JP3778418B2 - 成形金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は樹脂製品を造る場合に用いる成形金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製の自動車部品を成形する成形金型には、例えば、実開平3−116907号公報「バンパー成形型」に示されたものがある。このバンパー成形型は、同公報の第2図によれば、折り返し部(アンダカット)を有する自動車用バンパーの成形型であって、バンパー10のための樹脂を固化させ後、内部スライド型4並びに強制抜き型5を同時に図に示す位置へ移動させ、バンパー10を図のように仮想線の位置から実線の位置へ移動し、内部スライド型4の分割線17近傍で湾曲させ、可動型2の内部に引き込んで折り曲げることによって、固定型3(第1図参照)から離し、固定型3に干渉しないように可動型2にバンパー10を付けたまま型を矢印Aの方向へ開くことができる。そして、第3図のように強制抜き型5のみを大きく移動し、バンパー10を離型することができる。
【0003】
このように内部スライド型4並びに強制抜き型5を移動させることによって、アンダカットの処理とバンパー10の離型とを人手を介することなく迅速に行うことができるため、射出成形等のサイクルタイムを短縮して生産性向上が可能となる。
【0004】
一般的に、射出成形のサイクルタイムを短縮する場合、冷却時間も重要な要素であり、冷却時間を短く設定することが多い。完全な冷却を待たずに比較的高温で型開を実施することで、時間を短縮することができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
比較的高温で型開を実施した場合、上記従来の構造で、バンパー10を内部スライド型4の分割線17近傍で湾曲させ、可動型2の内部に引き込んで折り曲げると、バンパー10が分割線17のエッジで折れ曲がり、バンパー10に傷や変形が発生する心配がある。すなわち、冷却時間が短い厳しい条件で成形を実施していると、ばらつきによって、バンパー10に傷や変形が発生する心配がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、アンダカット部を設けた成形品を変形させることなく、取出すことができる成形金型を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、車両のバンパのように正面部の左右端部に円弧部を介してサイド部を連結させ、このサイド部の先端からさらに内側に折曲げた折曲げ部を延した断面形状の成形品を成形する成形金型において、正面部、円弧部、サイド部及び一部の折曲げ部、これらの外面を成形する固定型と、正面部の内面並びに折曲げ部の一部外面を成形する可動型と、円弧部、サイド部及び折曲げ部、これらの内面を成形するコア型と、を備え、コア型は、可動型に向け、且つ、型面に対向する背面にテーパ面を、テーパ面の始点を円弧部の円中心に一致させ、正面部から離れる方向に所望の角度で拡がるように形成し、テーパ面に連ねて始点から前後方向に平行な平行面を形成することで、背面をく字断面とし、このく字断面の頂点を揺動中心としてコア型を揺動させる揺動手段を備え、この揺動手段を作動させテーパ面を可動型に接近させることで、サイド部から折曲げ部で生じるアンダカット部までを固定型から外すとともに、折曲げ部の一部外面を可動型で保持したまま可動型の移動を可能にしたことを特徴とする。
【0008】
テーパ面を円弧部の円中心から所望の角度(β)で形成したので、コア型は揺動することによって、成形品の円弧部、サイド部及び折曲げ部へ至る広範囲を固定型から離すと同時にアンダカット部を固定型から外す。その結果、成形品の円弧部が曲り、他は局部的に折れ曲がらず、成形品が変形する心配がない。
また、テーパ面を円弧部の円中心から所望の角度(β)で形成し、コア型でサイド部から折曲げ部で生じるアンダカット部までを固定型から外すとともに、折曲げ部の一部外面を可動型で保持したまま可動型の移動を可能にしたので、型開に際し、アンダカット部が固定型に干渉しない。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る成形金型で造る成形品の斜視図であり、成形品の一例を示す。なお、ここでは、車両の外にいる人が、見た面を「正面」と呼ぶことにする。
