JP3784251B2 - 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法 - Google Patents

固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP3784251B2
JP3784251B2 JP2000377793A JP2000377793A JP3784251B2 JP 3784251 B2 JP3784251 B2 JP 3784251B2 JP 2000377793 A JP2000377793 A JP 2000377793A JP 2000377793 A JP2000377793 A JP 2000377793A JP 3784251 B2 JP3784251 B2 JP 3784251B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
immobilized enzyme
carrier
enzyme
optically active
reaction
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2000377793A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002176974A (ja
Inventor
幸生 ▲土▼▲橋▼
尚 仙波
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Shokubai Co Ltd filed Critical Nippon Shokubai Co Ltd
Priority to JP2000377793A priority Critical patent/JP3784251B2/ja
Publication of JP2002176974A publication Critical patent/JP2002176974A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3784251B2 publication Critical patent/JP3784251B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

Landscapes

  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固定化担体にR-ヒドロキシニトリルリアーゼが固定化された固定化酵素、該固定化酵素の製造方法及び該固定化酵素を用いる光学活性シアノヒドリンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
R-ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアン化合物とカルボニル化合物とから光学活性なシアノヒドリンを合成する活性を有する酵素として有用であることが知られている。ところが、R-ヒドロキシニトリルリアーゼは、一般には植物組織から抽出することによって調製されるため、高価なものとなる。したがって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼに関しては、効率的な使用方法、すなわち、反応効率の向上及び再利用といった効率化が重要な課題となっている。
【0003】
これまで、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを用いた光学活性シアノヒドリンの合成方法としては、当該酵素を適当な担体に固定化した固定化酵素を使用する方法が提案されている。しかし、従来公知の当該酵素の固定化方法では、反応系内での分散性が悪いこと、酵素と反応液との分離性が悪いこと、酵素の固定化量が少ないこと等の問題があった。例えば、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを用いた酵素反応において、R-ヒドロキシニトリルリアーゼをシリカゲルに化学的に吸着させた固定化酵素が知られている(Ernst Wehtjeら、Appl. Microbiol. Biotechnol., (1988) 29 : 419-425)。この固定化酵素は、シリカゲルの表面をグルタルアルデヒド処理することによって、シリカゲルの表面にR-ヒドロキシニトリルリアーゼを化学的に固定化したものである。
【0004】
しかし、この固定化酵素においては、シリカゲルの表面を活性化するための煩雑な前処理を行わなければならない。このため、この固定化酵素を調製するためには、多段階の工程を必要とし、容易に作製できないといった不都合があった。
【0005】
また、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを固定化する担体として、セライトを用いた固定化酵素(Wehtjeら、Biotechnol. Bioeng., (1990) 36 : 39-46)及びセルロースを用いた固定化酵素(Effenbergerら、Tetrahedron Lett., (1991) 32 : 2605-2608)も知られている。これらの固定化酵素は、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを物理的に固定化したものである。
【0006】
しかし、これらの固定化酵素は、酵素の固定量が少なく、所要量の酵素を固定化するために担体量を多くする必要があった。このため、一定反応容器内に占める固定化酵素量が多くなるため、生産性が悪く、さらに、固定化担体が極めて微細であるうえ、親水性であるため、水分を含有した有機溶媒中で用いた場合、反応系内部の水分を吸収し、固定化酵素同士が凝集を起こし、反応系内での分散性が極めて悪くなるといった問題があった。したがって、この固定化酵素には、不定形を呈するための取扱いが困難であるといった不都合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、簡便に作製することができ、且つ、反応効率がよく、さらに取扱いも容易な固定化酵素、当該固定化酵素の製造方法及び当該固定化酵素を用いる光学活性シアノヒドリンの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意研究を行った結果、酵素の固定化担体として多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体を用い、これらにR-ヒドロキシニトリルリアーゼを物理的に吸着させることによって、極めて容易に製造することができるとともに、取扱いが容易な固定化酵素を調製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、シアン化合物とカルボニル化合物とからR体のシアノヒドリンを合成する活性を有するR-ヒドロキシニトリルリアーゼを、多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体からなる担体に物理吸着により固定化してなることを特徴とする固定化酵素である。
