JP3761478B2 - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版原版に関し、詳しくは、平版印刷版としたときに、耐汚れ性と耐刷性とを両立することができる、最適な表面形状を有する平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版に関する。また、本発明は、耐汚れ性と耐刷性に優れ、更に、耐キズ性と感度とがともに優れる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷法は水と油が本質的に混じり合わないことを利用した印刷方式であり、これに使用される平版印刷版の印刷版面には、水を受容して油性インキを反撥する領域(以下、この領域を「非画像部」という。)と、水を反撥して油性インキを受容する領域(以下、この領域を「画像部」という。)とが形成される。
【0003】
平版印刷版に用いられる平版印刷版用アルミニウム支持体(以下、単に「平版印刷版用支持体」という。)は、その表面が非画像部を担うように使用されるため、親水性および保水性が優れていること、更にはその上に設けられる画像記録層との密着性が優れていること等の相反する種々の性能が要求される。
支持体の親水性が低すぎると、印刷時に非画像部にインキが付着するようになり、ブランケット胴の汚れ、ひいてはいわゆる地汚れが発生する。また、支持体の保水性が低すぎると、印刷時に湿し水を多くしないとシャドー部のつまりが発生する。よって、いわゆる水幅が狭くなる。
【0004】
これらの性能の良好な平版印刷版用支持体を得るためには、アルミニウム板の表面を砂目立て(粗面化処理)して凹凸を付与するのが一般的である。この凹凸については下記に示すように、様々な形状が提案されている。特開平8−300844号公報には、中波と小波の開口径を規定した大波、中波および小波を有する3重構造が記載されている。特開平11−99758号公報および特開平11−208138号公報には、大小の2重構造において小波の径を規定することが記載されている。特開平11−167207号公報には、大小の2重の凹部(ピット)に加えて更に微小な突起を付与する技術が記載されている。特許第2023476号明細書には、開口径を規定した2重構造が記載されている。特開平8−300843号公報には、表面の滑らかさを示す因子a30を規定した2重構造が記載されている。特開平10−35133号公報には複数の電気化学的粗面化処理(以下「電解粗面化処理」ともいう。)に際して重畳されるピット径の比を規定した構造が記載されている。
【0005】
この砂目立てには、ボールグレイニング、ブラシグレイニング、ワイヤーグレイニング、ブラストグレイニング等の機械的粗面化方法、塩酸および/または硝酸を含む電解液中でアルミニウム板を電解エッチングする電解粗面化方法および米国特許第4,476,006号明細書に記載されている機械的粗面化方法と電解粗面化方法を組み合わせた複合粗面化方法等が用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術においては、耐汚れ性と耐刷性とがトレードオフの関係にあり、耐汚れ性と耐刷性との両立ができなかった。
したがって、本発明は、この問題を解決し、優れた耐汚れ性と高耐刷力とを両立することができる平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0007】
また、近年、画像形成技術の発展に伴い、細くビームを絞ったレーザ光をその版面上に走査させ、文字原稿、画像原稿等を直接版面上に形成させ、フィルム原稿を用いず直接製版することが可能となりつつある。
レーザ光照射により画像記録層中で光熱変換を起こすことによって画像記録層のアルカリ可溶化を引き起こしポジ画像を形成する、いわゆるサーマルポジタイプの平版印刷版原版においては、画像形成原理としてレーザ露光による画像記録層中のバインダーの分子間相互作用の微妙な変化を利用しているために、露光/未露光部分のアルカリ可溶化のオン/オフの程度の差が小さくなっている。このため、実用に耐える明確なディスクリミネーションを得る目的で、現像液に対する表面難溶化層を画像記録層の最上層として設けて未露光部の現像溶解性を抑えた画像記録層構造を形成するという手段が用いられている。
【0008】
しかしながら、表面難溶化層が何らかの原因で損傷すると、本来画像部となる部分でも、現像液に溶解しやすくなってしまう。つまり、実用上非常に傷付きやすい印刷版になってしまっている。このため、印刷版のハンドリング時のぶつかり、合紙での微妙な擦れ、版面への指の接触等の些細な接触によってもキズ状の画像抜けが発生してしまうので、刷版作業時の取り扱いが難しいのが現状である。この傷付きやすさを改善する目的で、画像記録層表面にフッ素系の界面活性剤やワックス剤の層を設けて摩擦係数を下げることが試みられているが、未だ十分な対策とはなっていない。
【0009】
また、上述したような、接触等によるキズ状の画像抜けは、画像記録層が表面難溶化層を有しないサーマルポジタイプの平版印刷版原版や、サーマルネガタイプその他の平版印刷版原版においても問題となっている。
【0010】
近年、上記の傷付きやすさを改善する目的で、画像記録層表面を滑らかにすることが試みられている。これは、画像記録層表面の凹凸が変形すると、表面難溶化層が破壊され、現像液が浸透しやすくなってしまうことに鑑みたものである。平坦な画像記録層表面を実現するためには、支持体の表面形状をできるだけ平坦にすることが有効であるが、単純に支持体の表面形状を平坦にすると、画像記録層と支持体との密着性が低下し、一方、画像記録層と支持体との密着性を確保しようとして、単に機械的粗面化処理等の方法により画像記録層と支持体との接触面積を増やすだけでは、画像記録層表面に凹凸が形成されてしまい、画像記録層が傷付きやすくなってしまう。
したがって、画像記録層表面を平坦にしてキズを防止することと、画像記録層と支持体との密着性を優れたものとして十分な印刷性能を確保することとを両立することは、極めて困難であった。
【0011】
また、粗面に波長0.4μm程度以下の凹凸を設けることにより、画像記録層表面の形状に変化をもたらさずに画像記録層と支持体との密着性を高めることができるが、凹部に入り込んだ画像記録層が現像時に除去されにくいので、現像に必要な露光量が多くなる、即ち、感度が低下するという問題がある。
【0012】
よって、本発明は、傷付きにくく、感度が高く、印刷性能に優れ、通常作業での取り扱いが容易である平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、本発明を完成した。
即ち、本発明は、アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエッチング処理および陽極酸化処理を行って得られる平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる平版印刷版原版であって、
前記平版印刷版用支持体の表面に、波長が2〜10μmの大波構造と、平均直径が0.1〜1.5μmのピットからなる中波構造と、ピット内部の円相当径(面積円相当径)が0.005〜0.1μmである凹凸からなる小波構造とを有し、かつ、該陽極酸化処理によって生成する陽極酸化皮膜において、マイクロポアの平均ポア径が0〜15nm、平均ポア密度が0〜400個/μm2であり、
前記画像記録層が、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプのいずれかの感熱層である平版印刷版原版を提供する。
【0014】
本発明者は、上記課題を解決すべく、平版印刷版用支持体の表面形状について鋭意検討した結果、上記表面形状により、耐汚れ性と耐刷性とのバランスを高い水準で維持することができることを見出し、本発明を完成したのである。
【0015】
また、平版印刷版原版の画像記録層表面には、支持体表面の凹凸に起因する凹凸が存在する。サーマルポジタイプの画像記録層に物体等が接触した場合、その物体等によって画像記録層表面が擦られると、凸部の頂上部分がわずかに擦り取られ、表面難溶化層が破壊され、ときには支持体が部分的に露出する。現像時には、この表面難溶化層が破壊された部分から、支持体と画像記録層との界面に現像液が浸透していきやすいため、画像記録層が支持体との界面付近から溶解し始める。即ち、擦られた場所から優先的に現像されるのである。したがって、マクロ的に見ると、キズ部分が白い線となって観察される。
【0016】
本発明者は、鋭意研究の結果、上記知見を得た。そして、画像記録層表面の凹凸を少なくして滑らかにしつつ、支持体の表面積を大きくして画像記録層と支持体との密着性を確保するために、支持体の表面を、波長が2〜10μmの大波構造と、平均直径が0.1〜1.5μmのピットからなる中波構造と、ピット内部の円相当径(面積円相当径)が0.005〜0.1μmである凹凸からなる小波構造とを有する、大中小三重構造の形状にすることで、キズが発生しにくくなることを見出した。
【0017】
更に、上記構造とするだけでは、小波構造を構成するピット内部の微細な凹凸に入り込んだ画像記録層が除去されにくいので、それを補うために現像性(感度)を向上させる必要がある。
本発明者は、上記大中小三重構造の形状を有する支持体表面において、陽極酸化皮膜におけるマイクロポアの平均ポア径および平均ポア密度を通常より小さい特定の範囲にすることにより、マイクロポアに入り込んだ画像記録層の量を少なくすることができることおよび現像液がマイクロポアの内部に浸透して画像記録層全体の浸透速度が低下するのを防止することができることを見出し、それにより傷付きにくく、感度が高く、印刷性能に優れる平版印刷版原版を実現することができることを見出して、本発明を完成したのである。
【0018】
前記アルミニウム板におけるCuの含有量が0〜0.005質量%であるのが好ましい。即ち、Cuを全く含まないか、0.005質量%以下で含むか、のいずれかであるのが好ましい。アルミニウム板におけるCuの含有量が0〜0.005質量%であると、中波構造を構成するピットがより均一に形成されるため、画像記録層と支持体との密着性がより高くなる。
【0019】
発明の平版印刷版原版は、上述した表面を有する平版印刷版用支持体を用いているので、従来トレードオフの関係から脱しえなかった耐汚れ性と耐刷性のバランスを高い水準で維持することができる。
【0020】
更に、本発明は、前記平版印刷版用支持体上に、加熱または放射線の照射によりアルカリ可溶化する画像記録層を設けてなる平版印刷版原版、および、加熱または放射線の照射により硬化する画像記録層を設けてなる平版印刷版原版を提供する。本発明の平版印刷版原版は、上述した表面を有する平版印刷版用支持体を用いているので、従来のサーマルポジタイプおよびサーマルネガタイプの平版印刷版原版に比べ、傷付きにくく、感度が高く、印刷性能に優れ、通常作業での取り扱いが容易である。本発明によって、特に、サーマルポジタイプの平版印刷版原版において本質的問題であった傷付きやすさを大幅に改善することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版原版に用いられる平版印刷版用支持体(以下、「本発明の平版印刷版用支持体」という。)に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いることもできる。
【0022】
以下の説明において、上記に挙げたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。 前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。 特に、銅の含有量は、0〜0.005質量%であるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、純アルミニウム板を用いるのが好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A3005、JIS A3004、国際登録合金 3103A等のアルミニウム合金板を適宜利用することができる。 また、アルミニウム板の製造方法は、連続鋳造方式およびDC鋳造方式のいずれでもよく、DC鋳造方式の中間焼鈍や、均熱処理を省略したアルミニウム板も用いることができる。最終圧延においては、積層圧延や転写等により凹凸を付けたアルミニウム板を用いることもできる。また、本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0. 1〜0. 6mm程度である。 この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。
【0024】
本発明の平版印刷版用支持体は、上記アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエッチング処理および陽極酸化処理を行って得られるが、このアルミニウム支持体の製造工程には、粗面化処理、アルカリエッチング処理および陽極酸化処理以外の各種の工程が含まれていてもよい。
【0025】
<粗面化処理(砂目立て処理)>
上記アルミニウム板は、より好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て(機械的粗面化処理)、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。
特に、機械的粗面化処理を行った後に電解粗面化処理を行うと、得られる平版印刷版用支持体の表面を、後述する大波構造と中波構造の二重構造としやすいので好ましい。
【0026】
ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択することによって、アルミニウム支持体表面の長い波長成分(大波)の凹部の平均深さを制御することができる。ブラシグレイン法により得られる凹部は、平均波長が2〜10μmであるのが好ましく、平均深さが0.2〜1μmであるのが好ましい。
【0027】
電気化学的粗面化方法としては、塩酸電解液中または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法が好ましい。好ましい電流密度は、陽極時電気量50〜400C/dm2 である。更に具体的には、例えば、0.1〜50質量%の塩酸または硝酸を含む電解液中で、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100〜400C/dm2 の条件で直流または交流を用いて行われる。電解粗面化処理によれば、表面にピットを付与することが容易であるため、画像記録層と支持体との密着性を高くすることができる。
【0028】
機械的粗面化処理の後の電解粗面化処理により、平均直径0.1〜1.5μm、平均深さ0.05〜0.4μmのクレーター状またはハニカム状のピット(上記大波より短い波長の波長成分(中波)の凹部)をアルミニウム板の表面に90〜100%の面積率で生成し、大波構造と中波構造の二重構造を形成することができる。即ち、機械的粗面化処理により平均波長2〜10μmの大波が形成され、電解粗面化処理によりピットつまり中波が形成される。
