JP3768859B2 - 高分子複合材料成形体及びその製造方法 - Google Patents

高分子複合材料成形体及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機能性繊維が高分子材料中に配合されて複合化された高分子複合材料成形体及びその製造方法に関するものである。より具体的には、機能性合成樹脂繊維としてのポリアリーレンサルファイド繊維が、高分子材料中で一定方向に配向された高分子複合材料成形体及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、マトリックスとしての高分子材料に、ガラス繊維や炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維等の機能性繊維が配合されて複合化された高分子複合材料成形体が知られている。このような高分子複合材料成形体としては、例えば、弾性率や強度等の機能性を向上させた繊維強化樹脂や繊維強化ゴムなどが広く知られ、宇宙、航空機、自動車、電気製品やスポーツ、レジャー用品などの部品として幅広く実用化されている。この種の高分子複合材料成形体は、一般に、マトリックスとしての高分子材料に機能性繊維を配合して得られる高分子組成物を、硬化又は固化させて所定の形状に成形することにより製造されている。
【0003】
また、耐熱性、耐薬品性などに優れた機能を有する機能性合成樹脂繊維として、ポリアリーレンサルファイド繊維が知られている。そして、このポリアリーレンサルファイド繊維を用いた高分子複合材料成形体としては、高分子材料中でポリアリーレンサルファイド繊維がランダムに分散配合されて複合化されたものが実現されている。
【0004】
一方、最近の複雑な機構部品などにおいては、弾性率や強度などの機械的性質、熱膨張係数や熱伝導率などの熱的性質、光学的性質、電気的性質などにおいて、異方性機能を有する新しい高分子複合材料成形体が切望されている。
【0005】
従来、このような異方性機能を有する高分子複合材料成形体として、高分子材料中の機能性繊維、例えば、炭素繊維、黒鉛化炭素繊維、ガラス繊維或いはアラミド繊維などを、一定方向に配向させたものが知られている。そして、このように高分子材料中の機能性繊維を一定方向に配向させる方法としては、高分子複合材料成形体の成形加工時に、高分子材料の流動場やせん断場を利用して、高分子組成物中の機能性繊維を一定方向に配向させる方法が実用化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中に分散配合して複合化した高分子複合材料成形体は、ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子組成物中で一定方向に配向されずにランダムに分散配合されていたため、機能性が等方的に発現され、異方性機能を有する高分子複合材料成形体ではなかった。すなわち、ポリアリーレンサルファイド繊維を機能性合成樹脂繊維として用いた高分子複合材料成形体において、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体は未だ実現されていなかった。
【0007】
そのため、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を任意の一定方向に配向させることにより、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体が実現されることが期待されている。
【0008】
ところが、上記従来の高分子材料の流動場やせん断場を利用して高分子組成物中の機能性繊維を一定方向に配向させる方法は、その成形加工条件や設備上の制約が多く、設計上の自由度が狭いものであった。また、流動する高分子組成物が衝突するウェルド部分などにおいて、複合化される繊維が必ずしも一定方向に配向されないため、得られる高分子複合材料成形体において異方性機能を十分に発現させることが困難であるという問題があった。そのため、上記従来の高分子材料の流動場やせん断場を利用する方法は、簡便なものではなく、また、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体の製造方法として実用的な製造方法でなかった。
【0009】
従って、ポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中で任意の一定方向に配向させることにより、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体が実現されることが期待されていたが、そのような高性能な高分子複合材料成形体及びその実用的な製造方法は、未だ実現されていなかった。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、高分子材料中に配合され複合化されるポリアリーレンサルファイド繊維を任意の一定方向に配向させることにより、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体及びその実用的な製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者らは、ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中で任意の一定方向に配向された高分子複合材料成形体が、機械的性質、熱的性質、光学的性質、電気的性質などにおいて異方性機能を発揮すること、及びその異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体の実用的な製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維が、一定方向に磁場配向されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、ポリアリーレンサルファイド繊維が一定方向に磁場配向された領域を、複数含むことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の高分子複合材料成形体において、ポリアリーレンサルファイド繊維が、ポリフェニレンサルファイド繊維であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体において、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体において、高分子材料が、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂及び架橋ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明は、ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体の製造方法であって、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合した高分子組成物に磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の高分子複合材料成形体の製造方法において、ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χaが、1×10-9以上であることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の高分子複合材料成形体の製造方法において、ポリアリーレンサルファイド繊維が、ポリフェニレンサルファイド繊維であることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体の製造方法において、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の高分子複合材料成形体において、ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χ a が、1×10 -9 以上であることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の高分子複合材料成形体及びその製造方法を具体化した実施の形態を説明する。この高分子複合材料成形体は、機能性合成樹脂繊維としてのポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維が、一定方向に配向されていることを特徴とする。
