JP3761606B2 - 電線用絶縁体組成物の製法 - Google Patents
電線用絶縁体組成物の製法 Download PDFInfo
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華性防錆剤を含む電線用の絶縁体組成物の製法に関するものであり、特にポリオレフィン絶縁体に配合された昇華性防錆剤のブルームを抑制して防錆効果を持続させることができる電線用絶縁体組成物の製法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から、架空電線や配線用ケーブルなどとしてポリエチレン組成物を絶縁体とする電線が多用されている。最近ではこれらポリエチレン絶縁電線における導体の発錆を防止するために、絶縁体組成物中にベンゾトリアゾールなどの昇華性防錆剤を１重量％程度配合したものが用いられるようになってきている。この場合、これらの昇華性防錆剤は一般にポリエチレンとの相溶性が乏しいため、昇華性防錆剤とポリエチレンとの双方にある程度の相容性がある熱可塑性樹脂（以下、「相溶性樹脂」という）を絶縁体組成物中に５重量％ないし１０重量％程度添加することが行われている。この相溶性樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）、エチレン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）、および密度が０．９１ｇ／ｃｍ3 以下の超低密度ポリエチレン（ＶＬＤＰＥ）などが知られている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
上記の昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを含むポリエチレン絶縁体組成物（以下、単に「組成物」という）を製造するには、従来は溶融温度以上に加熱されたバンバリーミキサーまたはニーダーなどの密閉混合機に低密度ポリエチレンと昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを順次に仕込みながら混練していた。
しかしながら、この方法で混練した組成物を絶縁体として用いてポリエチレン絶縁電線を製造すると、電線製造ラインの押出し工程や製品保管中などの比較的早い時期に昇華性防錆剤がブルーム（表層移行）を起こし、絶縁体の防錆効果が低下してしまうという問題があった。
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、従ってその目的は、絶縁体中に配合された昇華性防錆剤のブルームを抑制し、絶縁体の防錆効果を持続することができる電線用絶縁体組成物の製法を提供することにある。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、予め昇華性防錆剤と、エチレン・エチルアクリレート共重合体または密度０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンからなる相溶性樹脂とを混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと絶縁体ポリオレフィンとを混練する電線用絶縁体組成物の製法によって解決できる。
また、昇華性防錆剤としては、ベンゾトリアゾールまたは置換ベンゾトリアゾールであることが好ましい。
【０００５】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明の実施の形態を更に詳しく説明する。
（実施例１）
ベンゾトリアゾール（ＢＴＡ）１重量部とエチレン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）５重量部とをロールミル上で混練しマスターバッチを調製した。このマスターバッチを低密度ポリエチレン（ＬＤＰＥ）９４重量部と押出機中で混練し、厚さ１．０ｍｍのテープ状に押出して裁断し、実施例１の絶縁体組成物試料を作製した。
【０００６】
（比較例１）
実施例１と同様の組成で、ただしマスターバッチを調製せず、ニーダー中に順次、ＬＤＰＥ、ＢＴＡ、ＥＥＡを投入して混練し、押出機でテープ状に押出して裁断し、比較例１の絶縁体組成物試料を作製した。
【０００７】
実施例１、比較例１の各試料について、それぞれ室温および５０℃に放置したときにブルームが発生するまでの日数を測定した。結果を表１に示す。
【０００８】
【表１】
【０００９】
表１において、実施例１と比較例１はともに相溶性樹脂としてＥＥＡを用いているが、（ＢＴＡ＋ＥＥＡ）のマスターバッチを調製した実施例１の場合に明かにブルームの発生が遅延している。この試験から、予めＢＴＡと相溶性樹脂とのマスターバッチを調製することによってブルームの発生を遅延させ得ることが明かとなった。
【００１０】
上記の各実施例においては昇華性防錆剤としてＢＴＡを用いたが、本発明の製法に用いることのできる昇華性防錆剤はこれに限定されるものではない。例えば置換ベンゾトリアゾール、例えば５−メチルベンゾトリアゾールなどや昇華性のアミン系防錆剤を用いても同様の結果が得られる。
また、使用できる相溶性樹脂も、上記の実施例のものに限定されない。エチレ ン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）以外の相溶性樹脂としては、密度が０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンが有効である。
