JP3769059B2 - 超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置及び薄膜の形成方法並びに表面の平滑化方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は半導体の製造や材料の表面保護用薄膜の形成及び材料表面の平滑化等に利用されるものであり、強力な電磁シャーモード超音波を被処理材へ伝播させて被処理材を超音波により励起し、外表面が活性化した所謂能動的基板構成とした状態でこれにプラズマイオン蒸着や中性粒子照射を同時に若しくは夫々単独で行なうことにより、結晶性や密着性、膜構成原子比(膜内部の不純物密度)等の点で高度に優れた薄膜の形成や材料表面の平滑化を可能とした超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置及び薄膜の形成方法並びに表面の平滑化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造や材料の表面保護等の技術分野に於いては、各種の薄膜の形成技術が開発され、実用に供されている。
しかし、従前の薄膜形成技術により形成した薄膜は膜の結晶性、密着性、不純物密度や膜構成原子比等の点で様々な難点を有しており、多くの改良すべき問題が残されている。
特に、近年センサーやマイクロマシン等の分野に於いては、従来にないインテリジェント薄膜や傾斜機能性薄膜、高度の密着性や耐磨耗性を有するコーティング薄膜等が夫々要求されている。
しかし、これ等の要求に対応できる薄膜の形成技術は未だ開発並びに公開されていない。
【0003】
而して、従前の薄膜の形成技術、例えばPVD法の一種であるプラズマを媒介とするスパッタリング法やイオンプレーティング法、CVD法の一種であるプラズマCVD法等に於いては、何れも固体試料の形状や印加電圧、プラズマパラメータ(電子温度・密度)等を調整すると共に被処理材側は主としてその温度を制御することにより、前記膜の結晶性や密着性等の向上を図っている。
しかし、被処理材側の温度制御を行なうだけでは、被処理材を種々の表面効果が期待できる所謂能動的基板の状態とすることができないため、成膜環境が限られた狭い範囲のものとなり、大幅な薄膜特性の改良等が望めないうえ、被処理材そのものの表面温度を相当の高温に保持するため、薄膜特性に与える悪影響が避けられないと云う基本的な問題がある。
【0004】
また、従前の薄膜の形成技術に於いては、その大部分が成膜物質を毒性の強い化合物ガスの形で系内へ持ち込んでいるため、安全性に欠けるうえ環境汚損等を生じ易いと云う難点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従前の薄膜の形成技術や表面の平滑化技術に於ける上述の如き問題、即ち▲1▼成膜過程に於ける被処理材側の制御要素が主としてその温度だけであるため、成膜環境の変化の幅が必然的に限られたものとなり、薄膜特性の大幅な向上が望めないこと、▲2▼被処理材の表面温度を相当高温に保持する必要があるため、薄膜特性に与える悪影響が避けられないこと、▲3▼成膜物質を毒性ガスの形で系内へ持ち込むため、安全性や環境汚損上の問題があること、等の問題を解決せんとするものであり、被処理材中に強力なシャーモード超音波を伝播させてこれを超音波励起させることにより、能動的基板構成として従来なかった複合的な成膜環境を創出し、これによって結晶性、密着性、不純物密度、薄膜内部応力等の点で従前の薄膜よりも大幅に優れた高機能性薄膜の生成を可能にした超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置及びこれを応用した薄膜の形成方法及び表面の平滑化方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、これ迄に数多くのプラズマプロセスによる成膜や粒子ビーム照射による表面改質に関する研究並びに実験を実施し、これ等の研究・実験を通してプロセスの際に発生する種々の格子欠陥が膜質に大きな影響を与えていることを見出した。
【0007】
一方、物質に十分な強度の超音波を伝播させると、格子欠陥の制御や相転移、不純物拡散の促進等が可能となり、しかも超音波の格子欠陥等への影響は格子の熱運動とは異なって、その作用が選択的且つ異方的に及ぼされることが知られている。
【0008】
より具体的には、一般に物質中で1GHZ以上の超高周波音波を伝播させると、周波数帯域がフォノンの領域に入って超音波はミクロな格子欠陥である空孔や格子間原子と強い相互作用を行なう。
また、1GHZ〜0.1GHZ位いの周波数領域の超高周波音波は、より大きなスケールの格子欠陥である転移等と強い相互作用をするうえ、転移等の方向性を持つ欠陥と超音波の相互作用は、超音波の伝播方向と転移の存在面間の角度とに依存する現象であるため(依存性は超音波のモードによって異なる)、作用に異方性のあることが知られている。
【0009】
