JP3782657B2 - 乾式トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法、トナージェット法などを利用した記録方法に用いられる乾式トナー(以下、トナーと称す)に関するものである。詳しくは、複写機、プリンター、ファクシミリ、プロッター等に利用し得るトナーに用いられる画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報に記載されている如く多数の方法が知られている。一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて直接的あるいは間接的手段を用い、紙の如き転写材にトナー画像を転写した後、加熱、加圧、加熱加圧、或いは溶剤蒸気により定着し、定着画像を得るものである。また、トナー画像を転写する工程を有する場合には、通常、感光体上の転写残余のトナーを除去する為の工程が設けられ、上述の工程が繰り返される。
【0003】
また、特にフルカラーの画像形成においては、一般的に静電潜像をマゼンタトナー、シアントナー、イエロートナー及びブラックトナーを使用して現像し、各色のトナー画像を重ね合わせることにより多色画像の再現を行っている。
【0004】
近年、上記の如き電子写真法を用いた画像形成装置の利用分野は、単にオリジナル原稿を複写するための複写機というだけでなく、コンピューターの出力としてのプリンター、或いは個人向けのパーソナルコピー、更には普通紙ファックス等へと急激に発展を遂げつつあり、多種多様な要求が高まっている。また、複写機についても、デジタル化による高機能化が進んでいる。特に、画像形成装置部分の小型化、高速化及びカラー化は著しく、更には高信頼性や高解像度に対しても強く要求されつつある。例えば、当初、200〜300dpi(dot per inch)であった解像度は400〜1200dpi、更には2400dpiとなりつつある。
【0005】
上記の如き要求に対し、画像形成装置は種々の点で機能性の高い部材を用いることで、より簡素な構成要素で設計されるようになってきている。その結果、トナーに要求される機能性もより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければ、より優れた画像形成装置が成り立たなくなってきているのが実状である。
【0006】
例えば、特開昭59−46664号公報には、トナー画像を現像するための静電潜像担持体にバイアスを印加した接触転写部材を圧接し、これら両者の接触部で転写材を挟持搬送しながら該静電潜像担持体上のトナー画像を転写材上に転写する装置が提案されている。この様な転写装置は、従来から広く実用されているコロナ放電を利用した転写装置と比べ、接触転写部材の静電潜像担持体への当接圧を調節することによって転写材を積極的に押圧支持することができるので、転写材の搬送性が良好なものとなり、転写材搬送手段を最小限のものとすることが可能で、画像形成装置の小型化の要請にも対応し易い。特に、転写材上にイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、及びブラックトナーによる複数のトナー画像を多数回の転写によって重ね合わせ、多色画像の再現をおこなっているフルカラーの画像形成装置の小型化に大きく寄与することができる。
【0007】
しかしながら、上記の如き当接転写部材を用いた転写装置においては、静電潜像担持体との当接部に転写材を挟持搬送しながら適切な電界形成を行う必要から、ある程度の当接圧を加える必要がある。このため、上記当接部では、そこを通過中のトナー画像に圧力が加わるので、トナー粒子同士が凝集し易く、その結果、転写状態にムラを生じたり、トナー画像の輪郭部分しか転写されない「転写中抜け」が発生するといった問題を有していた。一般に上記の如き現象は、転写材上にイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、及びブラックトナーによる複数のトナー層が形成されるカラー画像形成時に顕著に発生し易く、この場合には、画像の色再現性にも悪影響を与える。
【0008】
この様に、当接転写部材を用いた転写装置を用いることによって、画像形成装置の小型化等、多数の利点がある反面、転写材上のトナー画像の状態による影響が大きく、より一層のトナーの性能向上が求められていた。
【0009】
一般に、乾式現像法に適用されるトナーは、主成分として、結着樹脂、着色剤及びワックス成分を含有してなる着色樹脂微粒子(トナー粒子)であり、通常、その粒子径は個数平均径で6〜15μm程度である。この様な着色樹脂微粒子からなるトナーの製造方法としては、結着樹脂、染顔料及び/又は磁性体の如き着色剤、ワックス成分等を溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕し、更に粉砕物を分級してトナー粒子を得る、所謂、粉砕法によってトナーを得るのが一般的である。
【0010】
このような方法によって得られるトナーは、現像される静電荷像の帯電極性に応じて、正文は負の電荷を有するように構成する必要がある。トナーに電荷を保有せしめるためには、トナーの主成分である結着樹脂の摩擦帯電性を利用することもできるが、これだけではトナーの帯電性は低いものになる。そこで、所望の摩擦帯電性をトナーに付与するために荷電制御剤をトナー中に添加することが行われている。この様な荷電制御剤を含有するトナーは、比較的高い摩擦帯電量を示す場合があるものの、一般に、高湿下におけるトナーの帯電量や低湿下における帯電速度の低下がみられる。
【0011】
この原因の一つとして、トナー粒子中や粒子表面に存在する荷電制御剤付近での水分の吸脱着が挙げられ、環境の雰囲気変化による荷電制御剤中の吸着水分量の増減がトナーの帯電特性に影響を与えていると考えられる。
【0012】
今日、当該技術分野で知られている荷電制御剤としては、負帯電性のものとして、モノアゾ染料の金属錯塩、サリチル酸の金属錯塩、ナフトエ酸の金属錯塩、ジカルボン酸の金属錯塩、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。上記の荷電制御剤の多くは、電荷付与能力としては十分に高いものが多いが、制御性に乏しいため、使用し得る結着樹脂や他の材料に制限があった。
【0013】
一方、特開昭63−184762号公報では、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸を構成モノマーとして有する荷電制御樹脂を含有するトナー、また、特開平8−123096号公報では、該荷電制御樹脂と特定のモノアゾ染料のFe錯塩を併用し、且つ該モノアゾ染料のFe錯塩のトナー中の存在比を規定したトナーに関する技術が開示されている。しかしながら、該荷電制御樹脂は結着樹脂に対する分散性が良好であるため、前者の場合には効率良く荷電制御能力を発揮するには添加量を増やす必要を生じた。また、後者の場合、該モノアゾ染料のFe錯塩のトナー中の存在比を規定することにより画像形成装置とのマッチングがある程度改善されるが、トナーの帯電性自身については使用環境の影響に対して改善の余地があるばかりか、有彩色の荷電制御剤を用いることを必須としているため、カラー用トナーへの適応を非常に困難なものとしている。
【0014】
他方、特許2584306号公報では、Mg−Al−CO3系ハイドロタルサイト類、また、特許2682331号公報等では、Mg−Al−Zn−CO3系ハイドロタルサイト類に代表される3元系ハイドロタルサイト類からなる無機微粉体をトナー中に添加することによってトナーの現像特性を改善することが提案されている。しかしながら、前者については、ハイドロタルサイト類が有する受酸効果によって、帯電工程で発生する酸性のコロナ生成物質の影響が感光体ドラムに及ぶのを防止することを目的としている。また、後者については、常温常湿環境下と低温低湿環境下でのトナーの帯電安定性について配慮されているものの、高温高湿環境下でのトナー帯電特性やフルカラー用トナーについては改善の余地を残している。
【0015】
特に、中間転写体上に転写したトナー画像を、更に転写材上に第2の転写を行うような多数回の転写工程を有するフルカラー画像形成装置とのマッチングについては考慮されていない。
【0016】
ところで、近年、電子写真画像の更なる高画質化や高解像度化の要求に伴って、トナーの小粒径化や高機能化が求められるなか、重合法によるトナーの製造方法が注目されている。重合法によるトナーの製造方法としては、例えば、特公昭36−10231号公報、特公昭51−14895号公報、特開昭53−17735号公報等で懸濁重合法によるトナーの製造方法が開示されている。上記の方法では、結着樹脂の原材料である重合性単量体中に着色剤、更に必要に応じて、重合開始剤、分散剤、架橋剤、荷電制御剤、離型剤、極性樹脂、その他の添加剤を溶解もしくは分散せしめて重合性単量体組成物を調製し、得られた重合性単量体組成物を予め調製しておいた分散安定剤を含有する水系分散媒体に投入し、撹拌装置の使用により微粒子状の粒子を造粒し、その後、この造粒粒子中の重合性単量体を重合させて粒子を固化し、濾過、洗浄、乾燥を施して所望の粒径と組成を有するトナー粒子を得ている。
【0017】
上記の重合法を利用したトナーの製造方法では、特性に優れた小粒径のトナーが容易に得られるばかりではなく、粉砕法によりトナーを製造した場合と異なり、混練や粉砕といった工程が不要であるため、製造に要するエネルギーの節約、製造時間の短縮、工程収率の向上等、コスト削減効果が大きい。
【0018】
しかしながら、水系分散媒体中に形成した造粒粒子中の重合性単量体を重合させる上記の製造方法では、造粒粒子と水系分散媒体との接触面積が大きいので、造粒粒子中から極性基を多く含有するトナーの構成材料が水系分散媒体中に溶出し、効果的にトナー粒子中に含有させることが困難になる場合があった。
【0019】
本発明者の検討によれば、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸を構成モノマーとして有する荷電制御樹脂を含有するトナーを上記の如き懸濁重合法によって製造した場合、該荷電制御樹脂と水系分散媒体の相互作用が大きいため、これらの化合物をトナー粒子中に効率よく含有させることが困難で、トナー粒子表面に偏在し、その結果としてトナーの帯電性が不均一になったり、温度や湿度の影響を受けて大きく変動を生じたり、更には画像形成装置とのマッチングにも問題を生じることがわかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、係る従来技術の問題点を解決した乾式トナーを提供することにある。
