JP3813524B2 - 溶接部被覆フィルム及び溶接部被覆方法並びに樹脂被覆缶 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属板の溶接部を被覆するための溶接部被覆フィルム及び溶接部被覆方法、並びに樹脂被覆缶に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、角型18L缶やペール缶などの一般缶として、耐蝕性を確保するために、その缶内面がポリエステル系樹脂或いはポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂で被覆された樹脂被覆缶が適用されている。
このような樹脂被覆缶を製造するためには、まず、溶接部分を避けて樹脂が被覆された金属板を、その樹脂が内面に位置するように円筒形、角筒形などの所望形状に加工し、その継ぎ目を溶接することで缶胴部を形成する。次に、溶接部の耐蝕性を確保するために、この溶接部の缶内面側を合成樹脂フィルムなどで被覆する。次いで、ビード加工やカール加工などを施すことで、この缶胴部に天板、地板、手環などを取り付け、樹脂被覆缶を完成させる。
【0003】
ここで、この樹脂被覆缶における溶接部の被覆方法として、ポリエステル系樹脂フィルムを熱圧着によって被覆する方法(特公平5−58995号公報参照)や、熱可塑性樹脂/変性ポリオレフィンなどの二層樹脂フィルムを熱圧着によって被覆する方法(特開2001−31926号公報参照)などが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の特公平5−58995号公報に記載されたポリエステル系樹脂フィルムで被覆する方法においては、ポリエステル系などの樹脂フィルムが硬く、二枚の金属板が重なって溶接された溶接部の段差に密着しにくいため、金属板溶接部と樹脂フィルムとの間に隙間が生じやすいという不具合があった。
【0005】
上述の特開2001−31926号公報では、表層の熱可塑性樹脂として、下層の変性ポリオレフィンよりも融点が15℃高い熱可塑性樹脂を、下層の変性ポリオレフィンとして、カルボキシル基を有するポリオレフィンを用いており、実施例では表層の熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合しか開示されていない。表層がポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムは柔らかく、耐ピンホール性の点からは依然不十分である。また、該公報には、本発明のように、表層に熱可塑性ポリエステルを用いることで、耐ピンホール性を向上させる点については示唆がない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属板の溶接部に密着させ、且つ、ピンホールの発生を抑制させることによって、金属板の耐蝕性を向上させることを可能とした溶接部被覆フィルム及び溶接部被覆方法、並びに樹脂被覆缶を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属板の溶接部を被覆するための溶接部被覆フィルムであって、変性ポリオレフィン層と、熱可塑性ポリエステル層との間に、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層が介層されてなることを特徴としている。
請求項1における溶接部被覆フィルムによれば、変性ポリオレフィン層と、熱可塑性ポリエステル層とを、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層を介して積層して構成されていることによって、この変性ポリオレフィン層を金属板の溶接部との接触面側に配置して溶接部を被覆するようにすれば、軟性を有する変性ポリオレフィン層が溶接部の段差に密着して接着するとともに、硬性を有する熱可塑性ポリエステル層によって溶接部の段差や突起部に起因するピンホールの発生を抑制することが可能となる。すなわち、溶接部を確実に被覆することができ、溶接部の耐蝕性を向上させることが可能となる。
【0008】
また、変性ポリオレフィン層と、熱可塑性ポリエステル層との間に、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂を介層したことによって、変性ポリオレフィン層と熱可塑性ポリエステル層との接着性を向上させることが可能となる。両層の接着性を向上させることによって、より高い腐食性や塗料等膨潤性の高い内容物を用いても、溶接部被覆部の剥離を極力抑えることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、金属板の溶接部を請求項1に記載の溶接部被覆フィルムで被覆する溶接部被覆方法であって、前記金属板の溶接部を、前記変性ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、前記熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度で加熱した状態で、前記変性ポリオレフィン層側が、前記金属板の溶接部に接着するように熱圧着することを特徴としている。
【0010】
ここで、変性ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度として、120〜240℃の温度に加熱することが好ましい。
請求項2に記載の溶接部被覆方法によれば、金属板における溶接部に、本発明の溶接部被覆フィルムを確実に被覆することが可能となる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、樹脂が被覆された金属板を曲げ成形して溶接することで缶胴部が形成されてなる樹脂被覆缶において、前記金属板の溶接部が、請求項1に記載の溶接部被覆フィルムで被覆されていることを特徴としている。
