JP3781687B2 - 遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遺伝子異常の有無を簡単、正確に検出できる遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
全ての疾患には、遺伝性要因と環境要因が種々の確率で関与しているが、先天性代謝異常症・癌・糖尿病・高血圧・アルツハイマー・自己免疫疾患・アトピー・肥満・アルコール依存などの疾患は、遺伝性要因が非常に大きな割合を占めている。一方、環境要素の寄与が大きい疾患は感染症や外傷の後遺症から誘因される疾患等である。
【0003】
ところで、近年分子生物学の急速な進展によって、様々な疾患において遺伝的要素、すなわち遺伝子の関与がかなり正確に解明されるようになり、遺伝子をターゲットにした医療に注目が集まるようになってきている。現在、最も注目されているのはSNPs(スニップス)と呼ばれるものである。これは、single nucleotide polymorphismの略で「1塩基多型」と一般に訳されており、個人間の遺伝子における1暗号(1塩基)の違いの総称である。
【0004】
人を含め地球上の全ての生命体遺伝子(または遺伝子の全集合体を意味するゲノム)は、共通の4つの塩基から成り立っており、この塩基の配列によって様々なタンパク質が作られ、各生物特有の生命活動が行われている。全ての生物に共通する4つの塩基とは、アデニン(Aと表記される)、グアニン(Gと表記される)、チミン(Tと表記される)、シトシン(Cと表記される)である。人の遺伝子は、約30〜32億塩基配列で構成されているといわれているが、各個人で数百から1000塩基に1ヶ所程度の割合で他の人と1つの塩基が異なっている場所が存在する。通常、この1塩基の変化が、あるヒト集団の全人口中1%以上の頻度で存在しているものを、SNPsと呼んでいる。
【0005】
従って、全遺伝子(ゲノム)中には、300万〜1000万のSNPsが存在しているといわれ、現在世界中でSNPsの探索が続けられている。SNPsが注目されている理由は、SNPsの分類により、統計的に各個人の遺伝子が関与しているといわれている多くの疾患に対する罹患率が推測できると考えられているからである。例えば、乳がんを例にとると、乳がんにかかった患者群と正常な群とのSNPsの比較により、乳がんにかかりやすい人に共通のSNPsを特定することができる。そして、健康診断時に、遺伝子を調査しそのSNPsを持った人、すなわち現在は正常でも将来乳がんにかかりやすい体質の人を見つけることが可能になる。
【0006】
この診断によって、乳がんにかかりやすい体質の人は、頻繁に検査をすることで万一癌に罹患しても、超早期に治療が行え生存の可能性が向上する。それと同様のことが、糖尿病や高血圧などの生活習慣病についても言え、世界中で多くの人が苦しんでいる病気に対して発病の前から食事や生活指導を正確にすることが可能になる。
【0007】
また、病気の治療に用いている薬剤に関してもSNPsは重要な役割を期待されている。治療の際に用いられる薬剤は全ての人に均等に効果を示すものではない。一般に薬剤は、ある割合の人には効果があっても他の人には全く効果が無く、かえって副作用等で逆の結果を招くことがあることも広く知られている。因みに、アメリカにおける死亡原因の中で薬剤による副作用が上位に位置しているのは周知のことである。薬剤の効果はその人がもつ体質に深く関与しており、その体質もSNPsの分類によって区別可能であると言われている。すなわち、SNPsの解析による分類で、ある薬剤に対してあらかじめ効果や感受性が予測でき適正な処方をすることが可能になり、患者個々人の体質に合わせた最適な薬剤の投与や副作用の危険性の回避が期待されている。このような医療のことをテーラーメイド医療またはオーダーメイド医療と呼び、将来の実用化が確実視されている。
【0008】
また癌は、正常な細胞においては重要な役割をする遺伝子上の特定の部位に例えば紫外線や変異原性物質の作用によって突然変異が生じることによって引き起こされることがわかっている。ある特定の遺伝子上の変異を読み取ることで細胞が癌化しているか否かを早い段階から診断できるようになる。そして、犯罪捜査における犯人の特定や曖昧な親子関係の確定さらには本人であるか否かの識別にもSNPsは、威力を発揮する。前述したように、各個人には300万〜1000万のSNPsが存在しており、両親からそれぞれ別々のSNPsを引き継ぐため、地球上に親子兄弟といえども全く同じSNPsをもつ人間は絶対に存在しないと言われている。これが個人の完全な特定を可能にする理由である。
【0009】
このように、特定の遺伝子中の1塩基に起きた変異を観察することで医療をはじめ様々の事柄に多大な貢献をもたらす可能性がある。しかしながら現在、特定の遺伝子の変異を観察する方法は以下に述べるような非常に複雑な操作あるいは高価な装置を必要とし、ランニングコストも非常に嵩むため、広く利用されるまでには至っていない状況にある。
【0010】
現在最も一般的に用いられているSNPsを調べる方法は、DNAの塩基配列を端から直接読んでいくシーケンシング(塩基配列の決定)と呼ばれている方法である。遺伝子は1種類のタンパク質を形成するための塩基配列情報をもったDNAの単位であるから、塩基配列を端から読んでいけばSNPsが解明することができる。シーケンシングを行う方法としては、いくつかの報告があるが、最も一般的に行われているのは以下に述べるジデオキシシーケンシング(Sanger法)である。この方法を含めいずれの方法も、分離能の高い変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動かキャピラリー電気泳動によって1塩基長の長さの違いを分離・識別できる技術が基になって成り立っている。
【0011】
ジデオキシシーケンシング(Sanger法)は、酵素的シーケンシングとも呼ばれ、1本鎖鋳型DNAの相補的鎖を合成するためにDNAポリメラーゼを用い、さらに人工的につくった特殊な4種類のジデオキシヌクレオチドを利用するのが特徴である。シーケンシング操作としては、塩基配列を行いたい1本鎖DNAの3’末端を相補する合成塩基配列をプライマーとして用い、そのプライマーからDNAポリメラーゼと均等に加えられたデオキシヌクレオチドを酵素反応によって伸長させる操作を行うが、この時同時に4つの反応容器を準備しておき、それぞれにATGC4つの塩基の3’末端に水酸基を持たない、従ってこれ以上DNA伸長反応を続けることができない塩基アナログであるジデオキシヌクレオチドを別々に少量混入させておく。これにより、伸長中のDNAの末端にジデオキシヌクレオチドが付加された時点でDNA合成がストップし、それぞれの反応容器中に様々な長さを持った、しかし端は必ず加えた塩基アナログである2本鎖DNAが形成される。この反応容器にS1エンドヌクレアーゼを反応させ、1本鎖DNAを全て消化し2本鎖DNAのみとする。こうして得られた4つの反応容器のDNA鎖をゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動し、分離されたDNAを短い方(速く移動したもの)から順に読めば、鋳型鎖と相補的なDNAの塩基配列がわかる。この際、泳動結果の識別は、例えば加えるジデオキシヌクレオチドのリンまたはイオウを放射性標識したり蛍光を発する化学物質を結合させたりして行う。放射性標識の場合はフィルムへの露光での検出、蛍光化学物質の場合はレーザービームを照射し蛍光を検出する。最近では、A,T,G,Cの4種類の塩基アナログを、それぞれ4種類の蛍光波長の異なる試薬により標識し、その4色の蛍光を同時に検出する方法も開発されている。
【0012】
このように、従来は被験者から分離・精製した遺伝子の正確な塩基配列をこのジデオキシシーケンシング(Sanger法)あるいはその他の塩基配列決定法により決定し、正常あるいは標準的な塩基配列と比較することによってSNPsの有無や突然変異の有無の確認、個人の識別等を行っている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
以上説明したように、従来からの遺伝子配列決定法を利用した、遺伝子診断や遺伝子による個人の識別は、ターゲットとする遺伝子を単離したのち、増幅・精製し、遺伝子の塩基配列決定用装置を用いて、目的遺伝子の塩基配列を読むことによって行っていたため、実験に膨大な作業量と非常に長い時間、さらには多大のランニングコストを要していた。また塩基配列決定のための自動化した装置は、非常に高価で、大きなスペースを占有し、しかも高価な試薬を大量に必要とするものであった。
【0014】