【0021】
即ち、本発明の目的は、環境安定性や帯電特性に優れ、高画質な画像を長期にわたって安定して実現し、且つ、電子写真プロセスに高度に適用を可能とする乾式トナーを提供することにある。本発明の目的は、色再現性に優れたフルカラー用の乾式トナーを提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂、ワックス成分、及びスルホン酸基を有する重合体を含有し、水系分散媒体中で懸濁重合法により製造されたトナー粒子と、無機微粒子と、ハイドロイト類化合物粉末を有することを特徴とする乾式トナーに関する。
【0023】
本発明者は、上記に鑑み、スルホン酸基を有する重合体を含有するトナー粒子と、無機微粒子と、ハイドロタルサイト類化合物粉末を共存させることにより、極めて良好な帯電特性を有し、画像形成装置との良好なマッチングを可能とするトナーを得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明の乾式トナーは、▲1▼少なくとも結着樹脂、着色剤、ワックス成分、及びスルホン酸基を有する重合体を含有するトナー粒子と、▲2▼無機微粒子と、▲3▼ハイドロタルサイト類化合物粉末を共存させることによって、帯電量や帯電速度を制御でき、トナーに望ましい帯電特性を付与すると共に画像形成装置とのマッチングを良好なものとすることが可能となり、過酷な使用条件下においても画像劣化の発生を軽減し、画像形成装置の性能を長期にわたって損なうことなく、高解像度で高精細な画像を入手し得ることを見出した。
【0026】
本発明者の知見によれば、スルホン酸基を有する重合体を含有したトナー粒子と共にハイドロタルサイト類化合物粉末を共存させることによってトナーの帯電特性と画像形成装置とのマッチングが著しく改善される。これらの理由については必ずしも明らかではないが、トナー粒子表面では、粒子表面に存在するスルホン酸基を有する重合体の荷電制御効果によって、トナー粒子への帯電付与と逆電荷保持の防止が行われると共に、ハイドロタルサイト類化合物粉末が、それ自身の有する受酸効果によってスルホン酸基を有する重合体と相互的に作用し、環境変動の影響を最小限のものとしながらトナー粒子に好ましい帯電特性を付与することができるので、トナー粒子に迅速で均一な帯電特性を付与することが可能となる。更に、無機微粒子を存在させることによりトナー粒子に望ましい粉体特性を付与することができるので、トナー粒子とハイドロタルサイト類化合物粉末の相互作用が一層強まると共に、トナー担持体上でのトナー層の形成状態が相乗的に良化し、電荷付与の授受が迅速に行われるので、例えば過酷な環境で使用する場合においても、画像劣化の程度を著しく軽減することが可能となった。
【0027】
上記の如き効果は、トナー粒子表面にスルホン酸基を有する重合体を容易に存在させることが可能である懸濁重合法を利用して製造されたトナーにおいて顕著である。また、この場合、該重合体がトナー粒子表面に偏在したとしても、ハイドロタルサイト類化合物粉末を共存させることで、トナーの帯電や画像形成装置とのマッチングに関わる問題を未然に防ぐことができる。
【0028】
本発明に用いられるスルホン酸基を有する重合体としては、側鎖にスルホン酸基を有する高分子型化合物等が挙げられ、特にスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有し、且つガラス転移温度(Tg)が40〜90℃のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる高分子型化合物を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい帯電特性を享受することができる。
【0029】
上記のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、下記一般式(2)で表せるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパン酸等が挙げられる。
【0030】
【化2】
Figure 0003782657
[上記一般式(2)中、R1は水素原子、又はメチル基を示し、R1とR3は、それぞれ水素原子、C1〜C10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、又はアルコキシ基を示し、nは1〜10の整数を示す。]
【0031】
本発明に係るスルホン酸基を有する重合体は、トナー粒子中に結着樹脂100質量部に対して2〜10質量部含有させることにより、トナー粒子が逆電荷を保持しにくくし、帯電状態を一層良好なものとすることができる。
【0032】
本発明に係るスルホン酸基を含有する重合体は、トナー製造時にアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する無機化合物を添加することによって、スルホン酸基の部分に塩構造が形成されるので、特に上記の如きスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを用いた高分子型化合物の場合、分子内でのスルホベタイン構造の生成が抑制され、水和を防止しながらハイドロタルサイト類化合物粉末との相互作用を確保することができるので、環境変動に対するトナーの帯電性が一層良好なものとなる。特に、懸濁重合法によってトナーを製造する際、後述するようなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含有する分散安定剤を用いると、スルホン酸基との塩構造を容易に形成することができるので好ましい。
【0033】
上記の如きスルボン酸基と塩構造を形成し得るアルカリ金属、もしくはアルカリ土類金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等が挙げられ、中でもカルシウムが好ましい。
【0034】
上記の如きスルホン酸基と塩構造を形成し得るアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量は、トナー粒子の質量基準で100〜20000ppmであることが好ましく、より好ましくは1000〜10000ppmで、特に好ましくは2000〜7500ppmである。
【0035】
アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の含有量が100ppm未満の場合には添加効果が発現されず、また、20000ppmを超える場合には該アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が関与する複塩や錯塩の存在量が過剰となるため、トナーの帯電性に悪影響を及ぼしたり、定着性や画像形成装置とのマッチングに問題を生じるようになり好ましくない。
【0036】
本発明において、トナー中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の定量には、蛍光X線分析やプラズマ発光分析(ICP)等の公知の分析方法を用いることができる。分析方法の一例としては、蛍光X線分析装置「SYSTEM3080」(理学電機工業(株)社製)を使用し、「JIS K0119」に記載されている蛍光X線分析通則により、トナー中のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を定量する方法が挙げられる。
【0037】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末としては、ハイドロタルサイト類化合物粉末が、下記一般式(1)で示される不定比化合物であることが好ましい。
【0038】
【化3】
Figure 0003782657
[式中、M1〜Mjはそれぞれ異なる2価の金属イオン、L1〜Lkはそれぞれ異なる3価の金属イオン、x1〜xkとy1〜yjは金属イオンのモル比率、Aはn価のアニオンを示し、
X=x1+x2+…+xk、1−X=y1+y2+…+yjであって、0<X≦0.5,m≧0を満足し、jとkはそれぞれ1以上の整数を表す。]
【0039】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末の上記一般式(1)のM1〜Mjは、それぞれ異なった2価の金属イオンであり、具体的には、Mg、Zn、Ca、Ba、Ni、Sr、Cu及びFeからなる群より適宜に選択できる。これらの中でも、Mgが好ましく、特にMg以外の金属イオンの含有率(モル分率)が、0.001≦y2+…+yj≦0.05の関係を満足することが好ましい。
【0040】
また、上記一般式(1)のL1〜Lkは、それぞれ異なった3価の金属イオンであり、具体的には、Al、B、Ga、Fe、Co及びInからなる群より適宜に選択できる。これらの中でも、Alが好ましく、特にAl以外の金属イオンの含有率(モル分率)が、0.0003≦x2+…+xk≦0.02の関係を満足することが好ましい。
【0041】
更に、上記の如き2価の金属イオンや3価の金属イオンは、それぞれ2種類以上存在させることが好ましい。
【0042】
理由は不明であるが、本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末の組成を上記の如く調整することによって、トナーの帯電特性が更に改善される。
【0043】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末の上記一般式(1)のA(n価のアニオン)としては、CO3 2-、OH-、Cl-、I-、F-、Br-、SO4 -、HCO3 -、CH3COO-、NO3 -、サリチル酸イオン-、クエン酸イオン3-、酒石酸イオン2-、(OOC−COO)2-、[Fe(CN)64-が例示され、単独、或いは複数種存在していてもかまわない。
【0044】
また、本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末の上記一般式(1)において、m≧0であるが、帯電性の安定化の観点から、その分子内に予め結晶水を有していることが好ましく、0.1<m<0.6であることがより好ましい。