本願発明者は、▲1▼前記プラズマプロセスによる成膜の際に発生する種々の格子欠陥が膜質に大きな影響を与えていると云う知見と、超音波が前記転移等と強い相互作用を有し、しかもその作用に異方性を有すると云う事象とから、所謂シャーモード(弾性横波・SH波)の超音波を被処理物へ伝播させてこれを励起することにより、超音波が薄膜欠陥や相転移、不純物拡散の促進、推積種の選択性等の種々の相互作用を効果的に果し、成膜プロセスに於ける所謂被処理材の能動的制御が可能になることを着想した。
【0010】
本願発明は本願発明者の前記着想を基にして開発されたものであり、請求項1に記載の装置発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化する超音波励起装置と、有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により固体ターゲッター原子をイオン化し、当該イオンを有磁場プラズマ中で被処理材へ蒸着するプラズマイオン蒸着装置と、ソースプラズマ生成部とビーム引出し電極部と中性化セル部を備え中性化セル部で形成した中性粒子ビームを被処理材の表面へ照射する中性粒子ビーム照射装置とを発明の基本構成とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の方法発明は被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材の表面へ中性粒子ビームを照射しつつ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを発明の基本構成とするものである。
【0012】
更に、請求項3に記載の方法発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、当該被処理材の表面へ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを発明の基本構成とするものである。
【0013】
加えて、請求項4に記載の方法発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材の表面へ中性粒子ビームを照射し、被処理材の表面を平滑化することを発明の基本構成とするものである。
【0014】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の態様を説明する。
図1は本発明に係る超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置Aの概要を示す縦断面であり、図2は複合プロセス装置Aで使用する超音波励起装置1の概要を示す斜面図である。
当該複合プロセス装置Aは超音波励起装置1とプラズマイオン蒸着装置2と中性粒子ビーム照射装置3と試料交換ステージ4とからその主要部が構成されており、装置全体は内部を真空排気した本体ケース5内に収納されている。
【0015】
前記超音波励起装置1は図2に示すように超音波発振部6と受信部7とシャーモード結合体(SHモード結合体)8とから形成されており、シャーモード結合体8の中央部上面に被処理材(試料基板)Bが載置されている。
前記超音波発振部6は永久磁石セグメント体6aと複数のコイル片6bの組み合せから構成されており、電磁的に所謂シャーモードの強力超音波(弾性横波)を発生してこれを被処理材B中へ伝播せしめることにより、被処理材Bをシャーモード超音波により励起する。
【0016】
具体的には、シャーモード超音波の周波数は数GHZ〜数10MHZの範囲に設定されており、コイル片6bへは2〜10サイクルのバースト波として繰り返し周波数が数KHZの入力が加えられる(入力電圧約1000〜2000V、入力電流30〜100A)。
また、発振部6で発生したシャーモードの超音波は、振動方向とほぼ直交状に伝播し、シャーモード結合体8を介して被処理材B中へ順次伝播することにより、これを超音波励起する。
【0017】
前記プラズマイオン蒸着装置2はプラズマイオンスパッタリング蒸発源9とマイクロ波供給部10、固体ターゲット11、プラズマ輸送磁場コイル12、プラズマ輸送系差動排気部13、下部プラズマ輸送磁場コイル14等から構成されている。
前記プラズマイオンスパッタリング蒸発源9は所謂電子サイクロトロン共鳴法(ECR)により高密度プラズマ(Ar、He、N2 等の不活性ガス放電、5×1012Cm-3以上)を生成するものであり、ここで生成された高密度プラズマ(ECRプラズマ)を用いて磁場内で所謂プラズマイオンスパッタリング法により固体ターゲット11からその原子をスパッターさせると共に、スパッターされた原子をプラズマ電子の衝突によってイオン化し、有磁場高密度プラズマ内へイオンを注入する。そしてこれ等のプラズマ内へ注入されたイオンを磁場に沿って輸送することにより、前記超音波励起された状態の被処理材Bの外表面へイオンを蒸着させ、これによって薄膜が形成されて行く。
【0018】
前記マイクロ波供給部10は、公知の2、45GHZのマイクロ波を導波管を通して有磁場高密度プラズマ内へ供給するものであり、マイクロ波電力は2〜10Kw程度に選定されている。
また、前記固体ターゲット11には半導体その他の高融点固体(ボロン、チタン等)が多く使用され、約3〜10KVの高電圧が印加されている。
