は重合反応全般を示し、ここでは塩化ビニールの重合反応のように、反応に伴い発熱をするいわゆる発熱プロセスを想定する。
【0014】
また、制御方式を構成する要素としては、制御モード選択機能100、反応温度制御機能200、反応温度DB300、起動時温度DB400、スイッチ500、および手動入力機能600からなる。
【0015】
以下、各機能について説明する。制御モード選択機能100は、起動時温度DB400から、プラント起動時の各種設定温度を読み込む。また、計測データとして反応器内温(T)及びジャケット温度(Tj0)、制御信号としてジャケット温度目標値(STj)を読み込む。
【0016】
これら入力データから、プラント起動時のジャケット温度目標値(S100)と、反応温度制御機能200によるフィードバック制御投入判定信号(S100A)を出力する。なお、本実施例ではジャケット温度としてジャケット入口部40の計測温度を示しているが、これに限定されるものではなく、ジャケット温度を示しかつ計測器の設置可能な部位の温度であればよい。
【0017】
反応温度制御機能200は、反応器内温(T)と、反応温度DB300から読み込んだ設定温度(Tref)とを比較し、その偏差が小さくなるようにジャケット温度(Tjo)の操作信号を算出する。これは一般に反応温度フィードバック制御とよばれ、以下では単に「FB制御」と略記する。
【0018】
FB制御の演算は、多くの場合「比例積分方式」を適用する。比例積分方式とは、前述の設定温度(Tref)と反応器内温(T)との偏差(E)に、式(1)による比例演算と積分演算を施して、操作信号(S200)を算出する。
【0019】
S200=K1*E+K2*∫Edt …(1)
ここで、K1:比例ゲイン、K2:積分ゲインで、FB制御の制御性能を調整するパラメータである。
【0020】
図2に反応温度DBのデータ構成を示す。反応温度DB300は、バッチ重合反応において生産する製品に対して、一意に決まる反応温度の設定値(Tref)を対応づける。図では、製品番号のほか、原料の種類も対応付けの要因にしている。要は、生産工程とそこで参照する反応温度の組合せが明示される。反応温度制御機能200に設定値(Tref)を設定する場合、実生産では運転員がDBから選択し設定するか、プログラム処理により自動設定する場合が考えられるが、一旦、生産を開始すると、反応温度設定値はほぼ固定する場合が多い。
【0021】
図3に起動時温度DBのデータ構成を示す。起動時温度DB400は、制御モード選択機能100に対する温度設定データを、製品毎、原料毎に設定する。設定項目の例を以下に説明する。
【0022】
加熱温度(TH)はジャケット温度設定値である。重合反応開始時には反応器を外部から加熱し、仕込み原料の重合反応を促す。THはそのときの温度設定値で、多くの場合、ジャケット熱媒として供給可能な最高温度を設定する。
【0023】
昇温制約(dTH)は単位時間あたりのジャケット温度上昇に設ける制約である。製品、原料によっては、その化学的特性から、外部からの加熱温度について、温度上昇を緩やかに行なう必要があり、そのための制約である。
【0024】
判定温度T0は加熱から冷却に切替る際の判定温度である。反応器温度制御において、反応器内温(T)が判定温度T0を超えた時点で、ジャケット温度制御器90の目標値STjを加熱設定から冷却設定に切り替える。冷却温度(TC)はジャケット温度設定値で、一般には反応温度設定値(Tref)より低い値が設定される。温度設定値は制御モード選択機能の出力S100として、スイッチ500を介してTIC90に与えられる。
【0025】
その後、反応器温度制御が判定温度T1に達すると、制御モード選択機能100はS100Aを出力して、スイッチ500を反応温度制御機能200に切換え、反応温度FB制御を行なう。判定温度T1は実際にはプロセス状態に基づいて、初期設定値(T10)から修正される。
【0026】
図4は、反応温度と冷却温度の時間変化の一例を示す。反応温度設定値(Tref)に対して、ジャケット温度制御器90の目標値(STj)、反応器内温(T)、ジャケット温度(Tj0)を示している。また縦軸は温度、横軸は時間である。
【0027】
重合反応開始後、目標値(STj)を加熱温度(TH)に設定する。判定温度O(T0)に反応器内温(T)が到達後、(STj)は冷却温度(TC)に設定される。判定温度(T1)に反応器内温(T)が到達すると、反応温度制御機能200によるFB制御を開始する。
【0028】
これら制御方式の切り替えはスイッチ500が行なう。スイッチ500は、制御モード選択機能100の出力信号(S100)、制御モード切替信号(S100A)、反応温度制御機能200の出力信号(S200)、および手動入力機能600からの信号を入力し、ジャケット温度制御器90の目標値(STj)を出力する。