【0022】
<ポリアリーレンサルファイド繊維>
まず、機能性合成樹脂繊維として用いられるポリアリーレンサルファイド繊維について説明する。ここで用いるポリアリーレンサルファイド繊維は、特に限定されるものではなく、公知のポリアリーレンサルファイドから得られる繊維を好適に用いることができる。このポリアリーレンサルファイドは、以下の一般式(1)で表される繰り返し構成単位を、主構成単位とするものである。
【0023】
【化1】
Figure 0003768859
(但し、式中のArは、アリーレン基を示す。)。
【0024】
このアリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基(但し、置換基はアルキル基、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、又はフェニル基)、p,p’−ジフェニレンスルホン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが使用できる。この場合、上記のアリーレン基から構成されるアリーレンサルファイドは、同一の繰り返し構成単位からなるホモポリマーを用いることができ、また、繊維に加工する際の加工性を考慮して、異種の繰り返し構成単位を含むコポリマーを用いることもできる。
【0025】
ホモポリマーとしては、前記のアリーレン基としてp−フェニレン基を用いたp−フェニレンサルファイドを主構成単位とするポリ(p−フェニレンサルファイド)が、特に好ましく用いられる。また、コポリマーは、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイドのなかで、相異なる2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、p−フェニレンサルファイドを主構成単位とし、m−フェニレンサルファイドを含む組み合わせが特に好ましく用いられる。なお、前記のポリマーのほかに、モノマーの一部分として3個以上の官能基を有するモノマーを混合使用して重合した分岐又は架橋ポリアリーレンサルファイドや、この架橋ポリアリーレンサルファイドを前記の線状ポリマーにブレンドしたものも用いることができる。
【0026】
ポリアリーレンサルファイド繊維は、上述したポリアリーレンサルファイドを溶融紡糸法などの公知の方法によって製糸することにより得ることができる。また、このようなポリアリーレンサルファイド繊維は市場において容易に入手することができ、例えば、上記p−フェニレンサルファイドを主構成単位とする東洋紡績株式会社製のプロコン(商品名)が市販されている。そして、このポリアリーレンサルファイド繊維は、上記の耐熱性や耐薬品性の他に、耐酸化性、非吸水性、耐燃性などについても優れていることから、これらの性質を生かして種々の機能性を有する高性能な高分子複合材料成形体を製造することができる。
【0027】
このポリアリーレンサルファイド繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、ウィスカー状、パルプ状などの断面形状であっても構わない。また、このポリアリーレンサルファイド繊維は、他の公知の繊維と複合化された形態、例えば、芯鞘複合繊維、海島型複合繊維、バイメタル複合繊維、多層複合繊維などの形態であっても適用可能である。
【0028】
ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維径は、特に限定されるものではないが、繊維の生産性や取り扱い、高分子材料への配合及びその充填性などを考慮すると、実用的に好ましい範囲は0.1〜30μmである。
【0029】
ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長は、特に限定されるものではないが、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。得られる高分子複合材料成形体の異方性機能性を向上させるためには、一般的には繊維のアスペクト比(繊維の繊維長:繊維径)が大きい方が好ましいが、繊維の繊維長が10mmよりも長いと、高分子材料中に均一に分散しにくくなり、また、粘度が上昇して成形加工性が悪化するので好ましくない。さらに、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が長いほど繊維同士が絡み合い、繊維を高分子材料中で一定方向に配向させにくくなる。一方、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長の下限は、特に限定されるものではなく、その繊維径などにより異なるが、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上である。ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が10μm未満であると、繊維径が0.1μmの場合であってもアスペクト比が100未満となり、得られる高分子複合材料成形体の異方性機能が発現されにくくなるため好ましくない。
【0030】
ポリアリーレンサルファイド繊維は、その異方性反磁性磁化率χaが1×10-9以上であることが好ましい(CGS単位系)。この異方性反磁性磁化率χaの絶対値が大きいほど、ポリアリーレンサルファイド繊維を高度に磁場配向させることができる。一方、この異方性反磁性磁化率χaが1×10-9よりも小さいと、ポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中で一定方向に磁場配向させることが困難となる。より好ましい異方性反磁性磁化率χaは、5×10-9以上、さらに好ましくは1×10-8以上である。なお、ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χaは、10-6程度が上限であると推定される。
【0031】
ここで、異方性反磁性磁化率χaとは、繊維の反磁性磁化率の異方性を示す物性値(CGS単位系)である。すなわち、この異方性反磁性磁化率χaは、外部より磁場を印加することにより生じる、繊維の繊維軸方向の磁化率χ//から、繊維軸に対して垂直方向の磁化率χを差し引いた値である。異方性反磁性磁化率χaが正の値を示す繊維、例えば本発明で用いるポリアリーレンサルファイド繊維は、磁場雰囲気下で繊維軸が磁力線に沿って平行に配向されるため、高分子材料中で任意の方向に磁場配向させることができる。一方、異方性反磁性磁化率χaが負の値を示す繊維、例えば超高分子量ポリエチレン繊維は、磁場雰囲気下で繊維が磁力線に対して垂直方向、すなわち磁力線に対する垂直面の不定方向へ配向されてしまうため、高分子材料中で任意の一定方向に磁場配向させることができない。なお、この異方性反磁性磁化率χaは、磁気異方性トルク計、振動式磁力計、SQUID(超伝導量子干渉素子)、サスペンジョン法などの公知の方法で測定することができる。
【0032】
<高分子材料>
次にマトリックスとして用いる高分子材料について説明する。
ここで用いる高分子材料は、特に限定されるものではなく、目的とする高分子複合材料成形体に要求される機械的性質、熱的性質、光学的性質、電気的性質、耐久性或いは信頼性などの要求性能に応じて、公知の高分子材料、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、各種硬化性樹脂、架橋ゴム及びその類似物などから適宜選択して用いればよい。
【0033】