【0045】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末の粉体性状としては、BET法で測定した窒素吸着比表面積が1.0m2/g以上、より好ましくは5.0〜100m2/gであって、且つ平均二次粒径を10μm以下とすることによって、スルホン酸基を有する重合体との相互作用を高めることが可能であり、スルホン酸基を有する重合体がトナー粒子表面に偏在するような状態においてもその影響を最小限に留めることができる。また、画像形成時に受けるトナー粒子表面の劣化を防止し、特に多数回の転写工程を有するフルカラー画像形成装置に用いた際、良好なトナー特性を維持する上で好ましい。更には、ハイドロタルサイト類化合物粉末が有する適度な研磨効果によって、トナー粒子が触れる部分のクリーニングが可能であり、画像形成装置を良好な状態に維持することができる。この際、該ハイドロタルサイト類化合物粉末は多孔質の構造を有する軟質の粒子であるため、画像形成装置には傷や削れを生じない。また、無機微粉体を共存させると分散性を向上させる効果を発揮するので、上記の如き効果が一層良好なものとなる。
【0046】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末のBET法で測定した窒素吸着比表面積の測定には、例えば、比表面積測定装置「オートソーブ1」(湯浅アイオニクス社製)を用い、BET多点法により測定される。また、該ハイドロタルサイト類化合物粉末の平均二次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)で拡大写真を撮影した後、例えば、画像処理装置「LuzexIII」(ニレコ社製)を用いることによって計測される。
【0047】
本発明に係るハイドロタルサイト類化合物粉末は、表面処理剤によって疎水化処理が施されていることがトナーの帯電安定性や耐久性を図る上でも好ましい。表面処理剤としては、高級脂肪酸類、カップリング剤類、エステル類、シリコーンオイルのオイル類の使用が可能である。これらの中でも高級脂肪酸類が好ましく用いられ、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸等が例示される。
【0048】
上記の如き表面処理剤によるハイドロタルサイト類化合物粉末の表面処理方法としては、従来公知の方法を利用することができ、例えば、表面処理剤を溶剤に溶解混合したり、加熱溶解して液状にした後に未処理のハイドロタルサイト類化合物粉末と湿式混合する方法、また、微粉末状の表面処理剤とハイドロタルサイト類化合物粉末を機械的に乾式混合する方法が挙げられ、表面処理後には、必要に応じ、例えば、洗浄、脱水、乾燥、粉砕、分級等の手段を適宜に選択し、表面処理を施したハイドロタルサイト類化合物粉末を得ることができる。
【0049】
ハイドロタルサイト類化合物粉末のトナー粒子に対する添加量としては、トナー粒子100質量部に対して、0.03〜3質量部、より好ましくは0.1〜1質量部である。添加量が0.03質量部未満となると、スルホン酸基を有する重合体や無機微粉体との相互作用が得られず、添加効果が不十分となる。また、3質量部を超える場合には、定着性や画像形成装置とのマッチングに新たな問題を生じる。
【0050】
下記の表1に代表的なハイドロタルサイト類化合物粉末の具体例を示す。
【0051】
【表1】
Figure 0003782657
【0052】
本発明のトナーは無機微粉体を添加することによって、現像性、転写性、帯電安定性、流動性及び耐久性が向上する。該無機微粉体としては公知のものが使用可能であるが、特にシリカ,アルミナ,チタニアあるいはその複酸化物の中から選ばれることが好ましい。更には、シリカであることがより好ましい。例えば、かかるシリカは硅素ハロゲン化物やアルコキシドの蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ及びアルコキシド,水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能であるが、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O,SO3 2-等の製造残渣の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム,塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物を硅素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能でありそれらも包含する。
【0053】
本発明に用いられる無機微粉体は、BET法で測定した窒素吸着表面積が30m2/g以上、特に50〜400m2/gの範囲のものが良好な結果を与え、トナー100質量部に対して0.3〜8質量部使用され、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0054】
上記の如き比表面積が制御された無機微粉末をトナー表面近傍に存在するスルホン酸基を有する重合体と共存させることにより、トナー粒子への水分吸着量の制御がなされ、摩擦帯電量や帯電速度の制御効果が増大する。また、スルホン酸基を有する重合体によるトナー担持体等への汚染に起因する画像不良を未然に防止する。更に、トナーに適度な流動性が付与されるので、トナーの均一帯電性が相乗的に良化し、連続で多数枚プリントアウトを繰り返しても上記した優れた効果が維持される。
【0055】
比表面積が30m2/g未満の場合には、トナーに適度な流動性を付与することが困難であり、また、スルホン酸基を有する重合体に起因するトナー担時体の汚染への防止効果が小さくなってしまう。比表面積が400m2/gを超える場合には、連続プリントアウト時に該無機微粉末がトナー粒子表面に埋め込まれるために、トナーの流動性が低下する場合がある。
【0056】
また、無機微粉末の添加量が0.3質量部未満の場合には、添加効果が発現されず、また、8質量部を超えると、トナーの帯電性や定着性に問題を生じるだけでなく、遊離した無機微粉体により画像形成装置とのマッチングが著しく悪化する。
【0057】
また、本発明に用いられる無機微粉体は、必要に応じ、疎水化,帯電性制御等の目的でシリコーンワニス,各種変性シリコーンワニス,シリコーンオイル,各種変性シリコーンオイル,シランカップリング剤,官能基を有するシランカップリング剤,その他有機硅素化合物,有機チタン化合物等の処理剤で、あるいは、種々の処理剤で併用して処理されていることも可能であり好ましい。
【0058】
本発明に係わる無機微粉体の窒素吸着比表面積の測定には、前述の如きBET多点法により測定される。
【0059】
高い帯電量を維持し、低消費量及び高転写率を達成するためには、無機微粉体は少なくともシリコーンオイルで処理されることがさらに好ましい。
【0060】
本発明のトナーにおいては、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばテフロン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤、あるいは例えばカーボンブラック粉末、酸化亜鉛粉末、酸化スズ粉末等の導電性付与剤、また、逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0061】
本発明のトナーは、そのまま一成分系現像剤として或いは、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【0062】
二成分系現像剤として用いる場合、例えば、トナーと混合させる磁性キャリアとしては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム等より選ばれる元素から、単独又は複合フェライト状態で構成される。この際に使用する磁性キャリアの形状は、球状、扁平、不定形等のものがあり、更に、磁性キャリアの表面状態の微細構造(例えば、表面凹凸性)を適宜に制御したものを用いることもできる。また、表面を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアも好適に用いることができる。使用するキャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、これらのキャリアとトナーを混合して二成分系現像剤を調製する場合の現像剤中のトナー濃度は、好ましくは2〜15質量%程度である。
【0063】
本発明に係るトナーは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、該トナーの円相当個数平均径D1(μm)が2〜10μmであり、且つ、該トナーの平均円形度が0.950〜0.995で、円形度標準偏差が0.040未満となるようにトナーの粒子形状を精密に制御することにより、現像性と転写性をバランス良く改善することができる。
【0064】
即ち、トナーの円相当個数平均径D1(μm)を2〜10μm、より好ましくは3〜6μmと小粒径化することにより、画像の輪郭部分、特に文字画像やラインパターンの現像での再現性が良好なものとなる。
【0065】
一般にトナー粒子を小粒径化すると必然的に微小粒子のトナーの存在率が高くなるため、トナーを均一に帯電させることが困難となり、画像カブリを生じるばかりか、画像形成装置とのマッチングにも支障を招いていた。
【0066】
しかしながら、本発明に係るトナーは、トナー粒子の円形度頻度分布の平均円形度を0.950〜0.995、好ましくは0.965〜0.995、より好ましくは0.975〜0.990とすることにより、従来では困難であった小粒径を呈するトナーの転写性が大幅に改善されると共に低電位潜像に対する現像能力が格段に向上する。特に上記の如き傾向は、デジタル方式の微小スポット潜像を現像する場合や中間転写体を用い多数回の転写を行うフルカラーの画像形成の際に非常に有効で、画像形成装置とのマッチングも良好なものとなる。また、現像兼クリーニング方式を用いた際のトナーの回収性も向上する。
【0067】
更に、本発明のトナーは、トナー粒子の円形度頻度分布の円形度標準偏差を0.040未満、好ましくは0.035未満、より好ましくは0.015以上0.030未満とすることにより、トナー担持体上にトナーの薄層を形成する際に、トナー帯電量を適切なものとすることが可能となり、前述の如き問題を大幅に改善することができる。
