JP3804100B2 - 多層積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はフィルムおよびシート材料として好適な新規多層積層体に関し、更に詳しくは透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度、フィルム強度等に優れ、しかも透明性の経時変化の小さい多層積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、数多くの単層あるいは多層のフィルムおよびシート材料が開発されており、このような材料のうち、透明性、柔軟性、風合い等に優れる代表的なフィルムとして、ビニロンフィルムがある。しかし、ビニロンはその特性上、風合いが気温や湿度に影響を受けやすく、特に耐寒性が悪いため、冬季に気温の下がる地域や寒冷地での使用には限界がある。また、残留酢酸臭やブロッキングしやすいという問題のほか、製膜法が溶液キャスト法に限られるためコストも高くならざるを得ないという欠点がある。
これらの問題点を解決するために、ポリオレフィン系の単層および多層のフィルム材料が多数開発されている。これらのポリオレフィン系材料は、コストおよび耐寒性等の面で改善がみられるものの、透明性や柔軟性がビニロンフィルムより劣る点が問題となっている。
さらに近年、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック、共役ジエン系化合物重合体ブロックもしくは芳香族ビニル化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合体ブロック、芳香族ビニル化合物と共役ジエン系化合物からなり、芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックの2種以上のブロックより構成されるブロック共重合体を水素添加した水添ジエン系共重合体と、ポリオレフィン系樹脂とを主成分とする組成物からなるシート・フィルムに対して、ラミネート等の2次加工することが一般的に開示され(公開技報94−12864参照)、また、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主体とするポリオレフィンに、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと水素添加された共役ジエン系化合物を主体とする重合体ブロックとからなる水添ブロック共重合体を少量配合したレトルト用ポリオレフィンフィルムに対して、プロピレン共重合体を主成分とする樹脂を積層することにより、低温耐衝撃性、透明性、レトルト耐性および低温ヒートシール性のバランスに優れたフィルムが得られることが開示されている(特開平7−1662024号公報参照)。しかし、これらのフィルムおよびシートも、透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度およびヒートシール強度に加え、透明性の経時変化を総合した特性バランスの面では、未だ満足できるレベルにない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の諸問題を背景になされたものであり、その課題は、透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度、フィルム強度等に優れ、しかも透明性の経時変化の小さい多層積層体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、
ポリプロピレン系樹脂(イ)80〜40重量%および共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合部分を主体とする重合体であって、ランダム共重合部分中の共役ジエン単位の1,2−結合と3,4−結合との合計の割合が、全共役ジエン単位に対して、60%以上である少なくとも1種の重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加され、かつポリスチレン換算数平均分子量が5万〜70万である水添ジエン系重合体(ロ)20〜60重量%からなる樹脂組成物(ハ)から形成された基材層の少なくとも一方の面に、ポリプロピレン系樹脂(イ)92.5〜85重量%および少なくとも1種の水添ジエン系重合体(ロ)7.5〜15重量%からなる樹脂組成物(ニ)から形成された表層を積層してなる多層積層体、を要旨とする。
【0005】
以下、本発明について詳細に説明する。
樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)の(イ)成分として使用されるポリプロピレン系樹脂は公知のものであり、単独重合体であっても、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよいが、好ましくは共重合体である。
前記共重合体における好ましい他のモノマーとしては、例えばエチレン;ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィン;4−メチルペンテン−1、2−メチルプロペン−1、3−メチルペンテン−1、5−メチルヘキセン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等の分岐状α−オレフィン等が挙げられ、より好ましくはエチレン;ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1等の直鎖状α−オレフィンであり、特に好ましくは、エチレン、ブテン−1である。これらの他のモノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明においては、前記共重合体からなるプロピレン系樹脂を使用することにより、透明性、柔軟性、耐寒性等の物性バランスに優れた多層積層体が得られ、就中プロピレンとエチレンおよび/またはブテン−1との共重合体を使用することにより、前記物性バランスに特に優れた多層積層体が得られる。
