JP3807163B2 - 建築構造物の制振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、住宅等の建築構造物に対する副振動系を構成して、主振動系たる建築構造物に対して動的吸振効果を発揮し得る制振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
一般住宅等の建築構造物では、交通振動や風等の外力が加振力として作用することによって振動が発生する場合がある。特に、近年では、一般住宅でも二階建てや三階建てが多くなってきており、それらの住宅では、構造上、二階や三階の水平方向振動が大きくなり易いために、交通振動による微震動が、例えば就寝時における不快音や不快振動等の原因として問題となってきている。
【0003】
ところで、建築構造物の振動低減装置としては、従来、高層ビルやタワー等の高層建築物の揺れを軽減するためのダンパ装置が、幾つか提案されており、例えば、特開平8−338467号公報には、付加質量を建築構造物に対して多段積層ゴムで弾性支持せしめた構造のダンパ装置が開示されている。これらのダンパ装置は、水平方向で一つの副振動系を構成することにより、建築構造物に惹起される水平方向の振動に対して低減効果を発揮するようになっている。
【0004】
ところが、これら従来のダンパ装置では、副振動系に設定された固有振動数と、主振動系としての建築構造物において防振すべき振動との間にずれがあると、有効な振動低減効果が発揮されなくなるという不具合があった。特に、ダンパ装置のバネ部材をゴム弾性体で形成すると、ばね定数が温度依存性を有するために、有効な制振効果を安定して得ることが難しく、例えば、一般住宅で屋根裏にダンパ装置を収容配置しようとすると、屋根裏の温度は零下数十度から60〜70℃に亘る略100℃もの範囲で変化するために、基準温度(例えば、20℃)でチューニングしても、目的とする制振効果を安定して得ることは、到底、望めなかったのである。加えて、建築構造物は、躯体構造だけでなく、基礎の状態や、設備や備品等によっても振動特性が異なることから、予測的に設定した副振動系のチューニングがずれてしまうおそれがあり、それによっても、目的とする制振効果を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
なお、このような問題に対処するために、例えば、実質的に独立した複数の副振動系を構成し、それら各副振動系を、互いに異なる周波数域にチューニングすることにより、建築構造物において防振すべき振動の周波数が変動した場合でも、何れかの副振動系による制振効果が有効に発揮されるようにすることも、考えられる。ところが、複数の副振動系を設置する場合には、各副振動系による制振効果が有効に発揮されるように、全ての副振動系をチューニングすることが極めて面倒で時間がかかるといった不具合があったのである。
【0006】
また、前述の如き問題に対処し、ダンパ装置による制振効果を有効に得るには、例えば、建築構造物の振動特性を、その施完了後に各個別に実測する事も考えられるが、作業が極めて煩雑となり、特に一般住宅等では、決して実用的ではなかったのである。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、建築構造物の振動特性の固有値のバラツキが有利に吸収され得て、温度変化等によってチューニング周波数(同調)にずれがあった場合でも、建築構造物毎の個別測定等を要することなく、良好な制振効果を安定して得ることが可能とされる、新規な構造の制振装置であって、しかも、副振動系におけるチューニングが容易な制振装置を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体の記載および図面に記載の発明思想に基づいて認識されるものである。
【0009】
本発明の第一の態様は、建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめることにより、該建築構造物に対する副振動系を構成する制振装置において、前記マス部材を、質量が同一の複数の分割マスによって構成すると共に、それら各分割マスを、前記バネ部材によって前記建築構造物に対して互いに独立して弾性支持せしめて、互いに異なる周波数域にチューニングされた複数の分割副振動系を構成すると共に、該建築構造物の防振すべき固有振動数:f0に対する該分割副振動系の固有振動数:faの比の値が0.6・f0≦fa≦1.7・f0の範囲内で且つ該建築構造物の固有振動数:f0に対して低周波側と高周波側とにそれぞれ存在するように複数の該分割副振動系を設け、且つそれら複数の分割副振動系における固有振動数:faの値が互いに等比数列をなすように設定したことを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされた制振装置においては、複数の分割副振動系によって複数の固有振動数が設定されることにより、建築構造物における防振すべき振動への副振動系の同調が正確でなかった場合や、温度変化等に伴う同調のずれが発生した場合等でも、建築構造物に対して全体として良好なる制振効果が発揮され得る。それ故、例えば、建築構造物毎の振動特性を個別に正確に測定することなく、有効な制振効果を安定して得ることも可能となるのであり、それによって、設計や施の容易化も実現可能となる。また、各分割マスは、ゴムマウントによって弾性支持されることから、独立して任意の場所に設置可能であり、建築構造物に対する装着場所の設定に関して大きな自由度が確保され得る。従って、かかる制振装置にあっては、例えば一般住宅等にも、有利に採用され得て、大きな温度変化に晒される場合でも、安定した防振効果を得ることが可能となるのである。
