JP3810166B2 - 可動式たれ壁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物内にて火災が発生した際に、建物の延焼、煙の拡散を防止する可動式たれ壁に係り、特に、火災時に大きな圧力が発生しても、たれ壁がガイドレールから離脱することなく確実に延焼及び煙の拡散を防止する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、建築物の屋内にて火災が発生すると、有毒性の煙が天井に立ち上り、天井を伝わって屋内中全体に拡散されてしまう。これにより、たとえ炎の回りが遅くてもこの有毒性の煙により人間に害を及ぼしてしまい、最悪の場合には人命にも関わることがある。そこで、昨今における建築物では、火災時に発生する煙の拡散を一時的にストップさせるため、たれ壁の設置が義務付けられている。このようなたれ壁として、従来より、巻き取りローラにより巻着が可能とされた不燃シートを建築物の天井部に設置しておき、火災発生時には巻き取りローラを回転させることにより左右のガイドレールに沿って不燃シートを垂下させて、煙の拡散を防止するものが知られている。
【0003】
ところが、火災時に火災風が発生して大きな風圧が前記不燃シートにかかることがあり、この圧力により不燃シートが左右端部のガイドレールから抜け出て、この隙間から煙が漏れだしてしまい、そもそもの目的である煙の拡散を防止すること(遮煙性の確保)ができなくなってしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように、従来におけるたれ壁においては、火災で発生する火災風等の圧力の影響を考慮しておらず、従って、圧力が加えられた時には不燃シートがガイドレールから外れてしまい、この隙間から煙が拡散してしまうという欠点があった。
【0005】
この発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、火災により不燃シートに過大な圧力が掛かった場合においても、その不燃シートがガイドレールから抜け出ることなく、確実に煙の拡散を防止することのできる可動式たれ壁を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、建築物内部の天井部に配置された長尺と短尺の各巻取りシャフトに巻き取られるとともに、該巻取りシャフトから繰り出されることにより天井部位から一定の高さまで垂下される矩形状の不燃シートと、
前記不燃シートの下端部に配置され、重錘となる座板と、
前記不燃シートの左右端縁に配設され、該不燃シートの昇降をガイドするガイドレールとを有した火災発生時の延焼及び煙の拡散を防止する可動式たれ壁において、
前記不燃シートは横方向に3分割され、かつ左右両端部に配置される不燃シートは狭幅とされ、中間部に配置される不燃シートは広幅とされるとともに、前記狭幅の不燃シートと広幅の不燃シートとは横方向に一定幅の重複部を有するように隣接して設けられ、さらに、前記狭幅の不燃シートには前記ガイドレールに係止されて該ガイドレールからの離脱を防止するL字状の屈曲部を有する抜け止めフックが取り付けられ、また前記狭幅の不燃シートはスプリングにより巻き上げ傾向が付与される前記短尺の巻取りシャフトに巻き取られ、広幅の不燃シートは前記長尺の巻取りシャフトに巻き取られるようになっていること
を特徴とする。
【0007】
上述の如く構成された本発明によれば、火災の延焼及び火災時に発生する煙を遮断するための不燃シートが横方向に3分割されており、このうち、左右のガイドレールと係合する両端の不燃シートについては、該ガイドレールとの離脱を防止するL字状の屈曲部を有する抜け止めフックが取り付けられているので、火災時に大きな圧力が発生した場合でも不燃シートがガイドレールから離脱することが無く、この部分に隙間が発生することは無い。
【0008】
また、前記不燃シートは横方向に3分割され、かつ左右両端部に配置される不燃シートは狭幅とされ、中間部に配置される不燃シートは広幅とされるとともに、前記狭幅の不燃シートと広幅の不燃シートとは横方向に一定幅の重複部を有するように隣接して設けられているので、火災時の発熱により不燃シートが幾分収縮した場合においても、この不燃シートの重なり合った部分が移動するので、抜け止めフックに過大な力が加えられることは無い。
更に、前記狭幅の不燃シートはスプリングにより巻き上げ傾向が付与される短尺の巻取りシャフトに巻き取られ、広幅の不燃シートは長尺の巻き取られるようになっており、狭幅の不燃シートが座板の自重により垂下された際にはスプリングの付勢力により巻き上げ方向に力が加えられ、この不燃シートには一定のテンションが加えられるので、横方向に分割された広幅と狭幅の不燃シート間に隙間が発生することがない。これにより、火災発生時にはたとえ大きな圧力が加えられた場合でも確実に煙の拡散を防止することができ、被害の拡大を防止することができるようになる。
【0009】
