JP3785660B2 - 半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、II−VI族化合物半導体を用いた半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクや光磁気ディスクに対する記録/再生の高密度化または高解像度化などのために、青色ないし緑色で発光可能な半導体レーザーや発光ダイオードなどの半導体発光素子に対する要求が高まっており、その実現を目指して研究が活発に行われている。
【0003】
このような青色ないし緑色で発光可能な半導体発光素子の製造に用いる材料としては、Zn、Cd、Mg、Hg、BeなどのII族元素とS、Se、TeなどのVI族元素とからなるII−VI族化合物半導体が最も有望である。特に、四元混晶であるZnMgSSeは、結晶性に優れ、入手も容易なGaAs基板上への結晶成長が可能であり、例えば青色で発光可能な半導体レーザーをこのGaAs基板を用いて製造する際のクラッド層や光導波層などに適していることが知られている(例えば、Electronics Letters 28(1992)p.1798)。
【0004】
従来、このII−VI族化合物半導体を用いた半導体発光素子、特にクラッド層にZnMgSSe層を用いた半導体発光素子は、n型GaAs基板上にバッファ層を介してn型ZnMgSSeクラッド層、活性層、p型ZnMgSSeクラッド層、p型ZnSeコンタクト層などを分子線エピタキシー(MBE)法により順次成長させた後、このp型ZnSeコンタクト層上にp側電極を形成するとともに、n型GaAs基板の裏面にn側電極を形成することにより製造するのが一般的であった。しかしながら、このような半導体発光素子においては、p型ZnSeコンタクト層のキャリア濃度を高くすることが難しいことなどにより、このp型ZnSeコンタクト層にp側電極をオーミックコンタクトさせることは困難であった。
【0005】
そこで、この問題を解決するために、p型ZnSeコンタクト層上にp型ZnSe/ZnTe多重量子井戸(MQW)層を成長させ、さらにその上に高キャリア濃度のものが容易に得られるp型ZnTeコンタクト層を成長させ、その上にp側電極、特にPd/Pt/Au構造のp側電極を形成することによりオーミックコンタクト特性の向上を図る技術が提案された。そして、ZnCdSe層を活性層、ZnSSe層を光導波層、ZnMgSSe層をクラッド層とするZnCdSe/ZnSSe/ZnMgSSe SCH(Separate Confinement Heterostructure)構造の半導体レーザーにおいてこのp側電極コンタクト構造を採用したもので、すでに室温連続発振が達成されている(例えば、Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)p.L938)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者の知見によれば、上述のようなp側電極コンタクト構造を用いた従来の半導体発光素子においては、通電中にp側電極コンタクト構造の劣化が進行し、遂には破壊されてしまうという問題があった。このため、これまでは、特性や信頼性が悪く、寿命も短い半導体発光素子しか得られていなかった。
【0007】
一方、一般にサファイア基板を用いて製造されるGaN系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子においては、必ずしもp側電極コンタクト構造の破壊には至らないものの、やはり特性や信頼性が悪く、寿命も短いという問題があった。
【0008】
したがって、この発明の目的は、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命の半導体発光素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来技術が有する上述の課題を解決すべく、種々の検討および考察を行った。以下その概要について説明する。
【0010】
本発明者が半導体発光素子について行った断面透過型電子顕微鏡(TEM)観察などによる結晶構造解析によれば、p型ZnSeコンタクト層、p型ZnTeコンタクト層およびPd層の結晶構造の変化は起こっていないこと、および、p側電極が直接接しているp型ZnTeコンタクト層中には高密度の転位などの結晶欠陥が発生しているが、p型ZnSeコンタクト層中には結晶欠陥が発生していないことがわかった。また、次に説明するように、p側電極を構成する金属、特にPdがp型ZnTeコンタクト層中にかなり拡散していることもわかっている。
【0011】
図1は、p型ZnSeコンタクト層、p型ZnSe/ZnTeMQW層、p型ZnTeコンタクト層およびPd層(p側電極)を順次積層した積層構造の深さ方向におけるPdの分布を測定した結果を示す。このPd分布は、透過型電子顕微鏡に付属したエネルギー分散型X線分析(EDX)測定装置による測定により得られたものである。図1より、Pd層が直接接しているp型ZnTeコンタクト層中にはPdがかなり拡散しているが、結晶欠陥がなく、Pdの拡散長がp型ZnTeコンタクト層と異なるp型ZnSeコンタクト層中にはPdはほとんど拡散していないことがわかる。このことは、結晶欠陥がなく、金属の拡散定数などが異なる異種物質は、金属の拡散を防止する効果があることを示す。