【0068】
また、円形度頻度分布において、円形度が0.950未満のトナー粒子を15個数%以下とすることによって、トナー担持体上へトナーの薄層形成状態が一層改善されるので、画像形成も良好なものとなる。
【0069】
ところで、一般に上記のような特定の粒度分布や形状分布を呈するトナーを用いた場合、トナー粒子の比表面積が小さいため、そのトナー粒子を構成する材料の物性がトナーの特性に大きく反映される場合が多いが、本発明のトナーにおいては、トナー粒子中にスルホン酸基を有する重合体を含有させ、且つその粒子表面に無機微粉体とハイドロタルサイト類化合物粉末を共存させることによって、トナー粒子への電荷付与を迅速に、しかも均一に行うことができるので、トナーに望ましい特性を付与することができる。
【0070】
本発明におけるトナーの円相当径、円形度及びそれらの頻度分布とは、トナー粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、本発明ではフロー式粒子像測定装置「FPIA−1000型」(東亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
【0071】
【数1】
Figure 0003782657
【0072】
ここで、「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積であり、「粒子投影像の周囲長」とは該トナー粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。
【0073】
本発明における円形度はトナーの凹凸の度合いを示す指標であり、トナーが完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
【0074】
本発明において、トナーの個数基準の粒径頻度分布の平均値を意味する円相当個数平均径D1(μm)と粒径標準偏差SDdは、粒度分布の分割点iでの粒径(中心値)をdi、頻度をfiとすると次式から算出される。
【0075】
【数2】
Figure 0003782657
【0076】
【数3】
Figure 0003782657
【0077】
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水10mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02gを加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として5φのチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を用い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならない様に適宜冷却する。
【0078】
トナーの形状測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、トナーの円相当径や円形度頻度分布等を求める。
【0079】
本発明に係るワックス成分は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いたトナーの断層面観察において、
(1)フロー式粒子像測定装置で測定されるトナーの重量基準の円相当重量平均径D4(μm)に対し、0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たす長径R(μm)を呈するトナー粒子の断層面を20箇所選び出し、
(2)選び出したトナー粒子の断層面中に存在するワックス成分に起因する相分離構造のうち、最も大きいものの長径rをそれぞれ計測し、
(3)求められたr/Rの相加平均値(r/R)stが、0.05≦(r/R)st≦0.95を満たすように、該ワックス成分が結着樹脂中に実質的に球状及び/又は紡錘形の島状に分散されている
ことが好ましい。
【0080】
上記のr/Rの相加平均値(r/R)stが、0.05≦(r/R)st≦0.95を満たす様にワックス成分を分散させることにより、スルホン酸基を有する重合体を効率良くトナー表面に局在化させることができるので、トナーの帯電性の安定化に寄与し、これらをトナー粒子表面近傍に固定化した効果を持続させることができる。また、ワックス成分をトナー粒子中に内包化させることで、トナー表面の劣化や画像形成装置への汚染等を防止することができる。
【0081】
更に、r/Rの相加平均値(r/R)stが、0.25≦(r/R)st≦0.90を満たす分散状態にある場合、良好な帯電性が維持され、ドット再現に優れたトナー画像を長期にわたって形成し得ることが可能となるので好ましい。
【0082】
尚、本発明に係るトナーは、上記の如くトナーの粒子形状を制御することによりトナーの比表面積は減少していくので、トナー中のスルホン酸基を有する重合体の含有状態やワックス成分の含有状態を特定する効果が著しいものとなる。
【0083】
トナーの断層面を観察する方法としては、用いるワックス成分とその外周を構成する結着樹脂との結晶相と非晶相の微細構造の相違を利用して、重金属により一方の成分の電子密度を高めて材料間のコントラストを付ける電子染色法を用いることが好ましい。具体的には、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を十分に分散させた後、40℃の雰囲気温度の中で2日間硬化させ、得られた硬化物を四酸化ルテニウム(RuO4)、また、必要により四酸化オスミウム(OsO4)を併用して電子染色を施した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームを用いて薄片状のサンプルを切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてトナーの断面層形態を観察する。
【0084】
代表的な一例を図1の(a)と(b)に示す。後述の実施例で得られたトナー粒子は、ワックス成分が結着樹脂で内包化されていることが観察された。
【0085】
本発明において使用し得るワックス成分としては、具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油系ワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス及びそれらの誘導体等が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコール等のアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸或いはその化合物;酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併用して用いることができる。
【0086】
これらの中でも、ポリオレフィン、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス、石油系ワックス、高級アルコール、若しくは、高級エステルを使用した場合に、現像性や転写性の改善効果が更に高くなる。なお、これらのワックス成分には、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。
【0087】
これらのワックス成分は、結着樹脂100質量部に対して1〜30質量部使用するのが好ましい。
【0088】
本発明に用いられるワックス成分としては、「ASTM D3418−82」に準じて測定されたDSC曲線における主体吸熱ピーク温度(融点)が30〜120℃、より好ましくは40〜90℃の範囲にある化合物が好ましい。
【0089】
上記の如き熱特性を呈するワックス成分を用いることにより、得られるトナーの良好な定着性はもとより、該ワックス成分による離型効果が効率良く発現され、十分な定着領域が確保されると共に、従来から知られるワックス成分による現像性、耐ブロッキング性や画像形成装置への悪影響を排除することができる。特に、トナーの粒子形状が球形化するに従い、トナーの比表面積は減少していくので、ワックス成分の熱特性と分散状態を制御することは非常に効果的なものとなる。
【0090】
ワックス成分の主体吸熱ピーク温度(融点)の測定には、例えば「DSC−7」(パーキンエルマー社製)を用いる。装置検出部の温度補正にはイリジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはイリジウムの融解熱を用いる。測定に際しては、測定サンプルをアルミニウム製パンに入れたものと、対照用にアルミニウム製パンのみのもの(空パン)をセットし、20〜180℃の測定領域を昇温速度10℃/minで昇温した時に得られるDSC曲線から主体吸熱ピーク温度(融点)が求められる。なお、ワックス成分のみを測定する場合には、測定時と同一条件で昇温−降温を行って前履歴を取り除いた後に測定を開始する。また、トナー中に含まれた状態のワックス成分を測定する場合には、前履歴を取り除く操作を行わず、そのままの状態で測定を行なう。
【0091】
本発明に用いられるトナーの結着樹脂としては、一般的に用いられているスチレン−(メタ)アクリル共重合体,ポリエステル樹脂,エポキシ樹脂,スチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。重合法により直接トナー粒子を得る方法においては、それらを形成するための単量体が用いられる。具体的にはスチレン;o−(m−,p−)メチルスチレン,m−(p−)エチルスチレンの如きスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸ステアリル,(メタ)アクリル酸ベヘニル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルの如き(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン,イソプレン,シクロヘキセン,(メタ)アクリロニトリル,アクリル酸アミドの如きエン系単量体が好ましく用いられる。これらは、単独、または、一般的には出版物ポリマーハンドブック第2版III−P139〜192(John Wiley&Sons社製)に記載の理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃未満の場合にはトナーの保存安定性や耐久安定性の面から問題が生じやすく、一方75℃を超える場合はトナーの定着点の上昇をもたらす。