そこで、従来のこのような問題を解決するため本発明は、一塩基以上の遺伝子異常を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる遺伝子診断装置を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、一塩基以上の遺伝子異常を短時間、且つ簡単、正確に判定できる遺伝子診断方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の遺伝子診断装置は、密閉流路には、緩衝液の中に、DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差からDNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートと、第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、該第2の塩基配列が正常DNAと異常DNAとに対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートと、さらにDNA試料とが充填され、定電圧を印加することにより密閉流路内のDNAが電気泳動され、検出部が正常DNAと異常DNAとノイズDNAの通過量をそれぞれ測定することを特徴とする。
【0017】
これにより、一塩基以上の遺伝子異常を短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、小型、軽量、安価に、しかも非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる。
【0018】
また、本発明の遺伝子診断方法は、密閉流路内の緩衝液の中に、DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差からDNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートを充填し、続いて、第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、正常DNAと異常DNAとが該第2の塩基配列に対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートを充填し、さらにDNA試料を加え、その後、第2電極に正電位を印加するとともに第1電極に負電位を印加し、該第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加して、密閉流路内のDNAを電気泳動させ、正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離し、正常DNAの定量または異常DNAの定量、または、正常DNAと異常DNAの比率、もしくは、異常DNAを検出することを特徴とする。
【0019】
これにより、一塩基違いの遺伝子異常でも短時間、且つ簡単、正確に検出することができ、安価に、非常に少ないランニングコストで、診断を自動化することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載された発明は、緩衝液を収容し第1電極が浸漬された第1容器と、緩衝液を収容し第2電極が浸漬された第2容器と、第1容器と第2容器間をリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たして連絡した密閉流路と、第2電極に正電位を印加するとともに第1電極に負電位を印加する電源部と、電源部を制御して第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加する制御部と、密閉流路に設けられ、内部を通過するDNAの通過量を検出する検出部を備え、密閉流路には、緩衝液の中に、DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差からDNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートと、第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、該第2の塩基配列が正常DNAと異常DNAとに対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートと、さらにDNA試料とが充填され、定電圧を印加することにより密閉流路内のDNAが電気泳動され、検出部が正常DNAと異常DNAとノイズDNAの通過量をそれぞれ測定することを特徴とする遺伝子診断装置であるから、第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試料は電気泳動することができるが、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲートは高分子化合物と結合したものであるから、泳動速度はDNA試料と比較すると数%にすぎず(但し、高分子化合物の種類と長さに依存する)、相対的には擬似固定状態にすることができる。従って、DNA試料は電気泳動によって、遅延用DNAコンジュゲート、次いで、分離用DNAコンジュゲート部分を通過する。その際に、まず遅延用DNAコンジュゲートとの水素結合力差を利用して正常DNAと異常DNA群の泳動速度をノイズDNAに対して低下させ、更に、分離用DNAコンジュゲートにより正常DNAの泳動速度を異常DNAの泳動速度に対して低下させることができる。
【0021】
なお、DNA試料を遅延させる方法としてアフィニティDNAがあるが、アフィニティDNAはキャピラリー管等の密閉流路の壁面に固定することが一般的であり、その固定処理は難しく、一度使用すると通常密閉流路を使い捨てにしなければならないが、本発明によれば擬似固定であるため使い捨てにする必要はなく、両コンジュゲートや試料の各濃度調整および両コンジュゲートや試料の混合比率の調整がきわめて容易になる。
【0022】
正常DNA及び異常DNAは移動しながら、まず遅延用DNAコンジュゲートの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズDNAは、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で検出される。しかし、異常DNAには、遅延用DNAコンジュゲートのほか、分離用DNAコンジュゲートとの結合力(但し、正常DNAに比べて一塩基分弱い)が作用し、コンジュゲートとの作用をなかなか振り切れず、ノイズDNAよりも遅れて泳動され、ノイズDNAの次に検出部で検出される。正常DNAには最大の結合力が作用し、ノイズDNAは勿論のこと、異常DNAよりも遅れて泳動され、最後に検出部で検出される。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせることができる。
【0023】
このように電気泳動とDNAの水素結合を利用するから数分〜十数分という短時間のうちにDNAを分離でき、且つ所定の電圧を印加するだけで良いから分解能の高い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有無を検出することができ、小型、軽量、低ランニングコストの安価な装置とすることができ、診断の自動化がきわめて容易である。
【0024】
請求項2に記載された発明は、密閉流路が、リニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液で充たされ、且つ該緩衝液の中に分離用DNAコンジュゲートと遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料とが分離状態で、リニアポリマーを挟んでこの順序で充填された分離用密閉流路カートリッジであって、該分離用密閉流路カートリッジを交換可能に装着する分離部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の遺伝子診断装置であるから、予めリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液と、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲート、DNA試料とを充填した分離用密閉流路カートリッジを用意しておくことができ、測定毎に分離部に分離用密閉流路カートリッジを交換して装着すればよく、測定を簡単に且つ容易に行うことができる。
【0025】
請求項3に記載された発明は、密閉流路が1以上設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の遺伝子診断装置であるから、密閉流路ごとに遅延用DNAコンジュゲートと分離用DNAコンジュゲート、DNA結合制御剤を変化させて、DNA試料の正常DNAと異常DNAの分離環境を密閉流路ごとに変化させることができる。
【0026】
請求項4に記載された発明は、遅延用DNAコンジュゲートが1種類以上含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、泳動速度を遅延用DNAコンジュゲートの比率を変えることで変化させることができる。
