JP3810236B2 - 窒化珪素質焼結体及びその製造方法 - Google Patents

窒化珪素質焼結体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温における疲労寿命の長い窒化珪素質焼結体とその製造方法に関するものであり、特にピストンピン、エンジンバルブ等の自動車用部品やガスタービンエンジン用部品などの熱機関用部品として好適なものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、エンジニアリングセラミックスとして知られている窒化珪素質焼結体は、耐熱性、耐熱衝撃性、耐摩耗性及び耐酸化性に優れることから、特にガスタービンやタ−ボロ−タ等の熱機関用部品としての応用が進められている。
【0003】
窒化珪素は難焼結材であることから焼結性を向上させるため、窒化珪素粉末に対し、焼結助剤としてY23などの希土類元素酸化物や酸化アルミニウムなどを添加した成形体を、加圧焼成し、窒化珪素結晶相を主体とし、希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる非晶質の粒界相により構成された焼結体を得ることが知られている。
【0004】
しかし、焼結助剤として希土類元素酸化物と酸化アルミニウムを用いた場合、室温での強度は高いものの、高温域、例えば1000℃前後の温度域では、焼結体中の希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる粒界相が低融点で高温域において軟化し易いため、高温強度および疲労特性が大きく劣化するといった課題があった。
【0005】
また、高い高温強度を実現するために微細な組織としたために、破壊靭性が小さくなって、衝撃などが窒化珪素質焼結体に加わったとき、クラックの進展が早く、容易に破壊されるという問題があった。
【0006】
そこで、高温強度を向上するために、特開平7−330437号公報では、熱処理を加えて希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる非晶質の粒界相を結晶化させて、高温強度に優れた窒化珪素質焼結体が提案されている。
【0007】
また、破壊靭性値を向上させるために、特開平5−186271号公報では、窒化珪素粒子の成長を促進して柱状の粒子を形成せしめ、破壊しにくい窒化珪素質焼結体が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−330437号公報で開示された窒化珪素質焼結体では、高温強度が大きいものの、破壊靭性値が低いため、実際の熱機関で使用された場合にチッピングを生じやすいという問題があった。
【0009】
また、焼結助剤として含有する酸化アルミニウムは粒界相の結晶化を抑制する作用があるため、窒化珪素粒子間や窒化珪素粒子と結晶化された粒界相との間に存在する非晶質相が原因となり、高温強度のばらつきが大きくなるとともに、また高温域での疲労寿命も短かく、熱機関用部品などは高温に曝された過酷な条件下で長期に安定して使用することができない問題があった。
【0010】
一方、特開平5−186271号公報で開示されているように、粒成長を促進し、破壊靭性値を向上させることができるが、その反面、その成長した粒子そのものが破壊源となるため、強度特性を劣化させる問題があった。
【0011】
以上のように、高温強度または高靭性のいずれかの特性を改善する手法が得られているものの、その特性が不十分であったり、一方の特性を改善すると他方の特性が低下するという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、室温から1000℃付近の高温域において優れた強度を有するとともに、かつチッピング性に優れた高靭性で、疲労寿命の長い窒化珪素質焼結体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化珪素質焼結体は、窒化珪素を主成分とし、希土類元素が酸化物換算で2〜10重量%、アルミニウムが酸化物換算で2〜5重量%、さらに過剰酸素が酸化珪素換算で0.5〜5重量%で、かつ前記希土類元素の酸化物換算量に対するアルミニウムの酸化物換算量の比が0.2〜0.7、前記希土類元素の酸化物換算量に対する過剰酸素の酸化珪素換算量の比が0.2〜0.7となる窒化珪素質焼結体において、β型窒化珪素結晶相と、希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる粒界結晶相並びに粒界非晶質相よりなり、10μm以下のβ型窒化珪素結晶相のマトリックス70〜90%、40〜100μmのβ型窒化珪素結晶10〜30%含み、かつ窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みが2nm以下で、かつ上記β型窒化珪素結晶相と前記粒界結晶相間の非晶質相の厚みが5nm以下であることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明の窒化珪素質焼結体は、粒界相の結晶化を促進させ、窒化珪素粒子間や窒化珪素粒子と結晶化された粒界相との間に存在する非晶質相の厚みを薄くすることで、粒界の強度が高くなるために高温強度が向上し、また粒界での高温すべりが抑制されるために疲労寿命が改善できる。さらに、微細な窒化珪素粒子からなるマトリックス中に、柱状で大きな窒化珪素粒子を所定の粒度分布で分散させることによってクラックの進行方向を変え、クラックの走行距離を長くすることで破壊エネルギーを吸収し、靭性を改善することができる。したがって、高温強度に優れ、疲労寿命の長く、高靭性な窒化珪素質焼結体を得ることができる。
【0015】
また、希土類元素、アルミニウムおよび過剰酸素の含有量およびこれらの存在比が、アスペクト比および粒界結晶量に影響を及ぼすため、添加量とこれらの存在比を制御して上記の組織が得られる。
【0016】
さらに、本発明は上記窒化珪素質焼結体を製造するために、窒化珪素を主成分とし、助剤成分として希土類元素酸化物が2〜10重量%、酸化アルミニウムが2〜5重量%、さらに過剰酸素が酸化珪素換算で0.5〜5重量%で、かつ上記希土類元素酸化物量に対する酸化アルミニウム量の比が0.2〜0.7、上記希土類元素酸化物量に対する過剰酸素の酸化珪素換算量の比が0.2〜0.7となるようにそれぞれ添加してなる成形体を、非酸化性雰囲気下にて1700〜1800℃の温度で焼成し、その後窒素圧5気圧以上で1900〜2000℃の温度域で焼成し、しかるのち1000℃まで50℃/分以上の速度で急冷したあと、1000〜1500℃の熱処理をすることで焼結体の粒界相を結晶化することを特徴とする。
【0017】
これは、β型窒化珪素結晶相と、希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる粒界結晶相並びに粒界非晶質相よりなり、10μm以下のβ型窒化珪素結晶相のマトリックス70〜90%、40〜100μmのβ型窒化珪素結晶10〜30%含み、かつ窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みが2nm以下で、かつ前記β型窒化珪素結晶相と前記粒界結晶相間の非晶質相の厚みが5nm以下となる組織を得るためであり、所定の温度で焼成し、粒成長を促進させた後、特定の速度で急冷したあと、熱処理や熱が加わる条件で使用することにより粒界相を結晶化させることが重要である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化珪素質燒結体は、図1に結晶構造の模式図を示すように、β型窒化珪素結晶相1を主体とし、希土類元素、珪素、酸素及び窒素とからなる粒界結晶相2並びに粒界非晶質相3,4を有するものであるが、本発明によれば、窒化珪素結晶相1間の非晶質相3の厚みが2nm、好ましくは1nm以下で、かつ窒化珪素結晶相1と粒界結晶相2間の非晶質相4の厚みが5nm、好ましくは3nm以下であることを大きな特徴とする。
【0019】
このように、粒界相を単に結晶化させるだけでなく、窒化珪素結晶相1間に残存する粒界非晶質相3や窒化珪素結晶相1と粒界結晶相2との間に残存する粒界非晶質相4の厚みを上記範囲内まで薄くすることで、酸化特性、クリープ等の他の高温特性を向上させることができる。
【0020】
