JP3763645B2 - 光ファイバ配線装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバの余長部を整理して収納すると共に該光ファイバを分配接続する光ファイバ配線装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図２は、従来の光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
この光ファイバ配線装置では、背面パネル１１と該パネル１１に固定された２つの支柱１２ａ，１２ｂを有している。支柱１２ａにより、例えば６本のアウタガイド１３ａ〜１３ｆの一端が支持されている。支柱１２ｂにより、例えば６本のアウタガイド１４ａ〜１４ｆの一端が支持されている。各アウタガイド１３ａ〜１３ｆと各アウタガイド１４ａ〜１４ｆとは、ｘ方向に所定間隔を持って対向し、それらがｘ方向に垂直なｙ方向に多段に配列されている。アウタガイド１３ａとアウタガイド１４ａとが一段目のアウタガイド対を形成している。同様に各アウタガイド１３ｂ〜１３ｆとそれらに対向するアウタガイド１４ｂ〜１４ｆとで、２〜６段目のアウタガイド対が形成されている。
各アウタガイド１３ａ〜１３ｆはそれぞれ筒状であり、該各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの他端には、摺動自在に棒状の第１のインナガイド１５ａ〜１５ｆがそれぞれ嵌入されている。同様に各アウタガイド１４ａ〜１４ｆも、それぞれ筒状であり、該各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの他端には、摺動自在に棒状の第２のインナガイド１６ａ〜１６ｆがそれぞれ嵌入されている。なお、各インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆと各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆとの間には、該インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆが抜け落ちないように、適宜の手段が講じられている。
【０００３】
簡単化のため図２では１段で示しているが、６段のアウタガイド対に対応して６段の収納トレイ１７が用意されている。各収納トレイ１７は、各段のアウタガイド対の方向、つまり、ｘ，ｙ方向に垂直なｚ方向に出し入れ可能にスライドするものである。収納トレイ１７は矩形の底面板を有している。収納トレイ１７の底面板の第１の側部であるアウタガイド１３ａ〜１３ｆ側の側部１８には、支柱１２ａ側の側壁１９ａと、第１の光ファイバＦを引込むために解放された引込み口１９ｂとが配設されている。収納トレイ１７の底面板の第２の側部であるアウタガイド１４ａ〜１４ｆ側の側部２０には、支柱１２ｂ側の側壁２１ａと、第２の光ファイバＦを引込むために解放された引込み口２１ｂが配設されている。収納トレイ１７の底面板の背面パネル１１側の側部には背面壁２２が形成されている。収納トレイ１７の背面パネル１１側と対向する側部には、前面壁２３が形成されている。背面壁２２には背面パネル１１に磁気力等で吸着する吸着部材２４が取付けられている。この吸着部材２４は、収納トレイ１７が不本意にスライドすることを防止する機能を有している。前面壁２３には、収納トレイ１７を人為的に出し入れするための切欠部２５ａ，２５ｂが形成されている。
【０００４】
収納トレイ１７の底面板上には、光ファイバＦの余長部を収納するための収納部２６が設けられている。収納部２６には、光ファイバＦの余長部が許容最小曲率以上の径をもって当接可能なＲガイド２７と、光ファイバＦの余長部を止めるため複数の心線止め治具２８と、心線保持具２９等が配設されている。また、収納トレイ１７の底面板上には、コネクタ接続された光ファイバＦの接続部を収容するためのコネクタホルダ３０と、融着接続された光ファイバＦの接続部を収容するためのスリーブホルダ３１とが適宜搭載されている。
前面壁２３の両側には、連結片３２ａ，３２ｂが配置されている。連結片３２ａ，３２ｂは、捩子３３ａ，３３ｂで各段のインナガイド対１５ａ，１６ａ、インナガイド対１５ｂ，１６ｂ、インナガイド対１５ｃ，１６ｃ、インナガイド対１５ｄ，１６ｄ、インナガイド対１５ｅ，１６ｅ、またはインナガイド対１５ｆ，１６ｆの先端に係止されて、収納トレイ１７をそれらインナガイド対に固定する機能を有している。
側壁１９ａの外面には、スライダ３４が取付けられ、側壁２１ａの外面には、スライダ３５が取付けられている。スライダ３４は、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆに対して収納トレイ１７を摺動自在に支えるものであり、スライダ３５は、各アウタガイド１４ａ〜１４ｆに対して収納トレイ１７を摺動自在に支えるものである。
【０００５】
以上のような構成の光ファイバ配線装置の使用方法を説明する。
光ファイバ配線装置は、光ファイバＦの余長を収納トレイ１７を用いて整理して収納したり、収納トレイ１７上で該光ファイバＦを分配して接続するものである。収納トレイ１７を引出した状態で、光ファイバＦを収納トレイ１７に引込む。各引込み口１９ｂ，２１ｂから引込まれる光ファイバＦは、例えばアウタガイド１３ａ，１３ｂまたはインナガイド１５ａ，１５ｂ、或いはアウタガイド１４ａ，１４ｂまたはインナガイド１６ａ，１６ｂに懸架される。
収納トレイ１７が引出された状態であっても、スライダ３４がアウタガイド１３ａ〜１３ｆ上に、及びスライダ３５がアウタガイド１４ａ〜１４ｆ上に位置するように、該スライダ３４，３５は、収納トレイ１７の支柱１２ａ，１２ｂに近い側に取付けられている。もし、支柱１２ａ，１２ｂから遠い位置に取付けられていると、スライダ３４，３５がアウタガイド対から外れ、再度収納トレイ１７を支柱１２ａ，１２ｂ側に押し込んで挿着することが困難になる。この問題を回避するために、アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆを長めに作成しておくと、収納トレイ１７を挿着した状態での、光ファイバ配線装置の外形がｚ方向に大きくなってしまうという問題がある。
収納トレイ１７に引込まれた光ファイバＦは、余長部が収納部２６内のＲガイド２７と複数の心線止め治具２８とに巻回され、さらに心線保持具２９に保持される。このようにして光ファイバＦを把持する。ここで、光ファイバＦ同士を接続する場合、その接続部のコネクタ或いはスリーブが、コネクタホルダ３０或いはスリーブホルダ３１で保持される。光ファイバＦの整理、或いは接続が終了すると、収納トレイ１７を光ファイバ配線装置内に押して挿着する。このようにして、光ファイバの配線及び整理を行う。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の光ファイバ配線装置には、次のような課題があった。