【0027】
請求項5に記載された発明は、分離用DNAコンジュゲート及び/または遅延用DNAコンジュゲートがビニル化したDNAであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、DNA試料の正常DNAと異常DNAを明確に分離して測定することが可能となる。
【0028】
請求項6に記載された発明は、密閉流路内の液体を20℃〜60℃に調整して正常DNAと異常DNAを分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、正常DNAと異常DNAを温度調整により分離用DNAコンジュゲートと遅延用DNAコンジュゲートに結合したり離脱させたりすることが可能であり、結合力を温度で調整でき、分離後それぞれを検出部で測定することが可能となる。
【0029】
請求項7に記載された発明は、密閉流路が内径50〜100μmのフューズドシリカ製キャピラリー管であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、紫外線を90%以上透過でき、紫外線の通過量を検出することで異常DNAの検出が容易にできる。
【0030】
請求項8に記載された発明は、密閉流路が溝のある板と紫外線が90%以上透過する板との組み合わせであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、紫外線を90%以上透過でき、紫外線の通過量を検出することで異常DNAの検出が容易にできる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、前記密閉流路を加熱し、2重螺旋のDNA試料を引き離して1本鎖のDNA試料とする高温部を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子診断装置であるから、DNA試料を1重鎖とする前処理を行うことなくそのまま用いることができるので、更に診断の自動化を図ることが可能である。
【0032】
請求項10に記載された発明は、第1容器に緩衝液を収容して第1電極を浸漬するとともに第2容器にも緩衝液を収容して第2電極を浸漬し、第1容器と第2容器間をリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たして密閉流路で連絡し、次いで、該密閉流路内の緩衝液の中に、DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差からDNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートを充填し、続いて、第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、正常DNAと異常DNAとが該第2の塩基配列に対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートを充填し、さらにDNA試料を加え、その後、第2電極に正電位を印加するとともに第1電極に負電位を印加し、該第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加して、密閉流路内のDNAを電気泳動させ、正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離し、正常DNAの定量または異常DNAの定量、または、正常DNAと異常DNAの比率、もしくは、異常DNAを検出することを特徴とする遺伝子診断方法であるから、第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試料は電気泳動することができるが、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲートは高分子化合物と結合したものであるから、泳動速度はDNA試料と比較すると数%にすぎず(但し、高分子化合物の種類と長さに依存する)、相対的には擬似固定状態にすることができる。従って、DNA試料は電気泳動によって、遅延用DNAコンジュゲート、次いで、分離用DNAコンジュゲート部分を通過する。その際に、まず遅延用DNAコンジュゲートとの水素結合力差を利用して正常DNAと異常DNA群の泳動速度をノイズDNAに対して低下させ、更に、分離用DNAコンジュゲートにより正常DNAの泳動速度を異常DNAの泳動速度に対して低下させることができる。
【0033】
なお、DNA試料を遅延させる方法としてアフィニティDNAがあるが、アフィニティDNAはキャピラリー管等の密閉流路の壁面に固定することが一般的であり、その固定処理は難しく、一度使用すると通常密閉流路を使い捨てにしなければならないが、本発明によれば擬似固定であるため使い捨てにする必要はなく、両コンジュゲートや試料の各濃度調整および両コンジュゲートや試料の混合比率の調整がきわめて容易になる。
【0034】
正常DNA及び異常DNAは移動しながら、まず遅延用DNAコンジュゲートの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズDNAは、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で検出される。しかし、異常DNAには、遅延用DNAコンジュゲートのほか、分離用DNAコンジュゲートとの結合力(但し、正常DNAに比べて一塩基分弱い)が作用し、コンジュゲートとの作用をなかなか振り切れず、ノイズDNAよりも遅れて泳動され、ノイズDNAの次に検出部で検出される。正常DNAには最大の結合力が作用し、ノイズDNAは勿論のこと、異常DNAよりも遅れて泳動され、最後に検出部で検出される。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせることができる。
【0035】
このように電気泳動とDNAの水素結合を利用するから数分〜十数分という短時間のうちにDNAを分離でき、且つ所定の電圧を印加するだけで良いから分解能の高い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有無を検出することができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態における遺伝子診断装置と遺伝子診断方法について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の外観図、図2は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の上蓋開放外観図、図3は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の装置構成図、図4は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の制御回路要部図、図5は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の分離用DNAコンジュゲートと遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料との導入状態図である。
【0038】
図1において、1は遺伝子診断装置の電源スイッチ、2は装置の種々の操作を行うための操作ボタン、3は表示パネル、4は上蓋、5は装置の筐体である。図2、図3、図4において、6は電気泳動を行うための電気泳動部、7は電気泳動部6を支える支持台、8は電気泳動を行うための制御や後述する吸引ポンプ20、検出部15の制御を行い、検出したデータを演算する基板からなる制御演算部である。9は電源ボックス、9aは電源ボックス9内に設けられた電源部である。電源部9aは、本遺伝子診断装置ではDNAの種類や濃度、処理条件ごとに異なった最適印加電圧値が存在するため、後述のDNA試料23から異常DNAと正常DNAを分離するのに最も適した泳動が行えるように所定の電圧を制御演算部8の制御により印加する。10はDNAの2重螺旋(以下、2本鎖)を引き離すための高温部、11は高温部10と後記する分離部12の温度を独立にするための断熱部、12は正常DNAと異常DNAとノイズDNAとを分離するための所定温度に調整するとともに、この部分で正常DNAと異常DNAを分離する分離部、13は高温部10の温度を調整する第1温調器、14は分離部12の温度を調整する第2温調器である。
【0039】
この分離部12内の構成の詳細については後述するが、測定開始時には、図5に示すように分離用DNAコンジュゲート21が分離部12の位置、また遅延用DNAコンジュゲート22が断熱部11付近、DNA試料23が高温部10付近になるように配置する。そして、このように設定された配置と電圧制御、濃度調整、温度制御等を行うことにより、電気泳動させながら本遺伝子診断装置はDNA試料23を正常DNAと異常DNAとノイズDNAに数分〜十数分で分離するものである。
