JP3771738B2 - 波長多重光伝送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、波長多重信号光を光増幅器を用いて中継伝送する波長多重光伝送システムに関し、特に、相反する波長分散を持つ光ファイバを組み合わせた混成伝送路を適用して波長分散および波長分散スロープを補償するようにした波長多重光伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、長距離の光伝送システムでは光信号を電気信号に変換し、タイミング再生(retiming)、波形等化(reshaping)および識別再生(regenerating)を行う光再生中継器を用いて伝送を行っていた。しかし、現在では光増幅器の実用化が進み、光増幅器を線形中継器として用いる光増幅中継伝送方式が検討されている。光再生中継器を光増幅中継器に置き換えることにより、中継器内の部品点数を大幅に削減し、信頼性を確保するとともに大幅なコストダウンが見込まれる。
【0003】
また、光伝送システムの大容量化を実現する方法のひとつとして、1本の伝送路に2以上の異なる波長を持つ光信号を多重して伝送する波長多重(WDM)光伝送方式が注目されている。
【0004】
上記の光増幅中継伝送方式とWDM光伝送方式とを組み合わせたWDM光増幅中継伝送方式においては、光増幅器を用いてWDM信号光を一括して増幅することが可能であり、簡素な構成(経済的)で、大容量かつ長距離伝送が実現可能である。
【0005】
従来のWDM光増幅中継伝送システム(以下、WDM光伝送システムと略す)では、伝送路の非線形効果による伝送特性の劣化を低減するように伝送路の波長分散を管理する方法が用いられている。
【0006】
例えば、N.S.Berganoらの論文▲1▼「Wavelength Division Multiplexing in Long-Haul Transmission Systems, IEEE Journal of Lightwave Technology, vol. 14, no. 6, pp. 1299-1308, 1996」では、図16に示すように、約900kmの長さを有し1585nmの零分散波長λ0Dを持ち、正の波長分散スロープを有する分散シフトファイバ(Dispersion-shifted fiber;DSF)と、約100kmの長さを有し1310nmの零分散波長λ0Sを持ち、正の波長分散スロープを有するシングルモードファイバ(SMF)とを組み合わせた伝送路を用いている。この伝送路の平均零分散波長λ0Aは約1558nmであり、信号光波長は1556nmから1560nmまでである。
【0007】
DSFおよびSMFの波長分散は、それぞれ約−2ps/nm/kmおよび約+20ps/nm/kmであり、信号光と自然放出光の群速度や信号光同士の群速度がそれぞれ異なる。このため、DSFおよびSMFを組み合わせた伝送路を用いることによって、非線形効果の相互作用時間を短くすることが可能であり、4光波混合(Four wave mixing;FWM)および相互位相変調(Cross phase modulation;XPM)などによる伝送特性の劣化を低減できる。また、伝送路の平均零分散波長を信号光波長内としているので、自己位相変調(Self phase modulation;SPM)と波長分散による伝送特性の劣化も低減している。
【0008】
しかし、WDM光伝送システムの容量拡大のために伝送帯域の拡大が必要となると、上記のような構成では、波長分散スロープの影響により、すべての信号光波長に対して波長分散が零となるように補償するのは困難である。このため、補償されずに累積する波長分散と光ファイバ内の非線形効果との相互作用による信号光波形劣化が生じてしまう。
【0009】
このような場合の対策として、伝送区間の前半で生じた波長分散および波長分散スロープを補償する分散補償ファイバを伝送区間の後半に適用した伝送路が提案されている。具体的には、例えば、伝送区間の前半に正の波長分散と正の分散スロープを持つ1.3μm零分散SMFを用い、該1.3μm零分散ファイバの波長分散および波長分散スロープを補償する、負の波長分散と負の分散スロープを持つ分散補償ファイバを伝送区間の後半に用いることで、波長分散スロープを小さくして累積波長分散を低減し、伝送特性の劣化を低減させるものである。
【0010】
M.Murakamiらの論文▲2▼「Quarter terabit (25×10Gb/s) over 9288km WDM transmission experiment using nonlinear supported RZ pulse in higher order fiber dispersion managed line, ECOC'98,pp.79-81,1998」では、伝送区間長の50%に相当する長さで正の波長分散を持つ1.3μm零分散ファイバを伝送区間の前半に用い、伝送区間長の50%に相当する長さで負の波長分散を持つ分散補償ファイバを伝送区間の後半に用いることで、平均の波長分散スロープを0.0067ps/nm2/kmまで低減できている。
【0011】
また、K.Yonenagaらの論文▲3▼「Dispersion-compensation-free 40-Gbit/s×4-channel WDM transmission experiment using zero-dispersion-flattened transmission line, OFC'98,PD20,1998」では、伝送区間長の55%に相当する長さの正の波長分散で持つ1.3μm零分散ファイバを伝送区間の前半に用い、伝送区間長の45%に相当する長さで負の波長分散を持つ分散補償ファイバを伝送区間の後半に用いることで、平均の波長分散スロープを−0.0028ps/nm2/kmまで低減できている。
【0012】
さらに、T.Kashiwadaらの論文▲4▼「Ultra-low chromatic and polarization mode dispersion hybrid fiber links for ultra-high speed transmission systems, OECC'98,15C1-3,pp.364-365,1998」では、伝送区間長の84%に相当する長さで正の波長分散を持つ1.3μm零分散ファイバを伝送区間の前半に用い、伝送区間長の16%に相当する長さの負分散を持つ分散補償ファイバを伝送区間の後半に用いてことで、平均の波長分散スロープを0.008ps/nm2/kmまで低減できている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、WDM光伝送システムの更なる大容量化および長距離化を実現するためには、その伝送路に要求される主な課題として、(a)伝送損失が小さいこと、(b)非線形実効断面積が大きいこと、(c)信号光波長と伝送路の零分散波長が一致しないこと、(d)伝送距離方向に平均化された波長分散量が負であること、(e)累積波長分散の補償間隔が中継間隔に対して十分に大きいこと、(f)波長分散スロープが小さい、または、それを補償できること、などが挙げられる。
【0014】
しかしながら、上記のような正の波長分散を持つ1.3μm零分散ファイバと負の波長分散を持つ分散補償ファイバとを組み合わせて伝送路として用いる従来のWDM光伝送システムは、伝送路の後半に用いる分散補償ファイバの非線形実効断面積が比較的小さく、かつ、その伝送損失も比較的大きいため、非線形効果の影響を受けやすく光SN比(光信号対雑音比)も小さくなってしまうという欠点を持っていた。このため、波長分散および波長分散スロープを補償しても、伝送特性の改善効果が十分には得られないという問題があった。
【0015】
ここで、上記論文に記載されたようなWDM光伝送システムについて、伝送特性の改善量を定量的に見積もってその問題点を明らかにする。
WDM光伝送システムの伝送特性は光SN比に大きく依存する。光SN比は、中継器出力が高く伝送損失が小さいほど、大きな値を持つ。そのため、WDM光伝送システムにおける伝送特性の改善量の指標として、中継器出力と伝送損失とを用いることができる。
【0016】
中継器出力については、伝送路の非線形効果により制限されるため、非線形効果の発生を定量的に見積もることが重要である。一般に、非線形効果φNLは次の数1に示す式(1)により表すことができる。
【0017】
【数1】
ただし、λは信号光波長、n2は伝送路の非線形屈折率係数、Aeffは伝送路の非線形実効断面積、Pは光パワー、Lは伝送距離である。
【0018】
