JP3784658B2 - 熱防護材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、宇宙輸送機などのアブレータとして好適に用いることができる熱防護材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
宇宙実験ミッションおよび惑星探査ミッションなどで、実験装置およびサンプルなどを回収するため、帰還時に大気圏に再突入するカプセル、ならびに宇宙往還機などの宇宙輸送機には、アブレータ、すなわち各種の繊維を織製した強化材に合成樹脂から成るマトリクスを含浸した複合材料によって形成され、自己が熱分解することによって内部への熱を遮断する熱防護材が用いられている。
【0003】
アブレータは、炭素繊維またはシリカ繊維などから成るクロス織物から成る強化材に、フェノール樹脂などのマトリクスを含浸したプレプリグを積層して成形することによって製造される。しかし、前記プリプレグを平行に積層して成形した場合、加熱時にマトリクスが熱分解して発生するガスが、強化材の通気率が低いために内部に蓄積し、層間剥離を起こし、大気圏への再突入時の加熱途中にアブレータが広い領域にわたって外れてしまう可能性があり、信頼性が低いという問題がある。
【0004】
図9は、典型的な従来の技術のアブレータ1を模式化して示す一部の断面図である。上記の問題を解決するために、この従来の技術では、加熱面2に対して角度θをつけてプリプレグを積層し、熱分解層5で発生した熱分解ガスが、強化繊維3間の樹脂炭化部分6を通って加熱面3に噴出することによって層間剥離を防ぐが、加熱面3に垂直な方向への熱伝導率が大きくなってしまうという問題が生じる。
【0005】
図10は、他の従来の技術のアブレータ1aを模式化して示す一部の断面図である。この従来の技術では、プレプリグを短冊状に積層して加熱成形したアブレータであるが、炭化層6、熱分解層5および未反応層4の3層間にわたって繊維3aがつながっていないため、面内強度が低いという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、加熱面に垂直な方向の熱伝導率の増加を抑制し、高い面内強度を維持しながら、層間剥離を防止することができる熱防護材の製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、繊維強化材にマトリクス樹脂を含浸させた複合材シ−トを、複数、積層して加熱成形される熱防護材の製造方法において、
耐熱性を有する第1繊維に、加熱によって前記マトリクス樹脂とともに熱分解する第2繊維が織り込まれたクロスを、加熱面に平行に積層し、この積層されたクロスに前記マトリクス樹脂を含浸させて複数の複合材シ−トを形成し、
前記複数の複合材シ−トに、相互に間隔をあけて前記マトリクス樹脂を充填する部分を形成し、各複合材シ−トを積層した状態で前記マトリクス樹脂を充填し、加熱成形することを特徴とする熱防護材の製造方法である。
【0008】
本発明に従えば、繊維強化材の一部をマトリクス樹脂とほぼ等しい熱分解特性を有する材料を用いることによって、加熱によって前記繊維強化材の一部はマトリクス樹脂とともに熱分解し、熱反応層で発生した熱分解ガスが通過することができる通気孔を生成する。このように熱分解ガスが放出されることによって、加熱面に垂直な方向の熱伝導率の増加を抑制し、高い面内強度を維持しながら、層間剥離を防止することが可能となる。
【0010】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記複合材シートには、前記マトリクス樹脂を充填する部分に、相互に間隔をあけて複数の透孔を形成し、前記複数の透孔が形成された各複合材シートを積層して前記マトリクス樹脂を充填し、加熱成形することを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の本発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記繊維強化材にマトリクス樹脂を含浸させた複合材シートを複数積層して熱防護材前駆体を成形し、この熱防護材前駆体の前記マトリクス樹脂を充填する部分に、相互に間隔をあけて複数の貫通孔を形成し、これらの貫通孔にマトリクス樹脂を充填