JP3829051B2 - ハンドオーバの制御方法、基地局制御装置および移動体端末 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動局での止まり木チャネル信号の受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断するハンドオーバの制御方法に関し、特に、符号分割多元接続(Code Division Multiple Access : CDMA)方式を用いたセルラ移動通信におけるソフトハンドオーバの制御に好適なハンドオーバの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
CDMAは多元接続方式の1つであり、周波数分割多元接続(Frequency Division Multiple Access : FDMA)方式や時分割多元接続(Time Division Multiple Access : TDMA)方式に比べて、周波数配置の簡便さ等の利点を有している。このため、EIA/TIA IS-95等、最近のセルラ移動体通信システムの多元接続方式として採用されている。
【0003】
さて、CDMA方式には、ソフトハンドオーバ(Soft Hand Over : SHO)と呼ばれる、CDMA独特のチャネル切替方式がある。SHOは、移動局が複数の基地局と同時に通信を行うことにより実現され、その利点は、移動局がセル間を移動する際に、瞬断なく通信を継続できることにある。また、特開平8-18503号公報記載のように、移動局は、同時通信している各基地局のうち最も通信品質のよい基地局に合わせてトラヒックチャネル信号の送信電力レベルを制御することができるため、送信電力を低減することができる。
【0004】
以下に、従来のSHOの概要を、図14を用いて説明する。
【0005】
図14において、基地局601、602がカバーする各セルのセル範囲を決める境界線C1、C2は、それぞれ基地局601、602から常時送信される止まり木チャネル信号(この信号は、一定送信電力で送信され、且つ、通常、同一の周波数信号で変調され、基地局毎に異なる拡散符号で拡散される)の受信レベルによって決定される。境界線C1よりも基地局601側は、基地局601がカバーするセルのセル範囲であり、境界線C2よりも基地局602側は、基地局602がカバーするセルのセル範囲である。いま、基地局601と通信(トラヒックチャネルによる通信)中の移動局50が、矢印Aの方向に移動する場合を考える。移動局50は、境界線C2を超えると、止まり木チャネル信号の受信レベル測定結果から、基地局602がカバーするセルに入ったことを認識する。そして、SHOの実行を開始して、基地局602との通信を試みる。一方、移動局50は、境界線C1を超えると、止まり木チャネル信号の受信レベル測定結果から、基地局601がカバーするセルから出たことを認識する。そして、SHOの実行を終了して基地局601との通信を絶ち、基地局602とのみ通信する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のSHOは、基地局がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が実際に通信(トラヒックチャネルによる通信)可能な範囲とが、互いに一致していることを前提としている。しかしながら、上述したように、基地局がカバーするセルのセル範囲は、当該基地局から送信された止まり木チャネル信号の移動局での受信レベルにより決定されるのに対し、当該基地局が実際に通信可能な範囲は、当該基地局から送信された下りトラフィックチャネル信号の移動局における受信レベルや移動局から送信された上りトラフィックチャネル信号の当該基地局での受信レベル(これらは、アンテナ利得や当該基地局と通信中の移動体数等に依存する)によって決定される。このため、基地局がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が実際に通信可能な範囲とにずれが生じることがある。
【0007】
このように、基地局がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が実際に通信可能な範囲とにずれが生じている状態で、上記従来のSHOを実行すると、次のような問題が生じる。
【0008】
1.SHOの実行開始を試みても、SHOの先セルをカバーする基地局(SHO先基地局)との通信を確立できないことがある。
【0009】
図15に示すように、基地局601がカバーするセルのセル範囲(境界線C1よりも基地局601側の範囲)が、当該基地局601が実際に通信可能な範囲(境界線H1よりも基地局601側の範囲)よりも狭く、且つ、基地局602がカバーするセルのセル範囲(境界線C2よりも基地局602側の範囲)が、当該基地局602が実際に通信可能な範囲(境界線H2よりも基地局602側の範囲)よりも広い場合を考える。そして、基地局601と通信中の移動局50が、矢印Aの方向に移動したとする。この場合、移動局50は、境界線C2を超えると、止まり木チャネル信号の受信レベル測定結果から、基地局602がカバーするセルに入ったことを認識する。そして、SHOの実行を開始して、基地局602との通信を試みる。しかし、移動局50は境界線H2を超えていないので、基地局602との通信を確立できない。その結果、移動局50が境界線H2を超える位置に到達するまで、SHOの実行開始と失敗を繰り返すこととなり、基地局602および網側に不要な負荷がかかり基地局602および網側のリソースを浪費してしまう。
【0010】
2.SHOの実行開始直後に、SHOの元セルをカバーする基地局(SHO元基地局)との通信が切断されてしまうことがある。
【0011】
図16に示すように、基地局601がカバーするセルのセル範囲(境界線C1よりも基地局601側の範囲)が、当該基地局601が実際に通信可能な範囲(境界線H1よりも基地局601側の範囲)よりも広く、且つ、基地局602がカバーするセルのセル範囲(境界線C2よりも基地局602側の範囲)が、当該基地局602が実際に通信可能な範囲(境界線H2よりも基地局602側の範囲)よりも狭い場合を考える。そして、基地局601と通信中の移動局50が、矢印Aの方向に移動したとする。この場合、移動局50は、境界線C2を超えると、止まり木チャネル信号の受信レベル測定結果から、基地局602がカバーするセルに入ったことを認識し、SHOの実行を開始して、基地局602との通信を試みる。そして、例えば特開平8-18503号公報記載の技術に従って、移動局50は、最も通信品質のよい基地局に合わせてトラヒックチャネル信号の送信電力レベルを制御する。この際、図16に示す例では、移動局50が境界線C2を超えたときには、既に、移動局50は、境界線H1で仕切られた基地局601が実際に通信可能な範囲を逸脱しており、且つ、境界線H2で仕切られた基地局602が実際に通信可能な範囲内に到達しているため、基地局602に合わせて送信電力レベルを制御することとなる。その結果、基地局601では、移動局50からの上りトラフィックチャネルを受信することができなくなってしまい、移動局50との通信が切断されてしまう。つまり、ソフトハンドオーバの実行直後に基地局601との通信が絶たれてしまうこととなり、上述した通信の安定性や送信電力の低減といった、ソフトハンドオーバによる利点を殆ど享受することができない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、セルあるいはセクタ範囲と通信可能な範囲とにずれがある場合でも、より確実にハンドオーバを実行できるようにすることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的の達成のために、本発明の移動体通信システムにおけるハンドオーバの制御方法では、移動局がハンドオーバ先基地局と通信可能な範囲に到達したときにハンドオーバの実行が開始され、当該移動局がハンドオーバ元基地局と通信可能な範囲から逸脱したときにハンドオーバの実行が終了するように、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断するために止まり木チャネルの受信レベルと比較する基準値を補正するようにしている。または、ハンドオーバ先基地局あるいはハンドオーバ元基地局の止まり木チャネル信号の送信レベルを調整するようにしている。