多数の光ファイバに対する余長の整理等を行う場合には、複数段の収納トレイ１７が利用される。よって、収納トレイ１７を挿着した状態では、多数条の光ファイバＦが各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの間、及び各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの間から懸架される。このとき、任意の収納トレイ１７をスライドさせて引出したり、押し戻して挿着すると、スライダ３４，３５に光ファイバＦが引っ掛かり、光ファイバＦに損傷や断線が発生する。一方、光ファイバ配線装置の外形を小さくするために、スライダ３４，３５を、収納トレイ１７の挿着時に支柱１２ａ，１２ｂに当接するように配置した場合には、スライダ３４，３５と支柱１２ａ，１２ｂの間に光ファイバＦが挟まれて押圧される。光ファイバＦは押圧されると伝送特性が劣化する。また、その圧力が強ければ、光ファイバＦに損傷や断線が発生する。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明のうちの第１の発明は、ｘ方向に所定間隔を持って対向する筒状の第１及び第２のアウタガイドからなるアウタガイド対の一端が該ｘ方向に対して垂直なｙ方向に複数段所定間隔を持って支持体に支持された複数段のアウタガイド対と、前記各段のアウタガイド対の他端から摺動自在に対を成してそれぞれ嵌入された棒状の第１及び第２のインナガイドからなる複数段のインナガイド対と、前記ｘ方向に所定の間隔を持って対向する第１及び第２の側部を有し、前記各段の第１のアウタガイド及び第１のインナガイドに懸架されて該第１の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第１の光ファイバと、前記各段の第２のアウタガイド及び第２のインナガイドに懸架されて該第２の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第２の光ファイバとを、余長を持たせて収納する複数段の収納トレイと、前記各段の収納トレイを前記各段のインナガイド対にそれぞれ固定する複数の固定手段と、前記各段の収納トレイにおける第１の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第１のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第１の摺動手段と、前記各段の収納トレイにおける第２の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第２のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第２の摺動手段とを、備えた光ファイバ配線装置において、前記各第１及び第の摺動手段を次のように構成している。
【０００８】
前記各第１の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第１の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第１のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第１のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、前記各第２の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第２の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第２のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接している。
さらに、前記各第１の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第１の光ファイバの当接時に、該第１の光ファイバを前記第１のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成し、前記各第２の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第２の光ファイバの当接時に、該第２の光ファイバを前記第２のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成している。
【０００９】
第２の発明は、第１の発明と同様の光ファイバ配線装置において、前記各第１の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第１の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成し、前記各第２の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第２の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成している。
【００１０】
第１の発明によれば、以上のように光ファイバ配線装置を構成したので、第１及び第２の摺動手段における支持部の底面全体と第１及び第２のアウタガイドとの間の間隙がなくなり、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させても、第１及び第２の光ファイバの食い込みが発生しない。しかも、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させたとき、第１及び第２の光ファイブが第１及び第２の摺動手段の支持部に当接しても、これらの各支持部の外縁に形成された傾斜部により、該第１及び第２の光ファイバが、第１及び第２のアウタガイドまたは第１及び第２のインナガイドから離れる方向に浮揚され、第１及び第２の光ファイバが、第１及び第２の摺動手段に引っ掛かることが防止される。
【００１１】
第２の発明によれば、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させたとき、第１及び第２の光ファイバを引掛けた状態で第１及び第２の摺動手段の支持部が支持体に当接しても、該第１及び第２の光ファイバが、退避部に収容されて押圧されない。従って、前記課題を解決できるのである。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図１は、本発明の実施形態を示す光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図であり、従来の図２中の要素と共通する要素には、共通の符号が付されている。
この光ファイバ配線装置は、複数段の収納トレイ１７に取付けられた第１及び第２の摺動手段であるスライダの構造を改良し、該収納トレイ１７の引き出しと挿着による光ファイバの損傷等を防止する構成であり、スライダ以外の各部の構造は従来の光ファイバ配線装置と同様である。
この光ファイバ配線装置では、背面パネル１１と該パネル１１に固定された２つの支柱１２ａ，１２ｂとで全体を支える支持体が構成されている。支柱１２ａによって、ｙ方向に並んだ第１のアウタガイド１３ａ〜１３ｆの一端が支持されている。支柱１２ｂにより、ｙ方向に並んだ６本の第２のアウタガイド１４ａ〜１４ｆの一端が支持されている。各アウタガイド１３ａ〜〜１３ｆと各アウタガイド１４ａ〜１４ｆは、ｘ方向に一定間隔を持って対向している。
対向するアウタガイド１３ａとアウタガイド１４ａとが、一段目のアウタガイド対を形成している。同様に各アウタガイド１３ｂ〜１３ｆとそれらに対向するアウタガイド１４ｂ〜１４ｆとで、２〜６段目のアウタガイド対が形成されている。各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの他端に、摺動自在に棒状の第１のインナガイド１５ａ〜１５ｆがそれぞれ嵌入され、各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの他端に、摺動自在に棒状の第２のインナガイド１６ａ〜１６ｆがそれぞれ嵌入されている。各インナガイド１５ａ〜１５ｆと各インナガイド１６ａ〜１６ｆとが、各段のインナガイド対を構成している。各インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆと各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆとの間には、該インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆが抜け落ちないように、適宜の手段が講じられている。
【００１３】
６段のアウタガイド対に対応して図２と同様の構成の６段の収納トレイ１７が用意されている。収納トレイ１７の矩形の底面板の第１の側部であるアウタガイド１３ａ〜１３ｆ側の側部１８に設けられた支柱１２ａ側の側壁１９ａに、この実施形態の特徴である第１の摺動手段のスライダ４０ａが取付けられ、第２の側部であるアウタガイド１４ａ〜１４ｆ側の側部２０に設けられた支柱１２ｂ側の側壁２１ａに、第２の摺動手段のスライダ４０ｂが取付けられている。前面壁２３の両側に設けられた固定手段である連結片３２ａ，３２ｂによって、各段のインナガイド対１５ａ，１６ａ、インナガイド対１５ｂ，１６ｂ、インナガイド対１５ｃ，１６ｃ、インナガイド対１５ｄ，１６ｄ、インナガイド対１５ｅ，１６ｅ、またはインナガイド対１５ｆ，１６ｆに、各段の収納トレイ１７が固定されている。
図３（ａ），（ｂ）は、図１中のスライダ４０ａ，４０ｂの形状を示す構造図であり、同図（ａ）は正面図、同図（ｂ）は側面図を示している。
【００１４】
スライダ４０ａ，４０ｂは同様の構造であり、取付け部４１と支持部４２とが一体になって構成されている。取付け部４１は板状であり、各スライダ４０ａ，４０ｂを図１中の側壁１９ａ，２１ａに捩子で係止するための取付け穴４１ａ，４１ｂが、開孔されている。支持部４２は舌状をなし、この舌状の根元部４２ａが取付け部４１に接し、該舌状の先端部がアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの軸方向（ｚ方向）に垂直なｘ方向に該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に沿って突出している。支持部４２の底部４２ｂの全体には、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する曲面４２ｃを有している。曲面４２ｃの先端部は、ｘ方向においてアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外径直径より短く形成されている。
支持部４２の側部４２ｄから頭部４２ｅにかけての支持部４２の外縁４２ｆには、円弧状の丸み４２ｇが形成されている。この丸み４２ｇは、テンションフリーの光ファイバＦが当接したときに、その接点において当接した光ファイバＦに対して接線方向の傾斜角を形成し、該光ファイバＦを接線に沿って移動させる機能を有している。即ち、丸み４２ｇは、光ファイバＦをアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆから離れる方向に浮揚する機能を有している。さらに、この丸み４２ｇは、支柱１２ａ，１２ｂに支持部４２が当接した場合に、光ファイバＦを収容する退避部４２ｈを形成することにもなる。
【００１５】
図４は、図３の摺動状態を示す図である。
スライダ４０ａ，４０ｂは、支持部４２の底部４２ｂがアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｅに係合され、該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｅの方向に沿って、つまり、ｚ方向に摺動する。
次に、図１の光ファイバ配線装置の使用方法を説明する。
この光ファイバ配線装置も、光ファイバＦの余長を収納トレイ１７を用いて整理して収納したり、収納トレイ１７上で該光ファイバＦを分配して接続するものである。装置の導入或いはメンテナンスに際し、収納トレイ１７をスライドさせて引出した状態で、光ファイバＦを収納トレイ１７に引込む。引込まれた光ファイバＦは、各アウタガイド１３ａ〜１３ｂの間、各アウタガイド１４ａ〜１４ｂの間、各インナガイド１５ａ〜１５ｂの間、または各インナガイド１５ａ〜１５ｂの間に懸架される。収納トレイ１７に引込まれた光ファイバＦは、従来と同様に余長部等が収納されて整理される。整理や接続を終了すると、収納トレイ１７を光ファイバ配線装置内に押して挿着する。収納トレイ１７が挿着されると、該収納トレイ１７は、吸着部材２４によって背面パネル１１に軽く固定され、以後の不本意なスライドが防止される。
【００１６】
図５は、光ファイバの食込みを示す図である。
各段の収納トレイ１７を引出したり挿着する場合、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ上をスライダ４０ａ，４０ｂが、図４のように摺動することになる。従来の光ファイバ配線装置では、図５のようにスライダ３４，３５の支持部３４ａ，３５ａがｘ方向に突出し、この先端部３４ｂ，３５ｂがアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に沿って下方向（ｙ方向）
に屈曲して、該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆのｚ方向の中心軸よりも下方向に延びている。そのため、スライダ３４，３５の支持部３４ａ，３５ａの先端部３４ｂ，３５ｂと、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面（図５の左下外周面）との間に間隔が生じ、スライダ３４，３５の摺動時に光ファイバＦが該間隔に食い込み、更なるスライダ３４，３５の摺動で光ファイバＦに断線等の損傷を起たすことがあった。
ところが、本実施形態のスライダ４０ａ，４０ｂでは、支持部４２の底部全体の曲面４２ｃをアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する構造にしたことで、支持部４２の先端部とアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆとの間に間隔を生ずることを防ぐことができることから、光ファイバＦを引掛けることがなくなり、さらに、光ファイバＦの食い込みも発生しない。
【００１７】
図６は、光ファイバと支持部４２の関係を示す図である。
各段の収納トレイ１７を引出したり挿着する際、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ上をスライダ４０ａ，４０ｂが摺動し、既に懸架されている光ファイバＦが、移動する支持部４２に当接することがある。例えば、図６の位置Ｐ１で当接した光ファイバＦは、丸み４２ｇの接線方向に浮揚されて位置Ｐ２に移動する。つまり、テンションフリーに懸架された光ファイバＦは、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ側から離れる方向に浮揚され、支持部４２での引っ掛かりが発生しない。
また、各段の収納トレイ１７を挿着する際、スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２が支柱１２ａ，１２ｂに当接すると、丸み４２ｇは、支柱１２ａ，１２ｂとの間に間隙Ｋ２を作る。この間隙Ｋ２は、光ファイバＦの退避部４２ｈであり、スライダ４０ａ，４０ｂの摺動で該スライダ４０ａ，４０ｂに押された光ファイバＦは退避部４２ｈに収容され、支柱１２ａ，１２ｂとの間で押圧されることはない。
以上のように、本実施形態の光ファイバ配線装置は、従来では得られない次の（１）〜（３）のような利点を有している。
【００１８】
（１） スライダ４０ａ，４０ｂにおける支持部４２の底部全体の曲面４２ｃを、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する構造にしたので、支持部４２の先端部とアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆとの間に間隔を生じることを防ぐことができることから、光ファイバＦを引掛けることがなくなり、さらに、光ファイバＦの食込みによる事故も防止できる。よって光ファイバ配線装置のメンテナンス等が合理化できる。
（２） 各スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２の外縁４２ｆに、丸み４２ｇを形成したので、当接した光ファイバＦが浮揚され、スライダ４０ａ，４０ｂの移動で引掛けて、光ファイバＦを損傷したり断線させることがなくなる。
（３） 各スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２の外縁４２ｆに、退避部４２ｈを作る丸み４２ｇを形成したので、支持部４２が支柱１２ａ，１２ｂに当接する場合でも、光ファイバＦが押圧されず、光ファイバＦの特性劣化が防止できると共に、光ファイバＦの損傷と断線を防止できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
【００１９】
（ i ） 収納トレイ１７に搭載する各治具の種類及び配置は、図１及び図２に限定されず、収納する光ファイバＦの種類に応じて変更することが可能である。
（ ii) 支持部４０の外縁４２ｆに、丸み４２ｇを形成して実質的な傾斜角と退避部４２ｈを作成しているが、丸み４２ｇに限定されず、例えば、外縁４２ｆにテーパーを形成しても同様に、実質的な傾斜角と退避部４２ｈを作成できる。
（ iii ） 各スライダ４０ａ，４０ｂは取付け部４１を有し、該取付け部４１で側壁１９ａ，２１ａに取付けられる構成であるが、支持部４２を側壁１９ａ，２１ａと一体に構成すれば、取付け部４１は省略できる。
（ iv ） 図７は、スライダの変形例を示す側面図である。
各スライダ４０ａ，４０ｂは、それぞれ一つの支持部４２を有し、片持ちでアウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｂに対して収納トレイ１７を支えているが、図７のように、支持部４２と同一形状を有する支持部４３を対向させて設け、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｂを両持ちにする構成でもよい。
【００２０】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、第１の発明によれば、各第１、第２の摺動手段における支持部の底面全体を、第１、第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接する構造にしたので、第１、第２の光ファイバの食込みが防止されて損傷がなくなる。よって、メンテナンス等の合理化が可能になる。しかも、各第１、第２の摺動手段の支持部の外縁に、第１、第２の光ファイバを浮揚する傾斜角をそれぞれ形成したので、該第１、第２の摺動手段が摺動しても、第１、第２の光ファイブが引掛からなくなり、それらの損傷と断線とが防止され、メンテナンス等の作業効率が改善される。
第２の発明によれば、各第１、第２の摺動手段の支持部における支持体側の側部に、退避部をそれぞれ形成したので、摺動手段の支持部が支持体に当接しても、光ファイバが押圧されず、損傷と断線とが防止され、メンテナンス等の作業効率が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態を示す光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
【図２】従来の光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
【図３】図１中のスライダ４０ａ，４０ｂの形状を示す構造図である。
【図４】図３の摺動状態を示す図である。
【図５】 光ファイバの食込みを示す図である。
【図６】光ファイバと支持部４２の関係を示す図である。
【図７】スライダの変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
１２ａ，１２ｂ 支柱（支持体）
１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆ 第１及び第２のアウタガイド
１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆ 第１及び第２のインナガイド
１７ 収納トレイ
３２ａ，３２ｂ 連結片（固定手段）
４０ａ，４０ｂ スライダ（第１及び第２の摺動手段）
４１ 取付け部
４２ 支持部
４２ｂ 支持部の底部
４２ｃ 摺接面
４２ｄ 支持部の側部
４２ｆ 外縁
４２ｇ 支持部に形成された丸み（傾斜角）
４２ｈ 退避部
Ｆ 光ファイバ
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ファイバの余長部を整理して収納すると共に該光ファイバを分配接続する光ファイバ配線装置に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
図２は、従来の光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
この光ファイバ配線装置では、背面パネル１１と該パネル１１に固定された２つの支柱１２ａ，１２ｂを有している。支柱１２ａにより、例えば６本のアウタガイド１３ａ〜１３ｆの一端が支持されている。支柱１２ｂにより、例えば６本のアウタガイド１４ａ〜１４ｆの一端が支持されている。各アウタガイド１３ａ〜１３ｆと各アウタガイド１４ａ〜１４ｆとは、ｘ方向に所定間隔を持って対向し、それらがｘ方向に垂直なｙ方向に多段に配列されている。アウタガイド１３ａとアウタガイド１４ａとが一段目のアウタガイド対を形成している。同様に各アウタガイド１３ｂ〜１３ｆとそれらに対向するアウタガイド１４ｂ〜１４ｆとで、２〜６段目のアウタガイド対が形成されている。
各アウタガイド１３ａ〜１３ｆはそれぞれ筒状であり、該各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの他端には、摺動自在に棒状の第１のインナガイド１５ａ〜１５ｆがそれぞれ嵌入されている。同様に各アウタガイド１４ａ〜１４ｆも、それぞれ筒状であり、該各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの他端には、摺動自在に棒状の第２のインナガイド１６ａ〜１６ｆがそれぞれ嵌入されている。なお、各インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆと各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆとの間には、該インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆが抜け落ちないように、適宜の手段が講じられている。
【０００３】
簡単化のため図２では１段で示しているが、６段のアウタガイド対に対応して６段の収納トレイ１７が用意されている。各収納トレイ１７は、各段のアウタガイド対の方向、つまり、ｘ，ｙ方向に垂直なｚ方向に出し入れ可能にスライドするものである。収納トレイ１７は矩形の底面板を有している。収納トレイ１７の底面板の第１の側部であるアウタガイド１３ａ〜１３ｆ側の側部１８には、支柱１２ａ側の側壁１９ａと、第１の光ファイバＦを引込むために解放された引込み口１９ｂとが配設されている。収納トレイ１７の底面板の第２の側部であるアウタガイド１４ａ〜１４ｆ側の側部２０には、支柱１２ｂ側の側壁２１ａと、第２の光ファイバＦを引込むために解放された引込み口２１ｂが配設されている。収納トレイ１７の底面板の背面パネル１１側の側部には背面壁２２が形成されている。収納トレイ１７の背面パネル１１側と対向する側部には、前面壁２３が形成されている。背面壁２２には背面パネル１１に磁気力等で吸着する吸着部材２４が取付けられている。この吸着部材２４は、収納トレイ１７が不本意にスライドすることを防止する機能を有している。前面壁２３には、収納トレイ１７を人為的に出し入れするための切欠部２５ａ，２５ｂが形成されている。
【０００４】
収納トレイ１７の底面板上には、光ファイバＦの余長部を収納するための収納部２６が設けられている。収納部２６には、光ファイバＦの余長部が許容最小曲率以上の径をもって当接可能なＲガイド２７と、光ファイバＦの余長部を止めるため複数の心線止め治具２８と、心線保持具２９等が配設されている。また、収納トレイ１７の底面板上には、コネクタ接続された光ファイバＦの接続部を収容するためのコネクタホルダ３０と、融着接続された光ファイバＦの接続部を収容するためのスリーブホルダ３１とが適宜搭載されている。
前面壁２３の両側には、連結片３２ａ，３２ｂが配置されている。連結片３２ａ，３２ｂは、捩子３３ａ，３３ｂで各段のインナガイド対１５ａ，１６ａ、インナガイド対１５ｂ，１６ｂ、インナガイド対１５ｃ，１６ｃ、インナガイド対１５ｄ，１６ｄ、インナガイド対１５ｅ，１６ｅ、またはインナガイド対１５ｆ，１６ｆの先端に係止されて、収納トレイ１７をそれらインナガイド対に固定する機能を有している。
側壁１９ａの外面には、スライダ３４が取付けられ、側壁２１ａの外面には、スライダ３５が取付けられている。スライダ３４は、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆに対して収納トレイ１７を摺動自在に支えるものであり、スライダ３５は、各アウタガイド１４ａ〜１４ｆに対して収納トレイ１７を摺動自在に支えるものである。
【０００５】
以上のような構成の光ファイバ配線装置の使用方法を説明する。
光ファイバ配線装置は、光ファイバＦの余長を収納トレイ１７を用いて整理して収納したり、収納トレイ１７上で該光ファイバＦを分配して接続するものである。収納トレイ１７を引出した状態で、光ファイバＦを収納トレイ１７に引込む。各引込み口１９ｂ，２１ｂから引込まれる光ファイバＦは、例えばアウタガイド１３ａ，１３ｂまたはインナガイド１５ａ，１５ｂ、或いはアウタガイド１４ａ，１４ｂまたはインナガイド１６ａ，１６ｂに懸架される。
収納トレイ１７が引出された状態であっても、スライダ３４がアウタガイド１３ａ〜１３ｆ上に、及びスライダ３５がアウタガイド１４ａ〜１４ｆ上に位置するように、該スライダ３４，３５は、収納トレイ１７の支柱１２ａ，１２ｂに近い側に取付けられている。もし、支柱１２ａ，１２ｂから遠い位置に取付けられていると、スライダ３４，３５がアウタガイド対から外れ、再度収納トレイ１７を支柱１２ａ，１２ｂ側に押し込んで挿着することが困難になる。この問題を回避するために、アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆを長めに作成しておくと、収納トレイ１７を挿着した状態での、光ファイバ配線装置の外形がｚ方向に大きくなってしまうという問題がある。
収納トレイ１７に引込まれた光ファイバＦは、余長部が収納部２６内のＲガイド２７と複数の心線止め治具２８とに巻回され、さらに心線保持具２９に保持される。このようにして光ファイバＦを把持する。ここで、光ファイバＦ同士を接続する場合、その接続部のコネクタ或いはスリーブが、コネクタホルダ３０或いはスリーブホルダ３１で保持される。光ファイバＦの整理、或いは接続が終了すると、収納トレイ１７を光ファイバ配線装置内に押して挿着する。このようにして、光ファイバの配線及び整理を行う。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の光ファイバ配線装置には、次のような課題があった。
多数の光ファイバに対する余長の整理等を行う場合には、複数段の収納トレイ１７が利用される。よって、収納トレイ１７を挿着した状態では、多数条の光ファイバＦが各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの間、及び各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの間から懸架される。このとき、任意の収納トレイ１７をスライドさせて引出したり、押し戻して挿着すると、スライダ３４，３５に光ファイバＦが引っ掛かり、光ファイバＦに損傷や断線が発生する。一方、光ファイバ配線装置の外形を小さくするために、スライダ３４，３５を、収納トレイ１７の挿着時に支柱１２ａ，１２ｂに当接するように配置した場合には、スライダ３４，３５と支柱１２ａ，１２ｂの間に光ファイバＦが挟まれて押圧される。光ファイバＦは押圧されると伝送特性が劣化する。また、その圧力が強ければ、光ファイバＦに損傷や断線が発生する。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明のうちの第１の発明は、ｘ方向に所定間隔を持って対向する筒状の第１及び第２のアウタガイドからなるアウタガイド対の一端が該ｘ方向に対して垂直なｙ方向に複数段所定間隔を持って支持体に支持された複数段のアウタガイド対と、前記各段のアウタガイド対の他端から摺動自在に対を成してそれぞれ嵌入された棒状の第１及び第２のインナガイドからなる複数段のインナガイド対と、前記ｘ方向に所定の間隔を持って対向する第１及び第２の側部を有し、前記各段の第１のアウタガイド及び第１のインナガイドに懸架されて該第１の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第１の光ファイバと、前記各段の第２のアウタガイド及び第２のインナガイドに懸架されて該第２の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第２の光ファイバとを、余長を持たせて収納する複数段の収納トレイと、前記各段の収納トレイを前記各段のインナガイド対にそれぞれ固定する複数の固定手段と、前記各段の収納トレイにおける第１の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第１のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第１の摺動手段と、前記各段の収納トレイにおける第２の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第２のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第２の摺動手段とを、備えた光ファイバ配線装置において、前記各第１及び第の摺動手段を次のように構成している。
【０００８】
前記各第１の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第１の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第１のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第１のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、前記各第２の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第２の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第２のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接している。
さらに、前記各第１の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第１の光ファイバの当接時に、該第１の光ファイバを前記第１のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成し、前記各第２の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第２の光ファイバの当接時に、該第２の光ファイバを前記第２のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成している。
【０００９】
第２の発明は、第１の発明と同様の光ファイバ配線装置において、前記各第１の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第１の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成し、前記各第２の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第２の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成している。
【００１０】
第１の発明によれば、以上のように光ファイバ配線装置を構成したので、第１及び第２の摺動手段における支持部の底面全体と第１及び第２のアウタガイドとの間の間隙がなくなり、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させても、第１及び第２の光ファイバの食い込みが発生しない。しかも、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させたとき、第１及び第２の光ファイブが第１及び第２の摺動手段の支持部に当接しても、これらの各支持部の外縁に形成された傾斜部により、該第１及び第２の光ファイバが、第１及び第２のアウタガイドまたは第１及び第２のインナガイドから離れる方向に浮揚され、第１及び第２の光ファイバが、第１及び第２の摺動手段に引っ掛かることが防止される。
【００１１】
第２の発明によれば、各段の収納トレイを支える第１及び第２の摺動手段を各段のインナガイド対の摺動と共に摺動させたとき、第１及び第２の光ファイバを引掛けた状態で第１及び第２の摺動手段の支持部が支持体に当接しても、該第１及び第２の光ファイバが、退避部に収容されて押圧されない。従って、前記課題を解決できるのである。
【００１２】
【発明の実施の形態】
図１は、本発明の実施形態を示す光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図であり、従来の図２中の要素と共通する要素には、共通の符号が付されている。
この光ファイバ配線装置は、複数段の収納トレイ１７に取付けられた第１及び第２の摺動手段であるスライダの構造を改良し、該収納トレイ１７の引き出しと挿着による光ファイバの損傷等を防止する構成であり、スライダ以外の各部の構造は従来の光ファイバ配線装置と同様である。
この光ファイバ配線装置では、背面パネル１１と該パネル１１に固定された２つの支柱１２ａ，１２ｂとで全体を支える支持体が構成されている。支柱１２ａによって、ｙ方向に並んだ第１のアウタガイド１３ａ〜１３ｆの一端が支持されている。支柱１２ｂにより、ｙ方向に並んだ６本の第２のアウタガイド１４ａ〜１４ｆの一端が支持されている。各アウタガイド１３ａ〜〜１３ｆと各アウタガイド１４ａ〜１４ｆは、ｘ方向に一定間隔を持って対向している。
対向するアウタガイド１３ａとアウタガイド１４ａとが、一段目のアウタガイド対を形成している。同様に各アウタガイド１３ｂ〜１３ｆとそれらに対向するアウタガイド１４ｂ〜１４ｆとで、２〜６段目のアウタガイド対が形成されている。各アウタガイド１３ａ〜１３ｆの他端に、摺動自在に棒状の第１のインナガイド１５ａ〜１５ｆがそれぞれ嵌入され、各アウタガイド１４ａ〜１４ｆの他端に、摺動自在に棒状の第２のインナガイド１６ａ〜１６ｆがそれぞれ嵌入されている。各インナガイド１５ａ〜１５ｆと各インナガイド１６ａ〜１６ｆとが、各段のインナガイド対を構成している。各インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆと各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆとの間には、該インナガイド１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆが抜け落ちないように、適宜の手段が講じられている。
【００１３】
６段のアウタガイド対に対応して図２と同様の構成の６段の収納トレイ１７が用意されている。収納トレイ１７の矩形の底面板の第１の側部であるアウタガイド１３ａ〜１３ｆ側の側部１８に設けられた支柱１２ａ側の側壁１９ａに、この実施形態の特徴である第１の摺動手段のスライダ４０ａが取付けられ、第２の側部であるアウタガイド１４ａ〜１４ｆ側の側部２０に設けられた支柱１２ｂ側の側壁２１ａに、第２の摺動手段のスライダ４０ｂが取付けられている。前面壁２３の両側に設けられた固定手段である連結片３２ａ，３２ｂによって、各段のインナガイド対１５ａ，１６ａ、インナガイド対１５ｂ，１６ｂ、インナガイド対１５ｃ，１６ｃ、インナガイド対１５ｄ，１６ｄ、インナガイド対１５ｅ，１６ｅ、またはインナガイド対１５ｆ，１６ｆに、各段の収納トレイ１７が固定されている。
図３（ａ），（ｂ）は、図１中のスライダ４０ａ，４０ｂの形状を示す構造図であり、同図（ａ）は正面図、同図（ｂ）は側面図を示している。
【００１４】
スライダ４０ａ，４０ｂは同様の構造であり、取付け部４１と支持部４２とが一体になって構成されている。取付け部４１は板状であり、各スライダ４０ａ，４０ｂを図１中の側壁１９ａ，２１ａに捩子で係止するための取付け穴４１ａ，４１ｂが、開孔されている。支持部４２は舌状をなし、この舌状の根元部４２ａが取付け部４１に接し、該舌状の先端部がアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの軸方向（ｚ方向）に垂直なｘ方向に該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に沿って突出している。支持部４２の底部４２ｂの全体には、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する曲面４２ｃを有している。曲面４２ｃの先端部は、ｘ方向においてアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外径直径より短く形成されている。
支持部４２の側部４２ｄから頭部４２ｅにかけての支持部４２の外縁４２ｆには、円弧状の丸み４２ｇが形成されている。この丸み４２ｇは、テンションフリーの光ファイバＦが当接したときに、その接点において当接した光ファイバＦに対して接線方向の傾斜角を形成し、該光ファイバＦを接線に沿って移動させる機能を有している。即ち、丸み４２ｇは、光ファイバＦをアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆから離れる方向に浮揚する機能を有している。さらに、この丸み４２ｇは、支柱１２ａ，１２ｂに支持部４２が当接した場合に、光ファイバＦを収容する退避部４２ｈを形成することにもなる。