【００１１】
予め昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを含むマスターバッチを調製して用いることによって昇華性防錆剤のブルームを遅延できる理由については明確でないが、昇華性防錆剤と相溶性樹脂とがマスターバッチ中で親和力の強い固溶体を形成し、これを絶縁体ポリオレフィンと混合したときにも昇華性防錆剤と樹脂マトリックスとの親和性が維持されるためと考えられる。
【００１２】
【発明の効果】
本発明の電線用絶縁体組成物の製法は、予め昇華性防錆剤とエチレン・エチルアクリレート共重合体または密度０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンからなる相溶性樹脂とを混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと絶縁体用ポリオレフィンとを混練するものであるので、電線用絶縁体からの昇華性防錆剤のブルームを遅延させることができ、防錆効果が持続する電線が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、昇華性防錆剤を含む電線用の絶縁体組成物の製法に関するものであり、特にポリオレフィン絶縁体に配合された昇華性防錆剤のブルームを抑制して防錆効果を持続させることができる電線用絶縁体組成物の製法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から、架空電線や配線用ケーブルなどとしてポリエチレン組成物を絶縁体とする電線が多用されている。最近ではこれらポリエチレン絶縁電線における導体の発錆を防止するために、絶縁体組成物中にベンゾトリアゾールなどの昇華性防錆剤を１重量％程度配合したものが用いられるようになってきている。この場合、これらの昇華性防錆剤は一般にポリエチレンとの相溶性が乏しいため、昇華性防錆剤とポリエチレンとの双方にある程度の相容性がある熱可塑性樹脂（以下、「相溶性樹脂」という）を絶縁体組成物中に５重量％ないし１０重量％程度添加することが行われている。この相溶性樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体（ＥＶＡ）、エチレン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）、および密度が０．９１ｇ／ｃｍ3 以下の超低密度ポリエチレン（ＶＬＤＰＥ）などが知られている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
上記の昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを含むポリエチレン絶縁体組成物（以下、単に「組成物」という）を製造するには、従来は溶融温度以上に加熱されたバンバリーミキサーまたはニーダーなどの密閉混合機に低密度ポリエチレンと昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを順次に仕込みながら混練していた。
しかしながら、この方法で混練した組成物を絶縁体として用いてポリエチレン絶縁電線を製造すると、電線製造ラインの押出し工程や製品保管中などの比較的早い時期に昇華性防錆剤がブルーム（表層移行）を起こし、絶縁体の防錆効果が低下してしまうという問題があった。
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、従ってその目的は、絶縁体中に配合された昇華性防錆剤のブルームを抑制し、絶縁体の防錆効果を持続することができる電線用絶縁体組成物の製法を提供することにある。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、予め昇華性防錆剤と、エチレン・エチルアクリレート共重合体または密度０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンからなる相溶性樹脂とを混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと絶縁体ポリオレフィンとを混練する電線用絶縁体組成物の製法によって解決できる。
また、昇華性防錆剤としては、ベンゾトリアゾールまたは置換ベンゾトリアゾールであることが好ましい。
【０００５】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明の実施の形態を更に詳しく説明する。
（実施例１）
ベンゾトリアゾール（ＢＴＡ）１重量部とエチレン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）５重量部とをロールミル上で混練しマスターバッチを調製した。このマスターバッチを低密度ポリエチレン（ＬＤＰＥ）９４重量部と押出機中で混練し、厚さ１．０ｍｍのテープ状に押出して裁断し、実施例１の絶縁体組成物試料を作製した。
【０００６】
（比較例１）
実施例１と同様の組成で、ただしマスターバッチを調製せず、ニーダー中に順次、ＬＤＰＥ、ＢＴＡ、ＥＥＡを投入して混練し、押出機でテープ状に押出して裁断し、比較例１の絶縁体組成物試料を作製した。
【０００７】
実施例１、比較例１の各試料について、それぞれ室温および５０℃に放置したときにブルームが発生するまでの日数を測定した。結果を表１に示す。
