JP3795994B2 - ケーブルの布設方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電力ケーブルの布設方法に関し、特に、長尺布設ルートに対して安定した状態でケーブルを布設することのできる布設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のケーブル布設方法として、たとえば、図4に示されるような方法が知られている。
【0003】
すなわち、ケーブル布設管路1の一方側のマンホール3の上にケーブルドラム2を設置し、他方側のマンホール8上には牽引装置9と巻取ドラム10を設置し、ドラム2から引き出されたケーブル4を管路1の中へ順次引き込むにことによって布設作業を進めるもので、ケーブル4の先端にはワイヤー6が接続されており、ワイヤー6を牽引装置9が引っ張ることによって、ケーブル4を管路1の中へ引き込んでゆく。
【0004】
14は一方側のマンホール3内に配列されてフリーに回転するコロ、7は他方側のマンホール8内に取り付けられた回転フリーの金車を示す。
【0005】
この作業において特に配慮しなければならないことは、布設されるケーブル4に対する保全であり、たとえばケーブル4に対して過大な張力を作用させるようなことは避けなければならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような従来の布設方法によると、ケーブル布設管路1の距離が長くなるにしたがって、ケーブル4と管路1間の摩擦力が増大してゆき、このため、管路1内に引き込まれるケーブル4が脈動するようになる。
【0007】
脈動はケーブル4を損傷する原因となり、また、長尺布設を難しくする現象でもあることから、この種布設作業においてはその発生を厳しく抑止する必要がある。
【0008】
この脈動のメカニズムを図5により説明すると、まず(a)のように、ワイヤー6に対する牽引張力Tが、ケーブル4と管路1間の静摩擦力F1 に達するまではケーブル4は動かず、この間、ワイヤー6は伸び続ける(l+Δl1 )。
【0009】
次に、(b)のように、ワイヤー6の牽引張力T1 が静摩擦力F1 を超えると、ケーブル4が滑り出し、摩擦力が静摩擦力F1 から動摩擦力F2 へと変わる。
【0010】
この結果、ワイヤー6の伸びが減少し(l+Δl2 )、さらにワイヤー6は(c)のように本来の長さlとなり、同時に張力T2 が動摩擦力F2 よりも小さくなることから、ケーブル4が停止し、摩擦力が動摩擦力から静摩擦力へと変わって、再び(a)の状態に戻る。
【0011】
脈動現象は以上の繰り返しによって発生し、これが激しくなるとケーブル布設作業は困難となり、ときにはケーブルを損傷することすらある。
【0012】
この脈動現象は、布設ルートが長くなるほど発生しやすいことから、長尺ルート布設時の大きな問題とされてきた。
【0013】
したがって、本発明の目的は、ケーブルの脈動発生を防止し、それによって長尺ルートへのケーブル布設を可能にした電力ケーブルの布設方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、先端にワイヤーが接続されたケーブルを送り込むための移送装置を管路、洞道等のケーブル布設ルートの一方側に設置し、ケーブル先端のワイヤーを牽引するための牽引装置をケーブル布設ルートの他方側に設置し、前記移送装置によりケーブル布設ルートの一方側から先端にワイヤーが接続されたケーブルを送り込むとともに前記牽引装置により他方側からケーブル先端のワイヤーを牽引するようにし、前記ケーブルと前記ケーブル布設ルートとの間の摩擦力の変動に伴い前記ワイヤーの伸びが増しても前記ケーブルの脈動を防止できるケーブルの布設方法であって、前記ケーブルの送り込みで生じた前記ケーブルの摩擦力と前記牽引装置の牽引力との差を前記移送装置の負荷トルク値として検出し、その検出した負荷トルク値を前記牽引装置に伝達し、前記移送装置の負荷状況に応じて前記牽引装置のトルク調整を行うことにより、前記ワイヤーの張力を常に設定値に保ちながらケーブルを布設ルートに布設するようにしたことを特徴とするケーブルの布設方法を提供するものである。
【0015】
本発明において、布設ルートの一方側に設置される移送装置としては、たとえば対向配置されたベルト状物によってケーブルを挟んで移送する挟持タイプのもの、あるいは電動ローラやモータローラのようなローラ移送タイプのものなど、色々な形式のものが使用される。
【0016】