請求項3に記載の樹脂被覆缶によれば、缶胴部に形成された溶接部が、請求項1に記載の溶接部被覆フィルムが被覆されていることによって、耐蝕性を向上させることが可能となる。このとき、前記溶接部被覆フィルムの変性ポリオレフィン層側が、金属板の溶接部を被覆する。
【0012】
さらに、請求項4に記載の発明は、金属板の溶接部を被覆するための溶接部被覆フィルムであって、第一の変性ポリオレフィン層の上面に、ポリオレフィン層と、第二の変性ポリオレフィン層と、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層と、熱可塑性ポリエステル層とが順次積層されてなることを特徴としている。
請求項4に記載の溶接部被覆フィルムによれば、第一の変性ポリオレフィン層の上面に、ポリオレフィン層と、第二の変性ポリオレフィン層と、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層と、熱可塑性ポリエステル層とを順次積層したことによって、この第一の変性ポリオレオフィン層を金属板の溶接部との接触面側に配置して溶接部を被覆するようにすれば、軟性を有する第一の変性ポリオレフィン層、ポリオレフィン層及び第二の変性ポリオレフィン層によって溶接部の段差に密着して接着されるとともに、硬性を有する熱可塑性ポリエステル層によって、溶接部の段差や突起部でのピンホールの発生を抑制することが可能となる。すなわち、溶接部を確実に被覆することができ、溶接部の耐蝕性を向上させることが可能となる。
【0013】
また、溶接部被覆フィルムにおいて、内容物のバリアー性に優れたポリオレフィン層を含むことによって、外部からの水分などの浸入が抑制されるため、耐蝕性をさらに向上させることが可能となる。
【0014】
さらに、第二の変性ポリオレフィン層と、熱可塑性ポリエステル層との間に、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂を介層したことによって、第二の変性ポリオレフィン層と熱可塑性ポリエステル層との接着性を向上させることが可能となる。
さらに、請求項5に記載の発明は、金属板の溶接部を請求項4に記載の溶接部被覆フィルムで被覆する溶接部被覆方法であって、前記金属板の溶接部を、前記第一及び第二の変性ポリオレフィン層並びに前記ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、前記熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度で加熱した状態で、前記第一の変性ポリオレフィン層側が前記金属板の溶接部と接着するように熱圧着することを特徴としている。
【0015】
ここで、第一及び第二の変性ポリオレフィン層並びに前記ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度として、120〜240℃の温度に加熱することが好ましい。
請求項5に記載の溶接部被覆方法によれば、金属板における溶接部に、本発明の溶接部被覆フィルムを確実に被覆することが可能となる。両層の接着性を向上させることによって、より高い腐食性や塗料等膨潤性の高い内容物を用いても、溶接部被覆部の剥離を極力抑えることができる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明は、樹脂が被覆された金属板を、曲げ成形して溶接することで缶胴部が形成されてなる樹脂被覆缶において、前記金属板の溶接部が、請求項4に記載の溶接部被覆フィルムで被覆されていることを特徴としている。
請求項6に記載の樹脂被覆缶によれば、缶胴部に形成された溶接部が、請求項4に記載の溶接部被覆フィルムで被覆されていることによって、耐蝕性を向上させることが可能となる。このとき、前記溶接部被覆フィルムの第一の変性ポリオレフィン層側が、金属板の溶接部を被覆する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の溶接部被覆フィルムの一構成例を示すを断面図である。
本実施形態における樹脂被覆缶100は、ポリエステル系又はポリオレフィン系などの熱可塑性樹脂フィルム(樹脂)2が一面に接着された鋼板1を、その熱可塑性樹脂フィルム2が内面側(図1における上面側)に位置するように円筒形状に曲げ成形し溶接することで缶胴部が形成されてなる。この缶内部における溶接部Wは、溶接部被覆フィルム10で被覆されている。
【0018】
溶接部被覆フィルム10は、変性ポリオレフィン層11と、熱硬化性樹脂層12と、熱可塑性ポリエステル層13とを順次積層した三層構造を有しており、変性ポリオレフィン層11側が鋼板1の溶接部Wと接するように接着されている。
変性ポリオレフィン層11は、溶接部被覆フィルム10を溶接部Wに密着させる機能を有しており、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、エステル基から選択される少なくとも一種の官能基を有する化合物で変性されたポリオレフィンから構成されている。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレンと少量のα−オレフィンからなるブロック又はランダム共重合体、エチレン−プロピレンラバーなどのポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどに、無水マレイン酸、アクリル酸、グリシジルメタアクリレートなどの極性基をグラフト反応などによって導入したものである。これらの変性ポリオレフィンを二種以上混合したものを用いてもよい。特に、溶接部への密着性を向上させるために、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレン−α−オレフィン共重合体に、無水マレイン酸、アクリル酸、グリシジルメタクリレートをグラフト共重合したものを用いることが好ましい。