更に、前記上・下のプラズマ輸送用磁場コイル12、14は最大磁場が1500〜3000G程度に選定されている。
【0019】
前記差動排気部13は1500〜3000l/sのターボ分子ポンプから形成されており、内径約150〜300φの本体ケース5内を3mmtorr〜15mmtorr程度の真空に保持する。
【0020】
前記中性粒子ビーム照射装置3はソースプラズマ生成部15とビーム引出し電極部16と中性化セル部17とビーム源差動排気部18等から構成されており、集束した高密度中性粒子ビームDを被処理材Bの外表面へ照射することにより、被処理材Bの外表面温度を制御したり、或いは被処理材Bの外表面の平滑化を図るものである。
【0021】
前記ソースプラズマ生成部15内では熱陰極アーク放電により放電ガス(ヘリウム、アルゴン、水素等)が電離され、ソースプラズマが形成されると共にイオンの供給が行なわれる。
また、ビーム引出し電極部16は前記ソースプラズマ内のイオンを引き出しすると共に、電極孔を通過する間に、ビームを電極の曲率中心に集束させる。
更に、前記中性化セル部17は、セル内のガス雰囲気中を前記イオンビームが通過する間に所謂荷電交換反応を起生せしめ、これによってイオンビームを中性化するものである。
【0022】
前記ビーム源差動排気部18には1000〜1500l/sのターボ分子ポンプが設けられており、当該排気部18により中性化セル部17の近傍内部は3mmtorr〜15mmtorr程度に減圧されている。
【0023】
放電ガスを水素ガスとした場合、当該中性粒子ビーム照射装置3では数Kevの低エネルギーを有し且つ高度に集束された中性粒子ビームDが形成される。そして、当該中性粒子ビームDを被処理材Bへ照射することにより、その温度制御や表面の平滑化が図られる。
尚、当該中性粒子ビーム照射装置については、特公平7−101640号として本願発明者によりその詳細が開示されている。
【0024】
上記実施態様に於いては、中性粒子ビームDの試料外表面への入射角(照射角)αを30〜80°としているが、αを90度に近づけてもよいことは勿論である。
また、本実施態様では、中性粒子ビーム照射装置3とプラズマイオン蒸着装置2の両方を本体ケース5内へ設ける構成としているが、超音波励起装置1とプラズマイオン蒸着装置2のみの複合プロセス装置としても、或いは超音波励起装置1と中性粒子ビーム照射装置3のみの複合プロセス装置とすることも可能である。
【0025】
前記試料交換ステージ4は、被処理材Bの取替並びに形成した薄膜の特性や照射表面の平滑度を大気にさらすことなく測定できるようにした室であり、膜の結晶性及び原子間結合特性等を測定するための高速電子線回析装置、X線回析装置、透過電子顕微鏡、ラマン分光装置等、及び試料の表面形状や膜中の元素組成等を測定するためのオージェ電子分光装置、走査型電子顕微鏡、並びに試料の表面近傍の元素組成の深さ分布等を測定するラザフォード後方散乱装置等が設けられている。
【0026】
前記シャーモード超音波により励起された被処理材Bの外表面へプラズマイオン蒸着装置2からのイオン流Cと中性粒子ビームDの両方又はイオン流Cのみを照射することにより、被処理材Bの外表面は超音波により活性化された外表面とプラズマや粒子ビーム間の相互作用によって、これ迄に全く見られなかった新しい複合プラズマプロセスの反応場となり、比較的低い温度条件下で密着性、内部応力、結晶性、膜構成原子比等の点でより優れた薄膜が形成されることになる。
【0027】
また、前記シャーモード超音波により励起された被処理材Bの外表面へ中性粒子ビームDを照射することにより、所謂中性粒子ビームによるスパッタリングにより被処理材Bの外表面の平滑度が大幅に向上することになる。
【0028】
【実施例1】
前記図1の複合プロセス装置に於いて、シャーモード超音波の周波数を0.2GHZとすると共に、固体ターゲット11を固体ボロンとし、キャリアガスとしてアルゴンを用いたECR放電プラズマ中へプラズマパッタ法によってボロンを注入した。
また、このボロンを注入した有磁場プラズマを被処理物Bの外表面へ運び、被処理材(セラミック体)の外表面へボロンを堆積させると共に前記ボロンの堆積中窒素ガスを用いたビーム源からの低エネルギー中性粒子ビームDを照射して被処理材Bの温度制御等を行ない、ダイヤモンド型結晶の窒化ボロン膜を生成せしめた。
当該窒化ボロン膜は、常温常圧付近の平衡状態では六方晶となる。従って、ダイヤモンド結晶の膜とするには非平衡状態を現出させる必要があるが、当該複合プロセス装置により従来見られなかった非平衡系の実現が可能となり、その結果ダイヤモンド結晶を有する窒化ボロン膜が形成されていることが、膜の結晶組織の解析により確認されている。
【0029】
【実施例2】
前記実施例1に於いて、窒素の低エネルギー中性粒子ビームDによる照射をしつつボロンを注入した有磁場プラズマにより被処理材Bの外表面に窒化ボロン膜を形成し、その後当該窒化ボロン膜の水素不純物濃度について調査をした。
