JP3787358B2 - 多穴薬物送出バルーン - Google Patents

Description

技術分野
本発明は、広くは冠状動脈を強制的に広げて薬物を分与するためのバルーン・カテーテルに関する。より詳しくは、本発明は、薬物を分与することができるバルーン・カテーテルおよびそのようなバルーン・カテーテルを製造するための方法に関する。
背景技術
心臓のアテローム性動脈硬化病変部または狭窄部を広げるためのバルーン・カテーテルは公知である。この種の装置は、多ルーメン・カテーテル・シャフトの端部に取り付けられた膨張自在のバルーンを含む。この膨張用ルーメンを通してバルーンの中に加圧用流体を強制的に送り込むと、バルーンが膨らんで動脈の表面に当接し、動脈の断面を拡大する。
ショッキー等のアメリカ合衆国特許状第４９９４０３３号は、血管の回復および開通性の長期的維持を容易にするために血管が拡張されている間に該血管の狭窄病変部へ液体薬物または多の物質を分与する構成のバルーン・カテーテルのバリエーションを開示している。ストレッカーのアメリカ合衆国特許状第５２０７６４４号は、移植可能な注入チャンバーの形をとる同様な装置を開示している。ウォーカー等のアメリカ合衆国特許状第５３２０６０４号は、カテーテルの遠端の薬物分与ルーメンと連通するパーフォレーションの付いた注入部を含むくびれた部分の対向する側に間隔をおいて配置された一対のエィスパンダー・バルーンを開示している。プラスのアメリカ合衆国特許状第４６９３２４３号は、直接局所麻酔を行なうための可撓性でつぶれない導管システムであって、喉頭部の組織に付加的物質を直接局部分与するためのカフスの付いた気管内チューブのまわりに別個に配置される導管システムを開示している。クロッカー等のアメリカ合衆国特許状第５２９５９６２号は、カテーテルのまわりに配置された膨張バルーンおよび該膨張バルーンのまわりに同心状に配置されてパーフォレーションの付いた薬物送出バルーンを含む薬物送出膨張カテーテルを開示している。シャッファー等のアメリカ合衆国特許うじょう第５０４９１３２号も、同心状のバルーンを備えたバルーン・カテーテルを開示している。この特許では、外側バルーンは、流体が該バルーンを通って外側へ流れることができるような開口またはスリットを有する。アビウソ等のアメリカ合衆国特許状第５２１３５７６号は、二つの同心状のバルーンであって、薬物は、中央のバルーン内へ送られ、開口を通って外側バルーンの開口からずれて配置された内側バルーン内へ逃げ込む構成のバルーンを開示している。各開口あるいは口は、ルーメンを通って送出される薬物が両バルーンのパーフォレーションを通って外側へ出ることができるが、開口がずれて配置されているために噴出することが防がれる。
レオンのアメリカ合衆国特許状第５３１８５３１号は、バルーンに複数の穴が配設され、ルーメンを通って送出される薬物は、該穴を通って外側へ出ることができる他の注入バルーン・カテーテルを開示している。バルーンには、また、外表面に、穴を覆って薬物の流れを分散させるほぼ親水性で、チューブ状で、微多孔質の膜が配設されている。
より最近では、疾病部位へ薬物を送出することを含む血管疾病の処置のためのチャンネル・バルーンと呼ばれる他のバルーン・カテーテルも開発されている。この種のバルーンの一つは、ワンのアメリカ合衆国特許状第５２５４０８９号に示されている。このチャンネル・バルーンは、カテーテルの遠端に、中空で膨張自在で、押し出された薬物を送出するバルーンを備えている。他のバルーンと同様、チャンネル・バルーンの内部は、バルーンを膨張させることができるようにいくつかのカテーテル・ルーメンの一つと流体連通関係にある。ただし、この特定の構造では、バルーンは、内壁および外壁、ならびにこれらのバルーンの壁の間で縦方向に伸びる導管の配列を画定する角度的に間隔を置いて配置されたウェブを有する。カテーテル・シャフト内の他のルーメンは、これらの導管へ薬物を送出し、バルーンの壁は、該薬物が各導管から放出されるようにする単一の開口を有する。
本発明の一側面にもとづけば、薬物の血管内送出のための医薬装置において、ほぼ全長にわたって外壁と内壁の間に伸びる少なくとも一本の導管を有する膨張自在のバルーンを有する医療装置が提供される。間隔を置いて密に配置された外壁を通る口の配列は、導管と同じ長さの外壁の面積より有意に少ない面積の中にまとめられ、それによって薬物が導管を出ることができる構成とされる。
第１図は、本発明にもとづく薬物バルーンの膨らまされた状態を示す側立面図で、内部を示すためにバルーンの一部分を切除してある。
