JP3797105B2 - マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形してスクイズロールでアプセット加圧しつつレーザー溶接を行うマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザビーム等の高密度エネルギービームの集中熱源による溶接鋼管の製造は、アーク溶接等のエネルギー密度の低い溶接熱源に比べて高速溶接を行うことが可能であり、溶接入熱を少なくすることができるという長所がある。その結果、溶接部の幅が狭く熱影響による素管材質の劣化が少なく、品質の優れた鋼管の製造が可能である。また、高速溶接により溶接鋼管の生産性が向上する。しかし、この方法は、レーザビームを素管の突合わせ部に照射して板厚を貫通溶接させる方法であるため、溶接部にブローホール等の溶接欠陥が発生しやすい。その結果、溶接部の靭性が低下する傾向があった。
【0003】
その対策として、例えば、特開平9−168878号公報には、優れた靭性および耐食性を有する2相ステンレス溶接鋼管を高生産性で製造する方法が提案されている。この技術は、2相ステンレス鋼板をオープンパイプに成形し、鋼板の両エッジ部をそのままあるいは加熱してから、突き合わせてレーザー溶接し、溶接部に管外面側または管内面側もしくは両側からアーク溶接するというものである。
【0004】
また、特開平8−206861号公報には、低Cマルテンサイト系ステンレス鋼溶接管の製造方法として、レーザ出力P、素材帯鋼肉厚h、および素材帯鋼エッジ部の予熱温度T0によりレーザー溶接の溶接速度を決定する方法が提案されている。この技術では、溶接速度を、V=1.35(P/h)×[1000/(1000-T0)]の式で計算されるVの値以上とするいうものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、ブローホール等の溶接欠陥は、溶接部靭性を低下させるのみならず、溶接部溶接補修(TIG溶接等)の作業を必要とし、また製品不適合品の増加につながる。例えば、ユーザー仕様等で、ブローホールの許容寸法,単位長さ当りの許容数等が規定され、仕様によりTIG溶接を行わなければオーダー充当できない場合がある。仕様によっては、溶接補修を認めず不合格(オーダー充当不可)となる場合もある。また、溶接の際、溶込み不足となると、溶込み不足は手直しできないため、製品不適合品となる。
【0006】
しかし、従来技術においては、鋼板の突合わせ部に対してのレーザー照射の位置や、レーザー照射後のアプセット条件については開示されていない。そのため、レーザー溶接の実施に当たっては、過去の経験に頼る他ないという問題がある。
【0007】
また、特開平9−168878号公報記載の技術は、2相ステンレス溶接鋼管を対象としており、マルテンサイト系ステンレス鋼溶接管を対象とした技術ではない。即ち、ステンレス鋼帯自体の変形能およびレーザ溶接後の溶融金属の物性の為に、適正な予熱の大きさ、アップセット量、およびレーザ最適照射位置などが大きく異なり、マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造技術に本技術は適用できない。さらにこの技術では、レーザー溶接後にアーク溶接するので、溶接部のアンダカットは解消されるが、装置が複雑となることが避けられないという問題がある。
【0008】
特開平8−206861号公報記載の技術は、レーザー溶接については、溶接速度を帯鋼肉厚当たりのレーザ出力に比例させ、昇温必要量(1000℃−予熱温度)に反比例させるということである。しかし、これは溶接に必要以上の熱量を供給することを避けると言うだけであり、これだけで、溶接欠陥の発生が防止できるとは考えにくい。また、レーザー照射の位置およびアプセット条件については何ら記載されていないという問題がある。
【0009】
本発明は以上の問題を解決し、生産性を低下させることなくブローホールや溶込み不足等の溶接欠陥の発生を抑制することが可能な、マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は次の発明により解決される。
【0011】