また、ガイドレール内部に挿入される左右両端の不燃シートについては、該ガイドレールへの挿入幅をほぼ均一にするために高い加工精度を必要とし、また、中間部に配置される不燃シートは高い加工精度を必要としないので、左右両端に位置する不燃シートを狭幅とし、中間部に位置する不燃シートを広幅とすることにより(広幅の不燃シートを所定の寸法に加工することは困難である)、不燃シートの製作を容易とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1,図2は、本発明が適用された可動式たれ壁の一実施例の構成を示す説明図であり、図1は正面図、図2は側面図をそれぞれ示している。図示のように、この可動式たれ壁は、建築物の開口扉部分等の天井部1に配置され、火災時には不燃シート(または、防炎シート)2を天井部から所定高さ垂下させて、天井部に蔓延する煙の拡散及び延焼を防止するものである。
【0011】
開口扉部分の左右両端部には、可動式の不燃シート2(2a,2b,2c)を係合するためのガイドレール3(3a,3b)が天井1下部の所定高さまで配置されており、該ガイドレール3にガイドされて不燃シート2が上下方向に昇降し得るようになっている。不燃シート2は、横方向に3分割されており、このうち中央部に配置される不燃シート2aは横方向に広幅とされ、一方、左右の両端部に配置される不燃シート2b,2cは狭幅とされ、各不燃シート2(2a,2b,2c)は図1に示す距離Lだけ重り合って配置されている。また、不燃シート2の最下端には重錘の役目を果たし、開口扉部分の幅とほぼ同一長さを有する座板14が取り付けられている。
【0012】
図2の側面図に示されるように、開口扉部分の天井裏側には、開口扉部分の幅とほぼ同一長さを有する筐体形状のケース4が吊りボルト5により吊持されており、このケース4内部には広幅の不燃シート2aを巻き取るための長尺巻取シャフト6、及び狭幅の不燃シート2b,2cを巻き取るための短尺巻取シャフト7,8が配置されている。そして、長尺巻取シャフト6の一方の端部にはスプロケット9が取り付けられており、ローラーチェーン10を介して開閉機11に接続されている。従って、開閉機11を可逆的に回転駆動させることにより長尺巻取シャフト6を回転させることができ、これにより、不燃シート2aを昇降させることができるようになっている。開閉機11は、後述するように、煙感知器や火災感知器と連動して動作するものであり、更に、手動閉鎖操作部12による手動操作によっても動作するようになっている。
【0013】
また、短尺シャフト7,8は巻き上げ傾向に付勢されるスプリング式とされており、従って、狭幅の不燃シート2b,2cが座板14の自重により垂下された際にはスプリングの付勢力により巻き上げ方向に力が加えられるので、この不燃シート2b,2cには一定のテンションが加えられるようになっている。
【0014】
ケース4の下面には、まぐさ13が設置されており、該まぐさ13は、天井1を貫通して開口扉側に露出し、該まぐさ13を介して不燃シート2がケース4内部の各巻取シャフト6,7,8に巻き取られるようになっている。
【0015】
また、狭幅の不燃シート2b,2cには、各ガイドレール3a,3bに係止されて該ガイドレール3a,3bからの離脱を防止する抜け止めフック15が少なくとも1箇所(図では2箇所)に縫い付けられており、図3(b)の断面図に示されるように該抜け止めフック15の先端部はL字状に屈曲されてガイドレール3a,3bの溝部に嵌合されている。従って、この抜け止めフック15はガイドレール3a,3b内を上下方向に摺動することはできるが、横方向へ抜けることは無い。
【0016】
図3(a)に示されるように、座板14端部には断面略クランク形状を有する座板フック16が取り付けられており、この座板フック16もやはり抜け止めフック15と同様に先端部がガイドレール3a,3b内の溝部に係合され、上下方向には摺動するが横方向に離脱しない構成とされている。また、同図(c)に示されるように、抜け止めフック15が取り付けられない部分の狭幅の不燃シート2aの端部は、ガイドレール3a内に収納されており、従って、この部分からの煙の流出を防止することができるようになっている。
【0017】
次に、上述の如く構成された本実施形態の作用について説明する。通常、火災が発生していないときには、3枚の各不燃シート2(2a,2b,2c)は各巻取シャフト6,7,8に巻き取られた状態とされている。即ち、座板14がまぐさ13の開口部分に位置している。そして、火災発生時には手動閉鎖操作部12による手動操作、または、煙感知器(不図示)により煙の発生が検出されると、この信号を受けて開閉機11のブレーキが解除され、座板14の自重により長尺巻取シャフト6、及び短尺巻取シャフト7,8が回転して不燃シート2(2a,2b,2c)が下降することになる。この際、2本の巻取シャフト7,8はそれぞれスプリングにより巻き上げ傾向に付勢されているので、両端に位置する2枚の狭幅不燃シート2b,2cはこのスプリングの付勢力と座板14の自重とにより一定のテンションをもって垂下されるようになる。
【0018】
そして、座板14が各ガイドレール3a,3bの下端部と接触する位置まで各不燃シート2は下降するので、天井から一定の高さまでの部分が不燃シート2により囲まれることになり、火災発生時に天井部分に蔓延する煙の拡散を防止することができる。
【0019】