【0014】
具体的には、本発明の第1の態様は、予め、ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に、補正値を用意する。ここで、補正値は、前記組み合わせ各々について、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了を正常実施できる地点でのハンドオーバ先基地局あるいハンドオーバ元基地局からの止まり木チャネル信号の受信レベルを測定しておき、当該受信レベルと前記基準値との差分に基づいて予め決定するようにすればよい。あるいは、ハンドオーバ元基地局およびハンドオーバ先基地局の止まり木チャネル信号送信レベルの差分と、ハンドオーバ元基地局およびハンドオーバ先基地局のトラヒックチャネル信号送信レベルの差分とに応じて、予め決定することもできる。
【0015】
そして、実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバが対象とする元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせを認識し、当該認識した組み合わせに対して予め用意しておいた補正値を用いて、前記基準値を補正し、当該補正された基準値を用いて、当該ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する。
【0016】
また、本発明の第2の態様は、前記組み合わせ各々について、前記基準値を使用してハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断した場合におけるその実行結果(成功か失敗か)を少なくとも1回分蓄積しておく。そして、その蓄積された結果に応じて前記基準値を補正し、当該補正された基準値を、当該組み合わせに対して新たにハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する際に用いる新たな基準値に設定する。
【0017】
また、本発明の第3の態様は、前記組み合わせ各々について、前記基準値を使用してそのタイミングを判断した場合におけるその実行結果(成功か失敗か)を少なくとも1回分蓄積しておく。そして、その蓄積された結果に応じて、ハンドオーバ元基地局あるいはハンドオーバ先基地局の止まり木チャネル信号送信レベルを調整する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、本発明を、CDMA方式を用いたセルラ移動通信システムに適用した場合を例にとり説明する。
【0019】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる移動局10のブロック図である。
【0021】
図において、移動局アンテナ11で受信された信号は、移動局送受分離部12を介して移動局無線受信部(RFRX)15に入力され、そこで、SHO候補セル選択部17より通知された、各基地局が採用する拡散符号・変調周波数に従い、逆拡散・復調処理が施されて、各セルの止まり木チャネル信号に復元される。移動局ベースバンド受信部(BBRX)16は、移動局無線受信部15で復元された各セルの止まり木チャネル信号の受信レベルを計測し、その結果をSHO候補セル選択部17に通知する。
【0022】
これを受けて、SHO候補セル選択部17は、通知された受信レベルの中から、自移動局10が通信(トラヒックチャネル信号による通信)中のセル(SHO元セル)の止まり木チャネル信号受信レベルと、SHO元セル以外のセルであって計測値が最も高く且つ所定値以上のセル(SHO先候補セル)の止まり木チャネル信号受信レベルとを抽出し、これらを移動局ベースバンド送信部(BBTX)14に通知する。移動局ベースバンド送信部14は、SHO候補セル選択部17から受け取ったSHO元セルおよびSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルを含むSHO情報を生成し、移動局無線送信部(RFTX)13に通知する。移動局無線送信部13は、自移動局10が通信中のセル(SHO元セル)をカバーする基地局が採用する拡散符号・変調周波数に従い、SHO情報に変調・拡散処理を施し、これを移動局送受分離部12を介して移動局アンテナ11から送信する。
【0023】
なお、移動局10のトラヒックチャネル信号を介した基地局との通信処理は、既存のCDMA方式セルラ移動通信システムにおける移動局の処理と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる基地局システム20のブロック図である。
【0025】
図示するように、本実施形態で用いる基地局システム20は、少なくとも2つの基地局21と、基地局制御装置22とを有する。
【0026】
基地局21において、自基地局21がカバーするセルのセル範囲を決定する止まり木チャネル信号は、移動局ベースバンド送信部(BBTX)214で生成され、移動局無線送信部(RFTX)213により、自基地局21が採用する拡散符号・変調周波数に従って変調・拡散処理が施された後、移動局送受分離部212を介して、移動局アンテナ211から送信される。
【0027】
一方、移動局アンテナ211で受信された信号は、移動局送受分離部212を介して移動局無線受信部(RFRX)215に入力され、そこで、自基地局21が採用する拡散符号・変調周波数に従って逆拡散・復調処理が施され、これにより自基地局21と通信(トラヒックチャネルによる通信)中の各移動局10から送信された信号が取り出される。移動局ベースバンド受信部(BBRX)16は、移動局無線受信部(RFRX)215で取り出された各移動局10の信号からSHO情報を取り出す。
【0028】
なお、基地局21のトラヒックチャネル信号を介した移動局10との通信処理は、既存のCDMA方式セルラ移動通信システムにおける基地局の処理と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0029】
基地局制御装置22は、図示するように、SHO制御部221と、SHO補正値テーブル記憶部222と、インターフェース部223とを有する。インターフェース部223は、各基地局21が各移動局10と送受するトラヒックチャネル信号を、例えば公衆網と送受する。SHO制御部221は、各基地局21から通知された、当該基地局21が通信中の移動局10各々のSHO情報に基づいて、当該各移動局10毎にSHOの必要性を判断し、その実行を行う。SHO補正値テーブル記憶部222には、SHOの実行開始および実行終了のタイミングを決定する基準値(止まり木チャネル信号の受信レベル)を補正するための補正値が、SHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせ毎に記憶されている。