【0040】
このうちDNA試料23は、本実施の形態1においては2本鎖を備えたまま高温部10に充填、配置され、第1温調器13を用いて(90℃以上の所定温度±5℃)の温度になるように加熱、制御される。この加熱により導入されたDNAの2本鎖が1本鎖に自動的に分離される。続いて、分離部12では分離用DNAコンジュゲート21(場合によっては一部の遅延用DNAコンジュゲート22も)が泳動作用を受けながら水素結合の結合力の差によってDNA試料23を正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離できるように、高温部10の温度より少なくとも10℃低温、すなわち15℃〜80℃、望ましくは20℃〜60℃の温度範囲の所定温度に保つように制御される。正常DNAと異常DNAとを分離するためにはDNAの分離に適したこの所定の温度から±1℃の範囲で制御するのがよい。さらに、断熱部11は、本来、分離部12と高温部10の間を熱的に遮断して温度調整するために設けられるものであるが、遅延用DNAコンジュゲート22はこの付近に配置され、温度的には高温部10の90°以上の温度と分離部12の20℃〜60℃の温度との中間温度に置かれ、この温度下での水素結合の結合力差により泳動作用を受けながら正常DNAと異常DNAをノイズDNAから分離することができる。
【0041】
15は電気泳動するDNA試料の通過量を測定する検出部である。図4に基づいて検出部15について説明すると、15aは紫外線を照射するD2ランプ、15bは紫外線を受光するフォトダイオード、15cはフォトダイオード15bが検出した微弱電流を増幅するプリアンプ、15dはデジタル量に変換するA/Dコンバータである。これらの詳細は後述する。16は電気泳動のときに正電位を印加する電極(本発明の第2電極)、17は電気泳動のときに負電位を印加する電極(本発明の第1電極)であり、制御演算部8が電源部9aを制御し、電極16と電極17との間に所定の定電圧を印加し、最も適当な電気泳動を生じさせる。図3、図4、図5において、18は電気泳動のときの電荷の運搬とDNA試料のpHを安定させるための緩衝液、18aは緩衝液18を収容する陰極側の容器(本発明の第1容器)、18bは緩衝液18を収容する陽極側の容器(本発明の第2容器)、18dはDNA結合制御剤とリニアポリマーを緩衝液18に添加したリニアポリマーゲルであり、電気泳動時にDNA試料23が早い速度で泳動しないように泳動を邪魔する働きを持つものである。この働きにより、DNA試料23は遅延用DNAコンジュゲート22や分離用DNAコンジュゲート21とキャピラリー管19内で充分遭遇する機会を持つことが可能となる。なお、19は電気泳動のときにDNA試料23を泳動するためのキャピラリー管(本発明の密閉流路)、20はキャピラリー管19の中に緩衝液18やDNA試料23、リニアポリマーゲル18dなどの試薬を注入するための吸引ポンプである。容器18aの緩衝液18の中には電極17が浸漬され、容器18bの緩衝液18の中に電極16が浸漬される。容器18aと容器18b内の緩衝液18は、キャピラリー管19内の緩衝液18によって連通される。従って、分離用DNAコンジュゲート21、遅延用DNAコンジュゲート22にも緩衝液18が液のベースとして混入しており、キャピラリー管19中全ての部分で同じ濃度の緩衝液18が存在している。電極16と電極17間に電圧を印加すると、キャピラリー管19内に電気泳動が誘発され、分離用DNAコンジュゲート21、遅延用DNAコンジュゲート22、DNA試料23は負に帯電しているため、容器18a側から容器18b側へ分離用DNAコンジュゲート21、遅延用DNAコンジュゲート22、DNA試料23が移動するが、分離用DNAコンジュゲート21、遅延用DNAコンジュゲート22には分子量が大きい高分子がついているため、電気泳動によってDNA試料23の移動量と比較するとほとんど移動はしない。
【0042】
次に、本発明の遺伝子診断装置で測定を行うために必要な詳細について説明する。本遺伝子診断装置で測定するDNA試料23は、人の細胞や血液等から入手したDNAである。約30億塩基対あるといわれるヒト・ゲノムDNAからPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)などの方法を利用して目的の部分を目的の長さに切り出して測定用に数を増加させる作業が必要である。ただ、このPCRに関しては本遺伝子診断装置の説明に必要がないため具体的な説明を省略する。
【0043】
PCRなどで取り出した目的のDNAは塩基数でいうと6個程度〜1000個程度であるが、約30億塩基対あるといわれるヒト・ゲノムDNAの中に、同じDNA配列が存在しないと確率的に考えられる個数としては、50個程度であればよい。しかし、これは総数が50個程度あればよいということであるから、数回に分けてDNAを切り取る場合は6個〜12個ずつに分けるのでもよい。そして、本発明者らの実験によると、本遺伝子診断装置で正常DNAと1塩基違いの異常DNAを分離する場合、塩基の個数は6個〜12個が最も効率よく分離できるという結果を得ている。ただ、この異常DNAの分離はDNA試料23の濃度(μM、但し、M=モル/リットル)、分離用DNAコンジュゲート21のDNAの濃度(モル%)、遅延用DNAコンジュゲート22のDNAの濃度(モル%)、測定温度、その他と密接な関係があるため、適正な条件にしないと分離が起こらないから、このような条件を設定することができるか否かに留意する必要がある。例えば、DNA試料23の濃度は1〜10(μM)が適当であり、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22に含まれるDNAが、基本となるリニアポリマーのモルに対して0.0002〜0.05(モル%)程度が適当であるが、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22のそれぞれのDNA総量は、DNA試料23の濃度の20〜600倍とするのが望ましい。以上説明したように本遺伝子診断装置のDNA試料は上述のPCRなどにより前処理によって得られる6個程度〜1000個程度の塩基配列を持つDNA試料が必要であり、適正な条件設定が必要である。
【0044】
次に、図3、図4、図5のキャピラリー管19について説明すると、キャピラリー管19にゲルを入れて電気泳動を行うと、電気浸透流と呼ばれる液の流れが発生してしまうため、本遺伝子診断装置ではこの現象が起きないようにする必要がある。このためキャピラリー管19の内壁をアクリルアミドなどでコーティングするのがよい。電気浸透流の発生が阻止できるならコーティング方法は他の方法でもよい。例えば、一般に販売されているコーティングキャピラリー管を使用するのでもよい。なお、キャピラリー管19としては内径50〜100μmのフューズドシリカ製キャピラリー管が、紫外線を90%以上透過でき、且つ後述するように紫外線を利用してDNAを検出するとき、紫外線の通過量を容易に検出できるから最も適当である。そして、溝のある板と、紫外線が90%以上透過する板との組み合わせでキャピラリー管19に相当する密閉流路を構成するのでも、紫外線を90%以上透過でき、紫外線の通過量を検出することで異常DNAの検出を容易に行うことができる。なお、溝のある板を紫外線が透過可能な板にした場合は透過光を検出し、溝のある板を紫外線が不透過の板にした場合は、異常DNAを反射光で検出する。反射光を検出する場合には溝形状を均一な反射面とするため矩形断面にする等の工夫が必要である。
【0045】
容器18a,18bの中やキャピラリー管19に収容する緩衝液18は、Tris−Borate(pH7.2〜pH8程度)緩衝液等を利用するのが適当である。このうちキャピラリー管19に収容する緩衝液18に必要に応じて混入されるDNA結合制御剤としては、分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22に対するDNAの結合を促進する塩化マグネシウム等の結合促進剤と、離脱を促す尿素等の離脱剤の2種類が存在する。この2種類のDNA結合制御剤は、2種類の混合割合や、物質(例えば、結合促進剤として他の電解質)を選ぶことで、DNAに対する多様な泳動速度の制御が可能になるものである。リニアポリマーゲル18dに含まれるリニアポリマーとしては、ポリアクリルアミドを用いることができ、これは分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22のコンジュゲート作成にも利用されるため、相性がよく適当である。
【0046】