【0019】
この変性ポリオレフィン層10の厚みは、特に限定されないが、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは40〜150μmとするのがよい。ここで、変性ポリオレフィン層の厚みを30μm以下とすると溶接部Wの段差Sや突起部Pによってピンホールが発生しやすく、一方、変性ポリオレフィン層11の厚みを150μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とすることが望ましい。
【0020】
熱硬化性樹脂層12は、変性ポリオレフィン層11と熱可塑性ポリエステル層13とを接着させるための接着剤として機能しており、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂を用いる。例えば、芳香族ビスフェノールとエピクロロヒドリンの縮合物を、フェノール系化合物によって硬化させた熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0021】
このような熱硬化性樹脂層12を設けることにより、変性ポリオレフィン層11と熱可塑性ポリエステル層13との接着性が格段に向上する。
この熱硬化性樹脂層12の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10. 0μm、さらに好ましくは、0.3〜5.0とするのがよい。ここで、熱硬化性樹脂層12の厚みを0.1μm以下とすると変性ポリオレフィン層11との密着性が低下してしまい、一方、熱硬化性樹脂層12の厚みを10.0μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とすることが望ましい。
【0022】
熱可塑性ポリエステル層13は、溶接部Wの段差Sや突起部Pに起因するピンホールの発生を抑制させる機能を有しており、熱可塑性のポリエステル樹脂で構成される。例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレン2,6−ナルタレートなどのポリエステル単独重合体や、これらのポリエステル単独重合体にイソフタル酸、ブタンジオール、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビスフェノールA、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを共重合した共重合ポリエステルや、上述のポリエステル樹脂を二種以上混合したポリエステル組成物などが挙げられる。特に、優れた内容物バリアー性を確保するために、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート/イソフタレート共重合体、ポリエチレンテレフタラート/ポリブチレンテレフタラート共重合体などを用いることが好ましい。
【0023】
ここで、熱可塑性ポリエステル層13は、上述の熱可塑性ポリエステル樹脂或いは組成物の一種からなる単層構造としても、二種以上からなる積層構造としても構わない。
また、熱可塑性ポリエステル層13を構成する熱可塑性ポリエステル樹脂の融点は、特に限定されないが、被覆時の加熱処理によって溶融しないことが好ましい。
【0024】
さらに、この熱可塑性ポリエステル層13の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜50μm、さらに好ましくは10〜40μmとするのがよい。ここで、熱可塑性ポリエステル層13の厚みを5μm以下とするとピンホールが発生しやすくなり、一方、熱可塑性ポリエステル層13の厚みを50μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とすることが望ましい。
【0025】
ここで、上述の三層を積層して溶接部被覆フィルム10を形成する方法は、いずれの方法を用いてもよいが、例えば、以下に示す方法などが挙げられる。
まず、所望の厚みの熱可塑性ポリエステル層13と変性ポリオレフィン層11とをTダイエクストルージョン法などによって製膜する。
このとき、熱可塑性ポリエステル層13は、強度や内容物のバリアー性を向上させるために、一軸延伸、二軸延伸などを施して配向結晶させることが望ましい。この配向結晶性の目安となる面配向係数に関しては、特に限定されないが、好ましくは0.12〜0.18の範囲とすることが好ましい。ここで、面配向係数が0.12以下とすると内容物バリアー性が低下してしまい、一方、面配向係数が0.18以上とすると加熱処理の際に熱収縮が起こりやすくなるため、上述の範囲とすることが望ましい。なお、面配向係数は、アッベ屈折率計を用い、溶接部被覆フィルムの厚み方向(α)と、幅方向(β)と、長手方向(γ)との屈折率を測定して以下の式で算出している。
配向係数ΔP={(β+γ)/2}−α
続いて、熱可塑性ポリエステル層13の一面に、未硬化の熱硬化性樹脂層12を塗布したのち、この熱硬化性樹脂層12側に変性ポリオレフィン層11を積層し、ドライラミネートによって三層を接着させる。このドライラミネートを行う際の温度は、100〜200℃とすることが好ましい。ここで、ドライラミネートの温度を100℃以下で行うと、熱硬化性樹脂層12の硬化反応が進行しにくく、熱可塑性ポリエステル層13と熱硬化性樹脂層12との接着強度が低下する。一方、ドライラミネートの温度を200℃以上で行うと、変性ポリオレフィン層11が著しく溶融してしまうため、溶接部被覆フィルム10の製膜が困難になってしまう。
【0026】