その発明は、マルテンサイト系ステンレス鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形してスクイズロールでアプセット加圧しつつレーザー溶接を行うマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法において、オープンパイプの相対する両エッジ部を、高周波加熱法により予熱した後、スクイズロールの近傍の前記両エッジ部がV字型に突き合わされている部分で、予熱の大きさE・I、アプセット量U、および前記両エッジ部のなす角度αにより決定される位置Xが式(4)を、溶接速度v、板厚tおよびレーザー出力Pが式(5)、(6)を満足する条件でレーザー照射し、スクイズロールで加圧後、内外ビードを切削することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法である。
90≦E・I≦250 (1)
0.1≦U≦1.0 (2)
Xa=(30+E・I/15+10U)/exp(0.2α) (3)
0.8Xa≦X≦1.2Xa (4)
v≧0.17X (5)
0.5≦P・exp{(250+E・I)/500}/(v・t) (6)
ここで、 E:高周波加熱電圧(kV) I:高周波加熱電流(A) U:スクイズロールでのアプセット量(mm) α:V角(°)(予熱前のスクイズ点より40mm以内での鋼板エッジ部開口部角度) X:レーザー照射位置適正範囲(mm)(スクイズ ロール中心点から上流側への距離) P:レーザー出力(kW) v:溶接速度(m/min) t:鋼板厚(mm)
【0012】
この発明は、マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製管プロセスについて鋭意検討する中でなされた。その過程で、スクイズロールの近傍のレーザを照射する位置により、溶接部の品質が大幅に変化することに着目した。レーザを照射する位置が適切であれば、溶接部の品質が向上することが可能であり、以下、このようなレーザの照射位置を(レーザー照射の)最適位置と呼ぶ。
【0013】
引き続き検討の結果、レーザー照射の最適位置は、固定的なものではなく、製造条件により種々変化することがわかった。さらに、レーザー照射の最適位置は、予熱の大きさ、アプセット量、および両エッジ部のなす角度により決定されることを見出した。
【0014】
種々の検討結果をまとめて、実験式として表すと次のようになる。
【0015】
Xa = f(EI,U)・g(α) (i)
ここで、Xaはレーザー照射の最適照射位置、EIは予熱の大きさであり、高周波加熱装置の消費電力(kW)を用いればよく、Uはアプセット量(mm)でありその数値を用いる。また、αは、スクイズロールの近傍でV字型に突き合わされた両エッジ部のなす角度である。
【0016】
この式のf(EI,U)は、予熱の大きさEIとアプセット量 U(mm)が、いずれも最適照射位置Xaに対して、単調増加の関係が見られるので、簡単のため、EIとUの1次式とすればよい。
【0017】
f(EI,U)=a・EI+b・U+c (ii)
ここで、a,b,cは係数で、実験等により予め求めておく。
【0018】
一方、g(α)については、αを通常の角度より大きくすると最適照射位置が大幅に変化するのに対して、αを小さくする場合は殆ど変化しないので、そのような挙動を示す関数とする。このような関数として、例えば、指数関数を用いると次のようになる
g(α)=h・exp(k・α) (iii)
ここで、h,kは係数で、これも実験等により予め求めておく。
【0021】
この発明は、前述の実験式(i)〜(iii)の係数について具体的な数値を求めたもので、式(1)〜(2) により予熱の大きさE・Iとアプセット量Uを決定すると、式(3)〜(4) からレーザー照射位置Xが決まる。その後、式(5)〜(6) から、使用する鋼板の厚みt(mm)に応じて、必要なレーザー出力P(kW)と溶接速度v(m/min)を求める。その際、溶接速度は式(5)を満たす値以上であればよく、生産性をよくするために少しでも早い溶接速度の条件を求めるためには、保有しているレーザー発振装置の最大出力を式(6)に代入すれば、溶接品質上問題が無い最大速度を求めることができる。以上の数式(1)〜(6)については、「発明の実施の形態」の項で詳細に説明する。
【0022】
最後に内・外面のビードに関しては、溶融金属中に残存しているガスがスクイズロールでのアプセットによりビードの中にブローホールとして残る恐れがあるので、内外ビードを切削する。
【0023】
このようにして、適切な溶接位置および溶接条件でレーザー溶接することにより、ブローホール等の溶接欠陥が抑止されて靭性が向上するのみならず、溶込み不足等も抑止される。その結果、溶接部溶接補修(TIG溶接等)の作業が削減でき、製品不適合品も低減することができる。