【0011】
しかも、かかる制振装置においては、各副振動系をチューニングするに際して、建築構造物の防振すべき固有振動数に基づいて、各副振動系の固有振動数が一義的に決定され得、また、各副振動系のマス部材の質量が同一に設定されることから、各副振動系のバネ部材のバネ定数が一義的に決定される。そこにおいて、特に、本態様のチューニング設定に従えば、副振動系のチューニング周波数域に現れる建築構造物における振動加速度の複数のピーク値を互いに略同じに設定することが出来るのであり、それによって、広い周波数域に亘って有効な制振効果が発揮され得るのである。
【0012】
また、複数の分割副振動系の各固有振動数が、建築構造物の防振すべき固有振動数よりも低周波側と高周波側の両方に、それぞれ位置するように設定されることから、副振動系の主振動系に対するチューニング特性の変化に対して、より有効な振動低減効果を得ることが可能となる。なお、建築構造物の防振すべき固有振動数は、一般に、基準となる条件(例えば、最も頻繁に生ずる条件)下で求められた建築構造物の防振すべき振動周波数として設定される。
【0013】
なお、複数の副振動系における各分割マスの質量は、それら複数の分割マスの合計質量が最適質量となるように設定することが望ましく、それによって、制振装置全体としての重量を抑えつつ、有効な制振効果を得ることが可能となる。具体的には、複数の分割マスの合計質量としてのマス部材の最適質量の好ましい値は、例えば、主振動系たる建築構造物の運動方程式と副振動系たる分割副振動系の運動方程式との連立方程式において、主振動系の振幅と副振動系を構成する分割マスの振幅(主振動系と副振動系の相対変位の絶対値)を、それぞれ、要求される値以下にするという条件を与えることによって、主振動系の等価質量に対する質量割合として、決定することが出来るが、その際、建築構造物の耐荷重強度等も考慮されるべきである。
【0014】
また、本態様に係る制振装置を一般住宅等に設置する場合には、最上階の天井部分に支持せしめて、屋根裏に収容配置することが望ましい。このような構成を採用すれば、一般住宅における制振装置の設置スペースを有利に確保することが出来ると共に、振動モード的にも優れた制振効果を得ることが出来る。更にまた、本態様に係る制振装置を一般住宅等に設置する場合には、複数の分割副振動系の少なくとも一つを、他の分割副振動系とは異なる構造部材によって支持せしめるようにしても良く、それによって、建築構造物の耐荷重強度の制限内で、全体として大きな質量のマス部材を有利に装着することが可能となるのである。なお、構造部材としては、建築構造物の構造や種類等に応じて、建築構造物における各種の構成部材(強度部材)が採用される。特に、最適質量を複数の分割マスに分割設定した場合には、複数の構造部材によって、最適質量のマス部材を有利に分担支持せしめることが可能となる。
【0015】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る制振装置において、前記建築構造物の防振すべき固有振動数:f0に対する前記分割副振動系の固有振動数:faの比の値が0.6・f0≦fa≦1.7・f0の範囲内で、該分割副振動系を数個設けると共に、その中央の固有振動数を有する分割副振動系の固有振動数を、建築構造物の防振すべき固有振動数に設定したことを、特徴とする。このような本態様に従えば、基準となる条件下での建築構造物の防振すべき固有振動数に対して、中央の固有振動数を有する分割副振動系による制振効果が極めて有効に発揮され得るのであり、特に、建築構造物の防振すべき固有振動数の変化が、小さい範囲の場合や、一時的な期間の場合等に、特に有効である。
【0016】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る制振装置において、前記各分割副振動系におけるバネ部材を、それぞれ、該分割マスに対する取付方向を変更することによって、該分割副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来る可変ゴムマウントを含んで構成したことを、特徴とする。
【0017】
このような本態様に係る制振装置においては、可変ゴムマウントの分割マスに対する取付方向を変更することによって、分割副振動系における固有振動数を調節することが出来る。それ故、例えば、複数の分割副振動系において、同一のゴムマウントを採用しても、各分割副振動系の固有振動数を異なる値に調節することが出来る。また、可変ゴムマウントの取付方向に応じて、分割副振動系のばね定数を設定可能であることから、建築構造物の防振しようとする振動に応じて、各分割副振動系の固有振動数を高精度にチューニングすることが出来、それによって、優れた制振効果を容易に得ることが可能となるのである。なお、可変ゴムマウントの取付方向を変更する場合には、分割副振動系の水平方向における弾性主軸の方向が変化しないように、それら可変ゴムマウントの取付方向を変更することが、チューニング作業性および分割副振動系の動的安定性等の点から、より望ましい。なお、分割副振動系における弾性主軸とは、分割副振動系に対して、その軸に沿って荷重が入力された際に、荷重の入力方向と、ゴムマウントの弾性変形に伴うマス部材の変位方向とが一致し、且つ分割マスに回転乃至は角変位が生じないような軸をいう。
【0018】
