JP3821980B2 - コークス炉とその操業方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室炉式コークス炉とその操業方法に関するものであり、特に燃焼室内の燃焼温度を均一化して、燃焼に伴って発生するNOxを減らすことが可能なコークス炉とその操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コークス炉に要求される性能は、良質のコークスの生産性能に加えて、排ガス中のNOx が少ないことと、これらを低コストで達成することである。これらは、燃焼室内での燃焼を高さ方向について均一にすることよって達成できる。
【0003】
コークス炉の燃焼排ガス中のNOx生成率を低減させる対策としては、▲1▼燃焼排ガスを再循環させることによる火炎温度を低下させる方法があり、コツパースサーキュレーション方式のコークス炉において実施されている。また、▲2▼燃焼用空気および燃料ガス、または燃焼用空気のみを燃焼室高さ方向に複数の吐出ロを設けて分割して供給し、部分的に燃焼させる方法があり、例えば特開昭61-133286号や特開平1-306494号で提案されている。この方法は、カールスチル型コークス炉、オットー型コークス炉、および日鉄式コークス炉において「多段燃焼法」として採用されている。
【0004】
前記の対策▲1▼は、燃焼排ガスの再循環による火炎温度の低下と、部分的燃焼による酸素および窒素濃度の減少との組合せであるため、NOx発生量の抑制には効果があるが、コツパースサーキュレーション方式での燃焼排ガスの再循環方式では、排ガス循環を任意に変更することができない。さらに燃焼排ガスが増大するような操業、例えば燃焼室の高さが5m以上の大型コークス炉で、しかも乾留時間が12時間以下の高稼働率操業では、循環口の断面積の制約により、排ガス循環率を20%以上にすることができないという問題がある。
【0005】
前記の対策▲2▼の部分燃焼によるNOxの低減方法は、加熱ガス量が大幅に増大した場合には、高さ方向の加熱ガスまたは空気の分配比の調整が必要となるが、その調整には多大の時間を要するだけでなく、調整範囲も最上段の吐出ロや底部の供給口に限られ、充分な機能を発揮できないという問題がある。
【0006】
コークス炉の燃料としては、コークス炉ガス(富ガス)のほかに、貧ガスと呼ばれる燃料が使用される。これは、高炉ガスや高炉ガスとコークス炉ガスの混合ガスなどの発熱量がおよそ800〜1300 kcal/Nm3程度のガスである。
【0007】
上記の貧ガスを燃焼させるための燃焼室の底部構造としては、たとえば特開平4-501876号で提案されているような、貧ガス供給口および空気供給口を中央に並べて配置した構造、あるいは特公平5-29678号で提案されているような貧ガス供給口と空気供給口を炉団方向に対峙させた配置がある。このような燃焼室底部の構造では、貧ガスと空気が供給口の出口付近(燃焼室底部)で直ちに混合して燃焼するので、その部分での燃焼温度が高くなって、NOx発生量が増えるだけでなく燃焼室内の高さ方向の温度の均一性が損なわれる。
【0008】
ここで、炉団方向というのは、燃焼室(具体的には仕切壁で分割された複数の燃焼室、いわゆるフリューの列)と炭化室とが交互に多数並列している方向である。炉長方向というのは、炉団方向に直角な方向で、室炉式コークス炉においてコークスの押出側と排出側を結ぶ方向である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
環境汚染防止に対する要求は年々厳しさを増してきており、法規制の上でも新設コークス炉のNOx排出規制値は既設炉のそれより相当厳しくなってきており、従来技術ではコークス炉の建設ができなくなる可能性さえあるといわれる。