第２図は、第１図の２−２線に添って切った断面図で、カテーテル・シャフトとバルーンを互いに取り付けた状態を示す。
第３図は、第１図のバルーンの一部分の拡大平面図で、一本の導管および隣接する導管の部分が示されている。
第４図は、第３図のバルーンの部分の斜視図である。
第５図は、本発明にもとづいて構成されるバルーンの製造に有用な装置の分解概要図である。
第６Ａ−６Ｄ図は、第５図に示す装置で製造するときのバルーンの外壁を通る一個の開口の形成方法を示す図である。
発明の最良に実施形態
本発明のバルーン式カテーテル１０は、冠状動脈の疾病の処置に用いられる他のカテーテルとほぼ同様である。公知のように、カテーテル１０は、通常は剛性の材料でつくられるハブ（図示せず）の配列に取り付けられる。これらのハブは、以下に説明するように膨張用流体、薬物、およびの導入を可能にするものである。ハブは、公知の多ルーメン・チューブまたはカテーテル・シャフト１２の近端に取り付けられる。
カテーテル・シャフト１２は、その遠端に医療バルーン１４を備えている。バルーン１４は、以下に説明する材料を含み、その遠端１６ｂおよび近端１８で熱密閉または接着剤によりカテーテル・シャフト１２に取り付けられる。カラー２０は、バルーン１４の近端１６のまわりに取り付けられる。遠端１８にはオプションのカラーが取り付けられる場合もある。公知のように、膨らまし口（図示せず）は、バルーン１４の内部と膨張ルーメン２４を連通させる。バルーン・カテーテルでは公知のように、ルーメン２４は、上に述べたハブにある任意ののぞましい膨張流体供給源と連通する。
薬物ルーメン２６は、カテーテル・シャフト１２の全長にわたって伸びており、バルーン１４の近端１６の薬物注入口２８と連通している。薬物注入口２８は、カラー２０とカテーテル・シャフト１２の間に形成されて薬物分与導管３２と流体連通するマニホルド３０と連通している。
第三のルーメン３４は、カテーテル・シャフト１２に全長にわたって伸びている。このルーメン３４では、バルーン１４を通して従来のガイドワイワ３６を挿入して、公知の方法でカテーテルの挿入に役立てることができる。
第３および４図は、一本の導管３２および隣接する導管３２Ａおよび３２Ｂの一部分を形成しまた第１、３、および４図に示すように薬物を分与するための開口あるいは口の配列４０を含むバルーン１４の部分を示す。さらに第３および４図を参照して、バルーン１４は、円筒状で膨張自在の内壁４２および径方向に伸びるウェブ４６によって該内壁４２から隔てられた膨張自在の外壁４４を含む。
開口の配列４０は、この特定の実施形態にあっては、ウェブ４６に平行で互いに平行な軸５０（１）、５０（２）、５０（３）に心合わせされた三つの列にまとめられた１８の口１８（１）ないし４８（１８）の配列を含む。開口４８は、さらに互いに行方向にずらされて配置されている。例えば、口４８（１）と４８（１３）は、中心線５０（１）および５０（３）と中心線５２（１）のそれぞれの交点に配置される。軸５０（２）に添った口、例えば口４８（７）は、ずらされて、中心線５２（１）および５２（３）に平行でその中間にある中心線（５０）上に配置される。ｄ1が軸５０の隣接するものの間の距離をあらわし、ｄ2が一本の軸に添った隣接する口の中心線の間の距離、例えば中心線５０（１）と５０（２）の間の距離をあらわし、ｄ3がｄ2の距離の半分をあらわすとすると、隣接する口の中間にある材料の一体性を維持するための間隔は、下記の条件が満たされるようにすれば得られる。
ｄ1≧２ｄ
ｄ2≧２ｄ
ｄ3≧ｄ
多だし、「ｄ」は、口４８の個々の一つの名目直径である。口４８の直径が３０μｍである場合、式（１）ないし（３）から、配列４０は、約１５０μｍ×３３０μｍの面積を占めることになる。特定の一実施形態にあっては、距離ｄ２は最小値より大きくされ、配列４０は１６０μｍ×４５０μｍの面積を占め、したがって隣接する口の間の最小の間隔は、いずれの方向においても口の直径ｄに等しいかそれより大きくされる。
第３および４図に示す配列４０を備えたバルーン１４の生産は、第３および４図に示す特定のパターンまたは他の構成で行なわれる。口４８の数は、変えることができる。ただし、本発明のいくつかの目的にもとづけば、どのような形状にせよ、この構造によって、薬物を導管３２にを介して伝送し、口４８全体から滲出させることができる。開口４８が互いに近接し、その寸法が小さいため、個々の口は、ノズルというより毛管として作用するため、従来技術では観察された薬物の流れあるいは噴流はあらわれない。噴射は、バルーンに材料を付加したりあるいは内側および外側の口を有するバルーンを形成したりすることなく克服することができる。このような従来技術では、膨張流体を使用し、該膨張流体を除去し、その後にバルーンを膨張させる目的で付加的流体を導入し、その後に始めて薬を投与するなど、複雑でその欠点は明かであった。