全長Lの伝送路のうちの前半部分について正の波長分散を持つ1.3μm零分散SMFを用い、後半部分について負の波長分散と負の分散スロープを持つ分散補償ファイバ(Reversed Dispersion Fiber、RDFと以下に略す)を用いた場合(入射端から1.3μm零分散SMFとRDFの境界までの距離をlbとする)、伝送区間内のRDFの長さの比率に応じて非線形効果φNLが変化する。
【0019】
伝送路の入射端から距離l(0<l<L)の位置における光パワーP(l)は、伝送路の損失をα[1/km]として、次の式(2)で与えられる。
P(l)=P(0)・e-αl …(2)
したがって、1.3μm零分散SMFおよびRDFを用いた混成伝送路で発生する非線形効果φNLは、式(1)(2)の関係から、次の数2に示す式(3)で求めることができる。
【0020】
【数2】
ここでは、式(3)を用いて求めた非線形効果φNLについて、一般的な伝送ファイバであるDSFのみを用いて伝送路を構成したときの非線形効果の値を基準として規格化を行い、さらに、その規格化した非線形効果の値でDSFの非線形実効断面積を割って、DSFのみの伝送路に対する混成伝送路の距離平均の非線形実効断面積を演算する。これにより、DSFのみの伝送路を基準とした非線形効果の緩和量、つまり、中継器出力の上限の緩和量が計算される。
【0021】
この中継器出力の上限の緩和によって生じる、DSFのみの伝送路に対する伝送特性の改善量は、混成伝送路の距離平均の非線形実効断面積をAeff(1)とし、DSFのみの伝送路の非線形実効断面積をAeff(2)として、次のように表される。
【0022】
10・LOG{Aeff(1)/Aeff(2)} [dB]
一方、伝送損失の低減による伝送特性の改善量は、混成伝送路における距離平均の伝送損失をdB単位で表した値をLoss(1)とし、DSFのみの伝送路における距離平均の伝送損失をdB単位で表した値をLoss(2)として、次のように表される。
【0023】
{Loss(2)−Loss(1)}×伝送区間長 [dB]
したがって、DSFのみの伝送路を用いたシステムに対する、混成伝送路を用いたシステムの伝送特性の改善量Iは、次の式(4)に従って定量的に評価可能である。
【0024】
ここでは、例えば、伝送距離Lを50kmとし、1.3μm零分散SMF、RDFおよびDSFの各特性パラメータを次の表1に示す値を用いて、式(4)の改善量Iを計算してみる。
【0025】
【表1】
なお、表1における、1.3零分散SMFの各パラメータについては上記の論文▲4▼を参照し、RDFの各パラメータについては上記の論文▲2▼およびM.Onishiらの論文▲5▼「Optimization of dispersion-compensating fibers considering self-phase modulation suppression, OFC'96,ThA2, pp.200-201,1996」を参照し、DSFの各パラメータについては上記の論文▲5▼を参照した。また、表1には伝送損失を[dB/km]の単位で示してあるが、式(3)の計算においては[1/km]の単位に変換した値をαとして用いるものとする。
【0026】
図17は、上記の条件に従って計算した伝送特性の改善量Iを示す図である。なお、横軸のSMF長およびRDF長はそれぞれ、伝送区間の前半で用いる1.3μm零分散SMFの長さおよび伝送区間の後半で用いるRDFの長さを示し、縦軸は混成伝送路における伝送特性の改善量Iを示している。ここでは、RDFの各パラメータ(伝送損失LOSSおよび非線形実効断面積Aeff)の組み合わせに対応させて、伝送区間内でのRDFの長さの比率に応じた改善量Iがプロットしてある。
【0027】
図17に示すように、DSFのみの伝送路とした場合と比較して、混成伝送路における伝送特性は、後半のRDFの長さが短くなるほど改善される傾向にあることがわかる。
【0028】
そこで、上述した論文▲2▼、▲3▼に示されたようなWDM光伝送システムついて、上記の方法を用いて伝送特性の改善量を検討する。ただし、これらの論文において伝送区間の後半で用いている分散補償ファイバ(RDF)の具体的な特性に関しては示されていないため、K.Mukasaらの論文▲6▼「Novel network fiber to manage dispersion at 1.55μm with combination of 1.3μm zero dispersion single mode fiber, ECOC'97,pp.127-130,1997」を参照した。
【0029】
各論文▲2▼、▲3▼によるWDM光伝送システムでは、非線形実効断面積が比較的小さいRDFについての伝送区間内における長さの比率が大きいため(約50%程度)、伝送区間平均の非線形実効断面積が小さくなる。そのため、非線形効果を低減する効果が小さくなってしまう。
【0030】
すなわち、伝送路前半の1.3μm零分散SMFの非線形実効断面積は約80μm2と大きく、伝送損失も約0.20dB/kmと小さいのに対して、伝送路後半のRDFのモードフィールド径が5.8μm、つまり、非線形実効断面積は約26μm2と小さく、伝送損失は約0.25dB/kmと大きい。このため、上記の式(3)を用いて非線形効果φNLを求め、DSFのみの伝送路に対する距離平均の非線形実効断面積を計算するとその値は約49μm2となり、また、伝送損失は約0.225dB/kmとなる。この場合について、伝送特性の改善量Iを上記の式(4)を用いて計算し、その結果を図17上に白星印としてプロットした。
【0031】
伝送路として一般に用いられているDSFの非線形実効断面積が約50μm2、伝送損失が0.20dB/kmであることを考慮すると、各論文▲2▼、▲3▼によるWDM光伝送システムの構成では、波長分散および波長分散スロープの補償が実現されるものの非線形実効断面積と伝送損失に関する改善効果は小さく、逆に、DSFのみの伝送路とした場合と比べて、伝送特性が約0.85dB劣化するものと考えられる。
【0032】
また、上記の論文▲4▼に示されたようなWDM光伝送システムついて、その問題点を検討する。
この論文▲4▼内で用いられているRDFは、前半の1.3μm零分散SMFにおいて累積した波長分散を比較的短い長さで補償しなければいけないので、距離あたりの波長分散補償量を比較的大きくする必要がある。そのため、伝送損失が大きくなり、非線形実効断面積も小さくなる。論文▲4▼にはRDFの非線形実効断面積が示されていないので、上記の論文▲6▼に示してある距離あたりの波長分散が約−100ps/nm/kmと同等であるRDFの非線形実効断面積を参考にする。
【0033】
前半の1.3μm零分散SMFの非線形実効断面積は約80μm2と大きく、伝送損失も約0.20dB/kmと小さいのに対して、後半のRDFの非線形実効断面積は約20μm2と小さく、伝送損失は約0.5dB/kmと大きい。このため、上記の式(3)を用いて非線形効果φNLを求め、DSFのみの伝送路に対する距離平均の非線形実効断面積を計算するとその値は約68μm2となり、また、伝送損失は約0.23dB/kmとなる。この場合について、伝送特性の改善量Iを上記の式(4)を用いて計算し、その結果を図17上に黒星印としてプロットした。DSFの非線形実効断面積および伝送損失を考慮すると、各論文▲4▼によるWDM光伝送システムの構成においても非線形実効断面積と伝送損失に関する改善効果は小さく、逆に、DSFのみの伝送路とした場合と比べて、伝送特性が約0.19dB劣化していると考えられる。
【0034】
上述したように、従来の論文に示されたようなWDM光伝送システムでは、波長分散および波長分散スロープの補償が実現されても、伝送特性の改善効果が十分には得られないという問題があった。
【0035】
また、1.3μm零分散SMFとRDFを組み合わせた混成伝送路を用いて各中継器間を接続したWDM光伝送システムにあっては、各中継区間で発生する波長分散の累積値(累積波長分散)が正になると、光パルスの圧縮効果により光ピークパワーが大きくなって非線形効果を一層受けやすくなってしまうという問題もあった。
【0036】
ここでは上記の問題について、上述の論文▲2▼に示されたWDM光伝送システムを例として詳しく説明する。
論文▲2▼によるシステム構成では、1.3μm零分散SMFとRDFを組み合わせた伝送路が各中継区間に用いられ、複数の中継区間で生じた累積波長分散を補償する分散補償ファイバからなる伝送路が所要間隔を隔てた中継区間ごとに用いられる。
【0037】