【0030】
次に、基地局制御装置22のSHO制御部221で行われるSHO処理について説明する。
【0031】
図3は、基地局制御装置22のSHO制御部221で行われるSHO処理を説明するためのフロー図である。このフローは、各基地局21と通信中の移動局10毎に実行される。
【0032】
まず、SHO制御部221は、いずれかの基地局21から、当該基地局21と新たに通信を開始した移動局10のSHO情報が送られてくると(ステップS1001)、当該SHO情報に含まれるSHO元セルとSHO先候補セルを認識し(ステップS1002)、SHO補正値テーブル記憶部222から、当該認識したSHO元セルとSHO先候補セルの組み合わせの補正値を読み出す(ステップS1003)。
【0033】
ここで、この補正値について説明する。図4は、SHO補正値テーブル記憶部222に記憶されているSHO補正値テーブルの一例を示す図である。
【0034】
図示するように、SHO補正値テーブルには、自基地局制御装置22に接続された各基地局21がカバーする各セルについて、SHO元セル2221とSHO先候補セル2222の組み合わせ毎に、SHO実行タイミングを判断するための基準値(通常、セル境界付近での止まり木チャネル信号の受信レベルに予め決定される)を補正するための補正値2223が登録される。ここで、この補正値は、移動局10がSHO先候補セルをカバーする基地局21と通信可能な範囲に到達したときにSHOの実行が開始(すなわちSHO先候補セルとの通信開始)され、当該移動局10がSHO元セルをカバーする基地局21通信可能な範囲から逸脱したときにSHOの実行が終了(すなわちSHO元セルとの通信終了)されるように、SHO元セルとSHO先候補セルとの組み合わせ毎に、SHO元セルのセル範囲と当該セルをカバーする基地局の通信可能範囲とのずれ、および、SHO先セルのセル範囲と当該セルをカバーする基地局の通信可能範囲とのずれを考慮して、予め決定される。
【0035】
以下に、このような補正値の決定方法について、その例を2つ説明する。まず、第1の例について、図5を用いて説明する。
【0036】
図5(a)に示すように、基地局211がカバーするセルのセル範囲(境界線C1よりも基地局211側の範囲)が、当該基地局211が実際に通信可能な範囲(境界線H1よりも基地局211側の範囲)よりも狭く、且つ、基地局212がカバーするセルのセル範囲(境界線C2よりも基地局212側の範囲)が、当該基地局212が実際に通信可能な範囲(境界線H2よりも基地局212側の範囲)よりも広い場合を考える。
【0037】
さて、各基地局211、212から送信される止まり木チャネル信号の当該各基地局からの距離による減衰率は、図5(b)に示すように、当該信号の送信電力にかかわらず略同じである。また、各基地局211、212から送信されるトラヒックチャネル信号の当該各基地局からの距離による減衰率も、図5(c)に示すように、当該信号の送信電力にかかわらず略同じである。
【0038】
したがって、図5(a)に示すように、移動局10が、矢印Aの方向に移動した場合(つまり、SHO元セルが基地局211のセルでSHO先候補セルが基地局212のセルである場合)、移動局10が境界線C2上の地点P1に到達したときの基地局212の止まり木チャネル信号の受信レベルS(=基準値)と、基地局212のトラヒックチャネル信号の受信レベルが実際に通信可能なレベルQにまで上がったとき(移動局10が境界線H2上の地点P2に到達したとき)の、基地局212の止まり木チャネル信号の受信レベルSPとの差分(S-SP)は、基地局211および基地局212からの止まり木チャネル信号の受信レベルが互いに等しくなったときのその受信レベルS’と、基地局211および基地局212からのトラヒックチャネル信号の受信レベルが互いに等しくなったときの基地局212の止まり木チャネル信号の受信レベルS”との差分(S’-S”)と略等しい。また、これらの差分は、移動局10が境界線C1上の地点T1に到達したときの基地局211の止まり木チャネル信号の受信レベルS(=基準値)と、基地局211のトラヒックチャネル信号の受信レベルが実際に通信可能なレベルQにまで下がったとき(移動局10が境界線H1上の地点T2に到達したとき)の、基地局211の止まり木チャネル信号の受信レベルSTとの差分(S-ST)の正負を逆にしたものと略等しい。
【0039】
したがって、基地局211のセルをSHO元セルとし、基地局212のセルをSHO先候補セルとする組み合わせにおいて、基地局212の止まり木チャネル信号の受信レベルがS-(S’-S”)のときにSHOを実行開始すれば、基地局212のセルと確実に通信を行うことができ、基地局211の止まり木チャネル信号の受信レベルがS+(S’-S”)のときにSHOを実行終了すれば、基地局212のセルとの通信を終了することができる。
【0040】
そこで、SHO元セルとSHO先候補セルとの組み合わせ各々において、上記の差分(S’-S”)を予め求めておき、SHO補正値テーブルに登録しておく。ここで、当然のことながら、基地局間が地理的に大きく離れていてSHOを行う可能性のないセルの組み合わせについては、上記の補正値を求ておく必要はない。
【0041】
なお、上記の図5に示す例において、基地局212のセルをSHO元セルとし、基地局211のセルをSHO先候補セルとする組み合わせ(つまり、図5(a)において移動局10が矢印Aの逆方向に移動する場合)に対しては、基地局211のセルをSHO元セルとし、基地局212のセルをSHO先候補セルとする組み合わせに対する補正値と正負が逆の値が、補正値として設定されることになる。
【0042】
次に、補正値決定方法の第2の例について、図5を用いて説明する。
【0043】
図5(b)に示したように、各基地局211、212から送信される止まり木チャネル信号の当該各基地局からの距離による減衰率は、当該信号の送信電力にかかわらず略同じである。したがって、この減衰率が既知であれば、各基地局211、212の止まり木チャネル信号の送信電力から、各基地局211、212の止まり木チャネル信号の受信レベルが互いに等しくなるときの受信レベルS’を求めることができる。いま、各基地局211、212の止まり木チャネル信号の送信電力をW1、W2、単位距離あたりの減衰率を-α、基地局211、212間の距離をL、そして、移動局10の基地局211からの距離をxとする。この場合の受信レベルS’は、次式(1)より求まる。
【0044】
図5(c)に示したように、各基地局211、212から送信されるトラヒックチャネル信号の当該各基地局からの距離による減衰率は、当該信号の送信電力にかかわらず略同じである。したがって、この減衰率が既知であれば、各基地局211、212のトラヒックチャネル信号の送信電力から、各基地局211、212のトラヒックチャネル信号の受信レベルが互いに等しくなる地点を求めることができる。いま、各基地局211、212のトラヒックチャネル信号の送信電力をV1、V2、単位距離あたりの減衰率を-β、基地局211、212間の距離をL、そして、移動局10の基地局211からの距離をxとする。この場合、各基地局211、212のトラヒックチャネル信号の受信レベルが同じレベルQになるときの距離xは、次式(2)より求まる。
【0045】
この結果を式(1)に代入するれば、基地局212のトラヒックチャネル信号の受信レベルがQになるときの、基地局212の止まり木チャネル信号の受信レベルS”が求まる。
【0046】
S”=W2-α(L-((V1-V2+βL)/2))