して硬化させることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の本発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記複合材シートは、前記高温加熱時に発生する熱分解ガスのガス圧によって通気孔を形成することができる所定の間隔をあけてメッシュ状に配置することによって前記マトリクス樹脂を充填する部分を形成し、このメッシュ状に配置された繊維強化材に、マトリクス樹脂を含浸させて、メッシュ状に形成されることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の本発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記積層された複数の複合材シートに、相互に所定の間隔をあけて針状治具を厚み方向に挿通して、前記マトリクス樹脂を充填する部分を有する熱防護材前駆体を形成し、この熱防護材前駆体を、加熱成形することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の本発明は、請求項5記載の発明の構成において、前記熱防護材前駆体には、挿通された針状治具を抜き取って複数の孔が形成され、この複数の孔が形成された熱防護材前駆体を、加熱成形することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の本発明は、請求項5記載の発明の構成において、前記針状治具は、マトリクス樹脂と同程度または低い温度で熱分解する硬化した樹脂から成り、熱防護材前駆体は、複数の前記針状治具が挿通された状態で、加熱成形されることを特徴とする。
【0016】
請求項2〜7記載の各発明に従えば、熱防護材に通気孔が形成されるので、加熱によって熱反応層内で発生した熱分解ガスを放出することができ、これによって加熱面に垂直な方向の熱伝導率を増加させずに、高い面内強度を維持しながら、層間剥離を防止することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態の製造方法によって得られたアブレータ30の一部を簡略化して示す斜視図であり、図1(1)は加熱前の状態を示し、図1(2)は加熱後の状態を示す。本実施の形態は、交織繊維プリプレグ(Prepreg)を使用した一例であって、耐熱性のある第1繊維31、およびマトリクス樹脂32(図5を参照)にほぼ等しい熱分解特性、すなわちマトリクス樹脂32とともに熱分解する第2繊維33の2種類の繊維から成るクロス34を用いて複合材シートであるプリプレグ35を製作する。
【0018】
このプリプレグ35は、前記クロス34をマトリクス樹脂32に浸漬して、クロス34にマトリクス樹脂32を含浸させて硬化させて製造する。こうして製造されたプリプレグ35を複数、積層して、所定の平面、2次曲面または3次曲面などの型形状を有する成形型に上載し、オートクレーブなどの加熱炉内へ搬入した後、炉内を窒素ガスなど不活性ガス雰囲気として加熱成形することによって、アブレータ30が製造される。
【0019】
第1繊維31は、炭素繊維またはシリカ繊維などの強化繊維が用いられる。また第2繊維33は、ナイロンまたはポリエステルなどの合成樹脂が用いられ、前記マトリクス樹脂32は、後述するように第2繊維33とほぼ同様な温度で熱分解するたとえばフェノール樹脂から成る。
【0020】
第1繊維31と第2繊維33との配合比率は、9:1程度に選ばれる。具体的には、前記クロス34は、仮想一平面上で直交するX方向およびY方向に、所定の間隔ΔL1,ΔL2をあけて相互に平行に整列して張架された第1繊維32中に、第2繊維33を、第1繊維31に対して前記9:1となる第2間隔ΔL2で、X方向およびY方向にそれぞれ平行に織り込む交織によって製造されてもよい。
【0021】
また本発明の実施の他の形態では、第1繊維31中の第2繊維33を、前記配合比率9:1程度でランダムに織り込む混識によって製造されてもよい。
【0022】