ところで、従来、超音波励起をしない状態の被処理材BにプラズマCVD法によりボロン薄膜を形成した場合、イオン衝撃を膜に対して与えることにより、ボロン薄膜中の水素不純物含有量が増加することが判っており、イオン照射欠陥が水素の含有量に影響を与えているものと想定されている。
ところが、本実施例により形成した前記窒化ボロン膜では、水素不純物濃度が従前の薄膜に比較して相当に減少しており、シャーモード超音波励起が、薄膜中の水素不純物含有量を低減せしめる作用を有していることが確認されている。
【0030】
【実施例3】
被処理材B(試料基板)をシャーモード超音波により励起した状態とすると共に、当該被処理材Bをアルゴンや水素の直流放電プラズマにさらし、所謂イオンプレーティング法によってボロンを蒸着することにより、ボロン薄膜を形成した。
そして、前記ボロン薄膜の内部応力を調査したところ、従前の超音波励起をしない状態下でイオンプレーティング法により形成したボロン薄膜に比較して、薄膜中の内部応力が相当に緩和され、その結果薄膜の密着性が相当に高まっていることが判った。
【0031】
【実施例4】
実施例1の複合プロセス装置を用い、被処理材Bを炭素系材料及び金属系材料としてこれを超音波励起装置により励起すると共に、プラズマイオン蒸着装置2の作動を止めて中性粒子ビーム照射装置3のみを作動させ、前記励起状態下の被処理材Bへ中性粒子ビームBを一定時間照射し、その後、被処理材Bの外表面の平滑性の変化を調査した。
ところで、イオン流によりスパッタリングされた材料の表面はイオンドーズ量が増すとその平滑性が失なわれる傾向にあるが、逆に、イオン照射によって材料表面に於ける原子の拡散が十分に促進される場合には、その平滑性は改善されることになると想定される。
本実施例に於いては、前記材料外表面の平滑性を調査したところ、被処理材Bをシャーモード超音波によって励起しない場合に比較して、材料外表面の平滑度が相当に改善されることが判明した。
【0032】
【発明の効果】
本願請求項1及び請求項2の発明に於いては、超音波励起装置とプラズマイオン蒸着装置と中性粒子ビーム照射装置の三者を有機的に組み合せ、被処理材Bを超音波励起により能動的制御が可能な状態とすると共に、これに有磁場プラズマプロセスによる成膜を行ないつつ、中性粒子ビームを照射して磁場に影響を与えることなく被処理材外表面の温度制御等を行なう構成としている。
その結果、従前とは全く異なる新規な非平衡状態が被処理材の外表面に現出され、形成された薄膜の固着力、結晶性、不純物密度等が、従前の超音波励起や中性粒子照射を行なわない状態下でフラズマプロセスにより形成した薄膜の場合に比較して相当に改善されることになる。
【0033】
また、プラズマイオン蒸着装置の構成をプラズマスパッタ法により固体原子をプラズマ内へ注入する構成としているため、従前の有毒性ガスを用いる薄膜形成プロセスに比較して安全性が大幅に向上すると共に、環境汚損の発生等も皆無となる。
【0034】
本願請求項3及び請求項4の発明に於いては、シャーモード超音波により励起せしめた状態の被処理材の外表面へ、プラズマイオン蒸着による薄膜の形成若しくは中性粒子ビームの照射を行なう構成としている。
その結果、被処理材の外表面が高度に活性化され、薄膜中の水素不純物の減少、内部応力の減少による薄膜固着力の向上若しくは材料外表面の平滑度の向上等の優れた効用が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置の概要を示す縦断面図である。
【図2】超音波励起装置の概要を示す斜面図である。
【符号の簡単な説明】
A : 複合プロセス装置 8 : シャーモード結合体
B : 被処理材(試料基板) 9 : プラズマイオンスパッタリング
C : イオン流(励起粒子流) 蒸発源
D : 中性粒子ビーム 10: マイクロ波発生部
1 : 超音波励起装置 11: 固体ターゲット
2 : プラズマイオン蒸着装置 12: プラズマ輸送磁場コイル
3 : 中性粒子ビーム照射装置 13: プラズマ輸送系差動排気部
4 : 試料交換ステージ 14: 下部プラズマ輸送磁場コイル
5 : 本体ケース 15: ソースプラズマ生成部
6 : 超音波発振部 16: ビーム引出し電極部
6a: 永久磁石セグメント体 17: 中性化セル部
6b: コイル片 18: ビーム源差動排気部
7 : 超音波受信部
【発明が属する技術分野】
本発明は半導体の製造や材料の表面保護用薄膜の形成及び材料表面の平滑化等に利用されるものであり、強力な電磁シャーモード超音波を被処理材へ伝播させて被処理材を超音波により励起し、外表面が活性化した所謂能動的基板構成とした状態でこれにプラズマイオン蒸着や中性粒子照射を同時に若しくは夫々単独で行なうことにより、結晶性や密着性、膜構成原子比(膜内部の不純物密度)等の点で高度に優れた薄膜の形成や材料表面の平滑化を可能とした超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置及び薄膜の形成方法並びに表面の平滑化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造や材料の表面保護等の技術分野に於いては、各種の薄膜の形成技術が開発され、実用に供されている。