【0092】
さらに、本発明においては、トナー粒子の機械的強度を高めるために結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることが好ましい。
【0093】
本発明のトナーに用いられる架橋剤としては、2官能の架橋剤として、ジビニルベンゼン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、 ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び上記のジアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0094】
多官能の架橋剤としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びそのメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシ、ポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
【0095】
これらの架橋剤は、他のビニル系単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部であることが良い。
【0096】
本発明において、上述の結着樹脂と共にポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂等の極性を有する樹脂(以下、「極性樹脂」と称す)を併用することができる。トナー中に極性樹脂を添加することによって、トナー中のスルホン酸基を有する重合体の含有状態を上述の如き特定の状態に制御することが容易となる。
【0097】
例えば、後述する懸濁重合法等により直接トナーを製造する場合には、分散工程から重合工程に至る重合反応時に上記の如き極性樹脂を添加すると、トナー粒子となる重合性単量体組成物と水系分散媒体の呈する極性のバランスに応じて、添加した極性樹脂がトナー粒子の表面に薄層を形成したり、トナー粒子表面から中心に向け傾斜性をもって存在するように制御することができる。この時、スルホン酸基を有する重合体と相互作用を有するような極性樹脂を用いることによって、トナー中へのスルホン酸基を有する重合体の存在状態を望ましい形態にすることが可能である。特に酸価が1〜20mgKOH/gを呈する極性樹脂を用いるとスルホン酸基を有する重合体の存在状態を制御することが容易となる。
【0098】
上記極性樹脂の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.5〜25質量部使用するのが好ましく、より好ましくは1〜15質量部である。0.5質量部未満ではトナー粒子中での極性樹脂の存在状態が不均一となり、逆に25質量部を超えるとトナー粒子表面に形成される極性樹脂の薄層が厚くなるため、何れの場合もスルホン酸基を有する重合体の含有状態を制御するのが困難になり、その機能を十分に発現することができない。
【0099】
係る極性樹脂として用いられる代表的なポリエステル樹脂の組成は以下の通りである。
【0100】
ポリエステル樹脂のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(ア)式で表わされるビスフェノール誘導体及び下記(イ)式で示されるジオール類が挙げられる。
【0101】
【化4】
Figure 0003782657
【0102】
【化5】
Figure 0003782657
【0103】
また、極性樹脂として反応性ポリエステル樹脂やポリカーボネート系樹脂を用いることも本発明の好ましい実施形態である。これらの極性樹脂を用いるとトナーの帯電特性が向上し、画像カブリや飛び散りが改善されると共に、ドット再現性に優れる高品位な画像を得ることができる。また、トナー粒子に適度な機械的強度を付与することが可能となり、画像形成装置から受けるトナー劣化の影響を最小限にとどめ、多数枚プリントアウトに対する耐久性や後述する画像形成装置とのマッチングも向上する。更には、前述の如きトナーの形状分布を達成するためのトナーの球形化処理や重合法によってトナーを直接製造する際の乾燥処理等のトナー製造工程から受ける影響を最小限とすることができる。また、極性樹脂は2種類以上を組み合わせて用いることも可能で、それ自身の有する帯電性を利用することもできる。
【0104】
本発明に係る反応性ポリエステル樹脂とは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、コハク酸、セバシン酸、チオジグリコール酸、ジグリコール酸、マロン酸、グルタン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸等の多塩基酸と;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類とを縮合重合したものであって、得られた縮合重合体の主鎖又は側鎖に反応性基を有するものである。反応性基とは、カルボン酸(又はその塩)、スルホン酸(又はその塩)、エチレンイミノ酸、エポキシ基、イソシアネート基、二重結合、酸無水物、ハロゲン原子等様々なものが例示でき、この反応性ポリエステル樹脂をお互いに反応させて、あるいは多官能性の架橋剤(例えば多価アルコール、多塩基酸など)と反応させて、さらに反応性ポリエステルとビニル系単量体を反応(例えばエステル化、共重合など)させてTHF不溶分を得ることができる。例えば重合法によりトナーを得る場合には、反応性ポリエステル樹脂として不飽和ポリエステル樹脂を用い、これとビニル系単量体(必要に応じてジビニルベンゼン等の架橋剤も含む)を共重合する。この場合には、極性を有する不飽和ポリエステル樹脂は、重合の進行と共にトナー表面付近に移行し、トナー粒子の表面に薄層を形成するため、耐ブロッキング性や耐オフセット性が特に優れたトナーを得ることが可能である。
【0105】
本発明で使用できる反応性ポリエステル樹脂は、前述の如き反応性基を含有していればどんなものでも使用可能であるが、あまり分子量が低すぎると架橋反応にあずからないポリエステル樹脂がトナー表面に存在してしまうことがあり、耐ブロッキング性が低下することがある。また、あまり高分子量であると、例えば重合法によりトナーを得る場合には、ビニル系単量体への該反応性ポリエステル樹脂の溶解が困難となるため、製造が困難となる。従って、反応性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、3,000〜100,000程度が特に性能の優れたトナーを得るのに好適である。
【0106】
一方、本発明に係るポリカーボネート系樹脂としては、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を分子構造中に有するポリカーボネート系樹脂が好ましく用いられる。
【0107】
【化6】
Figure 0003782657
〔式中、Rは有機基を示す。〕
【0108】
上記一般式(I)は様々な構造のものがあるが、例えば2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法又は溶融法で反応せしめて製造されるあらゆる公知のポリカーボネートを使用することができ、一例を挙げれば下記一般式(II)
【0109】
【化7】
Figure 0003782657
〔式中、R2は、水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基であり、このR2が複数の場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよく、mは、0〜4の数である。Zは、単結合、脂肪族炭化水素基、芳香族置換基、−S−、−SO−、−SO2−、−O−、−CO−結合で表わされる結合などを示す。〕
で表わされる構造の繰返し単位を有する重合体などが挙げられる。
【0110】
このポリカーボネート樹脂は、様々なものを充当することができるが、通常は一般式(III)〜(V)
【0111】
【化8】
Figure 0003782657
【0112】
【化9】
Figure 0003782657
【0113】
【化10】
Figure 0003782657
〔式中、R2、m及びZは、前記と同じである。〕
で表わされる二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物などのカーボネート前駆体とを反応させることによって容易に製造することができる。すなわち、例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造される。
【0114】
本発明において用いられるポリカーボネート系樹脂の分子量は特に制限されないが、GPCにおいて測定したピーク分子量が1000〜500000の範囲にあるものが好ましく、さらに好ましくは2000〜100000である。ピーク分子量が1000よりも低いと帯電特性に悪影響がでる場合があり、500000よりも高いと溶融粘度が高くなりすぎ、定着性に問題を生じる場合がある。また、本発明において使用されるポリカーボネート系樹脂を製造するに際し、適当な分子量調節剤、粘弾性改善のための分岐剤、反応を促進するための触媒等必要に応じて使用することができる。
【0115】
また、上記の如き極性樹脂はそれぞれ一種類の重合体に限定されるわけではなく、例えば反応性ポリエステル樹脂を同時に二種類以上用いることや、ビニル系重合体を二種類以上用いることが可能であり、さらに全く種類の異なる重合体、例えば反応性の無いポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリアルキルビニルケトン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリルエステル、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリウレタン等様々な重合体を必要に応じてバインダー樹脂に添加することができる。
【0116】