図2は、アブレータ30の一部を模式的に示す斜視図であり、図2(1)は加熱による炭化前のアブレータ30の一部を示し、図2(2)は加熱による炭化後のアブレータ30の一部を示す。第2繊維33は、図2(1)に示されるように、炭化前の状態においては、熱によってマトリクス樹脂32とともに熱分解を起こし、炭化後は、図2(2)に示されるように、クロス34に通気孔36を形成する。これによってクロス34の面外方向の通気性が増し、前記加熱成形時に比べて高い温度の加熱によって、アブレータ30の内部(後述の熱分解層Qに相当)で発生した熱分解ガスが、そのアブレータ30の加熱表面に前記通気孔36を介して放出され、熱分解ガスが内部に蓄積されることが防がれ、アブレータ30の層間剥離を防ぐことができる。
【0023】
図3は、フェノール樹脂およびナイロンの低昇温速度で加熱したときの重量変化を示すグラフである。同図において、ラインL1はフェノール樹脂の密度変化速度を示し、ラインL2はナイロンの密度変化速度を示し、ラインL3はフェノール樹脂の密度を示し、ラインL4はナイロンの密度を示す。ナイロンの密度変化速度は、ラインL2で示されるように、約380℃から急激に密度の減少方向に上昇し、またその密度は、ラインL4で示されるように、約400℃から急激に低下している。一方、フェノール樹脂は、約410℃から密度変化速度が、ラインL1で示されるように、密度の減少方向に上昇を開始し、密度はラインL3で示されるように約420℃から低下を開始している。
【0024】
このような結果から、低昇温速度で加熱された場合において、ナイロンがフェノール樹脂よりも先に熱分解し、第2繊維33として用いたときに、第1繊維31およびマトリクス樹脂32よりも先に熱分解して、前記通気孔36を形成し得ることが確認された。
【0025】
図4は、フェノール樹脂およびナイロンの高昇温速度で加熱したときの重量変化を示すグラフである。同図において、ラインL5はフェノール樹脂の密度変化速度を示し、ラインL6はナイロンの密度変化速度を示し、ラインL7はフェノール樹脂の密度を示し、ラインL8はナイロンの密度を示す。ナイロンの密度変化速度は、ラインL6で示されるように、約450℃から急激に密度の減少方向に上昇し、またその密度は、ラインL8で示されるように、約480℃から急激に低下している。一方、フェノール樹脂は、約590℃から密度変化速度がラインL5で示されるように密度の減少方向に上昇を開始し、密度はラインL7で示されるように約500℃から低下を開始している。
【0026】
このような結果から、高昇温速度で加熱された場合において、ナイロンがフェノール樹脂よりも先に熱分解し、第2繊維33として用いたときに、第1繊維31およびマトリクス樹脂32よりも先に熱分解して、前記通気孔36を形成し得ることが確認された。
【0027】
本実施の形態によれば、加熱中を含むアブレータ30の面内強度は、第1繊維31によって保持され、面内強度の低下は生じない。
【0028】
さらに、図10に示される前記従来の技術のように、繊維が短冊状に裁断されないので、単純に第1繊維31だけを用いたクロスを積層して形成したアブレータの約9割の面外強度を得ることができる。ここに、約9割とは、第1繊維31と第2繊維33との配合比率による。
【0029】
さらに、クロスは、面外方向に比べて面内方向の熱伝導率が5倍以上も高く、図9に示される前記従来の技術は、加熱面に対してクロスが斜めに積層されるため、加熱面に対して垂直方向の熱伝導率が高くなり、これによってアブレータの必要厚さが増加する。これに対して本実施の形態では、加熱面に対して平行にクロスを積層されているため、加熱面に垂直方向の熱伝導率が低く、アブレータの必要厚さを小さくすることが可能となり、軽量化を図ることができる。
【0030】
さらに、第1繊維31は第2繊維33に比べて密度が小さいもの、たとえば1.1g/cm3程度のものが用いられる場合が多く、このようにした場合、第1繊維31を第2繊維33と同様な密度、たとえば1.7〜2.0g/cm3のものを用いた場合に比べて、軽量化を図ることができる。しかも、第1繊維31の第2繊維33に対する割合が多いほど、アブレータ30の表面損耗が小さく、アブレータとしては高性能となるが、内部側は前記表面損耗に関与しないため、内部側に使用するプリプレグについては、第2繊維33の使用量の割合を多くすることによって、より軽量化を図ることができる。
【0031】
具体的には、加熱面側から内部側の裏面に向かって、プリプレグにおける第2繊維33の第1繊維31に対する使用比率を5%から95%まで変化させた場合、アブレータ全体として約10%の重量削減が可能であることが、本件発明者によって確認されている。