このように、SHO元セルとSHO先候補セルとの組み合わせ各々において、基地局から送信される止まり木チャネル信号の当該基地局からの距離による減衰率と、基地局から送信されるトラヒックチャネル信号の当該基地局からの距離による減衰率と、SHO元セルの基地局およびSHO先候補セルの基地局間の距離とが既知であれば、SHO元セルおよびSHO先候補セルの基地局各々の、止まり木チャネル信号およびトラヒックチャネル信号の送信電力から、補正値として用いる差分(S’-S”)を計算で求めることができる。
【0047】
図3に戻って説明を続ける。
【0048】
SHO制御部221は、SHO情報により認識したSHO元セルとSHO先候補セルの組み合わせに対する補正値(S’-S”)を、SHO補正値テーブル記憶部222から読み出すと(ステップS1003)、当該補正値を用いて、SHO実行開始(SHO先候補セルをカバーする基地局21とのトラヒックチャネル信号による通信開始)タイミングを決定するSHO実行開始基準値と、SHO実行終了(SHO元セルをカバーする基地局21とのトラヒックチャネル信号による通信終了)タイミングを決定するSHO実行終了基準値とを算出する(ステップS1004)、具体的には、予め設定されたSHO実行の開始および終了タイミングを決める基準値S(通常、セル境界付近での止まり木チャネル信号の受信レベルに決定される)から補正値(S’-S”)を減算することで、SHO実行開始基準値を算出する。また、基準値Sに補正値(S’-S”)を加算することでSHO実行終了基準値を算出する。
【0049】
それから、SHO制御部221は、SHO情報に含まれるSHO先候補セルの止まり木チャネル信号の受信レベルが、先程算出したSHO実行開始基準値以上であるか否かを判断する(ステップS1005)。SHO実行開始基準値以上でなければ、ステップS1002に戻り、基地局21から新たに送られてきた当該移動局10のSHO情報に基づいて、以降の処理を繰り返す。一方、SHO実行開始基準値以上ならば、SHOの実行を開始する。つまり、SHO先候補セルをカバーする基地局21に対し、当該移動局10とトラヒックチャネル信号を用いた通信を開始するように、当該基地局21を制御する(ステップS1006)。これにより、当該移動局10は、SHO元セルをカバーする基地局21およびSHO先セルをカバーする基地局21に対して、トラヒックチャネル信号を用いた通信を同時に行うこととなる。なお、SHOの実行開始に失敗した場合は、ステップS1002に戻って、以降の処理を続ける。
【0050】
さて、SHO制御部221は、SHOの実行を開始すると、SHO情報に含まれるSHO元セルの止まり木チャネル信号の受信レベルが、先程算出したSHO実行終了基準値以下になるのを待つ(ステップS1007)。そして、SHO実行終了基準値以下になったならば、SHOの実行を終了する。つまり、SHO元セルの基地局21に対し、当該移動局10とトラヒックチャネル信号を用いた通信を終了するように、当該基地局21を制御する(ステップS1008)。これにより、当該移動局10は、SHO元セルをカバーする基地局21からSHO先セルをカバーする基地局21へ、通信相手を移行させることになる。
【0051】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。
【0052】
本実施形態では、移動局10がSHO先候補セルをカバーする基地局21と通信可能な範囲に到達したときにSHOの実行が開始され、当該移動局10がSHO元セルをカバーする基地局21と通信可能な範囲から逸脱したときにSHOの実行が終了するよう、SHO元セルとSHO先候補セルの組み合わせに応じて、SHO実行開始および実行終了のタイミングを判断するために止まり木チャネル信号の受信レベルと比較する基準値Sを補正している。したがって、SHOの実行開始を試みても、SHO先候補セルをカバーする基地局21との通信を確立できないといった事態や、SHOの実行開始直後に、SHO元セルをカバーする基地局21との通信が切断されてしまうといった事態が発生する可能性を低く押さえることができる。これにより、SHOの実行開始と失敗を繰り返して基地局および網側に不要な負荷がかかり、リソースを浪費するのを効率よく防止することができる。また、SHOの実行開始直後にSHOが終了してしまうことがなくなるので、通信の安定性や送信電力の低減といったSHOによる利点を効率よく享受することができる。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0054】
本実施形態は、上記の第1実施形態において、SHO補正値テーブル記憶部222に記憶されているSHO補正値テーブルの各補正値を、図3に示すフローに従い行ったSHOの実行結果に基づいて修正するようにしたものである。このために、本実施形態では、基地局制御装置22のSHO制御部221において、以下に説明する補正値更新処理をさらに実行するようにしている。
【0055】
図6は、本発明の第2実施形態において、基地局制御装置22のSHO制御部221で行われる補正値更新処理を説明するためのフロー図である。
【0056】
まず、SHO制御部221は、いずれかの基地局21と通信中の移動局10に対し、図3に示すSHO処理フローのステップS1002以降が実施されると(ステップS2001)、その状況を監視する。
【0057】
そして、SHO実行開始(図3のステップS1006)に成功した場合は(ステップS2002でYes:SHO先候補セルとの通信を開始できた場合)、SHO対象のSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせに対応付けて登録されている補正値に所定の調整値h(正の値)を加算し、これを新たな補正値に設定する(ステップ2003)。一方、SHO実行開始に失敗した場合(ステップS2002でNo:SHO先候補セルとの通信を開始できなかった場合)は、SHO対象のSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせに対応付けて登録されている補正値から前記所定の調整値hを減算し、これを新たな補正値に設定する(ステップ2004)。
【0058】
また、SHO実行終了(図3のステップS1008)に成功した場合は(ステップS2005でYes:SHO実行終了指示によりSHO元セルとの通信を終了できた場合)、SHO対象のSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせに対応付けて登録されている補正値から所定の調整値h’(正の値)を減算し、これを新たな補正値に設定する(ステップ2006)。一方、SHO実行終了に失敗した場合(ステップS2005でNo:SHO実行終了指示前にSHO元セルとの通信が断した場合)は、SHO対象のSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせに対応付けて登録されている補正値に前記所定の調整値h’を加算し、これを新たな補正値に設定する(ステップ2007)。なお、ここで、調整値hと調整値h’は、同じ値のものを用いてもよいし、あるいは、異なる値のものを用いてもよい。
【0059】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。
【0060】
本実施形態では、SHOの結果に応じて補正値が更新される。したがって、本実施形態によれば、上記の第1実施形態の効果に加えて、例えば、各基地局の通信(トラヒックチャネルによる通信)可能範囲が通信中の移動局10の数等により動的に変化する場合でも、より確実にSHOの実行開始および終了を行うことができる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0062】