【0012】
以上のことから、上述の従来のp側電極コンタクト構造を用いた半導体発光素子において通電中にp側電極コンタクト構造が破壊されてしまう問題は、次のような原因によるものであることが明らかになった。すなわち、上述の従来のp側電極コンタクト構造においては、ZnSeとZnTeとの間に約7%もの大きな格子不整があることによりp型ZnSe/ZnTeMQW層中に転位などの結晶欠陥が発生し、これがこのp型ZnSe/ZnTeMQW層上のp型ZnTeコンタクト層に伝播し、遂にはp側電極との界面付近にまで達する。このため、半導体発光素子への通電中に、p側電極を構成する金属、特にPdがこの結晶欠陥を通じて容易にp型ZnTeコンタクト層中に拡散し、さらにp型ZnSe/ZnTeMQW層中に拡散し、これが原因となってこのp型ZnSe/ZnTeMQW層が破壊される。このようにして、p側電極コンタクト構造が破壊される。また、p型ZnTeコンタクト層中に拡散した金属は、キャリア捕獲中心の増大をもたらし、半導体発光素子の特性の劣化などを引き起こす。
【0013】
一方、上述の従来のGaN系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子の特性や信頼性が悪く、寿命も短いのは、次のような原因によるものと考えられる。すなわち、この半導体発光素子においては、サファイア基板上にGaN層などが成長されるが、GaN結晶とサファイア基板との結晶構造および格子定数の相違によりGaN層における転位などの結晶欠陥の発生は避けられない。実際に、本発明者が行った透過型電子顕微鏡観察によれば、サファイア基板とGaN層との界面からこのGaN層中をサファイア基板のc軸方向に走る転位が観察されている。この転位は、p側電極とこれがコンタクトするp型GaNコンタクト層との界面まで延びており、この転位を通じてp側電極を構成する金属がp型GaNコンタクト層中に拡散する。このため、キャリア捕獲中心の増大、素子特性の劣化、短寿命化などが引き起こされるものと考えられる。
【0014】
以上のことから、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命の半導体発光素子を得るためには、p側電極を構成する金属が、このp側電極が接しているp型コンタクト層中に拡散するのを防止することが重要であることがわかる。そして、本発明者の検討によれば、このためには、p側電極が接しているp型コンタクト層中にこのp型コンタクト層と異種の半導体層を設けてヘテロ界面を形成することにより、転位などの結晶欠陥の伝播を防止してこの結晶欠陥を通じての金属の拡散を防止し、あるいは、金属の拡散を直接的に防止することが有効である。
【0015】
以上は半導体発光素子のp側電極コンタクト構造についてであるが、以上と同様なことは、金属電極を構成する金属の半導体層中への拡散に起因する特性や信頼性の劣化、短寿命化などの問題がある半導体装置全般に言えることである。
【0016】
この発明は、本発明者の以上の検討および考察に基づいて案出されたものである。
【0017】
すなわち、上記目的を達成するために、この発明は、
ZnSe/ZnTe多重量子井戸層と、
ZnSe/ZnTe多重量子井戸層上のZnTe層と、
ZnTe層上の金属電極とを有する半導体発光素子において、
ZnTe層中にZnTe層と異種の半導体であって、Znx Cd1-x Sey Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)、Znx Cd1-x Sy Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.58)またはZnx Cd1-x Sey Te1-y /ZnTe超格子(ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が少なくとも一層設けられている
ことを特徴とするものである。
【0021】
この発明はまた、
p型ZnSe/ZnTe多重量子井戸層と、
p型ZnSe/ZnTe多重量子井戸層上のp型ZnTeコンタクト層と、
p型ZnTeコンタクト層上の金属電極とを有する半導体発光素子において、
p型ZnTeコンタクト層中にp型ZnTeコンタクト層と異種の半導体であって、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が少なくとも一層設けられている
ことを特徴とするものである。
【0023】
この発明において、半導体装置には、半導体レーザーや発光ダイオードなどの半導体発光素子のほか、電界効果トランジスタなどのトランジスタその他の各種のものが含まれる。
【0024】
上述のように構成されたこの発明においては、ZnTe層中にこのZnTe層と異種の半導体であって、Znx Cd1-x Sey Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)、Znx Cd1-x Sy Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.58)またはZnx Cd1-x Sey Te1-y /ZnTe超格子(ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が設けられているので、この金属拡散および結晶欠陥伝播防止層の下層で発生した転位などの結晶欠陥がこの金属拡散および結晶欠陥伝播防止層の上層に伝播するのを防止することができ、これによって金属電極を構成する金属がこの結晶欠陥を通じてこの金属拡散および結晶欠陥伝播防止層の下層に拡散するのを防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