なお、かかる第三の態様において採用される可変ゴムマウントの構造は、何等、限定されるものでない。具体的には、例えば、マス部材側に取り付けられる第一の取付部材と、建築構造物側に取り付けられる第二の取付部材を、ゴム弾性体によって弾性的に連結した構造のマウントであって、そのゴム弾性体に肉抜穴や貫通スリット等を設けることによって軸直角方向のばね特性に異方性を付与したり、ゴム弾性体で連結される第一の取付部材と第二の取付部材の対向面を傾斜させることによって軸直角方向の異方性を付与したり、特開平8−338467号公報等に記載されているような傾斜板をゴム弾性体内に埋設固着することによって軸直角方向の異方性を付与すること等によって、軸直角方向のばね特性を中心軸回りにおいて異方性としたゴムマウントを、その略中心軸方向に分割マスの重量が及ぼされる状態で装着せしめて、分割マスに対する取付方向を中心軸回りで変更することによって、分割マスにおける水平な弾性主軸方向でのばね定数を調節可能とした構造のゴムマウント等が採用可能である。或いはまた、特開平10−82449号公報等に記載されているように、軸直角方向のばね特性が、中心軸回りの全方向で同一とされたゴムマウントを用い、該ゴムマウントの分割マスへの取付角度を鉛直方向乃至は水平方向で変更することにより、分割マスにおける水平な弾性主軸方向でのばね定数を調節可能として可変ゴムマウントを構成することも可能である。
【0019】
また、特に、第三の態様においては、建築構造物とマス部材の何れか一方に取り付けられる第一の取付部材と他方に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結した構造のゴムマウントであって、第一の取付部材と第二の取付部材に対して、鉛直方向に延びるマウント中心軸を挟んだ両側において該マウント中心軸に対して略対称となる傾斜方向で対向する一対の傾斜対向面を設けると共に、それら一対の傾斜対向面間に本体ゴム弾性体を配設せしめて、各対向する傾斜対向面間を該本体ゴム弾性体で連結したもの等が、好適に採用され得る。このような構造のゴムマウントにおいては、マウント中心軸に対して直角に延びる二つの直交する軸直角方向のバネ比を十分に大きく設定することが出来るのであり、マウント中心軸回りの回転によって、制振装置のばね定数を一層有利にチューニングすることが可能となる。
【0020】
さらに、上述の如き可変ゴムマウントを採用する場合には、各分割副振動系において、各分割マスの重心を通って水平方向に延びる2本の直交する対称軸を挟んで、それぞれ対称位置するように、可変ゴムマウントの複数個を配設すると共に、それらの可変ゴムマウントにおける取付方向を、かかる2本の対称軸を挟んで対称となるように設定することが望ましい。このような設定に従えば、各分割副振動系において、複数の可変ゴムマウントの取付方向の変更によるバネ部材全体としてのばね定数の調節が容易となると共に、それら複数の可変ゴムマウントの取付方向を変更,調節した場合でも、分割マスの静的及び動的安定性が有利に維持されることにより、目的とする制振効果を安定して得ることが出来る。なお、可変ゴムマウントのうち各対称軸を挟んで対称位置するもの同志は、互いに同一構造とすることが望ましい。一方、何れの対称軸に関しても対称関係を有しない可変ゴムマウント間では、ばね特性や構造が互いに異なっていても良い。また、可変ゴムマウントにおける取付方向を、2本の対称軸を挟んで対称とする設定は、例えば、何れの対称軸に関しても、その両側で対称位置に配された可変ゴムマウントを、該対称軸に対する傾斜角度が対称的に同じになるように配設することによって、有利に実現され得る。
【0021】
さらに、そこにおいて、全ての分割副振動系における可変ゴムマウントの配設位置の対称軸としての上記2本の直交する対称軸は、好ましくはその少なくとも1本、より好ましくはそれらの2本の何れもが、建築構造物において防振すべき振動方向となるように設定される。より好ましくは、全ての分割副振動系において、可変ゴムマウントの配設位置の対称軸としての2本の直交する対称軸が、何れも、分割副振動系全体としての水平方向における弾性主軸として設定される。これにより、分割副振動系の安定性が更に向上されて、目的とする制振効果をより安定して得ることが可能になると共に、分割副振動系のチューニングも容易となる。
【0022】
なお、本態様においては、可変ゴムマウントのみで、副振動系のバネ部材を構成する必要はなく、可変ゴムマウントと、副振動系のばね定数の調節に寄与しないゴムマウントを組み合わせてバネ部材を構成することも可能である。また、可変ゴムマウントを複数用いる場合には、その全ての可変ゴムマウントの取付方向を変更する必要はなく、一部の可変ゴムマウントだけの取付方向を調節することによってチューニングすることも可能である。
【0023】
また、上述の如き本発明に従う構造とされた制振装置においては、建築構造物の防振すべき固有振動数:f0に対する分割副振動系の固有振動数:faの比の値が0.6・f0≦fa≦1.7・f0の範囲内で且つ該建築構造物の固有振動数:f0に対して低周波側と高周波側とにそれぞれ存在するように複数の該分割副振動系を設け、且つそれら複数の分割副振動系における固有振動数:faの値が互いに等比数列をなすように設定したことによって、副振動系のチューニング周波数域に現れる建築構造物における振動加速度の複数のピーク値を、互いに略同じに、一層有利に設定することが可能となる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0025】
先ず、図1には、本発明に従う構造とされた建築構造物用の制振装置10を、一般の3階建住宅12に装着した状態の概略が示されている。かかる制振装置10は、それぞれ独立した複数個の分割マス14と、それら各分割マス14を互いに独立して弾性支持するゴムマウント16から構成されており、各分割マス14がそれぞれ複数個のゴムマウント16によって、住宅12に対して弾性支持されることによって、互いに独立した複数個の分割副振動系17が形成されている。なお、本実施形態では、図示されているように、全ての分割副振動系17が、3階建住宅12における3階の天井を構成する構造部材18上に装着されている。