具体的な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのエチレン−α−オレフィン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル及び変性PPE樹脂、脂肪族及び芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸及びそのメチルエステルなどのポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリアリーレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、シリコーン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。
【0034】
具体的な熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン又はスチレン−イソプレンブロック共重合体とその水添ポリマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0035】
具体的な硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂、熱硬化型ポリフェニレンエーテル及び変性PPE樹脂等が挙げられる。
【0036】
具体的な架橋ゴム及びその類似物としては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、液状ゴム等が挙げられる。
【0037】
これらの高分子材料のなかでも、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂及び液状ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料を用いることが、耐熱性などの温度特性や電気的信頼性の観点から好ましい。加えて、これらの高分子材料は、低粘度の液体であるか或いは加熱溶融時に低粘度化することができるため、高分子材料中でのポリアリーレンサルファイド繊維の配向制御が容易となる。従って、液状のエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、液状ゴムなどの高分子前駆体や溶融状態において低粘度の高分子材料を用いることが好ましい。
【0038】
なお、上述した各種高分子材料は、一種を単独で用いても、二種以上を適宜組み合わせて用いても構わない。また、これらの高分子材料から選択される複数の高分子材料からなるポリマーアロイを使用しても差し支えない。さらに、上記硬化性樹脂又は架橋ゴムの硬化・架橋方法については、特に限定されず、熱硬化法、光硬化法、湿気硬化法、放射線又は電子線照射法などの公知の方法を採用することができる。
【0039】
<製造方法>
この高分子複合材料成形体は、上述した高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合して得られる高分子組成物に、外部から磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を磁化させて一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させて所定の形状に成形することにより製造することができる。
【0040】
(高分子組成物の調製)
高分子組成物は、上述したポリアリーレンサルファイド繊維を、例えば、ブレンダー、ミキサー、ロール、押出機などの公知の混合装置又は混練装置を用いて高分子材料中に配合することにより得ることができる。なお、ポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中に混合分散する際には、必要に応じて攪拌、脱泡、混練等の操作を施すことが好ましい。特に、ポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中に混合分散する際には、減圧或いは加圧処理を施して、混合分散の際に混入した気泡を除去する工程を加えることが好ましい。
【0041】
高分子材料中に配合するポリアリーレンサルファイド繊維の配合量は、特に限定されるものではなく、目的とする最終製品の要求性能などに応じて適宜決定されるが、高分子材料100重量部に対して0.01〜50重量部であることが好ましい。ポリアリーレンサルファイド繊維の配合量が多いほど、得られる高分子複合材料成形体の異方性機能の向上が達成されるが、ポリアリーレンサルファイド繊維の配合量が50重量部を超えると、高分子組成物の粘度が増大して流動性が損なわれ、高分子材料中での繊維の配向制御が困難となるため好ましくない。一方、ポリアリーレンサルファイド繊維の配合量が0.01重量部よりも少ないと、得られる高分子複合材料成形体の機能性の向上効果が乏しくなるため好ましくない。より好ましいポリアリーレンサルファイド繊維の配合量は、高分子材料100重量部に対して0.02〜30重量部であり、さらに好ましくは0.05〜20重量部である。
【0042】
この高分子組成物は、上記ポリアリーレンサルファイド繊維以外の他の繊維として、アラミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリイミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、フェノール繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維などの有機繊維、天然繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維や、これらの繊維を複合した複合繊維、ニッケルなどの金属を表面に被覆した金属被覆繊維、或いはこれら繊維からなる織布或いは不織布などを併用したものであっても構わない。これらの繊維、織布或いは不織布などを併用することにより、得られる高分子複合材料成形体の種々の機能性を向上させることができる。また、必要に応じて他の充填剤や可塑剤、架橋剤、着色剤、安定剤、溶剤などの少量の添加剤を併用しても構わない。
【0043】
なお、高分子材料との濡れ性や接着性を向上させるために、高分子材料中に配合するポリアリーレンサルファイド繊維の表面を、予め脱脂や洗浄処理したり、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理或いはイオン注入などの活性化処理を施すことが好ましい。また、これらの表面処理に加えて、シラン系やチタン系、アルミニウム系などの通常のカップリング剤やレゾルシンホルマリンラテックスなどでポリアリーレンサルファイド繊維の表面を処理することが好ましい。その結果、さらに多量のポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中に分散混合させることができるようになる。
【0044】
さらに、高分子材料中に揮発性の有機溶剤や低粘度の軟化剤、反応性可塑剤等を添加するなどして高分子組成物を低粘度化させることも有効である。この場合、ポリアリーレンサルファイド繊維の配合量を増大させることができるほか、ポリアリーレンサルファイド繊維と高分子材料との比重差を小さくして高分子組成物中でのポリアリーレンサルファイド繊維の沈降を抑制することができるため、高分子材料中でのポリアリーレンサルファイド繊維の配向を促進させることができる。
【0045】
(高分子複合材料成形体の成形)
高分子複合材料成形体は、上述した高分子組成物に外部から磁場を印加し、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を磁化させて一定方向に配向させた後、この配向状態で、各種硬化反応や冷却処理などの公知の方法を利用して硬化又は固化させて所定の形状に成形することにより得られる。
【0046】
ここで上述したように、高分子組成物中のポリアリーレンサルファイド繊維は、外部より磁場を印加することにより磁化され、磁力線に対してその繊維軸が平行となるように配向される。従って、外部より印加する磁場の磁力線の方向を制御することにより、高分子組成物中のポリアリーレンサルファイド繊維を任意の方向に配向させることができる。これにより、機械的性質、熱的性質、光学的性質、電気的性質などにおいて異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を簡易に製造することができる。
【0047】