また、この固定化酵素において、上記多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体が細孔径10〜200nmの細孔を有するものであることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明は、シアン化合物とカルボニル化合物とからR体のシアノヒドリンを合成する活性を有するR-ヒドロキシニトリルリアーゼを、多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体からなる担体に物理吸着により固定化することを特徴とする固定化酵素の製造方法である。
【0011】
一方、本発明者らは、上記固定化酵素を反応溶媒として水に難溶又は不溶な有機溶媒中で用いることによって、回分反応系内で固定化酵素を効率よく分散させることができ、また、反応終了後において固定化酵素と反応液とを容易に分離できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、カルボニル化合物及びシアン化合物から光学活性なシアノヒドリンを合成する際に、前記固定化酵素を用いることを特徴とする光学活性シアノヒドリンの製造方法である。
また、この光学活性シアノヒドリンの製造方法は、水に難溶又は不溶の有機溶媒を溶媒として用い、光学活性シアノヒドリン生成反応終了後、反応液と固定化酵素とを分離し、当該固定化酵素を再使用することができる。
【0013】
さらに、この光学活性シアノヒドリンの製造方法は、上記固定化酵素を充填型反応装置に充填し、反応原料液を当該充填型反応装置に連続的に供給することによって、当該充填型反応装置から光学活性なシアノヒドリンを連続的に調製することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る固定化酵素、該固定化酵素の製造方法及び該固定化酵素を用いる光学活性シアノヒドリンの製造方法について詳細に説明する。
本発明の固定化酵素は、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを、多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体(以下、担体という)に物理吸着により固定化したものである。この固定化酵素は、R-ヒドロキシニトリルリアーゼをシリカゲル担体等に化学的に吸着させた固定化酵素よりも、容易に調製することができ、且つ、取扱い性に優れているという特徴を有する。本発明の固定化酵素は、例えば、以下のようにして製造することができる。
1.R-ヒドロキシニトリルリアーゼの調製
固定化の対象となるR-ヒドロキシニトリルリアーゼとは、シアン化合物とカルボニル化合物とから光学活性なシアノヒドリンを合成する活性を有する酵素を意味する。ここで、カルボニル化合物とは、アルデヒドまたはケトンをいい、具体的には、下記式(1)で表される。
【0015】
【化1】
Figure 0003784251
【0016】
上記式(1)において、R1とR2は、(i) 水素原子、(ii)置換または非置換の炭素数1〜18の線状または分枝鎖状の飽和アルキル基、または(iii) 置換または非置換の環員が5 〜22の芳香族基である。ただし、R1とR2は同時に水素原子を表すことはない。
【0017】
上記(ii)で、R1とR2が置換アルキル基の場合、置換基は、1個またはそれ以上のアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、またはN、O、Sのヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数22までの芳香族基である(ここで、置換基が環状置換基の場合は、それ自体が1個またはそれ以上のハロゲン、ヒドロキシ基、炭素数1〜8の線状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数2〜8の線状若しくは分枝鎖状のアルケニル基で置換されていてもよい。)。
【0018】
上記(iii) で、芳香族基は、環員の4個までがN、Oおよび/またはSによって置換されているヘテロ芳香族基であってもよい。また、R1とR2が置換芳香族基の場合、置換基は、1個またはそれ以上のアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリルオキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数22までの線状若しくは分枝鎖状の飽和若しくは不飽和のアルキル基である(ここで、一つの芳香族基が少なくとも2個の置換基により置換されてもよい)。
【0019】
また、シアン化合物としては、シアン化物イオン(CN-)を生じる物質であれば、特に限定されず、例えば、シアン化水素、シアン化ナトリウムやシアン化カリウムなどのシアン化水素塩、アセトンシアンヒドリンなどのシアノヒドリン類などが挙げられる。
【0020】
R-ヒドロキシニトリルリアーゼは、シアン化合物とカルボニル化合物とからR体シアノヒドリンを合成する活性を有する酵素であれば特に限定されないが、例えば、アーモンド(Prunus amygdalus)等のバラ科植物、アマ(Linum usitatissimum)等のアマ科植物及びダイオウウラボシ(Phlebodium aureum)等のウラボシ科植物から抽出したものであることが好ましい。また、R-ヒドロキシニトリルリアーゼとしては、適当な宿主-ベクター系を用いて当該酵素をコードする遺伝子を有する遺伝子組換体を作製し、当該遺伝子組換体によって生産されたものであっても使用できる。