次に、キャピラリー管19への充填順序であるが、図5に示すように先ずキャピラリー管19内にリニアポリマーとDNA結合制御剤と緩衝液18を含んだリニアポリマーゲル18dを導入し、続いて以下詳述する分離用DNAコンジュゲート21を加える。分離用DNAコンジュゲート21導入後にリニアポリマーゲル18dを導入してもよい。図5の場合導入後に分離状態で導入している。続いて、分離用DNAコンジュゲート21と分離状態で遅延用DNAコンジュゲート22を加える。分離用DNAコンジュゲート21と同様に、遅延用DNAコンジュゲート22の導入後にリニアポリマーゲル18dを導入してもよい。図5の場合導入後に分離状態で導入している。その後、緩衝液18もしくは純水で希釈したDNA試料23を導入して電気泳動する。
【0047】
本実施の形態1では、分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22を作成するのにアクリルアミドとDNAを重合させているため、DNAとの重量差、構造差は大きく、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22の泳動速度(0.6cm/分〜0.7cm/分)は、DNAの最適の泳動速度(13cm/分〜20cm/分)の1/20〜1/30程度であって、非常に動きが鈍く相対的に擬似的に固定されているといってもよいような状態が実現される。従って、測定開始時、充填物を収容したキャピラリー管19を高温部10、断熱部11、分離部12の間で位置を調整しながら、分離用DNAコンジュゲート21を分離部12内付近にし、断熱部11付近から高温部10にかけて遅延用DNAコンジュゲート22を置くようにし、高温部10には後述のDNA試料23を配置する。このようにすることにより、高温部10でDNA試料23の2本鎖を1本鎖に分離できる。そして、高温部10から断熱部11にかけて遅延用DNAコンジュゲート22を充填したので速度差でノイズDNAを分離でき、分離部12で正常DNAと異常DNAを分離することができる。
【0048】
なお、遺伝子診断装置のキャピラリー管19にDNA試料23や分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲート、リニアポリマーの各溶液を交換的に導入する機構、例えば図3に示した吸引ポンプ20のほかに、各DNA試料23や分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲート、リニアポリマーの各溶液をそれぞれ保管する容器と、その容器を自動的に交換し、それをキャピラリー管19に接続する機構を装備するのが望ましい。
【0049】
さらに、キャピラリー管19を1本または複数本単位でユニット化し、これを交換用の分離用密閉流路カートリッジとして、分離部12と高温部10、断熱部11に装着可能にし、分離部12内の第2温調器14、あるいは高温部10内の第1温調器13で温度制御するようにするのも適当である。キャピラリー管19内に、予めリニアポリマーゲル18dとDNA結合制御剤を含む緩衝液18を充填し、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22とDNA試料23を分離状態で充填して分離用密閉流路カートリッジとして用意しておくことが可能になる。このように構成することで、測定を行うたびに分離用密閉流路カートリッジごと交換するため、分離用密閉流路カートリッジごとに分離用DNAコンジュゲート21、遅延用DNAコンジュゲート22、DNA試料23の配置を予め設定できるから、測定が簡単に行え、且つ正確な測定が行える。なお、この分離用密閉流路カートリッジでは、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22とDNA試料23を分離状態にするため、その間にリニアポリマーゲル18dを挟んで充填している。それぞれの中にリニアポリマーゲル18dを混合させて充填するのでもよい。
【0050】
続いて、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22について説明する。図6(a)は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の分離用DNAコンジュゲートとDNA試料との関係概念図、図6(b)は本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料との関係概念図である。図6(a),(b)において、21は分離用DNAコンジュゲート、22は遅延用DNAコンジュゲートである。DNAは二本鎖を形成するものとこれを分離した一本鎖のものと存在するが、DNAのもつA,T,C,G4つの塩基は互いにAとT、GとCがそれぞれ水素結合し易い性質をもち、DNAの二本鎖においてはAT,GCで対をなしている。従って、一本鎖のDNAがATCGCGTCTAGC(配列番号1に記載)と配列されている場合、残りの鎖のDNAは、TAGCGCAGATCG(配列番号2に記載)という塩基配列をもっている。この関係は相補的関係と呼ばれるもので、この相補関係を充たす限り、AとT、GとCがそれぞれ水素結合により結合し、二本鎖を形成する。本発明ではこの関係を利用するために、図6(a)に示すように分離用DNAコンジュゲート21のDNA部分にはDNA試料の正常DNAに相補的な塩基配列を持たせている。従って、DNA試料の正常DNAの塩基配列がATCGCGTCTAGC(配列番号1に記載)を含み、異常DNAがATCA*CGTCTAGC(配列番号3に記載)で、*で示した部分で正常DNAと異常DNAの塩基が異なっている場合、分離用DNAコンジュゲート21のDNA部分の配列(本発明の第1の塩基配列)をTAGCGCAGATCG(配列番号2に記載)とすると、異常DNAはA*において分離用DNAコンジュゲート21と相補的ではなくなるため水素結合せず、水素結合全体の結合力はDNA試料の正常DNAの方が異常DNAより1塩基分の結合力分だけ大きくなる。その結果、後で説明する電気泳動時に正常DNAの方が異常DNAより強い結合力で長い時間分離用DNAコンジュゲート21と結合するため、正常DNAは異常DNAより相対的に遅延するようになる。というのは、電気泳動時結合力だけでなく電気泳動による引離力も作用するから、多数のDNAが断続的に結合と離脱を繰り返すような結合状態となるからである。そして、この泳動速度を平均的にみると、長い時間結合する正常DNAの方が異常DNAより泳動速度が低下することになる。DNA試料の中には、2本鎖のDNAのうち測定対象ではない分離した残りの1本鎖DNAのように正常DNAと異常DNA以外のDNAも含まれており、このDNAが後で説明する電気泳動時にノイズとして作用するが、このノイズDNAは分離用DNAコンジュゲート21のDNAとはほとんど無反応で結合しないから、最も速い泳動速度をもち分離されることになる。
【0051】
そして、あらかじめノイズDNAを正常DNAと異常DNAの群から確実に分離するために、遅延用DNAコンジュゲート22に正常DNAと異常DNAの両方が共通にもつ塩基配列に相補的な塩基配列(本発明の第2の塩基配列)を持たせれば、電気泳動時に正常DNAと異常DNAの群の方だけが遅延用DNAコンジュゲート22と水素結合し、この分だけノイズDNAより泳動速度が低下する。従って、正常DNAと異常DNAの群がノイズDNAより相対的に遅延し、ノイズDNAを区別してその影響を排除することが可能となる。ノイズDNAが結合するのは偶然に塩基が水素結合する場合であり、確率的にきわめて低い。なお、遅延用DNAコンジュゲート22の塩基配列(本発明の第2の塩基配列)は、正常DNAと異常DNAの両方を遅延用DNAコンジュゲート22と水素結合させてノイズDNAから分離するから、正常DNAと異常DNA双方がもつ塩基配列と相補的でなければならず、図6(b)に示すように、例えばGCAGATCG(配列番号4に記載)にするのが望ましい。なお、正常DNAと異常DNAだけに確実に結合できる塩基配列を選ぶためには、両者に対してだけ結合する確率を高くするため、塩基配列の長さは長い方がよい。また、遅延用DNAコンジュゲート22と分離用DNAコンジュゲート21のそれぞれのDNA総量は、DNA試料の濃度の20〜600倍とするのが適当である。
【0052】
次に、このような分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22の作成・合成方法について説明する。ビニル化DNAを合成するために、PCRによって、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22用のDNAを切り出す。上述の例では、TAGCGCAGATCG(配列番号2に記載)が分離用DNAコンジュゲート21のDNAであり、GCAGATCG(配列番号4に記載)が遅延用DNAコンジュゲート22のDNAとなる。
【0053】
次に、目的の塩基配列を有するDNAの5’末端をアミノ化(通常は、ヘキシル基を介してアミノ化)する。このようにして得られたアミノ化DNAを2.6mMになるように滅菌した超純水を加えて希釈する。次いで、MOSU(メタクリロイドオキシスクシンイミド)を71.388mMになるようにDMSO(ディメチルスルオキシド)で希釈する。そして、このようにして得たアミノ化DNAとMOSUを1:50の比率になるように加えて調整する。さらに、この調整溶液に対して、pH調整用としてpH9になるように炭酸水素ナトリウムと水酸化ナトリウムで調整した溶液を、アミノ化DNAの量と等量加える。