すなわち、粒界の非晶質相3,4が薄いと、1000℃前後の高温下で非晶質相3、4が軟化しにくくなり、また外部応力に対してクラックが進展しにくくなる。その結果、1000℃の高温雰囲気下で700MPaの荷重を加えた時の繰り返し疲労寿命を107回以上、さらには3×107回以上にまで大幅に高めるとともに、窒化珪素質焼結の高温強度を800MPa以上にすることができる。
【0021】
ところで、このような高温特性を得るためには、窒化珪素に対し、Y、Er、Yb、Lu、Sm、Dy等の希土類元素を酸化物換算量で2〜10重量%、好ましくは4〜8重量%と、アルミニウムを酸化アルミニウム換算量で2〜5重量%、好ましくは3〜4重量%の範囲で含有するとともに、過剰酸素を酸化珪素換算量で0.5〜5重量%、好ましくは2〜4重量%の範囲で含み、さらに上記希土類元素の酸化物換算量に対するアルミニウムの酸化アルミニウム換算量の比が0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6で、かつ上記希土類元素の酸化物換算量に対する過剰酸素の酸化珪素換算量の比が0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6であることが重要である。
【0022】
ここで、過剰酸素は希土類酸化物に必要な酸素量と酸化アルミニウムに必要な酸素量とを算出し、全体の酸素量から差し引いたものである。全酸素量は、燃焼法を用いた酸素分析装置にて測定を行うことができる。
【0023】
即ち、希土類元素、アルミニウム、過剰酸素の含有量及び比率が上記範囲を外れると、希土類元素、珪素、酸素及び窒素とからなる粒界相を十分に結晶化させることができなかったり、結晶化しても粒界非晶質相3および4の厚みを前記範囲とすることができないからである。
【0024】
また、高靭性の特徴を併せ持つために10μm以下好ましくは8μm以下のβ型窒化珪素結晶粒子のマトリックス70〜90%好ましくは80〜90%中に40〜100μm好ましくは70〜90μmの粗大なβ型窒化珪素結晶粒子を10〜30%好ましくは10〜20%の割合で分散させることが重要である。このような組織に制御することにより靭性値を7以上さらには8MPa・m1/2以上に高めることができ、さらに粒界のアモルファスフィルム相の厚みも薄くし、疲労特性をさらに向上できる。10μm以下の微細粒子の割合が70%よりも少ない、もしくは柱状粒子が40μm以下ではディフレクションが少なくクラックは比較的直線的に進展し、クラックの走行距離が短いために吸収できる破壊エネルギーが小さくなり、高靭性化が達成されない。また柱状粒子が100μm以上、その割合が20%以上ではそれ自身が破壊源となり高強度化が達成されない。
【0025】
さらに、本発明の窒化珪素質焼結体中には、他の成分として、周期律表第4a、5a、6a族元素の金属や、TiC,TiN,TaC,TaN,VC,NbC,WC,WSi2,Mo2Cなど周期律表第4a、5a、6a族元素の炭化物、窒化物、珪化物の少なくとも1種以上、又はSiCなどを分散粒子やウィスカ−の状態で含有させることで特性を改善することも可能である。ただし、これらの合計含有量は5重量%以下とすることが好ましい。
【0026】
次に、本発明の窒化珪素質焼結体を製造する方法について説明する。
【0027】
まず、窒化珪素粉末を準備する。窒化珪素粉末としては、α−Si34、β−Si34のいずれの状態であっても良く、その粒径が0.4〜1.2μmでかつ酸素を0.5〜1.5重量%の範囲で含有しているものを用いることが良い。
【0028】
そして、この窒化珪素粉末に対し、焼結助剤として希土類元素酸化物を2〜10重量%、好ましくは4〜8重量%と、酸化アルミニウムを2〜5重量%、好ましくは3〜4重量%の範囲でそれぞれ添加するとともに、酸化珪素を0.5〜5重量%、好ましくは2〜4重量%の範囲で添加し、さらに上記希土類元素酸化物の添加量に対する酸化アルミニウムの添加量の比が0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6で、かつ上記希土類元素酸化物の添加量に対する酸化珪素量の比が0.2〜0.7、好ましくは0.3〜0.6となるように調合する。ただし、上記酸化珪素量とは、添加する酸化珪素粉末の添加量に、窒化珪素粉末中に不純物として含まれる過剰酸素を酸化珪素換算した量を加えた値とする。