次に、本実施形態における樹脂被覆缶100の製造方法と、この樹脂被覆缶100における溶接部Wへの溶接部被覆フィルムの被覆方法について説明する。
図2は、本発明における樹脂被覆缶の製造方法の一部を示し、(a)は樹脂被覆缶の形成材料である金属板の平面図、(b)は図1(a)の金属板を円筒状に溶接した状態を示す断面図である。
【0027】
まず、樹脂被覆缶100の構成材料となる鋼板1に、その継ぎ目となる溶接部Wの端部を除いた一面に、ポリエステル又はポリオレフィン系の熱可塑性樹脂フィルム2を接着させる。そして、熱可塑性樹脂フィルム2が接着された鋼板1を、所定の大きさに切断し、この熱可塑性樹脂フィルム2面が内側に位置するように曲げ成形し、その端部を1mm程度重ね合わせて円筒を形成する。
【0028】
続いて、その端部をシーム溶接することによって、樹脂被覆缶100の缶胴部を形成する。このとき、金属板の端部を重ねて溶接したことにより、溶接部Wには板厚約0.3から0.4mm程度に相当する段差Sが生じている。また、溶接熱により溶融した鋼板1が溶接部Wより突出して固まるため、チリと呼ばれる突出部Pも生じてしまう。
【0029】
そして、樹脂被覆缶100の缶胴部内面における溶接部Wを、変性ポリオレフィン層11の融点よりも高く、熱可塑性ポリエステル層13の融点よりも低い温度、例えば、120〜240℃で加熱した状態で、溶接部被覆フィルム10を、変性ポリオレフィン層11側が鋼板1と接するように熱圧着させる。
ここで、加熱温度よりも低い温度の融点を有する変性ポリオレフィン層11は溶融し、溶接部Wの段差Sや突起部Pの隙間をカバーするように鋼板1と接着する。また、加熱温度よりも高い温度の融点を有する熱可塑性ポリエステル層13は、溶融せず、溶接部Wの段差Sや突起部Pへの破損やピンホールの発生を抑制する機能を有する。
【0030】
このような構成を有する樹脂被覆缶100は、その溶接部Wが上述した溶接部被覆フィルム10で被覆されていることによって、鋼板1の溶接部Wと溶接部被覆フィルム10との間に間隙が存在せず、且つ、ピンホールが発生しないため、耐蝕性を大幅に向上させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態における溶接部被覆フィルム10の形成方法として、未硬化の熱硬化性樹脂層12が塗布された熱可塑性ポリエステル層13の一面に、この熱硬化性樹脂層12側に変性ポリオレフィン層11を積層し、ドライラミネートして接着させたが、熱可塑性ポリエステル層13と変性ポリオレフィン層11との間に熱硬化性樹脂層12を介層するのであればこれに限らない。例えば、変性ポリオレフィン層11の一面に未硬化の熱硬化性樹脂層12を塗布しておき、この熱硬化性樹脂層12側に熱可塑性ポリエステル層13を積層し、ドライラミネートするようにしても構わない。
【0032】
【第一実施例】
次に、本実施形態の樹脂被覆缶におけるピンホールの発生の有無及び溶接部段差における空隙の有無、並びに耐蝕性を評価した結果について説明する。表1は、実施例1〜8及び比較例1〜5において使用した溶接部被覆フィルム10の形成材料と、ピンホールの発生の有無及び溶接部段差における空隙の有無を評価した結果について示す。なお、ピンホールの発生の有無は、樹脂被覆缶として作製したペール缶10缶において、溶接部に発生したピンホール数を湿式ピンホール計を用いて測定した。また、溶接部段差における空隙の有無は、溶接部段差における空隙を目視によって調査した。さらに、耐蝕性は、ピンホール及び空隙の有無の評価が完了したペール缶に界面活性剤(ジョンソン製床用洗剤)を充填し、40℃で3カ月放置することで溶接部の腐食状態を調査した。図3は、溶接部被覆フィルムの厚みと、ピンホール発生率との関係を示す図であり、ここでは、実施例1、4、5と、比較例1〜4における結果を示した。
【0033】
ここで、本実施例における樹脂被覆缶100の製造方法は、まず、予め180℃に余熱された薄目付けTFS(Tin Free Steel、板厚0.25mm)からなる鋼板1の上面に、ポリエチレン(PE:出光ユニテック製765C、膜厚70μm)を、ロールラミネータによってラミネートした。
次に、この鋼板1を、ペール缶製造ラインにおいて曲げ加工し、缶胴部の溶接を行った。そして、溶接部Wを180℃に加熱した状態で、ロール圧着法によって、試料となる溶接部被覆フィルム10を変性ポリオレフィン層11側が溶接部Wに接着するように熱圧着させる。ここで、本実施例で使用した溶接部被覆フィルム10は、いずれも幅20mm、長さ10mのテープ状に加工したものを使用した。
【0034】
次いで、ビード加工、カール加工を行った後、天板及び地板を従来の技術を用いて取り付け、ペール缶を完成させた。
【0035】
【表1】
【0036】
なお、実施例1は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET(融点255℃)とPET/イソフタレート共重合体(融点207℃)とからなる二層構造のポリエステルフィルム(デュポンシュア製メリネックス850、膜厚20μm、配向係数0.166)を適用した。また、熱硬化性樹脂層12として、エポキシ系樹脂 (東洋インキ製エポキシ−フェノール樹脂)を適用した。さらに、変性ポリオレフィン層11として、無水マレイン酸変性ポリエチレン (三井化学製アドマーXE070、融点85℃)を適用した。
【0037】
実施例2は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET単層フィルム(ユニチカ製s−25、膜厚25μm、配向係数0.168、融点255℃)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
