以下本発明の望ましい実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は本発明を適用可能なWDM伝送システムのブロック図である。互いに異なる波長が設定される複数の光送信機2(#1,#2,・・・,#n)からそれぞれ出力された信号光は、光マルチプレクサ4で加え合わされて光伝送路6に送出される。光伝送路6の途中には、例えばEDFAを備えてなる複数の光中継機8が設けられている。
多中継伝送されたWDM信号光は、受信側でまず光分配機10で多重数に対応したチャネルに分配される。分配された各光は、波長選択光フィルタ12(#1,#2,・・・,#n)に供給される。そして、選択された信号光がそれぞれ光受信機14(#1,#2,・・・,#n)によって受信される。
図2は図1のシステムに適用可能な本発明の光送信機の基本構成を示すブロック図である。この光送信機は、例えばLD及びその駆動回路を含む送信光源16と、光源16からの光を通過させるバンドパスフィルタ18と、バンドパスフィルタ18を通過した光を少なくとも2つの分岐光に分岐する光カプラ20と、分岐光のうちの1つをその強度に応じたレベルを有する電気信号に変換する受光器22とを備えている。
受光器22としては例えばフォトダイオードが用いられる。光カプラ20で分岐された他の1つの分岐光は図示しない光伝送路に送出される。
受光器22からの電気信号は増幅回路24で増幅されて制御回路26に供給される。制御回路26は、光カプラ20における分岐光の強度が一定になるように送信光源16の波長を制御する。
バンドパスフィルタ18は、例えば、透過率と波長の関係において狭帯域な特性を有しており、この特性を維持するために、バンドパスフィルタ18の温度を一定に保つための温度制御回路28が設けられている。
バンドパスフィルタ18としては、誘電体膜を多層に積層した干渉フィルタやグレーティングを用いたバルク型或いは導波路型のフィルタを用いることができる。干渉フィルタの経年劣化は0.1nm以下であり、前述の波長間隔1nm程度のWDMを行うのに十分な安定度を得ることができる。尚、バンドパスフィルタ18について温度制御を行わなくても所要の安定性が得られる場合には、温度制御回路28は不要である。
この実施例では、波長基準としてバンドパスフィルタ18を用いているので、この光送信機を複数用いてWDMを行う場合に、送信光源16の波長が大きく変動したとしてもそれによる他チャネルの信号光への影響が回避される。つまり、バンドパスフィルタ18が波長基準として機能する他保護フィルタの役目をも果たすのである。
従って、この光送信機の立ち上げ(コールドスタート)に際しては、光スイッチ等を用いた信号光の遮断や他チャネルとの制御の同期を取ることが不要である。
図3は光送信機の第1実施例を示すブロック図である。この実施例では、送信光源としてレーザダイオード30が用いられている。レーザダイオード30から出力された光は、バンドパスフィルタ18を通ってビームスプリッタ32で分岐される。分岐光の一方は図示しない光伝送路に送出され、分岐光の他方は受光器22に供給される。
この実施例では、受光器22からの電気信号を受けて分岐光の強度が一定になるように光源の波長を制御する制御手段は、低周波信号を出力する発振器34と低周波信号でレーザダイオード30をわずかに周波数変調する手段と、発振器34からの低周波信号及び受光器22からの電気信号を受けてこの電気信号に含まれる低周波成分を検出する同期検波手段とを含んでいる。そして、レーザダイオード30の波長はバンドパスフィルタ18の特性におけるピークを与える波長に一致するように制御が行われる。具体的には次の通りである。
発振器34からの低周波信号は、LD駆動回路36及び同期検波回路38に供給される。LD駆動回路36は、発振器34からの低周波信号に基づいてレーザダイオード30を小さい変調度で周波数変調する。
同期検波回路38には、発振器34からの低周波信号からの他に、増幅器24で増幅された受光器22からの電気信号が供給される。同期検波回路38の出力信号は、ローパスフィルタ40を通ってPIDコントローラ42に供給される。
以下の説明では、発振器34から同期検波回路38に供給される信号を「低周波信号」と称し、増幅器24から同期検波回路38に供給される信号を「電気信号」と称する。同期検波回路38は、低周波信号と電気信号の位相差を検出する。従って、この位相差はローパスフィルタ40から出力されるDC信号に反映されることとなる。そして、このDC信号に基づいて、PIDコントローラ42が比例・積分・微分制御の原理に基づいて、レーザダイオード30の発振波長を制御して、これによりレーザダイオード30の発振波長がバンドパスフィルタ18の特性におけるピークを与える波長に一致するように制御される。
図4により同期検波の原理を説明する。図4の(A)はバンドパスフィルタ18における透過率と波長の関係を表している。符号44はバンドパスフィルタ18の特性曲線を示す。
レーザダイオード30の出力光の波長が特性曲線44におけるピーク波長よりも低い波長であるときに、符号46Aで示されるような低周波信号に基づいてレーザダイオード30が周波数変調されると、バンドパスフィルタ18の出力光は符号48Aで示されるように低周波信号と同相で強度変調される。
一方、レーザダイオード30の出力光の波長が特性曲線44におけるピーク波長よりも大きい波長であるときに符号46Cで示されるような低周波信号によってレーザダイオード30が周波数変調されると、バンドパスフィルタ18の出力光は符号48Cで示されるように低周波信号と逆相で強度変調されることになる。
レーザダイオード30の出力光の波長が特性曲線44におけるピーク波長に一致しているときに低周波信号によってレーザダイオード30を周波数変調したとしても、バンドパスフィルタ18の出力光には低周波信号の成分が生じない。即ち、この場合には、バンドパスフィルタ18の出力光は符号48Bで示されるように低周波信号の周波数の倍の周波数によって強度変調されることになる。
従って、同期検波回路38によって分岐光に含まれる低周波信号の周波数成分を抽出することによって、レーザダイオード30の出力光についての周波数弁別(波長弁別)を行うことができる。
図4の(B)に誤差電圧(ローパスフィルタ40からのDC信号のレベル)とピーク波長からの離上波長との関係を示す。前述の原理に従って、バンドパスフィルタ18の特性曲線44について微分した特性(符号50)が得られていることがわかる。レーザダイオード30の出力光の波長がピーク波長よりも大きい場合には誤差電圧は正となり、ピーク波長よりも小さい場合には誤差電圧は負となり、ピーク波長に一致しているときには誤差電圧は0となる。従って、微分特性の比例領域52を用いてBID制御を行うことによって、レーザダイオード30の出力光の波長をバンドパスフィルタ18の特性曲線のピーク波長に一致させることができる。
