JP3778376B2 - メタル担体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製かつハニカム構造の排気ガス浄化用触媒を担持するためのハニカム構造体(以下、単にメタルハニカム体という。)、及び前記メタルハニカム体を外包する金属製のケーシング(以下、単にメタルケーシングという。)とからなる排気ガス浄化用のメタル担体の新規な製造方法に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、メタルハニカム体とメタルケーシングの一体化固着手段として、プレス機によるダイス絞り加工法を採用した新しいメタル担体の製造方法に関する。
【0003】
更に詳しくは、本発明は、メタルハニカム体とメタルケーシングの一体化固着手段として、両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)をプレス機によるダイス絞り加工法を採用して機械的に強固に一体化固着することを特徴としたメタル担体の製造方法に関する。本発明のメタル担体の製造方法は、両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)が機械的に強固に一体化するため、メタルハニカム体部及び/又はメタルハニカム体部とメタルケーシング部の当接面に適用されるろう接合や溶接などの付加的な固着作業の負荷を低減化し得るものであり、メタル担体の新規かつ経済的な製造方法である。
【0004】
【従来の技術】
従来の典型的な排気ガス浄化用のメタル担体が図9〜図10に示されている。図示されたように、この種のメタル担体(MS)は、薄肉金属板製の平板状帯材(平箔)(1)と波板状帯材(波箔)(2)を交互に重積したハニカム構造を有する排気ガス浄化用触媒を担持するためのメタルハニカム体(H)、及び前記メタルハニカム体(H)を外包するメタルケーシング(C´)、とから構成されるものである。
【0005】
更に詳しくは、前記メタルハニカム体(H)は、耐熱性の薄肉金属板製の平板状帯材(平箔)(1)と波板状帯材(波箔)(2)を交互に重積するとともに、これを巻回成形して製作したハニカム構造体であって、排気ガス浄化用触媒(例えばPt,Rh,Pdなどを使用した触媒系)を担持するための母体となるものである。
そして、前記メタルハニカム体(H)は、図9〜図10に示されるようにメタルケーシング(C´)の内部に収容され、固着されてメタル担体(MS)とされるものである。
【0006】
前記したメタル担体(MS)は、当業界においては、メタルサポート(Metal Support )またはメタルサブストレート(Metal Substrate )などといわれており、略記号(MS)が使用されている。この意味で、図9〜図10も略記号(MS)を使用している。
また、ハニカム構造体は、ハニカム構造(Honeycomb Structure )に因んで、略記号(H)が使用されている。
更に、メタルケーシングは、ケーシング(Casing)に因んで、略記号(C)が使用されている。なお、本発明と従来技術を区別するために、従来技術のものはダッシュ付き記号(C´)で示されている。
【0007】
前記した従来のメタル担体(MS)の主要な構成要素であるメタルハニカム体(H)としては、種々の構造のものが提案されている。
前記した図9〜図10に示されるメタルハニカム体(H)は、平箔(1)と波箔(2)が巻回積層されて構成されていることから、当業界においては巻回タイプと俗称されている。
なお、図9は従来の巻回タイプのメタルハニカム体(H)をメタルケーシング(C´)内に固定して製作したメタル担体(MS)の斜視図を示し、図10は前記図9に示される従来のメタル担体(MS)の正面図を示す。
【0008】
前記した従来の巻回タイプのメタルハニカム体(H)は、例えば100μm以下(好ましくは50μm以下)の耐熱性のFe−Cr20%−Al 5%系薄肉鋼板からなる平箔(1)と波箔(2)とを、交互に当接部を有するように重積し、これを一括渦巻状に巻回成形して軸方向に排気ガス通路のための多数の網目状通気孔路(セル)(3)を持つハニカム構造体としたものである。
【0009】