【0026】
より詳細には、各分割副振動系17を構成する分割マス14は、図10,11にも仮想線で示されているように、金属等の高比重材で形成されており、例えば鉄系や鉛系の金属等で形成されたものが好適に採用される。この分割マス14の形状は特に限定されるものでないが、一般に、板形状のものが好適に採用され、より望ましくは、矩形平板形状や多角形平板形状,円形平板形状等、幅寸法よりも高さ寸法が小さく且つ高さが一定の板形状であって、平面的に複数の対称軸を有する形状が望ましい。このような形状の分割マス14を採用することにより、制振装置10を最上階の天井裏21等のスペースに収容状態で有利に設置することが出来ると共に、水平方向の変位に際して各ゴムマウント16に生ぜしめられる角変位を抑えて安定した吸振作用を得ることが可能となる。特に、本実施形態では、高さ寸法が全体に亘って一定とされた、平面矩形の板形状を有する分割マス14が採用されている。また、かかる分割マス14を、同一平面形状を有する複数枚の鋼板等を、厚さ方向に重ね合わせて、ボルト等の締結具で相互に連結固定することによって構成することも可能であり、そのようなマス分割構造を採用すれば、制振装置10の搬送や設置等が一層容易となる。
【0027】
また、この分割マス14の質量は、装着される主振動系たる住宅12の質量や振動状態、構造強度等を考慮して適宜に設定されるが、全ての分割副振動系を構成する分割マス14の合計質量が、防振すべき住宅12の防振すべき振動に応じた最適質量を与えるように設定されることが望ましい。具体的には、例えば、主振動系たる住宅12と一つの副振動系からなる2自由度系を考え、この系の運動方程式から主振動系の共振曲線を求めることにより、一般の動的吸振器における最適設計法に従って、最適質量を求めることが出来る。即ち、かかる2自由度系の運動方程式に基づいて、主振動系の振幅が要求される値以下になるように、且つ副振動系を構成するゴムマウント16の振幅(主振動系と副振動系の相対変位の絶対値)が許容値以下となるように、主振動系と副振動系の質量比(μ)を求めることによって、副振動系における分割マス14の最適質量を決定することが出来る。なお、その際、住宅12の耐荷重強度も考慮する必要があり、住宅12の耐荷重強度による制限から、分割マス14の最適質量が決定される場合もある。また、その際、分割マス14の最適質量は、全ての分割マス14の合計質量として与えられるものであることから、各分割マス14の荷重を異なる構造部材に分担支持させることによって、即ち、住宅12を構成する多数の構造部材のうちの異なる構造部材にそれぞれの分割副振動系17を装着して、各分割マス14を異なる構造部材で支持せしめることによって、分割マス14の荷重の集中的作用を回避して、住宅12の耐荷重強度上の理由による分割マス12の荷重制限を緩和することも可能である。因みに、一般的な軽量鉄骨や木造の軸組構造による2〜3階建の住宅の場合では、全ての分割副振動系における分割マス14の合計質量として、100〜1000kg程度、或いはそれ以上の質量が設定される。
【0028】
そして、本実施形態では、このようにして求められた最適質量を全体として与えるように、複数の分割マス14の質量が設定されている。ここにおいて、複数の分割マス14は、相互に同一の質量となるように設定されている。具体的には、最適質量が800kgの場合に、n個の分割マス14を採用する際には、各分割マス14の質量が何れも800/nkgとされる。特に、同一の材質と形状を有する複数の分割マス14によって最適質量を等分割することが望ましく、それによって、分割マス14の製造の容易性やコスト性が向上され得る。
【0029】
また、これら各分割マス14は、それぞれ、複数個のゴムマウント16によって、住宅12の構造部材18に対して弾性支持されており、それによって、分割マス14の数だけ、互いに独立した分割副振動系17が構成されている。ここにおいて、これら複数の分割副振動系17においては、その固有振動数が互いに同一とはされておらず、各別に異なる複数の固有振動数が設定されている。
【0030】
ここにおいて、かかる複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最小の固有振動数:fmin の、主振動系(住宅12)において防振すべき振動周波数:f0 に対する比の値が、それら複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最大の固有振動数:fmax の、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対する比の値の逆数となるように設定されている。更に、それら最小および最大の固有振動数を有する分割副振動系17を含む全ての副振動系17の固有振動数f1 〜fnは、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対する比の値:f1/f0 ,・・・,fn/f0 が、互いに等比数列を構成するように設定されている。
【0031】