【0021】
2.R-ヒドロキシニトリルリアーゼの固定化
(1)R-ヒドロキシニトリルリアーゼの固定化担体
R-ヒドロキシニトリルリアーゼを固定化する担体としては、多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体を使用することができる。
【0022】
多孔性粘土系焼結担体とは、ケイ酸塩類原料(例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイトなどのカオリナイト族鉱物、パイロフィライト、モンモリロナイト、絹雲母、滑石、緑泥石などの粘土系のものなど)を造粒し、焼結して得られる多孔性担体をいう。具体的に、多孔性粘土系焼結担体としては、Toyonite200(東洋電化工業社製)、Toyonite200 S(東洋電化工業社製)などを例示できる。
【0023】
多孔性シリカ系担体とは、二酸化ケイ素の微粒子が凝集してできた高表面積の多孔性担体をいう。具体的に、多孔性シリカ系担体としては、CARiACT Q(富士シリシア化学社製)、Micro Bead Silica Gel(富士シリシア化学社製)などを例示できる。
【0024】
これら担体は、細孔を有する多孔性無機質材料からなり、当該細孔にR-ヒドロキシニトリルリアーゼを物理的に吸着させることができる。これら担体において、細孔径は10〜200nm、好ましくは10〜100 nmである。細孔径が10nm未満である場合、担体は、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを確実に吸着できない虞がある。また細孔径が200nmを越える場合、担体はR-ヒドロキシニトリルリアーゼの脱落を生じやすくなり、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを充分に固定化できない虞がある。したがって、細孔径がこれらの範囲である担体を使用することによって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを確実に且つ、十分な量で吸着することができる。
【0025】
さらに、担体は、比表面積が20m2/g以上であることが好ましい。担体の比表面積が20m2/g未満である場合には、酵素反応に十分な量のR-ヒドロキシニトリルリアーゼを固定化することができない虞がある。したがって、比表面積が20m2/g以上である担体を使用することによって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを多量に固定化することができ、優れた効率で酵素反応を行うことができる。
【0026】
さらにまた、固定化に用いる場合の担体の形状は、特に限定されないが、充填型反応槽用の固定化酵素を作製する場合には球状であることが好ましい。球状の担体において、粒径は10μm〜5mm、好ましくは50μm〜2mmである。ここで、粒径分布は狭いほうが好ましい。粒径が10μm〜5mmである球状の担体を使用することによって、反応溶液と固定化酵素の分離作業性を向上させることができ、充填型反応装置に用いる場合では反応原料液を通液する際の圧力損失を低減させることができる。
【0027】
(2) 担体へのR-ヒドロキシニトリルリアーゼの固定化
担体へのR-ヒドロキシニトリルリアーゼの固定化は以下のようにして行うことができる。
すなわち、上記1において調製したR-ヒドロキシニトリルリアーゼを含む溶液を酵素活性が損なわれない範囲のpHに調整した後、上記(1)の担体と混合及び攪拌することによって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを担体に物理的に吸着することができる。具体的な固定化方法としては、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを含む溶液に担体を添加し、一定時間混合して吸着させた後、固定化酵素を分別する方法、担体が含有しうる水分量と等量以下のR-ヒドロキシニトリルリアーゼを含む溶液を担体に添加し、混合することによって酵素を固定化する方法等があげられるが、これらの方法に限定されない。次いで、固定化処理後、得られた固定化酵素は、濾過などによって分離することができる。なお、固定化酵素は過剰に水分を含んだ状態では、光学活性シアノヒドリンの合成時に反応溶媒中で担体同士が凝集する原因となるので、固定化酵素中に含まれる水分は、分散可能なレベルまで除去することが好ましい。固定化酵素からの水分の除去は、減圧乾燥、通風乾燥などによって行うことができる。
【0028】
3.本発明の固定化酵素を用いた光学活性シアノヒドリンの合成
本発明の固定化酵素を用いた光学活性シアノヒドリンの合成は、以下のようにして行うことができる。
まず、反応溶媒中に、上記2において得られた固定化酵素及び反応基質を加え、反応温度0〜50℃において、反応させることによって、光学活性シアノヒドリンを合成することができる。反応時間は、基質の転換速度に応じて適宜調整すればよく、通常、10分〜120時間反応を行うことによって光学活性シアノヒドリンを合成することができる。合成反応終了後、固定化酵素は、回収し、再度光学活性シアノヒドリンの合成に使用することができる。
【0029】
また、光学活性シアノヒドリンは、上記2において得られた固定化酵素を、例えばカラム等の充填型反応装置に充填し、反応溶媒及び基質からなる反応原料液を当該充填型反応装置に供給することによって調製することもできる。この場合には、上記反応原料液を連続的に供給することによって、光学活性シアノヒドリンを連続的に調製することができる。
【0030】