このほか、メタル担体(MS)の主要な構成要素であるメタルハニカム体(H)としては、前記した巻回タイプのもの以外に、平箔(1)と波箔(2)からハニカム構造体を製造する方法の相違により、各種の構造のものが提案されている。
【0010】
図示しないが、例えば、平箔と波箔を階層状に相互に当接させて重積した構造の階層タイプのもの、このほか、特開昭62−273050号、特開昭62−273051号、特公表3−502660号、特開平4−227855号などに開示されている放射状タイプ、S字状タイプ、巴状タイプ、及びX−ラップ(卍状)タイプなどの形状構造とした各種のメタルハニカム体(H)が知られている。
【0011】
また、前記した従来のメタル担体(MS)のメタルケーシング(C´)としては、内部に前記メタルハニカム体(H)を収容し、固着するための筒状体が使用されている。
前記メタルケーシング(C´)の正面(断面)形状は、図9〜図10に示される円形のものに限定されず、メタルハニカム体(H)の正面(断面)形状に適合した形状のもの、例えば楕円形、長円形、レーストラック形状、多角形、その他の異形形状のものであってもよいものである。
【0012】
そして、前記した従来のメタル担体(MS)は、排気ガス系統という過酷な熱的環境条件のもとで使用されるため、メタルハニカム体(H)を構成する両箔材(平箔と波箔)の当接部は強固に固着される。
これは、メタル担体(MS)の主要な構成要素であるメタルハニカム体(H)が、排気ガス自体の高温度及び排気ガスと排気ガス浄化用触媒との発熱反応により発生する高温度にさらされ、このような高温雰囲気のもとで大きな熱応力を発生するためであり、前記熱応力に耐え得るように前記当接部はろう接合や溶接などの固着方式により強固に固着される。
【0013】
即ち、メタルハニカム体(H)は、前記した過酷な使用条件下における耐久性の確保という観点から、その構成部材である平箔と波箔の当接部は、種々の方法及び方式により固着される。
例えば、メタルハニカム体(H)内部の所望部位の平箔と波箔との接続部が、ろう接合や溶接などの固着手段により固着される(特公昭63−44466号、特開平2−218442号参照)。
【0014】
一方、メタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C´)の当接面も、両構成要素の前記熱応力及び振動に基づく離体の防止という観点などから強固に固着されるものである。なお、メタルハニカム体(H)内部には大きな熱応力が発生し、これが両構成要素の当接面に集中・集積し両構成要素の離体を誘発するが、前記した熱応力を吸収・緩和させるために、前記当接面の特定部位をろう接合などにより固着するという方式も提案されている(例えば、実開昭62−19443号参照)。
【0015】
前記したように、メタル担体(MS)の製造において、メタルハニカム体(H)を構成する両箔材(平箔と波箔)の当接部、及びメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C´)の当接面は耐久性の観点からろう接合(ろう付け)や溶接などの固着手段が適用されて固着されるものである。
なお、前記固着手段としては、一般に生産性や固着強度の均一性などの観点から、ろう接合方式が広く採用されている。
【0016】
しかしながら、前記した固着手段としてのろう接合方式は、改善すべき余地を残すものである。例えば、前記ろう接合方式において一般的に使用されているろう材は、メタル担体(MS)の高温雰囲気下での使用条件ということから、Ni系、Ni−Cr系などの高価な高温用ろう材であり、経済性の観点からその使用量の低減化が強く求められている。
また、前記したろう材使用量の低減化の点は、両箔材(波箔と平箔)の当接部の当接面積が大きいため、例えばろう材を両箔材の巻回成形前に適用する場合は使用されるろう材が多くなり、このためろう材成分と両箔材の金属成分との合金化反応や拡散反応による両箔材の耐熱性の低下、更には触媒の死活化などの問題が誘発され、この面からもろう材使用量の低減化が強く求められている。
なお、前記両箔材の当接部の面積は、波箔の波形構造にも依存するが、全面積の10〜30%にも及ぶものである。特に、両箔材相互の強固な固着のために、波箔の波形構造として、矩形波もしくは台形波を有するものにおいては、前記当接部の面積はより大きなものとなる。
【0017】