前記共重合体における他のモノマーの共重合量は、通常、15重量%以下、好ましくは12重量%以下、より好ましくは2〜10重量%である。この場合、他のモノマーの共重合量が15重量%より多いと、得られる多層積層体の透明性の経時的低下に対する改良効果が不十分となる場合がある。
前記共重合体の構造については特に制限がなく、例えばランダム型、ブロック型、グラフト型、これらの混合型等いずれであってもよいが、好ましくはランダム型である。このようにランダム型共重合体からなるポリプロピレン系樹脂を使用することにより、透明性、柔軟性、耐寒性等の物性バランスに特に優れた多層積層体が得られる。
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は、フィルムあるいはシートとして成形可能である限り特に制限はないが、好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分とすることにより、成形性、透明性等に優れた多層積層体が得られる。
本発明において、前記ポリプロピレン系樹脂は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
樹脂組成物(ハ)中のポリプロピレン系樹脂の配合量は、80〜40重量%である。
また、本発明の樹脂組成物(ニ)中のポリプロピレン系樹脂の配合量は、92.5〜85重量%である。
【0006】
次に、樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)の(ロ)成分として使用される水添ジエン系重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合部分を主体とする重合体(以下、「水添前重合体」という。)を水素添加した少なくとも1種の重合体からなる。
水添前重合体中のランダム共重合部分の含量は、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。この場合、該ランダム共重合部分の含量が50重量%未満では、得られる多層積層体の透明性、柔軟性、耐寒性等が低下する傾向がある。
また、水添前重合体において、ランダム共重合部分中の共役ジエン単位の1,2−結合と3,4−結合との合計の割合は、全共役ジエン単位に対して、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、特に好ましくは70%以上である。この場合、前記1,2−結合と3,4−結合との合計の割合が60%未満では、ポリプロピレン系樹脂(イ)とブレンドした場合の透明性および柔軟性に対する改良効果が低下する傾向がある。
水添前重合体において、共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水添ジエン系重合体を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、特に好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレンである。これらの共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
また、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α―メチルスチレン、p―メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、好ましくはスチレン、α−メチルスチレンである。これらの芳香族ビニル化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
水添前重合体における共役ジエン化合物/芳香族ビニル化合物の重量比は、特に限定されるものではないが、好ましくは95/5〜40/60、さらに好ましくは93/7〜50/50である。
【0007】
水添前重合体は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合部分を主体とするものであるが、場合により、その重合体分子鎖中に下記のごとき重合体ブロックが含まれていてもよい。
前記重合体ブロックとしては、例えば、芳香族ビニル化合物の単独重合体ブロック、1,4−結合を主体とするポリブタジエンブロック、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物からなり芳香族ビニル化合物単位が漸増するテーパー状重合体ブロック等が挙げられる。これらの重合体ブロックが水添前重合体の分子鎖中に存在することにより、水添ジエン系重合体の物性上の特徴は若干低下するものの、ブロッキング性が低下することにより取扱い性が向上するため、工業的に有利となる場合がある。
水添前重合体中の前記重合体ブロックの含量は、特に限定されないが、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下である。この場合、重合体ブロックの含量が50重量%を超えると、得られる多層積層体の透明性、柔軟性、耐寒性等が低下する傾向がある。
【0008】
また、水添前重合体は、重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された構造を有することもできる。