ここで、反応基質としては、上述したようなカルボニル化合物及びシアン化合物を使用する。また、反応溶媒としては、反応系内に水が大量に存在すると、酵素反応によって生成した光学活性シアノヒドリンの光学純度が低下したり、固定化酵素の凝集が起こって反応効率が低下したり、水に対する溶解度の小さいアルデヒドまたはケトンを原料として用いる場合には生産効率が低下するなどの点から、水に難溶または不溶である有機溶媒を主成分としてなる反応溶媒を用いることが好ましい。かかる有機溶媒としては、酵素反応による光学活性シアノヒドリンの合成反応に影響を与えないものであれば特に制限なく用いることができ、合成反応に用いる原料のアルデヒドまたはケトンの物性、生成物であるシアノヒドリンの物性に応じて適宜選択することができる。具体的に、反応溶媒としては、ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和炭化水素系溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレンなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和アルコール系溶媒、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−アミルアルコールなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エーテル系溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エステル系溶媒、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどが挙げられ、これらを単独で用いても、また複数を混合して用いてもよい。また、上記溶媒は水又は水系の緩衝液を含有又は飽和させたものを用いることもできる。
次いで、生成された光学活性シアノヒドリンは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等によって測定・定量することができる。
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を示して具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕R-ヒドロキシニトリルリアーゼの調製
先ず、アーモンド種子を粉砕した粉砕物100gをアセトン200ml中に分散混合し、2時間攪拌した。その後、アセトン溶液を濾過し、固形分を回収した。乾燥させた固形分に水600gを加え、アンモニア水でpH7.5に調製した後、攪拌混合を一晩行い、スラリーを調製した。
【0032】
次に、このスラリーを遠心分離し、上澄液を回収した。回収した上澄液のpHを5.5に調製した後に遠心分離し、不溶画分を除去した。そして、硫酸アンモニウムを用いた、いわゆる硫安沈殿処理によって得られた溶液を濃縮し、酵素溶液とした。
【0033】
この酵素溶液中に含まれるR-ヒドロキシニトリルリアーゼの活性を以下のようにして測定した。先ず、DL-マンデロニトリルを基質として反応させてベンズアルデヒドを生成させる。このとき、ベンズアルデヒドの生成速度を、波長249.6nmの吸光度変化を測定することによって算出する。そして、R-ヒドロキシニトリルリアーゼの活性1単位(U:unit)は、1分間にベンズアルデヒド1μmolを生成する活性と定義した。得られた酵素溶液についてR-ヒドロキシニトリルリアーゼの活性を測定したところ、1500U/mlであり、上記調製によって、2.5万UのR-ヒドロキシニトリルリアーゼを回収できたことが判った。
【0034】
〔実施例2〕R-ヒドロキシニトリルリアーゼ固定化担体の検討1
実施例1において調製したR-ヒドロキシニトリルリアーゼを含む酵素溶液を用いて固定化酵素を調製した。固定化酵素に使用する担体としては、多孔性粘土系焼結担体としてカオリナイト系セラミック(商品名Toyonite 200 S-4、東洋電化工業社製、細孔径38nm、比表面積235m2/g、平均粒子径166μm)、多孔性シリカ系担体としてシリカゲル(商品名CARiACT Q-20、富士シリシア化学社製、細孔径20nm、比表面積152m2/g、粒子径75〜500μm)を使用した。また、比較として、セルロース担体(商品名Avicel cellulose microcrystalline、E.Merck社製)を用いた固定化酵素及び珪藻土担体(商品名Celite No.545、Celite社製)を用いた固定化酵素も調製した。
【0035】
R-ヒドロキシニトリルリアーゼをこれら担体に固定化する際には、実施例1で得られた酵素溶液0.3mlと各種担体0.3gとを混合攪拌し、酵素溶液の水分を担体に吸収させることにより行った。これにより、R-ヒドロキシニトリルリアーゼは、担体に対して物理的に吸着することとなる。
【0036】
このようにして調製された4種類の固定化酵素を用いて、以下のようなベンズアルデヒドからのR-マンデロニトリルの酵素合成反応を行い、4種類の固定化酵素について特性を評価した。酵素反応は、得られた固定化酵素全量に、反応溶媒としてのメチル-t-ブチルエーテル4199.4mlと、基質としてのベンズアルデヒド508.2μl(5mmol)及びシアン化水素(青酸)292.4μl(7.5mmol)と添加し、室温で30分間、混合攪拌しながら行った。
【0037】
反応後の溶液をHPLCにかけ、ベンズアルデヒドの濃度、R-マンデロニトリルの濃度及びS-マンデロニトリルの濃度を測定した。そして、ベンズアルデヒドの濃度から、ベンズアルデヒドの減少率を算出し「転換率」とした。また、R-マンデロニトリルの濃度とS-マンデロニトリルの濃度とから、R-マンデロニトリルの「光学純度」を算出した。4種類の固定化酵素を用いた場合における「転換率」、「光学純度」及び反応系内での固定化酵素の分散状態を観察した結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
Figure 0003784251
【0039】
表1から判るように、4種類の固定化酵素を用いたR-マンデロニトリルの合成では、高い転換率、光学純度を示している。すなわち、多孔性シリカ系担体であるシリカゲル又は多孔性粘土系焼結担体であるカオリナイト系セラミックを用いた固定化酵素は、従来公知の固定化担体であるセルロース又は珪藻土を用いた固定化酵素と同程度の活性を有していることが判る。
【0040】
ところが、反応系内における分散状態を比較すると、カオリナイト系セラミックを用いた固定化酵素及びシリカゲルを用いた固定化酵素は、均一に分散していて容易に取扱えるのに対し、セルロース又は珪藻土を用いた固定化酵素は集塊を形成するために不均一に分散しており取扱いが困難である。