なお、このような共振周波数比を各分割副振動系17に設定するに際しては、各分割副振動系17における分割マス14の値(質量)が互いに同一とされていることから、それら各分割副振動系17において複数個のゴムマウント16で構成するバネ部材の防振すべき振動方向でのばね定数の値によっても、設定することができる。具体的には、分割副振動系17の固有振動数を主振動系(住宅12)において防振すべき振動周波数:f0 に一致させるに必要とされる該分割副振動系17におけるバネ定数の値をkd 0 とすると、複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最小のばね定数の値:kd min のかかるkd 0 に対する比の値が、それら複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最大のばね定数の値:kd max のかかるkd 0 に対する比の値の逆数となるように設定される。更に、それら最小および最大のばね定数を有する分割副振動系17を含む全ての副振動系17のばね定数kd 1 〜kd nの前記kd 0 に対する比の値:kd 1 /kd 0 ,・・・,kd n/kd 0 が、互いに等比数列を構成するように設定される。
【0032】
さらに、これら複数の分割副振動系17における固有振動数の設定範囲は、特に限定されるものでなく、製造誤差や温度変化等に起因する考慮すべき主振動系と分割副振動系のチューニング周波数の相対的なずれ変動幅等に応じて適宜に決定され得るが、好ましくは、住宅12において防振すべき振動周波数に対する適当な周辺周波数の範囲内に、全ての分割副振動系17の固有振動数が納まるように設定される。このような設定によって、一般住宅における通常の環境下で予想される主振動系(住宅12)と分割副振動系17とのチューニングずれ幅を、有利にカバーすることが出来る。また、複数の分割副振動系17において、複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最小の固有振動数:fmin が、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対して、好ましくはfmin /f0 ≧0.4,更に好ましくはfmin /f0 ≧0.6となるように設定されると共に、複数の分割副振動系17の中の一つに設定された最大の固有振動数:fmax が、主振動系において防振すべき振動周波数:f0 に対して、好ましくはfmax /f0 ≦2.0,より好ましくはfmax /f0 ≦1.7となるように設定される。
【0033】
すなわち、このような設定条件に従って複数の分割副振動系17を構成することにより、それらの分割副振動系17を装着した建築構造物において、振動加速度の周波数特性における複数のピーク値を略同一範囲とすることが出来るのであり、それによって、複数の分割副振動系17における固有振動数の設定領域とその周辺の周波数範囲に亘って、有効な制振効果が発揮され得ることとなる。なお、このような技術的効果が発揮される理論的根拠は、未だ明確でなく、それを明確にすることは、本発明の目的とするところでないことから、ここでは割愛するが、本発明の技術的効果は、後述する実施例の結果からも明白なところである。
【0034】
なお、分割副振動系17の数は、建築構造物において制振効果が要求される周波数範囲や、要求される制振特性の他、分割副振動系17が装着される建築構造物の構造部材の部材強度等を考慮して、適宜に決定されるものであって何等限定されるものでないが、一般の住宅等においては、好ましくは2〜6個、より好ましくは3〜5個の分割振動系17が設定される。
【0035】
因みに、本発明の実施例として、下記〔表1〕に示される如く、躯体重量が30ton の建築構造物Aと、躯体重量が30ton の建築構造物Bについて、それぞれ、2個,3個又は4個の分割副振動系17からなる制振装置10a〜eを装着した場合について、それぞれ、建築構造物における振動加速度の周波数特性をシミュレーションで求めた結果を、図2〜6に示す。なお、かかる実施例においては、何れも、躯体減衰比を1.5%とすると共に、各分割副振動系17における損失係数を1.0とした。
【0036】
【表1】
Figure 0003807163
【0037】
かかる図2〜6に示された実施例結果からも明らかなように、本発明に従って構成された複数の分割副振動系からなる制振装置においては、何れも、各分割副振動系がチューニングされた広い領域の周波数範囲(躯体の固有振動数:f0 に対する周波数倍率範囲)に亘って、有効な制振効果が発揮され得ることが明らかであり、特に、かかる周波数範囲に発生する複数の振動加速度のピーク値が、互いに略同一に抑えられ、その結果、安定した制振効果が達成されることが認められる。
【0038】
ところで、このように複数の分割副振動系17に対してそれぞれ異なる固有振動数を設定するには、例えば、複数の分割副振動系17の相互間で、ゴムマウント16における防振すべき振動方向のばね定数を異ならせることによって、チューニングすることが可能である。ここにおいて、特に、本実施形態では、何れの分割副振動系17においても、それぞれ同一構造とされた複数のゴムマウント16によってバネ系が構成されて、同一の質量が設定された分割マス14が弾性支持されている。
【0039】
かかるゴムマウント16は、何れも水平方向のばね定数が異方性とされており、本実施形態では、各分割副振動系17において、それぞれ同一構造のゴムマウント16が4個採用されている。即ち、かかるゴムマウント16は、図7〜9に示されているように、第一の取付部材としての第一の取金具22と、第二の取付部材としての第二の取付金具24が、互いに離間して対向配置されていると共に、それら第一の取付金具22と第二の取付金具24が、両金具22,24の対向面間に介装された本体ゴム弾性体26で弾性的に連結された構造を有している。
【0040】