実施例3は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET(融点255℃)とPET/イソテレフタレート共重合体(融点207℃)からなる二層構造のポリエステルフィルム(ガルワレ社製PTO55、膜厚30μm、配向係数0.165)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0038】
実施例4は、変性ポリオレフィン層11として、実施例1と同様の材料を用い、膜厚を30μmとした以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
実施例5は、変性ポリオレフィン層11として、実施例1と同様の材料を用い、膜厚を150μmとした以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
実施例6は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、PET(デュポン社製メリネックス850)を使用し、変性ポリオレフィン層11として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学製アドマーSF731、融点70℃)を使用した以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0039】
実施例7は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、PET(デュポン社製メリネックス850)を使用し、変性ポリオレフィン層11として、エポキシ変性ポリエチレン(PEにグリシジルメタクレレートを3重量%、パーオキサイド(日本油脂製パークミルD)を0.3%添加し、2軸押出機中、180℃で変性したもの、融点90℃)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0040】
実施例8は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、ポリプロピレン(三菱樹脂製、ホモポリプロピレンと無水マレイン酸変性ランダム共重合ポリプロピレンの二層構造、膜厚50μm)を用い、変性ポリオレフィン層11として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学製アドマーQF570、融点80℃)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0041】
また、比較例1は、溶接部被覆フィルムとして、ポリエステル層のみからなるフィルム(ガルワレ社製PTO55、PETとPET/イソフタレート共重合体からなる二層構造、膜厚30μm、配向係数0.165)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
比較例2は、比較例1で用いたフィルムを用い、膜厚を45μmとした以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0042】
比較例3は、溶接部被覆フィルムとして、ポリエチレンと、変性ポリエチレンとの二層構造のフィルム(三井化学製アドマーXE070、膜厚150μm)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
比較例4は、比較例2で用いたフィルムを用い、膜厚を150μmとした以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
【0043】
比較例5は、溶接部被覆フィルムとして、ポリエステル系粉体塗料(デクスターミドランド社製VP)を用いた以外は、実施例1と同様の条件で評価を行った。
表1及び図3に示すように、熱可塑性ポリエステル層13と、熱硬化性樹脂層12と、変性ポリオレフィン層11とからなる溶接部被覆フィルム10で溶接部Wを被覆した樹脂被覆缶100においては、ピンホール及び溶接部Wにおける空隙がいずれも発生していないことが確認できた。さらに、樹脂被覆缶100における耐蝕性も確保できていることが確認できた。
(第二実施形態)
図4は、本発明の溶接部被覆フィルムの他の構成例を示す断面図である。
【0044】
本実施形態における樹脂被覆缶100Aは、第一実施形態における樹脂被覆缶100において、その溶接部Wを被覆する溶接部被覆フィルム10Aを変えて構成している。
本実施形態における溶接部被覆フィルム10Aは、図4に示すように、第一の変性ポリオレフィン層14と、ポリオレフィン層15と、第二の変性ポリオレフィン層16と、熱硬化性樹脂層12と、熱可塑性ポリエステル層13とを順次積層した五層構造を有しており、第一の変性ポリオレフィン層14側と鋼板1の溶接部W側とが接するように接着している。
【0045】
第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16は、第一実施形態で用いた変性ポリオレフィン層11と同一の材料から構成することができ、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16を同一材料から構成しても、それぞれ異なる材料から構成しても構わない。
この第一の変性ポリオレフィン14及び第二の変性ポリオレフィン層16の厚みは、特に限定されることはないが、好ましくは、1〜30μm、さらに好ましくは、3〜20μmとするのがよい。ここで、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16の厚みを1μm以下にすると熱硬化性樹脂層12との接着性や溶接部Wとの接着性が低下してしまい、一方、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16の厚みを30μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とするのが好ましい。なお、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16の厚みは、上述の範囲内であれば、同一であっても、それぞれ異なるように形成しても構わない。