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、炉高方向の燃焼温度を均一にし、局部的な高温燃焼を無くし、燃焼排ガス中のNOxを効果的に低減させることができるコークス炉およびその操業方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料ガスとしての貧ガスの全部を燃焼室底部から供給するとともに燃焼用空気の一部または全部を燃焼室底部から供給する構造の室炉式コークス炉を対象とする。即ち、本発明の対象となるコークス炉では、貧ガスは全て燃焼室の底部から燃焼室内に供給されるが、空気は、その全部が燃焼室底部から供給される場合(単段燃焼)と、一部が底部から、残りが高さ方向の1カ所または複数カ所から供給される場合(多段燃焼)とがある。なお、燃焼室底部には、通常、富ガスを供給する供給口も設けられる。
【0012】
本発明は、上記のコークス炉であって、図1に示すように「燃焼室の底部に開口する貧ガス供給口7と空気供給口8を燃焼室の炉長方向(X方向)および炉団方向(Y方向)の両方から見たとき、いずれの方向でも完全重複することがないことを特徴とするコークス炉」を要旨とする。
【0013】
上記の貧ガス供給口7と空気供給口8は、燃焼室の炉長方向および炉団方向の両方から見たとき、図1の(a)に示すように、まったく重複部分がない状態でもよい。また、図1(b)および(c)に示すように、炉長方向(X方向)または炉団方向(Y方向)から見た場合に、一部が重複する状態でもよい。このとき、重複する開口部分が完全重複長さ(図2に示すL)の80%以下であることが望ましい。
【0014】
また、後述するように、貧ガス供給口7と空気供給口8の少なくとも一方に調整手段(例えば耐火煉瓦)を取り付けて、上記の80%以下の重複率を達成するようにしてもよい。
【0015】
本発明は、さらに、前記の多段燃焼の場合に「炉底の空気供給口から供給する空気を、燃焼室内に供給される全空気量の20〜70%とし、残りは燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から供給することを特徴とするコークス炉の操業方法」を要旨とする。この方法においても、前記の重複する開口部分が完全重複長さの80%以下であることが望ましい。また、貧ガス供給口7と空気供給口8の少なくとも一方に調整手段を設けて、貧ガスと空気の混合状態を調整してもよい。
【0016】
燃焼室底部から供給される貧ガスと燃焼用空気は、拡散して混合し、燃焼しながら燃焼室内を上昇していく。このようなコークス炉の燃焼室、すなわち狭く限定された空間内での燃焼においては、燃料ガスの供給量、その発熱量および空気比等によって最大燃焼点は異なるものの、燃料ガスと空気の混合状態の良い高さ方向のある限られた領域(特に燃焼室の底部)で燃焼が促進される。そして、そこに高温域が生成して、NOxの生成率が高まるだけでなく、その他の領域(燃焼室の上部)には逆に低温域が生じて、室内温度の均一性が失われる。
【0017】
本発明者は、上記のような燃焼室内での局部的高温域の発生を抑えるには、燃焼室底部では燃焼ガスと空気の混合割合を小さくすること、言い換えれば部分的に混合することが重要であると考えた。そして、その部分混合を達成する具体的な手段について種々検討した結果、燃焼室底部から供給される貧ガスおよび燃焼用空気の供給口の配置を適正化することによって、局部的な高温域の発生がなくなり、排ガスの低NOx化が達成できることを見いだした。
【0018】
以下、本発明の実施態様と作用効果を説明する。
【0019】
【発明の実施の形態】
図3および図4は、本発明のコークスの燃焼室の例を示す図である。図3の(a)は、コークス炉の複式多段燃焼室の縦断面(同図(b)のA−A断面)である。 燃焼室1-1〜1-4は、燃焼室仕切壁9、10で隣接燃焼室と仕切られている。仕切壁10の高さ方向の2カ所に二次空気供給口2が設置されており、二次空気供給ダクト3から燃焼用空気が供給される。底部11には貧ガス供給ダクト4、一次空気供給ダクト5、富ガス供給口6がある。貧ガス供給ダクト4および一次空気供給ダクト5は、それぞれ貧ガス供給口7および一次空気供給口8につながっている。
【0020】
