JP3831215B2 - 配線用遮断器形電子式電力量計 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子式電力量計の構造に関し、特に電子式電力量計の試験用端子（虚負荷端子）の構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
電力量計を小型化およびメンテナンスフリー化するために電子式電力量計が提供されている。このような電子式電力量計を取引用や証明用に使用するには、検定や試験が必要となり、電流と電圧を別々に供給する虚負荷を用いて、この検定や試験が行われている。このため電力量計には図１０、図１１に示すように虚負荷用の試験用端子（虚負荷端子）が設けられている。図１０は電力量計の正面図であり、図１１は、電力量計の接続図である。
【０００３】
このような電子式電力量計１Ａには、電源に接続される電源側端子１１Ｓと、負荷に接続される負荷側端子１１Ｌが設けられ、一対の電源側端子１１Ｓ，１１Ｓに電流回路端子１６Ｓ，１６Ｓがそれぞれ設けられ、電力量計本体を構成する電子回路側にそれぞれ電圧リード線６２，６２を介して電圧回路端子６０，６０が設けられる。それぞれの電流回路端子１６Ｓと電圧回路端子６０の間には摺動可能な接続部材６３，６３が設けられ、試験時には、両者間を解離して電圧回路端子（虚負荷端子）６０から電子回路に電圧を供給し、検定または試験を行なっている。
【０００４】
地球環境問題の一環とするエネルギー管理方法の一助として、電力エネルギーをきめ細かく計測・管理する必要がある。これを管理するための電力量計を例えば既存分電盤や機械設備に取付けるのは、電力量計が大きいことから物理的な限界がある。このため電力量計の小型化も急務となっており、電子式電力量計が広く用いられるようになってきている。
【０００５】
電子式電力量計を、例えば図１２に示すような配線用遮断器形（試験用端子を図示しない）とすることによって、小型化を図った電子式電力量計がある。図１３は、その接続図を示す。
【０００６】
配線用遮断器形の電子式電力量計１Ｂは、図示を省略した電子式電力量計本体を収容する空間を有する容器１０と、容器の開口を覆う蓋部３０とを有して構成される。容器１０は、電子式電力量計本体を収容する内部空間を有する箱体として形成されるとともに、開口の周辺の上面に接続部１１を設けて構成される。接続部１１は、電源側の電線が接続される電源側接続部１１Ｓと、負荷側の電線が接続される負荷側接続部１１Ｌが、例えば図示のように対向して設けられる。電源側接続部１１Ｓと負荷側接続部１１Ｌの配置は、上下方向に対向させ下方を電源側とする配置、上方を電源側とする配置方法、左右方向に対向させ右方を電源側とする配置、左方を電源側とする配置方法などがある。
【０００７】
電源側接続部１１Ｓには、電源側接続部１１Ｓと負荷側接続部１１Ｌとを接続する電流線の端子部１６Ｓが配置される。端子部１６の両側に隔壁１３と、内部空間に電子式電力量計本体を固定するネジが挿入固定される計器取付用ネジ孔１４とが設けられている。
【０００８】
このような構成を有する配線用遮断器形電子式電力量計１Ｂは、電子回路が電流線５０を介して電流回路端子１６Ｓに接続され、電源から電力の供給を受ける。電流回路端子１６Ｓには、接続部材６３を介して電子回路に電圧リード線６２を介して接続された電圧回路端子６０が接続される。
【０００９】
このように、電子式電力量計を配線用遮断器形として小型化しても、取引用や証明用に使用するには、検定または試験が必要になるため、試験用端子を設けることが必要である。しかし、図１に示した従来の試験用端子の構造を採用すると、図１４に示すように、試験用端子構造１６Ｓ、６０、６３を設けた分だけ図１２の規定寸法に対して計器の大型化をまねくことになる。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、計器寸法の拡大をまねくことなく、容易に検定または試験をすることができ、実運用では試験用端子部が電子式電力量計の表面に露出しないようにした、安全な試験用端子構造を有する配線用遮断器形電子式電力量計を提供することを目的とする。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