具体的には、例えば、板状の高分子複合材料成形体を成形する際に、板状体の厚み方向にポリアリーレンサルファイド繊維を配向させる場合には、その厚み方向に永久磁石や電磁石などのN極とS極を対向するように設置して、磁力線の向きがその厚み方向に向くように磁場を印加する。これにより、ポリアリーレンサルファイド繊維が厚み方向に配向される。そして、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることにより、厚み方向にポリアリーレンサルファイド繊維が配向された板状の高分子複合材料成形体を得ることができる。なお、磁石のN極とN極、又はS極とS極を面内方向に対向させても、ポリアリーレンサルファイド繊維を厚み方向に配向させることができる。
【0048】
一方、例えば、板状の高分子複合材料成形体を成形する際に、板状体の面内の一定方向にポリアリーレンサルファイド繊維を配向させる場合には、その厚み方向に対して垂直の方向、すなわち面内の一定方向に永久磁石や電磁石などのN極とS極を対向するように設置して、磁力線の向きが面内の一定方向に向くように磁場を印加する。これにより、ポリアリーレンサルファイド繊維が面内の一定方向に配向される。そして、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることにより、面内の一定方向にポリアリーレンサルファイド繊維が配向された板状の高分子複合材料成形体を得ることができる。なお、磁石のN極とN極、又はS極とS極を厚み方向に対向させてもポリアリーレンサルファイド繊維を面内の一定方向に配向させることができる。
【0049】
ここで、前述した超高分子量ポリエチレン繊維とは異なり、ポリアリーレンサルファイド繊維が磁力線に対してその繊維軸が平行となるように配向するのは、(a)超高分子量ポリエチレン繊維は異方性反磁性磁化率χaが負の値を示すため、磁力線に対して繊維軸が垂直となるように磁場が作用されるが、ポリアリーレンサルファイド繊維は異方性反磁性磁化率χaが正の値を示すため、磁力線に対して繊維軸が平行となるように磁場が作用されること、(b)芳香環が磁力線に対して垂直に配置されると渦電流が生じるため、芳香環が磁力線に対して平行になるように、すなわち、主鎖に芳香環を含む高分子化合物を延伸して得られるポリアリーレンサルファイド繊維などの場合には磁力線に対して繊維軸が平行となるように、磁場が作用されること、(c)芳香環の異方性磁化率を考慮すると、配向されるポリアリーレンサルファイド繊維中のできるだけ多くの芳香環が磁力線に対して平行となる配向方向がエネルギー的に最も安定であること、等の理由によるものと推定される。
【0050】
従って、ポリアリーレンサルファイド繊維として実質的に直鎖状ポリマーであるポリフェニレンサルファイド繊維を用いると、上記の芳香環に対する磁場作用により、磁力線に対して繊維軸が平行となるように高度に配向させることができ、より一層高性能な高分子複合材料成形体を実現することができる。
【0051】
上述した磁場発生手段は、特に限定されるものではなく、例えば、永久磁石、電磁石、コイルなどが好適に用いられる。また、その磁場の強さを表す磁束密度は、特に限定されるものではないが、0.1〜30テスラであれば、実用的で効果的なポリアリーレンサルファイド繊維の配向を達成することができる。なお、本発明では、ポリアリーレンサルファイド繊維の微弱な異方性反磁性磁化率χaを利用して繊維を一定方向に配向させるため、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に高配向させるためには、印加する磁場の磁束密度が強いことが好ましい。そのため、印加する磁場の磁束密度は、0.5テスラ以上であることがより好ましく、2テスラ以上であることが特に好ましい。
【0052】
また、磁場発生手段により形成される磁力線は必ずしも直線状でなくてもよく、曲線状や矩形であっても、或いは2方向以上であっても構わない。また、磁石については必ずしも両側に対向させる必要はなく、片側のみに配置した磁石によっても高分子組成物中のポリアリーレンサルファイド繊維を任意の一定方向に配向させることが可能である。さらに、高分子組成物に振動を加えたり、磁力線の方向を反転させたりすることにより、高分子組成物中のポリアリーレンサルファイド繊維の配向を促進させることもできる。加えて、高分子組成物の一部のみが磁場雰囲気下に配置されるような構成とすることも可能である。
【0053】
高分子複合材料成形体の成形方法については、特に限定されるものではなく、例えば、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、真空成形法、回転成形法などの各種公知の成形方法が適用可能である。そして、このようにして成形される高分子複合材料成形体の形状は、特に限定されるものではなく、任意の形状を採用することができ、例えば、立方体状、球状、円柱状、板状、フィルム状、棒状、チューブ状などの形状とすることができる。
【0054】
(応用例)
図1(a)〜(d)及び図2(a)〜(d)に、この高分子複合材料成形体及びその製造方法の例を示す。ここでは、金型11の成形凹部11a内に高分子組成物13aを充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を磁力線に沿って平行に配向させた後、この配向状態で高分子組成物13aを硬化又は固化させて所定の形状に成形し、高分子複合材料成形体13を製造する。これにより、磁力線に対してその繊維軸が平行となるようにポリアリーレンサルファイド繊維が配向された高分子複合材料成形体13が容易に得られる。なお、図1(a)〜(d)は、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維14を面内の一定方向に配向した例を、図2(a)〜(d)は、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維14を厚み方向の一定方向に配向した例を示すものである。
【0055】
また、図3に、この高分子複合材料成形体13の他の例を示す。この高分子複合材料成形体13は、ポリアリーレンサルファイド繊維14が一定方向に配向された領域を、複数含むものである。より具体的には、この高分子複合材料成形体13は、ポリアリーレンサルファイド繊維14が面内の一定方向に配向された領域Aと、ポリアリーレンサルファイド繊維14が厚み方向の一定方向に配向された領域Bとを含む。このような高分子複合材料成形体13は、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維14を配合した高分子組成物13aに磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維14を磁場配向させ、ポリアリーレンサルファイド繊維14が一定方向に配向された領域A,Bを形成した後、この配向状態で高分子組成物13aを硬化又は固化させることにより得られる。
【0056】
<高分子複合材料成形体>
上記のようにして得られる高分子複合材料成形体は、機能性合成樹脂繊維としてのポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中で一定方向に配向されたものである。このように高分子材料中でポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させることにより、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維軸方向の弾性率や強度などの様々な高機能性が発揮され、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を実現することができる。
【0057】
具体的には、例えば、ポリアリーレンサルファイド繊維の高い引張破断強度を活かして高分子複合材料成形体の強度を向上させたり、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維軸方向の高い弾性率を活かして高分子複合材料成形体の特定方向の弾性率を向上させたり、ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維軸方向の低熱膨張性を活かして高分子複合材料成形体の特定方向の熱膨張係数や寸法変化などを抑制したりすることなどができる。