以上のように、担体としてカオリナイト系セラミック(多孔性粘土系焼結担体)やシリカゲル(多孔性シリカ系担体)を用いた場合には、取扱い性に優れた固定化酵素を作製できることが判る。
【0041】
〔実施例3〕R-ヒドロキシニトリルリアーゼ固定化担体の検討2
実施例2で調製した4種類の固定化酵素を用いて、以下のような2-クロロベンズアルデヒドからのR-2-クロロマンデロニトリルの酵素合成反応を行い、4種類の固定化酵素について特性を評価した。酵素反応は、得られた固定化酵素全量に、反応溶媒としてのメチル-t-ブチルエーテル3716.6mlと、基質としての2-クロロベンズアルデヒド844.8μl(7mmol)及びシアン化水素(青酸)219.3μl(11.25mmol)とを添加し、室温で2時間、混合攪拌しながら行った。
【0042】
反応後の溶液をHPLCにかけ、2-クロロベンズアルデヒドの濃度、R-2-クロロマンデロニトリルの濃度及びS-2-クロロマンデロニトリルの濃度を測定した。そして、実施例2と同様に「転換率」、「光学純度」及び固定化酵素の分散状態を観察した結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0003784251
【0044】
表2から判るように、4種類の固定化酵素を用いたR-2-クロロマンデロニトリルの合成は、それぞれ高い転換率を示している。ところが、4種類の固定化酵素について光学純度を比較すると、カオリナイト系セラミックを用いた固定化酵素及びシリカゲルを用いた固定化酵素では、セルロース又は珪藻土を用いた固定化酵素よりも高い光学純度を示していることが判る。また、反応系内における分散状態を比較すると、カオリナイト系セラミックを用いた固定化酵素及びシリカゲルを用いた固定化酵素は均一に分散していて容易に取扱えるのに対し、セルロース又は珪藻土を用いた固定化酵素は集塊を形成するために不均一に分散していて取扱いが困難である。
【0045】
以上のように、担体としてカオリナイト系セラミック(多孔性粘土系焼結担体)やシリカゲル(多孔性シリカ系担体)を用いた場合には、優れた転換率及び高い光学純度を達成するとともに、取扱い性に優れた固定化酵素を作製できることが判る。
【0046】
〔実施例4〕R-ヒドロキシニトリルリアーゼ固定化方法の検討
実施例2で調製した固定化酵素のうち、担体としてシリカゲル(商品名CARiACT Q-20、富士シリシア化学社製)を使用したものと、このシリカゲルに対してR-ヒドロキシニトリルリアーゼを化学的に吸着させたものとを比較した。以下、シリカゲルに対してR-ヒドロキシニトリルリアーゼを化学的に吸着させたものを比較例と呼ぶ。
【0047】
比較例は、Ernst Wehtjeら、Appl. Microbiol. Biotechnol., (1988) 29 : 419-425を参照して調製した。すなわち、先ず、シリカゲルを、5%HNO3を用いて90℃で1時間洗浄した後に110℃で乾燥させた。次に、pH3.5の10%アミノプロピルトリエトキシシラン溶液をシラン化剤として用いて、10%アミノプロピルトリエトキシシラン溶液にシリカゲルを混合し、75℃で2時間攪拌しながら放置することによって、シリカゲルの表面にアミノ基を導入した。
【0048】
次に、シリカゲルを水で洗浄し、pH7.0の50mMリン酸緩衝液中に含まれる25mlの2.5%グルタルアルデヒドでシリカゲルを1時間処理した。次に、シリカゲルを水で洗浄し、pH7.0の50mMリン酸緩衝液中で活性化したシリカゲル溶液中に、酵素溶液5mlを添加した。R-ヒドロキシニトリルリアーゼの結合は、酵素溶液添加後4時間で進行し、その後、結合を安定化するために50mgのNa(CN)BH3を加えた。そして、さらに12時間放置することによって、比較例の固定化酵素を調製した。
【0049】
実施例2で調製した固定化酵素と比較例の固定化酵素とについて、R-ヒドロキシニトリルリアーゼの吸着率、転換率及び光学純度を測定した。なお、転換率及び光学純度に関しては、実施例2と同様にして測定した。R-ヒドロキシニトリルリアーゼの吸着率は、使用した酵素溶液中の残存活性を測定し、シリカゲル単位量あたりに吸着したR-ヒドロキシニトリルリアーゼ量を算出し、実施例2の固定化酵素の吸着率を100%とした相対値として比較例における吸着率を算出した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
Figure 0003784251
【0051】
この表3から判るように、実施例2の固定化酵素は、比較例の固定化酵素と比較して、R-ヒドロキシニトリルリアーゼの吸着率が優れている。したがって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを担体に物理的に吸着させることによって、R-ヒドロキシニトリルリアーゼのロスを防止することができ、固定化酵素を効率的に調製することができる。
【0052】
また、表3に示すように、実施例2の固定化酵素は、比較例の固定化酵素と比較して優れた光学活性を示している。このことから、化学的に吸着させた固定化酵素を用いた場合には、酵素活性が低いためにラセミ体生成が頻繁に発生しており、純粋な目的生成物を得ることが困難である。これに対して、実施例2の固定化酵素においては、高純度な光学純度を達成しており、ラセミ体の生成が抑制されている。したがって、実施例2の固定化酵素を用いることによって、より高純度な目的生産物が得られることが判る。
【0053】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明に係る固定化酵素は、非常に簡便に調製することができるものであり、取扱い性にも優れたものである。また、本発明に係る固定化酵素を用いた場合には、ラセミ体生成反応を抑制することができ、光学的に純粋な生成物を合成することができる。
【0054】
また、本発明に係る固定化酵素の製造方法は、R-ヒドロキシニトリルリアーゼを物理吸着により所定の担体に対して固定化する方法である。このため、本発明に係る固定化酵素の製造方法によれば、取り扱い性に優れた固定化酵素を非常に簡便に且つ効率的に製造することができる。
さらに、本発明に係る光学活性シアノヒドリンの製造方法は、ラセミ体生成反応を確実に抑制し、光学的に優れた純度で光学活性シアノヒドリンを合成することができる。