そこにおいて、第一の取付金具22は、それぞれ鋼鈑のプレス加工などによって形成された矩形平板形状の上板28と、中央が谷折り状に曲げられV字状の下板30から構成されており、上板28の下面に下板30が重ね合わされて、下板30の両端縁部が上板28に溶着されることによって、一体的に取り付けられている。また、上板28の中央には、第一の取付ボルト18が上方に向かって突設されている。なお、第一の取付ボルト18は、上下板28、30の中央挿通孔33,35に下側から挿通されて、軸方向中間部分に一体形成された環状突出部31が上板28の下面に溶着されている。また、第一の取付ボルト18の下端部は、下板30を貫通して下方に向かって突出せしめられていると共に、その突出先端部に大径のストッパ頭部37が一体形成されている。
【0041】
また、第二の取付金具24は、鋼鈑のプレス加工等によって形成された一枚の矩形平板状を有しており、中央に位置する中央平板部32を挟んだ長手方向両側が、第一の取付金具22側(図7中、上側)に向かって斜め上方に立ち上げられた傾斜板部34,34とされている。また、第二の取付金具24における中央平板部32の中央には、下方に向かって突出する第二の取付ボルト36が固設されている。更にまた、第一の取付金具22における下板30の両側の傾斜板部38,38と、第二の取付金具24における両側の傾斜板部34,34は、それぞれ、マウント中心軸40を挟んだ両側において、該マウント中心軸40に対して略同一角度だけ傾斜した方向で、全面に亘って略一定の間隙を隔てて対向位置せしめられている。そして、これら両傾斜板部34,34と38,38の対向面間に、それぞれ、略矩形ブロック形状を有する分割ゴムブロック42が介装されている。即ち、本実施形態では、これら一対の分割ゴムブロック42,42によって第一の取付金具22と第二の取付金具24を弾性連結する本体ゴム弾性体26が構成されている。
【0042】
すなわち、本実施形態のゴムマウント16は、二つの独立したゴムブロック42,42の単体での弾性主軸44,44が、マウント中心軸40に対して、該マウント中心軸40を含む一つの平面内で、該マウント中心軸40に関して対称となるように、該マウント中心軸40の両側にそれぞれ傾斜されているのであり、それによって、かかるゴムマウント16は、全体として、図7に示されているように、マウント中心軸40に沿って延びる鉛直方向の弾性主軸と、図中で紙面に垂直な方向に延びる水平方向の第一の弾性主軸と、図中の左右方向に延びる水平方向の第二の弾性主軸を有している。このような構造とされたゴムマウント16では、水平方向の第一の弾性主軸の方向で、荷重入力時における本体ゴム弾性体の主たる変形がせん断となって、水平方向におけるばね定数が最小となる一方、水平方向の第二の弾性主軸の方向で、荷重入力時における本体ゴム弾性体26に圧縮/引張の変形が生ぜしめられて、水平方向におけるばね定数が最大となる。これにより、かかるゴムマウント16では、水平方向におけるばね定数の最小値と最大値が、互いに直交する方向に設定されている。なお、以下の説明では、ばね定数が最小値となる水平方向(図7において、紙面に垂直な方向)を、ゴムマウント16における水平基準方向という。
【0043】
また、各ゴムブロック42には、弾性主軸44方向の略中央部分において、ゴムブロック42の断面よりも一回り大きな平板形状を有する拘束プレート51が、弾性主軸44に直交して広がる状態で配設されている。なお、この拘束プレート51は、少なくともゴムブロック42よりも硬質の例えば鋼板等の金属材で形成されており、ゴムブロック42に加硫接着されていると共に、中央部分には、拘束プレート51を挟んだ両側に分割状態で位置するゴムブロック42を相互に連結せしめる貫通孔が形成されている。
【0044】
更にまた、本実施形態のゴムマウント16においては、第一の取付金具22と第二の取付金具24の対向面間の中央部分で、一対の分割ゴムブロック42,42間において、中央空所39が形成されており、そこにストッパ機構が設けられている。かかるストッパ機構は、第二の取付金具24の中央上面に略門形のストッパ金具41が重ね合わされて溶着されていると共に、このストッパ金具41の上底部に設けられたU字形の切欠孔43に対して、第一の取付ボルト18の下端部分が側方から差し込まれて挿通配置されることにより構成されている。そして、第一の取付ボルト18やそれに突設されたストッパ頭部37が、ストッパ金具41や第二の取付金具24に当接することによって、第一の取付金具22と第二の取付金具24の相対変位量を制限するストッパ機構が構成されている。
【0045】
このような構造とされたゴムマウント16は、その第一の取付金具22が分割マス14に対して固着されている。なお、特に本実施形態では、図10に示されているように、高さ寸法が全体に亘って一定とされた一般圧延鋼板を平面矩形の平板状に切断加工した板状分割マス20の複数枚を重ね合わせて分割マス14とされている。そして、ゴムマウント16における第一の取付ボルト36が上方に長く突出されており、この第一の取付ボルト36が、重ね合わされた板状分割マス20の全てに亘って貫設された取付孔45に挿通されて、先端部に螺着されたナット47でそれらの板状分割マス20の全てを束ねるようにして固定している。即ち、本実施形態では、第一の取付ボルト36によって、複数の板状分割マス20の締結手段が構成されている。
【0046】
また、本実施形態では、図10,11に示されているように、4個のゴムマウント16が、矩形平板形状の分割マス14における四隅部分に対して、それぞれ取り付けられており、それによって、一つの分割副振動系17が構成されている。また一方、ゴムマウント16の第二の取付金具24は、図10に示されているように、第二の取付ボルト36により、住宅の最上階の天井の構造部材18等に取り付けるための取付部材としての固定プレ−ト49に固着されている。これにより、建築構造物12の構造部材18に対して、各分割副振動系17における分割マス14が、4個のゴムマウント16を介して、弾性的に取り付けられているのであり、以て、分割マス14をマス部材とし、4個のゴムマウント16をバネ部材とする一つの分割副振動系17が構成され、この分割副振動系17が複数設置されることによって、建築構造物12からなる主振動系に対する副振動系として機能する制振装置(TMD)10が構成されている。