【0029】
スイッチ500は、重合反応開始時は制御モード選択機能100の出力と接続した状態である。判定温度(T1)に反応器内温が到達すると、反応温度制御機能200の出力と接続し、FB制御が投入される。運転員が手動介入する場合は、手動入力機能600の出力と接続することで、ジャケット温度制御器90の目標値(STj)を手動操作可能とする。
【0030】
図5は本実施例の制御動作を示すフローチャートである。原料仕込み完了後、重合反応制御を開始する(F10)。反応器を外部より加熱し(F20)、反応器内温が判定条件(F30)を満たしてから、冷却(F40)に切り替える。
【0031】
ここで、重合反応モデルによる温度予測1(F50)を実施し、冷却温度(TC)の補正(F60)を行なう。引き続き、冷却(F70)を実行し、温度予測2(F80)を実行する。この予測結果に基づき、判定温度(T1)の補正(F90)をし、FB投入判定をする(F100)。判定の結果、フィードバック制御投入(F110)が可能となれば、反応温度制御機能200によるFB制御に切り替え、重合温度制御はカスケード構成を確立する。
【0032】
前述のF50からF100までの制御動作は、制御モード選択機能100にて行なわれる。図6に制御モード選択機能の詳細を示す。制御モード選択機能100は、反応器内温(T)を読み込み、加熱、冷却操作時の温度設定値(S100)と、FB投入判定信号(S100A)を出力する。加熱設定器110には、加熱温度(TH)と昇温制約(dTH)を設定する。比較120では、判定温度(T0)と反応器内温(T)を比較し、T0<Tを満たすと、スイッチ130を冷却設定器140に切り替える。
【0033】
冷却設定器140は、反応器内温(T)を読み込み、冷却温度(TC)を出力信号(S100)として出力する。図7に冷却設定器のモデルを示す。モデル1410は、数式モデルを用いて反応器内温(T)の挙動を予測する。具体的には、反応器内温の時間変化(dT/dt)について、加熱操作から冷却操作に切り替えたことによる影響を考慮し、反応器内温(T)が緩やかに上昇するか、それとも温度低下をひき起こすかを予測する。この予測方法の一例を以下に説明する。
【0034】
反応器内温(T)の時間変化と、ジャケットなど外部からの加熱については、(顕熱の蓄積速度)=(反応に伴う発熱速度)+(周囲からの加熱速度)といった熱バランス式が成り立ち、これを数式で表すと式(2)となる。
VρCp(dT/dt)=Qr+UA(Tj0−T)+(その他) …(2)
ここで、V:反応器体積、ρ:反応物密度、Cp:反応物熱容量、Qr:発熱速度、U:総括伝熱係数、A:伝熱面積である。
【0035】
発熱速度(Qr)以外は、反応器の設備データや反応物の物性データであり、事前設定が可能である。しかし、発熱速度(Qr)は、重合反応制御中の計測が困難なデータであり、予測計算に直接用いることができない。そこで、以下の演算により、反応器温度(T)の挙動予測を行なう。
【0036】
まず、加熱から冷却に切り替えた時点の、反応器内温(T)の時間変化を求め、それから切り替え時点の顕熱の蓄積速度Q0を式(3)により求める。
Q0=VρCp(dT0/dt) (3)
また、切り替え時点における、周囲からの加熱速度QHを式(4)により近似する。加熱速度QHは、判定温度(T0)と加熱温度(TH)の温度差により決定するとしている。
QH=UA(TH−T0) (4)
さらに、冷却操作による外部加熱速度QCを式(5)により近似する。冷却温度(TC)はT0より低いので、QC<0である。
QC=UA(TC−T0) (5)
加熱から冷却への切り替えによる顕熱蓄積速度Q’は、式(3)〜(5)を用いて式(6)により表わされる。Q’は外部からの加熱と冷却を切り替えたあとで近似している。
Q’=Q0−QH+QC (6)
以上から、冷却開始後の反応器内温の挙動は式(7)で表される。
(dT'/dt)=Q’/VρCp (7)
つまり、Q’の符号を判定することにより、反応器内温が上昇するか低下するかを判定できる。よって、モデル1410は、予測値である顕熱蓄積速度Q’を、修正部1420に出力する。
【0037】
図8は冷却温度Tcを決定する修正部のフローチャートである。まず、F800、F810にて温度データを読み込み、上記演算によりQ’や(dT'/dt)を求める。次に、修正部1420は、予測値Q’により、冷却温度(TC)に対して以下の処理を行なう。
【0038】