しかし、従前の薄膜形成技術により形成した薄膜は膜の結晶性、密着性、不純物密度や膜構成原子比等の点で様々な難点を有しており、多くの改良すべき問題が残されている。
特に、近年センサーやマイクロマシン等の分野に於いては、従来にないインテリジェント薄膜や傾斜機能性薄膜、高度の密着性や耐磨耗性を有するコーティング薄膜等が夫々要求されている。
しかし、これ等の要求に対応できる薄膜の形成技術は未だ開発並びに公開されていない。
【0003】
而して、従前の薄膜の形成技術、例えばPVD法の一種であるプラズマを媒介とするスパッタリング法やイオンプレーティング法、CVD法の一種であるプラズマCVD法等に於いては、何れも固体試料の形状や印加電圧、プラズマパラメータ(電子温度・密度)等を調整すると共に被処理材側は主としてその温度を制御することにより、前記膜の結晶性や密着性等の向上を図っている。
しかし、被処理材側の温度制御を行なうだけでは、被処理材を種々の表面効果が期待できる所謂能動的基板の状態とすることができないため、成膜環境が限られた狭い範囲のものとなり、大幅な薄膜特性の改良等が望めないうえ、被処理材そのものの表面温度を相当の高温に保持するため、薄膜特性に与える悪影響が避けられないと云う基本的な問題がある。
【0004】
また、従前の薄膜の形成技術に於いては、その大部分が成膜物質を毒性の強い化合物ガスの形で系内へ持ち込んでいるため、安全性に欠けるうえ環境汚損等を生じ易いと云う難点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従前の薄膜の形成技術や表面の平滑化技術に於ける上述の如き問題、即ち▲1▼成膜過程に於ける被処理材側の制御要素が主としてその温度だけであるため、成膜環境の変化の幅が必然的に限られたものとなり、薄膜特性の大幅な向上が望めないこと、▲2▼被処理材の表面温度を相当高温に保持する必要があるため、薄膜特性に与える悪影響が避けられないこと、▲3▼成膜物質を毒性ガスの形で系内へ持ち込むため、安全性や環境汚損上の問題があること、等の問題を解決せんとするものであり、被処理材中に強力なシャーモード超音波を伝播させてこれを超音波励起させることにより、能動的基板構成として従来なかった複合的な成膜環境を創出し、これによって結晶性、密着性、不純物密度、薄膜内部応力等の点で従前の薄膜よりも大幅に優れた高機能性薄膜の生成を可能にした超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置及びこれを応用した薄膜の形成方法及び表面の平滑化方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は、これ迄に数多くのプラズマプロセスによる成膜や粒子ビーム照射による表面改質に関する研究並びに実験を実施し、これ等の研究・実験を通してプロセスの際に発生する種々の格子欠陥が膜質に大きな影響を与えていることを見出した。
【0007】
一方、物質に十分な強度の超音波を伝播させると、格子欠陥の制御や相転移、不純物拡散の促進等が可能となり、しかも超音波の格子欠陥等への影響は格子の熱運動とは異なって、その作用が選択的且つ異方的に及ぼされることが知られている。
【0008】
より具体的には、一般に物質中で1GHZ以上の超高周波音波を伝播させると、周波数帯域がフォノンの領域に入って超音波はミクロな格子欠陥である空孔や格子間原子と強い相互作用を行なう。
また、1GHZ〜0.1GHZ位いの周波数領域の超高周波音波は、より大きなスケールの格子欠陥である転移等と強い相互作用をするうえ、転移等の方向性を持つ欠陥と超音波の相互作用は、超音波の伝播方向と転移の存在面間の角度とに依存する現象であるため(依存性は超音波のモードによって異なる)、作用に異方性のあることが知られている。
【0009】
本願発明者は、▲1▼前記プラズマプロセスによる成膜の際に発生する種々の格子欠陥が膜質に大きな影響を与えていると云う知見と、超音波が前記転移等と強い相互作用を有し、しかもその作用に異方性を有すると云う事象とから、所謂シャーモード(弾性横波・SH波)の超音波を被処理物へ伝播させてこれを励起することにより、超音波が薄膜欠陥や相転移、不純物拡散の促進、推積種の選択性等の種々の相互作用を効果的に果し、成膜プロセスに於ける所謂被処理材の能動的制御が可能になることを着想した。
【0010】
本願発明は本願発明者の前記着想を基にして開発されたものであり、請求項1に記載の装置発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化する超音波励起装置と、有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により固体ターゲッター原子をイオン化し、当該イオンを有磁場プラズマ中で被処理材へ蒸着するプラズマイオン蒸着装置と、ソースプラズマ生成部とビーム引出し電極部と中性化セル部を備え中性化セル部で形成した中性粒子ビームを被処理材の表面へ照射する中性粒子ビーム照射装置とを発明の基本構成とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の方法発明は被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材の表面へ中性粒子ビームを照射しつつ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを発明の基本構成とするものである。
