JP3780106B2 - トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷及びトナージェット法の如き画像形成するためのトナー、特に、静電荷像を現像するためのフルカラー複写機のカラー現像剤に適したトナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42−23910号公報及び特公昭43−24748号公報等に記載されている如き多数の方法が知られている。一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙等の転写材にトナー画像を転写した後、加熱、圧力或いは溶剤蒸気等により定着して複写物を得るものである。
【0003】
上述の画像形成工程の最終工程の転写材上に転写されたトナー画像を紙等のシート上に定着させる定着工程に関しては、種々の方法や装置が開発されているが、現在最も一般的な方法は、加熱ローラーによる圧着加熱方式である。
かかる加熱ローラーによる圧着加熱方式では、トナーに対し離型性を有する材料で表面が形成されている加熱ローラー表面に、転写材(=被定着シート)のトナー画像が形成されている側の面を加圧下で接触しながら通過せしめ、該トナー画像の定着が行われる。このように、圧着加熱方式では、加熱ローラー表面と被定着シート上のトナー画像とが加圧下で接触するため、トナー画像を被定着シート上に融着する際の熱効率が極めて良好で、トナー画像の定着が迅速に行なえるので、高速度電子写真機において非常に有効な方法となる。
【0004】
しかしながら、上記方法では、加熱ローラー表面に、溶融状態のトナー画像が加圧下で接触するために、トナー画像の一部が定着ローラー表面に付着・転移することが起こり、連続して画像形成した場合に、次の被定着シートにこれが再転移して所謂オフセット現象を生じ、被定着シートが汚れる場合がある。従って、加熱ローラーによる圧着加熱方式では、加熱定着ローラー表面に対してトナーが付着しないようにすることが必須条件の1つとなる。このため、定着温度領域の広い耐オフセット性の高いトナー用結着樹脂の開発が望まれているのが現状である。
【0005】
又、2色カラー複写機や、フルカラー複写機の検討及び実用化も多くなされている。例えば、「電子写真学会誌」Vol 22,No.1(1983)や「電子写真学会誌」Vol 25,No.1,P52(1986)に記載されている如く、色再現性、階調再現性の向上に対する報告もある。
しかし、カラー電子写真画像は、テレビ、写真、カラー印刷物の場合のように実物と直ちに対比されて評価されることもなく、実物よりも美しく加工されたカラー画像を見馴れた人々にとっては、現在実用化されているフルカラー電子写真画像は、必ずしも満足できるものではない。
【0006】
フルカラー電子写真法では、複数回の現像を行い、同一支持体上に色の異なる数種のトナー層の重ね合せを必要とするため、カラー電子写真法に使用されるカラートナーに要求される特性として、下記に挙げるものが必要となる。
▲1▼定着されたトナーが、光に対して乱反射して色再現を妨げることのないように、加熱した場合にトナー粒子の形が判別できない程度の完全溶融状態に近い状態となること、即ち、加熱定着されたときに定着面がフラットになることが必要である。
▲2▼色の異なるトナーが重ねられた場合に、そのトナー層の下にある異なった色調のトナー層を遮蔽することがないように、透明性を有する着色トナーであること。
このように、フルカラー複写機用のトナーには、単に定着温度領域が広いことだけではなく、トナーの透明性と、定着されたときに定着面がフラットになること等の厳しい要件が求められる。
【0007】
従来、トナーを構成する結着樹脂に用いるポリエステル樹脂の定着温度領域を拡げる目的で、オフセット防止剤を用いる方法が、特開昭57−208559号公報、特開昭58−11954号公報及び特開昭59−228861号公報に記載されているが、本発明者の検討によれば、この方法では流動性の低下が生じるため、二成分系現像剤とした場合にキャリヤのスペント化が促進され、更に、フルカラー用トナーの場合には、トナーの透明性が損なわれるという問題があった。又、特開昭57−109825号公報及び特公昭59−11902号公報には、多価カルボン酸を用いてポリエステル樹脂中に三次元構造を持たせることによって、トナーの耐オフセット性を向上させることが記載されている。しかし、これらの方法では、耐オフセット性を向上させることはできるものの、分子量分布において高分子量域の成分が多くなるので、トナー化した際に弾性及び粘性が大きくなって、定着の際に、比較的低温領域では定着面がフラットにならず、フルカラートナー用としては色再現という面での問題があった。更に、3価以上のポリカルボン酸、ポリオールによって三次元構造を持たせる方法が、特開昭59−7960号公報、特開昭59−9669号公報、特開昭59−29255〜8号各公報に開示されているが、フルカラー用トナーとしての定着能力が、未だ不充分であった。
以上のように、トナーの定着温度領域を拡げることと、カラートナー特性である帯電特性、流動性、耐久性、透明性、定着面の平滑性を同時に満足することは極めて難しい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を改良した新規なトナー、好ましくは、カラートナーを提供することにある。