【0058】
従って、この高分子複合材料成形体は、弾性率や強度などの機械的性質、熱膨張係数や熱伝導率などの熱的性質、電気的性質、光学的性質などの異方性機能が要求されるあらゆる用途の成形体に応用することができる。例えば、機械部品、機構部品、自動車部品、電気製品等の構成部材として用いたり、電気製品や自動車製品のハウジング、基板、伝導ベルトなどの部品或いは異型成形体などとして用いることができる。
【0059】
以上の実施形態により発揮される効果を以下にまとめて記載する。
・ ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合されて複合化された高分子複合材料成形体において、高分子材料中でポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させた。
【0060】
このように構成すると、弾性率、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性、低比重などにおいて優れた機能を有するポリアリーレンサルファイド繊維の特性を生かした、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を実現することができる。
【0061】
・ 高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維が配合された高分子組成物に、磁場を印加してポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させて所定の形状に成形することにより高分子複合材料成形体を製造した。
【0062】
このように構成すると、弾性率、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性、低比重などにおいて優れた機能を有するポリアリーレンサルファイド繊維の特性を生かした、異方性機能に優れる高性能な高分子複合材料成形体を簡易に製造することができる。
【0063】
また、この製造方法によれば、機械的にポリアリーレンサルファイド繊維を配向させる上記従来の製法と比較して、ポリアリーレンサルファイド繊維を高分子材料中で任意の方向に高度に配向させることができる。従って、より一層優れた異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を簡易に製造することができる。
【0064】
しかも、この製造方法によれば、外部から印加する磁場の磁力線の向きを制御することにより、ポリアリーレンサルファイド繊維の配向方向を任意に設定できるため、多様な異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を簡易に製造することができる。
【0065】
・ ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体において、ポリアリーレンサルファイド繊維が一定方向に配向された領域を、複数含むように構成した。このように構成すると、さらに多様な異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を実現することができる。
【0066】
・ ポリアリーレンサルファイド繊維として、ポリフェニレンサルファイド繊維を用いると、上述した芳香環に対する磁場作用を利用して、高分子材料中でより一層、高度に磁場配向させることができる。従って、弾性率、強度、耐熱性、耐候性、耐薬品性、低比重などにおいて優れた機能を有するポリフェニレンサルファイド繊維の特性を生かした、より一層高性能な高分子複合材料成形体を実現することができる。
【0067】
・ ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長を10mm以下とすると、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を均一に分散させることができるとともに、成形加工性を良好にすることができる。また、高分子組成物中におけるポリアリーレンサルファイド繊維の磁場配向制御が容易となる。
【0068】
・ ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χaを1×10-9以上とすると、ポリアリーレンサルファイド繊維を高度に磁場配向させることができ、より一層異方性機能に優れる高分子複合材料成形体を実現することができる。そして、高分子組成物中におけるポリアリーレンサルファイド繊維の磁場配向制御が容易となるため、異方性反磁性磁化率χaが1×10-9未満のポリアリーレンサルファイド繊維を用いた場合と比較して、低磁場でも同程度の配向度を維持することができ、製造が容易となる。
【0069】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら制限するものではない。
【0070】
(異方性反磁性磁化率χaの測定)
まず、以下の各実施例及び比較例でポリアリーレンサルファイド繊維として用いるポリフェニレンサルファイド繊維(東洋紡績株式会社製 商品名:プロコン繊維径10μm)の異方性反磁性磁化率χa(CGS単位系)を磁気異方性トルク計で測定した。このポリフェニレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χaは、7.5×10-8であった。なお、以下の各実施例及び比較例で用いるポリアリーレンサルファイド繊維は、このポリフェニレンサルファイド繊維をそれぞれ所定の繊維長に切断又は粉砕したものである。
【0071】
(実施例1)
高分子材料として不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 エポラックG157)100重量部に、表面をエタノールで脱脂したポリアリーレンサルファイド繊維(東洋紡績株式会社製 ポリフェニレンサルファイド繊維 商品名:プロコン 繊維径10μm 繊維長1mm)0.05重量部を混合し、真空脱泡して高分子組成物13aを調製した。
【0072】
得られた高分子組成物13aを、図1(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの面内の横方向に十分に配向させた後、この配向状態で加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように、面内の一方向に配向していた。
【0073】
これとは別に、上記高分子組成物13aを、図2(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの厚み方向に十分に配向させた後、この配向状態で加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。
【0074】
上記のようにして得られた各々の高分子複合材料成形体13の曲げ弾性率(JIS K7055)を測定した結果を表1に示す。なお、この曲げ弾性率の測定は、得られた高分子複合材料成形体13を切削加工して作製した評価用試験片(厚み2mm、縦15mm、横52mm)を用いて測定したものであり、各々の母材である高分子複合材料成形体13の厚み方向に相当する方向の曲げ弾性率を測定したものである。従って、図1(d)に示す高分子複合材料成形体13の評価用試験片では、面内方向に配向されたポリアリーレンサルファイド繊維14を折り曲げる方向となる繊維軸に垂直な方向(以下、「軸垂直方向」という)の曲げ弾性率が、図2(d)に示す高分子複合材料成形体13の評価用試験片では、ポリアリーレンサルファイド繊維14の繊維軸に平行な方向(以下、「軸平行方向」という)の曲げ弾性率が得られることとなる。
【0075】
(実施例2、実施例3)
ポリアリーレンサルファイド繊維14の配合量をそれぞれ表1に示す配合量とした以外は、実施例1と同様の方法により、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、実施例1と同様に、一方の高分子複合材料成形体13のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように面内の一方向に配向し、他方の高分子複合材料成形体13のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。実施例1と同様に測定した曲げ弾性率の測定結果を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
比較用として、高分子材料としての不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 エポラックG157)のみを、図1(a)〜(b)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、硬化させて固化させ、板状の高分子成形体を作製した。実施例1と同様に測定した曲げ弾性率の測定結果を表1に示す。
【0077】
(比較例2)
比較用として、実施例2の高分子組成物13aを、図1(a)〜(b)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場を印加せずに、硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図4に示すようにランダムに分散し、ポリアリーレンサルファイド繊維14の配向性は認められなかった。実施例1と同様に測定した曲げ弾性率の測定結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0003768859
(実施例4)
高分子材料として不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 エポラックG157)100重量部に、表面をエタノールで脱脂したポリアリーレンサルファイド繊維(東洋紡績株式会社製 ポリフェニレンサルファイド繊維 商品名:プロコン 繊維径10μm 繊維長0.5mm)1重量部を混合し、真空脱泡して高分子組成物13aを調製した。
【0079】
得られた高分子組成物13aを、図1(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの面内の横方向に十分に配向させた後、この配向状態で加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように、面内の一方向に配向していた。
【0080】
これとは別に、上記高分子組成物13aを、図2(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの厚み方向に十分に配向させた後、この配向状態で加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。
【0081】
上記のようにして得られた各々の高分子複合材料成形体13の線膨張係数(JIS K7197)を測定した結果を表2に示す。なお、この線膨張係数の測定は、得られた高分子複合材料成形体13を切削加工して作製した評価用試験片(厚み3mm、縦3mm、横3mm)を用いて測定したものであり、各々の母材である高分子複合材料成形体13の厚み方向に相当する方向の線膨張係数を測定したものである。従って、図1(d)に示す高分子複合材料成形体13の評価用試験片では、面内方向に配向されたポリアリーレンサルファイド繊維14の折り曲げる方向となる繊維軸に垂直な方向(以下、「軸垂直方向」という)の線膨張係数が、図2(d)に示す配向方向の評価用試験片では、ポリアリーレンサルファイド繊維14の繊維軸に平行方向(以下、「軸平行方向」という)の高分子複合材料成形体13の線膨張係数が得られることとなる。
【0082】
(実施例5、実施例6)
ポリアリーレンサルファイド繊維14の配合量をそれぞれ表2に示す配合量とした以外は、実施例4と同様の方法により、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、実施例4と同様に、一方の高分子複合材料成形体13のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように面内の一方向に配向し、他方の高分子複合材料成形体13のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。実施例4と同様に測定した線膨張係数の測定結果を表2に示す。
【0083】
(比較例3)
比較用として、高分子材料としての不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 エポラックG157)のみを、図1(a)〜(b)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、硬化させて固化させ、板状の高分子成形体を作製した。実施例4と同様に測定した線膨張係数の測定結果を表2に示す。
【0084】
(比較例4)
比較用として、実施例5の高分子組成物13aを、図1(a)〜(b)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a内に充填し、磁場を印加せずに、硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図4に示すようにランダムに分散し、ポリアリーレンサルファイド繊維14の配向性は認められなかった。実施例4と同様に測定した線膨張係数の測定結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
Figure 0003768859
(実施例7)
高分子材料としての液状シリコーンゴム(GEシリコーン株式会社製 TSE3070)100重量部に溶剤としてヘキサン50重量部を加えて低粘度化した後、表面をエタノールで脱脂したポリアリーレンサルファイド繊維(東洋紡績株式会社製 ポリフェニレンサルファイド繊維 商品名:プロコン 繊維径10μm、繊維長1mm)3重量部を混合して、高分子組成物13aを調製した。
【0086】
得られた高分子組成物13aを、図1(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横120mm)内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの面内の横方向に十分に配向させ、溶剤のヘキサンを揮発させた後、加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように、面内の一方向に配向していた。
【0087】
これとは別に、上記高分子組成物13aを、図2(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横120mm)内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの厚み方向に十分に配向させ、溶剤のヘキサンを揮発させた後、加熱硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。
【0088】
上記のようにして得られた各々の高分子複合材料成形体13の面方向の引張強度(JIS K6251)を測定したところ、一方の高分子複合材料成形体13の引張強度(ポリアリーレンサルファイド繊維14の軸平行方向の引張強度)は25kPa、他方の高分子複合材料成形体13の引張強度(ポリアリーレンサルファイド繊維14の軸垂直方向の引張強度)は19kPaであった。
【0089】
(比較例5)
比較用として、実施例7の高分子組成物13aを、図1(a)〜(b)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横120mm)内に充填し、磁場を印加せずに、溶剤のヘキサンを揮発させた後、硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図4に示すようにランダムに分散し、その配向性は認められなかった。実施例7と同様に、得られた高分子複合材料成形体13の面方向の引張強度(JIS K6251)を測定したところ、引張強度に異方性はなく、23kPaであった。
【0090】
(実施例8)
