JP3817637B2 - ジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体に関するものである。このジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、高い電子親和性と蛍光性とを備えており、蛍光剤及び電子輸送剤として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、発光材料や電子輸送材料として用いられる有機化合物が開発されている。このような発光材料としては、例えば、可視部において発光する蛍光性物質等が用いられ、高い量子収率を示す蛍光性物質は、光エネルギーの変換、光記録の機能、エレクトロルミネッセンス(EL)としての利用が期待されている。また、電子輸送材料としては、高い電子親和性を有する化合物が用いられる。
【0003】
発光材料や電子輸送材料としては、有機化合物が用いられることが多い。有機化合物は、一般に有機溶媒に可溶であり、加工性が良く、軽量化や廃棄処理が容易であること等の利点を有しているからである。有機化合物には、発光性と電子輸送性の両機能を備えた化合物も知られており、例えば、ビスピリジルエチニルベンゼン(BPEB)やビピリジン誘導体であるメチルビオローゲン(MV)は、電子受容性の高い蛍光性物質として知られており、エレクトロクロミズム材料、電子移動のメディエータ、除草剤等として多用されている。また、特開平5−70455号公報には、MVに、フラン、チオフェンといった電子供与性のヘテロ環を導入した分子およびそのカチオン体の合成が開示されている。
【0004】
高い電子親和性と高い量子収率とを兼ね備えた有機化合物は、光触媒や光誘起電子移動への応用も可能となる。上述したBPEBやMVは、ある程度は目的を達成することのできる化合物であるが、更なる高い電子親和性と高い量子収率とを兼ね備えた有機化合物が望まれている。
【0005】
本発明者は、高い電子親和性を有し、電子輸送剤として用いることのできるビピリジン誘導体及びビピリジニウム誘導体に関して特許出願をしている。該出願に係る化合物は電子輸送剤として利用可能なものであるが、アセチレン結合を有しているため平面分子であり、π−πの分子間相互作用の大きい化合物であり、そのため、溶液状態では強い蛍光を示すが、固体状態での蛍光は弱かった。実用において、EL材料等は固体フィルム等の形態で使用されるため、固体状態で強い蛍光を発する有機化合物が求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−70455号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、高い電子親和性と高い量子収率とを兼ね備え、固体状態においても強い蛍光を示す有機化合物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意検討した結果、電子受容性の環として知られているチアジアゾール環を導入し、置換基にピリジル基を導入して立体障害によって分子が非平面化された化合物が上記目的を達成し得るという知見を得た。
【0009】
すなわち、本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(1)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【0010】
【化21】
【0011】
式(1)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基である。
また、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、下記一般式(2)で示される、ジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化22】
【0013】
式(2)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基であり、R6はアルキル基、ベンジル基又はトリメチルシリル基である。
また、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。
また、R6はメチル基であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、下記一般式(3)で示される、ジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化23】
【0015】
式(3)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基である。
また、R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、下記一般式(4)で示される、ジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化24】
【0017】
式(4)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基であり、R6はアルキル基、ベンジル基又はトリメチルシリル基である。
また、R6は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましい。
また、R6はメチル基であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、下記一般式(5)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化25】
【0019】
また、本発明は、下記一般式(6)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化26】
【0020】
また、本発明は、下記一般式(7)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化27】
【0021】
また、本発明は、下記一般式(8)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化28】
【0022】
また、本発明は、下記式(9)、(10)又は(11)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化29】
【化30】
【化31】
【0023】
また、本発明は、下記式(12)、(13)又は(14)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化32】