まず、反応温度が低下しているかを判定し(F820)、以下のように実行する。(1)予測値Q’が正またはゼロの場合は、冷却温度(TC)をそのまま出力する(F850)。また、(2)予測値Q’が負の場合は、冷却温度(TC)を予測値Q’が正となるよう補正する(F830、F840)。
【0039】
上記(2)の場合のTC補正方法を説明する。式(6)において、Q’がゼロ以上となればよいことから、TCは以下の式を満たすように決定すればよい。
QC>QH−Q0 (8)
式(8)を整理すると、式(9)が得られるので、これによりTCを補正すればよい。
TC>TH−(Q0/UA) (9)
上記では、重合反応の自己発熱による発熱速度の影響を考慮していない。しかし、予測値Q’について、Q’<0を回避するよう冷却温度を補正した上で、さらに自己発熱による発熱速度(Qr)の影響が加わるので、冷却切り替えによる反応器内温(T)の温度低下が回避できる。以上が、制御モード選択機能100における加熱設定器110、冷却設定器140の出力信号(S100)である。
【0040】
次に、図6のFB投入判定150について説明する。図9はFB投入判定部の詳細構成を示す。モデル1510は、反応器内温(T)の時間変化(dT/dt)を予測補正する。冷却設定器140と同様のモデル式を用いるが、このモデル1510では、加熱操作の影響は無いものと考え、冷却操作の影響のみを考慮する。
【0041】
モデル1510は、反応器内温(T)、ジャケット温度(Tj0)およびジャケット温度制御器90の目標値(STj)を読み込む。まず、読み込み時の、反応器内温(T)の時間変化(dT/dt)を求め、冷却器140の場合と同様に、顕熱の蓄積速度Q10を式(10)により求める。
Q10=VρCp(dT/dt) …(10)
これと同時に、ジャケット温度(Tj0)とその目標値(STj)を比較し、その差をもとに、式(11)を計算する。
Qj=UA(STj−Tj0) …(11)
式(11)から、ジャケット温度(Tj0)が目標値(STj)と一致すれば、Qjはゼロである。一方、(Tj0)が目標値に到達していない場合、ジャケット温度制御器90により、さらに冷水が供給されるので、ジャケット温度の低下が予想される。この影響を考慮し、式(10)による蓄熱速度を補正すると、補正値Q1と、補正後の(dT/dt)は、それぞれ式(12)、(13)となる。
Q1=Q10+Qj …(12)
(dT/dt)=(dT/dt)+Qj/VρCp …(13)
図10は判定温度T1を決定するフローチャートである。モデル1510による温度時間変化(dT/dt)の予測(F1010)の後、この(dT/dt)に基づき、比較部1520において、判定温度T1のデータ参照を行なう(F1020)。
【0042】
図11にT1カーブを示す。T1カーブは、横軸に反応器内温の時間変化(dT/dt)、縦軸にFB投入の判定温度(T1)とし、反応器内温の状況に対応した判定温度をプロットしている。本実施例ではグラフ形式としているが、数値テーブルの形式で定義してもよい。モデル1510で決定した(dT/dt)から、判定温度T1を参照する。このT1カーブの特徴として、初期設定値T10を基準とし、(1)反応器内温上昇が早い((dT/dt)が大きい)場合は、判定温度T1を高くし、FB投入時期を遅らせる。(2)反応器内温の変化が少ない((dT/dt)が小さい)場合は、判定温度T1を低くし、FB投入時期を早める。これらは、図10のフローチャートF1030〜F1050で実行する。
【0043】
すなわち、反応器内温の変化に対して、冷却操作の効果が小さいと温度上昇も早い。この場合、FB制御投入が早いと、フィードバック制御による加熱操作が加わるので、反応温度を大きくオーバーシュートする可能性がある。そこで、判定温度T1を高くし、FB投入時期を遅らせる。一方、冷却操作の影響が大きく、反応器内温の上昇が緩やかな場合、早めにFB制御を投入し、反応温度(Tref)に速やかに到達させる。
【0044】
図9の判定部1530では、補正後(dT/dt)に対応するT1を参照した結果に基づき、反応器内温(T)がT1カーブ記載の値を超えた場合に、FB投入信号を(S100A)として出力する。
【0045】
図12に反応温度T1カーブとプロットされた反応温度変化を示す。冷却切替時の反応器内温とその時間変化は、T1カーブでは(0)にプロットされる。冷却操作による影響が少なく、補正後の(dT/dt)があまり変化しない場合、FB制御投入の判定温度T1は、初期設定T10よりも高い温度に設定される。その例をケース(1)にプロットする。一方、反応器内温の上昇が十分に減速した場合、判定温度はT10より低い温度に設定される。その例をケース(2)にプロットする。
【0046】