高分子材料として不飽和ポリエステル樹脂(株式会社日本触媒製 エポラックG157)100重量部に、表面をエタノールで脱脂したポリアリーレンサルファイド繊維(東洋紡績株式会社製 ポリフェニレンサルファイド繊維 商品名:プロコン 繊維径10μm 繊維長0.5mm)1重量部を混合して、高分子組成物13aを調製した。
【0091】
得られた高分子組成物13aを、図1(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横40mm)内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの面内の横方向に十分に配向させた後、この配向状態で常温硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図1(d)に示すように、面内の一方向に配向していた。
【0092】
これとは別に、上記高分子組成物13aを、図2(a)〜(c)に示すように、表面がフッ素樹脂コーティングされたアルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横40mm)内に充填し、磁場発生手段としての磁石12のN極とS極が対向する磁束密度10テスラの磁場雰囲気下で、ポリアリーレンサルファイド繊維14を成形凹部11aの厚み方向に十分に配向させた後、この配向状態で常温硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図2(d)に示すように、厚み方向に配向していた。
【0093】
上記のようにして得られた各々の高分子複合材料成形体13の厚み方向の透過率スペクトルを測定した結果を図5に示す。なお、この透過率スペクトルは、高分子複合材料成形体13の厚み方向の透過率スペクトルを紫外可視分光光度計で測定したものである。従って、一方の高分子複合材料成形体13においては、ポリアリーレンサルファイド繊維14の軸平行方向の透過率スペクトルが、他方の高分子複合材料成形体13においては、ポリアリーレンサルファイド繊維14の軸垂直方向の透過率スペクトルが得られることとなる。
【0094】
(比較例6)
比較用として、実施例8の高分子組成物13aを、アルミニウム製の金型11の板状の成形凹部11a(厚み2mm、縦40mm、横40mm)内に充填し、磁場を印加せずに、常温硬化させて固化させ、板状の高分子複合材料成形体13を作製した。得られた高分子複合材料成形体13中のポリアリーレンサルファイド繊維14は、図4に示すようにランダムに分散し、配向性は認められなかった。実施例8と同様に、得られた高分子複合材料成形体13の厚み方向の透過率スペクトルを測定した結果を図5に示す。
【0095】
(考察)
比較例1及び比較例3は不飽和ポリエステル樹脂のみからなる高分子成形体、比較例2、比較例4及び比較例6はポリアリーレンサルファイド繊維が不飽和ポリエステル樹脂にランダムに分散配合された従来の高分子複合材料成形体、比較例5はポリアリーレンサルファイド繊維が液状シリコーンゴムにランダムに分散配合された従来の高分子複合材料成形体であり、いずれも、線膨張係数、曲げ弾性率、引張強さ、透過率において異方性は認められない。
【0096】
一方、実施例1〜実施例8の高分子複合材料成形体は、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合した高分子組成物に磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を磁化させて一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させた高分子複合材料成形体であり、ポリアリーレンサルファイド繊維の軸平行方向と軸垂直方向の曲げ弾性率や引張強度で示される機械的性質、線膨張係数で示される熱的性質、透過率で示される光学的性質において、異方性が発現されたことが認められた。
【0097】
(変更例)
なお、前記実施形態を以下のように変更して実施することもできる。
・ 機能性合成樹脂繊維として、他の合成樹脂繊維、例えは、ポリアミド繊維やポリイミド繊維、ポリフェニレンベンゾイミダゾール繊維、ポリパラフェニレン繊維、ポリパラフェニレンビニレン繊維、フェノール繊維などを用いること。これにより、これら各種の合成樹脂繊維の高機能性を反映させた、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を得ることができる。
【0098】
(付記)
以下、前記実施形態、実施例及び変更例より把握される技術的思想について記載する。
【0099】
(1) 異方性反磁性磁化率χaが正の値を示す合成樹脂繊維が、高分子材料中に配合された高分子組成物に、磁場を印加することにより、合成樹脂繊維を磁化させて一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させて所定の形状に成形することを特徴とする高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、磁場を印加することにより合成樹脂繊維を磁力線に沿って平行に配向させることができるようになり、機械的に繊維を配向させる従来の製法と比較して、合成樹脂繊維を任意の方向に高度に配向させることができる。従って、高分子材料中の合成樹脂繊維を任意の方向に配向させた異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を簡易に得ることができる。
【0100】
(2) 合成樹脂繊維の異方性反磁性磁化率χaが、1×10-9以上であることを特徴とする上記(1)に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、合成樹脂繊維を高度に配向させることができるとともに、繊維の磁場配向制御が容易となる。
【0101】
(3) 合成樹脂繊維が、芳香環を有する合成樹脂繊維であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、上述した芳香環に対する磁場作用を利用して、合成樹脂繊維をより一層高度に配向させることができる。
【0102】
(4) 合成樹脂繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれか1に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、高分子材料中に合成樹脂繊維を均一に分散させることができるとともに、成形加工性を良好にすることができ、また、高分子組成物中における合成樹脂繊維の配向制御が容易となる。
【0103】
(5) 合成樹脂繊維の配合量が、高分子材料100重量部に対し、0.01〜50重量部であることを特徴とする請求項6から請求項9、又は、上記(1)から(4)のいずれかに1に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、合成樹脂繊維の配向制御が容易となるとともに、得られる高分子複合材料成形体の実用的な機能性の向上を図ることができる。
【0104】
(6) 高分子材料が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂及び液状ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料であることを特徴とする請求項6から請求項9、又は、上記(1)から(5)のいずれか1に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、合成樹脂繊維を混合する際に低粘度の液体であるか、或いは加熱溶融時に低粘度化することができるため、高分子材料中の合成樹脂繊維の配向制御が容易となるとともに、耐熱性などの温度特性や電気的信頼性を向上させることができる。
【0105】
(7) 異方性反磁性磁化率χaが正の値を示す合成樹脂繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、高分子材料中の合成樹脂繊維が一定方向に配向されていることを特徴とする高分子複合材料成形体。
【0106】