【化33】
【化34】
【0024】
また、本発明は、下記式(15)、(16)又は(17)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化35】
【化36】
【化37】
【0025】
また、本発明は、下記式(18)、(19)又は(20)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体を提供するものである。
【化38】
【化39】
【化40】
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体について説明する。
本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体は、上記一般式(1)、又は上記一般式(2)で示されるものである。
【0027】
一般式(1)および(2)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基である。R1、R2、R3、R4及びR5は、電子親和性を向上させる観点から水素であることが好ましく、またアルキル基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜3の直鎖又は分枝状のアルキル基であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基が最も好ましい。
【0028】
上記一般式(2)において、R6は、アルキル基、ベンジル基又はトリメチルシリル基である。R6は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが電子親和性を向上させる観点から好ましく、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜3の直鎖又は分枝状のアルキル基であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基が最も好ましい。
【0029】
本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体としては、下記式(5)で示されるものが例示される。
【0030】
【化41】
【0031】
上記式(5)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体としては、種々の異性体が存在しており、下記式(9)、(10)及び(11)で示されるものがある。
【0032】
【化42】
【0033】
【化43】
【0034】
【化44】
【0035】
また、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体としては、下記式(6)で示されるものが例示される。
【0036】
【化45】
【0037】
上記式(6)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体としては、種々の異性体が存在しており、下記式(12)、(13)及び(14)で示されるものがある。
【0038】
【化46】
【0039】
【化47】
【0040】
【化48】
【0041】
また、本発明のジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、上記一般式(3)、又は上記一般式(4)で示されるものである。
一般式(3)および(4)において、R1、R2、R3、R4及びR5は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素又はアルキル基である。また、R6は、アルキル基、ベンジル基又はトリメチルシリル基である。R1、R2、R3、R4及びR5は、電子親和性を向上させる観点から水素であることが好ましく、またアルキル基である場合は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが電子親和性を向上させる観点から好ましく、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜3の直鎖又は分枝状のアルキル基であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基が最も好ましい。
【0042】
上記一般式(4)において、R6は、アルキル基、ベンジル基又はトリメチルシリル基である。R6は、炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが電子親和性を向上させる観点から好ましく、炭素数1〜5の直鎖又は分枝状のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜3の直鎖又は分枝状のアルキル基であることがより好ましい。このようなアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基が最も好ましい。
【0043】
また、本発明のジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体としては、下記式(7)で示されるものが例示される。
【0044】
【化49】
【0045】
上記式(7)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体としては、種々の異性体が存在しており、下記式(15)、(16)及び(17)で示されるものがある。
【0046】
【化50】
【0047】
【化51】
【0048】
【化52】
【0049】
また、分子内にジピリジルビスベンゾチアジアゾール環を有する本発明のジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体としては、下記式(8)で示されるものが例示される。
【0050】
【化53】
【0051】
上記式(8)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体としては、種々の異性体が存在しており、下記式(18)、(19)及び(20)で示されるものがある。
【0052】
【化54】
【0053】
【化55】
【0054】
【化56】
【0055】
本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、電子受容性であるベンゾチアジアゾール環又はビスベンゾチアジアゾール環を有しており、電子受容性の高い蛍光物質である。
【0056】