第５図は、配列４０を形成する場合に有用な製造装置６０の概要を示す。一実施形態にあっては、エクシマ・レーザー６２および公知のレーザー光学系６４によって破線６６で境界を示すように少なくとも形成される配列の面積に対応する面積を占めるレーザー光線が形成される。すでに述べたように、一つの配列は、通常、１ｍｍ²（すなわち一変が１０００μｍ）より小さい面積を占める。このような面積の小さい光学系６４では、配列の全区域にわたってほぼ等しいエネルギーの分布が得られる。これらの特性を有するレーザー・パルスを生成しまたそのようなパルスを連続して生成する方法は、当業者には公知である。
光学マスク６８は、配列４０に対応する開口７０（１）ないし７０（１８）のような複数の開口を含む。マスク６８がレーザー光学系と外壁４４の間に挿入された後、光学系６４からのレーザー・エネルギーがマスク６８に入射するが、該マスクのさまざまな開口にたい応する区域でのみマスク６８を通過する。その結果、レーザー光学系６４およびマスク６８は、のぞましいパターンのレーザー・エネルギーで外壁４４を照らすことになる。破線７２は、開口７０（１３）を通って外壁４４へ達するエネルギーの移転を示す。
装置６０は、さらに、パルスの振幅、幅、および周波数などのレーザー・パラメーターを設定して、レーザー６２が制御された一定のエネルギーの一連のパルスでマスク６８を照らすことができるようにするパルス制御回路７４を含む。より具体的には、各パルスが外壁４４の材料の小さな部分のみを除去するようにパルスの振幅および幅を制御することがのぞましい。バルーンがポリエチレンテレフタレートまたは類似の材料の押し出し成形によって形成される場合には、パルス制御回路７４は、各レーザー・パルスを１ミリジュールのエネルギーに制限して、外壁４４を貫通するのに２０ないし２５のパルスが必要となるようにすればよい。
第６Ａないし６Ｄ図は、一連のレーザー・パルスをあたえた場合に外壁４４を通る一つの開口が徐々に形成される状態を示す。第６Ａ図は、レーザー・ビームのパルスが１または２回あたえられた後のバルーン１４を示し、外壁４４の材料の最初の小さな部分が除去されてわずかな凹み７６Ａが形成された様子を描いている。第６Ｂ図に示されるように、連続するパルスによって外壁４４に凹み７６Ｂが生じ、穴が深くなっていく。一定数のパルスの後、第６Ｃ図に示すように外壁４４の材料が全部除去される。次のレーザー・パルスは、第６Ｄ図に示すように開口７６Ｃを通り過ぎて内壁４２へ入射する。基本的に、壁４２および４４の材料は通常不透明または半透明であり、したがって、オペレーターは、内壁４２の不規則な表面があらわれたときに開口７６などの開口が完全に形成されたことを視覚で確認することができる。この時点で、オペレーターは、一連のレーザー・パルスの照射を停止する。
通常、レーザー・パルス制御装置７４は、各パルスを個々に制御する手動式単一パルス回路のような単純なものとすることができる。あるいは、手段制御装置によって２以上のパルスの短いパルス列を一挙に生成する構成とすることもできる。通常、この制御装置は、穴７６Ｃが完全に形成された後、１または２のパルスのみが生成されるように構成される。これらのパルスは、内壁４２の表面に不規則性を生成するためのものである。ただし、実際に除去されたわずかな材料が、内壁全体の強度あるいは一体性を損なうことはない。
先端の尖ったものなどで刺すなどして第２図に示す開口４８を機械的に形成すると、穴のまわりにざらざらができる。しっかり集光されたレーザー・ビームで穴を開けても、穴の直径の両端ではエネルギーの分布に有意の相違があるために、周囲の縁部にざらざらが生成される。とくにチャンネル・バルーンの場合には、このようなざらざらを取り除くことは困難で、このざらざらが使用中に剥がれるおそれがある。第５図のレーザー光学系６４は、全配列にまたがるようにレーザー・ビームを広げ、光学マスク６８を通るビームすなわち破線７２で示す一つのレーザー・ビーム内の各部分での比較的一定なエネルギー分布を確保するものである。マスク６８からの各ビームのエネルギーがほぼ一定であるため、外壁４６を通る各穴４８は、等しい速度で形成され、したがって、１または２パルスですべての穴が同時に開けられる。これによって、レーザー・ビームによる内壁４２の損傷が最小限度に抑えられる。