即ち、本発明の目的は、特に、熱ローラーで定着した場合に、比較的低温領域においても、光に対して乱反射して色再現を妨げることのないような平滑な定着面が形成されるトナーを提供することにある。
更に、本発明の目的は、流動性に優れ、凝集を起こさず、定着された際の透明性にも優れる熱ローラー定着に適したトナー提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有するトナーにおいて、結着樹脂がポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂が、酸成分として、[1]フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の中から選ばれる不飽和ジカルボン酸を樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%、及び、[2]下記一般式(1)で示されるビフェニル多価カルボン酸を樹脂の構成モル比で5mol%乃至30mol%の範囲で含み、アルコール成分として、下記式(2)で示される化合物を樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%、及び、下記式(3)で示される化合物を樹脂の構成モル比で5mol%乃至40mol%の範囲で含んで構成されていることを特徴とするトナーである。
【0010】
【化2】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明者は、上記した従来技術の課題について鋭意検討の結果、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有するトナーにおいて、結着樹脂として、特定の構成を有するポリエステル樹脂を用いれば、熱ローラーで定着した場合に、比較的低温領域においても、光に対して乱反射して色再現を妨げることのない平滑な定着面が形成されるトナーが得られ、更に、カラートナーに要求される定着された際の透明性にも優れるトナーが得られることを知見して本発明に至った。
【0012】
以下、本発明のトナーの具体的構成について説明する。
先ず、本発明のトナーを構成する結着樹脂に用いる特定の構成を有するポリエステル樹脂について説明する。ポリエステル樹脂は、通常、酸成分としてポリカルボン酸(一般にジカルボン酸)と、アルコール成分として多価アルコールを用い、これらの縮重合によって得られるが、本発明のトナーにおいては、酸成分及びアルコール成分として下記に挙げる特定の化合物の組み合わせを用い、且つ、これらが樹脂中に特定の構成割合となるように含まれた特定のポリエステル樹脂を用いる。
【0013】
本発明で用いるポリエステル樹脂は、その酸成分として、下記[1]及び[2]の成分を用い、且つ、これらが樹脂中に特定の割合で含まれるように構成する。
[1]フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の中から選ばれる不飽和ジカルボン酸を、樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%の範囲内で用いる。
[2]下記一般式(1)で示されるビフェニル多価カルボン酸を、樹脂の構成モル比で5mol%乃至30mol%の範囲内で用いる。
【0014】
【化3】
【0015】
本発明者は、トナーの結着樹脂の構成について鋭意検討の結果、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用い、該樹脂を構成する酸成分に、上記したように、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸から選ばれる不飽和ジカルボン酸を用いれば、本発明のトナーを用いて電子写真画像を形成した場合に、画像の彩度向上効果、及び、樹脂軟化点の低下による低温定着化効果が得られることがわかった。かかる効果は、結着樹脂の構成成分として用いる上記の酸成分は、いずれも不飽和二重結合とカルボキシル基が隣接した構造を有するので、化学構造上の親和性に基づき、トナー(特に、カラートナー)を構成する着色剤として用いられる、例えば、−COOH、−NH2、−NH−、−NHCO−或いは−CN等の官能基を有する有機顔料の分散性を格段に向上させることができる結果、得られたものと考えている。
【0016】
しかし、ポリエステル樹脂の酸成分に上記した化合物を用いると、上記の優れた効果が得られるものの、その一方で、耐オフセット性や耐ブロッキング性がやや低下する傾向があることがわかった。そこで、本発明のトナーでは、ポリエステル樹脂を構成する酸成分として、更に、上記一般式(1)で示されるp−フェニレン構造を有するビフェニル多価カルボン酸を併有させることによって、不飽和ジカルボン酸を用いることによって生じる上記の弊害を解消させる。即ち、結着樹脂の構成成分に、上記一般式(1)で示されるビフェニル多価カルボン酸を用いれば、ポリエステル樹脂中にp−フェニレン構造が導入されるので、ポリエステル樹脂の構成材料に、フマル酸、マレイン酸或いは無水マレイン酸の不飽和ジカルボン酸を用いることによって得られる上記の優れた特長が損なわれることなく、トナーを構成する結着樹脂の剛直性を向上させることが可能となる。この結果、本発明のトナーは、耐オフセット性や耐ブロッキング性が著しく向上したトナーとなる。