本発明の光送信機の優位性を説明するために、図5に従来の光送信機のブロック図を示す。全図を通して実質的に同一の部分については同一の符号が付されている。
この従来例では、波長基準として分子吸収セル54が設けられている。分子吸収セル54は、真空透明容器内にHCNやNH3 等のガスを適当な圧力で封入して構成されており、このセルはレーザダイオード30の出力光の光路上に配置される。
分子吸収セル54は、封入ガスの種類によって定まる固有振動数に相当する波長の光をわずかに吸収するので、ちょうど図4の(A)の特性曲線と逆の形状をなす特性曲線が得られる。
従って、前述した同期検波の原理に従ってレーザダイオード30の出力光の波長を分子吸収セル54における吸収波長に一致させることができる。
しかし、この従来例では、例えばこの光送信機のコールドスタートに際してや制御回路の故障に際してレーザダイオード30の出力光の波長が大きく変動したときに、レーザダイオード30の出力光の光伝送路への供給を遮断する手段が設けられていないので、この光送信機をWDM伝送システムに適用したときに他チャネルへの影響を回避することができない。
これに対して本発明の光送信機では、波長基準としてバンドパスフィルタ、特に図3の実施例では狭帯域のバンドパスフィルタを用いているので、光源の波長が大きく変動したとしても、この光はバンドパスフィルタを透過することがなく、従って、光送信機がWDM伝送システムに適用されている場合に他チャネルの信号への影響がほとんどない。
ところで、幹線系に適用される光送信機においては、強度変調時の波長変動を抑圧して高速伝送に対応するため、外部変調が行われることが一般的である。外部変調器としては、基板材料としてニオブ酸リチウム(LiNbO3 )を用いたマッハツェンダ型光変調器が実用化されている。
この種の光変調器においては、光変調器に供給するDCバイアスに低周波信号を重畳して光出力を一部分岐して受光し、同期検波により光変調器の動作点を安定化させる制御(ABC;Automatic Bias Control)が行われることがある。
また、光送信機においては、光出力を安定化するための制御(APC;Automatic Power Control )が行われる。尚、前述した波長の安定化の制御はAFC(Automatic Frequency Control )と称される。
以下、図6により、ABC,APC及びAFCが行われている外部変調方式の光送信機の実施例を説明する。図6は本発明の光送信機の第2実施例を示すブロック図である。
これまでの実施例で送信光源(レーザダイオード)がその駆動回路によって直接変調されているのに対して、この実施例では、レーザダイオード30は一定強度の光を出力し、この出力光が光変調器56によって強度変調される。光変調器56は例えばLiNbO3 を導波路基板材料としたマッハツェンダ型光変調器である。光変調器56には伝送データに基づく変調信号と動作点制御用のバイアス電圧が供給される。光変調器56からの強度変調光は、バンドパスフィルタ18を通って光カプラ20で分岐され、分岐光の一方は図示しない光伝送路に送出され、他方は受光器22によって電気信号に変換される。変調信号は変調回路66から供給される。
受光器22からの電気信号は、増幅回路24で増幅されて、ABC制御回路60、LD駆動回路36及び波長制御回路62に供給される。
ABC制御回路60はABCを行うためのもので、その出力信号に基づいてLN駆動回路58が光変調器56に制御されたバイアス電圧を供給する。
波長制御回路62はAFCのためのものであり、同期検波回路、ローパスフィルタ及びPIDコントローラ等がこの中に含まれる。
LD駆動回路36は、波長制御回路62から与えられる信号に基づいてレーザダイオード30のバイアス電流を制御する。この例では、増幅回路24で増幅された受光器22からの電気信号もLD駆動回路36に直接供給され、APCが成されるようになっている。
ABC及びAPCでは同期検波が行われているので、同期検波のための回路を共通化することができる。例えば、光カプラ、受光器及び増幅回路を共通化し、同期検波で用いる低周波信号の周波数をABCとAFCとで異ならせておくことにより、両方の制御を独立に行うことができる。
尚、この実施例では、タイミング制御回路64を用いて、ABC,AFC及びAPCを時分割制御するようにし、低周波発振器をも共通化するようにしている。
図7に時分割制御のタイミングチャートの例を示す。この実施例では、タイミング制御回路64による切り換えによって、AFC,ABC及びAPCをこの順に順次切り換えて、制御のための回路を共通化するようにしている。各制御のタイムシーケンスは例えば1乃至10秒である。
続いて本発明の光送信システムのいくつかの実施例を説明する。図8は本発明の光送信システムの第1実施例を示すブロック図である。
この光送信システムは、信号光を出力する本発明の光送信機を複数有しており、各光送信機からの信号光は光マルチプレクサによって加え合わされて1つ又はそれ以上の光伝送路に送出される。この実施例では、光マルチプレクサとして光スターカプラ70が用いられている。
各光送信機には、それぞれ、波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn の信号光を出力する送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)が備えられている。各送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)内には、それぞれ、直接変調されるレーザダイオード或いは一定強度の光を出力するレーザダイオード及び外部変調器の組み合わせが収容されている。
また、各光送信機には、それぞれ、バンドパスフィルタ18(#1,#2,・・・,#n)、光カプラ20(#1,#2,・・・,#n)、受光器22(#1,#2,・・・,#n)、増幅回路24(#1,#2,・・・,#n)及び温度制御回路28(#1,#2,・・・,#n)が備えられている。
各受光器からの電気信号が供給される制御回路72(#1,#2,・・・,#n)は各送信光源ユニットのAFCを行うためのものであり、送信光源ユニットに外部変調器が含まれる場合には、各制御回路72(#1,#2,・・・,#n)内にはABCのための回路も含まれる。また、APCの機能を成すように各制御回路が構成されていてもよい。
この光送信システムにおいては、各送信光源ユニットに異なる波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn が割り当てられているので、このシステムはそのままWDMに適用可能である。