また、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、分子構造が非平面であるため、溶液状態だけでなく、固体状態においても強い蛍光を示す。
さらに、分子間の相互作用が小さいため、シクロヘキサン、アセトニトリル、エタノール、クロロホルム、ジオキサン等の溶媒に対する溶解度が高い。
【0057】
上述した、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体の合成法は特に制限はないが、例えばパラジウム触媒を利用したStill coupling反応を利用し、対応するブロム体から一段階の合成法により合成することができる。一般式(1)で示される化合物を得るためには、例えば、下記一般式(21)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体と下記一般式(23)で示される化合物とを、Pd触媒存在下、トルエン中で還流することにより合成することができる。また、一般式(3)で示される化合物を得るためには、例えば、下記一般式(22)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体と下記一般式(23)で示される化合物とを用いて、上記の(1)で示される化合物の合成と同様の反応で合成することができる。
【0058】
【化57】
【0059】
(式中、Xはハロゲンである。)
【0060】
【化58】
【0061】
(式中、Xはハロゲンである。)
【0062】
【化59】
【0063】
式中、R1、R2、R3、R4及びR5は一般式(1)において説明したのと同様である。
【0064】
上記、一般式(1)で示される化合物の合成反応を式で表わすと以下の通りである。
【0065】
【化60】
【0066】
上記反応において、上記一般式(21)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体と上記一般式(23)で示される化合物との割合は、上記一般式(21)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体が100質量部に対し、上記一般式(23)で示される化合物が200質量部程度用いるのが好ましい。
また、反応温度は80〜120℃程度で行うことが好ましく、110℃程度で行うことが更に好ましい。
反応を行う溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。
また、反応時間は、12時間程度が好ましい。
上記のようにして得られた上記一般式(1)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の精製方法により精製することができる。
【0067】
また、上記、一般式(3)で示される化合物の合成反応を式で表わすと以下の通りである。
【0068】
【化61】
【0069】
上記反応において、上記一般式(22)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体と上記一般式(23)で示される化合物との割合は、上記一般式(22)で示されるベンゾチアジアゾール誘導体が100質量部に対し、上記一般式(23)で示される化合物が200質量部程度用いるのが好ましい。
また、反応温度は80〜120℃程度で行うことが好ましく、110℃程度で行うことが更に好ましい。
反応を行う溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。
また、反応時間は、12時間程度が好ましい。
上記のようにして得られた上記一般式(3)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の精製方法により精製することができる。
【0070】
上記一般式(2)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体は、上記一般式(1)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体にR6基を導入することにより得ることができ、上記一般式(4)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、上記一般式(3)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体にR6基を導入することにより得ることができる。
【0071】
上記一般式(1)あるいは(3)にアルキル基を導入するには、通常に用いられるアルキル化法により行うことができる。例えば、メチル基を導入する場合には、メチル化剤としてトリフルオロメタンスルフォン酸メチルを用いて、ジクロロメタン中で上記ジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体と反応させることにより行うことができる。また、トリメチルシリル基、ベンジル基を導入する場合も、通常の方法によって実施することができる。上記一般式(2)で示されるジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体又は(4)で示されるジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体はカチオンとなるので、対イオンが存在し、CF3SO3 -、Cl-、Br-、I-、 NO3 -、HSO3 -、BF4 -、ClO4 -、PF6 -等の塩の形態で得られる。このようなジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、再結晶等の精製方法により精製することができる。
【0072】
本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、プロトンの受容体や金属への配位子として働くことができ、水素結合や配位結合により超分子体を形成することができる。例えば、ジカルボン酸と反応させることでポリマーが得られる。
【0073】
本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体およびジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、電子輸送材料、n−型半導体、蛍光材料、エレクトロクロミズム材料、光触媒、金属のリガンド、太陽電池、プロトンアクセプター、生理活性分子等に利用することができる。