【0012】
更に、請求項3に記載の方法発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、当該被処理材の表面へ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを発明の基本構成とするものである。
【0013】
加えて、請求項4に記載の方法発明は、被処理材中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材の表面へ中性粒子ビームを照射し、被処理材の表面を平滑化することを発明の基本構成とするものである。
【0014】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の態様を説明する。
図1は本発明に係る超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置Aの概要を示す縦断面であり、図2は複合プロセス装置Aで使用する超音波励起装置1の概要を示す斜面図である。
当該複合プロセス装置Aは超音波励起装置1とプラズマイオン蒸着装置2と中性粒子ビーム照射装置3と試料交換ステージ4とからその主要部が構成されており、装置全体は内部を真空排気した本体ケース5内に収納されている。
【0015】
前記超音波励起装置1は図2に示すように超音波発振部6と受信部7とシャーモード結合体(SHモード結合体)8とから形成されており、シャーモード結合体8の中央部上面に被処理材(試料基板)Bが載置されている。
前記超音波発振部6は永久磁石セグメント体6aと複数のコイル片6bの組み合せから構成されており、電磁的に所謂シャーモードの強力超音波(弾性横波)を発生してこれを被処理材B中へ伝播せしめることにより、被処理材Bをシャーモード超音波により励起する。
【0016】
具体的には、シャーモード超音波の周波数は数GHZ〜数10MHZの範囲に設定されており、コイル片6bへは2〜10サイクルのバースト波として繰り返し周波数が数KHZの入力が加えられる(入力電圧約1000〜2000V、入力電流30〜100A)。
また、発振部6で発生したシャーモードの超音波は、振動方向とほぼ直交状に伝播し、シャーモード結合体8を介して被処理材B中へ順次伝播することにより、これを超音波励起する。
【0017】
前記プラズマイオン蒸着装置2はプラズマイオンスパッタリング蒸発源9とマイクロ波供給部10、固体ターゲット11、プラズマ輸送磁場コイル12、プラズマ輸送系差動排気部13、下部プラズマ輸送磁場コイル14等から構成されている。
前記プラズマイオンスパッタリング蒸発源9は所謂電子サイクロトロン共鳴法(ECR)により高密度プラズマ(Ar、He、N2 等の不活性ガス放電、5×1012Cm-3以上)を生成するものであり、ここで生成された高密度プラズマ(ECRプラズマ)を用いて磁場内で所謂プラズマイオンスパッタリング法により固体ターゲット11からその原子をスパッターさせると共に、スパッターされた原子をプラズマ電子の衝突によってイオン化し、有磁場高密度プラズマ内へイオンを注入する。そしてこれ等のプラズマ内へ注入されたイオンを磁場に沿って輸送することにより、前記超音波励起された状態の被処理材Bの外表面へイオンを蒸着させ、これによって薄膜が形成されて行く。
【0018】
前記マイクロ波供給部10は、公知の2、45GHZのマイクロ波を導波管を通して有磁場高密度プラズマ内へ供給するものであり、マイクロ波電力は2〜10Kw程度に選定されている。
また、前記固体ターゲット11には半導体その他の高融点固体(ボロン、チタン等)が多く使用され、約3〜10KVの高電圧が印加されている。
更に、前記上・下のプラズマ輸送用磁場コイル12、14は最大磁場が1500〜3000G程度に選定されている。
【0019】
前記差動排気部13は1500〜3000l/sのターボ分子ポンプから形成されており、内径約150〜300φの本体ケース5内を3mmtorr〜15mmtorr程度の真空に保持する。
【0020】
前記中性粒子ビーム照射装置3はソースプラズマ生成部15とビーム引出し電極部16と中性化セル部17とビーム源差動排気部18等から構成されており、集束した高密度中性粒子ビームDを被処理材Bの外表面へ照射することにより、被処理材Bの外表面温度を制御したり、或いは被処理材Bの外表面の平滑化を図るものである。
【0021】
前記ソースプラズマ生成部15内では熱陰極アーク放電により放電ガス(ヘリウム、アルゴン、水素等)が電離され、ソースプラズマが形成されると共にイオンの供給が行なわれる。
また、ビーム引出し電極部16は前記ソースプラズマ内のイオンを引き出しすると共に、電極孔を通過する間に、ビームを電極の曲率中心に集束させる。