成形品10は、車両の後部バンパであり、正面部11の左端部に円弧部12を介してサイド部13を連続に形成し、サイド部13の先端14からさらに内側15に折曲げ部16を延したもので、中心軸線17に対して左右対称のものである。後部バンパの材質は、例えば、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのオレフイン系樹脂である。
【0010】
図2は図1の2−2線断面図であり、正面部11の左端部に円弧部12を介してサイド部13を連結させ、このサイド部13の先端14からさらに内側15に所定のアール寸法rで折曲げた折曲げ部16を延した断面形状の成形品10を示す。折曲げ部16を形成すると、デザインの向上を図れるが、アンダカット部19を有するものとなる。アンダカット部19は、金型の開閉方向にそのまま抜き出せないものである。18は円弧部12の円中心を示す。
【0011】
図3は本発明に係る成形金型の要部断面図であり、成形金型20は、固定型21と、この固定型21に対向させた可動型22と、この可動型22側に配置したコア型40と、を備えたものであり、後部バンパと同様に中心軸線に対して左右対称を呈する。
【0012】
固定型21は、中央が窪んだ成形品の正面部を成形する正面外型面23と、この正面外型面23に連なるように形成した左端部の円弧部を成形する円弧外型面24と、この円弧外型面24に連なるように形成したサイド部を成形するサイド外型面25と、折曲げ部の一部を成形する第1アンダカット型面26とを備えたものであり、射出成形機31などの成形機に取付けて移動しない金型である。32は固定型21の分割面である。
また、サイド外型面25は、射出成形機31の軸方向(矢印a方向)に対し、角度θで形成した。
【0013】
可動型22は、成形品の正面部を成形する正面内型面33と、折曲げ部の一部を成形する第2アンダカット型面34とを備えたものであり、射出成形機31などの成形機に取付けて矢印a方向に移動可能な金型である。35は可動型22の分割面である。
【0014】
コア型40は、左端部の円弧部を成形する円弧内型面41と、この円弧内型面41に連なるように形成したサイド部を成形するサイド内型面42と、折曲げ部の一部を成形する第3アンダカット型面43と、可動型22に臨む背面44と、この背面44側に連結した揺動手段60と、この揺動手段60を連結するT形溝45と、下部に連結した突出し手段46とを備えたものである。
【0015】
背面44は、円弧部12(図2参照)の円中心18に始点47を設定し、正面部11(図2参照)並びに正面内型面33から離れる方向48に角度βで拡がるようにテーパ面51を形成し、一方、始点47から正面内型面33に向って軸方向(矢印a方向)に対し平行に平行面52を形成したく字断面の面である。
【0016】
図に示すように、成形金型20では、固定型21の正面外型面23、円弧外型面24、サイド外型面25、第1アンダカット型面26と、可動型22の正面内型面33、第2アンダカット型面34と、コア型40の円弧内型面41、サイド内型面42、第3アンダカット型面43とでキャビティ54を形成する。55はパーティングライン(分割線)を示す。
【0017】
突出し手段46は、コア型40に一端を連結した連結棒56と、この連結棒56の他端に連結した押出し板57と、を備え、また、図に示していないが、押出し板57を駆動する駆動手段(空気圧シリンダ又は油圧シリンダ)と、制御に必要な前進限センサー及び後退限センサーを備えたものである。なお、図は後退限センサーの信号によって、コア型40が後退限位置に停止し、同時にコア型40の下部が可動型22の第2アンダカット型面34側に密着した状態を示す。この状態でキャビティ54を形成することができる。
【0018】
揺動手段60は、可動型22に取付けたモータ61と、このモータ61に接続したねじ送り機構62と、を備え、また、図に示していないが、制御に必要な前進限センサー及び後退限センサーを備えたものである。なお、図は前進限センサーの信号によって、コア型40が前進限位置に停止した状態を示す。この状態でキャビティ54を形成することができる。
ねじ送り機構62は、ナット部材63にねじ部材64を回転可能に嵌合した部品である。次に、ねじ部材64及びねじ部材64を連結するT形溝45を説明する。
【0019】
図4は図3の4−4線断面図である。
ねじ部材64は、ねじ軸65の先端側にT形部66を設けたものであり、T形溝45は、溝68に開口部69を形成したものである。T形溝45にT形部66を通すことで、ねじ軸65自身の回転(矢印b方向)を防止し、コア型40を前進(矢印c方向)若しくは後退(矢印d方向)させることができるとともに、揺動手段を溝68に沿って移動(図面表裏方向)させることができる。
【0020】