上記の第2実施形態では、図3に示すSHO処理フローが実行開始される都度、そのフローに従ったSHOの実行開始および実行終了の結果に基づいて補正値を更新している。これに対し、本実施形態では、SHO補正値テーブル記憶部222に記憶されているSHO補正値テーブルのSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせ毎に、SHO元セルおよびSHO先候補セルを対象とするSHOの実行結果を所定回数分蓄積し、その内容(成功回数と失敗回数の比率)に応じて、当該組み合わせに対する補正値を更新するようにしている。
【0063】
図7は、本発明の第3実施形態において、基地局制御装置22のSHO制御部221で行われる補正値更新処理を説明するためのフロー図である。
【0064】
まず、SHO制御部221は、いずれかの基地局21と通信中の移動局10に対して図3に示すSHO処理フローのステップS1002以降が実施されると(ステップS3001)、SHOの実行開始(図3のステップS1006)および実行終了(図3のステップS1008)の結果に基づいて、SHO補正値テーブル記憶部222にSHO補正値テーブルと共に記憶されている実績テーブルを更新する(ステップS3002)。
【0065】
図8は、SHO補正値テーブル記憶部222に記憶されている実績テーブルの一例を示す図である。図示するように、実績テーブルには、自基地局制御装置22に接続された各基地局21がカバーする各セルについて、SHO元セル2221とSHO先候補セル2222の組み合わせ毎に、当該組み合わせに対するSHOの実施回数2225と、SHO実行の開始成功数2226と、SHO実行の終了成功数2227とが登録される。
【0066】
例えば、SHO元セルがセル1であり、SHO先候補セルをセル2とするSHOが実行された場合、その組み合わせに対応する実施回数2225を1つインクリメントする。また、SHOの実行開始に成功したならば開始成功数2226を1つインクリメントし、SHOの実行終了に成功したならば終了成功数2227を1つインクリメントする。
【0067】
次に、SHO制御部221は、実績テーブルを調べ、実施回数2225が所定数以上となったSHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせがあるか否かを調べる(ステップS3003)。そのような組み合わせが存在する場合、その組み合わせに対応付けて、SHO補正値テーブルに記録されている補正値を更新する(ステップS3004)。具体的には、所定の調整値h(>0)に、実施回数2225に対する開始成功数2226の比率に応じた値δを乗算した値δhを求めると共に、所定の調整値h’(>0)に、実施回数2225に対する終了成功数2227の比率に応じた値γを乗算した値γh’を求める。そして、前記組み合わせの補正値とδhとの加算値から、γh’を減算し、その結果得られた値を、前記組み合わせに対する新たな補正値として、SHO補正値テーブルに登録する。なお、ここで、調整値hと調整値h’は、同じ値のものを用いてもよいし、あるいは異なる値のものを用いてもよい。
【0068】
その後、SHO制御部221は、実績テーブルの前記組み合わせに対する実施回数2225、開始成功数2226および終了成功数2227を全てクリアし(ステップS3005)、ステップS3001に戻る。
【0069】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。
【0070】
本実施形態も、上記の第2実施形態と同様、例えば、各基地局の通信(トラヒックチャネル信号による通信)可能範囲が通信中の移動局10の数等により動的に変化する場合でも、より確実にSHOの実行開始および終了を行うことができる。なお、本実施形態では、SHOの実施回数に対する開始成功数の比率、および、SHOの実施回数に対する終了成功数の比率を用いて、補正値を更新するようにしているが、SHOの実施回数に対する開始失敗数の比率、および、SHOの実施回数に対する終了失敗数の比率を用いて、補正値を更新するようにしてもよい。あるいは、開始成功数に対する開始失敗数の比率、および、終了成功数に対する終了失敗数の比率を用いて補正値を更新するようにしても構わない。
【0071】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0072】
上記の第1〜第3実施形態では、SHO補正値テーブル記憶部222に記憶されているSHO補正値テーブルの補正値に基づいてSHOの実行開始および実行終了タイミングを判断するための基準値を補正している。これに対し、本実施形態では、SHOの実行開始および実行終了タイミングを判断するための基準値を補正するのではなく、基地局21の止まり木チャネル信号の送信電力を調整するようにしている。
【0073】
図9は、本発明の第4実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる基地局システム20のブロック図である。ここで、図2に示す第1〜第3実施形態に用いる基地局システム20と同じ機能を有するものには、同じ符号を付している。
【0074】
図示するように、本実施形態で用いる基地局システム20が図2に示すものと異なる点は、基地局制御装置22に代えて基地局制御装置22’を設けた点である。
【0075】
基地局制御装置22’において、SHO制御部221’は、既存のCDMA方式セルラ移動通信システムにおけるSHO処理と同じ処理を実施する。すなわち、いずれかの基地局21から移動局10のSHO情報が送られてくる都度、当該SHO情報に含まれるSHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルとSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルとを調べる。SHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルが予め設定された基準値以上になったならば、SHOを実行開始し、SHO先候補セルをカバーする基地局21に前記移動局10との通信を開始させる。そして、SHOの実行開始後、SHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルが前記基準値以下になったならば、SHOを実行終了し、SHO元セルをカバーする基地局21に前記移動局10との通信を終了させる。
【0076】
止まり木チャネル電力制御部224は、SHO制御部221’で実施されたSHOの実行結果に基づいて、基地局21から送信される止まり木チャネル信号の送信電力を制御する。
【0077】
次に、基地局制御装置22’の止まり木チャネル電力制御部224で行われる止まり木チャネル電力制御処理について説明する。
【0078】
図10は、基地局制御装置22’の止まり木チャネル電力制御部224で行われる止まり木チャネル電力制御処理を説明するためのフロー図である。
【0079】
まず、止まり木チャネル電力制御部224は、SHO制御部221’において、いずれかの基地局21と通信中の移動局10に対しSHO処理が実施されると(ステップS4001)、その状況を監視する。
【0080】