一般に、上記の如き極性樹脂によってトナー粒子の表面上に形成された薄層は、前記の如き透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断層面観察において、四酸化ルテニウム(RuO4)及び/又は四酸化オスミウム(OsO4)による電子染色法によって識別される。この時、トナー粒子の表面上に形成された薄層のトナー内部方向には結着樹脂とワックス成分が存在し、該ワックス成分が結着樹脂中に実質的に球状及び/又は紡錘形の島状に分散されている様子が同時に観察される。代表的な例を図1の(c)及び(d)に示す。なお、図1の(c)の如く、薄層がトナー粒子の表面を実質的に均一に覆っている状態を連続層と定義し、図1の(d)の如く、薄層がトナー粒子の表面を部分的に覆っている状態を不連続層と定義する。
【0117】
本発明に用いられる着色剤は、以下に示すイエロー着色剤,マゼンタ着色剤及びシアン着色剤が挙げられ、黒色着色剤としてカーボンブラック,磁性体または以下に示すイエロー着色剤/マゼンタ着色剤/シアン着色剤を混合して黒色に調色されたものが利用される。
【0118】
本発明に用いられるカーボンブラックは、窒素吸着比表面積が100m2/g以下であることが好ましく、窒素吸着比表面積が100m2/gよりも大きくなるとトナー中への分散が困難となり、トナーの帯電性や着色力に問題を生じる。また、重合法によりトナーを製造する際にはモノマーの重合性にも影響を及ぼすため使用に適さない。
【0119】
カーボンブラックのBET比表面積の測定は、「ASTM D3037−78」に準じて行う。
【0120】
本発明に用いられるカーボンブラックのDBP吸油量は40〜150ml/100gであることが望ましい。
【0121】
DBP吸油量が40ml/100g未満のストラクチャーの短いカーボンブラックではトナーの帯電量が低くなりすぎ易く、150ml/100gを超えると強固な長ストラクチャーのためカーボンブラックの微細な分散が得られにくい。
【0122】
DBP吸油量の測定は、「ASTM D2414−79」に準拠して行う。
【0123】
本発明に用いられるイエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。
【0124】
本発明に用いられるマゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等を用いることが特に好ましい。
【0125】
本発明に用いられるシアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が特に好適である。
【0126】
これらの着色剤は、単独又は混合して使用することができ、更には、固溶体の状態で用いることもできる。また、トナー中に含有させる着色剤の添加量としては、着色剤として磁性体を用いた場合には、結着樹脂100質量部に対して40〜150質量部使用することが好ましく、その他の着色剤を用いた場合には、重合性ビニル単量体100質量部に対して5〜20質量部使用することが好ましい。
【0127】
また、本発明においては、磁性材料を含有せしめて磁性トナーとすることもできる。この場合、磁性材料は着色剤の役割を兼ねることもできる。本発明で使用できる磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の如き酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、或いはこれらの金属と、アルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウム等の金属との合金及びその混合物が挙げられる。
【0128】
更に、本発明において用いるこれらの磁性体としては、より好ましくは、表面改質された磁性体を用いる。特に、重合法によりトナーを製造する場合には重合阻害のない表面改質剤により疎水化処理を施したものを用いることが好ましい。このような表面改質剤としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤等を挙げることができる。
【0129】
更に、これらの磁性体としては、平均粒径がlμm以下、好ましくは0.1〜1μmのものを用いるとよい。磁性体としては、795.8kA/m(10kエスルテッド)印加での磁気特性として、保磁力(Hc)が1.59〜23.9Am2/g(20乃至300エルステッド)、飽和磁化(σS)が50〜200Am2/g、残留磁化(σr)が2〜20Am2/gのものを用いることが好ましい。
【0130】
本発明には、トナーの帯電速度や帯電量を微調整することを目的として、前記のスルホン酸を含有する重合体と共に公知の荷電制御剤を併用することができる。この時、トナー粒子を直接重合法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系分散媒体への可溶化物の無い荷電制御剤が好ましい。具体的化合物としては、ネガ系荷電制御剤としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸の如きカルボン酸の金属化合物;スルホン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリークスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩;該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0131】
しかしながら、本発明において荷電制御剤の添加は必須ではなく、二成分現像方法を用いた場合においては、キャリヤとの摩擦帯電を利用し、また、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法を用いた場合においては、ブレード部材やスリーブ部材との摩擦帯電を積極的に利用することでトナー粒子中に必ずしも荷電制御剤を含む必要はない。
【0132】
本発明に係るトナーは、そのまま一成分系現像剤として或いは、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【0133】
二成分系現像剤として用いる場合、例えば、トナーと混合させる磁性キャリアとしては、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム等より選ばれる元素から、単独又は複合フェライト状態で構成される。この際に使用する磁性キャリアの形状は、球状、扁平、不定形等のものがあり、更に、磁性キャリアの表面状態の微細構造(例えば、表面凹凸性)を適宜に制御したものを用いることもできる。また、表面を樹脂で被覆した樹脂被覆キャリアも好適に用いることができる。使用するキャリアの平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、これらのキャリアとトナーを混合して二成分系現像剤を調製する場合の現像剤中のトナー濃度は、好ましくは2〜15質量%程度である。
【0134】
本発明に係るトナーを製造する方法としては、結着樹脂、着色剤、ワックス成分等を加圧ニーダー等により溶融混練した後、冷却した混練物を所望のトナー粒径に微粉砕し、更に微粉砕物を分級して粒度分布を調整してトナーにする粉砕法;前述の如き懸濁重合法を用いて直接トナーを製造する方法;特公昭56−13945号公報等に記載のディスク又は多流体ノズルを用いて溶融混練物を空気中に霧化して球状トナーを製造する方法;及びソープフリー重合法に代表される乳化重合法等、公知の方法を用いることが可能であるが、重合性ビニル系単量体の重合反応時の水系分散媒体中のpHを制御しながら懸濁重合法によりスルホン酸基を有する重合体の含有状態を特定したトナーを製造することが好ましい。
【0135】
本発明に係るトナーの製造方法において、水系分散媒体を調製する場合に使用する分散剤としては、公知の無機系及び有機系の分散剤を用いることができる。具体的には、無機系の分散剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等を用いることができる。
【0136】
また、市販のノニオン、アニオン、カチオン型の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等を用いることができる。
【0137】
本発明に係るトナーの製造方法においては、無機系の難水溶性の分散剤が好ましく、しかも酸に可溶性である難水溶性無機分散剤を用いるとよい。また、本発明においては、難水溶性無機分散剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散剤が重合性ビニル系単量体100質量部に対して、0.2〜2.0質量部となるような割合で使用することが好ましい。また、本発明においては、重合性単量体組成物100質量部に対して300〜3,000質量部の水を用いて水系分散媒体を調製することが好ましい。
【0138】
本発明において、上記したような難水溶性無機分散剤が分散された水系分散媒体を調製する場合には、市販の分散剤をそのまま用いて分散させてもよいが、細かい均一な粒度を有する分散剤粒子を得るために、水等の液媒体中で、高速撹拌下、上記したような難水溶性無機分散剤を生成させて調製してもよい。例えば、リン酸三カルシウムを分散剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸三カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散剤を得ることができる。
【0139】
上記したような構成を有するトナーの製造方法によれば、従来、荷電制御剤が含有されたトナーにみられていた高湿下での摩擦帯電量の低下、及び低湿下での摩擦帯電速度の低下が抑制され、しかもトナー担持体の汚染の発生を有効に抑制し得るトナーが容易に得られる。
【0140】
次に、本発明に係わるトナーの製造方法において使用する重合性単量体組成物について説明する。該重合性単量体組成物は、少なくとも、重合性ビニル系単量体、着色剤、荷電制御剤、及び、先に説明したスルホン酸基を有する重合体、ワックス成分、更に必要に応じて各種の添加物を溶解、混合して調製される。
【0141】