なお、機械的粗面化処理を行わずに、電解粗面化処理のみを行う場合には、ピットの平均深さを0.3μm未満とするのが好ましい。例えば、機械的粗面化処理を行わずに、電解粗面化処理を好ましくは条件を変えて二回以上行うことにより、平均波長2〜10μmの大波構造およびピットの平均直径0.1〜1.5μmの中波構造からなる二重構造を形成することもできる。
設けられたピットは、印刷版の非画像部の汚れにくさおよび耐刷性を向上する作用を有する。電解粗面化処理では、十分なピットを表面に設けるために必要なだけの電気量、即ち、電流と電流を流した時間との積が、重要な条件となる。より少ない電気量で十分なピットを形成できることは、省エネの観点からも望ましい。
粗面化処理後の表面粗さは、JIS B0601−1994に準拠してカットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mmで測定した算術平均粗さ(Ra )が、0.2〜0.5μmであるのが好ましい。
【0029】
<アルカリエッチング処理>
このように砂目立て処理されたアルミニウム板は、アルカリにより化学的にエッチングされる。
本発明において好適に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。
アルカリエッチング処理の条件は、Alの溶解量が0.05〜30g/m2 となるような条件で行うのが好ましい。また、他の条件も、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましく、また、アルカリの温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。
アルカリエッチング処理は、1種の方法に限らず、複数の工程を組み合わせることができる。
アルカリエッチング処理は、1段階の処理に限られない。例えば、機械的粗面化処理を施した後に、アルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理(後述するスマット除去のための酸洗い)を行い、更に電解粗面化処理を施した後に、再びアルカリエッチング処理を行い、引き続きデスマット処理を行うなど、アルカリエッチング処理およびデスマット処理は、いずれも複数回組み合わせて行うことができる。
【0030】
このアルカリエッチング処理により、ピットの平均直径を0.1〜1.5μmに制御すると同時に、ピットの内部に微細な凹凸からなる小波構造を形成することができる。微細な凹凸は、不定形であり、その面積円相当径は、例えば、0.005〜0.1μmとすることができる。
したがって、粗面化処理により大波構造と中波構造の二重構造が形成されているため、このアルカリエッチング処理による小波構造の形成により大中小三重構造を形成することができる。よって、大中小三重構造を形成するようにアルカリエッチング処理の条件を選択することが必要である。
【0031】
アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。特に、電解粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法が挙げられる。
【0032】
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。この際、マイクロポアに起因する感度低下を抑えるために、陽極酸化皮膜におけるマイクロポアの平均ポア径を0〜15nmとし、かつ、平均ポア密度を0〜400個/μm2 とすることが必要である。即ち、本発明の平版印刷版用支持体においては、陽極酸化被膜がマイクロポアを有しても有しなくてもよく、マイクロポアを有している場合には、その平均ポア径は15nm以下であり、その平均ポア密度は400個/μm2 以下である。中でも、陽極酸化被膜がマイクロポアを有しないのが、感度に優れる点で、好ましい。
陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸を主成分とし、必要に応じて、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等と組み合わせた水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すとアルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
【0033】
この際、少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
【0034】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜15質量%、液温−5〜40℃、電流密度5〜60A/dm2 、電圧1〜20V、電解時間10〜200秒であるのが適当である。
【0035】
本発明においては、陽極酸化皮膜の量は1〜5g/m2 であるのが好ましい。1g/m2 未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/m2 を超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/m2 であるのがより好ましい。
【0036】
<アルカリ金属ケイ酸塩処理>
上記のように処理して得られる陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、必要に応じて、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を用いて浸せき処理する。処理条件は、特に限定されないが、例えば、濃度0.01〜5.0質量%の水溶液を用いて、温度5〜40℃で、1〜60秒間浸せきし、その後、流水により洗浄する。より好ましい浸せき処理温度は10〜40℃であり、より好ましい浸せき時間は2〜20秒間である。
【0037】
本発明に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩は、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0038】
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定され、その吸着量は約1.0〜15.0mg/m2 であるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、アルミニウム支持体表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
【0039】
<封孔処理>
陽極酸化処理後、所望により、封孔処理を行ってもよい。封孔処理は陽極酸化処理された支持体を、熱水または無機塩もしくは有機塩を含む熱水溶液に浸せきさせる方法、水蒸気浴に曝す方法等によって行われる。具体的には、例えば、特開平4−176690号公報や特開平11−301135号公報に記載の加圧水蒸気や熱水による封孔処理が挙げられる。
本発明の平版印刷版用支持体において、封孔処理を行う場合には、封孔処理後の陽極酸化皮膜におけるマイクロポアの平均ポア径が0〜15nm、平均ポア密度が0〜400個/μm2 であれば、封孔処理前の陽極酸化皮膜におけるマイクロポアがこれらを満たしていなくてもよい。
<界面制御処理>
また、陽極酸化処理後、所望により、親水化処理等の界面制御処理を実施してもよい。
界面制御処理としては、上述したアルカリ金属ケイ酸塩処理のほかに、特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウムや、米国特許第3,276,868号明細書、同第4,153,461号明細書および同第4,689,272号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が用いられる。
【0040】
上記の各項目で記載した各処理の詳細については、公知の条件を適宜採用することができる。また、本明細書に挙げた文献の内容は、引用して本明細書の内容とする。
【0041】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版用支持体には、以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。画像記録層は、特に限定されないが、例えば、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、機上現像可能な無処理タイプが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像記録層について、詳細に説明する。
【0042】
<コンベンショナルポジタイプ>
コンベンショナルポジタイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられるポジ型感光性樹脂組成物としては、露光の前後で現像液に対する溶解性または膨潤性が変化するものならば使用できるが、その中に含まれる好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物が挙げられる。例えば、水不溶性かつアルカリ可溶性の高分子化合物(以下、「アルカリ可溶性高分子化合物」という。)とo−キノンジアジド化合物とを含有するポジ型感光性樹脂組成物の場合、o−キノンジアジド化合物は、少なくとも一つのo−キノンジアジド基を有する化合物で、活性光線によりアルカリ水溶液に対する溶解性を増すものが好ましい。
【0043】
このようなものとしては、種々の構造のものが知られており、例えば、J.KOSAR著「Light−Sensitive Systems」(John Wiley & Sons,Inc,1965年発行)p.336−352に詳細に記載されている。o−キノンジアジド化合物としては、特に種々のヒドロキシ化合物とo−ベンゾキノンジアジドまたはo−ナフトキノンジアジドとを原料とするスルホン酸エステルが好適である。
【0044】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステル;特公昭63−13,528号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ベンズアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭62−44,257号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとレゾルシン−ピロガロール・アセトン共縮合樹脂とのエステル;
【0045】
特公昭56−45,127号公報に記載されている末端にヒドロキシ基を有するポリエステルに1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭50−24,641号公報に記載されているN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;特公昭54−29,922号公報に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとビスフェノール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステル;特公昭52−36,043号公報に記載されているp−ヒドロキシスチレンのホモポリマーまたは他の共重合しうるモノマーとの共重合体に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドをエステル化させたもの;1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとポリヒドロキシベンゾフェノンとのエステルがある。
【0046】
その他、本発明に使用できる公知のo−キノンジアジド化合物としては、特開昭63−80254号、特開昭58−5737号、特開昭57−111530号、特開昭57−111531号、特開昭57−114138号、特開昭57−142635号、特開昭51−36129号、特公昭62−3411号、特公昭62−51459号、特公昭51−483号等の各公報に記載されているもの等を挙げることができる。o−キノンジアジド化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、5〜60質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。
【0047】
o−キノンジアジド化合物以外の感光性化合物としては、アルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物と光酸発生剤との組み合わせからなる化学増幅系の感光物(光照射感応性混合物)を用いることができる。
【0048】
化学増幅系の感光物に用いられる光酸発生剤としては、公知のものを用いることができる。例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)等に記載されているジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、同4,069,056号明細書、特開平3−140140号公報等に記載されているアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書等に記載されているホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.& Eng.News,Nov.28,p.31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載されているヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Wattet al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、米国特許第3,902,114号,欧州特許第233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書等に記載されているスルホニウム塩、
【0049】