Claims (4)

  1. シアン化合物とカルボニル化合物とからR体のシアノヒドリンを合成する活性を有するR-ヒドロキシニトリルリアーゼを、多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体からなる担体に物理吸着により固定化することを特徴とする固定化酵素の製造方法。
  2. 上記多孔性粘土系焼結担体及び/又は多孔性シリカ系担体は、細孔径10〜200nmの細孔を有することを特徴とする請求項1記載の固定化酵素の製造方法。
  3. カルボニル化合物及びシアン化合物から光学活性なシアノヒドリンを合成する際に、請求項1又は2記載の製造方法により製造された固定化酵素を用いることを特徴とする光学活性シアノヒドリンの製造方法。
  4. 水に難溶又は不溶の有機溶媒を反応溶媒として用い、光学活性シアノヒドリン生成反応終了後、反応液と固定化酵素とを分離し、当該固定化酵素を再使用することを特徴とする請求項3記載の光学活性シアノヒドリンの製造方法。
JP2000377793A 2000-12-12 2000-12-12 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法 Expired - Fee Related JP3784251B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000377793A JP3784251B2 (ja) 2000-12-12 2000-12-12 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000377793A JP3784251B2 (ja) 2000-12-12 2000-12-12 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002176974A JP2002176974A (ja) 2002-06-25
JP3784251B2 true JP3784251B2 (ja) 2006-06-07