当業界において、メタルハニカム体部とメタルケーシング部を一体化する固着技術は種々のものが知られている。
一般的には、メタルハニカム体(H)としてメタルケーシング(C´)の内径寸法よりも若干、大き目の外径寸法を有するものを調整し、前記メタルハニカム体(H)をメタルケーシング(C´)に圧入・填装する方式が採用されている。この方式の場合、メタルハニカム体の外径寸法にバラツキがあることなどから両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)の均一かつ強固な固着という観点からみると、改善の余地を残すものである。また、前記した方式以外に、例えば下記に示す方式が提案されている。
【0018】
メタルケーシング(C´)内にメタルハニカム体(H)を所望位置にセットした状態で固定し、メタルケーシング(C´)の外周面に回転絞り手段を適用し、メタルケーシング(C´)の軸方向にみて所望幅の縮径部を形成して両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)を一体化固着する方式がある。この方式は図11〜図12に示されている。
前記回転絞り手段により縮径部を形成するためには、例えば両部材を位置決めするとともに、メタルケーシング(C´)の外周面に複数または複数組の回転絞りロールを配設するとともにメタルケーシング(C´)の半径方向に押圧し、かつメタルケーシング(C´)の軸方向に所望幅を変位させながら行なえばよい。
前記したことから明らかのように、この方式においては回転絞りのための専用機が必要であり、また加工精度(従って両部材の均一かつ強固な固着強度)に改善の余地を残すものである。
【0019】
また、半割型を上下(または左右)から押圧して両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)を一体化する方式がある。この方式は図13〜図15に示されている。
前記方式は、図15に示されるように、上型(P1 ´ )と下型(P2 ´ )を使用して両部材を押圧一体化するものであるが、単純に上型(P1 ´ )と下型(P2 ´ )に押圧力を印加する方式であるため、縮径加工後に両部材の押圧方向の戻り(復元力)により縮径部(C1 ´ )の、特に両型(P1 ´ ,P2 ´ )の合わせ部付近(図14〜15のC3 ´ 部付近)の締まりが弱いという問題点があり、改善を残すものである。
【0020】
更にまた、図示しないが、特開平2−268834号公報には仕上り外径より大きなメタルケーシング(C´)内に、仕上がり外径より大きく、かつ前記メタルケーシング(C´)の内径より小さい外径を有するメタルハニカム体(H)を挿入し、前記挿入体を複数の金属製セグメント(例えば10〜20に分割されたもの)よりなる引込み用治具の内部に収容し、前記した状態の引込み用治具をダイス内に連通させメタルケーシング(C´)の全幅にわたりメタルケーシング(C´)とメタルハニカム体(H)を同時に絞り加工(縮径加工)し、更にろう付け加工を付加してなるメタル担体の製造方法が開示されている。
しかしながら、前記提案のものは、メタルハニカム体(H)の外周部全体を絞り加工(縮径加工)するものであり、メタルハニカム体(H)の熱応力の緩和特性の改善、高価なろう材の節約(低減化)という立場からメタルケーシング部を部分縮径するという技術思想を開示するものではなく、かつ絞り加工(縮径加工)のための引込用油圧シリンダーなどの専用機(設備)を強いるという問題点がある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来のメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)の一体化固着技術の改善を、次工程のメタルハニカム体(H)部に適用されるろう接合や溶接などの固着技術との関連で、即ち、例えばろう接合時のろう材使用量の低減化を図ることができる両部材の一体化固着手段を開発するという観点から創案されたものである。
また、本発明は、当然のことながら均一な固着力により両部材の一体化が図られる簡便な手段の開発という観点をも踏まえて創案されたものである。
【0022】