図18は、論文▲2▼に示されたパラメータを用いて作成した波長分散マップの一例を示す図であって、(A)は10中継区間についての波長分散の変化を示し、(B)は100中継区間についての波長分散の変化を示すものである。
【0038】
図18に示す例では、1つの中継区間の長さが50kmとされ、5中継間隔ごとに累積波長分散の補償が行われるので、累積波長分散の補償間隔は中継間隔の5倍になり、伝送距離方向に平均化された波長分散量は、−225ps/nm/kmである。第1中継区間、第2中継区間、第6中継区間、第7中継区間などで累積波長分散の値が正になる状態が生じ、光パルスの圧縮効果により光ピークパワーが大きくなって非線形効果を一層受けやすくる。また、累積波長分散の補償間隔が比較的短いので、累積波長分散が頻繁に零に戻るために非線形効果による波形歪みを受ける可能性があり問題である。
【0039】
累積波長分散の補償間隔を中継間隔の10倍にした場合の波長分散マップは、図19(A)(B)に示すようになり、伝送距離方向に平均化された波長分散量は、−225ps/nm/kmである。この場合も、第1〜第4中継区間などで累積波長分散の値が正になる状態が生じ、光パルスの圧縮効果により光ピークパワーが大きくなって非線形効果を受けやすくなる。また、累積波長分散が正となる領域においてWDM信号光が伝送される区間が連続することが多く、光パルス圧縮により一層大きな非線形効果を受けることになって問題である。
【0040】
なお、累積波長分散が正の領域において伝送する機会が多いほど伝送特性が悪くなることは、H.Tagaらによる論文▲7▼「Performance Evaluation of the Different Types of Fiber-Chromatic-Dispersion Equalization for IM-DD Ultralong-Distance Optical Communication Systems with Er-Doped Fiber Amplifiers,IEEE,Journal of Lightwave Technolgy, vol.12, no.9, September, 1994」によって指摘されている。
【0041】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、正の波長分散を持つ光ファイバと負の波長分散を持つ光ファイバとを最適な条件で組み合わせた混成伝送路を用いることで優れた伝送特性を有するWDM光伝送システムを提供することを目的とする。また、累積波長分散の値が正になる状態を抑えることで非線形効果を発生し難くして伝送特性の改善を図ったWDM光伝送システムを提供することを目的とする。
【0042】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明によるWDM光伝送システムの1つの態様は、信号光波長に対して正の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に大きい第1光ファイバと、信号光波長に対して負の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に小さい第2光ファイバとを互いに接続した第1伝送区間を有する光伝送路と、該光伝送路を伝搬する波長多重信号光を増幅する光増幅部と、を備え、前記光伝送路に入力される波長多重信号光が、前記第1伝送区間の第1光ファイバおよび第2光ファイバを順に伝搬した後に前記光増幅部に送られる構成としたWDM光伝送システムにおいて、前記光伝送路は、前記第1伝送区間内における第2光ファイバの長さの比率が、20%以上、40%以下であり、信号光波長に対して1種類の波長分散を持つ光ファイバのみからなる伝送区間の適用を仮定したときの伝送特性に対する、前記第1伝送区間を適用したときの伝送特性の改善量が0.5dB以上となるようにしたものである。
【0043】
かかる構成によれば、光伝送路の第1伝送区間における第1光ファイバの長さと第2光ファイバの長さとが、波長分散および波長分散スロープの補償という観点だけでなく非線形効果や伝送損失の影響についても最適化されるため、伝送特性の改善を図ることができるようになる。
【0044】
また、上記のWDM光伝送システムについては、光伝送路が複数の第1伝送区間を有し、光増幅部が各第1伝送区間の間にそれぞれ配置される複数の光増幅器を備えるようにしてもよい。かかる構成では、第1光ファイバおよび第2光ファイバを用いた第1伝送区間が光伝送路に複数存在するようになり、光伝送路に入力されたWDM信号光が、光増幅器で増幅されながら各第1伝送路を順次伝搬するようになる。
【0045】
さらに、上記の光伝送路については、第1光ファイバにおける累積波長分散量と第2光ファイバにおける累積波長分散量との和が負になるようにするのが好ましい。このようにすることで、第1伝送区間で発生する累積波長分散が負となるため、非線形効果の発生し難い伝送路となる。
【0046】
加えて、上記の光伝送路は、信号光波長に対して正の波長分散を持つ第3光ファイバを用いた第2伝送区間を有し、該第2伝送区間が、予め設定した区間数の第1伝送区間ごとに配置され、当該第1伝送区間で発生する負の累積波長分散を補償する構成としてもよい。かかる構成では、所要の補償間隔で配置された第2伝送区間によって、第1伝送区間で発生した負の累積波長分散が補償されるようになる。これにより、非線形効果の発生を抑えるとともに累積波長分散による伝送特性の劣化を防ぐことができる。
【0047】
また、前述したWDM光伝送システムについては、光伝送路を伝搬した波長多重信号光に残留する波長分散を補償する残留波長分散補償部を備えるようにしてもよい。さらに、光伝送路を伝搬した波長多重信号光に残留する波長分散スロープを補償する残留波長分散スロープ補償部を備えるようにしても構わない。
【0048】
かかる構成とすることで、第1、2伝送区間で補償しきれなかった波長分散が残留波長分散補償部によって補償され、また、第1、2伝送区間で補償しきれなかった波長分散スロープが残留波長分散スロープ補償部によって補償されるため、さらに優れた伝送特性が得られるようになる。
【0049】
本発明によるWDM光伝送システムの他の態様は、上述したような光伝送路に入力される波長多重信号光に対して、前記第1光ファイバにおける累積波長分散以上の絶対値を有する負の波長分散を与える波長分散付与手段を備えて構成したものである。
【0050】
かかる構成では、累積波長分散が負の状態でWDM信号光が光伝送路を伝搬するようになるため、非線形効果の発生確率が低くなって伝送特性の改善を図ることが可能となる。
【0051】
また、上記のWDM光伝送システムについては、光伝送路から出力される波長多重信号光に対して、波長分散付与手段で与えられた負の波長分散を補償する波長分散補償手段を備えるようにしてもよい。これにより、WDM信号光に対して入力時に与えた波長分散が、光伝送路を伝搬した後に波長分散補償手段によって補償されるため、WDM信号光の波長分散補償がより確実に行われるようになる。
【0052】
本発明によるWDM光伝送システムの別の態様は、上述したような第1、2伝送区間を有する光伝送路について、予め設定した区間数の第1伝送区間で発生する負の累積波長分散に対して、第2伝送区間における補償量が不足するように設定したものである。具体的には、第2伝送区間における累積波長分散補償率が90%以上、95%以下であることが好ましい。
【0053】
かかる構成では、第2伝送区間を伝搬したWDM信号光の累積波長分散が負になるため、非線形効果が発生し難くなって伝送特性の改善を図ることが可能となる。
【0054】
また、本発明によるWDM光伝送システムは、上述した各態様を組み合わせてもよい。各態様を組み合わせることにより、伝送特性の一層の改善を図ることが可能となる。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の本実施形態のWDM光伝送システムの基本構成を示すブロック図である。
【0056】
図1のWDM光伝送システムは、例えば、光送信局1と、光受信局2と、それら送受信局間に所要の間隔で配置される複数の光増幅器(光中継器)31,32,…と、光送信局1、各光増幅器31,32,…および光受信局2の間を結ぶ光伝送路としての光ファイバ伝送路4と、から構成される。
【0057】
光送信局1は、波長の異なる複数の光信号をそれぞれ出力する複数の光送信器(E/O)1Aと、複数の光信号を波長多重する合波器1Bと、該合波器1BからのWDM信号光を所要のレベルに増幅して光ファイバ伝送路4に出力するポストアンプ1Cと、を有する。
【0058】