図3(b)は、図3(a)のB−B断面の拡大図である。底部11には貧ガス供給口7および一次空気供給口8が図示のように配置されている。本発明で「空気供給口」と言うのは、この一次空気供給口8のことである。
【0021】
図4の(a)と(b)は、図3(b)と同様の断面図であるが、貧ガス供給口7と一次空気供給口8の配置が異なる例を示す図である。
【0022】
図1は、燃焼室の一つ(図3、図4の1-2)における貧ガス供給口7と一次空気供給口8の配置の態様を模式的に示す図である。なお、隣り合う燃焼室(例えば図3の1-1と1-2)は相互に反転しただけの構造であるから、その一つ(1-2)でもって、燃焼室の構造を代表させる。
【0023】
図1の(a)は、図4の(a)に示した配置である。これは、炉団方向(Y方向)から見ても、炉長方向(X方向)から見ても、重複のない例である。即ち、炉長方向にはX1の間隔があり、炉団方向にはY1の間隔がある。
【0024】
図1の(b)は、図3(b)に示した配置である。即ち、炉団方向(Y方向)から見る場合は貧ガス供給口7と一次空気供給口8は乖離しているが、炉長方向(X方向)から見ると、両者はY2の範囲で重複している。
【0025】
図1の(c)は、図4(b)に示した配置である。即ち、炉団方向(Y方向)から見る場合は、貧ガス供給口7と一次空気供給口8はX3の範囲で重複しているが、炉長方向(X方向)に見ると、両者はY3の間隔をおいて乖離している。
【0026】
図5の(a)および(b)は、従来の貧ガス供給口7と一次空気供給口8の配置を示す参考図である。これらを模式的に示したのが図2である。
【0027】
図2の(a)は、貧ガス供給口7および一次空気供給口8が、炉団方向(Y方向)から見れば重複していないが、炉長方向(X方向)から見れば完全に重複している例で、図5の(a)の配置に相当する。図2の(b)は、一次空気供給口8が貧ガス供給口7 よりも短い例で、その一次空気供給口8 が炉長方向では完全に貧ガス供給口7の範囲に包含されている。
【0028】
図2の(c)は、貧ガス供給口7と一次空気供給口8が、上下に配置された例で、図5の(b)の例に相当する。この場合は、炉団方向(Y方向)から見れば完全に重複しており、炉長方向(X方向)に見れば重複部分がなく、完全に乖離している。
【0029】
ここでは、図2のLを完全重複長さという。図2に示した例では、空気供給口8の方が貧ガス供給口7よりも短いから、空気供給口の長さがそのまま完全重複長さLになる。逆に、空気供給口の方が貧ガス供給口よりも長い場合は、貧ガス供給口の長さが完全重複長さLになる。
【0030】
先に述べたように、コークス炉の燃焼室という狭い空間においては、燃焼室底部でのガスと空気の過度の混合を抑制するためには、炉底部からの吐出直後の過度の混合を抑えることが重要で、それには貧ガス供給口と空気供給口をできるだけ離すことが必要である。そのための具体的な構造が、図1に示したような、燃焼室の底面の対角位置に貧ガス供給口7と空気供給口8をおいた構造である。
【0031】
このような構造にすれば、燃焼室底部から吐出された貧ガスと空気は燃焼室の縦断面でみた場合、それぞれ単独に燃焼室内を拡散する。このため、燃焼室底部ではガスと空気の混合が一部発生し、部分的な燃焼が発生するが、大部分のガスと空気は混合せずに上昇し、高さ方向全面に亘って徐々に混合して燃焼する。従って、局部的な高温燃焼が発生せず、炉高方向の温度が均一化し、NOxの発生量が少なくなる。 貧ガス供給口と空気供給口とをできるだけ離す、という点では図1の(a)に示した完全乖離の状態が望ましい。しかし、貧ガス供給口と空気供給口を過度に離すと、燃焼室最下部の燃焼が抑制され過ぎて、逆に炉最下部の温度低下を招くことになる。従って、図1に示した間隔X1,Y1,X2,Y3は、先に定義した完全重複長さLの40%程度に抑えるのが望ましい。なお、貧ガス供給口と空気供給口のそれぞれの大きさは、供給されるガスおよび空気が燃焼室内をほぼ均等に拡散するように、適宜選定すればよい。さらに、貧ガス供給口および空気供給口の形状は矩形に限らず楕円形などの形状でもよい。楕円形の場合は、それを矩形に近似させて本発明で定める条件を満たすようにすればよい。