【0017】
更に、本発明において、ポリエステル樹脂を構成する酸成分として使用する、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸から選ばれる不飽和ジカルボン酸の量が、樹脂構成モル比で10mol%未満であると、低温定着化及び有機顔料の彩度向上の効果が見られず、一方、45mol%を超えた場合は、耐オフセット性や耐ブロッキング性が悪化するという弊害を生じる。又、p−フェニレン構造を有する酸成分である上記一般式(1)で示されるビフェニル多価カルボン酸の量が5mol%未満である場合は、耐オフセット性が不充分となり、一方、30mol%を超えた場合には、トナー画像を定着させる場合に、定着面の平滑性が損なわれる。
【0018】
本発明のトナーを構成する結着樹脂に用いるポリエステル樹脂は、上記した酸成分と共に、アルコール成分として下記に挙げる化合物が用られて構成される。即ち、本発明においては、アルコール成分として、下記式(2)で示される化合物が、樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%の範囲内で用い、且つ、下記式(3)で示される化合物が、樹脂の構成モル比で5mol%乃至40mol%の範囲で用いる。
【0019】
【化4】
【0020】
本発明のトナーの結着樹脂に用いるポリエステル樹脂を構成するアルコール成分として、上記式(2)で示される化合物を用いると、先に述べた酸成分として用いる一般式(1)で示されるp−フェニレン構造を有するビフェニル多価カルボン酸と反応してエステル化分子骨格が形成される。本発明者の検討によれば、このようなエステル化分子骨格を有するポリエステル樹脂を結着樹脂に用いることによって、トナーの低温定着性の向上、及び、定着面の平滑性の向上の達成が可能となる。更に、上記式(3)で示される化合物と、一般式(1)で示されるp−フェニレン構造を有するビフェニル多価カルボン酸との反応によってもエステル化分子骨格が形成されるが、本発明者の検討によれば、該エステル化分子骨格が存在するポリエステル樹脂を使用することによって、トナーの透明性を向上させることができ、更に、トナーの耐オフセット性や耐ブロッキング性を良化させることができる。
【0021】
上記したアルコール成分のポリエステル樹脂中における含有量については、上記した式(2)で示される化合物の量が、樹脂の構成モル比で、10mol%未満であると、上記したトナーの低温定着性の向上、及び定着面の平滑性の達成の効果が不充分となり、一方、式(2)で示される化合物の量が45mol%を超えた場合には、耐オフセット性が不充分となる。
又、上記した式(3)で示される化合物の量が、樹脂の構成モル比で、5mol%未満のときには、トナーの透明性、耐オフセット性が不充分となり、一方、40mol%を超えて使用した場合には、低温定着性が悪化する。
【0022】
本発明のトナーの結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂は、上記で説明した特定の酸成分及びアルコール成分が特定量用いられて構成されていればよいが、ポリエステル樹脂を形成する場合に、例えば、以下に挙げるような、これ以外の酸成分及びアルコール成分を用いてもよい。
2価のカルボン酸として、例えば、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、インドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、インドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、これらの酸の無水物、若しくは低級アルキルエステル等の脂肪族系のジカルボン酸類を用いることができる。又、必要に応じて、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸の無水物、若しくは低級アルキルエステル等の芳香族系のジカルボン酸類を用いてもよい。
【0023】
又、3価以上の多価アルコールとして、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリぺンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等を用いることもできる。
【0024】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸の無水物、若しくは低級アルキルエステル等を用いることができる。
【0025】
上記のような結着樹脂を有する本発明のトナーは、更に、テトラヒドロフラン(THF)不溶分を測定した場合に、その不溶分が0.1wt%〜10.0wt%であり、且つ、トナーの酸価が2〜20mgKOH/gとなるように構成されている場合に、より優れた特性を有するものとなる。
即ち、トナーのTHF不溶分が0.1wt%未満である場合には、耐オフセット性が充分とはいえなくなり、一方、10.0wt%を超えると、定着された場合に、その定着面の平滑性が損われる傾向がある。又、トナーの酸価が2mgKOH/g未満の場合には、低湿下で、トナーのチャージアップが生じ、画像濃度が低下する傾向があり、一方、酸価が20mgKOH/gを超える場合は、高湿下でトナー飛散を生じる場合がある。