【００１５】
図４は、図３の摺動状態を示す図である。
スライダ４０ａ，４０ｂは、支持部４２の底部４２ｂがアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｅに係合され、該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｅの方向に沿って、つまり、ｚ方向に摺動する。
次に、図１の光ファイバ配線装置の使用方法を説明する。
この光ファイバ配線装置も、光ファイバＦの余長を収納トレイ１７を用いて整理して収納したり、収納トレイ１７上で該光ファイバＦを分配して接続するものである。装置の導入或いはメンテナンスに際し、収納トレイ１７をスライドさせて引出した状態で、光ファイバＦを収納トレイ１７に引込む。引込まれた光ファイバＦは、各アウタガイド１３ａ〜１３ｂの間、各アウタガイド１４ａ〜１４ｂの間、各インナガイド１５ａ〜１５ｂの間、または各インナガイド１５ａ〜１５ｂの間に懸架される。収納トレイ１７に引込まれた光ファイバＦは、従来と同様に余長部等が収納されて整理される。整理や接続を終了すると、収納トレイ１７を光ファイバ配線装置内に押して挿着する。収納トレイ１７が挿着されると、該収納トレイ１７は、吸着部材２４によって背面パネル１１に軽く固定され、以後の不本意なスライドが防止される。
【００１６】
図５は、光ファイバの食込みを示す図である。
各段の収納トレイ１７を引出したり挿着する場合、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ上をスライダ４０ａ，４０ｂが、図４のように摺動することになる。従来の光ファイバ配線装置では、図５のようにスライダ３４，３５の支持部３４ａ，３５ａがｘ方向に突出し、この先端部３４ｂ，３５ｂがアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に沿って下方向（ｙ方向）
に屈曲して、該アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆのｚ方向の中心軸よりも下方向に延びている。そのため、スライダ３４，３５の支持部３４ａ，３５ａの先端部３４ｂ，３５ｂと、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面（図５の左下外周面）との間に間隔が生じ、スライダ３４，３５の摺動時に光ファイバＦが該間隔に食い込み、更なるスライダ３４，３５の摺動で光ファイバＦに断線等の損傷を起たすことがあった。
ところが、本実施形態のスライダ４０ａ，４０ｂでは、支持部４２の底部全体の曲面４２ｃをアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する構造にしたことで、支持部４２の先端部とアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆとの間に間隔を生ずることを防ぐことができることから、光ファイバＦを引掛けることがなくなり、さらに、光ファイバＦの食い込みも発生しない。
【００１７】
図６は、光ファイバと支持部４２の関係を示す図である。
各段の収納トレイ１７を引出したり挿着する際、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ上をスライダ４０ａ，４０ｂが摺動し、既に懸架されている光ファイバＦが、移動する支持部４２に当接することがある。例えば、図６の位置Ｐ１で当接した光ファイバＦは、丸み４２ｇの接線方向に浮揚されて位置Ｐ２に移動する。つまり、テンションフリーに懸架された光ファイバＦは、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆ側から離れる方向に浮揚され、支持部４２での引っ掛かりが発生しない。
また、各段の収納トレイ１７を挿着する際、スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２が支柱１２ａ，１２ｂに当接すると、丸み４２ｇは、支柱１２ａ，１２ｂとの間に間隙Ｋ２を作る。この間隙Ｋ２は、光ファイバＦの退避部４２ｈであり、スライダ４０ａ，４０ｂの摺動で該スライダ４０ａ，４０ｂに押された光ファイバＦは退避部４２ｈに収容され、支柱１２ａ，１２ｂとの間で押圧されることはない。
以上のように、本実施形態の光ファイバ配線装置は、従来では得られない次の（１）〜（３）のような利点を有している。
【００１８】
（１） スライダ４０ａ，４０ｂにおける支持部４２の底部全体の曲面４２ｃを、アウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆの外周面に係合して摺接する構造にしたので、支持部４２の先端部とアウタガイド１３ａ〜１３ｆまたは１４ａ〜１４ｆとの間に間隔を生じることを防ぐことができることから、光ファイバＦを引掛けることがなくなり、さらに、光ファイバＦの食込みによる事故も防止できる。よって光ファイバ配線装置のメンテナンス等が合理化できる。
（２） 各スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２の外縁４２ｆに、丸み４２ｇを形成したので、当接した光ファイバＦが浮揚され、スライダ４０ａ，４０ｂの移動で引掛けて、光ファイバＦを損傷したり断線させることがなくなる。
（３） 各スライダ４０ａ，４０ｂの支持部４２の外縁４２ｆに、退避部４２ｈを作る丸み４２ｇを形成したので、支持部４２が支柱１２ａ，１２ｂに当接する場合でも、光ファイバＦが押圧されず、光ファイバＦの特性劣化が防止できると共に、光ファイバＦの損傷と断線を防止できる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
【００１９】
（ i ） 収納トレイ１７に搭載する各治具の種類及び配置は、図１及び図２に限定されず、収納する光ファイバＦの種類に応じて変更することが可能である。
（ ii) 支持部４０の外縁４２ｆに、丸み４２ｇを形成して実質的な傾斜角と退避部４２ｈを作成しているが、丸み４２ｇに限定されず、例えば、外縁４２ｆにテーパーを形成しても同様に、実質的な傾斜角と退避部４２ｈを作成できる。
（ iii ） 各スライダ４０ａ，４０ｂは取付け部４１を有し、該取付け部４１で側壁１９ａ，２１ａに取付けられる構成であるが、支持部４２を側壁１９ａ，２１ａと一体に構成すれば、取付け部４１は省略できる。
（ iv ） 図７は、スライダの変形例を示す側面図である。
各スライダ４０ａ，４０ｂは、それぞれ一つの支持部４２を有し、片持ちでアウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｂに対して収納トレイ１７を支えているが、図７のように、支持部４２と同一形状を有する支持部４３を対向させて設け、各アウタガイド１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｂを両持ちにする構成でもよい。
【００２０】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、第１の発明によれば、各第１、第２の摺動手段における支持部の底面全体を、第１、第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接する構造にしたので、第１、第２の光ファイバの食込みが防止されて損傷がなくなる。よって、メンテナンス等の合理化が可能になる。しかも、各第１、第２の摺動手段の支持部の外縁に、第１、第２の光ファイバを浮揚する傾斜角をそれぞれ形成したので、該第１、第２の摺動手段が摺動しても、第１、第２の光ファイブが引掛からなくなり、それらの損傷と断線とが防止され、メンテナンス等の作業効率が改善される。