光受信局2は、光ファイバ伝送路4を介して伝送されたWDM信号光を所要のレベルに増幅するプリアンプ2Aと、プリアンプ2Aからの出力光を波長に応じて複数の光信号に分ける分波器2Bと、複数の光信号をそれぞれ受信処理する複数の光受信器(O/E)2Cと、を有する。
【0059】
各光増幅器31,32,…は、光ファイバ伝送路4の各所に到達したWDM信号光を一括して増幅可能な公知の光増幅器である。
光ファイバ伝送路4は、光送信局1および光増幅器31の間を結ぶ第1中継区間41と、各光増幅器31〜3n-1の間をそれぞれ結ぶ第2〜第n−1中継区間42〜4n-1と、光増幅器3n-1および光受信局2の間を結ぶ第n中継区間4nとを有する。
【0060】
ここでは、例えば、第1〜9中継区間で発生する累積波長分散が第10中継区間において補償され、以降同様にして10中継区間ごとに累積波長分散が補償される場合の構成例を図1に示した。この場合、累積波長分散の補償を行わない中継区間(第1〜9中継区間等)に対しては、WDM信号光の波長帯について正の波長分散値と正の分散スロープを有するを持つ第1光ファイバとしての1.3μm零分散SMF4aを前半(送信側)に用い、負の波長分散値と負の分散スロープを持つ第2光ファイバとしてのRDF4bを後半(受信側)に用いた混成伝送路がそれぞれ適用される。一方、累積波長分散の補償を行う中継区間(第10中継区間等)に対しては、前方の9中継区間で発生する累積波長分散とは相反する波長分散を持つ第3光ファイバとしての分散補償ファイバ(DCF)4cを用いた伝送路が適用される。
【0061】
したがって、ここでは混成伝送路が用いられる第1〜9中継区間等の区間が、光伝送路の第1伝送区間に該当し、DCF4cを用いた伝送路が用いられる第10中継区間等の区間が、光伝送路の第2伝送区間に該当する。
【0062】
1.3μm零分散SMF4aは、1.3μm付近で波長分散が零となり、波長が長くなると波長分散が大きくなるような所要の波長分散スロープを有する一般的な光ファイバであって、1.55μm帯等のWDM信号光波長帯では正の波長分散を持つ。この1.3μm零分散SMF4aは、上述したように非線形実効断面積が大きく、伝送損失が小さいという特徴を有する。
【0063】
RDF4bは、1.55μm帯等の波長帯について、1.3μm零分散SMF4aとは相反する波長分散および波長分散スロープを持つように、光ファイバの材料や構造等を調整して設計されたものあり、1.3μm零分散SMF4aで発生する波長分散の補償が可能な光ファイバである。このRDF4bは、1.3μm零分散SMF4aに比べて非線形実効断面積が小さく、伝送損失が比較的大きいという特徴を有する。
【0064】
なお、1.3μm零分散SMF4aにおける累積波長分散量とRDF4bにおける累積波長分散量との和が負になる、すなわち、1.3μm零分散SMF4aに対するRDF4bの波長分散補償が若干過剰となるように設定して、混成伝送路全体で発生する累積波長分散を負の値とするのが好ましい。これは、上述したように累積波長分散が正になると、光パルスの圧縮効果により光ピークパワーが大きくなって非線形効果を受け易くなることなどを防ぐためである。ただし、本発明はこれに限られるものではない。
【0065】
1.3μm零分散SMF4aおよびRDF4bの各長さについては、1中継区間内のRDF4bの長さの比率(以下、RDF比率とする)が、20%以上、40%以下になるように設定する。このようにRDF比率を設定する理由については後述する。
【0066】
DCF4cは、例えば、前方の9中継区間で発生する負の累積波長分散を補償可能とするために、正の波長分散を持つ光ファイバが用いられる。具体的には、DCF4cとして、混成伝送路の前半に用いられる光ファイバと同様の1.3μm零分散SMFなどを使用することができる。
【0067】
なお、ここでは10中継区間ごとにDCF4cを用いるようにしたが、累積波長分散の補償間隔は上記の場合に限られるものではない。ただし、前述したように、累積波長分散の補償間隔が短いと、累積波長分散が頻繁に零に戻って非線形効果の影響を受ける可能性があるため、累積波長分散の補償間隔は長くするのが有効である。具体的には、中継区間の10倍以上とするのが望ましいと考えられる。また、例えば、1.3μm零分散SMF4aにおける累積波長分散とRDF4bにおける累積波長分散との和が零となるように設定した場合などには、累積波長分散の補償を行うDCF4c(第2伝送区間)を省略しても構わない。
【0068】
ここで、1.3μm零分散SMF4aおよびRDF4bの組み合わせによる混成伝送路の具体的な設定条件について詳しく説明する。
伝送特性の改善を図ることのできる混成伝送路の設定条件を得るため、まず、RDF比率について検討する。
【0069】
例えば、1中継区間の伝送路長を50kmとして、1.3μm零分散SMF4aの長さおよびRDF4bの長さを変化させた場合について、一般的な伝送ファイバであるDSFのみを用いた伝送路に対する混成伝送路の距離平均の非線形実効断面積を求めることにする。具体的には、混成伝送路の非線形効果φNLを上述の式(3)を用いて計算し、その非線形効果φNLをDSFのみの伝送路の非線形効果で規格化し、さらに、その規格化した非線形効果の値でDSFの非線形実効断面積を割って、DSFのみの伝送路に対する混成伝送路の平均の非線形実効断面積を計算する。ここでは、各光ファイバの特性値として上述の表1に示したデータを用い、RDF4bについては伝送損失を0.2dB/kmに固定し、非線形実効断面積を20、30および40μm2の3段階に変化させて計算した結果を図2に示す。
【0070】
図2に示すように、RDF比率を小さくする(前半の1.3μm零分散SMF4aを長くし、後半のRDF4bを短くする)ほど、混成伝送路の距離平均の非線形実効断面積は大きくなる。例えば、RDF比率が50%の場合には、RDF4bの非線形実効断面積が40μm2のときに平均の非線形実効断面積は約58μm2となる。RDF4bの非線形実効断面積が20μm2のときには平均の非線形実効断面積は50μm2以下となって、DSFの非線形実効断面積よりも小さくなる。このため、RDF比率を50%付近に設定しても、DSFのみの伝送路としたときと比較して、非線形効果の緩和効果は小さいと考えられる。
【0071】
一方、RDF比率が20%の場合には、RDF4bの非線形実効断面積が40μm2のときに平均の非線形実効断面積は約72μm2となり、RDF4bの非線形実効断面積が20μm2のときにでも平均の非線形実効断面積は約62μm2となる。したがって、RDF比率を20%付近に設定すれば、DSFのみの伝送路としたときと比較して、RDF4bの非線形実効断面積が40μm2で約1.6dB、RDF4bの非線形実効断面積が20μm2で約0.9dBの非線形効果の緩和効果があると考えられる。これにより、混成伝送路に接続される光増幅器の出力を前記緩和分に応じて上げることができる。
【0072】
次に、1.3μm零分散SMF4aおよびRDF4bを組み合わせた混成伝送路についての距離平均の伝送損失を求めることにする。ここでは、例えば、RDF4bの伝送損失を0.2〜0.5dB/kmの範囲で段階的に変化させて平均の伝送損失の計算した結果を図3に示す。
【0073】
図3に示すように、1.3μm零分散SMF4aの伝送損失が0.18dB/kmと小さいため、1中継区間内の1.3μm零分散SMF4aの比率が大きい(RDF比率が小さい)ほど、平均の伝送損失は小さくなる。つまり,RDF比率が50%の場合よりも20%の場合の方が、中継区間あたりの平均の伝送損失を小さくできるため、伝送特性上有利である。
【0074】
次に、上記の結果を踏まえて、DSFのみの伝送路に対する混成伝送路における伝送特性の改善量Iを上述の式(4)を用いて検討する。
まず、RDF4bの非線形実効断面積を40μm2に固定し、伝送損失を0.2,0.25,0.5dB/kmの3段階に変化させて改善量Iを計算した結果を図4に示す。
【0075】
図4において、例えば、RDF4bの伝送損失が0.25dB/kmの場合、RDF比率が50%のときには伝送特性の改善量Iは約0.1dBである。これに対し、RDF比率が20%のときには伝送特性の改善量Iは約1.9dBとなり、RDF比率が50%のときと比べて改善効果が約1.8dBも大きくなる。このことからも混成伝送路におけるRDF比率が小さくなるほど、伝送特性の改善効果が大きくなることが明らかである。また、RDF4bの伝送損失が0.5dB/kmまで大きくなると、伝送特性の改善効果が得られるようにするには、RDF比率を約15%以下に設定する必要があることがわかる。
【0076】