更に、前記中性化セル部17は、セル内のガス雰囲気中を前記イオンビームが通過する間に所謂荷電交換反応を起生せしめ、これによってイオンビームを中性化するものである。
【0022】
前記ビーム源差動排気部18には1000〜1500l/sのターボ分子ポンプが設けられており、当該排気部18により中性化セル部17の近傍内部は3mmtorr〜15mmtorr程度に減圧されている。
【0023】
放電ガスを水素ガスとした場合、当該中性粒子ビーム照射装置3では数Kevの低エネルギーを有し且つ高度に集束された中性粒子ビームDが形成される。そして、当該中性粒子ビームDを被処理材Bへ照射することにより、その温度制御や表面の平滑化が図られる。
尚、当該中性粒子ビーム照射装置については、特公平7−101640号として本願発明者によりその詳細が開示されている。
【0024】
上記実施態様に於いては、中性粒子ビームDの試料外表面への入射角(照射角)αを30〜80°としているが、αを90度に近づけてもよいことは勿論である。
また、本実施態様では、中性粒子ビーム照射装置3とプラズマイオン蒸着装置2の両方を本体ケース5内へ設ける構成としているが、超音波励起装置1とプラズマイオン蒸着装置2のみの複合プロセス装置としても、或いは超音波励起装置1と中性粒子ビーム照射装置3のみの複合プロセス装置とすることも可能である。
【0025】
前記試料交換ステージ4は、被処理材Bの取替並びに形成した薄膜の特性や照射表面の平滑度を大気にさらすことなく測定できるようにした室であり、膜の結晶性及び原子間結合特性等を測定するための高速電子線回析装置、X線回析装置、透過電子顕微鏡、ラマン分光装置等、及び試料の表面形状や膜中の元素組成等を測定するためのオージェ電子分光装置、走査型電子顕微鏡、並びに試料の表面近傍の元素組成の深さ分布等を測定するラザフォード後方散乱装置等が設けられている。
【0026】
前記シャーモード超音波により励起された被処理材Bの外表面へプラズマイオン蒸着装置2からのイオン流Cと中性粒子ビームDの両方又はイオン流Cのみを照射することにより、被処理材Bの外表面は超音波により活性化された外表面とプラズマや粒子ビーム間の相互作用によって、これ迄に全く見られなかった新しい複合プラズマプロセスの反応場となり、比較的低い温度条件下で密着性、内部応力、結晶性、膜構成原子比等の点でより優れた薄膜が形成されることになる。
【0027】
また、前記シャーモード超音波により励起された被処理材Bの外表面へ中性粒子ビームDを照射することにより、所謂中性粒子ビームによるスパッタリングにより被処理材Bの外表面の平滑度が大幅に向上することになる。
【0028】
【実施例1】
前記図1の複合プロセス装置に於いて、シャーモード超音波の周波数を0.2GHZとすると共に、固体ターゲット11を固体ボロンとし、キャリアガスとしてアルゴンを用いたECR放電プラズマ中へプラズマパッタ法によってボロンを注入した。
また、このボロンを注入した有磁場プラズマを被処理物Bの外表面へ運び、被処理材(セラミック体)の外表面へボロンを堆積させると共に前記ボロンの堆積中窒素ガスを用いたビーム源からの低エネルギー中性粒子ビームDを照射して被処理材Bの温度制御等を行ない、ダイヤモンド型結晶の窒化ボロン膜を生成せしめた。
当該窒化ボロン膜は、常温常圧付近の平衡状態では六方晶となる。従って、ダイヤモンド結晶の膜とするには非平衡状態を現出させる必要があるが、当該複合プロセス装置により従来見られなかった非平衡系の実現が可能となり、その結果ダイヤモンド結晶を有する窒化ボロン膜が形成されていることが、膜の結晶組織の解析により確認されている。
【0029】
【実施例2】
前記実施例1に於いて、窒素の低エネルギー中性粒子ビームDによる照射をしつつボロンを注入した有磁場プラズマにより被処理材Bの外表面に窒化ボロン膜を形成し、その後当該窒化ボロン膜の水素不純物濃度について調査をした。
ところで、従来、超音波励起をしない状態の被処理材BにプラズマCVD法によりボロン薄膜を形成した場合、イオン衝撃を膜に対して与えることにより、ボロン薄膜中の水素不純物含有量が増加することが判っており、イオン照射欠陥が水素の含有量に影響を与えているものと想定されている。
ところが、本実施例により形成した前記窒化ボロン膜では、水素不純物濃度が従前の薄膜に比較して相当に減少しており、シャーモード超音波励起が、薄膜中の水素不純物含有量を低減せしめる作用を有していることが確認されている。
【0030】
【実施例3】
被処理材B(試料基板)をシャーモード超音波により励起した状態とすると共に、当該被処理材Bをアルゴンや水素の直流放電プラズマにさらし、所謂イオンプレーティング法によってボロンを蒸着することにより、ボロン薄膜を形成した。
そして、前記ボロン薄膜の内部応力を調査したところ、従前の超音波励起をしない状態下でイオンプレーティング法により形成したボロン薄膜に比較して、薄膜中の内部応力が相当に緩和され、その結果薄膜の密着性が相当に高まっていることが判った。
【0031】
【実施例4】
実施例1の複合プロセス装置を用い、被処理材Bを炭素系材料及び金属系材料としてこれを超音波励起装置により励起すると共に、プラズマイオン蒸着装置2の作動を止めて中性粒子ビーム照射装置3のみを作動させ、前記励起状態下の被処理材Bへ中性粒子ビームBを一定時間照射し、その後、被処理材Bの外表面の平滑性の変化を調査した。