さらに、先行技術と比較すると、単一の穴ではなく小さい穴の配列を形成するためのマスクを組み合わせて使用することによって、穴の形成後に残る耳状部すなわちざらざらの大きさを最小にすることができる。先行技術のこのような耳状部あるいはざらざらは、患者の中に入れられた場合に問題となる程度に大きいものであったが、本発明の方法では、この種のざらざらあるいは耳状部は、発生しても無視できる程度の大きさと量である。
従来のレーザーによる穴開けが、チャンネル・バルーン内に穴の配列を生成するのに適したものでなかったことは理解されよう。レーザー・パルス幅および振幅は、１つのパルスで口を形成するように設定される。口ごとにエネルギーに相違があると、開口が完全に形成される場合と部分的にしか形成されない場合が生じる。他の制御手段なしに連続してパルスをあたえると、完全に形成された穴を通って内壁に損傷をあたえることになる。本発明にもとづく微分式あるいは漸増式エネルギー・パルスを使用する構成では、各パルスで配列の一つの場所にあたえられるエネルギーがほぼ一定でありまたどの１パルスも外壁または内壁に完全に穴を開けるのには不十分であるため、先行技術の問題は生じない。
したがって、本発明にもとづいて構成されたバルーン・カテーテルは、本発明の目的を達成するものである。具体的には、第５図および第６Ａないし６Ｄ図を参照して説明した装置および使用方法は、チャンネル・バルーン内の各導管の外壁に制御された状態で開口の配列が形成された簡単で信頼性のあるバルーンの製造を可能にするものである。さらに、各配列の全面積は、あたえられた導管に対応する外壁部分の全面積に比してわずかなものである。最後に、わずかな間隔を置いて配置された配列によって、付加的な構造または特殊な材料を必要とせずに、先行技術の薬物送出バルーンで認められた噴出の問題を最小限度に抑えることができる。
以上、本発明をいくつかの実施形態によって説明した。本発明の範囲を逸脱することなく開示された装置に多くの変更を行なえることは明らかであろう。例えば、隣接する口の間の間隔がこれらの口の間で外壁の一体性を維持するのに十分であれば、配列は、任意の形状と間隔をとることができる。通常、間隔は、開口の直径以上であることが必要である。同様に、配列は、すべての導管の外壁に形成することもできるし、あるいは選ばれた導管の外壁に形成することもできる。本発明の方法は、また、従来の同心状のバルーンならびにチャンネル・バルーンに開口を形成するために使用することができる。

Claims (5)

1. 薬物を管を囲む組織へ送出する血管内送出用医療装置であって、
   （Ａ）軸線に沿って延びた内壁４２および外壁４４によって画定される膨張自在のバルーン１４、
   （Ｂ）前記内壁および外壁の間に配置されて、ぼぼ前記バルーンの全長にわたってかつ軸線に沿って延びる複数の前記導管３２であって、それによって前記外壁は前記組織を導くための前記各導管と同一の広がりを共有する前記導管３２、
   （Ｃ）前記バルーンを膨張させるための手段２４、
   （Ｄ）前記導管へ薬物を送出するための手段２６、および、
   （Ｅ）１００μｍ以下の直径を有し、前記外壁を貫通する複数の口４８
   を有し、
   前記複数の口４８は、前記導管３２から延び前記外壁を貫通する、二次元に広がった口の配列４０を有し、前記各配列４０の口４８は互いに軸線方向及び円周方向に関し接近して配置され、特定の導管３２と組み合う各配列４０の全領域は、前記特定の導管３２と同一の広がりを共有しかつ前記組織と接触可能な外壁４４の領域より有意に小さい
   ことを特徴とする薬物の血管内送出用医療装置。
2. 前記配列の口が、直径３０μｍであることを特徴とする請求項１に記載の薬物の血管内送出用医療装置。
3. 前記配列の各口が、該口の直径の少なくとも２倍に等しい間隔で隣接する口の中心から間隔をおいた中心を有することを特徴とする請求項１に記載の薬物の血管内送出用医療装置。
4. 前記配列が、互いに平行で、前記血管内送出用医療装置の長さ方向に沿って延びた複数の口の配列を有することを特徴とする請求項１または２に記載の薬物の血管内送出用医療装置。
5. 前記一配列が、前記血管内送出用医療装置の長さ方向に沿って延びた隣接する配列の口に対し偏っていることを特徴とする請求項４に記載の薬物の血管内送出用医療装置。

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