しかし、伝送路として用いる光ファイバは、通常、伝送損失が0.25dB/km以下であることが望ましいとされる。このため、RDF4bとして伝送損失が0.5dB/kmのものも実現可能ではあるが、このようなRDF4bを伝送路の一部として用いることは適当ではないと考えられる。
【0077】
そこで、伝送路として現実的なRDF4bの特性パラメータの組み合わせとして、最良値と考えられる非線形実効断面積40μm2、伝送損失0.2dB/km、最悪値と考えられる非線形実効断面積20μm2、伝送損失0.25dB/km、および、それらの平均値となる非線形実効断面積30μm2、伝送損失0.225dB/kmを想定して、混成伝送路における伝送特性の改善量Iを計算した結果を図5に示す。
【0078】
図5より、非線形実効断面積30μm2、伝送損失0.225dB/kmの平均的なRDF4bを基準として判断した場合、伝送特性の改善量Iが0.5dB以上になるには、RDF比率が40%以下の場合であることがわかる。ここで、伝送特性の改善量Iを0.5dB以上としたのは、1.3μm零分散SMF4aとRDF4bとの接続損失等を考慮すると、実際に伝送特性の改善が見込まれる条件を0.5dB以上とするのが妥当と考えられるためである。このように1.3μm零分散SMF4aおよびRDF4bの混成伝送路においては、RDF比率を40%以下に設定するのが望ましいと判断できる。
【0079】
次に、混成伝送路で発生する累積波長分散の補償という観点から、RDF比率を検討する。
ここでは、累積波長分散の補償を行うDCF4cとして、例えば、中継区間の全体(長さ50km)に1.3μm零分散SMFを用いた場合を想定し、累積波長分散の補償間隔を5、10および15スパン(中継区間)とした場合のそれぞれについて、各混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散量をRDF比率に応じて計算した結果を図6に示す。
【0080】
図6に示すように、混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散は、累積波長分散の補償間隔が変化してもほぼ同様の値となることが分かる。例えば、累積波長分散の補償間隔が10スパンの場合、RDF比率が33%、25%、20%のときに、RDF4bの波長1560nmにおける波長分散をそれぞれ−44、−65、−86ps/nm/kmとすれば、10スパンにおける累積波長分散をDCF4cによって零に補償することができる。
【0081】
ここで、武笠らの論文▲8▼「低非線形線路型DFCFの開発,C-3-76,1997年電子情報通信学会ソサエティ大会」を参照すると、RDFの波長分散が−100ps/nm/km以下になると、伝送損失が0.49dB/kmと大きくなることが示されている。このことから、図6においてRDF4bの波長分散が−100ps/nm/km以下となるような領域(RDF比率が20%以下)では、RDFの伝送損失が約0.5dB/kmにまで増大することになる。
【0082】
そこで、伝送損失を0.2〜0.5dB/kmの範囲で変化させ、また、RDF4bの非線形実効断面積を20〜40μm2の範囲で変化させたときの伝送特性の改善量Iを計算した結果を図7に示す。
【0083】
図7に示すように、RDF4bの伝送損失を0.5dB/kmとした場合、RDF比率が約15%以下にならないと伝送特性の改善量Iが0dB以上とはならず、このことからも伝送損失の大きなRDFを混成伝送路の一部として用いるのは現実的でないことが分かる。よって、RDF4bの伝送損失が0.5dB/km以上にならない、すなわち、RDFの波長分散が−100ps/nm/km以上となるようなRDF比率の範囲が、混成伝送路の条件として有効であると考えられる。つまり、図6より、RDF比率が20%以上となる場合が有効であると考えられる。
【0084】
上記の検討の結果、各中継区間に用いられる混成伝送路のRDF比率については、20%以上、40%以下に設定すればよいと判断できる。
次に、混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散スロープについて検討する。
【0085】
ここでは、図1に示した構成のWDM光伝送システムにおいて、混成伝送路が用いられる各中継区間での分散スロープをDCF4cにより100%補償する場合に、各混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散スロープを考える。前述の場合と同様にDCF4cとして1.3μm零分散SMFを想定し、累積波長分散の補償間隔を5、10および15スパンとした場合のそれぞれについて、各混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散スロープをRDF比率に応じて計算した結果を図8に示す。
【0086】
図8に示すように、混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散スロープは、累積波長分散の補償間隔が変化してもほぼ同様の値となることが分かる。例えば、補償間隔が10スパンの場合、RDF比率が33%、25%、20%のときに、RDF4bの波長1560nmにおける波長分散スロープをそれぞれ−0.13、−0.19、−0.25ps/nm2/kmとすれば、10スパンにおける波長分散スロープをDCF4cによって補償することができる。
【0087】
そこで、RDF4bの波長分散スロープを0.01〜0.37ps/nm2/kmの範囲で段階的に変化させた場合について、混成伝送路の平均の波長分散スロープをRDF比率に応じて計算した結果を図9に示す。
【0088】
図9において、混成伝送路の平均の波長分散スロープは、RDF比率が20%以上、40%以下の範囲内で様々な値となる。ここで、例えばM.Suzukiらの論文▲9▼「170Gb/s Transmission Over 10,850 km Using Large Core Transmission Fiber, PD17,OFC'98 PD」のFigure.5に示されたQ値の波長依存性を参照すると、上記と同様な混成伝送で発生する累積波長分散を、DSFおよびラージコアファイバ(LCF)からなる補償用伝送路で補償するシステムにおいて、1.55μm帯に16チャネルを配置したWDM信号光の伝送特性として、全信号光波長帯域内のうちの6〜10チャネルに該当する波長帯で高いQ値が得られている。この場合の伝送路の平均の波長分散スロープの値は約0.1ps/nm2/kmである。このことより、伝送路の平均の波長分散スロープが上記の値の約3分の1になると、全信号光波長帯域内における伝送特性の劣化は生じないと考えられるので、平均の波長分散スロープの絶対値が0.03ps/nm2/km以下となればよいと判断することが可能である。
【0089】
図9において、RDF比率が20%以上、40%以下の範囲内のすべてにおいて、混成伝送路の平均の波長分散スロープが−0.03〜+0.03ps/nm/kmになるのは、RDF4bの波長分散スロープが−0.16ps/nm2/km以上で−0.07ps/nm2/km以下の条件となる。
【0090】
なお、RDF比率が20%以上、40%以下の範囲内で、少なくとも混成伝送路の平均の波長分散スロープが−0.03〜+0.03ps/nm/kmとなればよいとすると、RDF4bの波長分散スロープは−0.37ps/nm2/km以上で−0.01ps/nm2/km以下の条件となる。
【0091】
さらに、混成伝送路におけるRDF4bの波長分散スロープ補償率についても検討する。
例えば、図1のシステム構成のように累積波長分散の補償間隔を10スパンとし、RDF4bの波長分散スロープ補償率を変化させた場合について、各混成伝送路のRDF4bに要求される波長分散スロープをRDF比率に応じて計算した結果を図10に示す。
【0092】
図10から明らかなように、前述したRDF4bの波長分散スロープの条件(−0.16ps/nm2/km以上、−0.07ps/nm2/km以下)を満足する、RDF4bの波長分散スロープ補償率は、28%以上、165%以下の条件となることがわかる。
【0093】
上述した各設定条件をまとめると、(1)各中継区間に用いられる混成伝送路のRDF比率は、20%以上、40%以下に設定し、(2)各混成伝送路のRDF4bの波長分散スロープは、−0.16ps/nm2/km以上、−0.07ps/nm2/km以下に設定し、(3)各混成伝送路のRDF4bの波長分散スロープ補償率は、28%以上、165%以下に設定するのが望ましいと判断できる。
【0094】