【0024】
これらの発明において、さらに、溶接後の鋼管の溶接部をAc1点以上830℃以下の温度に加熱した後、空冷又はそれ以上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却し、再び550℃以上Ac1点以下の温度に加熱することを特徴とするレーザー溶接マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法としてもよい。
【0025】
この発明は、オンラインでの短時間熱処理により、溶接部の靭性を向上させるための高温焼戻し処理を施す。最初の加熱では、Ac1点以上に加熱することで部分的にオーステナイト化させ、空冷ないしそれ以上の冷却速度で150℃以下の温度まで冷却することにより、完全なマルテンサイト組織に変態させる。
【0026】
その後の2度目の加熱は焼戻し処理である。この焼戻し処理の処理条件については、加熱温度が550℃未満では十分な焼戻しが行われず、Ac1点を超えると再度部分的にオーステナイト化され、その後の冷却で焼入ままのマルテンサイト組織が生成し靭性を著しく劣化させる。従って、焼戻し温度は、550℃以上Ac1点以下の温度とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
発明の実施に当たっては、マルテン発明の実施サイト系ステンレス鋼板を、ブレイクダウンロール群やケージロール群、フィンパスロール群等に通してオープンパイプ状に連続的に成形し、オープンパイプの両エッジ部を誘導加熱コイルあるいはコンタクトチップを用いた高周波加熱法により加熱する。その後、上方よりレーザービームを照射し、スクイズロールにてアプセットを加え、内・外面ビードを切削する。この製造工程において、生産性が良くかつ健全な溶接部を得るためには、多くの実験結果から、前述の(1)〜(6)式の条件を満足する必要がある。以下にその理由を述べる。
【0028】
▲1▼ 90≦E・I≦250 (1)
この式は高周波加熱の適正範囲を規定したもので、E・Iすなわち予熱の電力(kW)が90kW未満では、予熱の効果が非常に少なく、溶接速度が遅くなるため生産性が悪い。予熱の電力が250kWを越えるとオーバー入熱となり、予熱を受けた突合わせエッジ面が著しく酸化を受け、溶接品質を損ないかつエッジ表面の溶融等が発生する。そのため、適切なエッジ面形状が維持できなくなり、安定したレーザー溶接ができなくなる。
【0029】
▲2▼ 0.2≦U≦1.0 (2)
この式はスクイズロールでの適正アプセット量を規定したもので、0.2mm未満のアプセット量では、レーザー照射された溶融金属中にブローホールが残存する恐れがある上ビード切削部にアンダーカットを生じ易い。一方、1.0mmを越えてアプセットを加えると、メタルフローの立上り角度が大きくなり、ビード切削後、フッククラック等の欠陥が生じ易くなる。
【0030】
▲3▼ Xa=(30+E・I/15+10U)/exp(0.2α) (3)
この式は、前述の一般式の具体例であり、レーザーを照射する最適な突き合せエッジ部のスクイズロール中心からの距離Xa (mm)を示したものである。一般にレーザー溶接においては、突き合せ位置にレーザーを照射すると表現されているが、その明確な位置は規定されていない。そこで最適な照射位置の定量化を図るべく繰返し実験を行った。まず、マルテンサイト鋼板を成形ロールで成形しスクイズロールまで通した時に、スクイズロール上流側の突き合せエッジ部がV字型の形状(Vシェープ)を呈する。このエッジ部のなす角をV角(α°) と呼ぶ。
【0031】
但し、ここで言うαは、一般に電縫鋼管で用いているV角が、主としてロール等の幾何学的位置関係により定義されていたのに対して、スクイズロール中心から上流側40mm以内でのエッジ開口角とする。なお、従来技術におけるV角とは、フィンパスロールもしくはシームガイドロールカリバー、フィンパスロールもしくはシームガイドロールフィン、スクイズロール胴径、及びフィンパスロールもしくはシームガイドロール中心とスクイズロール中心もしくはV収束点の距離により決まる角度である。
【0032】
この際、スクイズロールでの突き合せ形状はI型がよい。レーザー照射位置としては、実験結果からエッジ突き合せ部に僅かなギャップがある位置が最適である。また、この最適位置は、高周波予熱による入熱とスクイズロールによるアプセットの影響により変化する。つまり、高周波予熱による入熱電力を上げるとギャップは狭まり、アプセット量を増やすとギャップは狭まる。よって、最適なレーザー照射位置はE・I,U,αの関係式で整理することができ、多くの実験結果から式(3)を得た。