図2はこの発明の第1の実施形態による半導体発光素子を示し、特にそのp側電極コンタクト部の構造を示す。
【0027】
図2に示すように、この第1の実施形態による半導体発光素子においては、p型不純物として例えばNがドープされたp型ZnSeコンタクト層1、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnSe/ZnTeMQW層2、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnTeコンタクト層3、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層であるp型不純物として同様にNがドープされたp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4およびp型不純物として同様にNがドープされたp型ZnTeコンタクト層3が順次積層され、その上に例えばPd/Pt/Au構造のp側電極5が設けられている。ここで、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4の上下のp型ZnTeコンタクト層3は本来一体のものであり、したがってこのp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4はその上下のp型ZnTeコンタクト層3中に設けられていると言うことができる。
【0028】
この場合、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4のZn組成比xおよびSe組成比yは例えばそれぞれ0.5および0.435であり、このときこのp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4はp型Zn0.5 Cd0.5 Se0.435 Te0.565 層となり、これはp型ZnTeコンタクト層3に対してわずかに格子不整合状態にある。
【0029】
図2に示す構造を形成するには、例えば分子線エピタキシー(MBE)法により、p型ZnSeコンタクト層1、p型ZnSe/ZnTeMQW層2、p型ZnTeコンタクト層3、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4およびp型ZnTeコンタクト層3を順次成長させる。ここで、p型ZnTeコンタクト層3については、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4の上下のp型ZnTeコンタクト層3の合計の厚さが所要の厚さとなるようにする。この後、最上層のp型ZnTeコンタクト層3上にPd層、Pt層およびAu層を例えば電子線蒸着法により順次形成してPd/Pt/Au構造のp側電極5を形成する。
【0030】
以上のように、この第1の実施形態によれば、p側電極5が接するp型ZnTeコンタクト層3中に金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層としてp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4が設けられていることにより、次のような利点を得ることができる。すなわち、p型ZnSe/ZnTeMQW層2中で発生した転位などの結晶欠陥は、まずこのp型ZnSe/ZnTeMQW層2上のp型ZnTeコンタクト層3中に伝播するが、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4により、この結晶欠陥が走る方向はこのp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4に沿う方向に曲げられる。このため、p型ZnSe/ZnTeMQW層2中で発生した結晶欠陥がp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4上のp型ZnTeコンタクト層3中に伝播あるいは侵入するのを防止することができる。これによって、p側電極5を構成するPdなどの金属がこの結晶欠陥を通じてp型ZnTeコンタクト層3中に拡散するのを抑えることができ、このp型ZnTeコンタクト層3中への金属の拡散量を大幅に低減することができる。このため、この金属の拡散に起因するp型ZnSe/ZnTeMQW層2の破壊を防止することができ、したがってまたp側電極5のコンタクト部の破壊を防止することができる。また、金属の拡散量の大幅な低減により、p型ZnTeコンタクト層3などにおけるキャリア捕獲中心の低減を図ることもできる。
【0031】
以上により、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命の半導体発光素子を実現することができる。
【0032】
図3はこの発明の第2の実施形態による半導体レーザーを示す。この半導体レーザーはSCH構造を有するものである。