ところで、図8の実施例ではバンドパスフィルタが各光送信機毎に独立して設けられているが、バンドパスフィルタを波長基準として捉えた場合、基準が独立して複数個ある形態は望ましいものではない。例えば、各バンドパスフィルタの特性に温度依存性がある場合、各フィルタの環境温度が大きくばらつくと波長間隔の維持精度が劣化する可能性がある。
そこで、以下の実施例では、各バンドパスフィルタとして、複数の入力ポート及びこの入力ポートの数に対応する数の出力ポートを有する空間分割型の光フィルタアレイの各フィルタエレメントを用いる。
図9に空間分割型の光フィルタアレイの例を示す。この光フィルタアレイ180は単一の基板SBを有しており、この基板上に、それぞれ波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn の透過中心波長を有するバンドパスフィルタエレメント18(#1,#2,・・・,#n)が形成される。
符号74(#1,#2,・・・,#n)は各フィルタエレメントの入力ポートを示し、符号76(#1,#2,・・・,#n)は各フィルタエレメントの出力ポートを示している。
尚、図6の実施例では、レーザダイオード30からの光について光変調器56により変調した後で変調光がバンドパスフィルタ18を透過するようにしているが、変調による信号光のスペクトラムの広がりが大きい場合には、狭帯域なバンドパスフィルタ18によってスペクトルの側部がカットされ復調に際しての符号誤り率の増大の恐れがあるので、このような場合には、レーザダイオード30からの光にバンドパスフィルタ18を透過させた後光変調器による変調を行ってもよい。
この場合には、図示はしないが、光送信機における各部分の配置は、レーザダイオード30、バンドパスフィルタ18、光変調器56及び光カプラ20の順となる。
空間分割型光フィルタアレイの具体例を図10乃至図13により説明する。図10は光フィルタアレイの第1実施例を示す図である。
この光フィルタアレイは、導波路基板76上に格子定数が異なる複数の導波路型回折格子78(#1,#2,・・・,#n)を形成して構成される。そして、各導波路型回折格子78(#1,#2,・・・,#n)の両端がそれぞれこの光フィルタアレイの入力ポート及び出力ポートを成している。
図11は光フィルタアレイの第2実施例を示す図である。この光フィルタアレイは、複数のV溝80Aを有する基板80と、各V溝80Aに着座する格子定数が異なる複数のファイバグレーティング型光フィルタ82(#1,#2,・・・,#n)とを備えている。
各V溝80Aは、装置の組み立て等を簡略化するために、この例では互いに平行に形成されている。そして、各ファイバグレーティング型光フィルタ82(#1,#2,・・・,#n)の両端がそれぞれこの光フィルタアレイの各入力ポート及び各出力ポートを成している。
図12は光フィルタアレイの第3実施例を示す図である。この光フィルタアレイの各入力ポートは互いに平行に配置された複数の入力側光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)であり、各出力ポートは入力側光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)に対向して互いに平行に配置された複数の出力側光ファイバ86(#1,#2,・・・,#n)である。
そして、各入力ポートと出力ポートとの間に平行光ビームからなる光学パスを形成するために、入力側光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)の励振端の近傍にはそれぞれレンズ88(#1,#2,・・・,#n)が配置され、出力側光ファイバ86(#1,#2,・・・,#n)の励振端の近傍にはレンズ90(#1,#2,・・・,#n)が配置される。
符号92は上述の各光学パスと交錯するように設けられた透明基板を表している。透明基板92は例えば平行ガラス平板である。
透明基板92上には、厚みが各光学パスの配列方向に連続的に変化する干渉膜94が形成されている。干渉膜94としては、例えば、高屈折率層としてのTiO2 と低屈折率層としてのSiO2 とを交互に複数積層して成る誘電体多層膜が用いられる。
干渉膜94の厚みを上述のように連続的に変化させるためには、この干渉膜を例えば蒸着により形成する場合に、透明基板92の一端92A及び他端92Bまでの蒸着源からの距離を異ならせておけばよい。即ち、蒸着装置内に収容される透明基板92を傾斜させておくのである。
干渉膜94の厚みをこのように連続的に変化させているのは、各フィルタアレイにおける透過中心波長を異ならせるためである。
以上のような空間分割型のバンドパスフィルタアレイを用いることによる利点は以下の通りである。
(1)同一基板上に各フィルタエレメントが形成されているので、透過波長の温度変調がある場合にこれを一元的に管理することができ、制御回路が1台で済むとともに安定度が向上する。
(2)図10や図12の例のようにフィルタエレメントの特性を決定する部分が同一基板上に同一の材料で形成されている場合には、透過中心波長に経年変動が生じた場合でも、各フィルタエレメントの変動幅や変動方向は同じような傾向となり、透過中心波長の絶対値が変動したとしても各波長間の相対的な関係(例えば波長間隔)はほぼ一定である。
(3)アレイ化することにより、個別にバンドパスフィルタを作成する場合と比較して、小型化、低コスト化が可能になる。
図13は本発明の光送信システムの第2実施例を示すブロック図である。この実施例は、図8の第1実施例と対比して、各送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)の波長基準として空間分割型のバンドパス光フィルタが用いられている点で特徴付けられる。
またこの実施例では、光フィルタアレイ180が各送信光源ユニット用のフィルタエレメント18(#1,#2,・・・,#n)の他にもう1つのフィルタエレメント18′を有するようにし、これにより絶対波長の安定化を図っている。フィルタエレメント18′は透過中心波長がλABS のバンドパスフィルタである。フィルタエレメント18′の入力ポートには絶対波長基準光源100が接続され、フィルタエレメント18′の出力ポートには光カプラ20′が接続される。
光カプラ20′で分岐された光の一方は光スターカプラを介して図示しない伝送路に送出され、分岐光の他方は受光器22′によって電気信号に変換される。変換された電気信号は増幅器24′で増幅されて制御回路94に供給される。