この場合に使用されるカップリング剤としては、例えばアジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、ジメチルクロロシラン、四塩化ケイ素、ブチルトリクロロケイ素、ジメチルジクロロシラン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロムエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
【0009】
水添ジエン系重合体は、水添前重合体における共役ジエン部分の二重結合が水素添加されたものである。この水素添加に際して、水添前重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
水添ジエン系重合体における水素添加率は、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。この場合、水素添加率が80%未満であると、多層積層体の透明性、機械的強度、耐熱性、耐候性等が低下する傾向がある。
水添ジエン系重合体のポリスチレン換算数平均分子量(以下、「数平均分子量」と略記する。)は、好ましくは5万〜70万、さらに好ましくは5万〜60万である。この場合、数平均分子量が5万未満では、水添ジエン系重合体をペレット化した場合ブロッキングしやすくなり、かつポリプロピレン系樹脂(イ)とブレンドした場合機械的強度が低下し、また70万を超えると、流動性、加工性等が低下する。
水添ジエン系重合体は、例えば特開平3―72512号公報に開示されている方法によって製造することができる。
【0010】
さらに、樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)の(ロ)成分として使用される水添ジエン系重合体は、1種以上の官能基を導入した変性体であることもできる。
前記官能基としては、例えばカルボキシル基、酸無水物基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アンモニウム塩基、ハロゲン原子含有基、スルホン酸基等や、これらの官能基から誘導される基、例えばエステル基等が挙げられる。
このような官能基は、それらの種類に応じて、水添前重合体に対する水素添加の前または後に導入される。
本発明において、前記水添ジエン系重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0011】
本発明の基材層を形成する樹脂組成物(ハ)は、前記(イ)成分と(ロ)成分からなる。該樹脂組成物中の(ロ)成分の配合量は、20〜60重量%である。
また、本発明の表層を形成する樹脂組成物(ニ)は、前記(イ)成分と(ロ)成分からなる。該樹脂組成物中の(ロ)成分の配合量は、7.5〜15重量%である。
本発明の多層積層体は、樹脂組成物(ハ)から形成される基材層の少なくとも一方の面に、樹脂組成物(ニ)から形成される表層を積層してなるものであり、かかる多層積層体においては、基材層と表層とが相互に補いあるいは相乗して、優れた特性を有する多層積層体が形成される。したがって本発明においては、樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)中の(イ)成分と(ロ)成分との組合せ、(ロ)成分の配合量等の諸条件は、多層積層体の所望の特性に応じて適宜選定される。
本発明においては、本発明の特徴を本質的に損なわない範囲で、必要に応じてエチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−ブテン−1共重合体(EBM)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)、ポリブテン−1、ポリエチレン等のオレフィン系(共)重合体;アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等の他の樹脂を、樹脂組成物(ハ)および/または樹脂組成物(ニ)中に配合することもできる。
また、樹脂組成物(ハ)および/または樹脂組成物(ニ)には、本発明の特徴を本質的に損なわない範囲で、必要に応じてブロッキング防止剤、帯電防止剤、滑剤のほか、有機系抗菌剤、無機系抗菌剤、酸化防止剤、防曇剤、着色剤、紫外線吸収剤等の公知の添加剤を配合することもできる。
前記ブロッキング防止剤としては、例えばシリカ、ゼオライト等が好適であり、これらは天然、合成の何れでもよい。また前記帯電防止剤としては、炭素数12〜18のアルキル基を有するN,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−アルキルアミン類やグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。さらに、前記滑剤としては、脂肪酸アミドが好ましく、具体的にはエルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0012】
本発明の樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)における(イ)成分と(ロ)成分との混合は、例えばバンバリ−ミキサー、ロールミル、押出し成形機等の適宜の混合機を用いて行うことができるが、押出し成形機中で溶融混練することが好ましく、特に2軸押出し成形機を用いて溶融混練することが好ましい。このように2軸押出し成形機により溶融混練した樹脂組成物を使用することにより、フィルムおよびシート中のフィッシュアイが少なくなり、外観に優れるばかりでなく、透明性がさらに優れたフィルムおよびシートが得られる。なお、2軸押出し成形機を用いて溶融混練した樹脂組成物は、通常、ペレット化して使用される。
本発明の多層積層体は、例えば
(a) 基材層と表層とをインフレーション法、Tダイ法等の通常の方法でフィルムあるいはシートに成形したのち、熱貼合する方法、
(b) 共押出しタイプのインフレーション成形機やTダイ押出し成形機により直接積層成形する方法、