図13にケース(1)、(2)の動作を示す。(a)はケース(1)の場合である。すなわち、冷却中の反応器内温の上昇が大きい場合は、判定温度T1を、初期設定値T10から高めのT1に補正し、FB制御投入直後の加熱操作を小さくしている。
【0047】
(b)はケース(2)の場合である。すなわち、冷却により反応器内温が十分減速している場合は、判定温度T1を初期設定値T10から低めのT1に補正し、FB制御投入を前倒しすることで、反応温度(Tref)への到達時間を短くしている。
【0048】
次に、従来の制御系と比較して説明する。図14は従来の制御系を示し、加熱操作、冷却操作を手動設定機能600を通して、運転員が実施する場合を示す。反応温度制御機能(TIC)250は本実施例と同様の機能をもち、反応器内温(T)と反応温度DBから設定するTrefとの偏差を小さくするように、ジャケット温度制御器90の目標値を決定する。スイッチ550は、手動操作によるジャケット温度制御の場合と、反応温度制御機能250を上位にカスケード接続する場合とを切替る。
【0049】
図15は従来の制御動作を示す特性図である。重合反応の開始とともに、ジャケット温度を加熱温度(TH)に高め、反応器内温(T)を上昇させる。運転員の判断により、ジャケット温度を冷却温度(TC)に設定変更し、引き続いて、反応温度制御機能200をカスケード接続し、フィードバック制御系を構成する。この際、加熱から冷却への切替判断と、カスケード接続によるFB制御投入判断は、運転員の判断、あるいは設定温度の参照に基づく。たとえば、設定温度T0、T1を判定温度としてモード切替が行なわれる。しかし、反応器内温の上昇速度に関係なく、一律にT1に到達したときにFB制御が投入されるので、FB制御による加熱操作のため、反応器内温(T)のオーバーシュートが生じる場合がある。
【0050】
一方、本実施例による場合は、重合温度プロセスの温度制御を行うにあたり、モデルを用いて反応温度変化を予測し、その結果に基づいて冷却温度を適切に補正し、また、反応温度フィードバック制御の投入時期を決定するので、安定した重合反応プロセスの温度制御が可能となる。
【0051】
以上、本発明の一実施例を示したが、反応温度制御機能200は、「比例+積分」方式に限定されることなく、例えば、モデルベースの予測制御方式でも適用可能である。
【0052】
また、制御モード選択機能100では、重合反応による自己発熱速度(Qr)を用いない場合を説明したが、例えば高精度かつ簡素なモデル式が組み込み可能な場合は、Qrの項をモデルに組み込むことは容易に可能である。このQrのモデル調整においては、製品、原料品種といった生産データを考慮した調整が可能である。
【0053】
また、図11において、T1カーブをグラフ形式で説明したが、反応器内温と判定温度1との組合せ表が明示されればよく、グラフ形式に限定されることはない。
【0054】
本実施例において、判定温度T0、T1はDBより設定したが、運転員による設定も可能である。また、冷却温度TCは冷却切替後、1回補正されるものとしたが、複数回補正を繰り返しても良く、運転員による手動補正も可能である。
【0055】
本発明では制御対象として、重合反応による発熱プロセスを対象としたが、外部からの温度設定値を適切に設定すれば、吸熱プロセスなど他の反応プロセスにも適用可能である。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、重合温度プロセスの温度制御を行うにあたり、反応温度変化を予測し、その結果に基づいて冷却温度を適切に補正し、また、反応温度フィードバック制御の投入時期を決定するので、安定した重合反応プロセスの温度制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる重合反応プロセスの温度制御方式の全体構成図。
【図2】反応温度データベースの概略のデータ構成図。
【図3】起動時温度データベースの概略のデータ構成図。
【図4】反応温度とジャケット温度、及びその制御信号の時間変化を示す特性図。
【図5】本発明の一実施例による重合反応プロセス温度制御方法のフローチャート。
【図6】一実施例による制御モード選択機能の構成図。
【図7】一実施例による冷却設定器の機能ブロック図。
【図8】一実施例による冷却設定器動作のフローチャート。
【図9】一実施例によるフィードバック制御投入判定部の機能ブロック図。
【図10】一実施例による判定温度T1補正のフローチャート。
【図11】判定温度T1のグラフ。
【図12】判定温度のT1カーブと、プロットした反応温度変化を示す説明図。
【図13】反応温度とジャケット温度の時間変化を示すグラフ。
【図14】従来の重合反応プロセス温度制御方式の全体構成図。
【図15】従来の重合反応プロセス温度制御方法による制御動作の時間変化を示すグラフ。
