JP3797581B2 - 射出成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成形金型に関し、特に反り、変形、残留応力などのない射出成形品(以下「成形品」と称する)を成形することができ、しかも成形品の落下不良や損傷などの成形トラブルが発生しない射出成形金型(以下「金型」と称する)に関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形においては、キャビティ内に注入された樹脂はそこで冷却・固化された後、型開きによって固定型から離型されて一旦可動型上に残され、次いで更に金型が開くと可動型内に設けられたエジェクターピンで押されて可動型から離型されると同時に突き出され、固定型と可動型の間に落下するようにするのが通常である。
【0003】
また、一般に射出成形用の金型は、良好な表面状態を持つ成形品が得られるように、キャビティの内面全面が鏡面状に仕上げられている。更に、使用する成形材料によっては硬質クロムメッキが施されることがある。また、成形品が離型されやすいように、金型には通常抜き勾配が付けられている。
【0004】
しかるに、光ディスクや磁気ディスクのような、投影面積に対して厚さが小さい成形品の場合には抜き勾配を付けにくく、また型開き時のエジェクターピンによる突出しが均一に行われにくい。その結果、反りや変形が発生して良好な外観・寸法の製品が得られなかったり、残留応力が発生して所期の強度や光学的性能などが得られないことがある。
【0005】
また、例えば図1に示すように、パーティング面PLを挟む両側に同じ形状で同じ高さの桟R1 が格子状に設けられているような成形品M1 の場合は、前記したようなキャビティの内面全面が同じ鏡面仕上げ、あるいはメッキ仕上げされている金型を使用して成形すると、型開き時に、冷却・固化した成形品M1 と金型開閉方向に平行なキャビティ内面との間の摩擦抵抗(以下「型開き抵抗」と称することとする)がパーティング面PLの両側でほとんど等しくなる。その結果、成形品M1 は必ずしも最初に固定型から離型されて可動型上に残るとは限らず、固定型に残って落下しなかったり、突き出しが不完全なまま固定型と可動型の間に残って挟まれたまま潰されたり、金型が損傷するといったトラブルが発生することがある。
【0006】
また、図2に示すa部やb部のように、パーティング面PLの同じ側に桟R2 が著しく不均一な間隔で格子状に設けられているような成形品、あるいはパーティング面PLの両側の対向する部分の桟R2 の間隔が著しく不均一な成形品M2 の場合には、キャビティの内面全面が同じ鏡面仕上げあるいはメッキ仕上げされている金型を使用して成形すると、型開き抵抗がパーティング面PL内で不均一になったり、またはパーティング面PLの両側の対向位置で型開き抵抗が不均等となるために、成形品M2 の各部に無理な力や曲げモーメント、捩じりモーメントが作用して、成形品M2 に反り、変形等の外観不良、残留応力などが発生したり、離型時に上記のようなトラブルが発生することがある。
【0007】
そこで、光ディスクや磁気ディスクの成形では、このような問題を解決するために、型開き過程または型開き完了時においてキャビティ部の成形品の型境界面に対して圧縮気体を送り込む型離れ真空破壊手段を有する射出成形装置(特開平6−170898号公報参照)、成形後の成形品に超音波振動を間欠的に与えて金型から離型させる超音波剥離装置(実開昭62−111814号公報参照)などが開示されている。
【0008】
しかしながら、上記特開平6−170898号公報記載の射出成形装置及び実開昭62−111814号公報記載の超音波剥離装置は、構造が複雑な上、円板状や円筒状などの比較的簡単な形状または構造の成形品には適用できるが、図1に示す成形品M1 、または図2に示す成形品M2 のような複雑な形状または不均一な形状を持った成形品の製造には適用しにくいという問題がある。
【0009】
また、抜き勾配に差を付けて、離型しやすい部分と離型しにくい部分を設けることもあるが、抜き勾配が付けにくい成形品の場合には有効な手段とはならないという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、パーティング面の両側に対称な形状を有する成形品を成形する場合でも、成形品が固定型に残って落下しなかったり、突き出しが不完全なため固定型と可動型の間に残り、挟まれて潰されたり、金型が損傷するといったトラブルが発生することがない金型を提供することを目的とする。
【0011】