J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載されているセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p.478 Tokyo,Oct(1988)等に記載されているアルソニウム塩等のオニウム塩;米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報等に記載されている有機ハロゲン化合物;K.Meier et al,J.Rad.Curing,13(4),26(1986)、T.P.Gill et al,Inorg.Chem.,19,3007(1980)、D.Astruc,Acc.Chem.Res.,19(12),377(1896)、特開平2−161445号公報等に記載されている有機金属/有機ハロゲン化物;S.Hayase et al,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、E.Reichmanis et al,J.Pholymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,23,1(1985)、Q.Q.Zhu et al,J.Photochem.,36,85,39,317(1987)、B.Amit et al,Tetrahedron Lett.,(24),2205(1973)、D.H.R.Barton et al,J.ChemSoc.,3571(1965)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Perkin I,1695(1975)、M.Rudinstein et al,Tetrahedron Lett.,(17),1445(1975)、J.W.Walker et al J.Am.Chem.Soc.,110,7170(1988)、S.C.Busman et al,J.ImagingTechnol.,11(4),191(1985)、H.M.Houlihan et al,Macormolecules,21,2001(1988)、P.M.Collins et al,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,532(1972)、S.Hayase et al,Macromolecules,18,1799(1985)、E.Reichmanis et al,J.Electrochem.Soc.,Solid State Sci.Technol.,130(6)、F.M.Houlihan et al,Macromolcules,21,2001(1988)、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号の各公報等に記載されているo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤;
【0050】
M.Tunook et al,Polymer Preprints Japan,35(8)、G.Berner et al,J.Rad.Curing,13(4)、W.J.Mijs et al,Coating Technol.,55(697),45(1983),Akzo、H.Adachi etal,Polymer Preprints,Japan,37(3)、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特開平4−365048号の各公報等に記載されているイミノスルフォネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物;特開昭61−166544号公報等に記載されているジスルホン化合物を挙げることができる。
【0051】
これらの活性光線または放射線の照射により分解して酸を発生する化合物(光酸発生剤)の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、0.001〜40質量%であり、0.01〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0052】
また、アルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物(酸により開裂しうる化合物)は、−C−O−C−結合または−C−O−Si−結合を有する化合物であり、以下の例を挙げることができる。
(a)少なくとも一つのオルトカルボン酸エステルおよびカルボン酸アミドアセタール群から選ばれるものを含み、その化合物が重合性を有することができ、上記の群が主鎖中の架橋要素として、または側方置換基として生じうるような化合物、
(b)主鎖中に反復アセタールおよびケタール群から選ばれるものを含むオリゴマー性または重合体化合物、
(c)少なくとも一種のエノールエステルまたはN−アシルアミノカーボネート群を含む化合物、
(d)β−ケトエステルまたはβ−ケトアミドの環状アセタールまたはケタール、
(e)シリルエーテル群を含む化合物、
(f)シリルエノールエーテル群を含む化合物、
(g)アルデヒドまたはケトン成分が、現像剤に対して、0.1〜100g/Lの溶解性を有するモノアセタールまたはモノケタール、
(h)第三級アルコール系のエーテル、
(i)第三級アリル位またはベンジル位アルコールのカルボン酸エステルおよび炭酸エステル。
【0053】
光照射感応性混合物の成分として、酸により開裂しうる化合物である上記(a)の化合物は、独国特許出願公開第2,610,842号明細書および同第2,928,636号明細書に記載されている。上記(b)の化合物を含む混合物は、独国特許第2,306,248号明細書および同第2,718,254号明細書に記載されている。上記(c)の化合物は、欧州特許出願公開第0,006,626号明細書および同第0,006,627号明細書に記載されている。上記(d)の化合物は、欧州特許出願公開第0,202,196号明細書に記載されている。上記(e)の化合物は、独国特許出願公開第3,544,165号明細書および同第3,601,264号明細書に記載されている。上記(f)の化合物は、独国特許出願公開第3,730,785号明細書および同第3,730,783号明細書に記載されている。上記(g)の化合物は、独国特許出願公開第3,730,783号明細書に記載されている。上記(h)の化合物は、例えば、米国特許第4,603,101号明細書に記載されている。上記(i)の化合物は、例えば、米国特許第4,491,628号明細書およびJ.M.Frechetらの論文(J.Imaging Sci.30,59−64(1986))に記載されている。
これらのアルカリ可溶性基を酸分解基で保護した化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、通常、1〜60質量%であり、好ましくは5〜40質量%である。
【0054】
感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有してもよい。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体、特開平7−28244号公報に記載されているスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。
これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、重量平均分子量が500〜200,000であるのが好ましく、また、数平均分子量が200〜60,000であるのが好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、80質量%以下の含有量で用いられる。
【0055】
更に、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているように、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物を併用することは、画像の感脂性を向上させるうえで好ましい。かかるアルカリ可溶性高分子化合物は、通常、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、90質量%以下の含有量で用いられる。
【0056】
感光性樹脂組成物中には、更に必要に応じて、感度を高めるための環状酸無水物、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤、画像着色剤としての染料、その他のフィラー等を加えることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物中には、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を添加するのが好ましい。
環状酸無水物としては、具体的には、米国特許第4,115,128号明細書に記載されている化合物が挙げられる。
【0058】
有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、ホスフィン酸類、リン酸エステル類、カルボン酸類等が挙げられる。
【0059】
上記の環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の含有量の合計は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.05〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0060】
露光後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤としては、露光によって酸を放出する感光性化合物と、酸と塩を形成して色調を変える有機染料との組み合わせを挙げることができる。
【0061】
焼き出し剤に用いられる露光によって酸を放出する感光性化合物としては、例えば、特開昭50−36209号公報、同55−62444号公報等に記載されているo−ナフトキノンジアジド化合物;特開昭53−36223号公報に記載されているトリハロメチル−2−ビロンやトリハロメチル−s−トリアジン;特開昭55−77742号公報に記載されている2−トリハロメチル−5−アリール−1,3,4−オキサジアゾール化合物;ジアゾニウム塩等を挙げることができる。これらの化合物は、単独または混合して使用することができ、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.3〜15質量%であるのが好ましい。
【0062】
感光性樹脂組成物においては、光分解して酸性物質を発生する化合物の光分解生成物と相互作用することによってその色調を変える有機染料が、少なくとも1種以上用いられるのが好ましい。
このような有機染料としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリアリールメタン系、チアジン系、オキサジン系、フェナジン系、キサンテン系、アントラキノン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系の色素を用いることができる。具体的には、例えば、特開昭50−36209号公報、同55−77742号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
【0063】
特に好ましい有機染料は、トリアリールメタン系染料である。トリアリールメタン系染料の中では、特開昭62−2932471号公報、特開平5−313359号公報に記載されているような対アニオンとしてスルホン酸化合物を有するものが特に有用である。
【0064】
これらの染料は単独でまたは混合して使用することができ、その含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.3〜15質量%であるのが好ましい。また、必要に応じて他の染料、顔料と併用することができ、その使用量は染料および顔料の総質量に対して70質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0065】
上記感光性樹脂組成物の各成分を溶媒中に溶解させ、または分散させて、本発明の平版印刷版用支持体上に塗布することによって、本発明の平版印刷版原版が得られる。
溶媒としては、具体的には、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール等)、炭化水素類(トルエン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(エチレンジクロライド等)、ケトン類(アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等)、アミド類(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、水およびこれらの溶媒の混合物から適切に選択して使用することができる。
【0066】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
【0067】
<コンベンショナルネガタイプ>
コンベンショナルネガタイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられるネガ型感光性樹脂組成物としては、例えば、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩と、ホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられる。上記ジアゾ樹脂としては、例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩;特公昭47−1167号公報に記載されているような、前記縮合物と、スルホン酸塩類、例えば、p−トルエンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂有機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。また、特開昭58−27141号公報に記載されているような3−メトキシ−4−ジアゾ−ジフェニルアミンを4,4′−ビス−メトキシ−メチル−ジフェニルエーテルで縮合させメシチレンスルホン酸塩としたもの等も適当である。更に、特公昭49−48001号公報に記載されている芳香族化合物との共縮合ジアゾ樹脂や、特開平2−29650号公報に記載されている酸基を有する芳香族化合物との共縮合ジアゾ樹脂も好ましく用いられる。また、特開平4−18559号公報に記載されている酸基を有するアルデヒドまたはアセタール化合物で縮合されたジアゾ樹脂も同様に好ましく用いることができる。更に、カルボキシ基、スルホ基、スルフィン酸基、リンの酸素酸基およびヒドロキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの有機基を有する芳香族化合物と、ジアゾニウム化合物、好ましくは芳香族ジアゾニウム化合物とを構造単位として含む共縮合体も好ましい。
なお、これらのジアゾ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。ジアゾ樹脂の含有量は、感光層の全固形分に対して、1〜70質量%であるのが好ましく、3〜60質量%であるのがより好ましい。
【0068】
ネガ型感光性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物としては、酸含有量が好ましくは0.1〜5.0meq/g、より好ましくは0.2〜3.0meq/gであり、実質的に水不溶性(即ち、中性または酸性の水溶液に不溶性)で、皮膜形成性を有する有機高分子化合物であって、アルカリ現像液に溶解しまたは膨潤することができ、かつ、上述したジアゾ樹脂の共存下で光硬化して上記現像液に不溶化しまたは非膨潤化するものが好ましい。酸含有量が0.1meq/g未満であると、現像が困難となる場合があり、5.0meq/gを超えると、現像時の画像強度が著しく弱くなる場合がある。