そして、SHO実行開始に成功した場合(ステップS4002でYes:SHO先候補セルとの通信を開始できた場合)は、SHO先候補セルをカバーする基地局21に対し、止まり木チャネル信号の送信電力を所定量増加させるように制御する(ステップS4003)。一方、SHO実行開始に失敗した場合(ステップS4002でNo:SHO先候補セルとの通信を開始できなかった場合)は、SHO先候補セルをカバーする基地局21に対し、止まり木チャネル信号の送信電力を所定量減少させるように制御する(ステップS4004)。
【0081】
また、SHO実行終了に成功した場合は(ステップS4005でYes:SHO実行終了指示によりSHO元セルとの通信を終了できた場合)、SHO元セルをカバーする基地局21に対し、止まり木チャネル信号の送信電力を所定量増加させるように制御する(ステップS4006)。一方、SHO実行終了に失敗した場合(ステップS4005でNo:SHO実行終了指示前にSHO元セルとの通信が断した場合)は、SHO元セルをカバーする基地局21に対し、止まり木チャネル信号の送信電力を所定量減少させるように制御する(ステップS4007)。
【0082】
以上、本発明の第4実施形態について説明した。
【0083】
本実施形態では、SHOの結果に応じて、基地局21がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が通信可能な範囲とが一致するように、当該基地局21の止まり木チャネル信号の送信電力が調整される。したがって、SHOの実行開始を試みても、SHO先候補セルをカバーする基地局21との通信を確立できないといった事態や、SHOの実行開始直後に、SHO元セルをカバーする基地局21との通信が切断されてしまうといった事態が発生する可能性を低く押さえることができる。これにより、SHOの実行開始と失敗を繰り返して基地局および網側に不要な負荷がかかり、リソースを浪費するのを効率よく防止することができる。また、SHOの実行開始直後にSHOが終了してしまうことがなくなるので、通信の安定性や送信電力の低減といったSHOによる利点を効率よく享受することができる。加えて、本実施形態によれば、SHOの結果に応じて止まり木チャネル信号の送信電力が調整されるので、例えば、各基地局の通信(トラヒックチャネル信号による通信)可能範囲が通信中の移動局10の数等により動的に変化する場合でも、確実にSHOの実行開始および終了を行うことができる。
【0084】
なお、本実施形態では、SHO制御部221’でSHO処理が実施される都度、そのSHOの結果に応じて止まり木チャネル信号の送信電力を調整している。しかしながら、上記の第3実施形態と同様に、SHO元セルおよびSHO先候補セルの組み合わせ毎に、SHO元セルおよびSHO先候補セルを対象とするSHOの実行結果を所定回数分蓄積し、その内容(成功回数と失敗回数の比率)に応じて、SHO元セルおよびSHO先候補セルをカバーする各基地局21の止まり木チャネル信号の送信電力を調整するようにしてもよい。
【0085】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0086】
上記の第1〜第3実施形態は、SHO処理を基地局システム20側の主導で行うようにしている。これに対し、本実施形態では、SHO処理を移動局10側の主導で行うようにしている。
【0087】
図11は、本発明の第5実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる移動局10’のブロック図である。
【0088】
この移動局10’が図1に示す第1〜第3実施形態の移動局10と異なる点は、SHO制御部18と補正値記憶部19とが設けられている点、および、SHO候補選択部17は、自移動局10が通信(トラヒックチャネル信号による通信)中のセル(SHO元セル)の止まり木チャネル信号受信レベルのみを移動局ベースバンド送信部14に通知し、これを受けて、移動局ベースバンド送信部14は、SHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルのみを含むSHO情報を生成するようにした点である。
【0089】
移動局10’において、SHO制御部18は、自移動局10が通信中の基地局21を介して、基地局制御装置22から通知された、当該基地局21のセルをSHO元セルとするSHO先候補セルとの複数の組み合わせに対する補正値を、補正値記憶部19に記憶する。そして、SHO候補選択部17において、SHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルと、SHO元セル以外のセルであって計測値が最も高く且つ所定値以上のセル(SHO先候補セル)の止まり木チャネル信号受信レベルとが抽出されると、図12に示すフローを実行する。
【0090】
すなわち、SHO制御部18は、補正値記憶部19から、SHO候補セル選択部17で抽出されたSHO元セルとSHO先候補セルの組み合わせの補正値を読み出す(ステップS5001)。そして、当該補正値を用いて、SHO実行開始(SHO先候補セルとのトラヒックチャネル信号による通信開始)タイミングを決定するSHO実行開始基準値と、SHO実行終了(SHO元セルとのトラヒックチャネル信号による通信終了)タイミングを決定するSHO実行終了基準値とを算出する(ステップS5002)。
【0091】
それから、SHO制御部18は、SHO候補セル選択部17で抽出されたSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルが、先程算出したSHO実行開始基準値以上であるか否かを判断する(ステップS5003)。SHO実行開始基準値以上でなければ、ステップS5001に戻り、SHO候補選択部17において、新たに抽出されたSHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルとSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルに対し、上記の処理を行う。一方、SHO実行開始基準値以上ならば、SHOの実行を開始する。つまり、SHO先候補セルをカバーする基地局21とトラヒックチャネル信号を用いた通信を開始するように、移動局10’を制御する(ステップS5004)。これにより、当該移動局10’は、SHO元セルをカバーする基地局21およびSHO先セルをカバーする基地局21に対して、トラヒックチャネル信号を用いた通信を同時に行うこととなる。なお、SHOの実行開始に失敗した場合は、ステップS5001に戻り、SHO候補選択部17において、新たに抽出されたSHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルとSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルに対し、上記の処理を行う。また、SHOの実行開始の結果(成功か失敗か)は、そのSHOの対象となるSHO元セルおよびSHO候補先セルの組み合わせを特定する情報と共に、移動局ベースバンド送信部14、移動局無線送信部13等を介して、通信中の基地局(SHO元セルをカバーする基地局)21に通知される。
【0092】