【0047】
なお、各分割副振動系17の装着状態下では、分割マス14が、水平方向に広がる状態で支持されていると共に、各ゴムマウント16は、何れも、そのマウント中心軸18が鉛直方向に延びる状態で配設されている。
【0048】
また、本実施形態の制振装置10における各分割副振動系17においては、図11に示されているように、4個のゴムマウント16が、分割マス14において互いに直交して水平方向に延びる2本の対称軸X,Yを挟んで、それぞれ対称位置するように配設されている。なお、本実施形態では、分割マス14における2本の対称軸X,Yが、何れも、分割マス14の水平方向に延びる慣性主軸とされている。また、分割マス14と4個のゴムマウント16からなる弾性支持系において、その鉛直方向に延びる弾性主軸が、分割マス14の重心を通るように設定されている。具体的には、図11において、第一のゴムマウント16aと第二のゴムマウント16bおよび第三のゴムマウント16cと第四のゴムマウント16dが、それぞれ、第一の対称軸Xに関して互いに対象位置せしめられていると共に、第一のゴムマウント16aと第三のゴムマウント16cおよび第二のゴムマウント16bと第四のゴムマウント16dが、それぞれ、第二の対称軸Yに関して互いに対象位置せしめられている。
【0049】
また、これら4個のゴムマウント16a〜dは、その取付方向も、分割マス14の二本の対象軸X,Yを挟んで、それぞれ対称となるように設定されている。具体的には、図11において、第一の対称軸:Xに関しては、第一のゴムマウント16aの水平基準方向線48aの交角:θxaと第二のゴムマウント16bの水平基準方向線48bの交角:θxbが同一となると共に、第三のゴムマウント16cの水平基準方向線48aの交角:θxcと第四のゴムマウント16dの水平基準方向線48dの交角:θxdが同一となるように設定されている。また、第二の対称軸:Yに関しては、第一のゴムマウント16aの水平基準方向線48aの交角:θyaと第三のゴムマウント16cの水平基準方向線48cの交角:θycが同一となると共に、第二のゴムマウント16bの水平基準方向線48bの交角:θybと第四のゴムマウント16dの水平基準方向線48dの交角:θydが同一となるように設定されている。
【0050】
このように4個のゴムマウント16a〜dの取付方向が設定されることにより、ゴムマウント16a〜dの取付方向を変更した場合でも、分割マス14と4個のゴムマウント16a〜dで構成された副振動系全体としての水平方向における弾性主軸の方向が、分割マス14における第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称軸:Yの方向とに維持されるようになっている。そして、これら第一の対称軸:Xの方向と、第二の対称軸:Yの方向が、それぞれ、制振対象たる住宅などの建築構造物において防振すべき主たる振動の方向、例えば、平面矩形の枠体構造を有する住宅の場合には、各辺に平行な方向となるように、分割副振動系17の住宅に対する設置方向が決定される。これにより、副振動系を構成する分割副振動系17に対して、防振すべき2方向の振動が、何れも、該分割副振動系17における弾性主軸方向に入力されることとなり、それら2方向に入力される各振動に対して、何れも、有効な制振効果が発揮され得るのである。
【0051】
また、かかる分割副振動系17においては、上述の如く、マウント中心軸40の回りで水平方向のばね定数が異方性とされたゴムマウント16a〜dをばね部材として採用したことにより、かかるゴムマウント16a〜dの取付方向を変更することによって、防振すべき振動の入力方向となる2つの弾性主軸方向(第一の対称軸:Xの方向および第二の対称軸:Yの方向)でのばね定数が、何れも、変更されるようになっている。具体的には、本実施形態では、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値が小さくなるに従って、分割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向でのばね定数が小さく、第二の対称軸:Yの方向でのばね定数が大きくなる方向に変更される。その結果、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を小さくすることによって、分割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向での固有振動数を低周波側に、且つ第二の対称軸:Yの方向での固有振動数を高周波側に、それぞれ移行させることが出来、また、各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を大きくすることによって、分割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向での固有振動数を高周波側に、且つ第二の対称軸:Yでの方向の固有振動数を低周波側に、それぞれ移行させることが出来るのである。
【0052】
それ故、上述の如き構造とされた分割副振動系17においては、バネ部材としてのゴムマウント16の何れも交換,変更することなく、防振すべき一つの水平振動の入力方向において、その固有振動数を調節,変更することが出来るのである。即ち、制振装置10を構成する複数の分割副振動系17として、同一の分割マス14と同一のゴムマウント16を採用することが可能となり、それによっても、各分割副振動系17に対して異なる固有振動数を設定することが出来ることから、目的とする制振装置10が、低コストで提供されると共に、極めて優れた設置作業性が実現されるのである。