その結果、本発明者らは、メタルケーシング(C)の軸方向にみて全領域でなく特定部位(特にメタルケーシング部の略中央部)を縮径すること、即ち部分縮径を採用すること、また、前記部分縮径を、汎用のプレス機を採用するとともに、プレス機の一方の型のメタルケーシング(C)の外周部に配置された縮径用工具(絞り工具)、及び、他方の型に配設され、かつ前記縮径用工具(絞り工具)と共働してメタルケーシング(C)の外周面を半径方向にメタルハニカム体(H)の外径を縮径する程度に絞り込むダイス、を前記プレス機に組込んで行なうことが極めて有効であることを見い出した。
【0023】
本発明は前記知見をベースにして完成されたものである。本発明により特段の専用機を用いずに、かつメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)の一体化固着強度を均一にすることができ、更にメタルハニカム体(H)部やメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)の当接面部に適用される付加的なろう接合や溶接などの固着手段の作業負荷を低減化することができる、経済的で効率的なメタル担体(MS)の製造方法が提供される。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明は、薄肉金属板製の平板状帯材(平箔)と波板状帯材(波箔)を交互に重積したハニカム構造を有する排気ガス浄化用触媒を担持するためのメタルハニカム体、及び前記メタルハニカム体を外包するメタルケーシング、とから成るメタル担体の製造方法において、前記製造方法が、
(i) プレス機の一方の型に配設されたメタルハニカム体をメタルケーシング内の所望位置に位置決めする位置決め用ブロック、
(ii) メタルケーシングの軸方向にみて中間部位において、かつメタルケーシングの外周部から半径方向にプレス機の他方の型に配設されたダイスと共働してメタルケーシングを絞るためのメタルケーシングの外周部に配設された絞り工具、
(iii) プレス機の他方の型に配設され、かつ双方の型の間の相対距離が小さくなるときに前記絞り工具の外周面をメタルケーシングの半径方向にプレス力により変位させるダイス、
とから成るプレス機を用い、メタルハニカム体を収容したメタルケーシングの中間部位においてメタルハニカム体の外径を縮径する程度にメタルケーシングを絞り加工し、メタルハニカム体とメタルケーシングを一体化固着したことを特徴とするメタル担体の製造方法に関するものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の技術的構成及び実施態様を図面を参照して詳しく説明する。
なお、本発明は図示のものに限定されないことはいうまでもないことである。また、説明の便宜上、メタルハニカム体(H)の構造としては、平箔と波箔を交互に重積したものを一括巻回成形して調製した巻回タイプのものについて説明するが、本発明のメタルハニカム体(H)の構造はこのものに限定されない。
【0026】
図1〜図6は、本発明の第一実施態様のメタル担体(MS)の製造方法を説明する図である。
図1は、汎用プレス機を使用し、かつ絞り工具(Z)とダイス(Y)の共働によりメタルハニカム体(H)を内部に収容するメタルケーシング(C)の外周部より絞り(縮径)加工する方法(以下、単にプレス絞り工法という場合がある。)により両部材(メタルハニカム体部とメタルケーシング部)を一体化固着してメタル担体(MS)を製造する方法の第一実施態様(プレス機採用のプレス絞り工法)を説明する図である。
図2は、前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造方法により製造されたメタル担体(MS)の平面図を示す。
図3は、図2のI−I線断面図を示す。
図4は、前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造方法に適用された絞り工具(Z)の正面図(上型側からみた図)である。
図5は、本発明のメタル担体(MS)の製造方法に適用される他の絞り工具(Z)の一部断面図である。
図6は、本発明の第一実施態様のメタル担体(MS)の製造方法により製造されたメタル担体(MS)の一部断面図である。
【0027】
本発明の第一実施態様のプレス絞り工法によりメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)を一体化固着してメタル担体(MS)を製造する方法は、図1に示されるように次の機器構成及びプロセスからなるものである。