Family

ID=18846464

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000377793A Expired - Fee Related JP3784251B2 (ja) 2000-12-12 2000-12-12 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3784251B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20090239273A1 (en) 2006-09-29 2009-09-24 Hisashi Semba Novel high-activity modified s-hydroxynitrile lyase
JP4746084B2 (ja) * 2008-12-18 2011-08-10 三菱レイヨン株式会社 (r)−ヒドロキシニトリルリアーゼ及びその利用方法
WO2023227795A1 (en) 2022-05-27 2023-11-30 Enginzyme Ab Biocatalysts for organic synthesis

Also Published As

Publication number Publication date
JP2002176974A (ja) 2002-06-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Wang et al. Immobilization of cellulase on polyamidoamine dendrimer-grafted silica
Talekar et al. Porous cross linked enzyme aggregates (p-CLEAs) of Saccharomyces cerevisiae invertase
JP5734106B2 (ja) 蛋白質固定化用担体、固定化蛋白質及びそれらの製造方法
EP1859035B1 (en) Immobilised enzymes
Selvam et al. Activity and stability of bacterial cellulase immobilized on magnetic nanoparticles
Park et al. Reusable biosorbents in capsules from Zoogloea ramigera cells for cadmium removal
Costa et al. Nanobiocatalytic systems based on lipase-Fe3O4 and conventional systems for isoniazid synthesis: A comparative study
CN114438072B (zh) 一种海藻糖的生产方法
CN107475239B (zh) 一种辣根过氧化物酶的固定化方法及其应用
Han et al. Engineering actively magnetic crosslinked inclusion bodies of Candida antarctica lipase B: An efficient and stable biocatalyst for enzyme-catalyzed reactions
Miao et al. Effects of pore size and crosslinking methods on the immobilization of myoglobin in SBA-15
JP3784251B2 (ja) 固定化酵素及び光学活性シアノヒドリンの製造方法
RU2475538C2 (ru) Фермент ловастатин эстераза, иммобилизованный на твердом носителе, способ иммобилизации фермента, биокатализируемый проточный реактор и способ очистки симвастатина
CN111041014B (zh) 一种磁性固定化脂肪酶及其在拆分1-甲基-3-***中的应用
EP3995504A1 (en) Method for purifying virus or virus-like particle
JPH04507193A (ja) 固定化リパーゼ調製品およびエステル合成のための該調製品の使用
JP6168275B2 (ja) 炭酸カルシウム・マイクロカプセル固定化リパーゼ
KR101717818B1 (ko) 산화철 요크 쉘 나노구조체를 이용한 효소 고정화
JP3709317B2 (ja) 光学活性シアノヒドリンの合成方法
Xiong et al. Immobilization of Escherichia coli cells harboring a nitrilase with improved catalytic properties though polyethylenemine-induced silicification on zeolite
RU2445271C2 (ru) Стабилизатор ферментативной активности пероксидазы
JPH07275696A (ja) 生物活性炭の製造方法及び再生方法並びに微生物膜除去方法
Queiroz et al. Stemphylium lycopersici immobilized in mesoporous of type MCM 48 as biocatalyst for ω-transamination reactions
JP2717227B2 (ja) 固定化ウレアーゼとそれを用いた酒類の製造方法
JPS6167489A (ja) 枯草菌の固定化細胞、固定化方法及び7‐β‐アシルアミドセフアロスポラン酸からの3‐アセトキシ基の脱離に対する生成物の使用

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050801

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051115

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060113

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060228

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060314

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100324

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100324

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110324

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120324

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120324

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130324

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140324

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees