JP3766605B2 - 磁気検出素子及びその製造方法 - Google Patents

磁気検出素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗効果を利用して磁界を検出する磁気検出素子に係り、特に供給された電流の分流を抑え、磁気検出感度を向上させることのできる磁気検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
19は従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
19に示す磁気検出素子では、図示しない下部シールド層上に下部ギャップ層10が積層され、下部ギャップ層10上に下地層11を介して反強磁性層12、固定磁性層13、非磁性導電層14、フリー磁性層15、及び保護層16が形成され、下地層11から保護層16までの積層体が多層膜17として構成されている。
【0003】
反強磁性層12はPt−Mn(白金−マンガン)合金などの反強磁性材料により形成されている。
【0004】
固定磁性層13およびフリー磁性層15は、Ni−Fe(ニッケル−鉄)合金で形成されており、非磁性導電層14は、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電材料で形成されている。
【0005】
そして多層膜17の両側部の下部ギャップ層10上及び固定磁性層13、非磁性導電層14、及びフリー磁性層15の側面にかけて、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となるバイアス下地層18が形成されており、このバイアス下地層18の形成によって、後述するハードバイアス層19から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0006】
バイアス下地層18の上には、例えばCo−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されたハードバイアス層19が形成されている。
【0007】
ハードバイアス層19は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、ハードバイアス層19からのX方向へのバイアス磁界により、フリー磁性層15の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0008】
またハードバイアス層19上には、Cr、Au、Ta、Wなどで形成された電極層20が形成されている。
【0009】
さらに、多層膜17及び電極層20上に絶縁材料からなる上部ギャップ層21が積層され、上部ギャップ層21上に図示しない上部シールド層が形成される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
19に示された磁気検出素子は、いわゆるスピンバルブ型磁気検出素子であり、固定磁性層13の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層15の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層13とフリー磁性層15の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層15の磁化が変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層13の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0011】
電極層20は、多層膜17にセンス電流を供給するためのものである。
19に示された磁気検出素子は、多層膜17の両側に設けられたバイアス下地層18及びハードバイアス層19が導電性を有する材料によって形成されているので、電極層20から供給された電流はバイアス下地層18及びハードバイアス層19を介して、反強磁性層12にも流れこむ。すなわち、センス電流の分流が発生する。
【0012】
19に示されるような従来の磁気検出素子では、反強磁性層12に分流する電流の大きさが、センス電流の10%程度になることがあり、磁気検出素子の磁気検出感度を向上を図る際の妨げになっていた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気検出感度を向上させることのできる磁気検出素子及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基板上に、下から反強磁性層、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動するフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を有する磁気検出素子において、
前記固定磁性層中に、絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層が形成されており、
前記多層膜の両側部には、第1絶縁層が形成され、前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側に位置するように形成されるとともに、前記非磁性材料層よりも下側に形成され、
記第1絶縁層の上層電極層が形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
前記第1絶縁層形成されているために、前記電極層から供給されるセンス電流が、前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する反対側に分流することを防ぐことができる。
【0016】
また、前記非磁性材料層から前記固定磁性層向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層で反射させられる。
【0017】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0018】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0019】
本発明では、前記第1絶縁層の上層、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるためのバイアス層が形成されるようにできる。
【0020】
前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるためには、前記フリー磁性層の側端面の少なくとも一部が、前記ハードバイアス層の側端面と対向していることが好ましい。
【0021】
また、前記バイアス層または前記電極層の下面がバイアス下地層を介してまたは直接に、前記多層膜の下層に形成された下部ギャップ層に対向していると、放熱性が向上するので好ましい。
【0022】
本発明では、前記バイアス層が前記電極層を兼ねてもよい。
また本発明では、前記多層膜の下層には下部ギャップ層が形成され、前記下部ギャップ層から前記多層膜の側端面に接する突出形状の前記第1絶縁層が形成されていてもよい。
【0023】
前記第1絶縁層、例えばAlO、Al、SiO、Ta、TiO、AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si、NiO、WO、WO、BN、CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されることができる。
【0024】
特に、前記第1絶縁層、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されると放熱性、平坦性、絶縁耐圧性が向上するので好ましい。
【0025】
本発明では、前記フリー磁性層中に、絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されていてもよい。また、前記フリー磁性層上に、絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されていてもよい。
【0026】
本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、下から、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を形成し、前記固定磁性層の形成の際、前記固定磁性層中絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層を形成する工程と、
(b)形成される磁気検出素子の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフトオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層膜を除去する工程と、
(c)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層上から前記多層膜の両側面にかけて第1絶縁層を形成し、このとき前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側で且つ 記非磁性材料層よりも下側に形成する工程と、
(d)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも大きい第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記第1絶縁層上にバイアス層及び電極層を形成する工程と、
(e)前記リフトオフ用のレジスト層を除去する工程、
【0027】
または、本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(f)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、下から、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を形成し、前記固定磁性層の形成の際、前記固定磁性層中絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層を形成する工程と、
(g)形成される磁気検出素子の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフトオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層膜及び前記下部ギャップ層の一部を除去する工程と、
(h)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層上から前記多層膜の両側面にかけて第1絶縁層を形成する工程と、
(i)前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側で且つ前記非磁性材料層よりも下側に位置するように、前記第1絶縁層の上端側を除去する工程と、
(j)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも小さい第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記第1絶縁層上にバイアス層及び電極層を形成する工程と、
(k)前記リフトオフ用のレジスト層を除去する工程、
【0028】
また、前記(h)の工程において、前記第1絶縁層を、前記多層膜の側面に接している突出部及び前記下部ギャップ層表面に対して平行に重なっている平坦部を有するものとして形成することが好ましい。
【0029】
上記製造方法によって、前記バイアス層または前記電極層の下面がバイアス下地層を介して、または直接、前記磁気抵抗効果素子の下層に形成された下部ギャップ層に対向している磁気検出素子を容易に形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0031】
図1に示す磁気検出素子は、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0032】
図1に示された磁気検出素子は、固定磁性層35の磁化方向が、適正に図示Y方向に平行な方向に固定され、しかもフリー磁性層37の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層35とフリー磁性層37の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層37の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層35の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0033】
図1では、シード層33、反強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、保護層38が積層された多層膜T1が形成されている。なお、多層膜T1の上面の幅寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0034】
多層膜T1の下層には、基板(図示せず)上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層32が成膜されている。
【0035】
シード層33は、面心立方晶の(111)面あるいは体心立方晶の(110)面が優先配向する磁性材料層あるいは非磁性材料層の単層構造であるか、または下地層の上に前記磁性材料層あるいは前記非磁性材料層が形成された積層構造であることが好ましい。これによって反強磁性層34の結晶配向を、(111)面を優先配向させることができ、磁気検出素子の抵抗変化率を向上させることができる。
【0036】
例えば本発明では、シード層33は、NiFeY合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種以上)で形成され、またシード層33の下層にTa,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上からなる下地層が形成されてもよい。
【0037】
反強磁性層34は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0038】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0039】
反強磁性層34の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Å、例えば200Åである。
【0040】
ここで、反強磁性層34を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0041】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0042】
これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、第1固定磁性層35aとの間で大きな交換結合磁界を発生する反強磁性層34を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、前記交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた反強磁性層34を得ることができる。
【0043】
固定磁性層35は、第1固定磁性層35a、第2固定磁性層35c、及び非磁性中間層35bからなる。本実施の形態では、第2固定磁性層35cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35c1、鏡面反射層(固定磁性層中鏡面反射層)S1、及び非磁性材料層36に接する強磁性材料層35c1から構成されている。
【0044】
第1固定磁性層35a並びに第2固定磁性層35cの強磁性材料層35c1は、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にCoNiFe合金、CoFe合金により形成されることが好ましい。また、第1固定磁性層35a及び強磁性材料層35c1は同一の材料で形成されることが好ましい。
【0045】
また、鏡面反射層S1は、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される絶縁酸化物から選択されるいずれか1種または2種以上からなる。
【0046】
強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、強磁性材料層35c1は、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いている。
【0047】
また、非磁性中間層35bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0048】
非磁性材料層36は、固定磁性層35とフリー磁性層37との磁気的な結合を防止し、またセンス電流が主に流れる層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0049】
フリー磁性層37は、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、及び第1フリー磁性層37cからなる。
【0050】
第2フリー磁性層37aの強磁性層37a2及び第1フリー磁性層37cは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoFeNi合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にCoFeNi合金により形成されることが好ましい。
【0051】
非磁性中間層37bは、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0052】
なお、図1では、第2フリー磁性層37aが拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S2、強磁性層37a2から形成されている。拡散防止層37a1は強磁性材料からなるもので例えばCoによって形成されるものであり、強磁性層37a2と非磁性材料層36の相互拡散を防止する。なお、拡散防止層37a1が形成されず強磁性層37a2が非磁性材料層に接していてもよい。鏡面反射層S2は鏡面反射層S1と同じ材料からなる。
【0053】
鏡面反射層S1、S2は、後述する鏡面反射効果によって多層膜T1中を流れる伝導電子のスピン方向を保存したまま反射させ、アップスピンの伝導電子の平均自由行程を延し、磁気抵抗変化率を大きくさせる機能を有する。
【0054】
拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S2、強磁性層37a2は、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いている。
【0055】
保護層38はTaからなるTa層38aと酸化タンタルからなるTaO層38bからなる。
【0056】
多層膜T1の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層39が積層されている。第1絶縁層39は、多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aと重なる位置に形成されている。第1絶縁層39は、非磁性材料層36よりも下側に形成されている。第1絶縁層39の側端面39aは、反強磁性層34の側端面に対向し、下面39bは下部ギャップ層32の表面に接している。
【0057】
第1絶縁層39は、AlO、Al、SiO、Ta、TiO、AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si、NiO、WO、WO、BN、CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成される。特に、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されると、放熱性、平坦性、絶縁耐性が良好になるので好ましい。特に、AlSiOの絶縁性材料中のSiは全体の2at%以上で9at%以下含有されていることが好ましい。
【0058】
第1絶縁層39上から、第2固定磁性層35cの鏡面反射層S1の側面、強磁性材料層35c1の側面、非磁性材料層36の側面、及び第2フリー磁性層37aの側面に接して、Cr、Ti、Mo、W50Mo50などによってバイアス下地層40が形成されている。
【0059】
バイアス下地層40の上には、ハードバイアス層41が形成されている。ハードバイアス層41は例えば、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されており、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。
【0060】
ハードバイアス層41上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層42が形成され、この中間層42の上に、Cr,Au,Ta,W、などで形成された電極層43が形成されている。
【0061】
多層膜T1の表面、及び電極層43の表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シールド層45が形成されている。上部シールド層45は、無機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われる。
【0062】
電極層43とハードバイアス層41との間に、TaまたはCrからなる中間層42が設けられると、熱拡散を防ぐことができ、ハードバイアス層41の磁気特性の劣化を防止できる。
【0063】
電極層43としてTaを用いる場合には、Crの中間層42を設けることによってCrの上層に積層されるTaの結晶構造を低抵抗の体心立方構造にしやすくなる。
【0064】
また、電極層43としてCrを用いる場合には、Taの中間層42を設けることにより、Crがエピタキシャルに成長して、抵抗値を低減できる。
【0065】
バイアス下地層40を結晶構造がbcc(体心立方格子)構造であるCr、Ti、Mo、W50Mo50などを用いて形成すると、ハードバイアス層41の保磁力及び角形比が大きくなりバイアス磁界を大きくできる。
【0066】
下部シールド層31、下部ギャップ層32、シード層33、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37、保護層38、第1絶縁層39、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極層43、上部ギャップ層44、上部シールド層45、及び保護層はスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって形成される。
【0067】
下部シールド層31及び上部シールド層45はNiFeなどの磁性材料を用いて形成される。なお、下部シールド層31及び上部シールド層45は磁化容易軸がトラック幅方向(図示X方向)を向いていることが好ましい。なお、下部シールド層31と上部シールド層45は、メッキ法によって形成されても良い。
【0068】
下部ギャップ層32、上部ギャップ層44、及び上部シールド層を覆う保護層はAlやSiOなどの非磁性無機材料を用いて形成される。
【0069】
本実施の形態では、第1絶縁層39が形成されているために、電極層43から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐことができる。
【0070】
また、非磁性材料層36から固定磁性層35に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡面反射させられる。
【0071】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0072】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、フリー磁性層37中にも鏡面反射層S2を形成して、磁気抵抗変化率の向上を図っているが、鏡面反射層S2は形成されなくともよい。
【0074】
ここで、スピンバルブ型磁気検出素子が磁気を検出する原理及び鏡面反射効果について説明する。
【0075】
スピンバルブ型磁気検出素子にセンス電流を印加すると、伝導電子はおもに電気抵抗の小さい非磁性材料層付近を移動する。この伝導電子にはアップスピンとダウンスピンの2種類の電子が確率的に等量存在する。
【0076】
スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率は、これらの2種類の伝導電子の平均自由行程の行程差に対して正の相関を示す。
【0077】
ダウンスピンの伝導電子については、印加される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層とフリー磁性層との界面で常に散乱され、フリー磁性層に移動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はアップスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて短いままである。
【0078】
一方、アップスピンの伝導電子については、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向と平行状態になったときに、非磁性材料層からフリー磁性層に移動する確率が高くなり、平均自由行程が長くなっている。
【0079】
これは、アップスピンを持つ電子の平均自由行程が、例えば、5.0nm程度であるのに対して、ダウンスピンを持つ電子の平均自由行程が0.6nm程度であり、10分の1程度と極端に小さいためである。
【0080】
フリー磁性層の膜厚は、0.6nm程度であるダウンスピンを持つ電子の平均自由行程よりも大きく、5.0nm程度であるアップスピンを持つ電子の平均自由行程よりも小さく設定されている。
【0081】
従って、電子がフリー磁性層を通り抜けようとするときに、この電子がフリー磁性層の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィルタアウトされる)。
【0082】
同様に、フリー磁性層で発生した電子が非磁性材料層を通過し、固定磁性層を通り抜けようとするときに、この電子が固定磁性層の磁化方向に平行なアップスピンを持てば自由に移動できるが、反対にダウンスピンを持ったときには直ちに散乱されてしまう(フィルタアウトされる)。
【0083】
固定磁性層またはフリー磁性層で発生し、非磁性材料層を通過するダウンスピン電子は、フリー磁性層と非磁性材料層との界面または固定磁性層と非磁性材料層との界面付近で散乱される。つまり、このダウンスピン電子は、フリー磁性層の磁化方向が回転しても平均自由行程に変化はなく、GMR効果による抵抗変化率に影響しない。従ってGMR効果にはアップスピン電子の挙動のみを考えればよい。
【0084】
ここで、外部磁界によってフリー磁性層の磁化方向が固定磁性層の磁化方向に対して平行状態から変化すると、非磁性材料層とフリー磁性層との界面または固定磁性層と非磁性材料層との界面で散乱される確率が増加し、アップスピンの伝導電子の平均自由行程が短くなる。
【0085】
このように外部磁界の作用によって、アップスピンの伝導電子の平均自由行程がダウンスピンの伝導電子の平均自由行程に比べて大きく変化し、行程差が大きく変化する。すると、伝導電子全体の平均自由行程も大きく変化し、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)が大きくなる。
【0086】
図1に示される本実施の形態の磁気検出素子では、第2固定磁性層35cの強磁性材料層35c1と鏡面反射層S1との界面では、これらの層の比抵抗に大きな差があるためにポテンシャル障壁が形成される。
【0087】
このポテンシャル障壁は、センス電流を流した際に伝導電子を、そのスピンの方向を保存させたまま鏡面反射させ、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことができる。このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0088】
18に、鏡面反射層S1による鏡面反射効果を説明するための模式図を示す。
18には、反強磁性層34、固定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2固定磁性層35c(強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、強磁性材料層35c1)、非磁性材料層36、フリー磁性層37(第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37c)、を順次積層した積層体G1を示す。
【0089】
18では、フリー磁性層37側から固定磁性層35に向って移動する電子の磁気抵抗効果に対する寄与を考える。ここで、アップスピンの伝導電子を符号e1で示し、ダウンスピンの伝導電子をe2で示している。アップスピンの伝導電子e1とダウンスピンの伝導電子e2は確率的に等量存在している。
【0090】
ダウンスピンの伝導電子e2は、印加される外部磁界の向きにかかわらず、非磁性材料層36と第2固定磁性層35cとの界面で常に散乱され、固定磁性層35に移動する確率は低いまま維持され、その平均自由行程はアップスピンの伝導電子e1の平均自由行程に比べて短いままである。
【0091】
一方、アップスピン電子e1は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向が平行となる状態では、非磁性材料層36から第2固定磁性層35c内にまで到達する。そして、第2固定磁性層35c内部を移動して強磁性材料層35c1と鏡面反射層S1との界面付近に到達する。
【0092】
強磁性材料層35c1と鏡面反射層S1との界面付近には、ポテンシャル障壁が形成されるため、アップスピン電子e1が強磁性材料層35c1と鏡面反射層S1との界面付近で鏡面反射(鏡面散乱)する。鏡面反射よって、アップスピンe1の伝導電子のスピン状態が維持されるので、再び第2固定磁性層35c中を移動することになる。
【0093】
これは、アップスピン電子e1が鏡面反射した分、反射平均自由行程λsだけ平均自由行程が延びたことを意味する。
【0094】
鏡面反射層S1を有する本実施の形態では、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子e1の平均自由行程を伸ばすことができる。
【0095】
このため、外部磁界の印加によるアップスピン電子e1の平均自由行程の変化量が大きくなって、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させることができる。
【0096】
また、図1では、磁気的膜厚が異なる第1固定磁性層35aと第2固定磁性層35cが、非磁性中間層35bを介して積層されたものが、一つの固定磁性層35として機能する。第1固定磁性層35aの磁気的膜厚は、第1固定磁性層35aの飽和磁束密度と膜厚との積の値である。
【0097】
また、第2固定磁性層35cの磁気的膜厚は、強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、及び強磁性材料層35c1、それぞれの層の飽和磁束密度と膜厚との積の和である。
【0098】
第1固定磁性層35aは反強磁性層34と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、第1固定磁性層35aと反強磁性層34との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じ、第1固定磁性層35aの磁化方向が図示Y方向に固定される。第1固定磁性層35aの磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層35bを介して対向する第2固定磁性層35cの磁化方向が、前記第1固定磁性層35aの磁化方向と反平行の状態で固定される。
【0099】
このように、第1固定磁性層35aと第2固定磁性層35cの磁化方向が、反平行となるフェリ磁性状態になっていると、第1固定磁性層35aと第2固定磁性層35cとが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層35の磁化方向を一定方向に強力に固定することができる。
【0100】
なお、第1固定磁性層35aの磁気モーメントと第2固定磁性層35cの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が固定磁性層35の磁化方向となる。
【0101】
本実施の形態では、第2固定磁性層35cの磁気的膜厚を第1固定磁性層35aの磁気的膜厚より厚くしている。
【0102】
また、第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35cの固定磁化による反磁界(双極子磁界)を、第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35cの静磁界結合同士が相互に打ち消し合うことによりキャンセルできる。これにより、固定磁性層35の固定磁化による反磁界(双極子磁界)からの、フリー磁性層37の変動磁化への寄与を減少させることができる。
【0103】
従って、フリー磁性層37の変動磁化の方向を所望の方向に補正することがより容易になり、アシンメトリーの小さい対称性の優れたスピンバルブ型薄膜磁気素子を得ることが可能になる。
【0104】
ここで、アシンメトリーとは、再生出力波形の非対称性の度合いを示すものであり、再生出力波形が与えられた場合、波形が対称であればアシンメトリーが小さくなる。従って、アシンメトリーが0に近づく程再生出力波形が対称性に優れていることになる。
【0105】
前記アシンメトリーは、フリー磁性層37の磁化の方向と固定磁性層35の固定磁化の方向とが直交しているときに0となる。アシンメトリーが大きくずれるとメディアからの情報の読み取りが正確にできなくなり、エラーの原因となる。このため、前記アシンメトリーが小さいものほど、再生信号処理の信頼性が向上することになり、スピンバルブ薄膜磁気素子として優れたものとなる。
【0106】
また、固定磁性層の固定磁化による反磁界(双極子磁界)は、素子高さ方向において、その端部で大きく中央部で小さいという不均一な分布を持ち、フリー磁性層37内における単磁区化が妨げられる場合があるが、固定磁性層35を上記の積層構造とすることにより双極子磁界をほぼ0とすることができ、これによってフリー磁性層37内に磁壁ができて磁化の不均一が発生しバルクハウゼンノイズなどが発生することを防止することができる。
【0107】
フリー磁性層37は、磁気的膜厚の大きさが異なる第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性層37cが、非磁性中間層37bを介して積層され、第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性層37cの磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態である。第1フリー磁性層37cの磁気的膜厚は、その飽和磁束密度と膜厚との積の値である。
【0108】
なお、第2フリー磁性層37aの磁気的膜厚は、拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S2、強磁性層37a2の磁気的膜厚(飽和磁束密度×膜厚)の和である。
【0109】
図1に示される磁気検出素子では、第2フリー磁性層37aの磁気的膜厚を第1フリー磁性層37cの磁気的膜厚より大きくしている。
【0110】
第2フリー磁性層37aの磁気的膜厚を第1フリー磁性層37cの磁気的膜厚より大きくすることで、フリー磁性層37のスピンフロップ磁界を大きくすることができ、これにより、フリー磁性層37がフェリ磁性状態を保つ磁界の範囲が広くなり、フリー磁性層が安定してフェリ磁性状態を保つことができる。
【0111】
なお、スピンフロップ磁界とは、磁化方向が反平行である2つの磁性層に対して外部磁界を印加したときに、2つの磁性層の磁化方向が反平行でなくなる外部磁界の大きさである。スピンフロップ磁界が大きいほど、外部磁界中においてもフェリ磁性状態を安定して維持できる。
【0112】
このとき、磁気的膜厚が大きい方、例えば、第2フリー磁性層37aの磁化方向が、ハードバイアス層41から発生する磁界の方向に向き、第1フリー磁性層37cの磁化方向が、180度反対方向に向いた状態になる。
【0113】
第2フリー磁性層37aの磁気モーメントと第2フリー磁性層37bの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向がフリー磁性層37の磁化方向となる。
【0114】
第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性層37cの磁化方向が180度異なる反平行のフェリ磁性状態になると、フリー磁性層37の膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、飽和磁化が小さくなり、フリー磁性層37の磁化が変動しやすくなって、磁気検出素子の磁界検出感度が向上する。
【0115】
ハードバイアス層41の多層膜T1と対向する側の側面41aは、フリー磁性層37の第1フリー磁性層37cと第2フリー磁性層37aのうち、第2フリー磁性層37aの側面とのみ対向している。
【0116】
ハードバイアス層41は、フリー磁性層37を構成する第2フリー磁性層37aと第1フリー磁性層37cのうち、一方の磁化方向を揃えるだけでよい。図1では、第2フリー磁性層37aの磁化方向のみをそろえている。第2フリー磁性層37aの磁化方向が一定方向に揃えられると、第1フリー磁性層37cは磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層37全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0117】
本実施の形態では、ハードバイアス層41は図示X方向の静磁界を、主に第2フリー磁性層37aに与える。従って、ハードバイアス層40から発生する図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37cの磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑えることができる。
【0118】
ただし、ハードバイアス層41の多層膜T1と対向する側の側面41aが、第1フリー磁性層37cと第2フリー磁性層37aの両方の側面と対向してもよい。
【0119】
なお、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向の相対角であり、これらの相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0120】
図2は、本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。図2に示された磁気検出素子は、図1に示された磁気検出素子と、第1絶縁層39、ハードバイアス層41の積層高さが異っている。
【0121】
本発明では、図2に示される本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子のように、第1絶縁層39の多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側に形成されてもよい。
【0122】
このとき、第1絶縁層39の上面39cは、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aの仮想延長平面Aよりも上側に位置する。
【0123】
ただし、フリー磁性層37の磁化方向を固定磁性層35の磁化方向と交叉する方向へ揃えるために、フリー磁性層37の側端面の少なくとも一部が、ハードバイアス層41の側端面41aと対向している必要がある。すなわち、ハードバイアス層41の側端面41aの上端部41a1がフリー磁性層37の下面37dより上側に位置し、かつハードバイアス層41の下面41bがフリー磁性層37の上面37eよりも下側に位置することが必要である。
【0124】
好ましくは、ハードバイアス層41の側端面41aの上端部41a1がフリー磁性層37の上面37eより上側に位置し、かつハードバイアス層41の下面41bがフリー磁性層37の下面37dよりも下側に位置することである。このとき、フリー磁性層37の側端面の全部が、ハードバイアス層41の側端面41aと対向する。
【0125】
より好ましくは、ハードバイアス層41の側端面41aの上端部41a1が第2フリー磁性層37の下面37c1より下側に位置し、かつハードバイアス層41の下面41bがフリー磁性層37の下面37dよりも下側に位置することである。このとき、ハードバイアス層41からのバイアス磁界はおもに第2フリー磁性層37aにのみかけられるので、第1フリー磁性層37cの磁化方向の乱れを抑えることができる。
【0126】
本実施の形態でも、第1絶縁層39が形成されているために、電極層43から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐことができる。
【0127】
また、非磁性材料層36から固定磁性層35に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡面反射させられる。
【0128】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0129】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0130】
図3は、本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0131】
図3に示される磁気検出素子では、鏡面反射層S3がフリー磁性層37の非磁性材料層36に対向する面の反対側に形成されている多層膜T2が形成され、多層膜T2の両側部であって電極層43上に第2絶縁層50が形成されている点で図1に示された磁気検出素子と異っている。
【0132】
第2絶縁層50の多層膜T2に対向する側端面50aの下端縁50a1が鏡面反射層S3の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S3aと重なる位置に形成されている。第2絶縁層50の上面は上部ギャップ層44に接している。
【0133】
なお、フリー磁性層37の側面の一部がハードバイアス層41の側端面に対向するのであれば、下端縁50a1が面S3aより下側に位置するように第2絶縁層50が形成されてもよい。また、第1絶縁層39の多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側に形成されてもよい。
【0134】
本実施の形態では、第1絶縁層39及び第2絶縁層50が形成されているために、電極層43から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1と鏡面反射層S2に挟まれた領域内に集中して流されるので、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0135】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0136】
また、本実施の形態では、電極層43と上部ギャップ層44の間に第2絶縁層50が形成されるので、電極層43と上部シールド層45間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0137】
図4は、本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0138】
図4に示される磁気検出素子では、多層膜T3中に形成される鏡面反射層が固定磁性層35中に形成される鏡面反射層S1のみである点、電極層43が、多層膜T3の不感領域D,D上にまで延ばされて形成されている点、及びフリー磁性層37の非磁性材料層36と接する反対側の面に導伝性材料からなるバックド層B1が形成されている点で図1に示される磁気検出素子と異なる。
【0139】
ハードバイアス層41からのX方向へのバイアス磁界により、フリー磁性層37の磁化は図示X方向に揃えられている。
【0140】
ところで図4に示すように多層膜T3中央に位置する領域は、感度領域Eであり、その両側は、不感領域D,Dである。
【0141】
感度領域Eでは、固定磁性層35の磁化が、適正に図示Y方向に固定され、しかもフリー磁性層37の磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層35とフリー磁性層37の磁化が直交関係にある。そして記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層37の磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層35の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0142】
すなわち多層膜T3の感度領域Eは、実質的に磁気抵抗効果が発揮される部分であり、この部分で良好に再生機能が働く。
【0143】
これに対し、感度領域Eの両側に位置する不感領域D,Dでは、固定磁性層35及びフリー磁性層37の磁化が、ハードバイアス層41からの磁化の影響を強く受け、フリー磁性層37の磁化は、外部磁界に対し変動しにくくなっている。すなわち不感領域D,Dは、磁気抵抗効果が弱く、再生機能が低下した領域である。
【0144】
図4では、電極層43が、多層膜T3の不感領域D,D上にまで延ばされて形成されているので、多層膜T3と、電極層43との接合面積も大きくなるため直流抵抗値(DCR)を下げることができ、再生特性を向上させることが可能である。
【0145】
また、電極層43が不感領域D,D上に延ばされて形成されると、センス電流が不感領域D,Dに流れ込みノイズを発生させることを抑えることができる。
【0146】
また、電極層43からのセンス電流が、ハードバイアス層41に流れにくくなり、直接多層膜T3に、前記センス電流を流す割合を多くできる。
【0147】
すなわち、本実施の形態では、第1絶縁層39が形成されていることによるセンス電流の分流の防止効果と電極層43からのセンス電流を多層膜T3内をより多く流すことができるという両方の効果によって、磁気抵抗変化率を図1に示された磁気検出素子よりもさらに向上させることができる。
【0148】
なお、バックド層B1は、第2固定磁性層35cの磁化方向と第2フリー磁性層37aの磁化方向が平行となる状態でのアップスピンの伝導電子の平均自由行程を伸ばすことにより、外部磁界の印加によるアップスピン電子の平均自由行程の変化量が大きくして、スピンバルブ型磁気検出素子の磁気抵抗変化率(ΔR/R)をより向上させるためのものである。
【0149】
図5は、参考例の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
図5に示す磁気検出素子は、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0150】
図5では、シード層33、反強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、保護層38が積層された多層膜T4が形成されている。なお、多層膜T4の上面の幅寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0151】
多層膜T4の下層には、基板(図示せず)上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層32が成膜されている。
【0152】
図5では、第2フリー磁性層37aが拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S4、強磁性層37a2から形成されている。拡散防止層37a1は強磁性材料からなるもので例えばCoによって形成されるものであり、強磁性層37a2と非磁性材料層36の相互拡散を防止する。なお、拡散防止層37a1が形成されず第2フリー磁性層37aが強磁性層37a2のみで構成されてもよい。
【0153】
また鏡面反射層S4は、Al、Al−Q−O(Qは、B,Si、N,Ti,V,Mn,Fe,Co,Niから選択される一種以上の元素)、R−O(RはTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta.Wから選択される一種以上)などの絶縁酸化物によって形成されている。このとき鏡面反射層S4の上下に積層される第1フリー磁性層37cと第2フリー磁性層37aは、反強磁性的に結合して、磁化方向が反平行になる。
【0154】
ただし、鏡面反射層S4は、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される絶縁酸化物から選択されるいずれか1種または2種以上から形成されてもよい。
【0155】
鏡面反射層S4が上述した強磁性材料によって形成されるときには、第2フリー磁性層37a、鏡面反射層S4、第1フリー磁性層37cは、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いている。
【0156】
多層膜T4中の反強磁性層34は、図示X方向に延長され延出部34aが形成されている。反強磁性層34の延出部34a上から固定磁性層35非磁性材料層36の側面、及び第2フリー磁性層37aの側面に接して、Cr、Ti、Mo、W50Mo50などによってバイアス下地層40が形成されている。
【0157】
バイアス下地層40の上には、ハードバイアス層60が形成されている。ハードバイアス層60は例えば、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などで形成されており、図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。図5では、ハードバイアス層60が多層膜T4にセンス電流を供給する電極層としても機能する。
【0158】
図5のように反強磁性層34の延出部34aが図示X方向に延長されて形成され、この上層にバイアス下地層40及びハードバイアス層60が積層されると、ハードバイアス層60の膜厚の厚い部分がフリー磁性層37の側面に接し、フリー磁性層37に充分な大きさのバイアス磁界をかけることができるので好ましい。
【0159】
ハードバイアス層60上には、多層膜T4の両側部に、第2絶縁層61が積層されている。第2絶縁層61は、多層膜T4に対向する側端面61aの下端縁61a1が鏡面反射層S4の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S4aと重なる位置に形成されている。第2絶縁層61は、非磁性材料層36よりも上側に形成されている。
【0160】
第2絶縁層61は、AlO、Al、SiO、Ta、TiO、AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si、NiO、WO、WO、BN、CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成される。特に、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されると、放熱性、平坦性、絶縁耐性が良好になるので好ましい。
【0161】
多層膜T4の表面、及び絶縁層61の表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シールド45が形成されている。上部シールド層45は、図示しない保護層によって覆われる。
【0162】
なお、下部シールド層31、下部ギャップ層32、シード層33、反強磁性層34、非磁性材料層36、保護層38、バイアス下地層40上部ギャップ層44、上部シールド層45、及び保護層の材料は図1に示された磁気検出素子の材料と同じなので説明を省略する。
【0163】
図5では、第2絶縁層61が形成されているために、電極層をかねるハードバイアス層60から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S4の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、第1フリー磁性層37c及び保護層38に分流することを防ぐことができる。
【0164】
また、非磁性材料層36からフリー磁性層37に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S4で鏡面反射させられる。
【0165】
従って、図5の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層36周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0166】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0167】
また、図5では、ハードバイアス層60と上部ギャップ層44の間に第2絶縁層61が形成されるので、ハードバイアス層60と上部シールド層45間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0168】
なお、固定磁性層35内に鏡面反射層S1を形成し、反強磁性層34の延出部34aの上面に接して、多層膜T4に対向する側端面の上端縁が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面に重なる位置に又は前記反対側の面より上側に位置するように、形成される第1絶縁層が形成されてもよい。
【0169】
図6は、本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0170】
図6に示された磁気検出素子の、下部シールド層31、下部ギャップ層32、多層膜T1、上部ギャップ層44、及び上部シールド層45の構成及び材料は、図1に示された磁気検出素子と同じであるので説明を省略する。
【0171】
図6に示された磁気検出素子でも、多層膜T1の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層70が積層されている。第1絶縁層70上にはバイアス下地層71を介してハードバイアス層72が積層され、ハードバイアス層72上には中間層73を介して電極層74が積層されている。第1絶縁層70、バイアス下地層71、ハードバイアス層72、中間層73、及び電極層74の材料は、図1に示された磁気検出素子の第1絶縁層39、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、及び電極層43と同じである。
【0172】
第1絶縁層70は、多層膜T1に対向する側端面70aの上端縁70a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側に形成されている。ただし、上端縁70a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aに重なる位置に形成されてもよい。
【0173】
本実施の形態では、ハードバイアス層72の下面がバイアス下地層71を介して、多層膜T1の下層であって下部シールド層31の上に形成されている下部ギャップ層32に対向している。
【0174】
すなわち、ハードバイアス層72の下層の第1絶縁層70の体積が小さくなり、磁気検出素子の放熱性が向上するので好ましい。
【0175】
本実施の形態でも、第1絶縁層70が形成されているために、電極層74から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐことができる。
【0176】
また、非磁性材料層36から固定磁性層35に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡面反射させられる。
【0177】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0178】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0179】
図7は、参考例の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
図7に示す磁気検出素子は、図1に示された磁気検出素子とは逆に、フリー磁性層37、非磁性材料層36、固定磁性層35、反強磁性層34が順次積層されてなるいわゆるトップ型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0180】
図7では、下地層80、第1フリー磁性層37c、非磁性中間層37b、第2フリー磁性層37aからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、非磁性材料層36、第2固定磁性層35c、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35aからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層35、反強磁性層34、及び保護層39が積層された多層膜T5が形成されている。
【0181】
多層膜T5の下層には、基板(図示せず)上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層32が成膜されている。
【0182】
なお、下部シールド層31、下部ギャップ層32、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37、保護層38は、図1に示された磁気検出素子と同等の材料からなる。
【0183】
下地層80はTaなどからなる。
固定磁性層35は、強磁性材料により形成される第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35c、非磁性材料により形成される非磁性中間層35bからなる。図7では、第2固定磁性層35cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、及び非磁性材料層36に接する強磁性材料層35c1から構成されている。
【0184】
フリー磁性層37は、第2フリー磁性層37a、第1フリー磁性層37c及び非磁性中間層37bからなる。
【0185】
第2フリー磁性層37aは拡散防止層37a1、強磁性層37a2、鏡面反射層S2、強磁性層37a2から形成されている。なお、拡散防止層37a1が形成されず強磁性層37a2が非磁性材料層36に接していてもよい。
【0186】
下部ギャップ層31の上面と下地層80の側面、及び第1フリー磁性層37cの側面に接してバイアス下地層81が形成されている。
【0187】
バイアス下地層81の上には、ハードバイアス層82が形成されている。ハードバイアス層82は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されている。
【0188】
ハードバイアス層82上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層83が形成され、この中間層83の上に、電極層84が形成されている。
【0189】
多層膜T5の両側部であって電極層84上に第2絶縁層85が形成されている。第2絶縁層85の多層膜T5に対向する側端面85aの下端縁85a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層に対向する面と反対側の面S1aと重なるように形成されている。
【0190】
バイアス下地層81、ハードバイアス層82、中間層84、電極層84、及び第2絶縁層85を形成する材料は、図1に示された磁気検出素子のバイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極層43、及び第1絶縁層39と同等の材料であるので説明を省略する。
【0191】
多層膜T5の表面、及び第2絶縁層85の表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シールド45が形成されている。上部シールド層45は、無機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われる。
【0192】
ハードバイアス層41は、第1フリー磁性層37cの磁化方向のみをそろえている。第1フリー磁性層37cの磁化方向が一定方向に揃えられると、第2フリー磁性層37aは磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層37全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0193】
図7においては、多層膜T5の第1フリー磁性層37cは、反強磁性層34よりも下方に形成されており、ハードバイアス層82の膜厚の厚い部分と隣接しており、従って第1フリー磁性層37cの磁化は容易にX方向に揃えられる。これにより、バルクハウゼンノイズの発生を低減させることができる。
【0194】
なお、側端面85aの下端縁85a1は、鏡面反射層S1の非磁性材料層に対向する面と反対側の面S1aより下側に位置するように形成されてもよい。
【0195】
図7では、第2絶縁層85が形成されているために、電極層84から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層34、及び保護層38に分流することを防ぐことができる。
【0196】
また、非磁性材料層36から固定磁性層35に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡面反射させられる。
【0197】
従って、図7の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0198】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0199】
また、図7では、電極層84と上部ギャップ層44の間に第2絶縁層50が形成されるので、電極層43と上部シールド層45間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0200】
なお、図7に示された磁気検出素子のハードバイアス層82上に、多層膜T5に対向する側端面の上端縁が、フリー磁性層37中に形成されている鏡面反射層S2の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S2aに重なる位置にまたは面S2aより上側に位置するような第1絶縁層が形成されてもよい。
【0201】
図8は、本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0202】
このスピンバルブ型薄膜素子は、非磁性中間層106を中心として、その上下に第1フリー磁性層105、第2フリー磁性層107、非磁性材料層104,108、第1固定磁性層103,第3固定磁性層109、非磁性中間層102,110、第2固定磁性層101,第4固定磁性層111及び反強磁性層100,112が形成された、いわゆるデュアルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれるものであり、図1ないし図7に示すスピンバルブ型薄膜素子(シングルスピンバルブ型薄膜素子と呼ばれる)よりも高い再生出力を得ることが可能である。なお最も下側に形成されている層がシード層33で、最も上側に形成されている層が保護層38であり、シード層33から保護層38までの積層体によって多層膜T6が構成されている。
【0203】
図8に示される磁気検出素子では、第1固定磁性層103は、非磁性中間層102に接する強磁性材料層103a、鏡面反射層S5、及び非磁性材料層104に接する強磁性材料層103aから構成されている。また、第3固定磁性層109は、非磁性中間層110に接する強磁性材料層109a、鏡面反射層S6、及び非磁性材料層108に接する強磁性材料層109aから構成されている。
【0204】
非磁性材料層104,108、及び反強磁性層100,112、シード層33及び保護層38の材料は、図1に示された磁気検出素子の非磁性材料層36、反強磁性層34、シード層33及び保護層38の材料と同じである。
【0205】
また、第1フリー磁性層105、及び第2フリー磁性層107は、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoFeNi合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にCoFeNi合金により形成されることが好ましい。
【0206】
非磁性中間層106は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0207】
第1固定磁性層103を構成する強磁性材料層103a、鏡面反射層S5、第3固定磁性層109は、非磁性中間層110に接する強磁性材料層109a、鏡面反射層S6、及び非磁性材料層108に接する強磁性材料層109aから構成されている。
【0208】
第2固定磁性層101及び第1固定磁性層103の強磁性材料層103a、並びに第4固定磁性層111及び第3固定磁性層109の強磁性材料層109aは、強磁性材料により形成されるもので、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などにより形成されるものであり、特にCoFeNi合金、CoFe合金により形成されることが好ましい。また、第2固定磁性層101及び強磁性材料層103a並びに第4固定磁性層101及び強磁性材料層109aは同一の材料で形成されることが好ましい。
【0209】
第1固定磁性層103の強磁性材料層103a、鏡面反射層S5、強磁性材料層103aは、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いている。同様に、第3固定磁性層の強磁性材料層109a、鏡面反射層S6、強磁性材料層109aも、強磁性結合によって磁気的に結合しており磁化方向が同一方向を向いている。
【0210】
また、非磁性中間層102、110は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
なお、鏡面反射層S5、鏡面反射層S6は、CoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される絶縁酸化物から選択されるいずれか1種または2種以上からなる。
【0211】
多層膜T6の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層113が積層されている。第1絶縁層113は、多層膜T6に対向する側端面113aの上端縁113a1が鏡面反射層S6の非磁性材料層108に対向する面と反対側の面S6aと重なる位置に形成されている。
【0212】
第1絶縁層113上には、Crなどで形成された緩衝膜及び配向膜となるバイアス下地層114,115を介してハードバイアス層115が積層されている。
【0213】
ハードバイアス層115,115は、Co−Pt(コバルト−白金)合金やCo−Cr−Pt(コバルト−クロム−白金)合金などによって形成される。
【0214】
バイアス下地層114,114の形成によって、ハードバイアス層115,115から発生するバイアス磁界を増大させることができる。
【0215】
またハードバイアス層115,115上には、Taなどの非磁性材料で形成された中間層116,116が形成され、この中間層116,116の上に、Cr、Au、Ta、W、Rh、Ir、Ru、Cuなどで形成された電極層117が形成されている。
【0216】
電極層117の上面には第2絶縁層118が形成されている。
第2絶縁層118の多層膜T6に対向する側端面118aの下端縁118a1が鏡面反射層S5の非磁性材料層に対向する面と反対側の面S5aと重なる位置に形成されている。
【0217】
多層膜T6の表面、第2絶縁層118の表面には、上部ギャップ層119が成膜され、上部ギャップ層119上には上部シールド層45が形成されている。上部シールド層45は、無機絶縁材料からなる保護層46によって覆われる。
【0218】
下部シールド層31、上部シールド層45の材料は、図1に示された磁気検出素子の材料と同じである。
【0219】
第1絶縁層113、第2絶縁層118、下部ギャップ層32及び上部ギャップ層119は、AlO、Al、SiO、Ta、TiO、AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si、NiO、WO、WO、BN、CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されることができる。
【0220】
特に、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成されると放熱性、平坦性、絶縁耐圧性が向上するので好ましい。
【0221】
また、図8では、単位面積当りの磁気モーメントが異なる第1固定磁性層103と第2固定磁性層101が、非磁性中間層102を介して積層されたものが、一つの固定磁性層P1として機能する。また、単位面積当りの磁気モーメントが異なる第3固定磁性層109と第4固定磁性層111が、非磁性中間層110を介して積層されたものが、一つの固定磁性層P2として機能する。
【0222】
第1固定磁性層103と第2固定磁性層101の磁化方向は、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、第1固定磁性層103と第2固定磁性層101とが互いに他方の磁化方向を固定しあうので、全体として固定磁性層P1の磁化方向を一定方向に安定させることができる。
【0223】
図8では、第1固定磁性層103及び第2固定磁性層101を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、それぞれの単位面積当りの磁気モーメントを異ならせている。
【0224】
また、第3固定磁性層109と第4固定磁性層111の磁化方向も、180度異なる反平行のフェリ磁性状態になっており、第3固定磁性層109と第4固定磁性層111とが互いに他方の磁化方向を固定しあっている。
【0225】
なお、非磁性中間層102、110は、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金で形成されている。
【0226】
第2固定磁性層101及び第4固定磁性層111は、それぞれ反強磁性層100及び112と接して形成され、磁場中アニールが施されることにより、第2固定磁性層101及び反強磁性層100との界面並びに第4固定磁性層111及び反強磁性層112との界面にて交換結合による交換異方性磁界が生じる。
【0227】
第2固定磁性層101の磁化方向は、図示Y方向に固定される。第2固定磁性層101の磁化方向が図示Y方向に固定されると、非磁性中間層102を介して対向する第1固定磁性層103の磁化方向が、第2固定磁性層101の磁化方向と反平行の状態で固定される。なお第2固定磁性層101の単位面積当りの磁気モーメントと第1固定磁性層103の単位面積当りの磁気モーメントを足し合わせた合成単位面積当りの磁気モーメントの方向が前記固定磁性層P1の磁化方向となる。
【0228】
第2固定磁性層101の磁化方向が図示Y方向に固定されるとき、第4固定磁性層111の磁化方向は、図示Y方向と反平行方向に固定されることが好ましい。このとき、非磁性中間層110を介して対向する第3固定磁性層109の磁化方向が、第4固定磁性層111の磁化方向と反平行方向に、すなわち、Y方向に固定される。なお第4固定磁性層111の単位面積当りの磁気モーメントと第3固定磁性層109の単位面積当りの磁気モーメントを足し合わせた単位面積当りの合成磁気モーメントの方向が固定磁性層P2の磁化方向となる。
【0229】
すると、第1フリー磁性層105、非磁性材料層106、第2フリー磁性層107を介して対向する、第1固定磁性層103と第3固定磁性層109の磁化方向は、互いに180度異なる反平行状態になる。
【0230】
では、後述するように、フリー磁性層Fが第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107が、非磁性材料層106を介して積層されたものとして形成され、第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107の磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態になっている。
【0231】
第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107は、外部磁界の影響を受けて、フェリ磁性状態を保ったまま磁化方向を変化させる。このとき、第1固定磁性層103と第3固定磁性層109の磁化方向が、互いに180度異なる反平行状態になっていると、フリー磁性層Fより上層部分の抵抗変化率とフリー磁性層Fより下層部分の抵抗変化の位相が等しくなる。
【0232】
さらに、前記固定磁性層P1の磁化方向と前記固定磁性層P2の磁化方向が、反平行方向であることが好ましい。
【0233】
例えば、磁化方向が図示Y方向に固定されている第2固定磁性層101の単位面積当りの磁気モーメントの大きさを第1固定磁性層103の単位面積当りの磁気モーメントの大きさよりも大きくし、固定磁性層P1の磁化方向を図示Y方向にする。一方、磁化方向が図示Y方向に固定されている第3固定磁性層109の単位面積当りの磁気モーメントの大きさを第4固定磁性層111の単位面積当りの磁気モーメントの大きさよりも小さくし、固定磁性層P2の磁化方向を図示Y方向と反平行方向にする。
【0234】
すると、センス電流を図示X方向と反対向きに流したときに発生するセンス電流磁界の方向と、固定磁性層P1の磁化方向及び固定磁性層P2の磁化方向が一致し、第1固定磁性層103と第2固定磁性層101のフェリ磁性状態、及び第3固定磁性層109と第4固定磁性層111のフェリ磁性状態が安定する。
【0235】
また、第1フリー磁性層105及び第2フリー磁性層107は、それぞれの単位面積当りの磁気モーメントが異なるように形成されている。ここでも、第1フリー磁性層105及び第2フリー磁性層107を同じ材料を用いて形成し、さらに、それぞれの膜厚を異ならせることにより、第1フリー磁性層105及び第2フリー磁性層107の単位面積当りの磁気モーメントを異ならせている。
【0236】
図8では、第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107が、非磁性材料層106を介して積層されたものが、一つのフリー磁性層Fとして機能する。
【0237】
第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107の磁化方向は、反平行となるフェリ磁性状態になっており、フリー磁性層Fの膜厚を薄くすることと同等の効果が得られ、フリー磁性層F全体の単位面積あたりの実効的な単位面積当りの磁気モーメントが小さくなって磁化が変動しやすくなり、磁気抵抗効果素子の磁界検出感度が向上する。
【0238】
第1フリー磁性層105の単位面積当りの磁気モーメントと第2フリー磁性層107の単位面積当りの磁気モーメントを足し合わせた合成磁気モーメントの方向が前記フリー磁性層Fの磁化方向となる。
【0239】
ハードバイアス層115は図示X方向(トラック幅方向)に着磁されており、ハードバイアス層115,115からのX方向へのバイアス磁界により、フリー磁性層Fの磁化方向は図示X方向になっている。
【0240】
ハードバイアス層115は、フリー磁性層Fを構成する第1フリー磁性層105と第2フリー磁性層107のうち、一方の磁化方向を揃えるだけでよい。図7ではハードバイアス層115の多層膜T6に対向する側端面115aは、第2フリー磁性層107の側端面と対向し、第1フリー磁性層105の側端面とは対向していない。
【0241】
すなわち、ハードバイアス層115は第2フリー磁性層107の磁化方向のみを揃えている。第2フリー磁性層107の磁化方向が一定方向に揃えられると、第1フリー磁性層105は磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層F全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0242】
本実施の形態では、ハードバイアス層115は図示X方向の静磁界を、主に第2フリー磁性層107に与える。従って、ハードバイアス層115から発生する図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層105の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑えることができる。
【0243】
ただし、ハードバイアス層115から発生する図示X方向の静磁界が第1フリー磁性層105に印加されてもよい。
【0244】
図8に示される磁気検出素子では、固定磁性層P1、P2の磁化方向が、適正に図示Y方向あるいはYと反対方向に固定され、しかもフリー磁性層Fの磁化が適正に図示X方向に揃えられており、固定磁性層P1、P2とフリー磁性層Fの磁化方向が交差している。
【0245】
そして記録媒体からの外部磁界に対し、フリー磁性層Fの磁化が感度良く変動し、この磁化方向の変動と、固定磁性層P1、P2の固定磁化方向との関係で電気抵抗が変化し、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。ただし、電気抵抗値の変化(出力)に直接寄与するのは第1固定磁性層103の磁化方向と第1フリー磁性層105の磁化方向の相対角、及び第3固定磁性層109の磁化方向と第2フリー磁性層107の磁化方向の相対角であり、これらの相対角が検出電流が通電されている状態かつ信号磁界が印加されていない状態で直交していることが好ましい。
【0246】
本実施の形態でも、第1絶縁層113及び第2絶縁層118が形成されているために、電極層117から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S5と鏡面反射層S6に挟まれた領域内に集中して流されるので、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0247】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0248】
また、本実施の形態では、電極層117と上部ギャップ層119の間に第2絶縁層118が形成されるので、電極層117と上部シールド層45間の電気的絶縁性を向上させることができる。
【0249】
図9は、本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図である。
【0250】
図9に示す磁気検出素子は、反強磁性層34、固定磁性層35、非磁性材料層36、フリー磁性層37が順次積層されてなるいわゆるボトム型のスピンバルブ型磁気検出素子である。
【0251】
図9では、下地層32、シード層33、反強磁性層34、第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2固定磁性層35cからなるシンセティックフェリピンド型の固定磁性層35、非磁性材料層36、第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、バックド層B1、保護層39が積層された多層膜T7が形成されている。
【0252】
本実施の形態の磁気検出素子は図1に示された磁気検出素子と同様に、固定磁性層35が、強磁性材料により形成される第1固定磁性層35a及び第2固定磁性層35c、非磁性材料により形成される非磁性中間層35bからなっており、さらに、第2固定磁性層35cは、非磁性中間層35bに接する強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、及び非磁性材料層36に接する強磁性材料層35c1から構成されている。
【0253】
第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、第2固定磁性層35c(強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1)の材料は、図1に示された磁気検出素子と同じであるので説明を省略する。
【0254】
多層膜T7の下層には、基板(図示せず)上に、アルミナなどの絶縁性材料からなる下地層(図示せず)を介して、下部シールド層31、下部ギャップ層32が成膜されている。
【0255】
なお、下部シールド層31、下部ギャップ層32、シード層33、反強磁性層34、非磁性材料層36、フリー磁性層37及び上部ギャップ層44は、図1の磁気検出素子と同等の構成及び材質であるので、説明を省略する。また、上部ギャップ層44上には、磁性材料からなる図示しない上部シールド層が形成されている。
【0256】
図9に示される本実施の形態の磁気検出素子は、第1フリー磁性層37c上に、第2の反強磁性層120が積層され、第1フリー磁性層37cの磁化が、第2の反強磁性層120との間の交換異方性磁界によってX方向に揃えられる、いわゆるエクスチェンジバイアス方式の磁気検出素子である。
【0257】
第1フリー磁性層37cの磁化方向が図示X方向を向くと、第2フリー磁性層37aは磁化方向が反平行となるフェリ磁性状態となり、フリー磁性層37全体の磁化方向が一定方向に揃えられる。