また、パーティング面の片側における形状や配置が著しくアンバランスな成形品、あるいはパーティング面の両側の対向位置における形状が著しく異なるような成形品を成形する場合でも、成形品に反り、変形、残留応力等が発生したり、上記のような成形トラブルが発生することがなく、しかも構造が簡単な金型を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1記載の本発明金型は、金型開閉方向と平行なキャビティ内面の全面もしくは一部になし地仕上げが施されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2記載の本発明金型は、可動型の全型開き抵抗が固定型の全型開き抵抗より大きくなるようになし地仕上げが施されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項1記載の本発明金型は、可動型または固定型のキャビティ内面が、型開き抵抗が異なるように、任意の部分に異なる表面あらさのなし地仕上げが施されていることを特徴とする。
【0015】
本発明において、なし地仕上げとは、「表面を均等に粗らした無方向性のつや消し面仕上げ」(JIS−H−0201「アルミニウム表面処理用語」参照)、あるいは「機械的または化学的などにより表面を粗らして仕上げる方法」(JIS−H−0400「アルミニウム表面処理用語」参照)をいう。
【0016】
機械的な仕上げ方法としては、工作機械による切削、研削、やすりがけ、サンドペーパーがけ、サンドブラスト、ショットピーニング等が挙げられる。また、化学的な仕上げ方法としては、通常エッチングが行われるが、更にその上から各種メッキ加工、樹脂加工等の追加表面加工を施してもよい。
【0017】
また、なし地仕上げは、仕上げ方法、仕上げの程度、及び仕上げ範囲を変えることにより、部分によって任意の異なる表面あらさとすることができる。
【0018】
(作用)
請求項1記載の本発明は、金型開閉方向と平行なキャビティ内面の任意の部分に適切な表面あらさのなし地仕上げを施すことによって冷却・固化した成形品との摩擦係数を調節し、可動型の全型開き抵抗を固定型の全型開き抵抗より大きくして、成形品を確実にまず可動型上に残すことができる。また、可動型及び固定型それぞれの型開き抵抗を場所によってほぼ同じくして、冷却・固化した成形品が無理なく離型されるようにすることができる。
【0019】
請求項2記載の本発明は、例えば図1に示すような、パーティング面PLを挟む両側に同じ形状で同じ高さの格子状の桟R1 が設けられているような成形品M1 を成形する金型の場合、固定型のキャビティ内面は鏡面のままにしておき、可動型のキャビティ内面全面に同じ表面あらさのなし地仕上げを施すことによって、可動型の全型開き抵抗を固定型の全型開き抵抗より大きくして、冷却・固化した成形品M1 が確実に可動型上に残るようにすることができる。
【0020】
請求項1記載の本発明は、例えば図2に示すような、格子状の桟R2 が投影面上で非対称あるいは不均一な間隔で設けられ、しかもパーティング面PLの両側の対向位置にある桟R2 の数や間隔が異なるような成形品M2 を成形する金型の場合には、可動型及び固定型のキャビティに、部分的に異なる表面あらさのなし地仕上げを施すことによって、成形品M2 は曲げや捩じれが発生することなしに平均に離型されるようにすることができる。
【0021】
以上の結果、成形品に反り、変形等の外観不良、残留応力、あるいは成形の際のトラブル等が発生することが防止される。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面と実施例によって説明する。図3は図1に示す成形品を成形するための本発明金型の固定型と可動型の断面図、図4(A)は図3に示す本発明金型の固定型の部分正面図、(B)は可動型の部分正面図、図5は図2に示す成形品を成形するための本発明金型の固定型と可動型の図6X−X線における断面図、図6(A)は図5に示す本発明金型の固定型の正面図、(B)は可動型の正面図である。
【0023】
(実施例1)
図3、図4に示す金型1は、パーティング面PLに対して対称で、長辺a=120mm、短辺b=90mm、厚さh=20mm、桟R1 の厚さt=2mmを有する図1に示すようなPMMA製の成形品M1 を成形する金型である。
【0024】
金型1は最初、固定型2のキャビティの内面21、及び可動型3のキャビティの内面31とも、表面あらさがJIS−B−0601に規定する1.6S(最大高さRmax :1.6μm)の鏡面に仕上げられていたが、型開きの際に成形品M1 が固定型2の上に残ることがあり、成形トラブルの原因となっていた。
【0025】
そこで、固定型2の型開閉方向と平行なキャビティの内面21は最初の鏡面仕上げのままで残し、可動型3の型開閉方向と平行なキャビティの内面31を粒度#36の研磨材(JIS−R−6001「研磨材の粒度」参照)を用いてサンドブラストすることにより、表面あらさ18S(Rmax :18μm)のなし地仕上げを施して、可動型3の全型開き抵抗が固定型2の全型開き抵抗より大きくなるように調節した。
【0026】
その結果、型開きの際に成形品M1 は確実に可動型3上に残された。次いで可動型内のエジェクターピンで突き出されて、反り、変形等の外観不良や、残留応力のない良好な製品を得ることができた。
【0027】
(実施例2)
図5、図6に示す金型4は、長辺、短辺、厚さ、及び桟の厚さは実施例1(図1)に示す成形品M1 と同じで、図2に示すように、パーティング面PLに対して桟R2 が格子状に非対称あるいは不均一な間隔で設けられたPMMA製の成形品M2 を成形するための金型である。
【0028】
即ち、成形品M2 は表側(図2(B))の向かって右上部(a部)の桟の間隔が他の部分よりも密であり、裏側(図2(C))の向かって右下部(b部)の桟の間隔が他の部分よりも密である。
【0029】
金型4は最初、固定型5のキャビティの全内面、及び可動型6のキャビティの全内面とも、表面あらさが1.6Sの鏡面に仕上げられていたが、a部が固定型5から、同じくb部が可動型6から離型しにくくて成形品M2 に反りや曲がりが発生し、更に引きちぎられるといった成形トラブルが発生していた。
【0030】
そこで、図6(A)に示すように、固定型5のゾーン5a内のキャビティ内面51は最初の鏡面仕上げのままで残し、ゾーン5b内のキャビティ内面52を粒度#100の研磨材を用いてサンドブラストしてなし地仕上げとした。
また、図6(B)に示すように、可動型6のキャビティ内面のゾーン6a内の内面61を粒度#60の研磨材を用いてサンドブラストするとともに、ゾーン6b内の内面62を粒度#36の研磨材を用いてサンドブラストし、なし地仕上げとした。
【0031】
このようにして、固定型5内及び可動型6内ではそれぞれ、成形品M2 の桟R2 が比較的粗な部分の型開き抵抗を桟R2 が比較的密な部分の型開き抵抗より大きくするとともに、可動型6の全型開き抵抗が固定型5の全型開き抵抗より大きくなるように調節した。その結果、型開きの際に成形品M2 は平均に固定型5から離型され、確実に可動型6上に残された。次いで可動型6内のエジェクターピンで突き出されて、反り、変形等の外観不良や、残留応力のない良好な製品を得ることができた。またその他の成形トラブルが発生することもなかった。
【0032】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1記載の本発明射出成形金型は上記のように構成されているので、金型開閉方向と平行なキャビティ内面の型開き抵抗が調節され、それによって、成形品をまず固定型から無理なく離型して可動型上に確実に残り、次いで可動型から無理なく平均に離型するとともに突き出される。その結果反り、変形等の外観不良や、残留応力のない良好な製品を得ることができる。また、成形品の落下不良、潰れ、ちぎれなどの成形トラブルの発生が防止される。
更に、金型開閉方向と平行なキャビティ内面に、場所により適正な表面あらさのなし地仕上げを施すだけでよく、複雑な形状や駆動手段を必要としないので、構造が簡単である。
【0033】
また、請求項2記載の本発明射出成形金型は上記のように構成されているので、冷却・固化した成形品が確実に可動型上に残る。従って、成形品の落下不良、潰れ、ちぎれなどの成形トラブルの発生が防止される。
【0034】
また、請求項1記載の本発明射出成形金型は上記のように構成されているので、冷却・固化した成形品が固定型及び可動型から捩じれがないように平均に離型され、反り、変形等の外観不良や、残留応力のない良好な製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】成形品の一例を示す説明図で、(A)は側面図、(B)は(A)に於けるB矢視図(正面図)、(C)は(A)に於けるC矢視図(背面図)。
【図2】成形品の他の一例を示す説明図で、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は背面図。
【図3】図1に示す成形品を成形するための本発明金型の固定型と可動型の断面図。
【図4】(A)は図3に示す本発明金型の固定型の部分正面図、(B)は可動型の部分正面図。
【図5】図2に示す成形品を成形するための本発明金型の固定型と可動型の図6X−X線における断面図。
【図6】(A)は図5に示す本発明金型の固定型の正面図、(B)は可動型の正面図。
【符号の説明】
1,4 射出成形金型
2,5 固定型
3,6 可動型
21 固定型のキャビティ内面(鏡面仕上げ面)
31 可動型のキャビティ内面(# 36 の研磨材によるなし地加工面)
51 固定型のキャビティ内面(鏡面仕上げ面)
52 固定型のキャビティ内面(#100 の研磨材によるなし地加工面)
61 可動型のキャビティ内面(# 60 の研磨材によるなし地加工面)
62 可動型のキャビティ内面(# 36 の研磨材によるなし地加工面)
M1 ,M2 射出成形品
R1 ,R2 桟
PL パーティング面
Claims (2)
- 金型開閉方向と平行なキャビティ内面の全面もしくは一部になし地仕上げが施されている射出成形金型であって、可動型または固定型のキャビティ内面が、型開き抵抗が異なるように、任意の部分に異なる表面あらさのなし地仕上げが施されていることを特徴とする射出成形金型。
- 可動型の全型開き抵抗が固定型の全型開き抵抗より大きくなるようになし地仕上げが施されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形金型。
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