【0069】
特に好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む多元共重合体が挙げられる。例えば、特開昭50−118802号、特開昭53−120903号、特開昭54−98614号および特開昭56−4144号の各公報等に記載されている多元共重合体が挙げられる。
【0070】
また、結合剤としては、酸性ポリビニルアルコール誘導体や酸性セルロース誘導体も有用である。
また、ポリビニルアセタールやポリウレタンをアルカリ可溶化した特公昭54−19773号、特開昭57−94747号、同60−182437号、同62−58242号および同62−123453号の各公報に記載されている結合剤も有用である。
【0071】
結合剤の分子量は0.5〜20万であるのが好ましく、2〜15万であるのがより好ましい。
これらの結合剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0072】
感光層におけるジアゾ樹脂および結合剤の含有量は、これら両者の総量を基準にして、ジアゾ樹脂が3〜60質量%であり、結合剤が97〜40質量%であるのが適当である。ジアゾ樹脂の含有量は、少ない方が感度は高いが、3質量%未満であると、結合剤を光硬化させるためには不十分となり、現像時に光硬化膜が現像液によって膨潤し、膜が弱くなる。逆に、ジアゾ樹脂の含有量が60質量%を超えると、感度が低くなり、実用上難点が出てくる。好ましくは、ジアゾ樹脂が5〜40質量%であり、結合剤が95〜60質量%である。
【0073】
上記感光性樹脂組成物の各成分を溶解する溶媒に溶かして、本発明の平版印刷版用支持体上に塗布することによって、本発明の平版印刷版原版が得られる。溶媒は、アルカリ可溶性高分子化合物を含有する中間層を設ける場合には、アルカリ可溶性高分子化合物を溶解しないものが選択される。具体的には、例えば、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層の場合と同様の溶媒が挙げられる。塗布する方法としては、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層の場合と同様な種々の方法を用いることができる。
【0074】
上記成分の濃度(固形分)は、2〜50質量%であるのが適当である。塗布量(固形分)としては0.5〜4.0g/m2 であるのが好ましい。0.5g/m2 よりも少ないと、耐刷性が劣化する場合がある。4.0g/m2 よりも多いと、耐刷性は向上するが、感度が低下してしまう場合がある。
【0075】
感光性樹脂組成物中には、塗布性を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0076】
なお、上述したコンベンショナルネガタイプの感光層の下層に任意の層を設けてもよい。例えば、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層等が挙げられる。
【0077】
<フォトポリマータイプ>
(感光層)
フォトポリマータイプの感光層を有する本発明の平版印刷版原版に用いられる光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という。)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という。)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
【0078】
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0079】
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。
不飽和カルボン酸とエステルのモノマーを形成する脂肪族多価アルコール化合物の具体例としては、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリ(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ビス[p−(3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(2−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル]ジメチルメタン等が挙げられる。
ただし、3価以上のアルコール化合物は、分子内に少なくとも二つ以上の重合性不飽和基が含有されていればいずれでもよい。
また、本発明においては、これらのエステルモノマーの混合物を用いることもできる。
【0080】
不飽和カルボン酸とアミドモノマーを形成する脂肪族多価アミン化合物の具体例としては、メチレンジアミン、エタンジアミン、プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、キシリレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキサンジメチルアミン等が挙げられる。
【0081】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、ヒドロキシ基を有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を有するビニルウレタン化合物、特開昭51−37193号公報および特公平2−32293号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能の(メタ)アクリレートを挙げることができる。
更に、日本接着協会誌Vo1.20,No.7,p.300−308(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0082】
これらのエチレン性不飽和結合含有化合物の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、30〜70質量%であるのがより好ましい。
【0083】
光重合性組成物に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができる。以下に光重合開始剤の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合に、種々の光開始系が提案されている。以下に光重合開始剤の具体例を列挙するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
光重合開始剤の具体例としては、光還元性染料(米国特許第2,850,445号明細書記載:ローズベンガル、エオシン、エリスロジン等)、アミン(特公昭44−20189号公報記載)、ラジカル発生剤(特公昭45−37377号、特開昭52−112681号、同58−15503号、特開平2−179643号および同2−244050号の各公報記載)、ヘキサアリールビイミダゾール(特公昭47−2528号公報および特開昭54−155292号公報記載)、環状シス−α−ジカルボニル化合物(特開昭48−84183号公報記載)、環状トリアジン(特開昭54−151024号公報記載)、ビイミダジール(特開昭59−140203号公報記載)、有機過酸化物(特開昭59−1504号、同59−140203号、同59−189340号、同62−174203号および特公昭62−1641号の各公報ならびに米国特許第4,766,055号明細書記載)、活性ハロゲン化合物(特開昭63−258903号公報および特開平2−63054号公報記載)、ボレート化合物(特開昭62−143044号、同62−150242号、同64−13140号、同64−13141号、同64−13142号、同64−13143号、同64−13144号、同64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、同1−138204号および同11−84647号の各公報記載)、チオール化合物(特開昭59−140203号公報等記載)、ジスルホン化合物(特開昭61−166544号公報記載)、チタノセン化合物(特開昭59−152396号、同61−151197号、特開平4−219756号、同4−221958号、同6−295061号、同8−334897号、特開2000−147763号および同2001−042524号の各公報記載)、鉄−アレーン錯体(特開平1−304453号公報、同1−152109号公報等記載)等が挙げられる。
【0084】
本発明においては、特にチタノセン化合物を用いた系が感度の点で優れているので、好適に用いられる。
チタノセン化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、特開昭59−152396号公報および特開昭61−151197号公報に記載されている各種チタノセン化合物から適宜選んで用いることができる。
【0085】
これら光開始系において、光で露光(光重合)を可能にするためには、画像記録層が、更に増感色素または増感助剤を含有するのが好ましい。光重合開始剤に増感色素を併用することで、光重合開始剤の感光波長領域を調整することができる。
組み合わせる色素として好ましいものは、シアニン系、メロシアニン系、キサンテン系、ケトクマリン系、ベンゾピラン系の色素である。
シアニン系色素は、特に限定されないが、特開昭62−143044号公報、特公昭46−42363号公報等に記載されているものが好適に例示される。
メロシアニン系色素は、特に限定されないが、特公昭61−9621号公報、特開平2−179643号公報等に記載されているものが好適に例示される。また、メチン鎖中に、チアゾリジノン環、イミダゾリキノン環、オキサゾリジン環またはジチオラノン環を含有するメロシアニン染料(例えば、特開平2−244050号、特公昭59−28326号、特開昭59−89303号、特開平8−129257号の各公報等)も好適に例示される。
キサンテン系色素は、特に限定されないが、ローダミンB、ローダミン6G、エチルエオシン、アルコール可溶性エオシン、ピロニンY、ピロニンBが好適に例示される。
ケトクマリン系色素およびベンゾピラン系色素は、特に限定されないが、特開平8−334897号公報に記載されている化合物が好適に例示される。
【0086】
更に、光重合性組成物は、上記光重合開始剤に加えて、感度を一層向上させる作用、または、酸素による重合阻害を抑制する作用等を有する公知の化合物を共増感剤として含有してもよい。
このような共増感剤の例としては、アミン類(例えば、M.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻、p.3173(1972)、特公昭44−20189号、特開昭51−82102号、特開昭52−134692号、特開昭59−138205号、特開昭60−84305号、特開昭62−18537号および特開昭64−33104号の各公報、ならびに、Research Disclosure 33825号に記載されている化合物等)、チオールおよびスルフィド類(例えば、特開昭53−702号公報および特公昭55−500806号公報に記載されている化合物等)、特開平5−142772号公報に記載されているチオール化合物、特開昭56−75643号公報に記載されているジスルフィド化合物、アミノ酸化合物(例えば、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報に記載されている有機金属化合物(例えば、トリブチルスズアセテート等)、特公昭55−34414号公報に記載されている水素供与体、特開平6−308727号公報に記載されているイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250389号公報に記載されているリン化合物(ジエチルホスファイト等)等が挙げられる。
【0087】
これらの光重合開始剤または光開始系の含有量は、上記エチレン性不飽和結合含有化合物100質量部に対し、0.05〜100質量部であるのが好ましく、0.1〜70質量部であるのがより好ましく、0.2〜50質量部であるのが更に好ましい。
【0088】
光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。このような有機高分子重合体として、例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。
このような有機高分子重合体としては、側鎖にカルボキシ基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号および特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0089】
また、高分子結合剤としては、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体を用いることもできる。また、ヒドロキシ基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものも有用である。
【0090】
中でも、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体および〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。
また、水溶性有機高分子重合体として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が有用である。
また、硬化皮膜の強度を向上させるためには、アルコール可溶性ポリアミド、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル;特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号および特開平11−352691号の各公報に記載されているポリウレタン樹脂も有用である。
【0091】
これらの有機高分子重合体には、側鎖にラジカル反応性基を導入することにより、硬化皮膜の強度を向上させることができる。付加重合反応しうる官能基として、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が、光照射によりラジカルになりうる官能基として、メルカプト基、チオール基、ハロゲン原子、トリアジン構造、オニウム塩構造等が、極性基として、カルボキシ基、イミド基等がそれぞれ挙げられる。付加重合反応しうる官能基としては、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基等のエチレン性不飽和結合基が特に好ましいが、アミノ基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基、リン酸基、カルバモイル基、イソシアネート基、ウレイド基、ウレイレン基、スルホ基およびアンモニオ基からなる群から選ばれる官能基も有用である。
【0092】