このような適切な設定条件の混成伝送路を用いてWDM光伝送システムを構成することによって、従来のような波長分散および波長分散スロープの補償に重点をおいた混成伝送路を用いる場合と比較して、非線形効果や伝送損失の影響についても十分な配慮が施されるようになるため、より優れた伝送特性が得られるようになる。
【0095】
ここで、第1の実施形態の動作について説明する。
本WDM光伝送システムでは、光送信局1の各光送信器1Aで発生した波長の異なる光信号が、合波器1Bで波長多重され、ポストアンプ1Cで所要のレベルまで増幅された後に、光ファイバ伝送路4の第1中継区間41に送出される。
【0096】
第1中継区間41においては、WDM信号光が前半の1.3μm零分散SMF4aを伝搬することで正の波長分散が発生し、後半のRDF4bを伝搬することで負の波長分散が発生する。このとき、前述したように混成伝送路の設定条件(RDF比率等)が最適化されているので、非線形効果の発生確率が低く抑えられる。なお、ここでは、RDF4bにおける負の波長分散の量が、1.3μm零分散SMF4aにおける正の波長分散の量よりも多くなるように設定されているため、第1中継区間41を通過したWDM信号光に生じる累積波長分散は負の値を持つようになる。
【0097】
そして、第1中継区間41を通過したWDM信号光は、光増幅器31で所要のレベルまで増幅された後に第2中継区間42に送られる。上述の図1に示したような累積波長分散の補償が10中継区間ごとに行われるシステムでは、WDM信号光が、第2〜第9中継区間42〜49および各光増幅器32〜39を順次伝搬し、これによって負の累積波長分散が増大して行く。第9中継区間49および光増幅器39通過したWDM信号光は、第10中継区間410に送られて、正の波長分散を持つDCF4cを伝搬することにより、第2〜第9中継区間42〜49で発生した累積波長分散が補償され、ここでは累積波長分散がほぼ零となる。以降、上記と同様の動作が10中継区間ごとに繰り返され、WDM信号光が光受信局2まで中継伝送される。
【0098】
光受信局2に到達したWDM信号光は、プリアンプ2Aで所要のレベルまで増幅された後、分波器2bで波長に応じて複数の光信号に分波され、対応する光受信器2Cでそれぞれ受信処理される。
【0099】
上述したように第1の実施形態によれば、1.3μm零分散SMF4aおよびRDF4bを用いた混成伝送路について、RDF比率等の設定条件を最適化したことによって、波長分散および波長分散スロープの補償だけでなく、非線形効果や伝送損失の影響をも考慮して伝送特性の改善を図ることができるため、優れた伝送特性を有するWDM光伝送システムの実現が可能となる。
【0100】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態では、各混成伝送路で発生する累積波長分散が、10スパン等の所要の補償間隔でほぼ零に補償されるような構成とした。しかし、このような累積波長分散の補償方法では、上述の図19に示した従来の場合と同様に、累積波長分散が正になる状態が周期的に繰り返されることになる。累積波長分散が正になると、光パルスの圧縮効果により光ピークパワーが大きくなって非線形効果を受け易くなる。そこで、第2の実施形態は、累積波長分散を常時負の値とする措置を施すことにより、非線形効果をより発生し難くし、伝送特性の一層の改善を図ったものである。
【0101】
図11は、第2の実施形態のWDM光伝送システムの基本構成を示すブロック図である。なお、第1の実施形態の構成と同一の部分には同一の符号が付してある。
【0102】
図11において、本WDM光伝送システムは、第1の実施形態の構成について、光送信局1内に波長分散付与手段としての波長分散補償器1Dを付加し、また、光受信器2内に波長分散補償手段としての波長分散補償器2Dを付加した構成である。上記以外の部分の構成は第1の実施形態の構成と同様であるため説明を省略する。
【0103】
波長分散補償器1Dは、予め設定された負の波長分散を持ち、例えば、合波器1Bとポストアンプ1Cの間等に設けられる。この波長分散補償器1Dについては、負の波長分散の絶対値が混成伝送路の前半に用いられる1.3μm零分散SMF4aの正の波長分散の絶対値以上となるように設定するのが好ましい。具体的には、波長分散補償器1Dの波長分散は−400ps/nm以下とすればよい。
【0104】
波長分散補償器2Dは、波長分散補償器1Dで与えられる負の波長分散を補償する正の波長分散を持ち、例えば、プリアンプ2Aの前段等に設けられる。なお、この波長分散補償器2Dは、WDM信号光の受信処理において、波長分散補償器1Dで与えられる負の波長分散の補償が不要なときには省略しても構わない。
【0105】
かかる構成のWDM光伝送システムでは、例えば図12(A)の波長分散マップに示すように、波長分散補償器1Dで−450ps/nm等といった負の波長分散がWDM信号光に与えられ、そのWDM信号光が光送信局1から第1中継区間41に送られる。
【0106】
第1中継区間41においては、WDM信号光が1.3μm零分散SMF4a内を伝搬して波長分散が増加するが、その波長分散の増加は正の値に達する前に伝送路がRDF4Bに切り替わって減少に転じる。このため、WDM信号光の波長分散は負の値を持ち続けることになる。
【0107】
さらに、WDM信号光は、第2〜9中継区間を順次伝搬されることで負の波長分散が累積して行き、第10中継区間に達すると、正の波長分散を持つDCF4cによって累積波長分散が補償され、光送信局1から送出された時と同様の負の波長分散量(−450ps/nm等)とされる。以降、上記と同様の動作が10中継区間ごとに繰り返され、WDM信号光が光受信局2まで中継伝送される。図12(B)には、伝送距離を5000kmとしたときの波長分散マップを示しておく。
【0108】
光受信局2に到達したWDM信号光は、送信時に与えられた負の波長分散分散が波長分散補償器2Dによって補償された後に受信処理される。
このように第2の実施形態によれば、混成伝送路に用いられる1.3μm零分散SMF4aの正の波長分散よりも、絶対値で大きな負の波長分散を持つ波長分散補償器1Dを光送信局1内に設けたことにより、光送信局1から光受信局2までWDM信号光を中継伝送する間、WDM信号光の波長分散が常時負の値とされるため、非線形効果がより発生し難い伝送路が実現でき、伝送特性の一層の向上を図ることが可能となる。また、波長分散補償器2Dを設けたことにより、WDM信号光の波長分散補償がより確実に行われるため、より優れた伝送特性が得られるようになる。
【0109】
なお、上記第2の実施形態では、光送信局1内に波長分散補償器1Dを設けてWDM信号光の波長分散が常時負になるようした。しかし、WDM信号光の波長分散を常時負にしなくても、波長分散が正になる状態を少なくするだけでも非線形効果の発生確率を低くし、伝送特性の改善を図ることが可能である。
【0110】
具体的には、例えば、波長分散補償器1Dを設ける代わりに、DCF4cで行われる累積波長分散の補償量を少なくすることで、WDM信号光の波長分散が正になる状態を低減させることができる。すなわち、第1の実施形態では、各DCF4cにおいて、累積波長分散がほぼ零となるように補償を行っていたが、この累積波長分散の補償量が若干不足するように設定すればよい。詳しくは、DCF4cにおける累積波長分散補償率を90%以上、95%以下とするのが好ましい。
【0111】
このように設定することにより、図13(A)(B)に示すように、伝送距離が長くなるにつれて累積波長分散が負の領域を占めるようになる。したがって、第1の実施形態の場合と比べて非線形効果が発生し難くなるため、伝送特性をより改善させることが可能となる。
【0112】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態のWDM光伝送システムは、上述の各実施形態について、光ファイバ伝送路4で補償しきれずに残留した波長分散スロープの補償を実現して、伝送特性の一層の改善を図るようにしたものである。
【0113】
図14は、第3の実施形態のWDM光伝送システムの概略構成を示すブロック図である。
図14において、本WDM光伝送システムの構成は、例えば第1実施形態について、光送信局1および光受信局2内に、残留波長分散スロープ補償部としての残留波長分散スロープ補償器1Eおよび2Eをそれぞれ付加したものである。上記以外の部分の構成は第1実施形態の場合と同様である。
【0114】