【0054】
そして、得られた溶液を一晩振とうする。その後、HPLC(High Performance Liquid Chromatography:高速液体クロマトグラフィー)を使用して、振とうした溶液中のビニル化DNAを、アミノ化DNA,MOSU,その他と分離する。ビニル化DNAは溶離液(TEAA;トリエチルアミンー酢酸とアセトニトリルの混合溶液)を含んでいるため、さらに真空乾燥機能を持った遠心エバポレーターで減圧濃縮する。
【0055】
次いで、重合溶液である10%のAAM(アクリルアミド)を53μmol窒素置換する。さらに、重合開始剤である1.34%のTEMD(N,N,N’N’−テトラメチルエチレンジアミン)を超音波で脱気した滅菌超純水で希釈する。これを重合開始剤である1.34%のAPS(過硫酸アンモニウム)を同じく超音波で脱気した滅菌超純水で希釈する。さらに濃縮したビニル化DNAを滅菌した超純水で希釈する。そして、100μlのDNAコンジュゲートを合成するために、上記のAAMを34μl、上記のTEMDとAPSを各々5μl、ビニル化DNAがAAMに対して0.01%モル〜0.05%モルになるように加え、100μlになるように滅菌超純水を追加して、60分程度放置しておくとアクリルアミド化されたDNAコンジュゲートが得られる。
【0056】
なお、未反応のビニル化DNAを除去するために、適当な大きさの孔径選択したゲルろ過を数十回に分けて行うと、純度の高いDNAコンジュゲートが得られる。本実施の形態1では、分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22の間で合成法は同じであるが、両者異なる合成法にすることもできる。
【0057】
続いて、本実施の形態1の遺伝子診断装置の動作について説明する。先ず遺伝子診断装置内に、DNA試料や各溶液を導入したキャピラリー管19をセットし、図3、図4に示すように両端に容器18a,18b内の緩衝液18を浸す。この電極16と電極17間に電源部9aによって後述する所定電圧を印加する。適当な電圧幅としては、望ましくは10〜20キロボルトが好ましいが、電解質や電極の状態により100ボルト〜30キロボルトでもよい。例えば、低電解質濃度の場合や、電極面積が大きな場合は電圧を低電圧にする。そして、最初から所定電圧を印加するのでなく、定電圧を印加する前に準備用の30キロボルト以上の高電圧を印加し、ノイズDNAをいち早く分離すれば、測定を迅速に行うことができる。
【0058】
ここで、所定の電圧を印加する理由を説明すると、遅延用DNAコンジュゲート22と分離用DNAコンジュゲート21に対するDNA試料の結合力と、電気泳動力による引離力との差が、DNAの泳動速度や移動差に大きな影響を与えるため、正常DNAと異常DNAとノイズDNAの分離が最も効果的に行われる所定の定電圧を印加して電気泳動する必要があるからである。すなわち、この電圧は最も泳動しにくい正常DNAを電気泳動することができるという条件と、高電圧にすると正常DNAと異常DNAの分解能が低下するので、分解能を上げるため、できるだけ低電圧でなければならないという条件の2つを充たす電圧である。従って、予め印加する電圧として最適な電圧をDNAごと、条件ごとに調べておき、当初30キロボルト程度以上の準備電圧を短時間印加した後、この電圧を印加するようにする。なお、キャピラリー管19内のDNAは負に帯電しており陽極側に進むため、電源部9aは電極16を正電位、電極17を負電位になるように印加する必要がある。また、電気泳動に当たっては、泳動時間を長くしすぎると、キャピラリー管19内で緩衝液18が乾燥するので、必要以上に長い時間泳動を行うのは避けなければならない。
【0059】
電圧が印加されるとDNA試料は泳動され、正常DNAと異常DNAの群は遅延用DNAコンジュゲート22との結合力が同等であるから、断続的な結合と離脱を繰り返しながらまったく同様に泳動していくため、ノイズDNAと、正常DNAと異常DNAの群との間に大きな移動差が生じる。そして、分離用DNAコンジュゲート21は正常DNAと異常DNAとの結合力に一塩基分の差があり、泳動されていくとき両者間に移動速度差が生じ、両者の間で移動差を生じる。
【0060】
次に、分離が行われる高温部10と分離部12、断熱部11の説明を行う。上述したように、高温部10でDNAの2本鎖を離すために90℃以上の(所定温度±5℃)になるように第1温調器13を用いて制御する。また、分離部12では、DNA試料の状態によっても異なるが、分離用DNAコンジュゲート21や遅延用DNAコンジュゲート22とDNA試料の結合力の差に基づいて、正常DNAや異常DNA、あるいはノイズDNAを分離できるように、高温部10の温度より10℃程度低温、すなわち15℃〜80℃、望ましくは20℃〜60℃の温度範囲の所定温度に保たなければならない。実施の形態1の遺伝子診断装置では、キャピラリー管19を覆っている分離部12の下部に、シリコンラバーヒーターやニクロム線等と熱電対やサーマル等の温度センサーを配置し、第2温調器14で所定の温度±1℃以下になるように管理する。ただ、環境温度によっては室温が目的の所定温度を超える場合もあり、シリコンラバーヒーターやニクロム線等に代えて、ペルチェ等の暖・冷可能な部品を使うのがよい。また、断熱部11はガラスウールや発砲剤、雲母、多孔質セラミックス等の断熱材もしくは、中身を真空にしたものを使用するのでもよい。断熱部11付近では遅延用DNAコンジュゲート22が、高温部10と分離部12の中間温度となるから、これを利用して正常DNAと異常DNAとをノイズDNAから分離することができる。
【0061】
続いて、遅延用DNAコンジュゲート22と分離用DNAコンジュゲート21の作用で泳動速度に差が生じ、移動差が生じた正常DNAと異常DNA、ノイズDNAを、どのようにして検出するか説明する。図7は、泳動開始からの経過時間を横軸にして吸光度を縦軸にしたときの経過時間と吸光度の関係図である。検出は紫外線の照射が正常DNAと異常DNA、ノイズDNAによって遮光されたときの吸光度を測定することで行う。実施の形態1においては、図5に示すようにキャピラリー管19の一部でガラス部を露出させ、D2ランプ15aから波長260nmの紫外線を照射し、このとき得られる紫外線照射光をフォトダイオード15bで検出し、吸光度を測定している。制御演算部8によって電源部9aを制御してD2ランプ15aを発光させ、フォトダイオード15bで検出した電流はプリアンプ15cで増幅し、A/Dコンバータ15dでデジタル量として吸光度に制御演算部8で換算される。制御演算部8はタイマ(図示しない)を内蔵し、泳動開始時間からの経過時間を測定することができる。図7において、時間的に早い方(I)が、DNAコンジュゲートと結合しないノイズDNA、時間が中位の(II)が異常DNA、時間が遅い(III)が正常DNAである。
【0062】
この関係図よりピークの高さと時間とピークの数を読み取れば、ピークの数からDNA試料に異常DNAが含まれていることが分かる。すなわち、ピークの数から異常DNAが存在するか否かが判定できる。なお、印加する電圧やDNA濃度、DNAの長さ(塩基の個数)によってはピークの数を異常DNAとノイズDNAだけにすることができるから、このときは異常DNAの通過量だけを測定する。また、ピークの高さを比べるのは、同じ条件下で電気泳動されたDNA中の泳動速度差のある2つの集合の吸光度差を示すから、異常DNAと正常DNAの存在比率に相当し、存在比率の判定が可能になる。異常DNAの存在量の判定は、標準DNA試料の検出ピーク波形から得られた標準データを制御演算部8に予め入力しておき、そのデータと測定したデータを比較して換算すればよい。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態1の遺伝子診断装置と遺伝子診断方法によれば、細胞や血液等から取り出したDNAの中で、特定のDNAを制限酵素などで取り出したDNA試料中に含まれる正常DNAと異常DNAの存在比率等が分かることにより、遺伝子診断、判定ができる。
【0064】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における遺伝子診断装置及び遺伝子診断方法について図1,図2,図4〜図8に基づいて説明する。図8は本発明の実施の形態2における遺伝子診断装置の装置構成図である。実施の形態2の遺伝子診断装置は、実施の形態1の遺伝子診断装置をDNA試料としてDNAの1本鎖のものに対応させたものであり、基本的に実施の形態1の遺伝子診断装置と同一であるから、特徴部分の説明を行うにとどめ、詳細な説明は実施の形態1に譲って省略する。
【0065】