検定および試験に必要な試験用端子を従来の横スライド方式から前後可動方式にし、電力量計の小型化を図った。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる試験用端子構造を採用した電子式電力量計の形状および構造を、図面を用いて説明する。本発明に係る電子式電力量計は、電源側端子部の両側に、試験用プローブ接触部およびねじ部を設けた試験用端子を設け、検定試験終了後にねじを電流線端子に締結して、電流側端子を電圧側端子に接続するようにした点に特徴を有している。
【００１３】
図１〜図５を用いて、本発明の第１の実施例を説明する。図１は第１の実施例にかかる電子式電力量計の外観形状を示す正面図、図２は試験用端子部を断面として示した第１の実施例にかかる電子式電力量計の上面図、図３は検定または試験を終了する前の試験用端子部を断面として示した第１の実施例にかかる電子式電力量計の側面図、図４（Ａ）は第１の実施例にかかる電子式電力量計の試験用端子部の構造を説明する断面斜視図、図４（Ｂ）はその試験用端子を構成する部品の形状を説明する斜視図、図５は検定または試験を終了した第１の実施例にかかる電子式電力量計の試験用端子部の断面図である。
【００１４】
本発明の第１の実施例にかかる試験用端子部の構造を備えた電子式電力量計１は、図示を省略した電子式電力量計本体を収容する空間を有する容器１０と、容器の開口を覆う蓋部３０とを有して構成される。
【００１５】
容器１０は、電子式電力量計本体を収容する内部空間を有する箱体として形成されるとともに、開口の周辺の上面に接続部１１に設けて構成される。接続部１１は、電源側の電線が接続される電源側接続部１１Ｓと、負荷側の電線が接続される負荷側接続部１１Ｌが、図示のように対向して設けられる。
【００１６】
電源側接続部１１Ｓには、電源側接続部１１Ｓと負荷側接続部１１Ｌとを接続する電流線の端子部１６Ｓが配置される端子用凹部１２Ｓと、端子用凹部１２Ｓの両側部に設けた隔壁１３Ｓと、内部空間に電子式電力量計本体を固定するネジが挿入固定される計器取付用ネジ孔１４Ｓと、本発明にかかる測定端子用孔１５Ｓとが形成される。
【００１７】
負荷側接続部１１Ｌには、電流線の端子部１６Ｌが配置される端子用凹部１２Ｌと、端子用凹部１２Ｌ両側部に設けた隔壁１３Ｌと、計器取付用ネジ孔１４Ｌと、発信パルス出力端子用凹部１８Ｌとが形成される。
【００１８】
電源側接続部１１Ｓの電流線の端子部１６Ｓのうち両端に設けた端子部１６Ｓには、ネジ孔１６２を有する電流回路端子部１６１Ｓが試験端子用孔１５方向に突出して形成されている。
【００１９】
蓋部３０は、容器１０内に固定された電子式電力量計本体の表面を保護する蓋であり、蓋の表面には、計量した電力量を表示する計量値表示部３１と、動作状態を表示する動作表示部３２と、計量パルスを発光ダイオードなどで表示する計量パルス発信部３３を有している。
【００２０】
試験端子用孔１５の内部空間１５１には、本発明にかかる構造を有する試験用端子２０が設けられる。試験用端子２０は、電子式電力量計本体の電圧端子として働く電圧端子枠体２１と、試験用端子ネジ２３と、コイルバネ２５と、電圧回路リード線２９とを有して構成される。
【００２１】
電圧端子枠体２１は、ほぼ矩形状に構成され、上面中央にネジ孔２１１を有し、上面の側面から立ちあがる把持部２１２と、上面の端面から立ちあがり、電圧端子枠体自体を内部空間１５１内で案内する案内片２１３を有して構成される。
【００２２】
試験用端子ネジ２３は、検定・試験終了後試験用電圧端子２１を電流線端子１６Ｓに接続固定するネジであり、ネジ孔２１１に挿入され、電流回路端子部１６１のネジ孔１６２に対向して配置される。