フィルタエレメント180にはペルチェ素子(電子冷却素子)98が密着して設けられており、このペルチェ素子98は駆動回路96によって駆動される。駆動回路96は制御回路94から供給される信号に基づいて、ペルチェ素子98における熱の吸収及び放出を制御し、これによりフィルタエレメント18′の透過中心波長を絶対波長基準光源100に対してロックすることができる。尚、制御回路94には、各送信光源ユニット用の制御回路72(#1,#2,・・・,#n)と同様同期検波を適用することができる。
高橋らの「イオンアシストによる狭帯域バンドパスフィルタの波長温度安定性」、1994年電子情報通信学会春季大会、C−280によれば、干渉フィルタに用いる基板材料の熱膨張係数を適切に選ぶことにより、透過波長の温度依存性を抑えることができる。従って、フィルタアレイについての厳密な温度制御を行わなくても所要の波長安定性を得ることができる。
逆に、故意に透過波長の温度依存性が大きくなるように熱膨張係数を適切に選ぶことにより、フィルタアレイの温度を変えることで透過波長の制御を行うこともできる。
例えば前述の文献によると、基板材料の線熱膨張係数をほとんど0にした場合、透過中心波長の温度依存性は0.015nm/°Cとなり、±20°Cの温度変化により0.3nmの波長可変が可能になる。この値は、絶対波長基準光フィルタを同調させるために十分な値である。基板材料の潜熱膨張係数をほぼ0にするためには、例えば石英(0.4×10-7)を用いればよい。
図14は光送信システムの第3実施例を示す図である。この実施例では、各送信光源ユニット毎の光カプラでの光分岐を省略し、光スターカプラ70で加え合わされた各送信光源ユニットからの信号光を取り出してこれを受光器22で電気信号に変換している。全ての信号光が合波された後で転出を行っているので、送信光源ユニット毎の個別認識を行う必要がある。この認識は、この実施例では時分割制御回路102により行っている。
時分割制御回路102は、増幅器24で増幅された受光器22からの電気信号を受けて、絶対波長基準の制御を行うためのペルチェ素子駆動回路96と各送信光源ユニット用のレーザダイオード駆動回路104とを時分割で切り換える。
尚、時分割制御を行うのではなく、各送信光源ユニット及び絶対波長基準光源毎に同期検波用の異なる低周波信号を割り当ててもよい。
図13の光フィルタアレイ及びその制御回路は図15に示すように受信側にも適用可能である。図15は光受信システムの第1実施例を示すブロック図である。
図示しない光伝送路から供給された信号光は、光ツリーカプラ106で分配されて、光フィルタアレイ180の各入力ポートに供給される。光フィルタアレイ180の各出力ポートには、それぞれ、λ1 ,λ2 ,・・・,λn の波長の信号光を受信する光受信機108(#1,#2,・・・,#n)が接続される。
また、例えば図13の絶対波長基準光源100からの光を受けるために、フィルタエレメント18′の出力ポートには受光器22′が接続される。
各光受信機108(#1,#2,・・・,#n)は、それぞれ、#1チャネル、#2チャネル、・・・、#nチャネルのデータ及びクロックを出力する。
受光器22′からの信号は増幅器24′で増幅されて制御回路94に供給され、制御回路94の出力信号に基づいてペルチェ駆動回路96がペルチェ素子98を制御する。
この実施例によると、図13の実施例におけるのと同様にして、フィルタエレメント18′の透過中心波長を絶対波長基準光源100(図13参照)の波長に追従させることができるので、各チャネルについて安定な受信動作を行うことができる。尚、この実施例では、絶対波長基準光源100に対応してフィルタエレメント18′を用いているが、フィルタエレメント18′を送信光源ユニットの1つに対応させてもよい。
次に、同期検波によらずに波長の安定化が可能な光送信機の実施例を説明する。この実施例では、波長の安定化を行うために空間分割型の光フィルタアレイが用いられる。
図16は光送信機の第3実施例を示すブロック図である。送信光源ユニット68から出力された信号光は光カプラ110で2分岐され、光フィルタアレイ180の2つの入力ポートに供給される。光フィルタアレイ180の2つのフィルタエレメントのうちの一方は伝送路に接続される主フィルタエレメント112であり、他方は制御用フィルタエレメント114である。
主フィルタエレメント112の透過中心波長は送信光源ユニット68の設定波長λにあり、一方、制御用フィルタエレメント114の透過中心波長はλとはわずかにずれたλ+Δλに設定される。
λΔは各フィルタエレメント112及び114の特性における半値半幅程度に設定される。即ち、送信光源ユニット68からの光が主フィルタエレメント112を最大透過率で透過するときに、制御用フィルタエレメント114を透過するパワーが50%程度になるように設定される。この様子を図17に示す。
図17は図16の光フィルタアレイ180の特性を示す図である。縦軸は透過率を表し、横軸は波長を表している。符号130で表される実線は主フィルタエレメント112の特性を表し、符号132で示される破線は制御用フィルタエレメント114の特性を表している。
符号130で表される特性におけるピーク波長はλであり、符号132で表される特性におけるピーク波長はλ+Δλである。
従って、制御用フィルタエレメント114から出力される光の強度が符号132で表される特性における波長λに対応する安定点SPに一致するような制御を行うことによって、同期検波を行うことなしに主フィルタエレメント112の出力光の波長をλに安定化することができる。
このような制御を行うために、図16の光送信機では制御回路120が設けられている。制御用フィルタエレメント114の出力光はフォトダイオード116で電気信号に変換され、この電気信号は増幅器118で増幅されて制御回路120に供給される。
制御回路120は、増幅器118からの信号レベルを設定基準124と比較する比較回路122と、比較回路122の出力信号を増幅する誤差増幅器126と、誤差増幅器126の出力レベルが0又は一定値になるように送信光源ユニット68を駆動する光源駆動回路128とを含む。
図18は本発明の光送信システムの第4実施例を示すブロック図である。この実施例は、図16の光送信機を複数備え、各光送信機の光フィルタアレイを共通の基板上に形成している点で特徴付けられる。
各送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)から出力された信号光は、それぞれ、光カプラ110(#1,#2,・・・,#n)で分岐され、分岐光の各々は光フィルタアレイ180の入力ポートに供給される。