さて、SHO制御部18は、SHOの実行を開始すると、SHO候補選択部17において、新たに抽出されたSHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルが、先程算出したSHO実行終了基準値以下になるのを待つ(ステップS5005)。そして、SHO実行終了基準値以下になったならば、SHOの実行を終了する。つまり、SHO元セルをカバーする基地局21に対し、トラヒックチャネル信号を用いた通信を終了するように、移動局10’を制御する(ステップS5006)。これにより、移動局10’は、SHO元セルをカバーする基地局21からSHO先セルをカバーする基地局21へ、通信相手を移行させることになる。なお、SHOの実行終了前に、SHO元セルをカバーする基地局21との通信が断した場合は、ステップS5001に戻り、SHO候補選択部17において、新たに抽出されたSHO元セルの止まり木チャネル信号受信レベルとSHO先候補セルの止まり木チャネル信号受信レベルに対し、上記の処理を行う。また、SHOの実行終了の結果(成功か失敗か)は、そのSHOの対象となるSHO元セルおよびSHO候補先セルの組み合わせを特定する情報と共に、移動局ベースバンド送信部14、移動局無線送信部13等を介して、通信中の基地局(SHO先候補セルをカバーする基地局)21に通知される。
【0093】
なお、本実施形態では、基地局制御装置22において、図3に示すフローは実施されない。その代わりに、基地局制御装置22のSHO制御部221は、図13に示すフローを実施する。
【0094】
すなわち、SHO制御部221は、いずれかの基地局21を介して移動局10’からSHO情報が送られてくると(ステップS6001)、当該SHO情報に含まれるSHO元セルとの組み合わせの補正値を、SHO補正値テーブル記憶部222から全て読み出す(ステップS6002)。そして、読み出した各組み合わせの補正値を含む情報を、当該移動局10’と通信中の基地局21を介して、当該移動局10’に送信する(ステップS6003)。
【0095】
また、本実施形態において、図6に示すフローを実施する場合は、ステップS2001において、いずれかの基地局21を介して移動局10’からSHO実行開始あるいは実行終了の結果が送られてくる都度、ステップS2002以降の処理を行うようにすればよい。同様に、図7に示すフローを実施する場合は、ステップS3001において、いずれかの基地局21を介して移動局10’からSHO実行開始あるいは実行終了の結果が送られてくる都度、ステップS3002以降の処理を行うようにすればよい。
【0096】
以上、本発明の第5実施形態について説明した。
【0097】
なお、本実施形態では、上記の第1〜第4実施形態において基地局システム20側の主導で行われているSHO処理を、移動局10’側の主導で行うようにしているが、当然のことながら、上記の第5実施形態において基地局システム20側の主導で行われているSHO処理を、移動局10’側の主導で行うようにすることもできる。この場合、基地局制御装置22’のSHO制御部221’は不要である。また、基地局制御装置22’の止まり木チャネル電力制御部224は、いずれかの基地局21を介して送られてきたSHOの実行開始あるいは実行終了の結果に基づいて、図10に示すステップS4002以降の処理を行えばよい。
【0098】
以上、本発明の各実施形態について説明した。
【0099】
なお、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0100】
例えば、上記の各実施形態では、セル−セル間のSHOについて説明したが、本発明は、セル−セクタ間やセクタ−セクタ間のSHOについても同様に適用できる。この場合、上記の第1〜第3、第5実施形態における補正値は、SHO元セルあるいはSHO元セクタとSHO先候補セルあるいはSHO先候補セクタとの組み合わせ毎に用意されることとなる。また、上記の第4実施形態における止まり木チャネル信号の送信電力制御は、SHOの実行開始の結果に基づいて、SHO先候補セルあるいはSHO先候補セクタの範囲を決定する止まり木チャネル毎に行われ、また、SHOの実行終了の結果に基づいて、SHO元セルあるいはSHO元セクタの範囲を決定する止まり木チャネル毎に行われることになる。
【0101】
また、上記の第1〜第3、第5実施形態では、SHOの実行開始および実行終了のタイミングを判断するための基準値を補正するための補正値を、SHO元セルとSHO先候補セルの組み合わせ毎に用意する場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。
【0102】
例えば、各セル毎に、SHOの実行開始タイミングを判断するための基準値を補正するための第1の補正値と、SHOの実行終了タイミングを判断するための基準値を補正するための第2の補正値とを用意するようにしてもよい。そして、SHO処理時において、SHO実行開始タイミングをSHO先候補セルの第1の補正値により補正された基準値を用いて判断し、SHO実行終了タイミングをSHO元セルの第2の補正値により補正された基準値を用いて判断するようにしてもよい。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、セルあるいはセクタ範囲と通信可能な範囲とにずれがある場合でも、より確実にハンドオーバを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる移動局10のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる基地局システム20のブロック図である。
【図3】図2に示す基地局制御装置22のSHO制御部221で行われるSHO処理を説明するためのフロー図である。
【図4】図2に示すSHO補正値テーブル記憶部222に記憶されているSHO補正値テーブルの一例を示す図である。
【図5】SHO補正値テーブルに登録する補正地の決定方法の一例を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態において、図2に示す基地局制御装置22のSHO制御部221で行われる補正値更新処理を説明するためのフロー図である。
【図7】本発明の第3実施形態において、図2に示す基地局制御装置22のSHO制御部221で行われる補正値更新処理を説明するためのフロー図である。
【図8】本発明の第3実施形態において、図2に示すSHO補正値テーブル記憶部222に記憶されている実績テーブルの一例を示す図である。
【図9】本発明の第4実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる基地局システム20のブロック図である。
【図10】図9に示す基地局制御装置22’の止まり木チャネル電力制御部224で行われる止まり木チャネル電力制御処理を説明するためのフロー図である。
【図11】本発明の第5実施形態が適用されたセルラ移動通信システムに用いる移動局10’のブロック図である。
【図12】図11に示す移動局10’のSHO制御部18で行われるSHO処理を説明するためのフロー図である。
【図13】本発明の第5実施形態において、基地局制御装置22のSHO制御部221で行われる処理を説明するためのフロー図である。
【図14】従来のSHOの概要を説明するための図である。
【図15】基地局がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が実際に通信可能な範囲とにずれが生じている状態で、従来のSHOを実行した場合の問題を説明するための図である。
【図16】基地局がカバーするセルのセル範囲と当該基地局が実際に通信可能な範囲とにずれが生じている状態で、従来のSHOを実行した場合の問題を説明するための図である。
【符号の説明】
10,10’…移動局、11…移動局アンテナ
12…移動局送受分離部、13…移動局無線送信部
14…移動局ベースバンド送信部、15…移動局無線部受信部
16…移動局ベースバンド受信部、17…SHO候補セル選択部
18,221,221’…SHO制御部、19…補正値記憶部
20…基地局システム、21…基地局、22,22’…基地局制御装置