【0033】
▲4▼ 0.8Xa ≦X≦1.2Xa (4)
上記の式(3)の説明において、レーザー照射位置Xaとしては、実験結果からエッジ突き合せ部に僅かなギャップがある位置が最適であると述べたが、その前後の許容範囲を示したのが式(4)である。まず、スクイズロール中心点から1.2Xa(mm)より離れた位置にレーザーを照射すると、突き合せ部のギャップが広過ぎ、レーザービームでのエッジ溶融が不十分な部分が発生したり、レーザーが突き抜けてしまうことがあり、溶接欠陥を生じ易い。
【0034】
その反対に、スクイズロール中心点から0.8Xa(mm)までの位置では、ギャップが狭すぎる状態の上、予熱及びスクイズアプセットの影響でエッジ部近傍の増肉が大きく、内面側の溶融が不十分なところが発生する。
【0035】
▲5▼ v≧0.17X (5)
マルテンサイト系ステンレス鋼のレーザー溶接部凝固割れを防止するためには、レーザー照射からスクイズロールでアプセットを加えるまでの時間を0.35sec以内にする必要がある。そのためには、照射位置は決まっているので、溶接速度を式(5)の速度以上で溶接する必要がある。
【0036】
▲6▼ 0.5≦P・exp{(250+E・I)/500}/(v・t) (6)
これは、レーザー出力、予熱電力、溶接速度、鋼板厚の関係を多くの実験より求めたものである。式(6)の右辺の値が0.5未満の時には、溶け込み不足を生じる。また、式(6)の右辺の値の上限値を規定していないのは、レーザー出力は設備能力の最大値まで上げても一向に差し支えなく、また、溶接速度の下限値は式(5)で規定されているからである。
【0037】
このようにして、適切な溶接位置および溶接条件でレーザー溶接することにより、ブローホール等の溶接欠陥が抑止されて靭性が向上するのみならず、溶込み不足等も抑止される。その結果、溶接部溶接補修(TIG溶接等)の作業が削減でき、製品不適合品も低減することができる。
【0038】
さらに、上述した方法で製造されたマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管を、Ac1点以上830℃以下で熱処理した後、空冷以上の速さで150℃以下まで冷却し、再び550℃以上Ac1点以下に熱処理してもよい。これは、オンラインでの短時間熱処理で溶接部の靭性を向上させる高温焼戻し処理であり、1回目の熱処理でAc1点以上830℃以下に昇温後空冷以上の速さで150℃以下まで冷却するのは、部分的にオーステナイト化させてから完全なマルテンサイト組織を生成させるためである。
【0039】
その後550℃以上Ac1点以下に昇温させるのは、焼戻しによる靭性向上のためである。Ac1点を超えると部分的にオーステナイト化され、その後の冷却で焼戻し不十分のマルテンサイトが生成し、靭性が著しく劣化する。一方、550℃未満では十分な焼戻しが行われず靭性の向上が図れないため、550℃以上Ac1点以下とする。
【0040】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。表1に示す化学成分の熱延鋼板を用いて、外径273.0mm×管厚5.0 mm、外径323.8 mm×管厚6.0 mm、外径406.4 mm×管厚9.5mmの3種類の鋼管を製造した。
【0041】
【表1】
【0042】
表2にレーザー溶接の溶接条件を示す。この表で、No.1〜7は本発明の条件を満たす発明例であり、No.8〜14は比較例である。比較例No.8は、照射位置がスクイズロールに近すぎ、X/Xaが0.76で下限の0.8より小さくなっている。比較例No.9は溶接の入熱量が少なく前述の式(6)の右辺の値が下限0.5以下、比較例No. 10はアプセット量が上限1.0mm超となっている。比較例No.11は予熱電力が上限250kW超、比較例No.12は溶接の入熱量が少ない(式(6)の右辺の値<0.5)。比較例No.13は溶接速度が遅すぎ(式(5)v≧0.17Xを満たさず) 、比較例No.14はアプセット量が0で下限0.1mm未満となっている。
【0043】
【表2】
【0044】
これらの鋼管について、各溶接条件による溶接部20m分全長にわたり、JIS規格Z3104に従い放射線透過試験を、またJIS規格G0582に従い超音波探傷試験を実施した。
【0045】