光重合性組成物の現像性を維持するためには、本発明における高分子結合剤は適当な分子量および酸価を有するのが好ましい。重量平均分子量は、5000〜30万であるのが好ましく、また、酸価は20〜200であるのが好ましい。
【0093】
高分子結合剤は光重合性組成物中に任意の量を混和させることができるが、光重合性組成物の全固形分に対し、10〜90質量%であるのが好ましく、30〜80質量%であるのがより好ましい。90質量%を超えると、形成される画像強度等の点で好ましくない。
また、エチレン性不飽和結合含有化合物と高分子結合剤との質量比は、1/9〜9/1であるのが好ましく、2/8〜8/2であるのがより好ましく、3/7〜7/3であるのが更に好ましい。
【0094】
本発明においては、上記光重合性組成物が赤外線吸収剤を含有することもできる。赤外線吸収剤の具体例としては、後述するサーマルポジタイプの感熱層に用いられる各種の赤外線吸収剤が挙げられる。
【0095】
光重合性組成物は、以上の必須成分のほかに、光重合性組成物の製造中または保存中においてエチレン性不飽和結合含有化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合禁止剤を含有するのが好ましい。
好適な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0096】
また、光重合性組成物には、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を含有させて、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体等の含有は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.5〜約10質量%であるのが好ましい。
【0097】
更に、光重合性組成物には、感光層の着色を目的として、着色剤を含有させてもよい。着色剤としては、上述したコンベンショナルポジタイプおよびコンベンショナルネガタイプの感光層に用いられる染料および顔料(例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック)が挙げられる。着色剤の含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、約0.5〜約20質量%であるのが好ましい。
また、光重合性組成物には、硬化皮膜の物性を改良するため、無機充填剤;ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を含有させてもよい。これらの含有量は、光重合性組成物の全固形分に対して、10質量%以下であるのが好ましい。
【0098】
光重合性組成物は、後述する接着層上に塗布する際には、種々の溶媒に溶かして使用に供される。溶媒としては、上述したコンベンショナルネガタイプの感光層に用いられる溶媒として例示したのと同様のものが挙げられる。これらの溶媒は、単独でまたは混合して使用することができる。塗布溶液の濃度(固形分)は、1〜50質量%であるのが好ましい。
光重合性組成物には、塗布面質を向上させるために、界面活性剤を含有させることができる。
【0099】
感光層の被覆量(固形分)は、約0.1〜約10g/m2 であるのが好ましく、0.3〜5g/m2 であるのがより好ましく、0.5〜3g/m2 であるのが更に好ましい。
【0100】
(酸素遮断性保護層)
また、通常、上記感光層の上には、酸素の重合禁止作用を防止するために、酸素遮断性保護層が設けられる。
酸素遮断性保護層に含有される水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、その部分エステル、エ−テル、アセタール、それらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するその共重合体が挙げられる。
ポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400のものが挙げられる。
その他の有用な重合体としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
酸素遮断性保護層を塗布する際に用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等を純水と混合して用いてもよい。
塗布溶液の濃度(固形分)は、1〜20質量%であるのが好ましい。
酸素遮断性保護層には、更に塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
酸素遮断性保護層の被覆量は、乾燥後の質量で、約0.1〜約15g/m2 であるのが好ましく、約1.0〜約5.0g/m2 であるのがより好ましい。
【0102】
(接着層)
フォトポリマータイプの感光層の下層として、以下に示す接着層を設けるのは、本発明の好ましい態様の一つである。
接着層は、アルケニル基、アルキニル基等のラジカルによって付加反応を起こしうる官能基(以下「付加反応性官能基」という。)を有するシリコン化合物を含有する。
接着層の塗設は、付加反応性官能基と、アルコキシ基等の加水分解可能な官能基とを有する有機シリコン化合物(以下「有機シリコン化合物(S)」という。)を用いて、平版印刷版用支持体の表面を処理することにより、該加水分解可能な官能基と、支持体表面の金属、金属酸化物、水酸化物、ヒドロキシ基、支持体の化成処理によって形成されるシラノール基等とを反応させて、有機シリコン化合物と支持体表面との間に共有結合を形成させ、付加反応性官能基を支持体表面に結合させ、または植え付ければよい。有機シリコン化合物(S)の具体例としては、トリアルコキシシリル化合物(以下「有機シリコン化合物(S−1)」という。)、テトラアルコキシシラン化合物(以下「有機シリコン化合物(S−2)」という。)等のシランカップリング剤が挙げられる。
【0103】
有機シリコン化合物(S)としては、平版印刷版としたときの耐汚れ性を向上させる観点から、有機シリコン化合物(S−1)と有機シリコン化合物(S−2)とを混合して用いるのが好ましい。
【0104】
上述した有機シリコン化合物は、中央のSi原子に結合する1〜4個の付加反応性官能基のうち少なくとも1個が加水分解されずに残っている状態で平版印刷版用支持体に塗布される。有機シリコン化合物を平版印刷版用支持体上に塗設する際、そのまま用いてもよく、適当な溶媒で希釈して用いてもよい。
平版印刷版用支持体上で有機シリコン化合物をより強固に結合させるために、水および/または触媒を加えることができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルコール類が好適に例示され、また、触媒としては、塩酸、酢酸、リン酸、硫酸等の酸;アンモニア、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の塩基が好適に例示される。
【0105】
平版印刷版用支持体上の付加反応性官能基の量は、結合させる付加反応性官能基の種類によって異なるが、通常、10nm2 あたり0.01〜1000個であり、0.05〜200個であるのが好ましく、0.1〜50個であるのがより好ましい。付加反応性官能基量が10nm2 あたり0.01個未満であると、十分な光接着強度が得られにくい。有機シリコン化合物を厚く塗り重ねることによって、10nm2 あたりの付加反応性官能基量を実質的にいくらでも多くすることができるが、最表面に露出した状態で存在させることのできる付加反応性官能基量は10nm2 あたり高々10個であるので、厚く塗り過ぎても無駄になる。付加反応性官能基量が多すぎて、非画像部の親水性が不足しないようにするためには、10nm2 あたりの付加反応性官能基の量を1000個以下とするのが好ましい。
【0106】
有機シリコン化合物(S−1)に対する有機シリコン化合物(S−2)の混合モル比は、具体的には、0.05〜500であるのが好ましく、0.2〜200であるのがより好ましく、1〜100であるのが更に好ましい。また、上記範囲で、有機シリコン化合物(S−2)に由来する親水性基の量を多くすればするほど非画像部の親水性が増す。ただし、親水性基の密度が低い場合でも、付加反応性官能基を親水化処理することによって親水性基の密度を向上させることができる。
【0107】
平版印刷版用支持体の表面への付加反応性官能基の導入および有機シラン化合物の具体的態様は、例えば、特開平7−159983号公報および同8−320551号公報に記載されている内容を用いることができる。
【0108】
本発明に用いられる接着層の分布ムラがないようにするために、これらの処理液を支持体に塗布する前に溶媒を加えて濃度調整を行うことが好ましい。
この目的に使用する溶媒としてはアルコール類、特にメタノールが好適であるが、他の溶剤、有機化合物、無機添加剤、界面活性剤等を加えることもできる。他の溶剤の例としては、上述したコンベンショナルネガタイプの感光層に用いられる溶媒として例示したものが挙げられる。
添加することのできる有機化合物の例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ノボラック樹脂、ピロガロール−アセトン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリプロピレングリコールが挙げられる。
無機添加剤の例としては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナが挙げられる。
【0109】
本発明において用いられる液状組成物(有機シリコン化合物またはその溶液もしくはゾル液)の施工方法は、ハケ塗り、浸せき塗布、アトマイジング、スピンコーティング、ドクターブレード塗布等、各種のものも使用することができ、必要とする処理膜厚等を勘案して決められる。
【0110】
なお、上述した付加反応性官能基を有するシリコン化合物を含有する接着層は、フォトポリマータイプだけでなく、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプの各画像記録層においても、設けることができる。
【0111】
<サーマルポジタイプ>
(感熱層)
本発明に用いられるサーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ可溶性高分子化合物と赤外線吸収剤とを含有する。ここで、アルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含する。したがって、サーマルポジタイプの感熱層は、アルカリ現像液に接触すると溶解する特性を有する。
アルカリ可溶性高分子化合物としては、下記(1)〜(6)の酸性基のうち少なくとも一つを高分子の主鎖および/または側鎖中に有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい。
【0112】
(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2 NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(−SO2 NHCOR、−SO2 NHSO2 R、−CONHSO2 R)(以下「活性イミド基」という。)
(4)カルボキシ基(−CO2 H)
(5)スルホ基(−SO3 H)
(6)リン酸基(−OPO3 2
【0113】
上記(1)〜(6)中、Arは、置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0114】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基および(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が好ましく、特に、(1)フェノール基または(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物が、アルカリ現像液に対する溶解性、膜強度を十分に確保する点から最も好ましい。
【0115】
つぎに、これらのアルカリ可溶性高分子化合物の重合成分の代表的な例について述べる。
(1)フェノール性ヒドロキシ基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性ヒドロキシ基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられ、例えば、フェノール性ヒドロキシ基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシスチレン等の各誘導体類が挙げられる。
これらフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーは、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基(−NH−SO2 −)と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられ、例えば、アクリロイル基、アリル基またはビニロキシ基と、モノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平8−123029号公報に記載されている一般式(I)〜(V)で示される化合物が挙げられる。
これらの化合物のうち、スルホンアミド基を有する重合性モノマーとして、具体的には、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0117】
(3)活性イミド基を有する重合性モノマーとしては、特開平11−84657号公報に記載されている活性イミド基を分子内に有するものが好ましく、1分子中に、活性イミド基と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物とからなる重合性モノマーが挙げられる。
活性イミド基を有する重合性モノマーとしては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0118】
また、上記(4)カルボキシ基、(5)スルホ基および/または(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、1分子中に、これらの酸性基と、重合可能な不飽和基とをそれぞれ一つ以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0119】
サーマルポジタイプの感熱層に用いられるアルカリ可溶性高分子化合物を構成する、上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、または異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
共重合の方法としては、従来公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0120】