【0026】
本発明のトナーを構成する着色剤としては、従来公知のものをいずれも使用することができるが、次の様なものが挙げられる。
例えば、マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50、51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90.112、114、122、123、163、202、206、207、209、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35等が挙げられる。
【0027】
これらの顔料は単独で使用しても構わないが、染料と併用させれば、画像を形成した場合に、その鮮明度を向上させることができるので画質向上の点でより好ましい。特に、フルカラー画像に用いるカラートナーに用いる場合は、画質を向上させる点からより好ましい。
その際に用いられるマゼンタ用染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパースバイオレット1等の油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28等の塩基性染料が挙げられる。
【0028】
その他の着色顔料としては、シアン用着色顔料として、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17、C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、又は下記式(a)で示される構造を有するフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜4個置換した銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0029】
【化5】
【0030】
イエロー用着色顔料としては、C.l.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、83、109、C.I.バットイエロー1、3、20等が挙げられる。
これらの着色剤の使用量は、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜60重量部、更には、0.5〜50重量部程度の範囲で使用することが好ましい。
【0031】
又、本発明のトナーにおいては、上記した構成材料の他に、必要に応じて、一種又は二種以上の離型剤を用いて、トナー中に含有させてもかまわない。
本発明のトナーに用いることのできる離型剤としては、下記に挙げるようなものがある。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、又、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、又は、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、及び、脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの等が挙げられる。更に、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸等の、飽和直鎖脂肪酸類、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸等の不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール等の飽和アルコール類、ソルビトール等の多価アルコール類、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の、不飽和脂肪酸アミド類、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩(一般に、金属石けんといわれているもの)、又、脂肪族炭化水素系ワックスに、スチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、又、ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、又、植物性油脂の水素添加等によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
【0032】
上記の中でも、本発明のトナーに特に好ましく用いられるワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。例えば、アルキレンを高圧下でラジカル重合或いは低圧下でチーグラー触媒で重合した低分子量のアルキレンポリマー、高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー、一酸化炭素、水素からなる合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から、或いはこれらを水素添加して得られる合成炭化水素等のワックスがよい。更に、プレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により炭化水素ワックスの分別を行ったものがより好ましく用いられる。