【0033】
図3に示すように、この第2の実施形態による半導体レーザーにおいては、n型不純物として例えばSiがドープされた例えば(001)面方位のn型GaAs基板11上に、n型不純物として例えばClがドープされたn型ZnSeバッファ層12、n型不純物として同様にClがドープされたn型ZnMgSSeクラッド層13、n型不純物として同様にClがドープされたn型ZnSSe光導波層14、例えばアンドープのZnCdSe層を量子井戸層とする単一量子井戸構造または多重量子井戸構造の活性層15、p型不純物として例えばNがドープされたp型ZnSSe光導波層16、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnMgSSeクラッド層17、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnSSe層18、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnSeコンタクト層19、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnSe/ZnTeMQW層20、p型不純物として同様にNがドープされたp型ZnTeコンタクト層21、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層としてのp型不純物として同様にNがドープされたp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22およびp型不純物として同様にNがドープされたp型ZnTeコンタクト層21が順次積層されている。ここで、第1の実施形態で述べたと同様に、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22は、本来は一体であるその上下のp型ZnTeコンタクト層3中に設けられていると言うことができる。
【0034】
この場合、第1の実施形態と同様に、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22のZn組成比xおよびSe組成比yは例えばそれぞれ0.5および0.435であり、このときこのp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22はp型Zn0.5 Cd0.5 Se0.435 Te0.565 層となり、これはすでに述べたようにp型ZnTeコンタクト層21に対してわずかに格子不整合状態にある。
【0035】
p型ZnSSe層18の上層部、p型ZnSeコンタクト層19、p型ZnSe/ZnTeMQW層20、p型ZnTeコンタクト層21、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22およびその上のp型ZnTeコンタクト層21は、例えば〈110〉方向に延在するストライプ形状にパターニングされている。
【0036】
このストライプ部以外の部分におけるp型ZnSSe層18上には、例えばAl2 O3 膜からなる絶縁層23が形成されている。なお、この絶縁層23としては例えばポリイミドを用いてもよい。
【0037】
この絶縁層23およびp型ZnTeコンタクト層21上には、例えばPd/Pt/Au構造のp側電極24が設けられている。一方、n型GaAs基板11の裏面には、例えばIn電極のようなn側電極25が設けられている。
【0038】
次に、上述のように構成されたこの第2の実施形態による半導体レーザーの製造方法について説明する。
【0039】
この半導体レーザーを製造するには、まず、図3に示すように、n型GaAs基板11上に、例えばMBE法により、n型ZnSeバッファ層12、n型ZnMgSSeクラッド層13、n型ZnSSe光導波層14、活性層15、p型ZnSSe光導波層16、p型ZnMgSSeクラッド層17、p型ZnSSe層18、p型ZnSeコンタクト層19、p型ZnSe/ZnTeMQW層20、p型ZnTeコンタクト層21、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22およびp型ZnTeコンタクト層21を順次成長させる。
【0040】
次に、最上層のp型ZnTeコンタクト層21上に例えば〈110〉方向に延在するストライプ形状のレジストパターン(図示せず)を形成した後、このレジストパターンをマスクとして例えばウエットエッチング法によりp型ZnSSe層18の厚さ方向の途中までエッチングする。これによって、p型ZnSSe層18の上層部、p型ZnSeコンタクト層19、p型ZnSe/ZnTeMQW層20、p型ZnTeコンタクト層21、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22およびその上のp型ZnTeコンタクト層21がストライプ形状にパターニングされる。
【0041】
次に、このエッチングに用いたレジストパターンをそのまま残した状態で、真空蒸着法などにより全面に例えばAl2 O3 膜を形成する。この後、このレジストパターンをその上のAl2 O3 膜とともに除去する(リフトオフ)。これによって、ストライプ形状にパターニングされたp型ZnSSe層18の上層部、p型ZnSeコンタクト層19、p型ZnSe/ZnTeMQW層20、p型ZnTeコンタクト層21、p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22およびその上のp型ZnTeコンタクト層21の両側の部分に絶縁層23が形成される。