前記共重合体は、共重合させる上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているのが好ましく、20モル%以上含まれているのがより好ましい。10モル%未満であると、現像ラチチュードを十分に向上させることができない傾向がある。
【0121】
また、化合物を共重合して共重合体を形成する場合、その化合物として、上記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。
【0122】
アルカリ可溶性高分子化合物としては、赤外線レーザー等による露光での画像形成性に優れる点で、米国特許第4,123,279号明細書等に記載されているフェノール性ヒドロキシ基を有するノボラック樹脂類、ピロガロールアセトン樹脂が好ましい。
【0123】
アルカリ可溶性高分子化合物は、その重量平均分子量が500以上であることが好ましく、1,000〜700,000であることがより好ましい。また、その数平均分子量が500以上であることが好ましく、750〜650,000であることがより好ましい。分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.1〜10であることが好ましい。
【0124】
アルカリ可溶性高分子化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく、その合計の含有量が、感熱層の全固形分に対して、1〜90質量%であるのが好ましく、2〜70質量%であるのがより好ましく、2〜50質量%であるのが更に好ましい。含有量が1質量%未満であると、耐久性が悪化する傾向にあり、また、90質量%を超えると、感度および画像形成性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0125】
本発明に用いられる赤外線吸収剤は、光を吸収して発熱する物質である。赤外線吸収剤は、露光エネルギーを熱に変換して感熱層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。
本発明における赤外線吸収剤は、記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。
【0126】
前記顔料としては、市販の顔料、ならびに、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。
【0127】
前記顔料の種類としては、例えば、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラックを用いることができる。
【0128】
これらの顔料は表面処理をせずに用いてもよく、従来公知の表面処理を施して用いてもよい。
【0129】
前記顔料の粒径は、0.01〜10μmの範囲にあるのが好ましく、0.05〜1μmの範囲にあるのがより好ましく、0.1〜1μmの範囲にあるのが更に好ましい。上記範囲であると、顔料の分散物の感熱層塗布液中での安定性、感熱層の均一性等の点で好ましい。
【0130】
前記顔料を分散する方法としては、例えば、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)等に記載されているインキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。
【0131】
前記染料としては、市販の染料および文献(例えば、「色素ハンドブック」(株)講談社刊(1986年)、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、アズレニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属金属錯体(例えば、ジチオール金属錯体、含金属フタロシアニン)等の染料を用いることができる。
【0132】
本発明においては、これらの顔料または染料の中でも、赤外光または近赤外光を吸収するものが、赤外光または近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に好ましい。
【0133】
そのような赤外光または近赤外光を吸収する顔料としては、フタロシアニン(含金属フタロシアニンを含む。)、カーボンブラックが好適に用いられる。また、赤外光または近赤外光を吸収する染料としては、例えば、シアニン染料、メロシアニン染料、イミニウム染料、オキソノール染料、ピリリウム(チオピリリウム、セレナピリリウム、テルナピリリウムを含む。)系染料、ナフトキノン染料、スクワリリウム染料、フタロシアニン(含金属フタロシアニンを含む。)染料、有機金属錯体(ジチオール、ジアミン等との金属錯体化合物等)等が挙げられる。具体的には、例えば、特開平7−285275号公報の段落番号[0020]〜[0021]に記載されている化合物、および、「エレクトロニクス関連色素−現状と将来展望−」第16章(株)シーエムシー(1998年刊)等の公知資料に記載されている化合物が挙げられる。
【0134】
また、前記染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)または(II)として記載されている近赤外吸収染料、特開2000−267265号公報に記載されているアルカリ性水溶液に可溶となる赤外吸収色素、特開平11−309952号公報に記載されている熱によって親水性に変化する官能基を含有する赤外吸収色素、特開2000−160131号、同2000−330271号、同2001−117216号および同2001−174980号の各公報に記載されているポリメチン色素、特開2000−352817号公報に記載されているフタロシアニン色素が挙げられる。ただし、本発明に用いられる赤外線吸収剤としての色素は、これらに限定されるものではない。
【0135】
これらの顔料または染料の含有量は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合、特に好ましくは1〜10質量%である。顔料または染料の含有量が0.01質量%未満であると感度が低くなる場合があり、また、50質量%を超えると感熱層の均一性が失われ、感熱層の耐久性が悪くなる場合がある。
【0136】
これらの染料または顔料は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設け、そこへ添加してもよい。別の層とする場合、熱分解性でありかつ分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を含む層に隣接する層へ添加するのが好ましい。
【0137】
感熱層は、更に、必要に応じて、種々の添加剤を含有することができる。例えば、熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用すると、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図ることができるので、好ましい。そのような物質としては、例えば、オニウム塩、キノンジアジド類、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物が挙げられる。
【0138】
オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩が挙げられる。
中でも、好適な具体例としては、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層に用いられる光酸発生剤として例示した化合物と同一の内容のものが挙げられる。
【0139】
オニウム塩の対イオンは、無機イオンまたは有機イオンであり、具体的には、上記各公知文献に記載されているものを用いることができる。
【0140】
好適なキノンジアジド類としてはo−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。
【0141】
本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層に用いられるのと同様の化合物が挙げられる。
【0142】
オニウム塩やo−キノンジアジド化合物の添加量は、感熱層の全固形分に対して、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜30質量%の範囲である。
これらの化合物は単一で使用できるが、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0143】
サーマルポジタイプの感熱層に含有される他の成分としては、赤外線等の活性放射線で記録可能な公知の種々の画像記録層材料の成分を適宜選択して用いることができる。
サーマルポジタイプの感熱層は、必要に応じて、種々の添加剤を含有するすることができる。例えば、他のオニウム塩、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物、多官能アミン化合物等を含有させると、アルカリ可溶性高分子化合物の現像液への溶解抑止機能を向上させることができるので、好ましい。
【0144】
また、感熱層は、更に感度を向上させる目的で、フェノール類、米国特許第4,115,128号明細書等に記載されている環状酸無水物類、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報等に記載されている有機酸類を含有することもできる。
環状酸無水物類、フェノール類および有機酸類の含有量は、添加される層の全固形分に対して、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜15質量%であるのがより好ましく、0.1〜10質量%であるのが特に好ましい。
【0145】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、特開平8−276558号公報に記載されているヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物およびアルコキシメチル基を有するフェノール化合物、特開昭62−251740号公報および特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報および特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許出願公開第950,517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開昭62−170950号公報および特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体、特開平11−160860号公報に記載されているアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物、可塑剤類(例えば、ポリエチレングリコール;カルボン酸、リン酸等のアルキルエステル類)等を目的に応じて適宜含有することができる。これら添加剤は、感光層の他の性能を劣化させない範囲で任意に添加することができる。具体的には、それぞれ、添加される層の全固形分に対して、0.01〜15質量%であるのが好ましく、0.1〜5質量%であるのがより好ましい。
【0146】
また、感熱層は、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を含有することができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成しうる有機染料との組み合わせが例示される。具体的には、特開昭50−36209号、特開昭53−8128号、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号および特開昭63−58440号の各公報等に記載されている化合物が挙げられる。
【0147】
画像着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料が挙げられる。また、特開昭62−293247号公報および特開平5−313359号公報に記載されている染料は特に好ましい。
これらの染料の添加量は、添加される層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましく、0.1〜3質量%であるのがより好ましい。
【0148】
本発明の感熱層は1層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
【0149】
感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶かして得られる感熱層塗布液を、平版印刷版用支持体上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、上述したコンベンショナルネガタイプの感光層で用いられるのと同様の溶媒が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの溶媒は単独でまたは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。
塗布する方法としては、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層の場合と同様な種々の方法を用いることができる。
【0150】
また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性が低下する。
【0151】
(下塗層)
サーマルポジタイプの感熱層と支持体との間には、必要に応じて、下塗層を設けることができる。
下塗層に含有される成分としては種々の有機化合物が挙げられる。例えば、カルボキシメチルセルロース;デキストリン;アラビアガム;2−アミノエチルホスホン酸等のアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等の有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸、グリセロリン酸等の有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸、グリセロホスフィン酸等の有機ホスフィン酸;グリシン、β−アラニン等のアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩等のヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0152】
また、下塗層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層も好適に用いられる。この中間層を設けると、十分なアルカリ現像性を有し、印刷時の耐汚れ性および画像強度の低下を生じることなく、鮮明な画像の印刷物を多数枚得ることができるようになる。
なお、この下塗層は、サーマルポジタイプだけでなく、コンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプの各画像記録層においても、設けることができる。
【0153】