第２の発明によれば、各第１、第２の摺動手段の支持部における支持体側の側部に、退避部をそれぞれ形成したので、摺動手段の支持部が支持体に当接しても、光ファイバが押圧されず、損傷と断線とが防止され、メンテナンス等の作業効率が改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態を示す光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
【図２】従来の光ファイバ配線装置の要部を示す斜視図である。
【図３】図１中のスライダ４０ａ，４０ｂの形状を示す構造図である。
【図４】図３の摺動状態を示す図である。
【図５】 光ファイバの食込みを示す図である。
【図６】光ファイバと支持部４２の関係を示す図である。
【図７】スライダの変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
１２ａ，１２ｂ 支柱（支持体）
１３ａ〜１３ｆ，１４ａ〜１４ｆ 第１及び第２のアウタガイド
１５ａ〜１５ｆ，１６ａ〜１６ｆ 第１及び第２のインナガイド
１７ 収納トレイ
３２ａ，３２ｂ 連結片（固定手段）
４０ａ，４０ｂ スライダ（第１及び第２の摺動手段）
４１ 取付け部
４２ 支持部
４２ｂ 支持部の底部
４２ｃ 摺接面
４２ｄ 支持部の側部
４２ｆ 外縁
４２ｇ 支持部に形成された丸み（傾斜角）
４２ｈ 退避部
Ｆ 光ファイバ
Claims (2)
- ｘ方向に所定間隔を持って対向する筒状の第１及び第２のアウタガイドからなるアウタガイド対の一端が該ｘ方向に対して垂直なｙ方向に複数段所定間隔を持って支持体に支持された複数段のアウタガイド対と、
前記各段のアウタガイド対の他端から摺動自在に対を成してそれぞれ嵌入された棒状の第１及び第２のインナガイドからなる複数段のインナガイド対と、
前記ｘ方向に所定の間隔を持って対向する第１及び第２の側部を有し、前記各段の第１のアウタガイド及び第１のインナガイドに懸架されて該第１の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第１の光ファイバと、前記各段の第２のアウタガイド及び第２のインナガイドに懸架されて該第２の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第２の光ファイバとを、余長を持たせて収納する複数段の収納トレイと、
前記各段の収納トレイを前記各段のインナガイド対にそれぞれ固定する複数の固定手段と、
前記各段の収納トレイにおける第１の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第１のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第１の摺動手段と、
前記各段の収納トレイにおける第２の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第２のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第２の摺動手段とを、
備えた光ファイバ配線装置において、
前記各第１の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第１の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第１のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第１のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、
前記各第２の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第２の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第２のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、
前記各第１の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第１の光ファイバの当接時に、該第１の光ファイバを前記第１のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成し、
前記各第２の摺動手段の支持部の外縁には、該支持部の移動による前記第２の光ファイバの当接時に、該第２の光ファイバを前記第２のアウタガイドから離れる方向に浮揚する傾斜角をそれぞれ形成したことを特徴とする光ファイバ配線装置。 - ｘ方向に所定間隔を持って対向する筒状の第１及び第２のアウタガイドからなるアウタガイド対の一端が該ｘ方向に対して垂直なｙ方向に複数段所定間隔を持って支持体に支持された複数段のアウタガイド対と、
前記各段のアウタガイド対の他端から摺動自在に対を成してそれぞれ嵌入された棒状の第１及び第２のインナガイドからなる複数段のインナガイド対と、
前記ｘ方向に所定の間隔を持って対向する第１及び第２の側部を有し、前記各段の第１のアウタガイド及び第１のインナガイドに懸架されて該第１の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第１の光ファイバと、前記各段の第２のアウタガイド及び第２のインナガイドに懸架されて該第２の側部からそれぞれ引込まれた配線用の第２の光ファイバとを、余長を持たせて収納する複数段の収納トレイと、
前記各段の収納トレイを前記各段のインナガイド対にそれぞれ固定する複数の固定手段と、
前記各段の収納トレイにおける第１の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第１のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第１の摺動手段と、
前記各段の収納トレイにおける第２の側部の支持体側にそれぞれ設けられ、該収納トレイを前記第２のアウタガイドに対して摺動自在に支える複数の第２の摺動手段とを、
備えた光ファイバ配線装置において、
前記各第１の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第１の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第１のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第１のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、
前記各第２の摺動手段は、舌状をなす支持部をそれぞれ有し、該支持部の根元部が前記各段の収納トレイの第２の側部側に取付けられ、該支持部の先端部が前記ｘ方向に前記第２のアウタガイドの外周面に沿って突出し、該支持部の底面全体が前記第２のアウタガイドの外周面に係合して摺接し、
前記各第１の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第１の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成し、
前記各第２の摺動手段の支持部における前記支持体側の側部には、該支持部の移動による該支持体との当接時に、該支持体との間に前記第２の光ファイバを収容する退避部をそれぞれ形成したことを特徴とする光ファイバ配線装置。
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