【符号の説明】
10…重合反応器、20…ジャケット、30…内温温度計、40…ジャケット入口温度計、50…ジャケット循環ポンプ、60…温水バルブ、70…冷水バルブ、80…スプリットレンジ、90…ジャケット温度制御器、100…制御モード選択機能、200…反応温度制御機能、300…反応温度データベース、400…起動時温度データベース、500…スイッチ、600…手動入力機能。

Claims (5)

  1. ジャケットの温度制御を介して、反応熱が生じる重合プロセスの反応温度を昇温制御から定温制御のための反応温度フィードバック制御に切換える温度制御方法であって、
    反応器の加熱のためのジャケット温度設定値とジャケット温度計測値との差分を少なくするようにジャケット温度を昇温制御中に、反応器内温度が生産する製品に対応して設定された第1の判定温度T0になると、ジャケット温度設定値を加熱設定の加熱温度から冷却設定の冷却温度に切換え、前記反応器内温度の時間変化を、生産する製品に対する重合モデルによる前記反応器内温度の時間微分値に基づいて予測し、その予測結果により前記冷却温度を補正し、補正した冷却温度で前記反応器内温度の上昇を保つとともに、
    さらに、前記反応器内温度の時間変化の予測に基いて、生産する製品に対応して設定された反応温度目標値より小さい第2の判定温度を決定し前記反応器内温度が前記決定された第2の判定温度T1に到達した時点で前記反応温度フィードバック制御に切換えることを特徴とする重合反応プロセスの温度制御方法。
  2. 請求項1において、前記補正した冷却温度により前記反応温度が低下傾向となる場合は、前記反応温度が上昇するように前記冷却温度を再補正することを特徴とする重合反応プロセスの温度制御方法。
  3. 請求項1において、前記反応温度の時間変化を前記時間微分値に基づいて予測し、前記反応温度の上昇が大きい場合は初期設定値より大なる値にT1を補正し、前記反応温度の上昇が小さい場合は前記初期設定値より小なる値にT1を補正することを特徴とする重合反応プロセスの温度制御方法。
  4. ジャケットの温度制御を介して、反応熱が生じる重合プロセスの反応温度を昇温制御から定温制御のための反応温度フィードバック制御に切換える制御方法であって、
    反応器の加熱のためのジャケット温度設定値とジャケット温度計測値との差分を少なくするようにジャケット温度を制御中に、前記反応温度が生産する製品に対応して設定された所定温度T0になると、前記ジャケット温度設定値を加熱設定の加熱温度から冷却設定の冷却温度に切換え、
    前記反応温度の時間変化を、その計測値の時間微分値dT/dtに基づいて予測し、その予測結果により冷却温度を補正して前記反応温度の上昇を保ち、さらに、前記反応温度の時間変化の予測に基づいて、前記反応温度が生産する製品に対応して設定された反応温度の目標値Trefより小さい判定温度T1を決定し、前記反応温度が前記判定温度T1に到達した時点で前記反応温度フィードバック制御に切換え、
    前記反応温度フィードバック制御は、目標値Trefと前記反応温度計測値との偏差を求め、この偏差を少なくするようにジャケット温度目標値を算出し、前記ジャケット温度目標値と前記ジャケット温度計測値との偏差を少なくするようにジャケット温度を制御することを特徴とする重合反応プロセスの温度制御方法。
  5. ジャケットの温度制御を介して、反応熱が生じる重合プロセスの反応温度を昇温制御から定温制御のための反応温度フィードバック制御に切換える重合反応プロセスの温度制御装置であって、
    ジャケット温度設定値とジャケット温度計測値との差分を少なくするように制御するジャケット温度制御器と、
    反応器内温度が生産する製品に対応して設定された第1の判定温度T0になると、前記ジャケット温度設定値を加熱設定の加熱温度から冷却設定の冷却温度に切換え、前記反応温度の時間変化を前記反応器内温度の時間微分値に基づいて予測し、その予測結果により冷却温度を補正する冷却設定手段と、
    補正した冷却温度で前記反応温度の上昇を保つとともに、前記反応温度の制御を昇温制御から反応温度フィードバック制御に切換える時点を示す生産する製品に対応して設定された第2の判定温度T1を、前記反応器内温度の時間変化と前記冷却温度に補正されたジャッケット温度に基いて決定し、前記反応器内温度が前記決定された第2の判定温度T1に到達した時点で前記反応温度フィードバック制御に切換えるフィードバック制御投入判定手段を備えることを特徴とする重合反応プロセスの温度制御装置。
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