【０００８】
【表１】
表１において、実施例１と比較例１はともに相溶性樹脂としてＥＥＡを用いているが、（ＢＴＡ＋ＥＥＡ）のマスターバッチを調製した実施例１の場合に明かにブルームの発生が遅延している。この試験から、予めＢＴＡと相溶性樹脂とのマスターバッチを調製することによってブルームの発生を遅延させ得ることが明かとなった。
【００１０】
上記の各実施例においては昇華性防錆剤としてＢＴＡを用いたが、本発明の製法に用いることのできる昇華性防錆剤はこれに限定されるものではない。例えば置換ベンゾトリアゾール、例えば５−メチルベンゾトリアゾールなどや昇華性のアミン系防錆剤を用いても同様の結果が得られる。
また、使用できる相溶性樹脂も、上記の実施例のものに限定されない。エチレ ン・エチルアクリレート共重合体（ＥＥＡ）以外の相溶性樹脂としては、密度が０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンが有効である。
【００１１】
予め昇華性防錆剤と相溶性樹脂とを含むマスターバッチを調製して用いることによって昇華性防錆剤のブルームを遅延できる理由については明確でないが、昇華性防錆剤と相溶性樹脂とがマスターバッチ中で親和力の強い固溶体を形成し、これを絶縁体ポリオレフィンと混合したときにも昇華性防錆剤と樹脂マトリックスとの親和性が維持されるためと考えられる。
【００１２】
【発明の効果】
本発明の電線用絶縁体組成物の製法は、予め昇華性防錆剤とエチレン・エチルアクリレート共重合体または密度０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンからなる相溶性樹脂とを混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと絶縁体用ポリオレフィンとを混練するものであるので、電線用絶縁体からの昇華性防錆剤のブルームを遅延させることができ、防錆効果が持続する電線が得られる。
Claims (2)
- 予め昇華性防錆剤とエチレン・エチルアクリレート共重合体または密度０．９１ｇ／ｃｍ 3 以下の超低密度ポリエチレンからなる相溶性樹脂とを混練してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと絶縁体用ポリオレフィンとを混練することを特徴とする電線用絶縁体組成物の製法。
- 昇華性防錆剤がベンゾトリアゾールまたは置換ベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項１に記載の電線用絶縁体組成物の製法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP17258295A JP3761606B2 (ja) | 1995-07-07 | 1995-07-07 | 電線用絶縁体組成物の製法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP17258295A JP3761606B2 (ja) | 1995-07-07 | 1995-07-07 | 電線用絶縁体組成物の製法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0925344A JPH0925344A (ja) | 1997-01-28 |
| JP3761606B2 true JP3761606B2 (ja) | 2006-03-29 |
Family
ID=15944525
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP17258295A Expired - Fee Related JP3761606B2 (ja) | 1995-07-07 | 1995-07-07 | 電線用絶縁体組成物の製法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3761606B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP4601281B2 (ja) * | 2003-11-07 | 2010-12-22 | 三井・デュポンポリケミカル株式会社 | 防錆性重合体組成物及びその製法 |
| JP5403989B2 (ja) * | 2008-10-16 | 2014-01-29 | 株式会社ジェイテクト | 潤滑剤組成物とそれを用いた減速機および電動パワーステアリング装置 |
Family Cites Families (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPH07101567B2 (ja) * | 1987-06-23 | 1995-11-01 | 株式会社フジクラ | 絶縁電線・ケ−ブル |
| JPH04337334A (ja) * | 1991-05-15 | 1992-11-25 | Honsyu Kagaku Kogyo Kk | 防錆剤マスターバッチ |
-
1995
- 1995-07-07 JP JP17258295A patent/JP3761606B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH0925344A (ja) | 1997-01-28 |
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