【0053】
しかも、上述の如き構造とされた分割副振動系17の複数個によって制振装置10を構成した場合には、各分割副振動系17における各ゴムマウント16a〜dの第一の対称軸:Xに対する交角:θx の値を異ならせて、それら分割副振動系17における第一の対称軸:Xの方向での固有振動数を、相互に異なる周波数域にチューニングすると、同時に、それら各分割副振動系17における第二の対称軸:Yの方向での固有振動数も、相互に異なる周波数域にチューニングされることから、建築構造物において互いに直交する二つの水平方向の振動に対して、何れも、広い周波数域に亘る有効な制振効果を、容易に且つ有利に得ることが可能となるのである。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定されるものでない。
【0055】
例えば、本発明の制振装置を構成する分割副振動系において採用されるゴムマウントの構造や、その配設数および配設形態等は、前記実施形態における具体的な記載によって何等限定的に解釈されるものでなく、従来から公知の各種のゴムマウントが、何れも採用可能であり、特に、マウント中心軸に対して直角な方向のばね特性が全方向で一定とされたゴムマウント等も、採用可能である。
【0056】
さらに、各分割副振動系17において、分割マス14の構造部材18に対する変位に際して減衰力を及ぼし得る減衰器も、必要に応じて採用可能である。
【0057】
また、制振装置10の配設位置も、例示の如き最上階の天井部分の他、床下部分等、建築構造物の構造や振動モード等を考慮して、適宜に変更可能である。更にまた、制振装置10を構成する各分割副振動系17を、それぞれ異なる箇所に設置することも可能である。
【0058】
加えて、本発明は、例示の如き3階建の住宅の他、1階建や2階建、或いは4階建以上の住宅、或いは倉庫やビル,タワー等、各種の建築構造物用の制振装置に対して、何れも適用可能であることは、言うまでもない。
【0059】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた制振装置においては、副振動系におけるチューニング周波数が、主振動系たる建築構造物の防振すべき振動周波数からずれた場合でも、有効な振動低減効果を、安定して得ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての制振装置の建築構造物(住宅)への装着状態を示す概略図である。
【図2】本発明の第一の実施例としての制振装置における振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【図3】本発明の第二の実施例としての制振装置における振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第三の実施例としての制振装置における振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第四の実施例としての制振装置における振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【図6】本発明の第五の実施例としての制振装置における振動加速度特性をシミュレーションで求めた結果を示すグラフである。
【図7】図1に示された制振装置を構成する一つの分割副振動系に採用されているゴムマウントを示す正面図である。
【図8】図7に示されたゴムマウントの平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX断面図である。
【図10】図1に示された制振装置を構成する一つの分割副振動系を示す横断面説明図である。
【図11】図10に示された一つの分割副振動系の構造を説明するための平面図である。
【符号の説明】
10 制振装置
12 住宅
14 分割マス
16 ゴムマウント
17 分割副振動系

Claims (3)

  1. 建築構造物に対してマス部材をバネ部材で弾性支持せしめることにより、該建築構造物に対する副振動系を構成する制振装置において、
    前記マス部材を、質量が同一の複数の分割マスによって構成すると共に、それら各分割マスを、前記バネ部材によって前記建築構造物に対して互いに独立して弾性支持せしめて、互いに異なる周波数域にチューニングされた複数の分割副振動系を構成すると共に、該建築構造物の防振すべき固有振動数:f0に対する該分割副振動系の固有振動数:faの比の値が0.6・f0≦fa≦1.7・f0の範囲内で且つ該建築構造物の固有振動数:f0に対して低周波側と高周波側とにそれぞれ存在するように複数の該分割副振動系を設け、且つそれら複数の分割副振動系における固有振動数:faの値が互いに等比数列をなすように設定したことを特徴とする制振装置。
  2. 前記建築構造物の防振すべき固有振動数:f0に対する前記分割副振動系の固有振動数:faの比の値が0.6・f0≦fa≦1.7・f0の範囲内で、該分割副振動系を奇数個設けると共に、その中央の固有振動数を有する分割副振動系の固有振動数を、建築構造物の防振すべき固有振動数に設定した請求項1に記載の制振装置。
  3. 前記各分割副振動系におけるバネ部材を、それぞれ、該分割マスに対する取付方向を変更することによって、該分割副振動系における水平方向のばね定数を調節することの出来る可変ゴムマウントを含んで構成した請求項1又は2に記載の制振装置。
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