【0029】
これらの範囲で調合した原料粉末に対して、エタノールやイソプロピルアルコール等の有機溶剤及びバインダーを加えたあと、公知の粉砕方法、例えばボールミル、振動ミル、回転ミル、バレルミル等により原料粉末を均一に混合粉砕したものを、一軸加圧成形法や等加圧成形法、あるいは鋳込み成形法、押出成形法、射出成形法、冷間静水圧プレス等の公知のセラミック成形手段にて所望の形状に形成した成形体を製作する。この時、必要に応じて成形体に切削加工を施して良い。
【0030】
次に、得られた成形体を、非酸化雰囲気中にて1700〜1800℃、好ましくは1750〜1800℃の温度で常圧焼成したあと、1900〜2000℃好ましくは1950から2000℃の温度で、5気圧以上、特に10〜50気圧で焼成する。このような2段階焼成を行うことにより、低温処理で均一で微細な粒子を生成させ、ある程度緻密化させ、その後の高温処理で一部の粒子を粒成長させることができる。また、上記焼成後の冷却過程で1000℃まで50℃/分以上、好ましくは70℃/分以上の速度で急冷することが重要である。
【0031】
なお、焼成にあたっては、密閉した焼成鉢内に充填した酸化珪素とSiの混合粉末、あるいは酸化珪素と窒化珪素の混合粉末内に前記成形体を埋め、SiO含有雰囲気下で焼成するようにしても良く、この場合、焼成時における窒化珪素の分解を抑制することができる。
【0032】
ここで、冷却速度を1000℃まで50℃/分以上とするのは、これより遅い冷却速度では、希土類元素、珪素、酸素及び窒素とからなる粒界相が部分的に結晶化したり、固化して分相を形成し、焼成後の粒界の組成が不均一となるために、後述する熱処理や熱が加わる条件で使用しても、粒界相の結晶化が不十分となり、窒化珪素結晶相1間の非晶質相3の厚みを2nm以下で、かつ窒化珪素結晶相1と粒界結晶相2間の非晶質相4の厚みを5nm以下とすることができないからである。
【0033】
すなわち、本発明によれば、焼成後急冷することで、希土類元素、珪素、酸素及び窒素とからなる粒界相の結晶化を抑制して非晶質の状態とし、粒界の組成を均一化しておくことが好ましい。
【0034】
しかるのち、得られた窒化珪素質焼結体に1000〜1500℃の範囲で熱処理を加える。この熱処理は、1000℃以上の熱が加わる雰囲気下で使用することによっても成就できる。このような熱処理により、焼結体中の希土類元素、珪素、酸素及び窒素とからなる粒界相を結晶化させ、窒化珪素結晶相1間の非晶質相3の厚みを2nm以下で、かつ窒化珪素結晶相1と粒界結晶相2間の非晶質相4の厚みを5nm以下とすることができ、その結果繰り返し疲労寿命の長い耐久性に優れた窒化珪素質焼結体を得ることができる。
【0035】
さらに、本発明の製造方法によれば、出発原料の窒化珪素粉末に対し、10〜80重量%を珪素粉末に置き換えることもでき、この場合、成形体を焼成前に、窒素雰囲気下にて1000〜1400℃の温度で熱処理してSi粉末を窒化処理して窒化珪素を生成させ、成形体の密度を高めたうえで、前記焼成条件で焼成すれば良い。この製法によれば、焼成時の収縮を抑え、緻密で寸法精度の高い窒化珪素質焼結体を得ることができる。
【0036】
【実施例】
実施例1
BET比表面積9m2/g、窒化珪素のα率98%、酸素量1.2重量%の窒化珪素粉末に対し、焼結助剤として平均粒径1.5μmの希土類元素酸化物の粉末と、純度99.9%、平均粒径2μmの酸化アルミニウムの粉末と、純度99.9%、平均粒径2μmの酸化珪素の粉末と、所望により純度99%、平均粒径5.0μmのSi粉末を表1のように調合し、バインダー及び溶媒を添加して混練乾燥したあと、1t/cm2の圧力にて冷間静水圧成形法により成形体を形成した。
【0037】
次に、得られた成形体を炭化珪素からなる匣鉢に入れ、常圧の窒素雰囲下にて1300℃で5時間保持したあと、さらに1750℃の温度にて5時間焼成した。その後1950℃まで昇温し、5時間保持した。その後80℃/分の速度で冷却して窒化珪素質焼結体を得た。その後、この窒化珪素質焼結体を常圧の窒素雰囲気において1200℃で5時間熱処理を行った。
【0038】