光フィルタアレイ180は、波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn にそれぞれ透過中心波長を有する主フィルタエレメント112(#1,#2,・・・,#n)と、波長λ1 +Δλ,λ2 +Δλ,・・・,λn +Δλにそれぞれ透過中心波長を有する制御用フィルタエレメント114(#1,#2,・・・,#n)とからなる。
主フィルタエレメント112(#1,#2,・・・,#n)の出力ポートはそれぞれ光スターカプラ70に接続され、光スターカプラの出力側には1つ又は複数の光伝送路が接続される。
また、制御用フィルタエレメント114(#1,#2,・・・,#n)の出力ポートはそれぞれフォトダイオード116(#1,#2,・・・,#n)に接続される。
そして、各チャネルの送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)の波長制御を行うために、図16の光送信機と同様に増幅機118(#1,#2,・・・,#n)と制御回路120(#1,#2,・・・,#n)が設けられている。
また、この実施例では、光フィルタアレイ180における透過中心波長を絶対的に安定化するために、波長λABS に透過中心波長を有する主フィルタエレメント112Aと波長λABS +Δλに透過中心波長を有する制御用フィルタエレメント114Aとが他のフィルタエレメントと一体的に設けられている。
そして、絶対波長基準光源100からの光を光カプラ110′で分岐してそれぞれ主フィルタエレメント112A及び制御用フィルタエレメント114Aに供給し、主フィルタエレメント112Aの出力光は光スターカプラを介して光伝送路に送出し、制御用フィルタエレメント114Aの出力光はフォトダイオード116Aに供給している。
主フィルタエレメント112Aの透過中心波長を絶対波長基準光源100の波長に一致させるために、図14の実施例に準じて、増幅器118A、制御回路120A、ペルチェ素子駆動回路96及びペルチェ素子98が設けられている。
この実施例によると、WDMが適用される光送信システムにおいて、同期検波を用いることなしに波長の安定化を行うことができる。また、波長基準として光フィルタアレイを用いているので、前述したのと同様の効果が生じる。
図19は本発明の光送信機の第4実施例を示すブロック図である。この実施例は、図16の実施例と対比して、光フィルタアレイ180が波長λ+Δλに透過中心波長を有する制御用フィルタエレメント114の他に波長λ−Δλに透過中心波長を有するもう一つの制御用フィルタエレメント114′を有している点で特徴付けられる。
送信光源ユニット68の出力光は光カプラ110′で三分岐され、分岐光の各々は主フィルタエレメント112並びに制御用フィルタエレメント114及び114′に供給される。
制御用フィルタエレメント114の出力光はフォトダイオード116で電気信号に変換され、この電気信号は増幅器118により増幅されて演算回路134に入力される。また、制御用フィルタエレメント114′の出力光はフォトダイオード116′により電気信号に変換され、この電気信号は増幅器118′で増幅されて演算回路134に入力される。そして、演算回路134の出力信号が制御回路120に供給される。
図20に図19の光フィルタアレイの特性を示す。符号130は主フィルタエレメント112の特性を示し、符号132は制御用フィルタエレメント114の特性を示し、符号132′は制御用フィルタエレメント114′の特性を示す。また、符号SPは安定点を示している。
制御用フィルタエレメント114及び114′の透過中心波長と主フィルタエレメント112の透過中心波長の差Δλは、例えば、各フィルタエレメントの半値半幅程度に設定される。即ち、送信光源ユニット68からの光が主フィルタエレメント112を最大透過率で透過するときに、制御用フィルタエレメント114及び114′の透過率が上述の最大透過率の50%程度になるようにされる。
今、送信光源ユニット68の波長が長波長側にわずかに変動すると、制御用フィルタエレメント114の出力は上昇し、一方、制御用フィルタエレメント114′の出力は低下する。また、送信光源ユニット68の波長が短波長側にわずかに変動すると、制御用フィルタエレメント114の出力は低下し、制御用フィルタエレメント114′の出力は上昇する。
このように、制御用フィルタエレメント114の出力と制御用フィルタエレメント114′の出力は相補的な関係にある。このため、このような対称性を考慮すると、制御用フィルタエレメント114及び114′の出力について引算を行い、その演算結果が0になるような制御を行えば、送信光源ユニット68の出力光は主フィルタエレメント112を最大透過率で透過することになる。従って、演算回路134としては二入力に対して引算を実行するようなものが選ばれる。
この実施例によると、送信光源ユニット68の光出力が変動したとしても、制御波長がその影響を受けないという利点がある。即ち、二つの制御用フィルタエレメント114及び114′に入力される光のパワーが変動したとしても、引算の結果、演算回路134の出力が0となる波長が一定になるのである。但し、制御系全体におけるループゲインが変動するので、ループゲインを光出力の変動に耐え得るように設定しておくことが望ましい。
図21は本発明の光送信システムの第5実施例を示すブロック図である。WDMが適用される本実施例では、図19の光送信機が複数用いられている。
図18のシステムに対比した本実施例の特徴点は、図16の光送信機に対比した図19の光送信機の特徴点と同じであるのでその説明については省略する。
図22は同期検波を用いない光受信機の構成例を示すブロック図である。図示しない光伝送路から供給された信号光は、光増幅器136で増幅された後、光カプラ110′で三分岐される。分岐光の各々は、図19の光送信機と同様の光フィルタアレイ180の各フィルタエレメント112,114,114′に入力される。
主フィルタエレメント112の出力光はE/O変換回路140に供給され、ここで伝送データを含む電気信号に変換される。
制御用フィルタエレメント114の出力光は、フォトダイオード116で電気信号に変換され、増幅器118により増幅されて演算回路134に入力される。制御用フィルタエレメント114′の出力光は、フォトダイオード116′で電気信号に変換され、この電気信号は増幅器118′により増幅されて演算回路134に入力される。
そして、演算回路134の出力信号に基づいて制御回路142がペルチェ素子98を制御し、これにより波長の安定化がなされる。
制御回路142は、演算回路134の出力信号を設定基準124からの基準信号と比較する比較回路122と、比較回路122の出力信号を増幅する誤差増幅回路126と、誤差増幅回路126の出力レベルが0又は一定になるようにペルチェ素子98に駆動電流を与える駆動回路138とを含む。