【0042】
次に、ストライプ形状のp型ZnTeコンタクト層21およびその両側の部分の絶縁膜23の全面に例えば真空蒸着法によりPd層、Pt層およびAu層を順次形成してPd/Pt/Au構造のp側電極24を形成する。一方、n型GaAs基板11の裏面に例えばIn電極のようなn側電極25を形成する。
【0043】
次に、以上のようにしてレーザー構造が形成されたn型GaAs基板11をバー状に劈開して両共振器端面を形成し、さらに必要に応じて端面コーティングを施した後、このバーを劈開してチップ化する。そして、このようにして得られるレーザーチップをヒートシンク上にマウントし、パッケージングを行う。
【0044】
以上により、目的とする半導体レーザーが製造される。
【0045】
この第2の実施形態によれば、p型ZnTeコンタクト層21中に金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層としてp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22が設けられていることにより、第1の実施形態と同様に、p型ZnSe/ZnTeMQW層20中で発生した転位などの結晶欠陥がこのp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層22上のp型ZnTeコンタクト層21中に伝播あるいは侵入するのを防止することができる。これによって、p側電極24を構成するPdなどの金属がこの結晶欠陥を通じてp型ZnTeコンタクト層21中に拡散するのを抑えることができ、この金属の拡散に起因するp型ZnSe/ZnTeMQW層20の破壊やp型ZnTeコンタクト層3などにおけるキャリア捕獲中心の増大を防止することができる。このため、p側電極25のコンタクト部の破壊や半導体レーザーの特性や信頼性の低下を防止することができる。
【0046】
以上により、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命の青色ないし緑色で発光可能な半導体レーザーを実現することができる。
【0047】
図4はこの発明の第3の実施形態による半導体発光素子を示し、特にそのp側電極コンタクト部を示す。
【0048】
図4に示すように、この第3の実施形態による半導体発光素子においては、p型ZnSe/ZnTeMQW層2とp側電極5との間にあるp型ZnTeコンタクト層3中に、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層であるp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4が三層、互いに離れて設けられている。その他のことは第1の実施形態による半導体発光素子と同様である。
【0049】
この第3の実施形態によれば、p型ZnTeコンタクト層3中に金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層であるp型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層4が三層設けられていることにより、p型ZnSe/ZnTeMQW層2中で発生した結晶欠陥が、p側電極5が接している最上層のp型ZnTeコンタクト層3中に伝播あるいは侵入するのをほぼ完全に防止することができる。これによって、p側電極5を構成するPdなどの金属がこの結晶欠陥を通じてp型ZnTeコンタクト層3中に拡散するのをほぼ完全に抑えることができ、この金属の拡散に起因するp型ZnSe/ZnTeMQW層2の破壊をほぼ完全に防止することができるとともに、p型ZnTeコンタクト層3などにおけるキャリア捕獲中心の大幅な低減を図ることができる。
【0050】
以上により、第1の実施形態による半導体発光素子に比べて、特性がより良好で、信頼性がより高く、かつより長寿命の半導体発光素子を実現することができる。
【0051】
図5はこの発明の第4の実施形態による半導体発光素子を示し、特にそのp側電極コンタクト部を示す。
【0052】
図5に示すように、この第4の実施形態による半導体発光素子においては、p型ZnSe/ZnTeMQW層2とp側電極5との間にあるp型ZnTeコンタクト層3中に、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層であるp型不純物として例えばNがドープされたp型ZnSe層6が設けられている。ここで、このp型ZnSe層6の厚さは必要に応じて選ばれるが、通常は例えば1〜2原子層の厚さで足り、その厚さの一例を挙げると0.56nmである。その他のことは第1の実施形態による半導体発光素子と同様である。
【0053】
この第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0054】
図6はこの発明の第5の実施形態による半導体発光素子を示し、特にそのp側電極コンタクト部を示す。
【0055】