この際に用いる重合性ビニル系単量体としては、前記に挙げたような重合性単量体を理論ガラス転移温度(Tg)が40〜75℃を示すように適宜混合して用いられる。特に、Tgが高い場合には、フルカラー画像を形成するためのカラートナーを製造した場合において、各色トナーの定着時の混色性が低下し、色再現性に乏しく、更にOHP画像の透明性が低下するため好ましくない。
【0142】
また、本発明に係るトナーの製造方法に用いる重合開始剤としては、具体的には、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1,−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルの如きアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドの如き過酸化物系重合開始剤が用いられる。これらの重合開始剤の使用量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には、重合性ビニル系単量体100質量部に対して5〜20質量部用いられる。重合開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減期温度を参考に、単独又は混合して使用される。
【0143】
重合性単量体組成物中には、重合度を制御するため、公知の架橋剤、連鎖移動剤及び重合禁止剤等を更に添加し用いてもよい。これらの添加剤は、前記重合性単量体組成物中に予め添加しておくこともできるし、また、必要に応じて、重合反応の途中で適宜に添加することもできる。
【0144】
【実施例】
以下、具体的実施例によって本発明を説明するが、本発明はなんらこれらに限定されるものではない。
【0145】
実施例に使用されるスルホン酸基を有する重合体の具体例を表2に示す。
【0146】
【表2】
Figure 0003782657
【0147】
また、実施例に使用される無機微粉体の具体例を表3に示す。
【0148】
【表3】
Figure 0003782657
【0149】
(トナーの製造例1)
高速撹拌装置クレアミックス(エムテクニック社製)を具備した2リットル用4つ口フラスコ中に、イオン交換水700質量部と0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液800質量部を投入し、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに設定し、65℃に加温せしめた。ここに1.0mol/リットル−CaCl2水溶液70質量部を添加し、微小な難水溶性分散安定剤Ca3(PO42を含む水系分散媒体を調製した。
【0150】
一方、分散質として、
・スチレン単量体 83質量部
・2−ブチルアクリレート単量体 17質量部
・ジビニルベンゼン単量体 0.2質量部
・カーボンブラック(粒子径=35nm) 6質量部
・スルホン酸基を有する重合体(R−3) 3質量部
・極性樹脂(ポリエステル樹脂、酸価=10mgKOH/g) 1質量部
・エステルワックス(融点=65℃) 10質量部
からなる混合物をアトライター(三井金属社製)を用い3時間分散させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部を添加し、重合性単量体組成物を調製した。
【0151】
次に、前記水系分散媒体中に該重合性単量体組成物を投入し、内温65℃のN2雰囲気下で、高速撹拌装置の回転数を15000rpmに維持しつつ、15分間撹拌し、該重合性単量体組成物を造粒した。その後、撹拌装置をパドル撹拌羽根を具備したものに換え、200rpmで撹拌しながら同温度に保持し、重合性ビニル系単量体の重合転化率がほぼ100%になったところで重合反応を完了した。
【0152】
重合終了後、加熱減圧下で残存モノマーを留去し、次いで、冷却後に希塩酸を添加して難水溶性分散剤を溶解せしめた。更に水洗浄を数回繰り返した後、スプレードライヤーと円錘型乾燥機を用いて、球形化と乾燥処理を施し、重合体粒子(A)を得た。
【0153】
上記重合体粒子(A)100質量部と無機微粉体(A)1.6質量部とハイドロタルサイト類化合物粉末(A)0.3質量部をヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して、トナー(A)とした。
【0154】
該トナー(A)の円相当個数平均径は4.9μmで、円形度頻度分布における平均円形度は0.985、円形度標準偏差は0.019で、円形度0.95未満のトナー粒子数は2.5個数%であった。
【0155】
更に、TEMによってトナー(A)の断層面観察を行ったところ、図1(a)の模式図のようにトナー粒子の内部方向には結着樹脂とワックス成分が存在し、前記(r/R)stの値は0.36であった。
【0156】
(トナーの製造例2〜8)
着色剤、スルホン酸基を有する重合体、及びワックス成分の種類と添加量を変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして重合体粒子(B)〜(H)を得た後、無機微粉体とハイドロタルサイト類化合物粉末の種類と添加量を変更しながらトナー(B)〜(H)を調製した。
【0157】
(比較用トナーの製造例1)
スルホン酸基を有する重合体とワックス成分の種類と添加量を変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(a)を得た後、ハイドロタルサイト類化合物粉末は未添加とし、無機微粉体(B)1.4質量部のみをヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して比較用トナー(a)を調製した。
【0158】
(比較用トナーの製造例2)
スルホン酸基を有する重合体に代えて、カリックスアレーン3質量部を用いると共に着色剤とワックス成分の種類と添加量を変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(b)を得た後、無機微粉体(B)1.4質量部とハイドロタルサイト類化合物粉末(H)0.5質量部をヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して比較用トナー(b)を調製した。
【0159】
(比較用トナーの製造例3、4)
スルホン酸基を有する重合体とワックス成分の種類と添加量を変更する以外は、前記トナーの製造例1と同様にして比較用重合体粒子(c)と(d)を得た後、ハイドロタルサイト類化合物粉末は未添加とし、無機微粉体(B)1.2質量部と無機微粉体(C)0.3質量部をヘンシェルミキサー(三井金属社製)で乾式混合して比較用トナー(c)と(d)を調製した。
【0160】
上記トナーの製造例と比較用トナーの製造例で用いた着色剤、スルホン酸基を有する重合体、及びワックス成分の種類と添加量、及び、乾式混合に用いた無機微粒子とハイドロタルサイト類化合物粉末の種類と添加量、更に得られたトナーの諸性状を表4にまとめて示した。
【0161】
【表4】
Figure 0003782657
【0162】
〈実施例1〉
市販のカラーレーザービームプリンター「LBP−2030」(キヤノン社製)の解像度を1200dpiに改造した後、プロセスカートリッジにトナーの製造例1で得られたトナー(A)を充填し、必要に応じて逐次補給しながら、常温常湿環境下において単色モードによって12枚/分(A4サイズ紙)のプリントアウト速度で10,000枚分のプリントアウト試験を行った。
【0163】
得られたプリントアウト画像は、画像濃度、画像飛び散り、ドット再現性、及び画像カブリに優れるものであった。
【0164】
更に、低温低湿環境下(15℃/10%)では階調性、また、高温高湿環境下(30℃/85%)では一次転写性(感光体ドラム上から中間転写体上へのトナー画像の転写性)と二次転写性(中間転写体上から転写紙上へのトナー画像の転写性)について評価したところ、何れも良好な結果が得られた。
【0165】
また、プリントアウト試験終了後、現像スリーブ、感光体ドラム、及び中間転写体の状態を観察したところ問題はなく、画像形成装置とのマッチングにも優れることがわかった。
【0166】
これらの評価結果を表5にまとめて示した。
【0167】
〈実施例2〜8〉
上記トナー(B)〜(H)を各々用いることを除いては、実施例1と同様に評価したところ、概ね良好な結果を得た。
【0168】
これらの評価結果を表5にまとめて示した。
【0169】
〈比較例1〜4〉
上記比較用トナー(a)〜(d)を各々用いることを除いては、実施例1と同様に評価した。
【0170】
その結果、トナー中にスルホン酸基を有する重合体とハイドロタルサイト類化合物粉体を特定の状態で含有していないため、良好な結果が得られなかった。
【0171】
これらの評価結果を表5にまとめて示した。
【0172】
上記実施例及び比較例中に記載の評価項目の説明とその評価基準について述べる。
【0173】
[プリントアウト試験]
(1)画像濃度
通常の複写機用普通紙(75g/m2)に所定の枚数のプリントアウトを終了した時の画像濃度により評価した。尚、画像濃度は「マクベス反射濃度計RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分のプリントアウト画像に対する相対濃度を測定した。
A:1.40以上
B:1.35以上、1.40未満
C:1.00以上、1.35未満
D:1.00未満
【0174】
(2)ドット再現性
潜像電界によって電界が閉じ易く、再現しにくい図2に示す様な小径(45μm)の孤立ドットパターンの画像をプリントアウトし、そのドット再現性を評価した。
A:100個中の欠損が2個以下
B:100個中の欠損が3〜5個
C:100個中の欠損が6〜10個
D:100個中の欠損が11個以上
【0175】
(3)画像力ブリ
ベタ自画像形成時の感光体上の転写残余のトナーをマイラーテープによってテーピングして剥ぎ取り、それを紙上に貼ったものの反射濃度を「マクベス反射濃度計RD918」で測定する。得られた反射濃度から、マイラーテープをそのまま紙上に貼った時の反射濃度を差し引いた数値を用いて評価した。数値が小さい程、画像カブリが抑制されていることになる。
A:0.03未満
B:0.03以上、0.07未満
C:0.07以上、0.15未満
D:0.15以上
【0176】
(4)一次転写性