【0074】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定されないことはいうまでもない。
【0075】
実施例1
4,7−ジブロムベンゾチアジアゾール300mg(1.04mmol)及び2−スタニルピリジン950mg(2.58mmol)をトルエン10mlに溶かし、パラジウム触媒(Pd(PPh3)4)235mg(0.20mmol)を加え、110℃の温度で12時間還流を行った。
【0076】
反応物を冷却した後、1.0Mのアンモニア水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して、生成物をシリカゲルカラムで分離した。クロロホルムーエタノールの留出溶液から生成物(前記式(9)で示される化合物)が得られ、エタノールから再結晶して精製を行った。収率は81%であった。
【0077】
実施例2
2−スタニルピリジンに代え、3−スタニルピリジンを用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、生成物(前記式(10)で示される化合物)を得た。収率は69%であった。
【0078】
実施例3
2−スタニルピリジンに代え、4−スタニルピリジンを用いた以外は実施例1と同様に操作を行い、生成物(前記式(11)で示される化合物)を得た。収率は58%であった。
【0079】
実施例4
実施例2で得られた、前記式(10)で示される化合物100mg(0.35mmol)をジクロロメタン20mlに溶かし、トリフルオロメタンスルフォン酸メチル(TfOMe)360mg(2.2mmol)を加えた。次いで、その溶液を室温で3時間撹拌すると黄色固体が析出した。析出した黄色固体をろ過することにより、前記式(13)で示される化合物がTfO-塩として80%の収率で得られた。
【0080】
実施例5
前記式(9)で示される化合物に代え、実施例3で得られた、前記式(11)で示される化合物を用いた以外は実施例4と同様に操作を行い、前記式(14)で示される化合物をTfO-塩として93%の収率で得た。
【0081】
実施例6
7,7’−ジブロモ−4,4’−ビス(2,1,3−ベンゾチアジアゾール)600mg(1.40mmol)及び2−スタニルピリジン1.50g(4.0mmol)をトルエン70mlに溶かし、パラジウム触媒(Pd(PPh3)4)440mg(0.38mmol)を加え、110℃の温度で12時間還流を行った。
【0082】
次いで、トルエンを留去し、残留物をヘキサンで洗浄した後、昇華させて生成物(前記式(15)で示される化合物)を得た。収率は60%であった。
【0083】
実施例7
2−スタニルピリジンに代え、3−スタニルピリジンを用いた以外は実施例6と同様に操作を行い、生成物(前記式(16)で示される化合物)を得た。収率は61%であった。
【0084】
実施例8
2−スタニルピリジンに代え、4−スタニルピリジンを用いた以外は実施例6と同様に操作を行い、生成物(前記式(17)で示される化合物)を得た。収率は61%であった。
【0085】
実施例9
実施例7で得られた、前記式(16)で示される化合物300mg(0.071mmol)をクロロホルム10mlに溶かし、トリフルオロメタンスルフォン酸メチル(TfOMe)70mg(0.43mmol)を加えた。次いで、その溶液を室温で10時間撹拌すると黄色固体が析出した。析出した黄色固体をろ過することにより、前記式(19)で示される化合物がTfO-塩として90%の収率で得られた。
【0086】
実施例10
前記式(16)で示される化合物に代え、実施例8で得られた、前記式(17)で示される化合物を用いた以外は実施例9と同様に操作を行い、前記式(20)で示される化合物をTfO-塩として92%の収率で得た。
【0087】
実施例1〜10で得られた化合物の構造決定は、元素分析、NMRスペクトル、IRスペクトル及びMassスペクトル測定により行い、単結晶X線構造解析により分子構造を確認した。
それぞれの化合物の性状を以下に示す。
【0088】
実施例1で得られた、式(9)で示される化合物:
mp145-147℃;UV(CHCl3)λmax nm(logε) 243(4.06), 291(4.26), 379(4.11);1HNMR(CDCl3,300MHz);δ8.82(d,J=6.0Hz,2H), 8.71(d,J=8.1Hz,2H), 8.60(s, 2H), 7.92-7.86(m,2H), 7.37-7.27(m,2H); 13CNMR(CDCl3,75MHz), δ123.13, 125.15, 129.66, 132.34, 136.59, 149.82, 153.80, 154.07;MS(EI):m/z(%) 290(M+,100), 元素分析(C20H10N4S),計算値C,66.19;H,3.47;N,19.30;S,11.04;測定値C,65.98;H,3.64,N,19.34;S,11.04
【0089】
実施例2で得られた、式(10)で示される化合物:
mp219-221℃;UV(MeCN)λmax nm 238, 267, 307, 316, 366;1HNMR(CDCl3,300MHz);δ9.18 (d,J=2.4Hz,2H), 8.73(d, J=6.6Hz, 2H), 8.40-8.36(m, 2H), 7.87(s,2H), 7.53-7.48(m,2H); 13CNMR(CDCl3,75MHz), δ123.38, 128.16, 130.83, 132,87, 136.62, 149.56, 149.77, 153.84,;MS(EI):m/z(%) 290(M+,100%), 元素分析(C20H10N4S),計算値C,66.19; H,3.47;N,19.30;S,11.04;測定値C,66.37;H,3.74,N,19.33;S,11.05
【0090】
実施例3で得られた、式(11)で示される化合物:
mp258-260℃;UV(MeCN)λmax nm(logε) 272(5.23), 318(5.08), 356(5.03),;1HNMR(CDCl3,300MHz);δ8.91 (s,2H), 8.64(s, 2H), 7.96-7.98(m, 2H), 7.87(d,J=3.9Hz,2H), 7.34-7.39(m,2H); 13CNMR(CDCl3,75MHz), δ123.55, 123.57, 128.48, 131,98, 144.16, 150.30, 153.50;MS(EI):m/z(%) 338(M+,100%), 元素分析(C20H10N4S),計算値C,66.19;H,3.47;N,19.30;S,11.04;測定値C,66.11;H,3.77,N,19.23;S,10.93
【0091】