図8に示すように、実施の形態2の遺伝子診断装置では、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22と1本鎖のDNA試料23を直接分離部12内に導入する。すなわち、電気泳動部6を基本的に分離部12だけで構成している。実施の形態1の高温部10、断熱部11は存在しない。分離用密閉流路カートリッジの形式で導入する場合は、この順序で分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22とDNA試料23が充填されたキャピラリー管19を、測定ごとに交換して分離部12に装着する。
【0066】
実施の形態1においては、2本鎖のDNA試料23が供給され、これを自動的に1本鎖にするために高温部10が設けられている。しかし、実施の形態2においてはDNA試料23として供給されるのが1本鎖のDNAであり、2本鎖のDNAを分離する必要がないため高温部10と断熱部11が不要になっている。従って、測定開始時には、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22が分離部12付近、DNA試料23が分離部12の入口付近になるように配置さえすれば、測定を直ちに実行できる。そして、分離部12の第2温調器14は、実施の形態1と同様に15℃〜80℃、望ましくは20℃〜60℃の温度範囲の所定温度に保つように制御される。このように温度制御することで、DNA試料23を、分離用DNAコンジュゲート21と遅延用DNAコンジュゲート22によって、正常DNAと異常DNAとノイズDNAに分離することができる。
【0067】
このように、実施の形態2の遺伝子診断装置は、高温部10と断熱部11が不要であるから、診断装置の構成が簡単化でき、制御も容易で、扱い易いものとすることができる。
【0068】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、以下のような有利な効果が得られる。
【0069】
請求項1に記載された遺伝子診断装置は、第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試料は電気泳動することができるが、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲートは高分子化合物と結合したものであるから、泳動速度はDNA試料と比較すると数%にすぎず(但し、高分子化合物の種類と長さに依存する)、相対的には擬似固定状態にすることができる。従って、DNA試料は電気泳動によって、遅延用DNAコンジュゲート、次いで、分離用DNAコンジュゲート部分を通過する。その際に、まず遅延用DNAコンジュゲートとの水素結合力差を利用して正常DNAと異常DNA群の泳動速度をノイズDNAに対して低下させ、更に、分離用DNAコンジュゲートにより正常DNAの泳動速度を異常DNAの泳動速度に対して低下させることができる。
【0070】
なお、DNA試料を遅延させる方法としてアフィニティDNAがあるが、アフィニティDNAはキャピラリー管等の密閉流路の壁面に固定することが一般的であり、その固定処理は難しく、一度使用すると通常密閉流路を使い捨てにしなければならないが、本発明によれば擬似固定であるため使い捨てにする必要はなく、両コンジュゲートや試料の各濃度調整および両コンジュゲートや試料の混合比率の調整がきわめて容易になる。
【0071】
正常DNA及び異常DNAは移動しながら、まず遅延用DNAコンジュゲートの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズDNAは、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で検出される。しかし、異常DNAには、遅延用DNAコンジュゲートのほか、分離用DNAコンジュゲートとの結合力(但し、正常DNAに比べて一塩基分弱い)が作用し、コンジュゲートとの作用をなかなか振り切れず、ノイズDNAよりも遅れて泳動され、ノイズDNAの次に検出部で検出される。正常DNAには最大の結合力が作用し、ノイズDNAは勿論のこと、異常DNAよりも遅れて泳動され、最後に検出部で検出される。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせることができる。電気泳動とDNAの水素結合を利用するから数分〜十数分という短時間のうちにDNAを分離でき、且つ所定の電圧を印加するだけで良いから分解能の高い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有無を検出することができ、小型、軽量、低ランニングコストの安価な装置とすることができ、診断の自動化がきわめて容易である。これにより、癌・糖尿病・高血圧・アルツハイマーなどの様々な遺伝子の変異に起因する疾患に関して、その疾患に対する発症の危険性を予知し、発症前の予防あるいは極めて早期の発見をすることができる。また、各個人が持つ遺伝子の多様性を調査することで、薬品の副作用と効果の有無をあらかじめ推測し各個人に最も適合した医薬品を提供することが可能になる。さらに、突然変異が起き癌化してしまった組織から採取した遺伝子の変異を速やかに決定して利用することができる。個人を特定し、犯罪捜査や親子関係の特定、各個人のセキュリティーの確保に決定的な信頼性を遺伝子診断装置によって付与することができる。
【0072】
請求項2に記載された遺伝子診断装置は、密閉流路が分離用密閉流路カートリッジであるから、予めリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液と、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲート、DNA試料とを充填した分離用密閉流路カートリッジを用意しておくことができ、測定毎に分離部に分離用密閉流路カートリッジを交換して装着すればよく、測定を簡単に且つ容易に行うことができる。
【0073】
請求項3に記載された遺伝子診断装置は、密閉流路が1以上設けられたから、密閉流路ごとに遅延用DNAコンジュゲートと分離用DNAコンジュゲート、DNA結合制御剤を変化させて、DNA試料の正常DNAと異常DNAの分離環境を密閉流路ごとに変化させることができる。
【0074】
請求項4に記載された遺伝子診断装置は、遅延用DNAコンジュゲートが1種類以上含まれているから、泳動速度を遅延用DNAコンジュゲートの比率を変えることで変化させることができる。
【0075】
請求項5に記載された遺伝子診断装置は、分離用DNAコンジュゲート及び/または遅延用DNAコンジュゲートがビニル化したDNAであるから、DNA試料の正常DNAと異常DNAを明確に分離して測定することが可能となる。
【0076】
請求項6に記載された遺伝子診断装置は、分離部が内部の液体を20℃〜60℃に調整して正常DNAと異常DNAを分離するから、正常DNAと異常DNAを温度調整により分離用DNAコンジュゲートと遅延用DNAコンジュゲートに結合したり離脱させたりすることが可能であり、結合力を温度で調整でき、分離後それぞれを検出部で測定することが可能となる。
【0077】
請求項7に記載された遺伝子診断装置は、密閉流路が内径50〜100μmのフューズドシリカ製キャピラリー管であるから、紫外線を90%以上透過でき、紫外線の通過量を検出することで異常DNAの検出が容易にできる。
【0078】
請求項8に記載された遺伝子診断装置は、密閉流路が溝のある板と紫外線が90%以上透過する板との組み合わせであるから、紫外線を90%以上透過でき、紫外線の通過量を検出することで異常DNAの検出が容易にできる。
【0079】
請求項9に記載の発明は、2重螺旋のDNA試料を引き離して1本鎖のDNA試料とすることを特徴とする請求項1〜8に記載の遺伝子診断装置であるから、DNA試料を1重鎖とする前処理を行うことなくそのまま用いることができるので、更に診断の自動化を図ることが可能である。
【0080】
請求項10に記載された遺伝子診断方法は、第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加し、DNA試料は電気泳動することができるが、分離用DNAコンジュゲート、遅延用DNAコンジュゲートは高分子化合物と結合したものであるから、泳動速度はDNA試料と比較すると数%にすぎず(但し、高分子化合物の種類と長さに依存する)、相対的には擬似固定状態にすることができる。従って、DNA試料は電気泳動によって、遅延用DNAコンジュゲート、次いで、分離用DNAコンジュゲート部分を通過する。その際に、まず遅延用DNAコンジュゲートとの水素結合力差を利用して正常DNAと異常DNA群の泳動速度をノイズDNAに対して低下させ、更に、分離用DNAコンジュゲートにより正常DNAの泳動速度を異常DNAの泳動速度に対して低下させることができる。
【0081】