【0258】
このように、本実施の形態でもフリー磁性層37はシンセティックフェリフリー状態になっている。
【0259】
また、固定磁性層35全体の磁化方向は、反強磁性層34との間の交換異方性磁界によって図示Y方向にそろえられている。
【0260】
第2の反強磁性層120は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Osのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成する。
【0261】
第2の反強磁性層120を形成するための、前記PtMn合金及び前記X−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。さらに、前記Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
なお、第2反強磁性層120の間隔寸法がトラック幅寸法に対応する。
【0262】
本実施の形態の磁気検出素子では、磁気検出素子の形成時に設定されたトラック幅(光学的トラック幅)の領域に不感領域が生じないので、高記録密度化に対応するために磁気検出素子の光学的トラック幅を小さくしていった場合の再生出力の低下を抑えることができる。
【0263】
さらに、本実施の形態では磁気検出素子の側端面S,Sがトラック幅方向に対して垂直となるように形成されることが可能なので、フリー磁性層37のトラック幅方向長さのバラつきを抑えることができる。
【0264】
第1フリー磁性層37c上であって、第2の反強磁性層120にはさまれる領域には、バックド層B1及び保護層38が順次積層されている。
【0265】
バックド層B1は図4に示されたバックド層B1と同様の材料を用いて形成され、バックド層38と同様にスピンフィルター効果を有する。
【0266】
多層膜T7の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層121が積層されている。第1絶縁層121は、多層膜T7に対向する側端面121aの上端縁121a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aと重なる位置に形成されている。第1絶縁層121は、非磁性材料層36よりも下側に形成されている。
第1絶縁層121の上には、電極層122が積層されている。
【0267】
本実施の形態でも、第1絶縁層121が形成されているために、電極層122から供給されるセンス電流が、鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する反対側、すなわち、固定磁性層35の強磁性材料層35c1、非磁性中間層35b、第1固定磁性層35a、反強磁性層34、及びシード層33に分流することを防ぐことができる。
【0268】
また、非磁性材料層36から固定磁性層35に向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層S1で鏡面反射させられる。
【0269】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0270】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【0271】
図1に示された磁気検出素子の製造方法について説明する。
図10に示されるように下部ギャップ31上に下地層32及びシード層33を介して反強磁性層34を積層する。さらに第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁性材料層35c1をスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置中で連続成膜する。
【0272】
次に、強磁性材料層35c1上に、組成式がCoO、Co−Fe−O、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される材料から選択されるいずれか1種または2種以上を用いて鏡面反射層S1を成膜する。
【0273】
鏡面反射層S1を、例えばCo−Fe−Oを用いて形成するときには、例えばターゲットとしてCoFeで形成されたターゲットを使用する。前記ターゲットにはO(酸素)が含まれていないので、スパッタで形成される鏡面反射層S1内に酸素を含有させるために、スパッタ装置内にArガス以外にOガスを導入し、反応性スパッタ法によってCo−Fe−O膜を成膜する。
【0274】
この製造方法ではCo−Fe−Oターゲット形成のとき、Feの含有量をCoの含有量との比のみで調整することができる。
【0275】
また本発明では上記した製造方法に限らず、ターゲットとして予め組成比が所定範囲内に調整されたCo−Fe−Oからなる焼結ターゲットを形成してもよい。この場合、導入ガスとしては不活性なArガスのみでもよいし、あるいはOガスを導入して、Oの組成比を適切に調整してもよい。
【0276】
または、Feの含有量をCoの含有量との比で調整したCo−Feターゲットを形成し、DCスパッタ法などのスパッタ法によって、強磁性材料層34上にCo−Fe膜を成膜し、このCo−Fe膜を酸化させてCo−Fe−O膜を得ることもできる。
【0277】
Co−Fe膜を酸化させる方法として、Oガス中で自然酸化させる方法、Oプラズマ中で酸化させる方法、Oプラズマ中からOラジカルを引出し、このOラジカル中で酸化させる方法を使用することができる。
【0278】
特に、Oラジカル中で酸化させる方法は酸化速度を適切に調節することが容易であり、Co−Fe膜を均一に酸化させることが容易になるので好ましい。
【0279】
Co−Fe膜を酸化させてCo−Fe−O膜を得る方法では、Co−Feターゲット形成のとき、Feの含有量をCoの含有量との比のみで調整することができる。
【0280】
あるいは、気相成長法(CVD法)によって、Co−Fe−O膜を成膜することもできる。
【0281】
鏡面反射層S1をCo−Fe−O以外のCoO、Fe−O、またはFe−M−O(ただし元素Mは、Hf、Zr、Ta、Ti、Mn、Co、Ni、Ba、Sr、Y、Gd、Cu、Znのうち少なくとも一種以上である)の組成式で示される材料を用いて形成するときにも、同様の方法を用いることができる。
【0282】
さらに、鏡面反射層S1上に、強磁性材料層35c1を積層してシンセティックフェリピンド型の固定磁性層35を形成する。
【0283】
さらに非磁性材料層36、強磁性材料層37a1、鏡面反射層S2、強磁性材料層37a1からなる第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、保護層38を積層することにより多層膜T1を形成する。
【0284】
多層膜T1の形成後、多層膜T1を磁場中熱処理にかけて、反強磁性層34と固定磁性層35との間に交換異方性磁界を生じさせる。
【0285】
次に、形成する磁気検出素子の光学トラック幅の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層R1を、多層膜T1上にパターン形成する。
【0286】
図10に示すように、レジスト層R1には、その下面に切り込み部R1a,R1aが形成されている。
【0287】
次に図11に示す工程では、エッチングにより多層膜T1の両側を削り込む。
本工程では、反強磁性層34の側面を完全に削り取っている。ただし、エッチングレート及びエッチング時間を制御し、反強磁性層34の側面を完全に削り取らず延出部34aが形成されるようにすると図5に示されたような磁気検出素子を得ることができる。
【0288】
さらに図12に示す工程では、多層膜T1の両側部であって下部ギャップ層32上に、第1絶縁層39を成膜する。第1絶縁層39は、多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aと重なるように成膜する。なお、第1絶縁層39は、非磁性材料層36よりも下側に形成される。
【0289】
第1絶縁層39の成膜は、異方性を有するイオンビームスパッタ法を用いて、下部ギャップ層32の表面に対する法線方向に対して角度θ1の方向から行った。ここで角度θ1は0°〜20°の範囲とした。
【0290】
なお、多層膜T1に対向する側端面39aの上端縁39a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側に位置するように第1絶縁層39を成膜してもよい。
【0291】
第1絶縁層39形成後、多層膜T1の側面に付着した第1絶縁層の材料をドライエッチングによって除去する。
【0292】
次に、図13に示す工程において、第1絶縁層39上に、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極層43を成膜する。本実施の形態では、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極層43を下部ギャップ層32の表面の法線方向(多層膜T1が形成される図示しない基板の面垂直方向)に対して角度θ2の方向からからスパッタ粒子を入射させた。ここで角度θ2は20°〜50°の範囲とした。
【0293】
本実施の形態では、ハードバイアス層41は多層膜T1と対向する側の側面41aの最上部41bが第2フリー磁性層37aの上面37a3と重なる高さ位置に形成される。ただし、ハードバイアス層41の側面41aが、固定磁性層35の側面、非磁性材料層36の側面、第2のフリー磁性層37a、非磁性中間層37b、及び第1フリー磁性層37cの側面と対向するようにしてもよい。
【0294】
本実施の形態では、ハードバイアス層41は図示X方向の静磁界を、主に第2のフリー磁性層37aに与える。従って、ハードバイアス層40から発生する図示X方向の静磁界によって、第1フリー磁性層37の磁化方向(図示X方向と逆向き)が乱されることを抑えることができる。
【0295】
さらに、レジスト層R1が除去され、多層膜T1の表面、及び電極層43の表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シールド(図示せず)が形成され、この上部シールド層が、無機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われることにより第1の実施の形態の磁気検出素子が形成される。
【0296】
なお、図3、図7、または図8に示される磁気検出素子のように、電極層43、84または117上に第2絶縁層50、85、または118を形成するときには、電極層43、84または117の成膜後、レジスト層R1を除去する前にレジスト層R1をマスクとして第2絶縁層50、85、または118を成膜する。
【0297】
なお、下部シールド層31、下部ギャップ層31、シード層32、反強磁性層34、固定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1)、非磁性材料層36、フリー磁性層37(拡散防止層37a1、強磁性材料層37a2、鏡面反射層S2、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37c)、保護層38、第1絶縁層39、バイアス下地層40、ハードバイアス層41、中間層42、電極層43、及び上部ギャップ層44は、前述した材料を用いて形成する。
【0298】
図6に示された磁気検出素子の製造方法について説明する。
まず、図10に示されるように下部ギャップ31上に下地層32及びシード層33を介して反強磁性層34を積層する。さらに第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1、強磁性材料層35c1、非磁性材料層36、強磁性材料層37a1、鏡面反射層S2、強磁性材料層37a1からなる第2フリー磁性層37a、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37cからなるシンセティックフェリフリー型のフリー磁性層37、保護層38をスパッタ法や蒸着法などの薄膜形成プロセスによって、同一真空成膜装置中で連続成膜して多層膜T1を形成する。
【0299】
さらに、形成される磁気抵抗効果素子の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆う、リフトオフ用レジスト層R1を、多層膜T1上に形成する。
【0300】
次に、図14に示されるように、リフトオフ用レジスト層R1に覆われていない領域の多層膜T1及び下部ギャップ層32の一部を、イオンミリングなどのミリング法によって削って除去する。
【0301】
次に、図15に示す工程では、下部ギャップ層32表面の法線方向(多層膜T1が形成される図示しない基板の面垂直方向)に対して第1のスパッタ粒子入射角度θ3を有するイオンビームスパッタ法を用いて、多層膜T1の両側部の下部ギャップ層32上から多層膜T1の両側面にかけて、第1絶縁層70を成膜する。ここで角度θ3は20°〜50°の範囲とした。
【0302】
次に、第1絶縁層70の多層膜T1に対向する側端面70aの上端縁70a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aより上側に位置するように第1絶縁層70の上端側をイオンミリングなどのドライエッチング法により削って除去する(図16)。このイオンミリングは、下部ギャップ層32表面の法線方向に対して前記θ3よりも大きな角度、例えば50°〜80°の入射角度で行われる。
【0303】
第1絶縁層70の多層膜T1の側面に接している突出部70a以外の、下部ギャップ層32表面に対して平行に重なっている平坦部70dは、下部ギャップ層32の一部になる。
【0304】