【0032】
さらに、第2繊維33が加熱によって熱分解するため、発生する熱分解ガスの量が図9および図10の各従来の技術よりも多くなるため、加熱面におけるブロッキング効果を向上することができる。
【0033】
図5は、本発明の実施の他の形態のアブレータ30aの一部を模式化して示す図であり、図5(1)はアブレータ30aに用いられる複数の透孔41が形成されたクロス42を模式化して示す一部の斜視図であり、図5(2)は通気孔43を通って熱分解ガスが放出される状態を模式化して示す一部の断面図である。なお、前述の実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施の形態のアブレータ30aでは、図5(1)に示されるように、上記の実施の形態でいう第1繊維31によって第2繊維33が配置される部分も占められた、第1繊維31だけによって構成されたプリプレグに、マトリクス樹脂が充填される部分として、1〜5cm程度の一定の間隔ΔL3,ΔL4で、内径が1〜5mm程度の透孔41がX方向およびY方向にそれぞれ形成されたクロス42が用いられる。
【0034】
アブレータ30aを製造するにあたっては、前記クロス42を複数、積層して、前記マトリクス樹脂32を含浸させ、加熱成形する。各クロス42の積層は、透孔41の位置が厚み方向に重ならないようにする。
【0035】
このようなアブレータ30aは、矢符45で示す一方側から加熱されると、図5(2)に示されるように、マトリクス樹脂32が熱分解して、加熱面から順に、炭化層P、熱分解層Q、未反応層Rが生成され、熱分解層Qで発生した熱分解ガスが各クロス42の透孔41を厚み方向に連ねて通気孔36を形成し、加熱表面から放出される。こうして熱分解ガスがアブレータ30aの内部に蓄積することが防がれ、層間剥離を防ぐことが可能となる。
【0036】
また本実施の形態によれば、各クロス42が平行に積層されるため、図9に示される前記従来の技術に比べて、加熱表面に垂直方向の熱伝導率が小さく、断熱性が高いという利点がある。
【0037】
なお、積層したクロス42の成形時には、各クロス42の透孔41が軟化したマトリクス樹脂32によって塞がれてしまうことが予想されるが、加熱時に各クロス42間のマトリクス樹脂32とともに前記透孔41内の樹脂32′も熱分解するため、透孔41が塞がれたままになって、ガス放出の流路が確保できず、内部にガスが蓄積されるという問題は生じない。
【0038】
図6は、本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30bの一部を模式化して示す図であり、図6(1)は穴あけ加工したアブレータ前駆体30b1の一部を示し、図6(2)は図6(1)に示されるアブレータ30b1の孔50にマトリクス樹脂32を再含浸させた状態を示し、図6(3)はアブレータ30bの一部の断面を示す。なお、前述の各実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施の形態では、図6(1)に示されるように、前記第1繊維31を交織したクロス42にマトリクス樹脂32を含浸させたアブレータ前駆体30b1に、X方向およびY方向にそれぞれ間隔ΔL3、ΔL4をあけて、厚み方向に貫通する複数の貫通孔50をマトリクス樹脂を充填する部分として形成する。
【0039】
次に、図6(2)に示されるように、各貫通孔50にマトリクス樹脂51を再含浸し、または注入して、加熱して硬化させる。これによって、図5に示される上記の実施の形態のように、透孔41を形成したクロス42を用いたアブレータ30aに比べて、図6(3)に示されるように、熱分解ガスを放出するための通気孔36を確実に形成し、内部の熱分解ガスを出やすくすることができる。
【0040】