(8) 合成樹脂繊維の異方性反磁性磁化率χaが、1×10-9以上であることを特徴とする上記(7)に記載の高分子複合材料成形体。
(9) 合成樹脂繊維が、芳香環を有する合成樹脂繊維であることを特徴とする上記(7)又は(8)に記載の高分子複合材料成形体。
【0107】
(10) 合成樹脂繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする上記(7)から(9)のいずれか1に記載の高分子複合材料成形体。
(11) 合成樹脂繊維の配合量が、高分子材料100重量部に対し、0.01〜50重量部であることを特徴とする請求項1から請求項5、又は、上記(7)から(10)のいずれか1に記載の高分子複合材料成形体。
【0108】
(12) 高分子材料が、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂及び液状ゴムよりなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料であることを特徴とする請求項1から請求項5、又は、上記(7)から(11)のいずれか1に記載の高分子複合材料成形体。
【0109】
(13) ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体の製造方法であって、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合した高分子組成物に磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を磁場配向させ、ポリアリーレンサルファイド繊維が一定方向に配向された領域を複数形成した後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることを特徴とする高分子複合材料成形体の製造方法。このように構成すると、さらに多様な異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を簡易に製造することができる。
【0110】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1に記載の発明によれば、高分子材料中に配合され複合化されるポリアリーレンサルファイド繊維を任意の一定方向に配向させることにより、弾性率や強度などの機械的性質、熱膨張係数、熱伝導率などの熱的性質、光学的性質、電気的性質などにおいて異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を提供することができる。
【0111】
また、請求項2に記載の発明によれば、ポリアリーレンサルファイド繊維が任意の一定方向に配向された領域を複数含むようにしたため、弾性率や強度などの機械的性質、熱膨張係数、熱伝導率などの熱的性質、光学的性質、電気的性質などにおいて、さらに多様な異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を提供することができる。
【0112】
さらに、請求項6に記載の発明によれば、高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合した高分子組成物に磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることにより、ポリアリーレンサルファイド繊維を任意の方向に高度に配向させることができ、これにより、異方性機能を有する高性能な高分子複合材料成形体を容易に製造可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(b)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(c)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(d)本発明の高分子複合材料成形体(面内の一定方向にポリアリーレンサルファイド繊維が配向)の概念斜視図。
【図2】 (a)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(b)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(c)本発明の高分子複合材料成形体の製造方法を示す要部断面図、(d)本発明の高分子複合材料成形体(厚み方向にポリアリーレンサルファイド繊維が配向)の概念斜視図。
【図3】 本発明の高分子複合材料成形体の他の応用例を示す斜視図。
【図4】 比較例2,比較例4,比較例6の高分子複合材料成形体(ポリアリーレンサルファイド繊維がランダムに分散配合された従来の高分子複合材料成形体)を示す概念斜視図。
【図5】 実施例8及び比較例6の高分子複合材料成形体の透過率スペクトルを示すグラフ。
【符号の説明】
12…磁場発生手段としての磁石、13…高分子複合材料成形体、13a…高分子組成物、14…機能性合成樹脂繊維としてのポリアリーレンサルファイド繊維、χa…異方性反磁性磁化率。

Claims (10)

  1. ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、
    前記高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維が、一定方向に磁場配向されていることを特徴とする高分子複合材料成形体。
  2. ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体であって、
    前記ポリアリーレンサルファイド繊維が一定方向に磁場配向された領域を、複数含むことを特徴とする高分子複合材料成形体。
  3. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維が、ポリフェニレンサルファイド繊維であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高分子複合材料成形体。
  4. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体。
  5. 前記高分子材料が、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、硬化性樹脂及び架橋ゴムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体。
  6. ポリアリーレンサルファイド繊維が高分子材料中に配合された高分子複合材料成形体の製造方法であって、
    前記高分子材料中にポリアリーレンサルファイド繊維を配合した高分子組成物に磁場を印加して、高分子材料中のポリアリーレンサルファイド繊維を一定方向に配向させた後、この配向状態で高分子組成物を硬化又は固化させることを特徴とする高分子複合材料成形体の製造方法。
  7. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χaが、1×10-9以上であることを特徴とする請求項6に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。
  8. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維が、ポリフェニレンサルファイド繊維であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。
  9. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維の繊維長が、10mm以下であることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の高分子複合材料成形体の製造方法。
  10. 前記ポリアリーレンサルファイド繊維の異方性反磁性磁化率χ a が、1×10 -9 以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高分子複合材料成形体。
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