そして、得られた窒化珪素質焼結体について、ICP分析と酸素分析にて組成を確認するとともに、焼結体の一部を切り出し、窒素雰囲気中、1100℃の温度で約10時間の熱処理を施したあと、窒化珪素質焼結体の表面に研磨加工を施し、透過型電子顕微鏡により窒化珪素結晶相1間の粒界非晶質相3の厚みL及び窒化珪素結晶相1と粒界結晶相2間の非晶質相4の厚みWを測定した。測定条件は50万倍の格子像を用い、測定ポイントを10カ所とし、その平均値を表1に示した。
【0039】
また、粒径の算出は走査型電子顕微鏡で組織観察を行い、顕微鏡写真から、画像解析により10μm以下、40〜100μmおよび100μm以上の面積比率を求めた。また、JIS1607に従って靭性(K1c)を測定し、JIS1607に従って1000℃での4点曲げ強度測定を行った。
【0040】
さらに、得られた窒化珪素質焼結体を、1000℃の高温雰囲気下で700MPaの荷重を加え、応力比0.1、周波数40Hzの条件下で4点曲げ試験を行い、繰り返し疲労寿命を測定した。
【0041】
結果は、表1に示す通りである。
【0042】
【表1】
Figure 0003810236
【0043】
まず、各種の希土類元素酸化物を5重量%添加してなる本発明の試料No.1〜7は、Lが1nm以下でWが3nm以下であり、10μm以下の窒化珪素粒子が80〜90%、40〜100μmの粒子が10〜20%であり、その結果、1000℃での強度が900MPa以上、破壊靭性が8MPa・m1/2以上、疲労寿命が7×107回以上という優れた特性を有していた。
【0044】
また、表1に示すように、希土類元素としてY23を使用し、過剰酸素の酸化珪素換算量であるSiO2量およびAl23量を変化させた試料No.8〜29から明らかなように、Y23量、SiO2量、Al23量、SiO2/Y23比およびAl23/Y23比が本発明の範囲内にある試料No.8、9、12、13、16、17、20、21、24、25、28および29は、いずれも窒化珪素質焼結体中におけるβ型窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みLを2nm以下で、かつβ型窒化珪素結晶相と粒界結晶相間の非晶質相の厚みWを5nm以下であり、その結果、1000℃での強度を800MPa以上、1000℃の高温雰囲気下で700MPaの荷重を加えた時の繰り返し疲労寿命を107回以上にまで高められることが確認できた。さらに10μm以下のβ型窒化珪素結晶相からなるマトリックス70〜90%のなかに40〜100μmのβ型窒化珪素結晶10〜30%分散させることにより靭性値を7MPa・m1/2以上に高めることができることが確認できた。
【0045】
さらに、出発原料の窒化珪素粉末に対し、10〜80重量%の範囲内で珪素粉末に置き換え、成形体を焼成前に、窒素雰囲気下にて1000〜1400℃の温度で熱処理してSi粉末を窒化処理して窒化珪素を生成させ、成形体の密度を高めたうえで焼成した試料No.28および29は、Lが1nm以下、Wが2nm以下、10μm以下の窒化珪素粒子が80〜90%、40〜100μmの粒子が15〜25%であり、その結果、1000℃での強度が1000MPa以上、破壊靭性が8.5MPa・m1/2以上、疲労寿命が8×107回以上という非常に優れた特性を有していた。
【0046】
これに対して、希土類酸化物量が2重量%未満の試料No.10および10重量%を越える試料No.11、酸化珪素量が0.5重量%未満の試料No.14および5重量%を越える試料No.15、アルミナ量が2重量%未満の試料No.18および5%を越える試料No.19、SiO2/Y23比が0.2より小さい試料No.22および0.7より大きい試料No.23、およびAl23/Y23比が0.2より小さい試料No.26および0.7より大きい試料No.27は、L、Wがそれぞれ2nm、5nmより大きく、また10μm以下の窒化珪素の量が70〜90%の範囲外、40〜100μmの量が10〜30%の範囲外となり、高温強度、破壊靭性および疲労寿命がそれぞれ640MPa以下、6.2MPa・m1/2以下、8×106回以下と低い値であった。
実施例2