(c)例えば前記 (a)の方法で予め成形した基材層あるいは表層の少なくとも一方の面に他方の層を押出しラミネートする方法
等の公知の方法で積層して製造することができる。前記(a) および(b) の方法に使用されるTダイ押出し成形機のTダイは、マルチマニホールドタイプまたはフィードブロックタイプの何れでもよい。これらの方法のうち、(b) の方法が好ましく、特に好ましい方法は、共押出しタイプのTダイ押出し成形機を用いる方法である。
前記(b) の方法では、基材層の一方の面に表層を積層する2層共押出し法、基材層の両方の面に表層を積層する3層共押出し法のほか、4層以上の多層押出し法を採用することができるが、耐ブロッキング性および透明性の経時変化の点から、少なくとも基材層の両方の面に表層を積層することが好ましい。
また、本発明の多層積層体は、透明性が要求される用途には両鏡面として使用されるが、透明性がそれほど要求されない用途では、最外層の表層の少なくとも一方にマット、絞り、型押し等の意匠を施してもよい。
本発明の多層積層体は、基材層の一方の面または両方の面に表層が積層されているが、基材層の両面に積層された各表層は同一でも異なってもよく、また基材層の一方の面または両方の面に、表層を2層以上積層することもできる。本発明の多層積層体は、場合により2つ以上貼合して使用することもできる。
本発明の多層積層体の厚さは、多層積層体の所望の特性や用途に応じて適宜選択されるが、成形性および強度の観点から、10μm以上であることが好ましく、さらに好ましくは20μm以上である。
また、本発明の多層積層体における基材層と表層との厚さの比率は、多層積層体の所望の特性や用途に応じて適宜選択されるが、基材層/表層=1/1〜8/1の範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは基材層/表層=2/1〜6/1の範囲である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
実施例および比較例中の各種評価は、次のようにして行った。
芳香族ビニル化合物の結合量(重量%)
赤外分析法による679cm-1のフェニル基の吸収により測定した。
共役ジエン部分のビニル結合含量(%)
赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
水素添加率(%)
溶媒として四塩化エチレンを用い、100MHzでの 1H―NMRスペクトルにより算出した。
水添ジエン系重合体の数平均分子量
溶媒としてトリクロルベンゼンを用い、135℃におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算して算出した。
フィルム強度
ASTM D 882に準拠して、フィルム強度を測定し、以下の基準で判定した。
フィルム強度が300kgf/cm2 以上 ・・・ ○
フィルム強度が300kgf/cm2 未満 ・・・ ×
透明性
ASTM D 1003に準拠して、成形直後のフィルムヘーズ(%)を測定し、以下の基準で判定した。
〔厚さ40μmフィルムの場合〕
ヘーズが2%以下 ・・・ ○
ヘーズが2%より高く3%以下 ・・・ △
ヘーズが3%より高い ・・・ ×
〔厚さ100μmフィルムの場合〕
ヘーズが3%以下 ・・・ ○
ヘーズが3%より高く4%以下 ・・・ △
ヘーズが4%より高い ・・・ ×
柔軟性
ASTM D 882に準拠して、ヤング率 (kg/mm2) を測定し、以下の基準で判定した。
ヤング率が30kg/mm2以下 ・・・ ○
ヤング率が30kg/mm2より高く40kg/mm2以下 ・・・ △
ヤング率が40kg/mm2より高い ・・・ ×
耐寒性
−10℃における触感により、以下の基準で判定した。
常温の場合と同等に柔軟である ・・・ ○
常温の場合に比べてやや硬い ・・・ △
常温の場合に比べて非常に硬い ・・・ ×
溶断シール強度
溶断シールを行ったのちシール部を引裂き、以下の基準で判定した。
シール部は破壊せず非シール部が伸びる ・・・ ○
シール部は裂けるが抵抗があり非シール部も伸びる ・・・ △
抵抗が無くシール部が裂ける ・・・ ×
透明性の経時変化
50℃の恒温槽中に1週間放置したのちのフィルムヘーズ(%)を、ASTMD 1003に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
初期ヘーズとの差が0.5以下 ・・・ ○
初期ヘーズとの差が0.5より大きく1.0以下 ・・・ △
初期ヘーズとの差が1.0より大きい ・・・ ×
実施例および比較例の配合処方に用いた各成分は、以下の通りである。
(イ)成分
(イ-1) ポリプロピレン(チッソ石油化学(株)製、商品名FM831B)
(イ-2)ポリプロピレン(三菱化学(株)製、商品名FX4)
(ロ)成分
表1に示す水添ジエン系重合体(ロ-1) 〜(ロ-6)を合成した。水添ジエン系重合体(ロ-7) は、シェル(株)社製水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(商品名クレイトンG−1652)である。これらの水添ジエン系重合体のミクロ構造、数平均分子量および水素添加率を、表1にまとめて示す。
【0014】
【実施例】
実施例1
(イ-1)成分80重量部と(ロ-1)成分20重量部とを、(株)池貝製2軸押出し成形機PCM−45を用いて溶融混練りしたのちペレット化し、樹脂組成物(ハ)を得た。
また、同様にして(イ-1)成分92.5重量部、(ロ-1)成分7.5重量部およびブロッキング防止剤としてシリカ0.2重量部を溶融混練したのちペレット化し、樹脂組成物(ニ)を得た。