図23は光受信システムの第2実施例を示すブロック図である。この実施例では、図22の光受信機における原理に従って光フィルタアレイ180について波長安定化を行い、この安定化された光フィルタアレイ180を用いてWDM信号光を受信するようにしている。具体的には次の通りである。
この実施例のシステムは、図15のシステムにおける制御回路94が同期検波を用いているのと対比して、制御回路142が同期検波を用いていない(図22参照)点で特徴付けられる。即ち、波長λABS に透過中心波長を有する主フィルタエレメント112Aと波長λABS +Δλに透過中心波長を有する制御用フィルタエレメント114Aと波長λABS −Δλに透過中心波長を有する制御用フィルタエレメント114′Aとを各フィルタエレメント18(#1,#2,・・・,#n)と一体に設けておき、光ツリーカプラ106の分岐光出力を各フィルタエレメントに供給しているのである。
主フィルタエレメント112Aの出力光は絶対波長基準としてこの光受信システムで有効に用いることができる。また、制御用フィルタエレメント114A及び114′Aの出力光を用いて、同期検波を行うことなしに波長の安定化を行うことができる。
以上説明した幾つかの同期検波を用いない装置又はシステムにおいては、光フィルタアレイの構成が複雑になる反面、光源や光フィルタアレイの制御信号が受信特性に影響を与えないという特徴がある。同期検波による場合、制御信号を得るために制御対象に微小な変動を与え、与えた信号の制御対象から得られる信号の位相とを比較するようにしているので、微小変動を与える操作によって送信信号に擾乱が生じることとなり、送信信号に劣化が生じる恐れがある。これに対して、本発明の実施例のように同期検波を用いない場合には、微小変動を与える必要がないため、送信信号に劣化が生じる恐れがない。
従って、このような同期検波を用いない実施例は、光フィルタアレイの各フィルタエレメントが狭帯域バンドパスフィルタである場合に適している。
以上説明した光送信システム及び光受信システムを組み合わせて光通信システムを構築する場合において、光送信システム及び光受信システムの双方に光フィルタアレイが用いられているときには、これらの光フィルタアレイは特性のよく一致したものであることが望ましい。そのためには、例えば、図12に示される光フィルタアレイを製造するときに、同一製造プロセスで作成された光フィルタアレイの母材を切断し、各ピースを送信側及び受信側に適用することで、フィルタアレイの特性を一致させることができる。
ところで、WDM用の光源としては、半導体レーザ(レーザダイオード)、特に単一縦モードで発振する分布帰還型レーザダイオードが通常使用される。このレーザダイオードにおいては、素子内部に形成されたグレーティングの周期で発振波長がほぼ決まるが、製造偏差の問題で、通常、発振波長は同一ロット内で数nm程度、異なるロット間では十数nm程度ばらつく。このため、WDMに適合する複数のレーザダイオードを調達するためには選別作業が必要となり、高価なものとなる。
図24は所望の発振波長を得るのが容易なWDM用光源の基本構成を示す図である。この例では、光フィルタアレイ180は、バンドリジェクション(ノッチ)特性を有する複数の光フィルタエレメント144(#1,#2,・・・,#n)を備えている。
バンドリジェクション特性を有する光フィルタはその反射特性はバンドパス型となる。この例では、各フィルタアレイ144(#1,#2,・・・,#n)はそれぞれ波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn の光を反射させる。
そして、各フィルタエレメント144(#1,#2,・・・,#n)の入力ポートにはそれぞれ利得媒体146(#1,#2,・・・,#n)が光学的に接続されている。利得媒体146(#1,#2,・・・,#n)としては、ARコート(無反射被膜)を施した半導体レーザ(半導体レーザ増幅器)や希土類添加光ファイバを用いることができる。
この構成によると、各フィルタエレメントの反射ピーク波長でレーザ発振を起こすことができるので、所望の波長の光源を容易に得ることができ、波長間隔や絶対波長を一元的に管理することができるようになる。
図25は本発明の光送信システムの第6実施例を示すブロック図である。このシステムは、図21のシステムと対比して、各送信光源ユニット68(#1,#2,・・・,#n)に換えて図24のWDM用光源を用いている点で特徴付けられる。
各フィルタエレメント144(#1,#2,・・・,#n)の出力光はそれぞれ光変調器148(#1,#2,・・・,#n)によって変調された後、光スターカプラ70を介して単一又は複数の図示しない光伝送路へ送出される。
この実施例によると、絶対波長基準光源100を用いて前述の手法により光フィルタアレイ180の波長安定化を行っているので、各光源について波長の管理を行うことが不要であり、光送信システムの構成を簡略化することができる。
図26は本発明の光送信システムの第7実施例を示すブロック図である。この実施例は、図25のシステムと対比して、バンドリジェクション特性を有するフィルタエレメントに換えてバンドパス特性を有するフィルタエレメント18(#1,#2,・・・,#n)を用い、リング型共振器を構成することでレーザ発振を生じさせている点で特徴付けられる。
利得媒体146(#1,#2,・・・,#n)の第1励振端から出力された光は、フィルタアレイ18(#1,#2,・・・,#n)を透過して光カプラ150(#1,#2,・・・,#n)で分岐される。分岐された一方の各光は、それぞれ光アイソレータ152(#1,#2,・・・,#n)を通って各利得媒体146(#1,#2,・・・,#n)のそれぞれの第2励振端に帰還される。
そして、光カプラ150(#1,#2,・・・,#n)で分岐された各光の他方が光変調器148(#1,#2,・・・,#n)でそれぞれ変調されて光スターカプラ70を介して図示しない光伝送路に送出される。
この実施例では、光フィルタアレイ180の各フィルタエレメントがすべてバンドパスフィルタであるので、光フィルタアレイ180の製造が容易である。
図27は本発明の光送信システムの第8実施例を示すブロック図である。このシステムは、図26のシステムと同様に、波長λ1 ,λ2 ,・・・,λn にそれぞれ透過中心波長を有するバンドパスフィルタアレイ18(#1,#2,・・・,#n)を有している。
そして、広帯域に(白色状に)分布して発振するコヒーレント光源154からの光を光スターカプラ156でn分岐し、各分岐光を各フィルタエレメント18(#1,#2,・・・,#n)の入力ポートに供給している。各フィルタアレイの出力ポートから出力された光はそれぞれ光変調器148(#1,#2,・・・,#n)で変調された後、光スターカプラ70を介して単一又は複数の光伝送路へ送出される。