次に、組成がY23量が5重量%、SiO2量が3重量%およびAl23量が3重量%含まれる窒化珪素質成形体を1750℃の温度で常圧焼成したあと、1950℃の温度域20気圧で焼成後1000℃で100時間熱処理し、表2に示した冷却速度で1000℃まで冷却し、実施例1と同様の条件にて高温強度、疲労寿命、破壊靭性値を測定した。結果を表2に示した。
【0047】
【表2】
Figure 0003810236
【0048】
その結果、1000℃までの冷却速度が50℃/分以上である試料No.30〜32は、10μm以下のβ型窒化珪素結晶相からなるマトリックス70〜90%のなかに40〜100μmのβ型窒化珪素結晶10〜30%を分散させることができた。また、窒化珪素質焼結体中におけるβ型窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みを2nm以下で、かつβ型窒化珪素結晶相と粒界結晶相間の非晶質相の厚みを5nm以下とすることができた。
【0049】
そして、その結果、1000℃での強度を800MPa以上、靭性値を7MPa・m1/2以上、1000℃の高温雰囲気下で700MPaの荷重を加えた時の繰り返し疲労寿命を107回以上とすることができた。
【0050】
一方、1000℃までの冷却速度が50℃/分より遅い試料No.33および34は、β型窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みが2nmを越えるとともに、β型窒化珪素結晶相と粒界結晶相間の非晶質相の厚みが5nmを越えるので本発明の範囲外となり、高温強度、破壊靭性および疲労寿命がそれぞれ800MPa未満、7MPa・m1/2未満、107回未満と低い値となった。
【0051】
以上の結果から、本発明の窒化珪素質焼結体は、いずれも1000℃の高温強度が800MPa以上、破壊靭性が7MPa・m1/2以上、疲労寿命が107回以上が達成された。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、粒界相の結晶化を促進させて非晶質相の厚みを薄くするとともに、窒化珪素粒子を微細なマトリックスの中に、柱状の窒化けい素粒子を所定量分散させることによって靭性を改善し、高温強度に優れ、疲労寿命の長く、高靭性な窒化珪素質焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素質焼結体の結晶構造を示す模式図である。
【符号の説明】
1・・窒化珪素結晶相
2・・粒界結晶相
3・・窒化珪素結晶相間の非晶質相
4・・窒化珪素結晶相と粒界結晶相間の非晶質相

Claims (2)

  1. 窒化珪素を主成分とし、希土類元素が酸化物換算で2〜10重量%、アルミニウムが酸化物換算で2〜5重量%、さらに過剰酸素が酸化珪素換算で0.5〜5重量%で、かつ前記希土類元素の酸化物換算量に対するアルミニウムの酸化物換算量の比が0.2〜0.7、前記希土類元素の酸化物換算量に対する過剰酸素の酸化珪素換算量の比が0.2〜0.7となる窒化珪素質焼結体において、β型窒化珪素結晶相と、希土類元素、珪素、アルミニウム、酸素及び窒素とからなる粒界結晶相並びに粒界非晶質相よりなり、長径が10μm以下のβ型窒化珪素結晶粒子が面積比率で70〜90%、長径が40〜100μmのβ型窒化珪素結晶粒子を10〜30%含み、かつ窒化珪素結晶相間の非晶質相の厚みが2nm以下で、かつ前記β型窒化珪素結晶相と前記粒界結晶相間の非晶質相の厚みが5nm以下であることを特徴とする窒化珪素質焼結体。
  2. 窒化珪素を主成分とし、希土類元素酸化物が2〜10重量%、酸化アルミニウムが2〜5重量%、さらに過剰酸素が酸化珪素換算で0.5〜5重量%で、かつ前記希土類元素酸化物量に対する酸化アルミニウム量の比が0.2〜0.7、前記希土類元素酸化物量に対する過剰酸素の酸化珪素換算量の比が0.2〜0.7となるようにそれぞれ添加してなる成形体を、非酸化性雰囲気下にて常圧で1700〜1800℃の温度で焼成し、その後窒素圧5気圧以上で1900〜2000℃の温度域で焼成し、しかるのち1000℃まで50℃/分以上の速度で急冷したあと、1000〜1500℃の熱処理をすることで焼結体の粒界相を結晶化することを特徴とする窒化珪素質焼結体の製造方法。
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