なお、側端面70aの上端縁70a1が鏡面反射層S1の非磁性材料層36に対向する面と反対側の面S1aに重なる位置に第1絶縁層70を形成してもよい。第1絶縁層70形成後、多層膜T1の側面に付着した第1絶縁層の材料をドライエッチングによって除去する。
【0305】
次に、下部ギャップ層32表面の法線方向(多層膜T1が形成される図示しない基板の面垂直方向)に対して第1のスパッタ粒子入射角度θ3よりも小さい第2のスパッタ粒子入射角度θ4を有するイオンビームスパッタ法を用いて、第1絶縁層70上にハードバイアス層72、中間層73及び電極層74を形成する(図17)。ここで角度θ4は20°〜40°である。
【0306】
さらに、レジスト層R1が除去され、多層膜T1の表面、及び電極層74の表面に上部ギャップ層44が成膜され、上部ギャップ層44上には上部シールド(図示せず)が形成され、この上部シールド層が、無機絶縁材料からなる図示しない保護層によって覆われることにより図6に示された磁気検出素子が形成される。
【0307】
なお、下部シールド層31、下部ギャップ層32、シード層33、反強磁性層34、固定磁性層35(第1固定磁性層35a、非磁性中間層35b、強磁性材料層35c1、鏡面反射層S1)、非磁性材料層36、フリー磁性層37(拡散防止層37a1、強磁性材料層37a2、鏡面反射層S2、非磁性中間層37b、第1フリー磁性層37c)、保護層38、第1絶縁層70、バイアス下地層71、ハードバイアス層72、中間層73、電極層74、及び上部ギャップ層44は、前述した材料を用いて形成する。
【0308】
上述した製造方法を用いることにより、ハードバイアス層72の下面がバイアス下地層71を介して、前記磁気抵抗効果素子の下層であって下部シールド層31の上に形成されている下部ギャップ層32に対向している磁気検出素子を形成できる。
【0309】
すなわち、ハードバイアス層72の下層の第1絶縁層70の体積が小さくなり、磁気検出素子の放熱性が向上させることができる。
【0310】
また、フリー磁性層37、Fは単層あるいは2層(CoFe/NiFeなど)の強磁性材料層として形成されてもよい。この場合、ハードバイアス層41、72、83、115、60はフリー磁性層37、Fの両側端面の全部に対向することが好ましい。
【0311】
また、固定磁性層35、Pは単層あるいは2層(CoFe/NiFeなど)の強磁性材料層として形成されてもよい。
【0312】
また鏡面反射層S1、S2、S3、S4はAl、Al−Q−O(Qは、B,Si、N,Ti,V,Mn,Fe,Co,Niから選択される一種以上の元素)、R−O(RはTi,V,Cr,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta.Wから選択される一種以上)などの絶縁酸化物によって形成してもよい。この場合、鏡面反射層S1、S2、S3、S4の上下に積層される強磁性材料からなる層は、反強磁性的に結合して、磁化方向が反平行になる。
【0313】
また、鏡面反射層S1、S2、S3、S4をα−Fe、NiOなどの反強磁性材料によって形成してもよい。
【0314】
なお、本発明の磁気検出素子に重ねて記録用のインダクティブヘッドが形成されてもよい。
【0315】
【発明の効果】
以上、詳細に説明した本発明によれば、前記固定磁性層中絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成されている。
【0316】
また、本発明では、前記多層膜の両側部には、第1絶縁層が形成され、前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側に位置するように形成されるとともに、前記非磁性材料層よりも下側に形成され、前記第1絶縁層の上層電極層が形成されている。
【0317】
前記第1絶縁層形成されているために、前記電極層から供給されるセンス電流が、前記鏡面反射層の前記非磁性材料層に対向する反対側に分流することを防ぐことができる。
【0318】
さらに、前記非磁性材料層から前記固定磁性層向って流れる伝導電子は、前記鏡面反射層で反射させられる。
【0319】
従って、本発明の磁気検出素子では、センス電流を非磁性材料層周辺に集中して流すことができ、磁気抵抗変化率を向上させて磁気検出素子の磁気検出感度を向上させることができる。
【0320】
また、センス電流を効率よく磁気の検出に用いることができるので素子の低消費電力化を図ることができ、また発熱量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図3】本発明の第3の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図4】本発明の第4の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図5】参考例の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図6】本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図7】参考例の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図8】本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図9】本発明の第の実施の形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【図10】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図11】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図12】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図13】図1に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図14】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図15】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図16】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図17】図6に示された磁気検出素子の製造方法の一工程図、
【図18】図1に示された磁気検出素子における鏡面反射効果を説明するための説明図、
【図19】従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側からみた断面図、
【符号の説明】
33 シード層
34 反強磁性層
35a 第1固定磁性層
35b 非磁性中間層
35c 第2固定磁性層
35 固定磁性層
35c1 強磁性材料層
S1,S2,S3 鏡面反射層
36 非磁性材料層
37a 第2フリー磁性層
37b 非磁性中間層
37c 第1フリー磁性層
37 フリー磁性層37
38 保護層
39、70、113、121 第1絶縁層
50、61、85、118 第2絶縁層
41、60、72、82、115 ハードバイアス層
120 第2の反強磁性層
43、74、84、117、122、 電極層
e1 アップスピン電子
e2 ダウンスピン電子

Claims (13)

  1. 基板上に、下から反強磁性層、前記反強磁性層との交換結合磁界により磁化方向が固定される固定磁性層、非磁性材料層、及び磁化が外部磁界に対し変動するフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を有する磁気検出素子において、
    前記固定磁性層中に、絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層が形成されており、
    前記多層膜の両側部には、第1絶縁層が形成され、前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側に位置するように形成されるとともに、前記非磁性材料層よりも下側に形成され、
    記第1絶縁層の上層電極層が形成されていることを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記第1絶縁層の上層、前記フリー磁性層の磁化方向を前記固定磁性層の磁化方向と交叉する方向へ揃えるためのバイアス層が形成されている請求項1に記載の磁気検出素子。
  3. 前記フリー磁性層の側端面の少なくとも一部が、前記バイアス層の側端面と対向している請求項2に記載の磁気検出素子。
  4. 前記バイアス層または前記電極層の下面がバイアス下地層を介してまたは直接に、前記多層膜の下層に形成された下部ギャップ層に対向している請求項2または3に記載の磁気検出素子。
  5. 前記バイアス層が前記電極層を兼ねている請求項2ないし4のいずれかに記載の磁気検出素子。
  6. 前記多層膜の下層には下部ギャップ層が形成され、前記下部ギャップ層から前記多層膜の側端面に接する突出形状の前記第1絶縁層が形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の磁気検出素子。
  7. 前記第1絶縁層、AlO、Al、SiO、Ta、TiO、AlN、AlSiN、TiN、SiN、Si、NiO、WO、WO、BN、CrN、SiON、AlSiOから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成される請求項1ないしのいずれかに記載の磁気検出素子。
  8. 前記第1絶縁層、AlSiO、SiON、AlNから選択されるいずれか1種または2種以上によって形成される請求項に記載の磁気検出素子。
  9. 前記フリー磁性層中に、絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成される請求項1ないし8のいずれかに記載の磁気検出素子。
  10. 前記フリー磁性層上に、絶縁酸化物からなる鏡面反射層が形成される請求項1ないし9のいずれかに記載の磁気検出素子。
  11. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (a)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、下から、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を形成し、前記固定磁性層の形成の際、前記固定磁性層中絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層を形成する工程と、
    (b)形成される磁気検出素子の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフトオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層膜を除去する工程と、
    (c)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層上から前記多層膜の両側面にかけて第1絶縁層を形成し、このとき前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側で且つ前記非磁性材料層よりも下側に形成する工程と、
    (d)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも大きい第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記 絶縁層上にバイアス層及び電極層を形成する工程と、
    (e)前記リフトオフ用のレジスト層を除去する工程、
  12. 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法。
    (f)絶縁性材料からなる下部ギャップ層上に、下から、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、及びフリー磁性層の順に積層された構造を含む多層膜を形成し、前記固定磁性層の形成の際、前記固定磁性層中絶縁酸化物からなる固定磁性層中鏡面反射層を形成する工程と、
    (g)形成される磁気検出素子の光学トラック幅に相当する幅寸法の領域を覆うリフトオフ用のレジスト層を前記多層膜上に形成し、前記リフトオフ用のレジスト層に覆われていない領域の前記多層膜及び前記下部ギャップ層の一部を除去する工程と、
    (h)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して第1のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記下部ギャップ層上から前記多層膜の両側面にかけて第1絶縁層を形成する工程と、
    (i)前記第1絶縁層の前記多層膜に対向する側端面の上端縁が、前記固定磁性層中鏡面反射層の面に重なる位置に又は前記面より上側で且つ前記非磁性材料層よりも下側に位置するように、前記第1絶縁層の上端側を除去する工程と、
    (j)前記下部ギャップ層表面の法線方向に対して前記第1のスパッタ粒子入射角度よりも小さい第2のスパッタ粒子入射角度を有するイオンビームスパッタ法を用いて、前記第1絶縁層上にバイアス層及び電極層を形成する工程と、
    (k)前記リフトオフ用のレジスト層を除去する工程、
  13. 前記(h)の工程において、前記第1絶縁層を、前記多層膜の側面に接している突出部及び前記下部ギャップ層表面に対して平行に重なっている平坦部を有するものとして形成する請求項12に記載の磁気検出素子の製造方法。
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