母体としての炭化水素は、金属酸化物系触媒(多くは2種以上の多元系)を使用し、一酸化炭素と水素の反応によって合成されたもの、例えば、ジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)、或いは、ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(固定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素や、エチレン等のアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素が、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であるので好ましい。本発明のトナーの離型剤として用いるものとしては、特に、アルキレンの重合によらない方法により合成されたワックスが、その分子量分布からも好ましい。
【0033】
更に、本発明のトナーに離型剤として添加する場合に用いるものとしては、その分子量分布で、分子量400〜2,400の領域に、好ましくは、450〜2,000、特に好ましくは、500〜1,600の領域に、ピークが存在するものがよい。離型剤に、このような分子量分布を有するものを用いれば、本発明のトナーに、更に好ましい熱特性を持たせることができる。
本発明のトナーに用いる上記したような離型剤の量としては、結着樹脂100重量部あたりで、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部とすることが好ましい。
又、これらの離型剤をトナーに含有させる場合には、通常、結着樹脂を溶剤に溶解した後、樹脂溶液温度を上げ、撹拌しながら添加混合する方法や、結着樹脂や着色剤等のトナー形成材料を混練する時に混合する方法等でトナー(結着樹脂)中に含有させられる。
【0034】
本発明のトナーには、更に、負帯電性流動化剤を添加してもよい。この際に使用する負帯電性流動化剤としては、着色剤含有樹脂粒子(トナー)に添加することにより、流動性が向上し得るものであれば、どのようなものでも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末等のフッ素系樹脂粉末、湿式製法シリカ、乾式製法シリカ等の微粉末シリカ、酸化チタン微粉末、アルミナ微粉末、更に、これらの微粉末をシランカップリング剤、チタンカップリング剤或いはシリコンオイル等により表面処理を施した微粉末等が挙げられる。
【0035】
本発明のトナー中に添加させることのできる正帯電性トナー用の流動化剤としては、上記したものの他、更に、上記した微粉末を、下記に列挙したようなアミノ基を有するカップリング剤、或いは、シリコーンオイルで処理したものを必要に応じて用いてもかまわない。
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
シリコーンオイルとしては、例えば、下記に挙げる一般式(b)で示される側鎖にアミノ基を有する部分構造を具備しているアミノ変性シリコーンオイル等が用いられる。
【化8】
(上記式中、Rlは、水素、アルキル基、アリール基、又はアルコキシ基を表わし、R2は、アルキレン基、フェニレン基を表わし、R3及びR4は、水素、アルキル基或いはアリール基を表わす。但し、上記アルキル基、アリール基、アルキレン基、フェニレン基はアミンを有していてもよいし、又、帯電性を損ねない範囲で、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。m及びnは正の整数を示す。)
【0039】
上記したような構造を有する市販のアミノ変性シリコーンオイルとしては、例えば、下記の表1に挙げたようなものがあり、いずれも本発明のトナーに好ましく使用できる。
【0040】
【表1】
表1:微粉体の表面処理に使用できるアミノ変性シリコーンオイル
表1に掲げたアミン当量とは、アミン1個あたりの当量(g/eqiv)であり、分子量を1分子あたりのアミン数で割った値である。
【0041】
更に、本発明のトナーに用いる流動化剤としては、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものを用いた場合に良好な結果を与える。又、その添加量としては、トナー100重量部に対して流動化剤0.01〜8重量部、好ましくは0.1〜4重量部の範囲で使用することが好ましい。
【0042】
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、着色剤、必要に応じて添加する離型剤や帯電制御剤、又はその他の添加剤を、ヘンシェルミキサー、ボールミルの如き混合機により充分混合し、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、混和及び練肉して樹脂類を互いに相溶せしめ、溶融混練物を冷却固化後に固化物を粉砕し、粉砕物を分級して本発明のトナーを得ることができる。
更に、その後、必要に応じて、流動化剤等とトナーをヘンシェルミキサーの如き混合機により充分混合し、トナー粒子表面に添加剤を外添することによって本発明のトナーを得ることができる。
【0043】