【0046】
ポリオレフィン層15は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレンと少量のα−オレフィンからなるブロック又はランダム共重合体、エチレン−プロピレンラバーなどのポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、これらのポリオレフィン系樹脂を混合したものなどが挙げられる。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレン単独重合体、ポリプロピレンと少量のα−オレフィンからなるブロック又はランダム共重合体が望ましい。
【0047】
このポリオレフィン層15の厚みは、特に限定されないが、好ましくは5〜180μm、さらに好ましくは10〜150μmとするのがよい。ここで、ポリオレフィン層の厚みを5μm以下とするとピンホールが発生しやすくなり、一方、ポリオレフィン層15の厚みを150μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とするのが望ましい。
【0048】
熱硬化性樹脂層12、熱可塑性ポリエステル層13は、第一実施形態で説明したものと同じものとすることができる。
ここで、上述の五層を積層して溶接部被覆フィルム10Aを形成する方法は、いずれの方法を用いてもよいが、例えば、以下に示す方法などが挙げられる。
まず、所望の厚みの熱可塑性ポリエステル層13と、第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16の三層フィルムとを、Tダイエクストルージョン法などによって製膜する。
【0049】
続いて、熱可塑性ポリエステル層13の一面に、未硬化の熱硬化性樹脂層12を塗布したのち、この熱硬化性樹脂層12側に第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16の三層フィルムを積層し、ドライラミネートによって五層を接着させる。このドライラミネートを行う際の温度は、100〜200℃とすることが好ましい。ここで、ドライラミネートの温度を100℃以下で行うと、熱硬化性樹脂層12の硬化反応が進行しにくく、熱可塑性ポリエステル層13と熱硬化性樹脂層12との接着強度が低下する。一方、ドライラミネートの温度を200℃以上で行うと、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16が著しく溶融してしまうため、溶接部被覆フィルム10Aの製膜が困難になってしまう。
【0050】
ここで、第一の変性ポリオレフィン層14と、ポリオレフィン層15と、第二の変性ポリオレフィン層16との総厚みは、特に限定されないが、好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは40〜180μmとするのがよい。ここで、この総厚みを30μm以下とするとピンホールが発生しやすくなり、一方、この総厚みを200μm以上とするとコストが増大してしまうため、上述の範囲とすることが望ましい。
【0051】
次に、本実施形態における樹脂被覆缶100Aの製造方法と、この樹脂被覆缶100Aへの溶接部Wに溶接被覆フィルム10Aをする被覆する方法について説明する。なお、第一実施形態と重複する部分は省略する。
本実施形態における樹脂被覆缶100Aは、その缶胴部内面における溶接部Wを、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16並びにポリオレフィン層15の融点よりも高く、熱可塑性ポリエステル層13の融点よりも低い温度、例えば、120〜240℃で加熱した状態で、その溶接部Wに、第一の変性ポリオレフィン層14側が鋼板1と接するように、溶接部被覆フィルム10Aを熱圧着させている。
【0052】
このとき、加熱温度よりも低い温度の融点を有する第一の変性ポリオレフィン層14、ポリオレフィン層15及び第二の変性ポリオレフィン層16は溶融し、溶接部Wの段差Sや突起部Pの隙間をカバーするように鋼板1と接着する。また、加熱温度よりも高い温度の融点を有する熱可塑性ポリエステル層13は、溶融せず、溶接部Wの段差Sや突起部Pへの破損やピンホールの発生を抑制する機能を有する。さらに、第二の変性ポリオレフィン層16は、ポリオレフィン層15と熱硬化性樹脂層12との接着性を向上させる機能をも有する。
【0053】
このように、本実施形態における樹脂被覆缶100Aは、その溶接部Wに上述した溶接部被覆フィルム10Aで被覆されていることによって、鋼板1の溶接部Wと溶接部被覆フィルム10Aとの間に間隙が存在せず、且つ、ピンホールが発生しないため、耐蝕性を大幅に向上させることが可能となる。
また、本実施形態における溶接部被覆フィルム10Aによれば、バリアー性に優れたポリオレフィン層15を含むことによって、外部からの水分などの浸入を効果的に抑制することができるため、樹脂被覆缶100Aにおける耐蝕性をさらに向上させることが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態における溶接部被覆フィルム10Aの形成方法として、熱可塑性ポリエステル層13の一面に未硬化の熱硬化性樹脂層12を塗布し、この熱硬化性樹脂層12側に第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16からなる三層フィルムを積層し、ドライラミネートして接着させたが、熱可塑性ポリエステル層13と第二の変性ポリオレフィン層16との間に熱硬化性樹脂層12を介層するのであればこれに限らない。