得られた各樹脂組成物を、フィードブロック付きTダイを備えた3層フィルムが成形可能な押出し成形機(モダンマシナリー社製、基材層用:65mmφ、表層用:50mmφ)に供給し、押出し温度240℃、冷却ロール温度20℃として3層共押出しを行い、厚さ40μm、各層の厚さの比率が1/4/1の3層積層体を得た。次いで、通常のエージングを行ったのち、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度およびフィルム強度が優れ、また透明性の経時変化も極めて小さいものであった。評価結果を表2に示す。
【0015】
実施例2
(イ-1)成分の代わりに(イ-2)成分を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は、透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度およびフィルム強度が優れ、また透明性の経時変化も極めて小さいものであった。評価結果を表2に示す。
【0016】
実施例3および実施例4
(ロ-1)成分の代わりに(ロ-2)成分または(ロ-3)成分を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は、透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度およびフィルム強度が優れ、また透明性の経時変化も極めて小さいものであった。評価結果を表2に示す。
【0017】
実施例5
実施例1と同様にして、(イ-1)成分40重量部と(ロ-1)成分60重量部からなる樹脂組成物(ハ)および(イ-1)成分85重量部と(ロ-1)成分15重量部およびブロッキング防止剤シリカ0.2重量部からなる樹脂組成物(ニ)を得た。
次いで、厚さを100μmとした以外は実施例1と同様にして、得られた各樹脂組成物から3層積層体を得たのち、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は、透明性、柔軟性、耐寒性およびフィルム強度が優れ、また透明性の経時変化も極めて小さいものであった。評価結果を表2に示す。
【0018】
実施例6
実施例5と同様の樹脂組成物(ハ)および樹脂組成物(ニ)から、表層と基材層との厚さの比率が1/4の2層積層体を得た以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、得られた2層積層体は、透明性、柔軟性、耐寒性およびフィルム強度が優れたものであった。評価結果を表2に示す。
【0019】
比較例1〜4
(ロ-1)の代わりに(ロ-4) 〜(ロ-7)を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、比較例1の3層積層体は、透明性に優れるものの、溶断シール強度およびフィルム強度が劣り、透明性の経時変化も大きく、またブロッキングが激しく衣料材料包装フィルムとして使用できなかった。さらに比較例2〜4の3層積層体は、不透明であった。評価結果を表3に示す。
【0020】
比較例5
(イ-1)成分98重量部と(ロ-1)成分2重量部から樹脂組成物(ハ)を得た以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は、透明性、柔軟性、溶断シール強度等が劣っていた。評価結果を表3に示す。
【0021】
比較例6
(イ-1)成分10重量部と(ロ-1)成分90重量部から樹脂組成物(ハ)を得た以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
その結果、得られた3層積層体は、フィルム強度が劣っていた。評価結果を表3に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【発明の効果】
本発明の多層積層体は、透明性、柔軟性、耐寒性、溶断シール強度、フィルム強度等に優れ、しかも透明性の経時変化が小さく、衣料材料包装用フィルム、電子回路成形用フィルム、文具包装用フィルム、医療用包装フィルム、医療用廃棄袋、医療衛生材料、化粧フィルム、食品容器等の分野に好適に用いることができる。
Claims (6)
- ポリプロピレン系樹脂(イ)80〜40重量%および共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とのランダム共重合部分を主体とする重合体であって、ランダム共重合部分中の共役ジエン単位の1,2−結合と3,4−結合との合計の割合が、全共役ジエン単位に対して、60%以上である少なくとも1種の重合体の共役ジエン部分の二重結合が80%以上水素添加され、かつポリスチレン換算数平均分子量が5万〜70万である水添ジエン系重合体(ロ)20〜60重量%からなる樹脂組成物(ハ)から形成された基材層の少なくとも一方の面に、ポリプロピレン系樹脂(イ)92.5〜85重量%および少なくとも1種の水添ジエン系重合体(ロ)7.5〜15重量%からなる樹脂組成物(ニ)から形成された表層を積層してなる多層積層体。
- 請求項1に記載の多層積層体からなる衣料材料包装用フィルム、文具包装用フィルムあるいは医療用包装フィルム。
- 請求項1に記載の多層積層体からなる電子回路成形用フィルム。
- 請求項1に記載の多層積層体からなる医療用廃棄袋あるいは医療衛生材料。
- 請求項1に記載の多層積層体からなる化粧フィルム。
- 請求項1に記載の多層積層体からなる食品容器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP09185096A JP3804100B2 (ja) | 1996-03-22 | 1996-03-22 | 多層積層体 |
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Publications (2)
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