本発明のトナーのTHF可溶分の分子量及び分子量分布、酸価及び水酸基価、THF不溶分の割合、ガラス転移温度の測定方法は以下に示す通りである。尚、後述する実施例についても、これらの方法によって測定した。
【0044】
(1)分子量の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)によるクロマトグラムの分子量は、次の条件で測定される。即ち、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流す。現像剤をTHFに溶解後、1晩静置した後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を測定用試料として用いる。
そして、試料濃度として0.05〜0.6重量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50〜200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製した検量線の対数値とカウント数との関係から測定し、その後平均分子量を算出した。
この際に使用する検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製或いは、東洋ソーダ工業社製の分子量が、6×l02、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0045】
測定に使用するカラムとしては、103〜2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せて用いるのがよく、例えば、Waters社製のμ−styragel 500、103、104、105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA−801、802、803、804、805、806、807の組合せを使用することが好ましい。
【0046】
(2)酸価の測定方法
試料を精秤し、混合溶媒に溶かし水を加える。この液を測定用試料とし、JlS K1557−1970に準じてガラス電極を用いて0.1N−NaOHで電位差滴定を行って酸価を求めた。
【0047】
(3)THF不溶分の割合
トナーを秤量し、円筒ろ紙(例えば、No.86Rサイズ 28×10mm東洋ろ紙社製)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mlを用いて、約6時間抽出する。このとき、THFの抽出サイクルが約4〜5分に1回になるような還流速度で抽出を行なう。抽出終了後、円筒ろ紙を取り出し、秤量することによってポリエステル樹脂のTHF不溶分を測定する。そして、測定に使用したトナー量から、トナーのTHF不溶分の割合を求めた。
【0048】
図1に、上記で使用し得るソックスレー抽出装置の一例を示した。容器1に入っているTHF2はヒーター8で加熱されて気化し、気化したTHFは管7を通って冷却器5に導かれる。冷却器5は、冷却水6で常時冷却されている。冷却器5で冷却されて液化したTHFは、円筒ろ紙3を有する貯留部に溜り、THFの液面が中管4よりも高くなると、貯留部からTHFが容器1に排出される。円筒ろ紙に入っているトナーは循環するTHFによって抽出処理される。
【0049】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。先ず、トナーの結着樹脂として用いるポリエステル樹脂を製造した。
<ポリエステル樹脂の製造>
表2に、各ポリエステル樹脂の構成材料として使用した酸成分及びアルコール成分をまとめて示した。表2に示した処方の材料を、温度計、ステンレススチール製攪拌器、ガラス製窒素導入管、流下式コンデンサーを備えた四つ口フラスコ内に入れ、更に、ハイドロキノンを添加してこれをマントルヒーターにセットし、窒素雰囲気、減圧下において、温度200℃で攪拌しながら反応させた。そして、酸価を測定しながら反応の進行を追跡し、表2に示した所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、次いで室温にまで冷却し、淡黄色の固体よりなるNo.1〜8の8種類のポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂について、先に説明した方法で、THF不溶分、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定した。その結果を表3にまとめて示した。
【0050】
【表2】
表2:ポリエステル樹脂の材料
【0051】
【表3】
表3:実施例及び比較例で用いたポリエステル樹脂の特性値
【0052】
<実施例1〜6及び比較例1、2>
各実施例及び比較例では、上記で得られたポリエステル樹脂を着色剤として夫々用い、これに、着色剤として銅フタロシアニンを5質量部、電荷制御剤として「ボントロンE−81」(オリエント化学社製)を4質量部加え、これらを予備混合した後、溶融、混練、冷却、粉砕、分級の工程による粉砕方法で、夫々、平均粒径が8.5μmの青色樹脂粒子粉末を得た。各実施例及び比較例で使用したポリエステル樹脂を表4に示した。
更に、上記で得られた青色樹脂粒子粉末に、表面をイソブチルトリメトキシシランでカップリング処理したBET100m2/gの疎水化酸化チタンを、青色粒子粉末100質量部に対して、疎水化酸化チタンが1.0質量部の割合となるように外添して、本発明の実施例及び比較例である各トナーを得た。