例えば、第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16からなる三層フィルムにおける第二の変性ポリオレフィン層16側に、未硬化の熱硬化性樹脂層12を塗布しておき、この熱硬化性樹脂層12側に熱可塑性ポリエステル層13を積層し、ドライラミネートするようにしても構わない。
【0055】
【第二実施例】
次に、本実施形態の樹脂被覆缶におけるピンホールの発生の有無及び溶接部段差における空隙の有無、並びに耐蝕性を評価した結果について説明する。表2は、実施例9〜16において使用した溶接部被覆フィルム10の形成材料と、ピンホールの発生の有無及び溶接部段差における空隙の有無を評価した結果について示す。ここで、比較例及び評価方法、並びに試験条件は、第一実施例と同様の条件で行った。
【0056】
【表2】
【0057】
なお、実施例9は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET(融点255℃)とPET/イソフタレート共重合体(融点207℃)とからなる二層構造のポリエステルフィルム(デュポン社製メリネックス850、膜厚20μm、配向係数0.166)を使用した。また、熱硬化性樹脂12として、エポキシ系樹脂(東洋インキ製エポキシ−フェノール樹脂)を使用した。さらに、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学製アドマー、融点85℃)を使用した。さらにポリオレフィン層15として、ポリエチレン(日石化学製レクスロンV351、融点125℃)を使用した。ここで、第一の変性ポリオレフィン層14である無水マレイン酸変性ポリエチレンと、ポリオレフィン層15であるポリエチレンと、第二の変性ポリオレフィン層16である無水マレイン酸変性ポリエチレンとは、Tダイエクストルージョン法によって共押出し、無水マレイン酸変性ポリエチレン(5μm)/ポリエチレン(40μm)/無水マレイン酸変性ポリエチレン(5μm)の三層フィルムを製膜した。そして、この三層フィルムと、熱可塑性ポリエステル層13とを第一実施例と同様にドライラミネートし、5層構造の溶接部被覆フィルム10Aを作製している。
【0058】
実施例10は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET単層フィルム(ユニチカ製s−25、膜厚25μm、配向係数0.168、融点255℃)を用いた以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
実施例11は、熱可塑性ポリエステル層13として、PET (融点255℃)とPET/イソテレフタレート共重合体(融点207℃)からなる二層構造のポリエステルフィルム(ガルワレ社製PTO55、膜厚30μm、配向係数0.165)を用いた以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
【0059】
実施例12は、第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16の膜厚を、それぞれ5μm/20μm/5μmとした以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
実施例13は、第一の変性ポリオレフィン層14/ポリオレフィン層15/第二の変性ポリオレフィン層16の膜厚を、それぞれ10μm/130μm/10μmとした以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
【0060】
実施例14は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、PET(デュポン社製メリネックス850)を使用し、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16として、無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学製アドマーSF731、融点70℃)を使用した以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
【0061】
実施例15は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、PET(デュポン社製メリネックス850)を使用し、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16として、エポキシ変性ポリエチレン(PEにグリシジルメタクレレートを3重量%、パーオキサイド(日本油脂製パークミルD)を0.3%添加し、2軸押出機中、180℃で変性したもの、融点90℃)を用いた以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
【0062】
実施例16は、鋼板1にラミネートする熱可塑性樹脂フィルム2として、ポリプロピレン(三菱樹脂製、ホモポリプロピレンと無水マレイン酸変性ランダム共重合ポリプロピレンの二層構造、膜厚50μm)を用い、第一の変性ポリオレフィン層14及び第二の変性ポリオレフィン層16として、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学性アドマーQF570、融点80℃)を用いた以外は、実施例9と同様の条件で評価を行った。
【0063】