図6に示すように、この第5の実施形態による半導体発光素子においては、p型ZnSe/ZnTeMQW層2とp側電極5との間にあるp型ZnTeコンタクト層3中に、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層であるp型ZnSe層6が三層互いに離れて設けられている。その他のことは第4の実施形態による半導体発光素子と同様である。
【0056】
この第5の実施形態によれば、第3の実施形態と同様な利点を得ることができる。
【0057】
図7はこの発明の第6の実施形態による半導体発光素子を示す。この第6の実施形態による半導体発光素子は、GaN系III−V族化合物半導体を用い、かつSCH構造を有するものである。
【0058】
図7に示すように、この第6の実施形態による半導体発光素子においては、例えば(0001)面方位の単結晶のサファイア基板31上に、GaNバッファ層32、n型不純物として例えばSiがドープされたn型GaNクラッド層33、n型不純物として同様にSiがドープされたn型AlGaN光導波層34、例えばn型不純物として同様にSiがドープされたn型InGaNからなる活性層35、p型不純物として例えばMgがドープされたp型AlGaN光導波層36、p型不純物として同様にMgがドープされたp型GaNクラッド層37、金属拡散および結晶欠陥伝播防止層であるp型不純物として同様にMgがドープされたp型GaN/AlGaN超格子層38およびp型不純物として同様にMgがドープされたp型GaNコンタクト層39が順次積層されている。
【0059】
n型GaNクラッド層33の上層部、n型AlGaN光導波層34、活性層35、p型AlGaN光導波層36、p型GaNクラッド層37、p型GaN/AlGaN超格子層38およびp型GaNコンタクト層39は所定形状にパターニングされている。
【0060】
そして、p型GaNコンタクト層39上にp側電極40が設けられているとともに、n型GaNクラッド層33上にn側電極41が設けられている。
【0061】
次に、上述のように構成されたこの第6の実施形態による半導体発光素子の製造方法について説明する。
【0062】
すなわち、図5に示すように、まず、サファイア基板31上に、MOCVD法により、低温、例えば500〜600℃でGaNバッファ層32を成長させる。次に、このGaNバッファ層32上に、MOCVD法により、通常の成長温度、例えば1000℃でn型GaNクラッド層33、n型AlGaN光導波層34、n型InGaNからなる活性層35、p型AlGaN光導波層36、p型GaNクラッド層37、p型GaN/AlGaN超格子層38およびp型GaNコンタクト層39を順次成長させる。
【0063】
次に、例えば電子線照射による熱処理または通常の熱処理炉による熱処理を行い、上述のようにして成長された各GaN系III−V族化合物半導体層を安定化させる。
【0064】
次に、p型GaNコンタクト層39上に所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成した後、このレジストパターンをマスクとして例えば反応性イオンエッチング(RIE)法によりn型GaNクラッド層33の厚さ方向の途中までエッチングする。これによって、n型GaNクラッド層33の上層部、n型AlGaN光導波層34、活性層35、p型AlGaN光導波層36、p型GaNクラッド層37、p型GaN/AlGaN超格子層38およびp型GaNコンタクト層39が所定形状にパターニングされる。
【0065】
次に、p型GaNコンタクト層39上にp側電極40を形成するとともに、上述のエッチングにより露出したn型GaNクラッド層33上にn側電極41を形成する。
【0066】
この後、第2の実施形態と同様に工程を進めて、目的とする半導体発光素子を製造する。
【0067】
以上のように、この第6の実施形態によれば、n型GaNクラッド層37とp型GaNコンタクト層39との間に金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層としてn型GaN/AlGaN超格子層38が設けられていることにより、サファイア基板31とGaNバッファ層32との界面より成長方向(c軸方向)に走る転位などの結晶欠陥が、n型GaNクラッド層33、n型AlGaN光導波層34、活性層35、p型AlGaN光導波層36、p型GaNクラッド層37などを通ってp型GaNコンタクト層39に伝播あるいは侵入するのを防止することができる。これによって、p側電極40を構成する金属がこの結晶欠陥を通じてp型GaNコンタクト層39中に拡散するのを抑えることができ、この金属の拡散に起因するp側電極40のコンタクト部の劣化やp型GaNコンタクト層39などにおけるキャリア捕獲中心の増大を防止することができる。
【0068】
以上により、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命のGaN系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子を実現することができる。
【0069】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものでなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0070】