【0053】
次に、このようにして得られた各トナー5質量部と、シリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)95質量部とをV型ブレンダで混合し、各トナーを有する8種類の二成分系現像剤を得た。
これらの二成分系現像剤について、該現像剤を搭載したキヤノン社製フルカラー複写機CLC700を使用して初期画像を得、その特性を下記の評価方法により評価した。評価結果は、表4にまとめて示した。
【0054】
[評価方法]
(1)最低定着温度
上記の複写機内で画出した未定着のトナー画像を取り出して、外部定着器により、下記の方法で定着温度領域についてのテストを行なった。ここで用いた外部定着機の定着ローラーは、上下ローラー共、高耐熱性シリコンゴムで覆われており、上ローラーの内部に加熱用ヒーターが設置されているものを使用した。
上記熱ローラー定着器を用い、温度20℃、相対湿度20%の環境条件下において、80g/m2の転写紙に転写せしめた各トナー画像を線速度l33mm/秒で定着せしめる操作を、熱ローラーの設定温度を120℃から段階的に上昇させながら行った。
そして、上記のようにして得られた定着トナー画像である4cm×4cmのベタトナー画像を二つ折にし、折れた部分を目視でチェックして、確実に定着していると認められた定着画像に係る最低の熱ローラーの設定温度をもって最低定着温度と定義した。表4にその結果を示した。
【0055】
(2)ホットオフセット発生温度
上記で行なった最低定着温度の測定に準じてトナー画像を転写紙に転写して、上記と同様の熱ローラー定着器を用いて定着処理を行った。これに引き続いて白紙の転写紙を同様の条件下で熱ローラー定着器に送り、送った転写紙にトナー汚れが生ずるか否かを目視観察する操作を、熱ローラー定着器の熱ローラーの設定温度を順次上昇させた状態で繰り返した。そして、転写紙にトナー汚れの生じた最低の設定温度をもってホットオフセット発生温度と定義し、表4にその結果を示した。
【0056】
(3)定着面の光沢度
紙へのトナー付着量を18mg/cm2とした場合に、各定着温度で形成された定着画像についての定着面の光沢度を、日本電色社製の光沢度計「MODEL
VG−2PD」を用いて測定した。その結果を表4にまとめて示した。
【0057】
(4)透明性
上記の複写機を用いて、CLC700用トランスペアレンシーシート(CT−700、カラーレーザートランスペアレンシー)を複写媒体として、トナー付着量を10mg/cm2とした場合の透過率を測定した。
透過率の測定は、島津自己分光光度計UV2200(島津製作所社製)を使用して測定した。そして、トランスペアレンシーシート単独の透過率を100%とし、シアントナーの場合500nmでの最大吸収波長における透過率を測定し、以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表4にまとめて示した。
(透過率の評価基準)
◎:透過率が80%以上
○:透過率が70%以上80%未満
△:透過率が60%以上70%未満
×:透過率が60%未満
【0058】
【表4】
表4:評価結果
【0059】
(5)耐ブロッキング性
又、実施例のトナーを、温度49℃、相対湿度60%の環境条件下に2週間放置した後、各トナーに凝集塊が生ずるか否かによって耐ブロッキング性を評価したところ、いずれも凝集塊が認められず、耐ブロック性に優れたものであることが確認できた。
【0060】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、いずれも優れた耐ホットオフセット性、優れた低温定着性、優れた定着表面の光沢性及び透明性、優れた耐ブロッキング性を有し、特に熱特性に優れたトナーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ソックスレー抽出装置の一例の概略図である。
【符号の説明】
1:容器
2:THF
3:円筒ろ紙
4:中管
5:冷却器
6:冷却水
7:管
8:ヒーター
Claims (2)
- 結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有するトナーにおいて、結着樹脂がポリエステル樹脂であって、該ポリエステル樹脂が、酸成分として、[1]フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の中から選ばれる不飽和ジカルボン酸を樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%、及び、[2]下記一般式(1)で示されるビフェニル多価カルボン酸を樹脂の構成モル比で5mol%乃至30mol%の範囲で含み、アルコール成分として、下記式(2)で示される化合物を樹脂の構成モル比で10mol%乃至45mol%、及び、下記式(3)で示される化合物を樹脂の構成モル比で5mol%乃至40mol%の範囲で含んで構成されていることを特徴とするトナー。
- トナー中のテトラヒドロフラン不溶成分が0.1wt%〜10wt%であり、且つ、トナーの酸価が2〜20mgKOH/gである請求項1に記載のトナー。
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