(1).一方の型として下型(P2 )と他方の型として上型(P1 )とから成るプレス機(P)を採用する。
(2).前記プレス機(P)の下型(P2 )に、メタルハニカム体(H)をメタルケーシング(C)内の軸方向の所望位置に位置決めする位置決めブロック(X)を配設する。
(3).前記位置決めブロック(X)上に、メタルハニカム体(H)を内部に遊嵌させたメタルケーシング(C)を載置する。
(4).前記位置決めブロック(X)上に載置されたメタルケーシング(C)の外周部において、その軸方向の略中間部位に、かつ円周方向に、後述する上型(P1 )に配設されたダイス(Y)と共働してメタルケーシング(C)を少なくともメタルハニカム体(H)の外径を縮径する程度に絞り込む(縮径する)絞り工具(Z)を配設する。
(5).下型(P2 )に対して下降及び上昇する上型(P1 )に、前記絞り工具(Z)と共働してメタルケーシング(C)の略中間部位をその半径方向に絞り加工するダイス(Y)を配設する。
(6).前記構成のプレス機(P)において、上型(P1 )を下型(P2 )方向に下降させ、前記絞り工具(Z)とダイス(Y)の共働によりメタルケーシング(C)の略中間部を一工程(ワン・ストローク)で絞り加工(縮径加工)し、メタル担体(MS)を製造する。
【0028】
前記第一実施態様の本発明のプレス絞り工法により製造されたメタル担体(MS)の構造は図2〜図3に示されている。
図2は、メタル担体(MS)の平面図を示し、メタルケーシング(C)は、中間部において絞り部(縮径部)(C1 )を有し、かつ両端部において非絞り部(非縮径部)(C2 )を有する。
なお、図中(C3 )は、後述の図4を引用して詳しく説明されるが、前記絞り工具(Z)の構成上、メタルケーシング(C)の前記絞り部(縮径部)(C1 )の外周面の軸方向に形成される不完全縮径部、即ち、絞り工具(Z)のセグメント間のスリット部(型の合せ目)に形成されたメタルケーシング(C)の突条部を示すものである。
【0029】
本発明の前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造プロセスに適用されるプレス機(P)は、汎用の機構・構成のものを採用すればよい。即ち、上型(P1 )と下型(P2 )の間で押圧力を発生させ、被加工物を押圧処理する汎用のプレス機(P)を採用すればよい。
図1においては、上型(P1 )と下型(P2 )の位置関係が垂直方向になっているものが示されているが、これが水平方向のものであっても、斜め方向のものであってもよい。また、上型(P1 )と下型(P2 )の間の相対距離は、上型(P1 )の下降及び上昇方式により変化させるものに限定されず、その逆であったり、または両者の同時移動による方式のものであってもよい。
【0030】
本発明の前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造プロセスに適用される絞り工具(Z)は、図4に示されるようにメタルケーシング(C)の周方向に所望幅のスリット(ZS )を有して多分割されたもので構成される。即ち、図4には6個のセグメントZ1 〜Z6 から成る多分割型の絞り工具(Z)が示されている。
絞り工具(Z)とダイス(Y)の共働によりメタルケーシング(C)の外周部を半径方向に絞り加工するとき、メタルケーシング(C)の縮径率との関連で各セグメント間のスリット(ZS )間隔、例えばZ1 とZ2 の間の間隔は狭まるものの、前記した不完全縮径部(C3 )(図3参照)が形成されることになる。
【0031】
本発明において、前記絞り工具(Z)の構造は、図1及び図4に示されるものに限定されない。
例えば、図5に示される構造のものを使用してもよい。
即ち、図5(1)は、メタルケーシング(C)の軸方向にみた中間部位に、軸方向にみて間欠的に2個の絞り部を一工程で形成させるために使用される絞り工具(Z)の断面図である。また、図5(2)は、メタルケーシング(C)の軸方向にみた中間部位に、同様に間欠的に3個の絞り部を一工程で形成させるために使用される絞り工具(Z)の断面図である。
本発明において、前記間欠的に絞られる絞り部の個数は所望に設定されて良いことはいうまでもないことである。