下塗層は次のような方法で設けることができる。即ち、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液を平版印刷版用支持体上に塗布し乾燥させて設ける方法と、水もしくはメタノール、エタノール、メチルエチルケトン等の有機溶剤またはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸せきさせて上記化合物を吸着させ、その後水等によって洗浄し乾燥させて設ける方法である。
前者の方法では、上記の有機化合物の好ましくは0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布することができる。また、後者の方法では、溶液の濃度は好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%であり、浸せき温度は好ましくは20〜90℃、より好ましくは25〜50℃であり、浸せき時間は好ましくは0.1秒〜20分、より好ましくは2秒〜1分である。
上記方法に用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウム等の塩基性物質や、塩酸、リン酸等の酸性物質により、pH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を含有することもできる。
下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2 であるのが適当であり、5〜100mg/m2 であるのが好ましい。被覆量が2mg/m2 未満であると、十分な耐刷性が得られない場合がある。また、200mg/m2 を超えても同様である。
【0154】
<サーマルネガタイプ>
(感熱層)
サーマルネガタイプの感熱層は、赤外線吸収剤を含有し、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の感熱層であれば、いずれのものも適用することができる。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、光重合層が好適に挙げられる。光重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物とを含有し、好ましくは更に(D)バインダーポリマーを含有する。
光重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
【0155】
また、光重合層のほかに、サーマルネガタイプの感熱層の一つとして、酸架橋層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、これらを含有する層を形成するための、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。
酸架橋層においては、光照射または加熱により、酸発生剤が分解して発生した酸が、架橋剤の働きを促進し、架橋剤同士の間または架橋剤とバインダーポリマーとの間で強固な架橋構造が形成され、これにより、アルカリ可溶性が低下して、現像剤に不溶となる。このとき、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。
【0156】
光重合層に用いられる各化合物について以下に述べる。
(A)赤外線吸収剤
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤が発生させた熱により、ラジカル発生剤や酸発生剤が分解し、ラジカルや酸を発生させる。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料または顔料である。
【0157】
前記染料としては、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される赤外線吸収剤として、上記に例示した染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとして、オキソノール色素、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、有機金属錯体類(フタロシアニン金属塩、ジチオレート金属錯体等)が挙げられる。具体的には、特開平11−119421号、同11−95421号、特開2000−267265号、同2000−338651号、同2000−347393号および同2001−125260号の各公報等に記載されている赤外線吸収色素が挙げられる。
【0158】
前記顔料としては、市販の顔料、ならびに、カラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)および「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料を利用することができる。具体的には、例えば、サーマルポジタイプの感熱層に含有される赤外線吸収剤として、上記に例示した顔料が挙げられる。
これらの顔料の詳細は、サーマルポジタイプの感熱層に用いられる顔料と同様である。
【0159】
染料または顔料の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、更に、染料の場合には、0.5〜10質量%であるのが更に好ましく、また、顔料の場合には、1.0〜10質量%であるのが更に好ましい。
含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷版とした場合に、非画像部に汚れが発生することがある。
【0160】
(B)ラジカル発生剤
ラジカル発生剤は、熱エネルギーによりラジカルを発生させ、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始させ、促進させる化合物である。ラジカル発生剤としては、従来公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物等を適宜選択して用いることができる。
例えば、オニウム塩化合物(具体的には、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層に用いられる光酸発生剤として例示したオニウム塩化合物等)、カルボニル化合物、有機過酸化物、有機ハロゲン化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、チタノセン系化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸塩化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。具体的には、例えば、上述したフォトポリマータイプの感光層に用いられる光重合開始剤として例示したものが挙げられる。
【0161】
また、ラジカル発生剤として、有機ホウ素錯体を用いることもできる。有機ホウ素錯体としては、例えば、特開平6−157623号、特開平6−175564号、特開平6−175561号の各公報に記載されている有機ホウ素スルホニウム錯体または有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報および特開平6−175553号公報に記載されている有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載されている有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号、特開平7−128785号、特開平7−140589号、特開平7−306527号、特開平7−292014号等の各公報に記載されている有機ホウ素遷移金属配位錯体等が挙げられる。
【0162】
これらラジカル発生剤の中でも、特に、オニウム塩化合物が好ましい。
本発明において、好適に用いることのできるオニウム塩化合物の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0030]〜[0033]に記載されているものを挙げることができる。
本発明において用いられるオニウム塩化合物は、極大吸収波長が400nm以下であるのが好ましく、360nm以下であるのがより好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、本発明の平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0163】
これらのラジカル発生剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.1〜50質量%であるのが好ましく、0.5〜30質量%であるのがより好ましく、1〜20質量%であるのが更に好ましい。含有量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また、50質量%を超えると印刷時非画像部に汚れが発生する場合がある。これらのラジカル発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらのラジカル発生剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0164】
(C)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。
【0165】
モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。
また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と、単官能または多官能のイソシアネート類またはエポキシ類との付加反応物、単官能または多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能または多官能のアルコール類、アミン類またはチオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能または多官能のアルコール類、アミン類またはチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0166】
より具体的な態様としては、フォトポリマータイプの感光層に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物として、上記に例示したのと同様の内容が挙げられる。
【0167】
これらのラジカル重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか2種以上を併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数や異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等:例えば、特公昭49−43191号、同52−30490号、同46−43946号、特公平1−40337号、同1−40336号、特開平2−25493号、特開昭61−22048号の各公報、日本接着学会誌,vol.20(No.7)(1984)等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出という点で好ましくない場合がある。また、感熱層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択および使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもありうる。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じるなどの問題を生じうる。
【0168】
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の配合比は、多くの場合、感熱層の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、20〜75質量%であるのがより好ましい。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成および塗布方法も実施しうる。
【0169】
(D)バインダーポリマー
本発明においては、更にバインダーポリマーを使用するのが好ましい。バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。線状有機ポリマーとしては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像または弱アルカリ水現像を可能とするために、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボキシ基を有するラジカル重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号の各公報に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。また、同様に、側鎖にカルボキシ基を有する酸性セルロース誘導体が挙げられる。このほかに、ヒドロキシ基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたもの等が有用である。
【0170】
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており、好適である。
【0171】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開平11−352691号の各公報等に記載されている酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性および低露光適性の点で有利である。
【0172】
更に、このほかに、水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるために、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0173】
本発明で使用される線状有機ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは5000以上であり、より好ましくは1万〜30万であり、また、数平均分子量は、好ましくは1000以上であり、より好ましくは2000〜25万である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上であり、好ましくは1.1〜10である。
【0174】
これらの線状有機ポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれであってもよい。
【0175】
バインダーポリマーは単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。バインダーポリマーの含有量は、感熱層の全固形分に対して、20〜95質量%であるのが好ましく、30〜90質量%であるのがより好ましい。含有量が20質量%未満であると、画像形成した際、画像部の強度が不足する場合がある。また、含有量が95質量%を超えると、画像形成されない場合がある。また、ラジカル重合性化合物と線状有機ポリマーとの質量比は、1/9〜7/3であるのが好ましい。