表2では、試験結果の評価方法として、放射線透過試験については、φ0.4mm以下のブローホールが5個未満のものを◎、φ0.4mm以下のブローホールが5個以上10個未満またはφ0.8mm以下のブローホールが5個未満のものを○、φ0.4mm以下のブローホールが10個以上またはφ0.8mm以下のブローホールが5個以上10個未満のものを△で表し、φ0.8mm以下のブローホールが10個以上もしくはφ0.8mm越えのブローホールがあるもの、割れがあるもの、または溶け込み不足のいずれかがあるものを×で表す。
【0046】
また、超音波探傷試験に関しては、φ1.6ドリルホールの人工欠陥に対し、ピーク指示高さが、10%以下のものを◎、20%以下のものを○、40%以下のものを△、40%越えものを×で表す。試験結果は表2に併せて示す。表2から、本発明により製造された鋼管の溶接部品質は、非常に優れていることが明白である。
【0047】
また、この発明の製法で製造した鋼管を、種々条件で熱処理し、JIS規格Z2202に従い、5mmサブサイズ試験片に加工し、JIS規格Z2242に従い、衝撃試験を実施した。試験温度は-60℃とし、試験片の数は3本とした。熱処理条件およびその結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
ここで、No.21〜24は本発明の条件を満たす発明例であり、No.25〜28は比較例である。比較例No.25と26は1回目の熱処理温度がそれぞれ発明の下限Ac1 点未満と上限温度830℃超であり、比較例No.27と28は2回目の熱処理温度がそれぞれ下限温度550℃未満と上限Ac1 点超である。表3から、本発明により熱処理された鋼管の溶接部靭性は、非常に優れていることが明白である。
【0050】
【発明の効果】
この発明は、マルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造において、スクイズロールの近傍でレーザを照射する位置を、予熱の大きさ、アプセット量、および両エッジ部のなす角度により決定される最適位置とすることにより、ブローホール等の溶接欠陥の発生を大幅に抑制し、溶接部靭性を向上させることができる。その結果、品質向上とともに、溶接補修の低減、不合格材の低減による歩留・生産性向上が可能であり、産業の発展に寄与するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発明の実施の形態の1例を示す図。
【符号の説明】
1 オープンパイプ
2 予熱用高周波電源
3 レーザービーム
4 スクイズロール
5 突合わせエッジ部
6 V角
Claims (2)
- マルテンサイト系ステンレス鋼板を成形ロールで円筒状のオープンパイプに成形してスクイズロールでアプセット加圧しつつレーザー溶接を行うマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法において、オープンパイプの相対する両エッジ部を、高周波加熱法により予熱した後、スクイズロールの近傍の前記両エッジ部がV字型に突き合わされている部分で、予熱の大きさE・I、アプセット量U、および前記両エッジ部のなす角度αにより決定される位置Xが式(4)を、溶接速度v、板厚tおよびレーザー出力Pが式(5)、(6)を満足する条件でレーザー照射し、スクイズロールで加圧後、内外ビードを切削することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法。
90≦E・I≦250 (1)
0.1≦U≦1.0 (2)
Xa=(30+E・I/15+10U)/exp(0.2α) (3)
0.8Xa≦X≦1.2Xa (4)
v≧0.17X (5)
0.5≦P・exp{(250+E・I)/500}/(v・t) (6)
ここで、 E:高周波加熱電圧(kV) I:高周波加熱電流(A) U:スクイズロールでのアプセット量(mm) α:V角(°)(予熱前のスクイズ点より40mm以内での鋼板エッジ部開口部角度) X:レーザー照射位置適正範囲(mm)(スクイズ ロール中心点から上流側への距離) P:レーザー出力(kW) v:溶接速度(m/min) t:鋼板厚(mm) - 溶接後の鋼管の溶接部を Ac 1 点以上 830 ℃以下の温度に加熱した後、空冷又はそれ以上の冷却速度で 150 ℃以下の温度まで冷却し、再び 550 ℃以上 Ac 1 点以下の温度に加熱することを特徴とする請求項1記載のマルテンサイト系ステンレス溶接鋼管の製造方法。
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