なお、前記二個以上の絞り部(縮径部)の間に形成される間欠部(非絞り部)は、メタルハニカム体(H)の内部に発生する大きな熱応力の吸収・緩和ゾーンとして作用することはいうまでもないことである。
【0032】
また、本発明において、絞り工具(Z)の構造は、メタル担体(MS)の断面形状、従ってメタルハニカム体(H)部及びメタルケーシング(C)部の断面形状に依存するが、図4(平面図)に示される円形状のものに限定されない。即ち、メタル担体(MS)の断面形状、例えば長円形またはレーストラック形状などの所望形状に対応した構造のものであってよいことはいうまでもないことである。
【0033】
本発明の前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造プロセスに適用されるダイス(Y)の構造は、前記絞り工具(Z)と共働してメタルケーシング(C)を外周部から少なくともメタルハニカム体(H)の外径が縮径する程に絞り込み加工できるものであれば、何等の制約も受けない。
【0034】
本発明の前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造プロセスにより製造されるメタル担体(MS)の構造の一部が、図6に示されている。
図6は、メタルハニカム体(H)の中間部の所望幅の外周部に対応するメタルケーシング(C)の領域において、前記部位のメタルハニカム体(H)の外周面が縮径されてメタルケーシング(C)がメタルハニカム体(H)に食込み、両部材が強固に一体化されて絞り部(C1 )が形成されることを示している。
また、前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造プロセスにおいては、メタルハニカム体(H)の外径がメタルケーシング(C)の内径より小さいものを使用しているため、メタルケーシング(C)の非絞り部(非縮径)(C2 )の内周面と対応する部位に位置するメタルハニカム体(H)の外周面との間には、図6に示されるように空間部(S)が形成される。
前記空間部(S)は、当該部位にあるメタルハニカム体(H)部において、熱応力の吸収、緩和ゾーンとして有用であり、かつ断熱シール効果の役割を果たすものである。
【0035】
本発明のメタル担体(MS)の製造プロセスにおいて、製造されるメタル担体(MS)の構造は、前記図6に示されるものに限定されず、例えば図7〜図8に示される変形例が可能である。
図7(1)のメタル担体(MS)は、前記第一実施態様のメタル担体(MS)(図6参照)と同様に空間部(S)を有するメタル担体(MS)であるが、
(i) メタルハニカム体(H)部の最外層が平箔で構成されること、かつ、
(ii)前記最外層の平箔が、排気ガス通過方向(F)の流入側空間部(S)の排気ガスをメタルハニカム体(H)部の内側層の波箔へ流入させるために、略円形状の穴部(a)を有するもので構成されていること、
の点で相違するものである。
なお、図7(1)のメタル担体(MS)は、メタルハニカム体(H)部が排気ガス流出側の空間部(S)へ排気ガスを導出する穴部(b)を有するもので構成されていることを示しているが、前記穴部(b)は配設してもあるいは配設しなくてもよいものである。
【0036】
図7(2)のメタル担体(MS)は、前記図7(1)のメタル担体(MS)と比較して、穴部(a),(b)の形状が相違するだけである。
即ち、図7(2)のメタル担体(MS)において、メタルハニカム体(H)部の最外層の平箔に形成される穴部(a),(b)の形状は、図7(1)の略円形状のものに対し略矩形状のものである。
本発明において、前記穴部(a)、(b)の形状、及び配設個数は適宜に決めればよいものである。
また、本発明において、前記した空間部(S)に滞留する排気ガスをメタルハニカム体(H)の内部に導くという観点から、メタルハニカム体(H)の最外層が波箔で構成される場合であって、かつ前記波箔が縮径により完全に圧潰されるような場合には、前記波箔に対しても前記した平箔と同様な穴部(a)、(b)を形成することが好ましいことはいうまでもないことである。
【0037】
図8は、絞り加工前のメタルハニカム体(H)の外径とメタルケーシング(C)の内径が略同一のメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)を使用して製造してメタル担体(MS)の構造を示すもので、前記図6に対応する図である。