実施例4で得られた、前記式(13)で示される化合物:
mp145-147℃;UV(MeCN)λmax nm(logε) 246(4.16), 277(3.98), 319(4.13), 350(4.08)
【0092】
実施例5で得られた、前記式(14)で示される化合物:
mp281-291℃;UV(MeCN)λmax nm(logε) 303(3.46), 362(4.72);1HNMR(CDCl3,300MHz);δ8.83(d,J=6.5Hz,4HH), 8.75(d,J=7.2Hz,4H), 8.40(s,2H), 4.38(s,6H); 13CNMR(CDCl3,75MHz), δ49.00, 128.45, 130.83, 132.20, 146.49, 152.77, 153.92
【0093】
実施例6で得られた、前記式(15)で示される化合物:
mp281-283℃;UV(CHCl3)λmax 242, 266, 309, 401nm;MS(EI):m/z(%) 424(M+,100%)
【0094】
実施例7で得られた、前記式(16)で示される化合物:
mp343-345℃;UV(CHCl3)λmax 244, 266, 310, 318, 397nm;MS(EI):m/z(%) 424(M+,100%);元素分析(C22H12N6S2),計算値C,62.25; H,2.85;N,19.80;S,15.11;測定値C,62.94;H,3.19,N,19.99;S,15.28
【0095】
実施例8で得られた、前記式(17)で示される化合物:
mp444-446℃;UV(CHCl3)λmax 242, 268, 311, 318, 389nm;MS(EI):m/z(%) 424(M+,100%);元素分析(C22H12N6S2),計算値C,62.25; H,2.85;N,19.80;S,15.11;測定値C,62.58;H,3.11,N,19.88;S,15.08
【0096】
実施例9で得られた、前記式(19)で示される化合物:
mp238-240℃;UV(MeCN)λmax 229, 253, 317, 387nm
【0097】
実施例10で得られた、前記式(20)で示される化合物:
mp145-147℃;UV(MeCN)λmax 229, 253, 317, 387 nm;1HNMR(CD3CN,300MHz);δ8.88-8.10(m,8H), 8,64 (d,J=7.2Hz,2H), 8.44(d,J=7.2Hz,2H), 3.12(s,6H)
【0098】
実施例1〜10で得られたジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体について、下記試験により評価を行った。なお、比較例1として、4,4’−ジピリジルベンゼンを用いて同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0099】
評価方法
(1)吸収極大値(λmax/nm)
分光光度計にて紫外可視(UV−vis)スペクトルを測定し、吸収の極大値を求めた。
(2)蛍光発光位置の測定(λem,max/nm)
分光蛍光光度計にて蛍光スペクトルを測定し、発光の極大値を求めた。励起波長は300nmとした。また、試料を固体状態で測定した値は、括弧内に示した。
(3)量子収率(Φem)
2−フェニルオキサゾールを標準物質として選択し、光吸収量を吸収スペクトルから補正し、相対値として求めた。
(4)電子親和性(Ered/V)
サイクリックボルタモグラムで還元電位を測定した。
【0100】
【表1】
【0101】
表1から明らかなように、実施例3のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体においては、比較例1の化合物と比べ、還元電位が約0.7V上昇した。実施例3のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体をメチル化した化合物である実施例5のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体においては、更に0.7V上昇した。また、実施例3、5の吸収極大値は、比較例1よりも約60nm長波長側にシフトした。実施例1〜5では、青色の発光を示し、さらに固体状態では溶液中よりも長波長側に蛍光が観測された。また、実施例1〜3のアセトニトリル中における量子収率も高い値を示した。一方、ビスベンゾチアジアゾール体である実施例6〜10では、吸収極大値および蛍光発光位置は、対応するベンゾチアジアゾール体よりも長波長側にシフトした。また、実施例9および10は、実施例4および5よりも高い電子受容性を示した。
【0102】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は、高い電子親和性と高い量子収率とを兼ね備えた化合物であり、電子輸送材料、n−型半導体、光触媒、金属リガンド、プロトンアクセプター、太陽電池、エレクトロクロミズム等の材料として有用なものである。また、本発明のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体及びジピリジルビスベンゾチアジアゾール誘導体は青色の蛍光発光を示し、固体状態においても強い蛍光発光を示すので、蛍光材料としても有用なものである。
Claims (11)
- R1、R2、R3、R4及びR5が、水素又は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基である、請求項1に記載のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体。
- R1、R2、R3、R4及びR5が水素である、請求項1に記載のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体。
- R1、R2、R3、R4及びR5が、水素又は炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基である、請求項4に記載のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体。
- R6が炭素数1〜10の直鎖又は分枝状のアルキル基である、請求項4に記載のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体。
- R6がメチル基である、請求項4に記載のジピリジルベンゾチアジアゾール誘導体。
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