以上に述べた成形金型の作用を次に説明する。
図5(a)〜(c)は本発明に係る成形金型の第1作用図である。
(a)において、図のように射出成形機で固定型21に可動型22を密着させ、成形金型20の型閉を実施することで、キャビティ54を形成する。固定型21に第1アンダカット型面26を形成し、可動型22に第2アンダカット型面34を形成し、固定型21の分割面32並びに可動型22の分割面35を後部バンパの折曲げ部16側に設けたので、パーティングライン(分割線)55が転写されても、パーティングライン55が車両のボデーの死角に入り、転写した線が目だない。従って、デザインの向上を図ることができる。
【0021】
また、突出し手段46を後退させ、後退限位置にコア型40を停止させると、可動型22の正面内型面33に対し、コア型40の円弧内型面41を段差のない状態で合せることができ、段差のないキャビティ54を形成することができる。従って、正面内型面33に円弧内型面41を合せた際の境界のラインが転写される心配はない。
【0022】
さらに、揺動手段60を前進させ、前進限位置にコア型40を停止させると、可動型22にコア型40の平行面52が密着するので、型を一体的に形成することができ、隙間のないキャビティ54を形成することができる。従って、正面内型面33に円弧内型面41を合せた際の境界のラインが転写される心配はない。
【0023】
成形金型20の型閉を行い、並行して射出成形機の加熱シリンダで樹脂(ペレット)を溶解(可塑化)し、溶解した樹脂が所定量(計量)に達したら、シリンダ先端のノズルを固定型21に密着させ(ノズルタッチ)、溶解した樹脂を所定の射出圧力で押出し(射出)し、キャビティ54に樹脂71を充填する。
【0024】
キャビティ54に樹脂71を充填すると、樹脂71は樹脂圧力でコア型40のサイド内型面42を押すが、この樹脂圧力に抗する揺動手段60をモータ61及びねじ送り機構62で構成したので、簡単な構成で樹脂圧力に抗することができ、生産コストの低減を図ることができる。
【0025】
(b)において、樹脂71を射出後、所定の冷却時間(タイマ設定)に達し、樹脂71が固化したなら、コア型40を揺動させることで、成形品10のアンダカット部19(折曲げ部16)を離型することができる。具体的には、揺動手段60のモータ61でナット部材63を矢印▲1▼の如く回転させると、ねじ部材64が矢印▲2▼の如く後退し、コア型40のく字断面の頂点72(図3の始点47と同じ)を揺動中心として、テーパ面51を可動型22に矢印▲3▼の如く接近させ、後退限位置でテーパ面51が可動型22に接触する。その結果、成形品10のアンダカット部19を固定型21から矢印▲4▼の如く外すことができる。
【0026】
同時に、コア型40の円弧内型面41は、成形品10の円弧部12の内側表面を滑りつつ矢印▲5▼の如く移動するので、コア型40の揺動は容易である。
また、コア型40の第3アンダカット型面43に成形品10の折曲げ部16が掛り、成形品10のサイド部13がコア型40から離れることはなく、折曲げ部16を固定型21から確実に離型することができる。
【0027】
図に示すように、コア型40(円弧内型面41、サイド内型面42、第3アンダカット型面43)の型面全体で成形品10(円弧部12、サイド部13、折曲げ部16)の全体を支持しながら、円弧部12を曲げるので、成形品10が折れ曲がることはなく、傷や変形を防止することができる。
【0028】
(c)において、成形金型20の型開を開始する。コア型40の揺動によって、成形品10のアンダカット部19を固定型21から離したので、可動型22及びコア型40で成形品10を保持しつつ、アンダカット部19を固定型21に干渉せずに、可動型22を白抜き矢印方向に移動させることができ、型開を実施することができる。従って、固定型21から成形品10を離型することができる。
【0029】
図6(a)〜(c)は本発明に係る成形金型の第2作用図である。
(a)において、揺動手段60でコア型40を揺動前の前進限位置に矢印▲6▼の如く戻すことで、成形品10に発生している引張り力を開放する。このコア型40を戻す動作は、成形金型20の型開動作と並行して行うので、成形サイクルの時間が長くなることはない。
【0030】
(b)において、型開完了と同時に、突出し手段46によって成形品10を離型する。具体的には、押出し板57が矢印▲7▼方向に移動し、連結棒56を介してコア型40を突き出すので、可動型22から成形品10の正面部11を離型することができる。その際、揺動手段60は突出し手段46のストローク量(矢印▲7▼方向)に同期させてねじ部材64を矢印▲8▼方向に送り出すので、移動する溝68にねじ部材64が干渉することはない。