【0032】
図1の(b)および(c)に示したように、貧ガス供給口7と空気供給口8は、炉長方向(X方向)または炉団方向(Y方向)から見たときに一部が重複していてもよい。そのときの重複長さ(Y2またはX3)は、完全重複長さLの80%以下とすべきである。後述する実施例で示すように、これらの重複長さがLの80%を超えるとNOx濃度が急に上昇するからである。
【0033】
貧ガス供給口と空気供給口が炉長方向または炉団方向から見て重複する範囲が大きい場合には、供給口の出口付近(燃焼室の下部)において貧ガスと空気の混合が盛んになり、局部的な高温燃焼が起きるおそれがある。その場合には、供給口に、その開度を調整する手段を設けて、重複率を実質的に減らすとともに、貧ガスと空気の一方、または両方の燃焼室底部における吐出方向を、貧ガスと空気の接触を抑制する方向に傾斜させることで、一層の均一燃焼および低NOx化が達成できる。
【0034】
逆に、貧ガス供給口と空気供給口が炉長方向および炉団方向に全く重複しない場合、または重複していてもその比率が小さい場合には、燃焼室下部での燃焼が遅れて炉高方向の温度差が大きくなるおそれがある。その場合は、供給口の一方または両方に、貧ガスと空気の接触を促進する方向に気流を傾斜させる開度調整手段を取り付ければよい。それによって、燃焼室底部における燃焼が促進され、均一加熱が可能になる。
【0035】
上記の開度調整手段は、既設のコークス炉において本発明を実施するときにも利用できる。即ち、貧ガス供給口および空気供給口の少なくとも一方の端部に耐火煉瓦等の調整手段を設けて開口部の一部を閉塞し、本発明で定める寸法と位置の関係が得られるようにすればよい。この手段は、貧ガスまたは空気の流れの方向を変化させて、貧ガスと空気の混合状態を適正化するのに役立つ。
【0036】
図3および図4に示した多段燃焼が可能な炉では、空気の全量を一次空気供給口8から供給してもよいが、その一部を二次空気供給口2から供給して多段燃焼を行わせてもよい。その場合、一次供給口から供給する空気は、全量の20〜70%とするのが望ましい。
【0037】
図6は、本発明の複式単段燃焼室コークス炉の燃焼室の例を示す図3と同様の図である。(a)は縦断面((b)図のC−C断面)、(b)は水平断面((a)図のD−D断面)である。図示のとおり、図3の多段式のものと比較して、二次空気供給口2および二次空気供給ダクト3がない。この例では、炉底11における貧ガス供給口7および一次空気供給口8の配置において、炉団方向から見た場合は重複がなく、炉長方向から見たときは一部が重複している。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
多段燃焼方式の炉において、燃料ガスとして1100 kcal/Nm3の貧ガスだけを使用し、燃焼後の排ガス中酸素濃度が1.5%になるように燃焼用空気を供給した。空気は、燃焼室底部の一次空気供給口8から全空気量の50%を供給し、燃焼室仕切壁の1.7 mの高さの二次空気ノズル2から全空気量の20%、残りを3.5 mの高さ二次空気ノズル2から供給して多段燃焼を実施した。なお、燃焼室の基本構造は、高さが6.6m、底面の最小内寸法が0.91m×0.3mで、富ガス供給口の直径は77mmである。この基本構造は、単段燃焼を行う燃焼炉の底面の最小内寸法が0.91m×0.35mであることを除いて、以下の実施例においてすべて共通である。
【0039】
図7は、図3(b)の燃焼室構造、即ち、貧ガス供給口および空気供給口が図1の(b)に示すように配置されたコークス炉で行った実験結果である。貧ガス供給口および空気供給口のサイズは次のとおりである。炉長方向の乖離長さX2は40mmの一定とし、炉長方向から見たときの重複長さ(Y2)を変化させた。
【0040】