ベタ黒画像形成時の感光体上の転写残余のトナーをマイラーテープによってテーピングして剥ぎ取り、それを紙上に貼ったものの反射濃度を「マクベス反射濃度計RD918」で測定する。得られた反射濃度から、マイラーテープをそのまま紙上に貼った時の反射濃度を差し引いた数値を用いて評価した。数値が小さい程、転写性が良好であることになる。
A:0.03未満
B:0.03以上、0.07未満
C:0.07以上、0.10未満
D:0.10以上
【0177】
(5)二次転写性
ベタ黒画像形成時の中間転写べルト上の転写残余のトナーをマイラーテープによってテーピングして剥ぎ取り、それを紙上に貼ったものの反射濃度を「マクベス反射濃度計RD918」で測定する。得られた反射濃度から、マイラーテープをそのまま紙上に貼った時の反射濃度を差し引いた数値を用いて評価した。数値が小さい程、転写性が良好であることになる。
A:0.03未満
B:0.03以上、0.07未満
C:0.07以上、0.10未満
D:0.10以上
【0178】
(6)階調性
ディザ法(fattening)により適宜階調数を変化させながら、低画像濃度部から高画像濃度部の画像がバランスよく配合されたグラフィック画像を出力し、ハイライト部の階調性と中間濃度部の再現性について評価した。
〜ハイライト部の階調性評価〜
A:非常に階調性に優れる
B:階調性に優れる
C:やや階調性に劣る
D:階調性に劣る
〜中間濃度部の再現性評価〜
A:非常に好ましく再現されている
B:好ましく再現されている
C:やや再現性に劣る
D:再現性に劣る
【0179】
[画像形成装置マッチング]
(1)現像スリーブとのマッチング
プリントアウト試験終了後、現像スリーブ表面への残留トナーの固着の様子とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:固着は未発生。
B:汚染が発生しているが、固着はほとんど発生せず。
C:固着があるが、画像への影響が少ない。
D:固着が多く、画像ムラを生じる。
【0180】
(2)感光体ドラムとのマッチング
プリントアウト試験終了後、感光体ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:未発生。
B:わずかに傷の発生が見られるが、画像への影響はない。
C:固着や傷があるが、画像への影響が少ない。
D:固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる。
【0181】
(3)中間転写ドラムとのマッチング
プリントアウト試験終了後、中間転写ドラム表面の傷や残留トナーの固着の発生状況とプリントアウト画像への影響を目視で評価した。
A:未発生。
B:表面に残留トナーの存在が認められるものの、画像への影響はない。
C:固着や傷があるが、画像への影響が少ない。
D:固着が多く、縦スジ状の画像欠陥を生じる。
【0182】
【表5】
Figure 0003782657
【0183】
〈実施例9〉
各色プロセスカートリッジに下記のトナーを充填し、必要に応じて逐次補給しながら、フルカラーモードによって12枚/分(A4サイズ紙)のプリントアウト速度で5000枚分のグラフィック画像をプリントアウトする以外は、実施例1と同様にプリントアウト試験を行った。
ブラック…トナー(A)、イエロー…トナー(B)
マゼンタ…トナー(C)、シアン… トナー(D)
【0184】
得られたプリントアウト画像は、画像濃度、画像カブリ抑制に優れ、転写不良による画像濃度ムラや色再現ムラのない良好なフルカラー画像であった。また、高温高湿環境下や低温低湿環境下においても画像の劣化は軽微で、画像形成装置とのマッチングも良好であった。
【0185】
〈比較例5〉
トナーとして下記のトナーを用いる以外は、実施例9と同様に評価を行ったところ、得られたフルカラー画像には画像カブリや転写不良に起因する画像濃度ムラや色再現ムラが発生した。また、高温高湿環境下や低温低湿環境下での画像の劣化が著しく、画像形成装置とのマッチングも十分ではなかった。
ブラック…比較用トナー(a)、イエロー…比較用トナー(b)
マゼンタ…比較用トナー(c)、シアン… 比較用トナー(d)
【0186】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の乾式トナーは、スルホン酸基を有する重合体を含有するトナー粒子、無機微粒子、及びハイドロタルサイト類化合物粉末を有しているので、環境変動に対する帯電特性に優れ、高画質な画像を長期にわたって安定して実現し、電子写真プロセスに高度に適応を可能とすることができる。
【0187】
更には、本発明の乾式トナーによれば、感光体ドラムの如き静電潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写材上に転写するようなフルカラー用の電子写真プロセスに高度に適応し、色再現性に優れ、高解像度で高精細のフルカラー画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワックス成分を内包化しているトナー粒子の断面の一例を示す模式図である。
【図2】解像度を評価する為の孤立ドットパターン画像の説明図である。

Claims (13)

  1. 少なくとも結着樹脂、ワックス成分、及びスルホン酸基を有する重合体を含有し、水系分散媒体中で懸濁重合法により製造されたトナー粒子と、無機微粒子と、ハイドロイト類化合物粉末を有することを特徴とする乾式トナー。
  2. スルホン酸基を有する重合体が、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有し、且つガラス転移温度(Tg)が40〜90℃のスチレン及び/又はスチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる高分子型化合物であることを特徴とする請求項1に記載の乾式トナー。
  3. ハイドロタルサイト類化合物粉末が、下記一般式(1)で示される不定比化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾式トナー。
    Figure 0003782657
    [式中、M1〜Mjはそれぞれ異なる2価の金属イオン、L1〜Lkはそれぞれ異なる3価の金属イオン、x1〜xkとy1〜yjは金属イオンのモル比率、Aはn価のアニオンを示し、
    X=x1+x2+…+xk、1−X=y1+y2…+yjであって、
    0<X≦0.5、m≧0を満足し、jとkはそれぞれ1以上の整数を表す。]
  4. ハイドロタルサイト類化合物粉末が、表面処理剤によって疎水化処理がなされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の乾式トナー。
  5. フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、該トナーの円相当個数平均径D1(μm)が2〜10μmであり、且つ、該トナーの平均円形度が0.950〜0.995で、円形度標準偏差が0.040未満であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の乾式トナー。
  6. 円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、トナーの平均円形度が0.965〜0.995で、円形度標準偏差が0.035未満であることを特徴とする請求項5に記載の乾式トナー。
  7. 円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、トナーの平均円形度が0.975〜0.990で、円形度標準偏差が0.015以上0.035未満であることを特徴とする請求項5に記載の乾式トナー。
  8. フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて、円形度0.950未満のトナー粒子が15個数%以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像形成方法。
  9. 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断層面観察において、
    (1)フロー式粒子像測定装置で測定されるトナーの重量基準の円相当重量平 均径D4(μm)に対し、0.9≦R/D4≦1.1の関係を満たす長 径R(μm)を呈するトナー粒子の断層面を20箇所選び出し、
    (2)選び出したトナー粒子の断層面中に存在するワックス成分に起因する相 分離構造のうち、最も大きいものの長径rをそれぞれ計測し、
    (3)求められたr/Rの相加平均値(r/R)stが、
    0.05≦(r/R)st≦0.95
    を満たすように、該ワックス成分が結着樹脂中に実質的に球状及び/又 は紡錘形の島状に分散されている
    ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の乾式トナー。
  10. r/Rの相加平均値(r/R)stが、
    0.25≦(r/R)st≦0.90
    を満たすように該ワックス成分が結着樹脂中に実質的に球状及び/又は紡錘形の島状に分散されていることを特徴とする請求項9に記載の乾式トナー。
  11. 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたトナー粒子の断層面観察において、トナー粒子の表面には、四酸化ルテニウム(RuO4)及び/又は四酸化オスミウム(OsO4)による電子染色法によって識別される材料による薄層が形成されており、そのトナー内部方向には結着樹脂とワックス成分が存在し、該ワックス成分が結着樹脂中に実質的に球状及び/又は紡錘形の島状に分散されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の乾式トナー。
  12. 前記トナー粒子が、前記結着樹脂と共に、極性樹脂を含有し、該極性樹脂がポリエステル樹脂およびポリカーボネート樹脂から選ばれた樹脂であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の乾式トナー。
  13. 前記ポリエステル樹脂が反応性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項12に記載の乾式トナー。
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