【0031】
(c)において、コア型40の第3アンダカット型面43から成形品10のアンダカット部19を矢印▲9▼の如く離型する。その結果、成形金型20の開閉方向(白抜き矢印方向)にアンダカット部19を抜き出すことができる。
このように、コア型40の揺動によってアンダカット部19を設けた成形品10を変形させることなく取出すことができる。
【0032】
尚、本発明の実施の形態に示した図1の成形品は車両の後部バンパに限定するものではなく、例えば、このようなアンダカット部を設けた前部バンパやこのようなアンダカット部を設けた他の製品でもよい。
図3の揺動手段60の機構はねじ送り機構62に限定するものではなく、例えば、シリンダやカムを用いたものも可能である。
突出し手段46の構成は任意であり、要はコア型40の旋回及び突出しができる構成であればよい。
【0033】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1では、正面部、円弧部、サイド部及び一部の折曲げ部、これらの外面を成形する固定型と、正面部の内面並びに折曲げ部の一部外面を成形する可動型と、円弧部、サイド部及び折曲げ部、これらの内面を成形するコア型と、を備え、コア型は、可動型に向け、且つ、型面に対向する背面にテーパ面を、テーパ面の始点を円弧部の円中心に一致させ、正面部から離れる方向に所望の角度で拡がるように形成し、テーパ面に連ねて始点から前後方向に平行な平行面を形成することで、背面をく字断面とし、このく字断面の頂点を揺動中心としてコア型を揺動させる揺動手段を備え、この揺動手段を作動させテーパ面を可動型に接近させることで、サイド部から折曲げ部で生じるアンダカット部までを固定型から外すとともに、折曲げ部の一部外面を可動型で保持したまま可動型の移動を可能にしたので、可動型及びコア型で成形品を保持しつつ、アンダカット部を固定型に干渉させずに型開動作を実施することができ、成形金型から成形品を取出すことができる。
【0034】
また、テーパ面を円弧部の円中心から所望の角度で形成し、コア型でサイド部から折曲げ部で生じるアンダカット部までを固定型から外すとともに、折曲げ部の一部外面を可動型で保持したまま可動型の移動を可能にした。その結果、コア型で成形品の円弧部、サイド部及び折曲げ部を保持しながら、コア型の揺動によって円弧部を曲げるので、成形品が折れ曲がることはなく、アンダカット部を設けた成形品を変形させることなく、取出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成形金型で造る成形品の斜視図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】本発明に係る成形金型の要部断面図
【図4】図3の4−4線断面図
【図5】本発明に係る成形金型の第1作用図
【図6】本発明に係る成形金型の第2作用図
【符号の説明】
10…成形品、11…正面部、12…円弧部、13…サイド部、14…先端、15…内側、16…折曲げ部、18…円中心、19…アンダカット部、20…成形金型、21…固定型、22…可動型、40…コア型、44…背面、47…始点、48…離れる方向、51…テーパ面、54…キャビティ、55…パーティングライン、60…揺動手段、72…頂点。
Claims (1)
- 車両のバンパのように正面部の左右端部に円弧部を介してサイド部を連結させ、このサイド部の先端からさらに内側に折曲げた折曲げ部を延した断面形状の成形品を成形する成形金型において、
前記正面部、円弧部、サイド部及び一部の折曲げ部、これらの外面を成形する固定型と、前記正面部の内面並びに折曲げ部の一部外面を成形する可動型と、前記円弧部、サイド部及び折曲げ部、これらの内面を成形するコア型と、を備え、
前記コア型は、可動型に向け、且つ、型面に対向する背面にテーパ面を、テーパ面の始点を円弧部の円中心に一致させ、正面部から離れる方向に所望の角度で拡がるように形成し、テーパ面に連ねて始点から前後方向に平行な平行面を形成することで、背面をく字断面とし、このく字断面の頂点を揺動中心としてコア型を揺動させる揺動手段を備え、この揺動手段を作動させ前記テーパ面を可動型に接近させることで、サイド部から折曲げ部で生じるアンダカット部までを固定型から外すとともに、前記折曲げ部の一部外面を可動型で保持したまま可動型の移動を可能にしたことを特徴とする成形金型。
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