図7の(a)は、炉長方向から見たときの重複長さ(図1のY2)と排ガス中のNOx濃度との関係を示すグラフである。この図で、重複長さが負の値になっている場合は重複がなく、その絶対値が乖離長さを表す。同図から、重複長さが−100〜200mmの場合はNOx濃度が低いこと、および200mmを超えるとNOx濃度が急激に上昇することが明らかである。上記の200mmは、貧ガス供給口(および空気供給口)の炉団方向長さ(L1:250 mm)の80%である。従って、重複長さ(Y2)は炉団方向長さL1の80%以下にするべきである。この実施例の場合は、完全重複長さLはL1と等しいから、上記の80%は、完全重複長さLの80%となる。
【0041】
図7の(b)は、前記の重複長さY2が250 mm(重複率100%)、0 mm(重複および乖離なし)および−100 mm(乖離長さ100 mm、乖離率40%)の場合の炉高方向の燃焼室壁温度である。この図から、重複長さ250 mmすなわち重複率が100 %の状態では下部の燃焼室壁温度が高過ぎ、これが、図7(a)に示したNOx濃度の急激な上昇の原因になっていることがわかる。一方、重複長さが−100 mmすなわち乖離率40 %の場合は、下部の燃焼室温度が低く、上部では高くなって炉高方向の温度分布がかなり不均一になっている。
【0042】
燃焼室高さ方向の温度の不均一は、燃焼室底部からの空気の供給比率の調整や、貧ガスまたは/および空気の供給口に気流調整手段を設ける等の対策で或程度は解消できるが、その効果にも限度がある。従って、重複率は80 %以下、乖離率は40 %以下、とするのが望ましい。
【0043】
図7の(c)は、同じ構造の燃焼室で空気を全量底部から供給する単段式燃焼を実施したときの試験結果(破線で示す)を図7の(a)に併記したものである。単段燃焼の場合は多段燃焼の場合よりNOx濃度は高めになるが、重複長さの効果の傾向は同様であつて、重複長さが150 mm(重複率60 %)以下でNOx濃度は大幅に低下する。
【0044】
図7の(d)は、同じ構造の燃焼室での多段燃焼の場合に、燃焼排ガスを系内で再循環させた場合のデータを図7(a)に併記したものである。系内再循環を行った場合は、再循環なしの場合と同様の傾向であるが、NOx濃度は低下する。即ち、本発明の効果は、再循環の有無にかかわらず発揮される。
【0045】
図8は、同じ構造の燃焼室での多段燃焼において、貧ガス供給量(入熱量)を変化させた場合の燃焼室壁の温度を調べた結果である。このとき、貧ガス供給口と一次空気供給口の重複長さY2は0 mmとした。図中に実線で示したベースが、図7(b)の「重複長さ0 mm」の場合に相当する。図示のとおり、入熱量が変化しても温度パターンは変化せず、したがってコークス炉の入熱上の操業条件が大きく変化した場合でも、燃料および空気供給口の寸法関係の調整は不要であり、本発明の効果を維持できる。
【0046】
(実施例2)
図9は、図4(b)の配置、即ち、図1の(c)の配置での試験結果で、図7の(a)と同様のグラフである。貧ガス供給口および空気供給口のサイズは下記のとおりである。炉団方向の乖離長さY3は40mmの一定とし、炉団方向から見たときの重複長さ(X3)を変化させた。
【0047】
図9から、重複長さが−50 mm(乖離率50%)〜50 mm(重複率50%)の場合にはNOx濃度が150 ppm以下になることが明らかである。
【0048】
(実施例3)
先の実施例1と同じ条件で、図3(b)、即ち、図1(b)の配置において、炉長方向からみたときの重複長さY2を200 mm(重複率80 %)とした場合について、貧ガス供給口および空気供給口に調整手段(調整煉瓦)を当てて開口部を調整する試験を行った。
【0049】
図10に調整煉瓦13の設置状態を示す。図10の(a)に示すように、貧ガス供給口7と空気供給口8の片端に50 mmの調整煉瓦13を当てた。そのとき、調整煉瓦は、(b)図に示すように、貧ガス供給口では空気供給口寄りに、空気供給口では貧ガス供給口寄りに設置した。これによって、実質的な重複長さは100mm(重複率は40%)に減少した。
【0050】