図8のメタル担体(MS)は、図6のメタル担体(MS)(第一実施態様)と相違して空間部(S)をもたないことはいうまでもないことである。しかし、図8のメタル担体(MS)は、図6の空間部(S)が形成される部位においてメタルケーシング(C)が絞り加工(縮径加工)されないため、メタルハニカム体(H)の軸方向に熱応力を吸収・緩和させることができるものである。
【0038】
本発明の前記第一実施態様のメタル担体(MS)の製造方法、あるいは他の変形例の製造方法により製造されたメタル担体(MS)は、メタルケーシング(C)の中間部においてメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)がメタルケーシングの絞り加工(縮径加工)により強固に一体化固着されたものである。従って、本発明により、メタルハニカム体(H)の構成部材である平箔と波箔の当接部位、あるいはメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)の当接面に付加的に適用されるろう接合や溶接などの固着工程の負荷を軽減化させることができる。具体的には、ろう接合においては高価なろう材の使用量を低減化することができ、また溶接においては溶接部位の低減化ができるため経済的なメタル担体(MS)が提供される。
【0039】
また、本発明においては、メタルハニカム体(H)の平箔と波箔の当接部を予め拡散・ろう付・溶接の単独もしくは複数により固着しておく場合、絞り加工後のメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)との固着工程の負荷をより一層軽減化もしくは省略することが可能である。
更に、メタルハニカム体(H)を単体で予めろう付する場合、従来のメタルケーシング(C)内に挿入した状態でろう付する場合と比較して、熱容量の面から30〜50%程度の熱エネルギーの軽減化(省エネルギー)が可能であり、ろう付時間の短縮、ろう付炉の小型化など、優れた生産性の向上が得られる。
【0040】
【発明の効果】
本発明のメタルハニカム体(H)と前記メタルハニカム体(H)を外包するメタルケーシング(C)を主要な構成要素とするメタル担体(MS)の製造方法は、汎用のプレス機を採用してメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)を一工程の絞り加工(縮径加工)により強固、かつ均一な締付け力により一体化させることができる。
即ち、プレス機を使用した本発明のプレス工法により経済的かつ効率的に、高品質のメタル担体(MS)を製造することができる。
【0041】
また、本発明の製造プロセスにより製造されるメタル担体(MS)は、メタルケーシング(C)の軸方向にみて中間部位の所望幅が半径方向に絞り加工(縮径加工)されたこと、別言すればメタルハニカム体(H)の両端部の外周部はメタルケーシング(C)の内周面により押圧されず(絞り加工されず)、自由端となるため、熱応力の吸収・緩和ゾーンとして作用し、耐久性の優れたものである。
【0042】
更にまた、本発明のプロセスにより製造されるメタル担体(MS)は、メタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)がメタルケーシング(C)の絞り加工により強固かつ均一な締め力により一体化されるため、メタルハニカム体(H)に適用されるろう接合や溶接などを経済的に行なうことができる。
即ち、メタルハニカム体(H)の構成部材(平箔と波箔)の当接部及びメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)の当接面部に適用される固着手段において、例えばろう接合の場合、適用される高価なろう材の使用量を低減化することができる。また、溶接の場合、溶接部位の低減化など溶接工程を効率化することができる。従って、本発明により高品質でかつ経済的なメタル担体(MS)が提供される。
【0043】
また、本発明においては、メタルハニカム体(H)の平箔と波箔の当接部を予め拡散・ろう付・溶接の単独もしくは複数により固着しておく場合、絞り加工後のメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C)との固着工程の負荷をより一層軽減化もしくは省略することが可能である。