図7は、本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30cの一部を示す図であり、図7(1)はメッシュ状プリプレグ53の一部を示す斜視図であり、図7(2)はアブレータ30cの一部を模式化して示す断面図である。なお、前述の各実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施の形態のアブレータ30cは、加熱時に発生する熱分解ガスのガス圧によって通気孔を形成することができる所定の間隔をあけてメッシュ状に配置された繊維強化材を実現するために、マトリクス樹脂を充填する部分として、上記の各実施の形態に比べて繊維31の数が少ない、たとえば50〜90%程度、すなわちX方向およびY方向に間隔ΔL5,ΔL6をあけてメッシュ状のクロスを製作し、このクロスにマトリクス樹脂32を含浸させてメッシュ状のプリプレグ53を製作し、このプリプレグ53を積層して加熱成形し、アブレータ30cを製造する。
【0041】
このような構成によれば、加熱時に、粗く編んだクロスのメッシュの目54を通って通気孔36を形成し、アブレータ30cの内部で発生した熱分解ガスを加熱表面の放出することができる。またこの実施の形態のアブレータ30cにおいても、繊維を切断しないため、面内強度を確保することができる。
【0042】
図8は、本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30dの製造手順を示す図であり、図8(1)は針状治具55がプリプレグ56に挿入された状態を示し、図8(2)は針状治具55を取外して複数の孔57が形成されたアブレータ前駆体58を示し、図8(3)は成形後のアブレータ前駆体58の孔57にマトリクス樹脂59が充填された状態を示し、図8(4)はアブレータ30dの一部を模式化した断面を示す。なお、前述の各実施の形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。
【0043】
本実施の形態では、クロス積層時に直径1〜5mmの針状治具55をX方向およびY方向に間隔ΔL3,ΔL4をあけて整列させた状態で、図8(1)に示されるように、プリプレグ56に貫通させて挿入し、図8(2)に示されるように、マトリクス樹脂を充填する部分である孔57が形成されたアブレータ前駆体58を加熱成形する。このアブレータ前駆体58の孔56には、図8(3)に示されるように、マトリクス樹脂59を充填して硬化させる。このように針状治具55をアブレータ前駆体58から抜取る場合には、針状治具55は、たとえば金属製とし、複数回、使用可能であるとともに、繊維が切断されないために面内強度が低下しない。
【0044】
また、本発明の実施の他の形態では、針状治具55をマトリクス樹脂とほぼ等しいか、またはマトリクス樹脂よりも低い熱分解特性を有する硬化した樹脂、たとえばフェノール樹脂によって製作し、成形後の針状治具55が刺さった状態で、アブレータ30dの完成品としてもよい。この場合、針状治具55をアブレータ前駆体58から抜取る必要がないので、製造時の手間が削減される。
【0045】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明によれば、加熱によって繊維強化材の一部はマトリクス樹脂とともに熱分解し、熱反応層で発生した熱分解ガスが通過することができる通気孔を生成し、この通気孔を介する熱分解ガスの放出によって、加熱面に垂直な方向の熱伝導率の増加を抑制し、高い面内強度を維持しながら、層間剥離を防止することができる。
【0046】
請求項2〜7記載の各発明によれば、熱防護材の通気孔によって、加熱によって熱反応層内で発生した熱分解ガスを放出することができ、これによって加熱面に垂直な方向の熱伝導率を増加させずに、高い面内強度を維持しながら、層間剥離を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の一形態の製造方法によって得られたアブレータ30の一部を簡略化して示す斜視図であり、図1(1)は加熱前の状態を示し、図1(2)は加熱後の状態を示す。
【図2】アブレータ30の一部を模式的に示す斜視図であり、図2(1)は加熱による炭化前のアブレータ30の一部を示し、図2(2)は加熱による炭化後のアブレータ30の一部を示す。
【図3】フェノール樹脂およびナイロンの低昇温速度で昇温したときの重量変化を示すグラフである。
【図4】フェノール樹脂およびナイロンの高昇温速度で昇温したときの重量変化を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の他の形態のアブレータ30aの一部を模式化して示す図であり、図5(1)はアブレータ30aに用いられる複数の透孔41が形成されたクロス42を模式化して示す一部の斜視図であり、図5(2)は通気孔43を通って熱分解ガスが放出される状態を模式化して示す一部の断面図である。