本実施形態では、狭幅不燃シート2b,2cに抜け止めフック15を縫いつけており、この抜け止めフック15を各ガイドレール3a,3bの溝部に係合させ、更に、座板14の両端部に取り付けられた座板フック16もやはりガイドレール3a,3bの溝部に係合されているので、不燃シート2に大きな風圧が掛かった場合においても狭幅不燃シート2b,2cがガイドレール3a,3bから抜けたりすることは無い。従って、この部分から煙が漏れだすという問題は生じない。また、狭幅不燃シート2b,2cと広幅不燃シート2aとは図1に示したように一定間隔「L」だけ重ね合せて配置されているので、火災の発生により各不燃シート2が収縮変形した場合においても、この収縮変形を前記重合部分(間隔Lの部分)がすべり動くことで吸収することができるので、たとえ収縮変形が発生しても前記狭幅の不燃シートと広幅の不燃シートの間に隙間が発生することは無い。また、ガイドレール3a,3b側の不燃シート2b,2cは狭幅とされ、前記圧力による引張り力は小さいから、不燃シート2b,2cが破れ、抜け止めフック15が外れることは無い。
【0020】
更に、ガイドレール3a,3b内に挿入される不燃シートは、該ガイドレール3a,3bへの挿入幅をほぼ均一にする必要があるため、精度良く加工しなければならず、反対に中間部に配置される不燃シートは高い加工精度を必要としない。従って、両端部に狭幅の不燃シート2b,2cを配置し、中間部に広幅の不燃シート2a(広幅の不燃シートを正確な寸法に仕上げることは難しい)を配置することにより、製作が容易となる。
【0021】
なお、本実施形態では、狭幅不燃シート2b,2cに縫い付ける抜け止めフック15の個数を2個としたが、本発明はこれに限定されるものでは無く、1以上であれば良いものである。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、複数に分割された不燃シート(または防炎シート)のうち左右に配置されてガイドレールと係合されるシートに抜け止めフックが取り付けられており、該抜け止めフックによりガイドレールからの抜け出しが防止されるので、火災発生時に火災風による圧力が発生した場合においても気密性を保持することができる。
【0023】
また、座板の両端に取り付けられた座板フックにより座板が横方向にずれるのを防止することができるので、この部分からの煙の拡散を防止することができる。
【0024】
更に、前記不燃シートは横方向に3分割され、かつ左右両端部に配置される不燃シートは狭幅とされ、中間部に配置される不燃シートは広幅とされるとともに、前記狭幅の不燃シートと広幅の不燃シートとは横方向に一定幅の重複部を有するように隣接して設けられているので、火災時の発熱により不燃シートが幾分収縮した場合においても、この不燃シートの重なり合った部分がすべって移動するだけなので、抜け止めフックに過大な力が加えられることは無い。
更に、前記狭幅の不燃シートはスプリングにより巻き上げ傾向が付与される巻取りシャフトに巻き取られ、広幅の不燃シートとは別に巻き取られるようになっており、狭幅の不 燃シートが座板の自重により垂下された際にはスプリングの付勢力により巻き上げ方向に力が加えられ、この不燃シートには一定のテンションが加えられるので、横方向に分割された広幅と狭幅の不燃シート間に隙間が発生することがない。これにより、建物の延焼及び煙の拡散を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る可動式たれ壁の正面図。
【図2】 本発明の一実施形態に係る可動式たれ壁の側面図。
【図3】 ガイドレールとの取り合いの様子を示す説明図であり、(a)は図1のA断面図、(b)は図1のB断面図、(c)は図1のC断面図をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 天井
2(2a,2b,2c) 不燃シート
3(3a,3b) ガイドレール
4 ケース
5 吊りボルト
6 長尺巻取りシャフト
7,8 短尺巻取りシャフト
9 スプロケット
10 ローラーチェーン
11 開閉機
12 手動閉鎖操作部
13 まぐさ
14 座板
15 抜け止めフック
16 座板フック
Claims (1)
- 建築物内部の天井部に配置された長尺と短尺の各巻取りシャフトに巻き取られるとともに、該巻取りシャフトから繰り出されることにより天井部位から一定の高さまで垂下される矩形状の不燃シートと、
前記不燃シートの下端部に配置され、重錘となる座板と、
前記不燃シートの左右端縁に配設され、該不燃シートの昇降をガイドするガイドレールとを有した火災発生時の延焼及び煙の拡散を防止する可動式たれ壁において、
前記不燃シートは横方向に3分割され、かつ左右両端部に配置される不燃シートは狭幅とされ、中間部に配置される不燃シートは広幅とされるとともに、前記狭幅の不燃シートと広幅の不燃シートとは横方向に一定幅の重複部を有するように隣接して設けられ、
さらに、前記狭幅の不燃シートには前記ガイドレールに係止されて該ガイドレールからの離脱を防止するL字状の屈曲部を有する抜け止めフックが取り付けられ、
また前記狭幅の不燃シートはスプリングにより巻き上げ傾向が付与される前記短尺の巻取りシャフトに巻き取られ、広幅の不燃シートは前記長尺の巻取りシャフトに巻き取られるようになっていることを特徴とする可動式たれ壁。
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