広帯域に分布して発振する光源については、例えば、森他、「LD励起supercontinuumを利用した超広帯域パルス光源」、1993年電子情報通信学会秋季大会B−920、に開示されている。
ところで、光増幅器を使用した伝送システムでは、信号光の波長以外の波長領域にあるASE成分をできるだけ除去することが望ましい。余分なASE成分が付加された状態で信号光が光増幅器に入力されると、ASE成分も増幅され、信号光を増幅するためのポンプ光のエネルギーが無駄になり、増幅率や雑音特性が劣化する。
WDMの場合、図28に示されるように、信号光の波長に対応する波長の光が選択的に透過する光フィルタを用いることで、ASE成分を低減させることができる。同図において符号158は波長軸上に等間隔で並んだ信号光のスペクトラムを表し、符号160はこれらの信号光に対応して透過中心波長が等間隔に並んだ光フィルタの特性を表している。
信号光の波長が等間隔に並ぶ場合には、光フィルタとしてファブリ・ペロー干渉計を用いることができる。また、信号光の波長が不等間隔に並ぶ場合には、グレーティング型フィルタを用いることができる。
このように光フィルタを伝送路の途中等に挿入する場合、送信光源の波長が制御されていることが前提となる。送信光源の相対的な波長間隔が一定に保たれている場合には、光フィルタの透過特性を送信光源の絶対波長の変動に追従させることが望ましい。
そのためには、フィルタ出力を分岐し、その光出力が最大になるような制御を行うとよい。具体的には次の通りである。
図29は光フィルタの追従制御のための構成例を示す図である。符号162は光伝送路の途中に挿入された光増幅器を表している。
光増幅器162の下流側にはファブリ・ペロー干渉計等からなる光フィルタ164が配置される。光フィルタ164の出力光は光カプラ166で分岐され、分岐光の一方は光伝送路に送出される。
分岐光の他方はフォトダイオード168により電気信号に変換され、この電気信号は増幅器170で増幅されて制御回路172に供給される。制御回路172は、供給された信号レベルが最大になるように光フィルタ164を制御する。
この実施例のシステムは、信号光の波長をλ1 ,λ2 ,・・・,λn の間隔が一定である場合に適用されるのが望ましい。即ち、この場合には、全信号光のトータルの光出力が常に最大になるように制御を行うことにより、光フィルタの透過中心波長を信号光の波長に一致させることができるのである。
狭帯域光フィルタアレイとして、誘電体膜干渉フィルタを用いる場合、透過波長の遮断特性はほぼローレンツ関数となる。図30に干渉フィルタの遮断特性を示す。
この図から、光パワーが各波長で同一であることを仮定した場合、波長間隔1nm(1.55μm帯で約125GHz)のとき、隣接波長のクロストーク(漏れ込み)を一例として20dB以下(20dB以下という値は受信品質に影響を与えない所要値)にするためには、透過帯域3dB幅、0.3nmの干渉フィルタ1枚では不足であり、透過帯域3dB幅、0.5nm程度の干渉フィルタを2枚以上重ねて使用すべきであることがわかる。
この光フィルタの所要クロストーク値については、前述した送信側での波長安定化のための光フィルタに当てはまり、また、受信側での波長選択光フィルタにも当てはまる。
誘電体膜を多層に積層した干渉フィルタは、特開平5−281480号公報「波長可変フィルタ及びその製造方法」に示されているように、積層する誘電体膜の厚みを変えることで透過波長を変えることができる。従って、所定の透過波長を再現性よく得るためには、誘電体膜の膜厚を正確に制御することが要求される。
3dB透過波長域が1nm程度以下の狭帯域バンドパスフィルタを得るためには、例えば20層以上の多数の誘電体膜を形成することになり、再現性よく所望の透過波長となる狭帯域フィルタを得ることには困難性が伴う。例えば、透過波長が製造ロット毎に数nm程度ずれてしまうこともある。
ただし、同一基板上の透過波長の面内分布は比較的安定していることが知られている。このため、例えば図31に示されるように、基板920上に形成された誘電体多層膜940の膜厚を連続的に変化させたものでは、製造ロットが異なるフィルタにおいても送信光源の波長域をカバーするような所望の透過波長となる領域が必ず存在する。
そこで、この部分を図31の干渉フィルタの母材から切り出してこれにより図12に示されるような光フィルタアレイを作成することにより、所望特性の光フィルタアレイを歩留りよく得ることができる。
図32は図12の光フィルタアレイの第1の具体例を示す図である。この例では、入力ポートとなる光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)を互いに平行に等間隔で配置し、これらに対向して出力ポートとなる光ファイバ86(#1,#2,・・・,#n)も互いに平行に等間隔で配置している。
図33は図32の光フィルタアレイの特性を示す図である。縦軸は透過中心波長、横軸は各ポートのチャネル数を表している。この例では、各光ファイバを等間隔で配置しているので、透過中心波長はチャネル毎に等間隔となる。
図34は図12の光フィルタアレイの第2の具体例を示す図である。この実施例は、図32の第1の具体例と対比して、入力側の光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)及び出力側の光ファイバ86(#1,#2,・・・,#n)が等間隔で配列されていない点で特徴付けられる。
こうすることにより、光フィルタアレイの透過中心波長を不等間隔にすることができるので、WDMを行うに際して四光波混合の影響を回避することができる(F.Forghieri et al, "Reduction of four-wave-mixing cross talk in WDM systems using unequally spaced channels", OFC/IOOC '93 Technical Digest FC4)。
或いは、WDMにおける信号光の波長間隔よりも十分狭い波長間隔で等間隔の光フィルタアレイを作成し、所望の透過中心波長に対応する入出力ポートのみを選んで使用することで所望の等間隔或いは不等間隔の光フィルタアレイを得ることもできる。
尚、干渉フィルタの製造技術上波長再現性が良好である場合には、図35に示されるように入出力ポートの光ファイバを等間隔に設定し、誘電体多層膜94′の膜厚分布を変化させることで、各フィルタエレメントについて所望の透過中心波長を与えることもできる。図36に図35の光フィルタアレイの特性を示す。