【図6】本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30bの一部を模式化して示す図であり、図6(1)は穴あけ加工したアブレータ前駆体30b1の一部を示し、図6(2)は図6(1)に示されるアブレータ30b1の孔50にマトリクス樹脂を再含浸させた状態を示し、図6(3)はアブレータ30bの一部の断面を示す。
【図7】本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30cの一部を示す図であり、図7(1)はメッシュ状プリプレグ53の一部を示す斜視図であり、図7(2)はアブレータ30cの一部を模式化して示す断面図である。
【図8】本発明の実施のさらに他の形態のアブレータ30dの製造手順を示す図であり、図8(1)は針状治具55をプリプレグ56に挿入された状態を示し、図8(2)は針状治具55を取外して複数の孔57が形成されたアブレータ前駆体58を示し、図8(3)は成形後のアブレータ前駆体58の孔57にマトリクス樹脂59が充填された状態を示し、図8(4)はアブレータ30dの一部を模式化した断面を示す。
【図9】典型的な従来の技術のアブレータ1を模式化して示す一部の断面図である。
【図10】他の従来の技術のアブレータ1aを模式化して示す一部の断面図である。
【符号の説明】
30,30a,30b,30c,30d アブレータ
30b1,58 アブレータ前駆体
31 第1繊維
32 マトリクス樹脂
33 第2繊維
34,42 クロス
35,56 プリプレグ
36 通気孔
41 透孔
45 表面
50 貫通孔
53 メッシュ状プリプレグ
55 針状治具
Claims (7)
- 繊維強化材にマトリクス樹脂を含浸させた複合材シ−トを、複数、積層して加熱成形される熱防護材の製造方法において、
耐熱性を有する第1繊維に、加熱によって前記マトリクス樹脂とともに熱分解する第2繊維が織り込まれたクロスを、加熱面に平行に積層し、この積層されたクロスに前記マトリクス樹脂を含浸させて複数の複合材シ−トを形成し、
前記複数の複合材シ−トに、相互に間隔をあけて前記マトリクス樹脂を充填する部分を形成し、各複合材シ−トを積層した状態で前記マトリクス樹脂を充填し、加熱成形することを特徴とする熱防護材の製造方法。 - 前記複合材シ−トには、前記マトリクス樹脂を充填する部分に、相互に間隔をあけて複数の透孔を形成し、前記複数の透孔が形成された各複合材シ−トを積層して前記マトリクス樹脂を充填し、加熱成形することを特徴とする請求項1記載の熱防護材の製造方法。
- 前記繊維強化材にマトリクス樹脂を含浸させた複合材シ−トを複数積層して熱防護材前駆体を形成し、この熱防護材前駆体の前記マトリクス樹脂を充填する部分に、相互に間隔をあけて複数の貫通孔を形成し、これらの貫通孔にマトリクス樹脂を充填して硬化させることを特徴とする請求項1記載の熱防護材の製造方法。
- 前記複合材シ−トは、前記高温加熱時に発生する熱分解ガスのガス圧によって通気孔を形成することができる所定の間隔をあけてメッシュ状に配置することによって前記マトリクス樹脂を充填する部分を形成し、このメッシュ状に配置された繊維強化材に、マトリクス樹脂を含浸させて、メッシュ状に形成されることを特徴とする請求項1記載の熱防護材の製造方法。
- 前記積層された複数の複合材シ−トに、相互に所定の間隔をあけて針状治具を厚み方向に挿通して、前記マトリクス樹脂を充填する部分を有する熱防護材前駆体を形成し、この熱防護材前駆体を、加熱成形することを特徴とする請求項1記載の熱防護材の製造方法。
- 前記熱防護材前駆体には、挿通された針状治具を抜き取って複数の孔が形成され、この複数の孔が形成された熱防護材前駆体を、加熱成形することを特徴とする請求項5記載の熱防護材の製造方法。
- 前記針状治具は、マトリクス樹脂と同程度または低い温度で熱分解する硬化した樹脂から成り、熱防護材前駆体は、複数の前記針状治具が挿通された状態で、加熱成形されることを特徴とする請求項5記載の熱防護材の製造方法。
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