【００２３】
コイルバネ２５は、電圧端子用枠体２１を接続部１１Ｓの表面側に附勢するバネである。
【００２４】
電圧回路リード線２９は、電圧端子枠体２１を電子式電力量計本体の電圧端子に接続するリード線であり、枠体２１に例えば半田付けされて電圧端子枠体２１に電気的に接続される。
【００２５】
このような端子構造を有する電子式電力量計の検定・試験は、図３に示されるように、電流線端子１６Ｓの電流回路端子部１６１と電圧端子２１を離した状態で、電流線端子１６Ｓ、１６Ｌ間に試験用電流を流すとともに、電圧端子２１の把持部２１２を試験装置のプローブで把持して電圧を供給して、虚負荷を形成して測定することによって行われる。
【００２６】
検定・試験の終了後、図５に示すように、試験用端子ネジ２３を押し込み電流回路端子部１６１のネジ孔１６２にねじ込み固定することによって、電流線端子１６Ｓの電流回路端子部１６１と電圧端子２１を接続して、電子式電力量計を実負荷の状態とする。
【００２７】
図６〜図９を用いて本発明の第２の実施例を説明する。図６は試験用端子部を断面として示した第２の実施例にかかる電子式電力量計の上面図、図７は検定または試験を終了する前の試験用端子部を断面として示した第２の実施例にかかる電子式電力量計の側面図、図８（Ａ）は第２の実施例にかかる電子式電力量計の試験用端子部の構造を説明する断面斜視図、図８（Ｂ）はその試験用端子を構成する部品の形状を説明する斜視図、図９は検定または試験を終了した第２の実施例にかかる電子式電力量計の試験用端子部の断面図である。この実施の形態にかかる電子式電力量計の正面図は第１の実施の形態と同様であるので図示を省略する。図６〜図９においては、第１の実施例に示した各構成要素と同等の働きを有する構成要素には、同一の符号を付してある。
【００２８】
本発明の第２の実施例にかかる試験用端子部の構造を備えた電子式電力量計１は、図示を省略した電子式電力量計本体を収容する空間を有する容器１０と、容器の開口を覆う蓋部３０とを有して構成される。
【００２９】
容器１０および蓋部３０は、第１の実施例とほぼ同様の構成を有している。
【００３０】
試験端子用孔１５の内部空間１５１には、本発明にかかる構造を有する試験用端子２０が設けられる。試験用端子２０は、電子式電力量計本体の電圧端子として働く電圧端子板２２と、試験用端子ネジ２３と、板バネ２６と、電圧回路リード線２９とを有して構成される。
【００３１】
電圧端子板２２は、平面形状が十字状に形成され、上面中央にネジ孔２１１を有し、側面から立ちあがる把持部２１２を有して構成される。
【００３２】
試験用端子ネジ２３は、検定・試験終了後試験用電圧端子２２を電流線端子１６Ｓに接続固定するネジであり、ネジ孔２１１に挿入され、電流回路端子部１６１のネジ孔１６２に対向して配置される。
【００３３】
板バネ２６は、下方に開いた一対の脚２６１と案内孔２６２を有し、試験用端子ネジ２３に案内されて電圧端子板２２の下面に接して、電圧端子板２２を接続部１１Ｓの表面側へ附勢する。
【００３４】
電圧回路リード線２９は、電圧端子板２２を電子式電力量計本体の電圧端子に接続するリード線であり、電圧端子板２２に例えば半田付けされて電圧端子板２２に電気的に接続される。
【００３５】
試験端子用孔１５の内部空間１５１の壁部の下方には、板バネ２６の反発力によって電圧端子板２２を接続部１１Ｓの表面側に押し付ける勾配面１５２が対向して設けられている。
【００３６】
このような端子構造を有する電子式電力量計の検定・試験は、図７に示されるように、電流線端子１６Ｓの電流回路端子部１６１と電圧端子２２を離した状態で、電流線端子１６Ｓ、１６Ｌ間に試験用電流を流すとともに、電圧端子２２の把持部２１２を試験装置のプローブで把持して電圧を供給して、虚負荷を形成して測定することによって行われる。
【００３７】