ところで、イオン流によりスパッタリングされた材料の表面はイオンドーズ量が増すとその平滑性が失なわれる傾向にあるが、逆に、イオン照射によって材料表面に於ける原子の拡散が十分に促進される場合には、その平滑性は改善されることになると想定される。
本実施例に於いては、前記材料外表面の平滑性を調査したところ、被処理材Bをシャーモード超音波によって励起しない場合に比較して、材料外表面の平滑度が相当に改善されることが判明した。
【0032】
【発明の効果】
本願請求項1及び請求項2の発明に於いては、超音波励起装置とプラズマイオン蒸着装置と中性粒子ビーム照射装置の三者を有機的に組み合せ、被処理材Bを超音波励起により能動的制御が可能な状態とすると共に、これに有磁場プラズマプロセスによる成膜を行ないつつ、中性粒子ビームを照射して磁場に影響を与えることなく被処理材外表面の温度制御等を行なう構成としている。
その結果、従前とは全く異なる新規な非平衡状態が被処理材の外表面に現出され、形成された薄膜の固着力、結晶性、不純物密度等が、従前の超音波励起や中性粒子照射を行なわない状態下でフラズマプロセスにより形成した薄膜の場合に比較して相当に改善されることになる。
【0033】
また、プラズマイオン蒸着装置の構成をプラズマスパッタ法により固体原子をプラズマ内へ注入する構成としているため、従前の有毒性ガスを用いる薄膜形成プロセスに比較して安全性が大幅に向上すると共に、環境汚損の発生等も皆無となる。
【0034】
本願請求項3及び請求項4の発明に於いては、シャーモード超音波により励起せしめた状態の被処理材の外表面へ、プラズマイオン蒸着による薄膜の形成若しくは中性粒子ビームの照射を行なう構成としている。
その結果、被処理材の外表面が高度に活性化され、薄膜中の水素不純物の減少、内部応力の減少による薄膜固着力の向上若しくは材料外表面の平滑度の向上等の優れた効用が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置の概要を示す縦断面図である。
【図2】超音波励起装置の概要を示す斜面図である。
【符号の簡単な説明】
A : 複合プロセス装置 8 : シャーモード結合体
B : 被処理材(試料基板) 9 : プラズマイオンスパッタリング
C : イオン流(励起粒子流) 蒸発源
D : 中性粒子ビーム 10: マイクロ波発生部
1 : 超音波励起装置 11: 固体ターゲット
2 : プラズマイオン蒸着装置 12: プラズマ輸送磁場コイル
3 : 中性粒子ビーム照射装置 13: プラズマ輸送系差動排気部
4 : 試料交換ステージ 14: 下部プラズマ輸送磁場コイル
5 : 本体ケース 15: ソースプラズマ生成部
6 : 超音波発振部 16: ビーム引出し電極部
6a: 永久磁石セグメント体 17: 中性化セル部
6b: コイル片 18: ビーム源差動排気部
7 : 超音波受信部
Claims (4)
- 被処理材(B)中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材(B)の表面を超音波励起により活性化する超音波励起装置(1)と,有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により固体ターゲット原子をイオン化し、当該イオンを有磁場プラズマ中で被処理材(B)へ蒸着するプラズマイオン蒸着装置(2)と,ソースプラズマ生成部(15)とビーム引出し電極部(16)と中性化セル部(17)を備え、中性化セル部(17)で形成した中性粒子ビーム(D)を被処理材(B)の表面へ照射する中性粒子ビーム照射装置(3)とから構成したことを特徴とする超音波・プラズマ・粒子ビーム複合プロセス装置。
- 被処理材(B)中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材(B)の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材(B)の表面へ中性粒子ビーム(D)を照射しつつ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを特徴とする薄膜の形成方法。
- 被処理材(B)中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材(B)の表面を超音波励起により活性化すると共に、当該被処理材(B)の表面へ有磁場高密度プラズマ中でスパッタリング方式により形成した固体ターゲット原子のイオンを蒸着させることを特徴とする薄膜の形成方法。
- 被処理材(B)中に周波数0.1GHZ以上のシャーモード超音波を発生させ、被処理材(B)の表面を超音波励起により活性化すると共に、被処理材(B)の表面へ中性粒子ビーム(D)を照射し、被処理材(B)の表面を平滑化することを特徴とする表面の平滑化方法。
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