例えば、上述の第6の実施形態においては、金属拡散および/または結晶欠陥伝播防止層としてのn型GaN/AlGaN超格子層38をn型GaNクラッド層37とp型GaNコンタクト層39との間に設けているが、このn型GaN/AlGaN超格子層38はn側電極41の下のn型GaNクラッド層33中に設けてもよく、さらには両部分に設けてもよい。
【0071】
また、上述の第1〜第5の実施形態においては、各II−VI族化合物半導体層の成長にMBE法を用いているが、これらのII−VI族化合物半導体層の成長には例えばMOCVD法を用いてもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、その上に金属電極が設けられるZnTe層にこのZnTe層と異種の半導体であって、Znx Cd1-x Sey Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)、Znx Cd1-x Sy Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.58)またはZnx Cd1-x Sey Te1-y /ZnTe超格子(ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が設けられていることにより、この金属拡散および結晶欠陥伝播防止層の下層で発生した転位などの結晶欠陥がこの金属拡散および結晶欠陥伝播防止層の上層に伝播するのを防止することができ、このため金属電極を構成する金属が結晶欠陥を通じて下層に拡散するのを間接的に防止することができる。これによって、特性が良好で、信頼性が高く、かつ長寿命の半導体発光素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】p型ZnSeコンタクト層、p型ZnSe/ZnTeMQW層、p型ZnTeコンタクト層およびPd層を順次積層した積層構造の深さ方向におけるPdの分布を測定した結果を示す略線図である。
【図2】この発明の第1の実施形態による半導体発光素子を示す断面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態による半導体レーザーを示す断面図である。
【図4】この発明の第3の実施形態による半導体発光素子を示す断面図である。
【図5】この発明の第4の実施形態による半導体発光素子を示す断面図である。
【図6】この発明の第5の実施形態による半導体発光素子を示す断面図である。
【図7】この発明の第6の実施形態による半導体発光素子を示す断面図である。
【符号の説明】
1、19 p型ZnSeコンタクト層
2、20 p型ZnSe/ZnTeMQW層
3、21 p型ZnTeコンタクト層
4 p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層
5、24、40 p側電極
6 p型ZnSe層
11 n型GaAs基板
12 n型ZnSeバッファ層
13 n型ZnMgSSeクラッド層
14 n型ZnSSe光導波層
15、35 活性層
16 p型ZnSSe光導波層
17 p型ZnMgSSeクラッド層
18 p型ZnSSe層
22 p型Znx Cd1-x Sey Te1-y 層
23 絶縁層
25、41 n側電極
31 サファイア基板
32 GaNバッファ層
33 n型GaNクラッド層
34 n型AlGaN光導波層
36 p型AlGaN光導波層
37 p型GaNクラッド層
38 p型GaN/AlGaN超格子層
39 p型GaNコンタクト層
Claims (4)
- ZnSe/ZnTe多重量子井戸層と、
上記ZnSe/ZnTe多重量子井戸層上のZnTe層と、
上記ZnTe層上の金属電極とを有する半導体発光素子において、
上記ZnTe層中に上記ZnTe層と異種の半導体であって、Znx Cd1-x Sey Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)、Znx Cd1-x Sy Te1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.58)またはZnx Cd1-x Sey Te1-y /ZnTe超格子(ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が少なくとも一層設けられている
ことを特徴とする半導体発光素子。 - 上記金属電極はPdを含むことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
- p型ZnSe/ZnTe多重量子井戸層と、
上記p型ZnSe/ZnTe多重量子井戸層上のp型ZnTeコンタクト層と、
上記p型ZnTeコンタクト層上の金属電極とを有する半導体発光素子において、
上記p型ZnTeコンタクト層中に上記p型ZnTeコンタクト層と異種の半導体であって、p型Zn x Cd 1-x Se y Te 1-y (ただし、0≦x≦1.0、0≦y≦0.875)からなる金属拡散および結晶欠陥伝播防止層が少なくとも一層設けられている
ことを特徴とする半導体発光素子。 - 上記金属電極はPdを含むことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
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