残留波長分散スロープ補償器1Eおよび2Eは、光ファイバ伝送路4で補償しきれない残留波長分散スロープに対応させて、予め設定した所要の波長分散スロープをそれぞれ有する。送信側の残留波長分散スロープ補償器1Eは、光ファイバ伝送路4に送るWDM信号光に対して事前に波長分散スロープを与えることで、光ファイバ伝送路4で生じる残留波長分散スロープを緩和する。また、受信側の残留波長分散スロープ補償器2Eは、光ファイバ伝送路4を伝搬してきたWDM信号光に残留した波長分散スロープを最終的に補償する。
【0115】
このような第3の実施形態によれば、WDM信号光に対する波長分散スロープの補償がより確実に行われるため、伝送特性のより一層優れたWDM光伝送システムを実現することができる。
【0116】
なお、上記第3の実施形態では、光送信局および光受信局の両局に残留波長分散スロープ補償器を設けるようにしたが、本発明はこれに限らず、光送信局および光受信局のうちの一方の局、あるいは、図15に示すように、光ファイバ伝送路4の途中に残留波長分散スロープ補償器を設けても構わない。
【0117】
また、残留波長分散スロープの補償を行う構成としたが、これ以外にも、光ファイバ伝送路4で補償しきれずに残留した波長分散の補償を実現するために、光送信局、光受信局または光ファイバ伝送路の途中に、残留波長分散補償部としての残留波長分散補償器を設けるようにしてもよい。
【0118】
さらに、上述した第1〜第3の実施形態では、光伝送路が複数(n個)の中継区間を有するシステムとしたが、本発明はこれに限らず、例えば、1つの伝送区間からなる光伝送路に対して、本発明の条件を満たした混成伝送路を適用しても、伝送特性の改善効果を得ることが可能である。
【0119】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のWDM光伝送システムによれば、混成伝送路を用いた第1伝送区間内における第2光ファイバの長さの比率を20%以上、40%以下であり、信号光波長に対して1種類の波長分散を持つ光ファイバのみからなる伝送区間の適用を仮定したときの伝送特性に対する、第1伝送区間を適用したときの伝送特性の改善量が0.5dB以上となるようにしたことによって、波長分散および波長分散スロープの補償だけでなく、非線形効果や伝送損失の影響をも考慮して伝送特性の改善を図ることができる。
【0120】
また、第1光ファイバにおける累積波長分散量と第2光ファイバにおける累積波長分散量との和が負になるようにしたことで、第1伝送区間で発生する累積波長分散が負になるため、非線形効果の発生確率を低くすることが可能となる。さらに、光伝送路に第3光ファイバを用いた第2伝送区間を配置すれば、第1伝送区間で発生する累積波長分散の補償が可能となるため、より確実な波長分散補償を行うことができる。加えて、残留波長分散補償部や残留波長分散スロープ補償部を設けたことにより、WDM信号光に対する波長分散または波長分散スロープの補償がより確実に行われるため、伝送特性の一層の改善を図ることができる。
【0121】
また、光伝送路に入力される波長多重信号光に対して、第1光ファイバにおける累積波長分散以上の絶対値を有する負の波長分散を与える波長分散付与手段を設けたことによって、中継伝送されるWDM信号光の累積波長分散が負の領域となるため、非線形効果がより発生し難い伝送路が実現でき、伝送特性の一層の向上を図ることが可能となる。さらに、波長分散補償手段を設ければ、WDM信号光の波長分散補償をより確実に行うことができる。
【0122】
また、予め設定した区間数の第1伝送区間で発生する負の累積波長分散に対して、第2伝送区間における補償量が不足するように設定したことによって、伝送距離が長くなるにつれて累積波長分散が負の領域を占めるようになるため、非線形効果が発生し難くなり、伝送特性の改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【図2】同上第1実施形態に関し、混成伝送路の平均の非線形実効断面積を計算した結果を示す図である。
【図3】同上第1実施形態に関し、混成伝送路の平均の伝送損失を計算した結果を示す図である。
【図4】同上第1実施形態に関し、異なる伝送損失のRDFについて伝送特性の改善量を計算した結果を示す図である。
【図5】同上第1実施形態に関し、伝送路として実現可能なRDFについて伝送特性の改善量を計算した結果を示す図である。
【図6】同上第1実施形態に関し、RDFに要求される波長分散を計算した結果を示す図である。
【図7】同上第1実施形態に関し、各種パラメータのRDFについて伝送特性の改善量を計算した結果を示す図である。
【図8】同上第1実施形態に関し、RDFに要求される波長分散スロープを計算した結果を示す図である。
【図9】同上第1実施形態に関し、混成伝送路における平均の波長分散スロープを計算した結果を示す図である。
【図10】同上第1実施形態に関し、RDFの波長分散スロープ補償率に対して、要求される波長分散スロープを計算した結果を示す図である。
【図11】本発明の第2実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【図12】同上第2実施形態の波長分散マップであって、(A)は伝送距離が500kmまでの区間、(B)は伝送距離が5000kmまでの区間の様子を示したものである。
【図13】同上第2実施形態に関連した他の構成の波長分散マップであって、(A)は伝送距離が500kmまでの区間、(B)は伝送距離が5000kmまでの区間の様子を示したものである。
【図14】本発明の第3実施形態の構成を示すブロック図である。
【図15】同上第3実施形態に関連した他の構成を示すブロック図である。
【図16】従来のWDM光伝送システムの一例を示した図である。
【図17】従来の混成伝送路を用いたWDM光伝送システムについて、伝送特性の改善量を計算した結果を示す図である。
【図18】従来の混成伝送路を用いたWDM光伝送システムについて、累積波長分散の補償間隔を5スパンとしたときの波長分散マップであって、(A)は伝送距離が500kmまでの区間、(B)は伝送距離が5000kmまでの区間の様子を示したものである。
【図19】従来の混成伝送路を用いたWDM光伝送システムについて、累積波長分散の補償間隔を10スパンとしたときの波長分散マップであって、(A)は伝送距離が500kmまでの区間、(B)は伝送距離が5000kmまでの区間の様子を示したものである。
【符号の説明】
1…光送信局
1D,2D…波長分散補償器
1E,2E…残留波長分散スロープ補償器
2…光受信局
31〜3n…光増幅器
4…光ファイバ伝送路
41〜4n…中継区間
4a…1.3μm零分散SMF
4b…RDF
4c…DCF
Claims (22)
- 波長多重光伝送システムにおいて、
信号光波長に対して正の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に大きい第1光ファイバと、信号光波長に対して負の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に小さい第2光ファイバとを互いに接続した第1伝送区間を有する光伝送路と、
該光伝送路を伝搬する波長多重信号光を増幅する光増幅部と、を備え、
前記光伝送路に入力される波長多重信号光が、前記第1伝送区間の第1光ファイバおよび第2光ファイバを順に伝搬した後に前記光増幅部に送られる構成とし、
前記光伝送路は、前記第1伝送区間内における第2光ファイバの長さの比率が20%以上、40%以下であり、信号光波長に対して1種類の波長分散を持つ光ファイバのみからなる伝送区間の適用を仮定したときの伝送特性に対する、前記第1伝送区間を適用したときの伝送特性の改善量が0.5dB以上となることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項1に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、複数の前記第1伝送区間を有し、