表2に示すように、熱可塑性ポリエステル層13と、熱硬化性樹脂層12と、第一の変性ポリオレフィン層14と、ポリオレフィン層15と、第二の変性ポリオレフィン層16とからなる5層構造の溶接部被覆フィルム10で溶接部Wを被覆した樹脂被覆缶100Aにおいては、ピンホール及び溶接部Wにおける空隙がいずれも発生していないことが確認できた。さらに、樹脂被覆缶100Aにおける耐蝕性も確保できていることが確認できた。
【0064】
なお、第一及び第二の実施形態における樹脂被覆缶100、100Aとして、円筒形状のものについて説明したが、これに限らず、四角形状、多角形状などいずれの形状の樹脂被覆缶100に適用することが可能である。
また、第一及び第二の実施形態においては、本発明の溶接部被覆フィルム10、10Aを樹脂被覆缶100、100Aの溶接部Wに被覆する例について説明したが、金属板の溶接部を被覆するものであれば、その他の用途に適用することも可能である。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の溶接部被覆フィルムによれば、軟性を有する変性ポリオレフィンによって溶接部の段差に密着して接着するとともに、硬性を有する熱可塑性ポリエステル層によって、溶接部の段差や突起部でのピンホールの発生を抑制することが可能となる。すなわち、溶接部を確実に被覆することができ、溶接部の耐蝕性を向上させることが可能となる。
【0066】
また、変性ポリオレフィン層と熱可塑性ポリエステル層との接着性を向上させることが可能となる。このため、本発明における溶接部被覆フィルムを金属板に接着したのち、この金属板の加工成形を容易且つ確実に行うことが可能となる。
請求項2に記載の溶接部被覆方法によれば、金属板に、容易且つ確実に溶接部被覆フィルムを被覆させることが可能となる。
【0067】
請求項3に記載の樹脂被覆缶によれば、耐蝕性を大幅に向上させることが可能となる。 請求項4に記載の溶接部被覆フィルムによれば、軟性を有する変性ポリオレフィンによって溶接部の段差に密着して接着するとともに、硬性を有する熱可塑性ポリエステル層によって、溶接部の段差や突起部でのピンホールの発生を抑制することが可能となる。すなわち、溶接部を確実に被覆することができ、溶接部の耐蝕性を向上させることが可能となる。
【0068】
また、溶接部被覆フィルムにおいて、内容物のバリアー性に優れたポリオレフィン層を含むことによって、耐蝕性をさらに向上させることが可能となる。
さらに、第二の変性ポリオレフィン層と熱可塑性ポリエステル層との接着性を向上させることが可能となる。このため、本発明における溶接部被覆フィルムを金属板に接着したのち、この金属板の加工成形を容易且つ確実に行うことが可能となる。
【0069】
請求項5の記載の溶接部被覆方法によれば、金属板に、容易且つ確実に溶接部被覆フィルムを被覆させることが可能となる。
請求項6に記載の樹脂被覆缶によれば、耐蝕性を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における溶接部被覆フィルムの一構成例を示す断面図である。
【図2】本発明における溶接部被覆フィルムの他の構成例を示す断面図である。
【図3】本発明における溶接部被覆フィルムの厚みと、ピンホール発生率との関係を示す図である。
【図4】本発明における溶接部被覆フィルムの他の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 鋼板(金属板)
2 熱可塑性樹脂フィルム(樹脂)
10、10A 溶接部被覆フィルム
11 変性ポリオレフィン層
12 熱硬化性樹脂層
13 熱可塑性ポリエステル層
14 第一の変性ポリオレフィン層
15 ポリオレフィン層
16 第二の変性ポリオレフィン層
100、100A 樹脂被覆缶
P 突起部
S 段差
W 溶接部
Claims (6)
- 金属板の溶接部を被覆するための溶接部被覆フィルムであって、
変性ポリオレフィン層と、熱可塑性ポリエステル層との間に、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層が介層されてなることを特徴とする溶接部被覆フィルム。 - 金属板の溶接部を請求項1に記載の溶接部被覆フィルムで被覆する溶接部被覆方法であって、
前記金属板の溶接部を、前記変性ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、前記熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度で加熱した状態で、前記変性ポリオレフィン層側が、前記金属板の溶接部に接着するように熱圧着することを特徴とする溶接部被覆方法
。 - 樹脂が被覆された金属板を曲げ成形して溶接することで缶胴部が形成されてなる樹脂被覆缶において、
前記金属板の溶接部が、請求項1に記載の溶接部被覆フィルムで被覆されていることを特徴とする樹脂被覆缶。 - 金属板の溶接部を被覆するための溶接部被覆フィルムであって、
第一の変性ポリオレフィン層の上面に、ポリオレフィン層と、第二の変性ポリオレフィン層と、フェノール系化合物で硬化させたエポキシ系熱硬化性樹脂層と、熱可塑性ポリエステル層とが順次積層されてなることを特徴とする溶接部被覆フィルム。 - 金属板の溶接部を請求項4に記載の溶接部被覆フィルムで被覆する溶接部被覆方法であって、
前記金属板の溶接部を、前記第一及び第二の変性ポリオレフィン層並びに前記ポリオレフィン層の融点よりも高く、且つ、前記熱可塑性ポリエステル層の融点よりも低い温度で加熱した状態で、前記第一の変性ポリオレフィン層側が前記金属板と接着するように熱圧着することを特徴とする溶接部被覆方法。 - 樹脂が被覆された金属板を、曲げ成形して溶接することで缶胴部が形成されてなる樹脂被覆缶において、
前記金属板の溶接部が、請求項4に記載の溶接部被覆フィルムで被覆されていることを特徴とする樹脂被覆缶。
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