調整煉瓦を当てない場合は、両供給口の重複長さY2は200 mmであり、その時のNOx濃度は図7(a)に示したように約160 ppmであった。これに対して、調整煉瓦13を当てた場合は、前記のように実質重複率が小さくなるとともに、貧ガスおよび燃焼用空気の流れ方向が図10(b)に示すように相互に乖離する方向に変化する。これらの作用効果によって、NOx 濃度は95 ppmとなった。このように、供給口の簡単な操作で本発明の効果を高めることができる。
【0051】
(実施例4)
図11は、図4(a)の配置の貧ガス供給口と空気供給口に調整煉瓦を当てた状態を示す。この時の貧ガス供給口7および空気供給口8のサイズは実施例1とおなじであり、両供給口の炉長方向から見たときの重複がなく(重複率0 %)、炉団方向から見たときの間隔は100 mm(言い換えれば重複長さが−100mmで、乖離率40%)である。この場合、重複長さがマイナスであるから図7(b)に示すように、燃焼室下部では上部より低温である。
【0052】
上記の配置において、図11(a)および(b)に示すように、貧ガス供給口および燃焼用空気供給口にそれぞれ長さ50mmの調整煉瓦13を当てたところ、貧ガスおよび燃焼用空気の流れ方向が図11(b)のように変化した。この場合のNOx濃度は調整煉瓦設置の前後で変化しないが、炉高方向の温度分布は、図12に示すように炉底部の温度が上昇し、炉上部の温度が低下して炉高方向の温度分布が均一化した。これは調整煉瓦の設置により、貧ガスと燃焼用空気の流れが接近し、乖離率が減少したのと同じ効果が得られたからである。
【0053】
(実施例5)
図3(b)に示した構造の装置で実施例1と同じ条件(ただし、炉団方向から見たときの両供給口の重複長さを0とした)で、燃焼室底部の一次空気供給口8から供給する空気量を全空気量の10〜90%の範囲で変えた実験を行った。残りの空気は仕切壁の1.7mおよび3.5mの高さに設けた二つの二次空気供給ノズル2から、1:1.5の比率に分けて供給した。
【0054】
図13の(a)は、燃焼室底部(一次空気供給口8)から供給する空気量の比率と、排ガスのNOx濃度との関係、同(b)は、同じく燃焼室壁の高さ方向での最高温度と最低温度の差との関係を示すグラフである。図示のとおり、燃焼室底部から供給する空気の比率が70%を超えるとNOx濃度が急激に上昇するだけでなく、燃焼壁の温度差も大きくなる。これは、燃焼室底部での燃焼温度が局部的に高くなるからである。一方、その空気比率が20%未満の場合は、燃焼室底部の温度が低下するために、やはり燃焼壁の温度差が大きくなる。これらの結果から明らかなように、燃焼室底部の一次空気供給口から供給する空気は、全空気の20〜70%の範囲とするのが望ましい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るコークス炉では貧ガス供給口と燃焼室底部の空気供給口(一次空気供給口)の配置を最適にしたので、炉高方向に均一な燃焼が可能となる。その結果、局部的な高温燃焼が防止され、NOxの発生量が減少する。また、炭化室内の加熱温度も均一になるので良質のコークスが得られる。本発明は、新設のコークス炉への適用は勿論のこと、貧ガス供給口または/および空気供給口に開度調整手段を設けるという簡単な方法で既設炉にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明するための貧ガス供給口と空気供給口の配置を模式的に示す図である。
【図2】従来の貧ガス供給口と空気供給口の配置を模式的に示す図である。
【図3】本発明の多段燃焼方式のコークス炉の燃焼室構造の一例を示す図である。
【図4】本発明のコークス炉の燃焼室の貧ガス供給口と空気供給口の配置例を示す図である。
【図5】従来のコークス炉の燃焼室の貧ガス供給口と空気供給口の配置例を示す図である。
【図6】本発明の単段燃焼方式のコークス炉の燃焼室構造例を示す図である。
【図7】実施例における試験結果を示すグラフである。
【図8】実施例における試験結果を示すグラフである。