図37は光フィルタアレイの第4実施例を示す図である。この実施例では、導波路基板176上に複数の光導波路178(#1,#2,・・・,#n)を併設し、これらの光導波路を遮るように導波路基板176上に溝176Aを形成しておき、この溝176Aの中に透過中心波長が位置により異なる干渉フィルタ182を挿入している。
符号184(#1,#2,・・・,#n)は各光導波路の入力ポートに接続される光ファイバを表し、符号186(#1,#2,・・・,#n)は各光導波路の出力ポートに接続される出力側光ファイバを表している。また、光導波路178(#1,#2,・・・,#n)の干渉フィルタ182の下流側では分岐部が形成されており、各分岐導波路の出力端にはフォトダイオードアレイ184が工学的に接続されている。
図38は光フィルタアレイの第5実施例を示す図である。この実施例では、導波路基板188上に複数の光導波路190(#1,#2,・・・,#n)を併設し、これらの途中にグレーティング型フィルタが形成される領域192と光スターカプラ領域194とを設けている。
グレーティングフィルタについて透過中心波長を正確に設定し得ない場合には、WDMに必要な数以上の数の光導波路を形成し、各光導波路のグレーティング部の格子定数を少しずつ異ならせておき、目的の波長に合った光導波路のみを選択的に使用することで、この光フィルタアレイの歩留りを向上させることができる。
この実施例では、光スターカプラ領域194が形成されていることにより、使用しない光導波路がある場合にその分挿入損失が大きくなるが、光増幅器を用いて損失補償を行うことにより、この問題を解決することができる。
尚、これまでの説明では、光フィルタアレイの配置が簡単のために一次元としたが、二次元的な配置をとることも当然ながら可能である。例えば、絶対波長基準として、分子或いは原子の吸収線を利用する場合、信号光の波長配置に合致しない中途半端な波長(例えば信号光波長間隔の間に来る場合等)になることも予想される。このような場合には、絶対波長基準からの光を光フィルタアレイに透過させる位置を各信号光を透過させる位置から空間的に離すことにより、所望の波長基準を用いることができる。具体的には以下の通りである。
図39は光フィルタアレイの第6実施例を示す図である。この例では、信号光の入力ポートとなる光ファイバ84(#1,#2,・・・,#n)を一列に配置し、これらの配列方向からずらして絶対波長基準用の入力ポートとなる光ファイバ84′を配置している。符号P(#1,#2,・・・,#n)は信号光のビームが光フィルタアレイに入射する位置を表しており、符号P′は絶対波長基準からの光ビームが光フィルタアレイに入射する位置を表している。
誘電体膜を用いた光フィルタアレイを作成する場合、光フィルタアレイを通過する際の光ビーム径が重要なパラメータとなる。光ファイバアレイの間隔に比べて光フィルタアレイを透過するビーム径が太いと、他信号とのクロストークの原因となる。また、透過波長分布を有する光フィルタの透過波長変化に比較してビーム径が太い場合には、3dB透過波長域が広がってしまうことになる。
例えば、図32に示されるように、位置に対応して透過中心波長が変化する光ファイバアレイにおいては、具体例として10mmの位置変化で透過中心波長が10nm変化するように誘電体膜が積層されている場合、透過中心波長間隔を一nmとして等間隔のフィルタアレイを作成すると、1mm間隔で光ファイバを整列することが要求される。
この光フィルタの設計時において、膜厚分布が一定の場合の3dB透過幅を05.nmとすると、この特性を劣化させないためには、光ビーム径を0.5nmに相当する0.5mmよりも十分小さくしておくことが要求される。例えば、50μm程度以下の光ビーム径が要求される。
もしビーム径が大きいと、ビームの中で透過中心波長が変化することになり、光フィルタ本体の3dB透過幅よりも広がり、透過特性や遮断特性が劣化することになる。
この問題を解決するためには、光ファイバの励振端の近傍に設けられるレンズの焦点距離を十分小さくしてビーム径を絞ることが望ましい。尚、ビーム径が50μmでファイバアレイの間隔が1mmの場合には、ビーム径と光ファイバアレイの間隔の比率が十分に大きく、他チャネルへのクロストークの影響はほとんどない。
このような技術的課題を解決するための実施例を図40により説明する。図40は光フィルタアレイの第7実施例を示す図である。図40の(A)はこの光フィルタアレイの平面図、(B)は側面図である。
基板196上には互いに平行に複数のV溝が形成されており、この中に端部においてモードフィールド径を拡大した入力側光ファイバ198(#1,#2,・・・,#n)を端面を揃えて整列させ、これらに対向して同じく端部においてモードフィールド径を拡大した出力側光ファイバ200(#1,#2,・・・,#n)を整列させている。そして、これらファイバ同士の間に光フィルタ202を挿入している。符号204は基板196の温度を制御するためのペルチェ素子を表している。ここで、端部においてモードフィールド径を拡大した光ファイバを用いているのは、有限な厚みを有する光フィルタ202の挿入損失を低減するためである。このようなファイバの製造技術については、M.Kihara et al. "Loss Characteristics of Thermally Diffused Expanded Core Fiber", IEEE Photonics Technology Letters Vol4 No.12 pp1390-1391 、中善寺他「光ファイバ集積型偏波無依存アイソレータ」、1992年電子情報通信学会秋季大会C−229、に開示されている。以下、このようなファイバをTECファイバと称する。
図41は、一対のTECファイバを対向配置し、端面間に屈折率(n)が1.5の光学媒質を充填したときの結合損失と端面間距離との関係をモードフィールド径(MFD)をパラメータとして示したグラフである。端面間距離が1000μmのとき、モードフィールドを40μmに拡大させると、挿入損失が0.5dD程度に抑えられていることがわかる。
図42は伝播後のモードフィールド径とファイバ端部のモードフィールド径の関係を示すグラフである。ファイバ端部でのモードフィールド径を40μmに拡大すると、1000μm伝播してもビーム径は50μm程度であり、先に示した透過幅を劣化させない条件に適合していることがわかる。
本発明は以下の付記を含む。
(付記1)通過帯域の中心波長が異なる複数のバンドパスフィルタエレメントを有する空間分割型の光フィルタアレイであって、
複数の入力ポートと、
該各入力ポートに対向して設けられた複数の出力ポートと、
該各入力ポートと該各出力ポートの間に形成される複数の光学パスと交錯するように設けられた透明基板と、
該透明基板上に積層されその厚みは上記各光学パスの配列方向に連続的に変化する干渉膜とを備えた光フィルタアレイ。