検定・試験の終了後、図９に示すように、試験用端子ネジ２３を押し込み電流回路端子部１６１のネジ孔１６２にねじ込み固定することによって、電流線端子１６Ｓの電流回路端子部１６１と電圧端子２２を接続して、電子式電力量計を実負荷の状態とする。
【００３８】
【発明の効果】
このように、本発明によれば、電子式電力量計の大型化を招くことがなく、検定・試験時には把持部２１２をクリップして虚負荷の電圧を供給し、検定・試験終了後はネジ２３を締め付けるだけで実負荷の状態にすることができるので、極めて作業性のよい電子式電力量計を提供することができる。また、把持部２１２の状態を外部から視認することができるので、虚負荷の状態か実負荷の状態かを容易に認識することができる。さらに、実際に電力量計を使用する実フィールドにおいては、試験用端子が計器前面近傍にあるにもかかわらず、充電部が露出せず、安全性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１の実施の形態にかかる電子式電力量計の形状を説明する正面図。
【図２】本発明の第１の実施の形態にかかる電子式電力量計の形状を説明する上面図。
【図３】本発明の第１の実施の形態にかかる電子式電力量計の形状を説明する一部断面で示す側面図。
【図４】本発明の第１の実施の形態にかかる電子式電力量計の端子部の構造を説明する斜視図。
【図５】本発明の第１の実施の形態にかかる電子式電力量計の試験後の端子部の状態を説明する断面図。
【図６】本発明の第２の実施の形態にかかる電子式電力量計の形状を説明する上面図。
【図７】本発明の第２の実施の形態にかかる電子式電力量計の形状を一部断面で示す側面図。
【図８】本発明の第２の実施の形態にかかる電子式電力量計の端子部の構造を説明する斜視図。
【図９】本発明の第２の実施の形態にかかる電子式電力量計の試験後の端子部の状態を説明する断面図。
【図１０】従来の電子式電力量計の外観構造を説明する正面図。
【図１１】図１０の電子式電力量計の接続図。
【図１２】配線用遮断器形電子式電力量計（試験用端子図示せず）の外観構造を説明する正面図。
【図１３】配線用遮断器形電子式電力量計の接続図。
【図１４】図１２の配線用遮断器形電子式電力量計に従来構造の試験用端子を設けた状態を説明する正面図。
【符号の説明】
１ 電子式電力量計
１０ 容器
１１ 接続部
１２ 端子用凹部
１４ 計器止めネジ孔
１５ 試験端子用孔
１５１ 内部空間
１５２ 勾配面
１６ 電流線端子
１６１ 電流回路端子部
１６２ ネジ孔
１７ ビス
１８ 発信パルス出力用凹部
２０ 試験用端子（虚負荷端子）
２１ 電圧端子枠体
２１１ ネジ孔
２１２ 把持部
２１３ 案内片
２２ 電圧端子板
２３ 試験用端子ネジ
２５ コイルバネ
２６ 板バネ
２６１ 脚
２６２ 孔
２９ 電圧回路リード線
３０ 蓋部
３１ 計量値表示部
３２ 動作表示部
３３ 計量パルス発信部
５０ 電流線
６０ 電圧端子
６２ 電圧線
６３ 接続部材

Claims (2)

1. 計器の周囲表面に設けられ電源に接続される少なくとも二以上の電流線の端子部と、該端子部の端部両外側に配置された開口内に配置した虚負荷端子を有する配線用遮断器形電子式電力量計において、
   上記虚負荷端子が、前記端子部に設けたネジ孔を有する電流端子と、電子回路の電圧端子に接続され把持部が計器の表面近傍に位置する電圧回路端子と、電圧回路端子に設けたネジ孔に挿入され電流端子のネジ孔に着脱可能に配置されたネジとを有し、
   前記ネジを前記電流端子のネジ孔に締結または弛緩することによって実負荷と虚負荷を切り替える構造とした
   ことを特徴とする配線用遮断器形電力量計。
2. 前記電圧回路端子の下方に電圧回路端子を計器の表面側に附勢するバネ支持を設け、前記ネジを締結または弛緩することによって、実負荷と虚負荷を切り替える構造とした
   請求項１に記載の配線用遮断器形電子式電力量計。

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