【図9】実施例における試験結果を示すグラフである。
【図10】貧ガス供給口および空気供給口に調整煉瓦を設置した燃焼室底部構造の一例を説明する図である。
【図11】貧ガス供給口および空気供給口に調整煉瓦を設置した燃焼室底部構造の他の例を説明する図である。
【図12】図11に示した構造のコークス炉で行った実験結果を示す図である。
【図13】燃焼室の底部から供給する一次空気の比率を変えて行った実験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 (1-1、1-2、1-3、1-4) 燃焼室
2 二次空気供給口
3 二次空気供給ダクト
4 貧ガス供給ダクト
5 空気供給ダクト(一次空気供給ダクト)
6 富ガス供給口
7 貧ガス供給口
8 空気(一次空気)供給口
9 、10 仕切壁
11 底部
12 炉壁
13 調整煉瓦
Claims (6)
- 燃料ガスとしての貧ガスの全部を燃焼室底部から供給するとともに燃焼用空気の一部または全部を燃焼室底部から供給する構造のコークス炉であって、燃焼室の底部に開口する貧ガス供給口と空気供給口がそれぞれ1個ずつ設けられており、両供給口を燃焼室の炉長方向および炉団方向から見たとき、いずれの方向でも、部分的にのみ重複するか、または全く重複することがないことを特徴とするコークス炉。
- 燃料ガスとして貧ガスの全部を燃焼室底部から供給するとともに燃焼用空気の一部または全部を燃焼室底部から供給する構造のコークス炉であって、燃焼室底部に開口する貧ガス供給口および空気供給口がそれぞれ1個ずつ設けられており、両供給口を燃焼室の炉長方向および炉団方向から見たとき、いずれの方向でも両供給口の重複長さが完全重複長さの80%以下であることを特徴とするコークス炉。
- 燃焼室の底部に開口する貧ガス供給口と空気供給口の少なくとも一方に貧ガスまたは/および空気の流れを調節する手段を備える請求項1または請求項2に記載のコークス炉。
- 燃料ガスとしての貧ガスの全部を燃焼室底部から供給するとともに燃焼用空気の一部を燃焼室底部から、残りを燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から、それぞれ供給する構造のコークス炉であって、燃焼室の底部に開口する貧ガス供給口と空気供給口がそれぞれ1個ずつ設けられており、両供給口を燃焼室の炉長方向および炉団方向から見たとき、いずれの方向でも、部分的にのみ重複するか、または全く重複することがないコークス炉を使用し、底部の空気供給口から供給する空気を燃焼室内に供給される全空気量の20〜70%とし、残りを上記燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から供給することを特徴とするコークス炉の操業方法。
- 燃料ガスとしての貧ガスの全部を燃焼室底部から供給するとともに燃焼用空気の一部を燃焼室底部から、残りを燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から、それぞれ供給する構造のコークス炉であって、燃焼室底部に開口する貧ガス供給口および空気供給口がそれぞれ1個ずつ設けられており、両供給口を燃焼室の炉長方向および炉団方向から見たとき、いずれの方向でも両供給口の重複長さが完全重複長さの80%以下であるコークスを使用し、底部の空気供給口から供給する空気を燃焼室内に供給される全空気量の20〜70%とし、残りを上記燃焼室の仕切壁に設けた1カ所以上の空気供給口から供給することを特徴とするコークス炉の操業方法。
- 燃焼室の底部に開口する貧ガス供給口と空気供給口の少なくとも一方に貧ガスまたは/および空気の流れを調節する手段を設け、貧ガスと空気との混合状態を調整することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のコークス炉の操業方法。
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