この種移送装置は、その使用場所が工事現場であり、したがって、その設置スペースには制約があること、さらには、工事物件に応じてその都度狭い場所へ搬入、搬出する必要があり、しかも、これを頻繁に繰り返さなければならないことを考えると、大出力のもの一台によって移送装置を構成するのは、実際的ではない。
【0017】
小、中型のものを複数台組み合わせ、これらの総出力によってケーブルを移送するように構成することが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1により本発明におけるひとつの実施の形態を説明する。
【0019】
図1において、1はケーブル布設ルートを構成する管路、2はこの管路1の一方側のマンホール3上にセットされたケーブルドラム、4はこのドラム2から引き出されたケーブル、5はケーブル4を挟持して管路1内へ送り込むためのケーブル移送装置を示し、相互にトルク調整された3台の移送装置5a、5b、5cの組み合わせによって構成されている。
【0020】
6はケーブル4の先端に取り付けられたワイヤー、7は管路1の他方側のマンホール8内に設置されてワイヤー6を案内する金車、9は金車7を経たワイヤー6を牽引するための牽引装置(ウインチ)、10は巻取ドラムを示す。
【0021】
移送装置5a、5b、5cは、同じトルクに設定され同調運動するように制御されており、11はそのための負荷制御装置である。
【0022】
12は牽引装置9に接続された負荷制御装置を示し、負荷出力モニター13を介して移送装置側の負荷制御装置11に接続されている。
【0023】
負荷制御装置11は、移送装置5全体の負荷トルクを検出してこれを電気信号のかたちで負荷制御装置12へ伝達し、牽引装置9は、この信号に基づく装置12によってトルクを調整される。
【0024】
牽引装置9に対するトルク調整の結果、移送装置5と牽引装置9間は、常に調和のとれた関係に保持されることになり、これによってワイヤー6に加わる張力も安定化し、図5に示されるような脈動現象は、抑止されることになる。
【0025】
具体的な手段としては、駆動源としてトルクモータや油圧モータ等を使用したり、あるいは駆動源の負荷を感知して速度を変えるインバータ制御を駆動源に組み込むことなどが考えられる。
【0026】
図2は、移送装置5と牽引装置9間のトルク調整の方法をまとめたものである。
【0027】
仮にいま、移送装置5の負荷トルクが設定値よりも増加したとすると(イ)、ワイヤー6の牽引張力は減少することになるが(ロ)、移送装置5のトルクに基づいて牽引装置9は、そのトルクを上昇させることによって(ハ)、移送装置5のトルク値は元の設定値に戻され(ニ)、ワイヤー6の張力も所定のレベルに戻されることになる。
【0028】
一方、移送装置5の負荷トルクが逆に減少した場合には(ホ)、ワイヤー6の牽引張力は増大することになるが(ヘ)、牽引装置9のトルクを減少させることによって(ト)、移送装置5の負荷トルクは前述トルク増の場合と同様に元の設定値へと戻され(ニ)、この結果、ワイヤー6の張力も減少し、元の水準に戻される。
【0029】
この間のトルク調整は、連続してキメ細かく行われ、以上のようにして移送装置5と牽引装置9とが一定の相互バランスのもとに運転される結果、ケーブル4先端のワイヤー6に加わる張力は常に安定したものとなり、したがって、ワイヤー6の伸縮を原因として発生していた図5のようなケーブル4の脈動現象は、抑止され、長尺のケーブル布設が可能となる。
【0030】
ここにおいて、本発明にいうワイヤー張力の安定化とは、張力変動の全くない厳密な意味での安定化ではなく、ケーブルに脈動を生じさせない範囲内での安定化と理解すべきことは、以上の説明からも明らかである。
【0031】
したがって、移送装置5の負荷トルクに基づいて牽引装置9のトルクを調整するなかにおいて発生するワイヤー6の張力変動分は、ケーブル4に脈動が生じないかぎり、許されることである。
【0032】
図3は、導体寸法1×2,500mm2 、外径寸法φ168mm、重量42Kg/mから成る500KV用架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブルを、本実施形態におけるケーブル4として適用したときの布設作業の結果をまとめたものである。
【0033】
布設作業は、管路1の長さ612m、移送装置5a、5b、5cの出力を各750Kgf(装置5全体で2,250Kgf)、牽引装置9の出力13tの条件下で行われた。
【0034】
比較のために図3に示した従来の布設方法は、図4の形態により作業を実施した結果である。
【0035】
管路1、ケーブル4、牽引装置9のいずれも本実施形態におけるのと同じであり、ワイヤー6も本実施形態と同一のものを使用して作業を行った。
【0036】