なお、DNA試料を遅延させる方法としてアフィニティDNAがあるが、アフィニティDNAはキャピラリー管等の密閉流路の壁面に固定することが一般的であり、その固定処理は難しく、一度使用すると通常密閉流路を使い捨てにしなければならないが、本発明によれば擬似固定であるため使い捨てにする必要はなく、両コンジュゲートや試料の各濃度調整および両コンジュゲートや試料の混合比率の調整がきわめて容易になる。
【0082】
正常DNA及び異常DNAは移動しながら、まず遅延用DNAコンジュゲートの結合力の作用を受け、この作用を受けないノイズDNAは、電圧を印加したとき一番先に泳動されて検出部で検出される。しかし、異常DNAには、遅延用DNAコンジュゲートのほか、分離用DNAコンジュゲートとの結合力(但し、正常DNAに比べて一塩基分弱い)が作用し、コンジュゲートとの作用をなかなか振り切れず、ノイズDNAよりも遅れて泳動され、ノイズDNAの次に検出部で検出される。正常DNAには最大の結合力が作用し、ノイズDNAは勿論のこと、異常DNAよりも遅れて泳動され、最後に検出部で検出される。これにより3つのDNAの検出時間に差を生じさせることができる。電気泳動とDNAの水素結合を利用するから数分〜十数分という短時間のうちにDNAを分離でき、且つ所定の電圧を印加するだけで良いから分解能の高い最適電圧にきわめて簡単に調整でき、正確にDNAの異常の有無を検出することができる。この遺伝子診断方法によれば、遺伝子の変異に起因する疾患に関して、その疾患に対する発症の危険性を予知し、予防と極めて早期の発見をすることができる。また、各個人が持つ遺伝子の多様性を調査することで、薬品の副作用と効果の有無をあらかじめ推測し、各個人に最も適合した医薬品を提供することが可能になる。さらに、癌化してしまった組織から採取した遺伝子の変異を速やかに決定することができる。個人を特定し、犯罪捜査や親子関係の特定、各個人のセキュリティーの確保に決定的な信頼性を与えることができる。
【0083】
【配列表】
Figure 0003781687
Figure 0003781687

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の外観図
【図2】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の上蓋開放外観図
【図3】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の装置構成図
【図4】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の制御回路要部図
【図5】本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の分離用DNAコンジュゲートと遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料との導入状態図
【図6】(a)本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の分離用DNAコンジュゲートとDNA試料との関係概念図
(b)本発明の実施の形態1における遺伝子診断装置の密閉流路内の遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料との関係概念図
【図7】経過時間と吸光度の関係図
【図8】本発明の実施の形態2における遺伝子診断装置の装置構成図
【符号の説明】
1 電源スイッチ
2 操作ボタン
3 表示パネル
4 上蓋
5 筐体
6 電気泳動部
7 支持台
8 制御演算部
9 電源ボックス
9a 電源部
10 高温部
11 断熱部
12 分離部
13 第1温調器
14 第2温調器
15 検出部
15a D2ランプ
15b フォトダイオード
15c プリアンプ
15d A/Dコンバータ
16,17 電極
18 緩衝液
18a,18b 容器
18d リニアポリマーゲル
19 キャピラリー管
20 吸引ポンプ
21 分離用DNAコンジュゲート
22 遅延用DNAコンジュゲート
23 DNA試料

Claims (10)

  1. 緩衝液を収容し第1電極が浸漬された第1容器と、
    緩衝液を収容し第2電極が浸漬された第2容器と、
    前記第1容器と前記第2容器間をリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たして連絡した密閉流路と、
    前記第2電極に正電位を印加するとともに前記第1電極に負電位を印加する電源部と、
    前記電源部を制御して前記第2電極と前記第1電極間に所定の定電圧を印加する制御部と、
    前記密閉流路に設けられ、内部を通過するDNAの通過量を検出する検出部を備え、
    前記密閉流路には、前記緩衝液の中に、
    DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差から前記DNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートと、
    第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、該第2の塩基配列が正常DNAと異常DNAとに対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートと、
    さらにDNA試料とが充填され、
    前記定電圧を印加することにより前記密閉流路内のDNAが電気泳動され、前記検出部が正常DNAと異常DNAとノイズDNAの通過量をそれぞれ測定することを特徴とする遺伝子診断装置。
  2. 前記密閉流路が、リニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液で充たされ、且つ該緩衝液の中に前記分離用DNAコンジュゲートと前記遅延用DNAコンジュゲートとDNA試料とが分離状態で、リニアポリマーを挟んでこの順序で充填された分離用密閉流路カートリッジであって、該分離用密閉流路カートリッジを交換可能に装着する分離部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の遺伝子診断装置。
  3. 前記密閉流路が1以上設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の遺伝子診断装置。
  4. 前記遅延用DNAコンジュゲートが1種類以上含まれていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  5. 前記分離用DNAコンジュゲート及び/または前記遅延用DNAコンジュゲートがビニル化したDNAであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  6. 前記密閉流路内の液体を20℃〜60℃に調整して正常DNAと異常DNAを分離することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  7. 前記密閉流路が内径50〜100μmのフューズドシリカ製キャピラリー管であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  8. 前記密閉流路が溝のある板と紫外線が90%以上透過する板との組み合わせであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  9. 前記密閉流路を加熱し、2重螺旋のDNA試料を引き離して1本鎖のDNA試料とする高温部を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の遺伝子診断装置。
  10. 第1容器に緩衝液を収容して第1電極を浸漬するとともに第2容器にも緩衝液を収容して第2電極を浸漬し、前記第1容器と前記第2容器間をリニアポリマーとDNA結合制御剤を含む緩衝液を充たして密閉流路で連絡し、次いで、該密閉流路内の緩衝液の中に、前記DNA試料に水素結合可能な第1の塩基配列と高分子化合物とが結合し、結合力の差から前記DNA試料を正常DNAと異常DNAに分離する分離用DNAコンジュゲートを充填し、続いて、第2の塩基配列と高分子化合物とが結合し、正常DNAと異常DNAとが該第2の塩基配列に対して同等の結合力を備えてノイズDNAだけを区別する遅延用DNAコンジュゲートを充填し、さらにDNA試料を加え、その後、前記第2電極に正電位を印加するとともに前記第1電極に負電位を印加し、該第2電極と第1電極間に所定の定電圧を印加して、前記密閉流路内のDNA試料を電気泳動させ、正常DNAと異常DNAとノイズDNAを分離し、正常DNAの定量または異常DNAの定量、または、正常DNAと異常DNAの比率、もしくは、異常DNAを検出することを特徴とする遺伝子診断方法。
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