前記光増幅部は、前記各第1伝送区間の間にそれぞれ配置される複数の光増幅器を備えたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項2に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1光ファイバにおける累積波長分散量と前記第2光ファイバにおける累積波長分散量との和が負になることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項3に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、信号光波長に対して正の波長分散を持つ第3光ファイバを用いた第2伝送区間を有し、該第2伝送区間が、予め設定した区間数の第1伝送区間ごとに配置され、当該第1伝送区間で発生する負の累積波長分散を補償する構成としたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項4に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記第3光ファイバは、前記第1光ファイバと同じ種類であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項1〜5のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1光ファイバが1.3μm零分散ファイバであり、かつ、前記第2光ファイバが分散補償ファイバであることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項6に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第2光ファイバの波長分散スロープが、−0.16ps/nm2/km以上、−0.07ps/nm2/km以下であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項6または7に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1光ファイバの波長分散スロープに対する前記第2光ファイバの波長分散スロープ補償率が、28%以上、165%以下であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項1〜8のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路を伝搬した波長多重信号光に残留する波長分散を補償する残留波長分散補償部を備えたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項1〜9のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路を伝搬した波長多重信号光に残留する波長分散スロープを補償する残留波長分散スロープ補償部を備えたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 波長多重光伝送システムにおいて、
信号光波長に対して正の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に大きい第1光ファイバと、信号光波長に対して負の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に小さい第2光ファイバとを互いに接続した第1伝送区間を有する光伝送路と、
該光伝送路を伝搬する波長多重信号光を増幅する光増幅部と、を備え、
前記光伝送路に入力される波長多重信号光が、前記第1伝送区間の第1光ファイバおよび第2光ファイバを順に伝搬した後に前記光増幅部に送られる構成とし、
前記光伝送路に入力される波長多重信号光に対して、前記第1光ファイバにおける累積波長分散以上の絶対値を有する負の波長分散を与える波長分散付与手段を備えて構成したことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項11に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路から出力される波長多重信号光に対して、前記波長分散付与手段で与えられた負の波長分散を補償する波長分散補償手段を備えたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項11または12に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、複数の前記第1伝送区間を有し、
前記光増幅部は、前記各第1伝送区間の間にそれぞれ配置される複数の光増幅器を備えたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項13に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1光ファイバにおける累積波長分散量と前記第2光ファイバにおける累積波長分散量との和が負になることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項14に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、信号光波長に対して正の波長分散を持つ第3光ファイバを用いた第2伝送区間を有し、該第2伝送区間が、予め設定した区間数の第1伝送区間ごとに配置され、当該第1伝送区間で発生する負の累積波長分散を補償する構成としたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 波長多重光伝送システムにおいて、
信号光波長に対して正の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に大きい第1光ファイバと、信号光波長に対して負の波長分散を持ち、かつ、非線形実効断面積が相対的に小さい第2光ファイバとを互いに接続した第1伝送区間を複数有するとともに、予め設定した区間数の前記第1伝送区間で発生する負の累積波長分散を補償可能な波長分散を持つ第3光ファイバを用いた第2伝送区間を有する光伝送路と、
該光伝送路を伝搬する波長多重信号光を増幅する光増幅部と、を備え、
前記光伝送路に入力される波長多重信号光が、前記第1伝送区間の第1光ファイバおよび第2光ファイバに順に伝搬した後に前記光増幅部に送られ、さらに、前記予め設定した区間数の第1伝送区間を伝搬した後に前記第2伝送区間に送られる構成とし、
前記光伝送路は、前記予め設定した区間数の第1伝送区間で発生する負の累積波長分散に対して、前記第2伝送区間における補償量が不足するように設定されたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項16に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第2伝送区間における累積波長分散補償率が90%以上、95%以下であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項16または17に記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記第3光ファイバは、前記第1光ファイバと同じ種類であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項16〜18のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路に入力される波長多重信号光に対して、予め設定した負の波長分散を与える波長分散付与手段を備えて構成されたことを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項11〜19のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1伝送区間内における第2光ファイバの長さの比率が、20%以上、40%以下であることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 請求項11〜20のいずれか1つに記載の波長多重光伝送システムにおいて、
前記光伝送路は、前記第1光ファイバが1.3μm零分散ファイバであり、かつ、前記第2光ファイバが分散補償ファイバであることを特徴とする波長多重光伝送システム。 - 光通信を行う光伝送路において、
該光伝送路は、伝送信号光に対して正の分散値で正の分散スロープを有する第1光ファイバと、伝送信号光に対して負の分散値で負の分散スロープを有する第2光ファイバとで構成し、
該第2光ファイバの割合は前記伝送路全体の20〜40%とし、前記伝送信号光を前記第1光ファイバ、第2光ファイバの順に通過させる構成として、伝送信号光に対して1種類の分散値を持つ光ファイバのみを用いた構成を仮定したときの伝送特性に対する、前記第1および第2光ファイバで構成したときの伝送特性の改善量が0.5dB以上となることを特徴とする光伝送路。
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