【0044】
更に、本発明においては、メタルハニカム体(H)を単体で予めろう付する場合、従来のメタルケーシング(C)内に挿入した状態でろう付する場合と比較して、熱容量の面から30〜50%程度の熱エネルギーの軽減化(省エネルギー)が可能であり、ろう付時間の短縮、ろう付炉の小型化など、優れた生産性の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のメタル担体(MS)の製造方法の第一実施態様(プレス機採用のプレス絞り工法)を説明する図である。
【図2】 本発明の第一実施態様の製造方法により製造されたメタル担体(MS)の平面図である。
【図3】 図2のI−I線断面図である。
【図4】 本発明の第一実施態様の製造方法に適用された絞り工具の正面図である。
【図5】 本発明のメタル担体(MS)の製造方法に適用される他の絞り工具の一部断面図である。
【図6】 本発明の第一実施態様の製造方法により製造されたメタル担体(MS)の一部断面図である。
【図7】 本発明の他の製造方法により製造されたメタル担体(MS)を説明する図であり、図6に対応する図である。
【図8】 本発明の更に他の製造方法により製造されたメタル担体(MS)を説明する図であり、図6に対応する図である。
【図9】 従来の巻回タイプのメタルハニカム体(H)とメタルケーシング(C´)とから成るメタル担体(MS)の斜視図である。
【図10】 図9のメタル担体(MS)の正面図である。
【図11】 従来の回転絞り手段(回転絞りロール工法)により製造されたメタル担体(MS)の平面図である。
【図12】 図11のII−II線断面図である。
【図13】 従来の半割り型(上型及び下型)を利用した押圧加工法により製造したメタル担体(MS)の平面図である。
【図14】 図13のIII−III線断面図である。
【図15】 従来の半割り型(上型及び下型)を利用した押圧加工法を説明する図である。
【符号の説明】
MS ……… メタル担体
H ………メタルハニカム体
1 ……… 平箔
2 ……… 波箔
3 ……… セル(網目状通気孔路)
C ……… メタルケーシング(本発明)
C1 ……… 絞り部(縮径部)
C2 ,C2 ……… 非絞り部(非縮径部)
C3 ……… メタルケーシング中間部の不完全縮径部
C´ ……… メタルケーシング(従来例)
P ……… プレス機
P1 ……… 他方の型(上型)
P2 ……… 一方の型(下型)
X ……… 位置決めブロック
Y ……… ダイス
Z ……… 絞り工具
Z1 ,Z2 ……… (絞り工具)セグメント部材
ZS ……… (絞り工具)スリット
S ……… 空間部
a,b ……… 穴部
F ……… 排気ガス通過方向
Claims (2)
- 薄肉金属板製の平板状帯材(平箔)と波板状帯材(波箔)を交互に重積したハニカム構造を有する排気ガス浄化用触媒を担持するためのメタルハニカム体、及び前記メタルハニカム体を外包するメタルケーシング、とから成るメタル担体の製造方法において、前記製造方法が、
(i) プレス機の一方の型に配設されたメタルハニカム体をメタルケーシング内の所望位置に位置決めする位置決め用ブロック、
(ii)メタルケーシングの軸方向にみた中間部位において、かつメタルケーシングの外周部から半径方向にプレス機の他方の型に配設されたダイスと共働してメタルケーシングを絞るためのメタルケーシングの外周部に配設された絞り工具、
(iii)プレス機の他方の型に配設され、かつ双方の型の間の相対距離が小さくなるときに前記絞り工具の外周面をメタルケーシングの半径方向にプレス力により変異されるダイス、
とから成るプレス機を用い、メタルハニカム体を収容したメタルケーシングの中間部位においてメタルハニカム体の外径を縮径する程度にメタルケーシングを絞り加工し、メタルハニカム体とメタルケーシングを一体化固着したことを特徴とするメタル担体の製造方法。 - メタルハニカム体が、予め拡散、ろう付、及び溶接の単独もしくは複数により固着されたものである請求項1に記載のメタル担体の製造方法。
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