従来の布設方法の場合、布設長が300mを超えた時点で脈動が激しく発生し、それ以降の布設作業が不可能であったのに対し、本実施形態の場合には、管路1の全長612mへの布設がすべて完了する間、脈動は発生せず、ケーブル布設作業を問題なく遂行することができた。
【0037】
たとえば、移送装置5の直後に、ケーブル4のたるみを検出するためのダンサーローラタイプの検出装置を設置し、この検出装置が検出するたるみの度合に応じて、牽引装置9の速度を調整することが考えられ、試みられたこともある。
【0038】
しかし、作業環境がマンホールや洞道などのように、狭く限られたスペースであり、しかも、布設物件に応じてその都度頻繁に設備を搬入搬出し、移動しなければならないこの種ケーブル布設作業の性格を考えると、大型の設備点数の増える上記の形式は、実際的ではなかった。
【0039】
これに対し、本実施形態の場合には、負荷トルクの変動に基づいて牽引力を調整するものであることから、この負荷制御のために必要とされる機器類は小型で済み、したがって、ダンサーローラ型のような欠点がなく、有利である。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるケーブル布設方法によれば、布設ルートの一方側と他方側とにケーブル移送装置と牽引装置とを設置し、移送装置によって布設ルート内へケーブルを送り込むとともに、ケーブル先端のワイヤーを牽引装置によって牽引するようにし、移送装置の負荷トルクを牽引装置側に伝達して、これにより牽引装置の牽引力をトルク調整するものであることから、ワイヤーに加わる張力は常に安定した状態となり、したがって、ワイヤーの伸縮を原因として発生していたケーブルの脈動現象は抑止されることになる。
【0041】
この結果、図3において実証されたような、長尺の布設ルートを対象としたケーブル布設作業が可能となる。
【0042】
また、この間の牽引装置に対するトルク調整は、連続的で速度変動の小さい、したがって、ワイヤー張力変動の少ないものとなり、このように安定した状態での長尺布設が可能となる結果、布設工事費は低減し、工事期間は短縮され、さらに、ケーブル接続個所も減少することから、経済性と信頼性の双方において利益をあげることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のケーブル布設方法におけるひとつの実施形態説明図。
【図2】移送装置と牽引装置間のトルク調整方法を示す。
【図3】図1の実施形態によるケーブル布設作業結果を示す説明図。
【図4】従来のケーブル布設方法説明図。
【図5】ケーブル脈動のメカニズム説明図。
【符号の説明】
1 管路
2 ケーブルドラム
3 マンホール
4 ケーブル
5 移送装置
5a 移送装置
5b 移送装置
5c 移送装置
6 ワイヤー
7 金車
8 マンホール
9 牽引装置
10 巻取ドラム
11 負荷制御装置
12 負荷制御装置
13 負荷出力モニター
Claims (4)
- 先端にワイヤーが接続されたケーブルを送り込むための移送装置を管路、洞道等のケーブル布設ルートの一方側に設置し、
ケーブル先端のワイヤーを牽引するための牽引装置をケーブル布設ルートの他方側に設置し、
前記移送装置によりケーブル布設ルートの一方側から先端にワイヤーが接続されたケーブルを送り込むとともに前記牽引装置により他方側からケーブル先端のワイヤーを牽引するようにし、
前記ケーブルと前記ケーブル布設ルートとの間の摩擦力の変動に伴い前記ワイヤーの伸びが増しても前記ケーブルの脈動を防止できるケーブルの布設方法であって、
前記ケーブルの送り込みで生じた前記ケーブルの摩擦力と前記牽引装置の牽引力との差を前記移送装置の負荷トルク値として検出し、
その検出した負荷トルク値を前記牽引装置に伝達し、
前記移送装置の負荷状況に応じて前記牽引装置のトルク調整を行うことにより、前記ワイヤーの張力を常に設定値に保ちながらケーブルを布設ルートに布設するようにしたことを特徴とするケーブルの布設方法。 - 前記移送装置が、複数の移送機器により構成され、前記複数の移送機器間のトルク調整が負荷状況によって行われるようにしたことを特徴とする請求項第1項記載のケーブルの布設方法。
- 前記トルク調整が、前記移送装置および前記牽引装置にそれぞれ接続された2つの負荷制御装置によって行われるようにしたことを特徴とする請求項第1項記載のケーブルの布設方法。
- 前記2つの負荷制御装置が、その間に位置する負荷出力モニタに接続されていることを特徴とする請求項第3項記載のケーブルの布設方法。
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