211…基地局アンテナ、212…基地局送受分離部
213…基地局無線受信部、214…基地局ベースバンド受信部
215…基地局無線送信部、216…基地局ベースバンド受信部
222…SHO補正値テーブル記憶部
223…インタフェース部、224…止まり木チャネル電力制御部
Claims (8)
- セル(あるいはセクタ)の範囲を決定する止まり木チャネル信号の移動局での受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する、移動体通信システムにおけるハンドオーバの制御方法であって、
予め、ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に、補正値を用意し、
実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバが対象とする元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせを認識し、当該認識した組み合わせに対して予め用意しておいた補正値を用いて、前記基準値を補正し、当該補正された基準値を用いて、当該ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断すること
を特徴とするハンドオーバの制御方法。 - 請求項1記載のハンドオーバの制御方法であって、
前記補正値は、ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に、当該元セル(あるいは元セクタ)および当該先セル(あるいは先セクタ)の止まり木チャネルの受信レベルが等しくなる地点でのその受信レベルと、当該元セル(あるいは元セクタ)および当該先セル(あるいは先セクタ)のトラヒックチャネルの受信レベルが等しくなる地点での、当該元セル(あるいは元セクタ)あるいは当該先セル(あるいは先セクタ)の止まり木チャネルの受信レベルと、の差分に応じて決定されること
を特徴とするハンドオーバの制御方法。 - 請求項1記載のハンドオーバの制御方法であって、
前記補正値は、ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に、当該元セル(あるいは元セクタ)をカバーする基地局および当該先セル(あるいは先セクタ)をカバーする基地局の止まり木チャネル送信レベルの差分と、当該元セル(あるいは元セクタ)をカバーする基地局および当該先セル(あるいは先セクタ)をカバーする基地局のトラヒックチャネル送信レベルの差分とに応じて、決定されること
を特徴とするハンドオーバの制御方法。 - セル(あるいはセクタ)の範囲を決定する止まり木チャネル信号の移動局での受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する、移動体通信システムにおけるハンドオーバの制御方法であって、
ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ各々について、前記基準値を使用してそのタイミングを判断した場合における実行結果(成功か失敗か)を少なくとも1回分蓄積し、その蓄積された結果に応じて前記基準値を補正し、当該補正された基準値を、当該組み合わせに対して新たにハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する際に用いる新たな基準値に設定すること
を特徴とするハンドオーバの制御方法。 - セル(あるいはセクタ)の範囲を決定する止まり木チャネル信号の移動局での受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する基地局制御装置であって、
ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に補正値が記述されたテーブルと、
移動局より、当該移動局に対して実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)を入手する入手手段と、
前記入手手段で入手した元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせに対して前記テーブルに記述されている補正値を用いて、前記基準値を補正する補正手段と、
前記補正手段で補正された基準値を用いて、当該移動局に対して実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する実行タイミング判断手段と、を有すること
を特徴とする基地局制御装置。 - セル(あるいはセクタ)の範囲を決定する止まり木チャネル信号の移動局での受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する基地局制御装置であって、
移動局より、当該移動局に対して実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)を入手する入手手段と、
前記基準値を用いて、前記移動局に対するハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する実行タイミング判断手段と、
前記入手手段で入手した元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせに対し、前記実行タイミング判断手段で判断されたタイミングに従ってハンドオーバの実行開始あるいは実行終了を試みた場合における実行結果(成功か失敗か)を、少なくとも1回分蓄積し、その蓄積された結果に応じて前記基準値を補正し、当該補正された基準値を、前記実行タイミング判断手段にて当該組み合わせに対して新たにハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する際に用いる新たな基準値に設定する補正手段と、を有すること
を特徴とする基地局制御装置。 - セル(あるいはセクタ)の範囲を決定する止まり木チャネル信号の受信レベルを基準値と比較することで、ハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する、移動体端末であって、
ハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせ毎に補正値が記述されたテーブルと、
止まり木チャネルの受信レベルに基づいて、実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバの元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)を認識する認識手段と、
前記認識手段で認識した元セル(あるいは元セクタ)および先セル(あるいは先セクタ)の組み合わせに対して前記テーブルに記述されている補正値を用いて、前記基準値を補正する補正手段と、
前記補正手段で補正された基準値を用いて、前記実行開始あるいは実行終了されようとしているハンドオーバの実行開始あるいは実行終了のタイミングを判断する実行タイミング判断手段と、を有すること
を特徴とする移動体端末。 - 請求項7記載の移動体端末であって、
前記実行タイミング判断手段で判断されたタイミングに従ってハンドオーバの実行開始あるいは実行終了を試みた場合における実行結果(成功か失敗か)を、当該移動体端末が通信中の基地局に通知する通知手段をさらに有すること
を特徴とする移動体端末。
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