【0176】
つぎに、酸架橋層に用いられる各化合物について以下に述べる。
(A)赤外線吸収剤
酸架橋層に必要に応じて用いられる赤外線吸収剤は、前記光重合層において説明した(A)赤外線吸収剤と同様のものを用いることができる。
赤外線吸収剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜10質量%であるのがより好ましく、更に、染料の場合には、0.5〜10質量%であるのが更に好ましく、また、顔料の場合には、1.0〜10質量%であるのが更に好ましい。
含有量が、0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷版としたときに、非画像部に汚れが発生することがある。
【0177】
(E)酸発生剤
酸発生剤とは、200〜500nmの波長領域の光を照射し、または100℃以上に加熱することにより、酸を発生する化合物をいう。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる公知の化合物およびそれらの混合物等が挙げられる。
例えば、オニウム塩化合物、o−キノンジアジド化合物、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。これらの具体例は、上述したラジカル発生剤として例示したのと同様のものが挙げられる。オニウム塩化合物の好ましい態様としては、例えば、特開平10−39509号公報の段落番号[0010]〜[0035]に記載されている化合物等が挙げられる。
o−キノンジアジド化合物としては、サーマルポジタイプの感熱層に用いられるものとして上記に例示したのと同様の化合物が挙げられる。
【0178】
他の例としては、上述したコンベンショナルポジタイプの感光層に用いられる光酸発生剤として例示したのと同様の、有機金属/有機ハロゲン化物、o−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルホネ−ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物;これらの酸を発生させる基または化合物を、ポリマーの主鎖または側鎖に導入された化合物が挙げられる。
【0179】
更に、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem.Soc.,(B),329(1970)、米国特許第3,779,7798号明細書、欧州特許第126,712号明細書等に記載されている、光により酸を発生させる化合物を用いることもできる。
【0180】
上述した酸発生剤の中でも、特開2001−142230号公報の段落番号[0197]〜[0222]に記載されている化合物が好ましい。
【0181】
酸発生剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜50質量%であるのが好ましく、0.1〜25質量%であるのがより好ましく、0.5〜20質量%であるのが更に好ましい。
酸発生剤の含有量が0.01質量%未満であると、画像が得られないことがあり、また、50質量%を超えると、平版印刷版としたときに、印刷時において非画像部に汚れが発生することがある。
酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0182】
(F)架橋剤
架橋剤としては、以下のものが挙げられる。
(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、
(iii)エポキシ化合物。
【0183】
以下、上記(i)〜(iii)の化合物について詳述する。
(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物としては、例えば、ヒドロキシメチル基、アセトキシメチル基またはアルコキシメチル基でポリ置換されている芳香族化合物または複素環化合物が挙げられる。ただし、レゾール樹脂として知られるフェノール類とアルデヒド類とを塩基性条件下で縮重合させた樹脂状の化合物も含まれる。
ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物または複素環化合物の中でも、ヒドロキシ基に隣接する位置にヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を有する化合物が好ましい。
また、アルコキシメチル基でポリ置換された芳香族化合物または複素環化合物の中でも、アルコキシメチル基が炭素数18以下の化合物が好ましい。具体的には、例えば、特開2000−267265号公報の段落番号[0077]〜[0083]に記載されている一般式(8)〜(11)の化合物が挙げられる。
これらの架橋剤は、架橋効率が高く、耐刷性を向上させることができる点で好ましい。
【0184】
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物としては、欧州特許出願公開第0,133,216号、***特許第3,634,671号および同第3,711,264号の各明細書に記載されている、単量体およびオリゴマー−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物ならびに尿素−ホルムアルデヒド縮合物、欧州特許出願公開第0,212,482号明細書に記載されているアルコキシ置換化合物等が挙げられる。
中でも、例えば、少なくとも2個の遊離N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、N−アルコキシメチル誘導体がより好ましい。
【0185】
(iii)エポキシ化合物としては、一つ以上のエポキシ基を有する、モノマー、ダイマー、オリゴマー、ポリマー等のエポキシ化合物が挙げられ、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応生成物、低分子量フェノール−ホルムアルデヒド樹脂とエピクロルヒドリンとの反応生成物が挙げられる。
そのほかに、米国特許第4,026,705号明細書および英国特許第1,539,192号明細書に記載されているエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0186】
架橋剤として、前記(i)〜(iii)の化合物を用いる場合の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜75質量%であるのがより好ましく、20〜70質量%であるのが更に好ましい。
架橋剤の添加量が、5質量%未満であると、得られる画像記録材料の感熱層の耐久性が低下することがあり、また、80質量%を超えると、保存時の安定性が低下することがある。
【0187】
本発明においては、架橋剤として、特開2000−267265号公報の段落番号[0088]〜[0097]に記載されている一般式(12)で表されるフェノール誘導体も好適に使用することができる。
【0188】
(G)アルカリ可溶性高分子化合物
アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸性条件下で縮合させた樹脂が挙げられる。
【0189】
中でも、フェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、m−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、p−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、o−クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−、o−、m−/p−混合、m−/o−混合およびo−/p−混合のいずれでもよい)の混合物とホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂や、フェノールとパラホルムアルデヒドとを原料とし、触媒を使用せず密閉状態で高圧下で反応させて得られるオルソ結合率の高い高分子量ノボラック樹脂等が好ましい。
ノボラック樹脂は、重量平均分子量が800〜300,000で、数平均分子量が400〜60,000であるものの中から、目的に応じて好適なものを選択して用いるのが好ましい。
【0190】
また、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーも、ノボラック樹脂と同様に好適に用いられる。前記ヒドロキシアリール基としては、ヒドロキシ基が一つ以上結合したアリール基が挙げられる。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。中でも、入手の容易性および物性の観点から、フェニル基およびナフチル基が好ましい。
側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーの具体例としては、特開2001−142230号公報の段落番号[0130]〜[0163]に詳細に記載されているものが挙げられる。
アルカリ可溶性高分子化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0191】
アルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜95質量%であるのが好ましく、10〜95質量%であるのがより好ましく、20〜90質量%であるのが更に好ましい。
アルカリ水可溶性樹脂の含有量が、5質量%未満であると、感熱層の耐久性が劣化することがあり、また、95質量%を超えると、画像形成されないことがある。
【0192】
また、酸架橋層としては、上述した以外にも、特開平8−276558号公報に記載されているフェノール誘導体を含有するネガ型画像記録材料、特開平7−306528号公報に記載されているジアゾニウム化合物を含有するネガ型記録材料、特開平10−203037号公報に記載されている環内に不飽和結合を有する複素環基を有するポリマーを用いた、酸触媒による架橋反応を利用したネガ型画像形成材料等を用いることもできる。
【0193】
(H)その他の成分
サーマルネガタイプの感熱層は、上記各成分のほかに、必要に応じて、更に、種々の化合物を添加してもよい。
例えば、可視光域に大きな吸収を持つ上述した染料および顔料を画像の着色剤として使用することができる。これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。着色剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましい。
【0194】
また、感熱層が光重合層である場合、塗布液の調製中または保存中において、ラジカル重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、上述したフォトポリマータイプの感光層の光重合性組成物に用いることができる熱重合禁止剤を、少量の熱重合防止剤として添加することが好ましい。
熱重合防止剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0195】
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0196】
更に、感熱層においては、必要に応じて、各種添加剤を併用することができる。具体的には、上述したサーマルポジタイプの感熱層に任意に添加される成分として用いられる化合物が挙げられる。
【0197】
上記感熱層を設けて本発明の平版印刷版原版を得るには、サーマルポジタイプの感熱層と同様の方法を用いればよい。
【0198】
塗布し乾燥させて得られる感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、通常、0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。上記範囲であると、各種性能が好適なものとなる。
【0199】
<無処理タイプ>
無処理タイプの感熱層としては、例えば、加熱または輻射線の照射により、照射部分が特定の酸性基(例えば、ホスホ基、スルホ基、カルボキシ基)を発生して可溶化するポリマー、または、照射部分が疎水性領域を形成しうる化合物(以下「疎水性化前駆体」ともいう。)を含有する親水性ポリマーマトリックスを含有する感熱層が挙げられる。
【0200】
特定の酸性基を発生して可溶化するポリマーとしては、スルホン酸発生系のものが好ましく、例えば、特開平10−282672号公報に記載されているスルホン酸エステル基、ジスルホン基またはsec−もしくはtert−スルホンアミド基を側鎖に有するポリマー等を挙げることができる。
【0201】
疎水性化前駆体としては、例えば、
(a)疎水性微粒子ポリマー
(b)疎水性物質を内包するマイクロカプセル
が挙げられる。これらは、加熱により、互いに融着したり、マイクロカプセルが内包する疎水性化前駆体が熱により化学反応を起こしたりして、画像部領域、即ち、疎水性領域(親インキ領域)を形成しうる。そして、これらの疎水性化前駆体は、好ましくは親水性のバインダー中に分散されているので、画像記録(露光)後は、印刷機シリンダー上に平版印刷版原版を取り付け、湿し水および/またはインキを供給することで、特段の現像処理を行うことなく、機上現像することができる。
【0202】
疎水性微粒子ポリマーおよび疎水性物質を内包するマイクロカプセルの平均粒径は、いずれも0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜5.0μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、高精細な画像形成が可能となり、また、微粒子ポリマーの経時安定性が良好となる。
【0203】
疎水性微粒子ポリマーとしては、熱可塑性微粒子ポリマー、熱硬化性微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー等が挙げられる。
熱可塑性微粒子ポリマーとしては、Reseach Disclosure No.33303(1992年1月)、特開平9−123387号、同9−131850号、同9−171249号、同9−171250号の各公報、欧州特許出願公開第931,647号明細書等に記載されている熱可塑性微粒子ポリマーを好適なものとして挙げることができる。
熱硬化性微粒子ポリマーとしては、例えば、フェノール骨格を有する樹脂、尿素系樹脂(例えば、尿素またはメトキシメチル化尿素等の尿素誘導体をホルムアルデヒド等のアルデヒド類により樹脂化したもの)、メラミン系樹脂(例えば、メラミンまたはその誘導体をホルムアルデヒド等のアルデヒド類により樹脂化したもの)、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂が奉げられる。
【0204】
また、疎水性物質を内包するマイクロカプセルとしては、例えば、上記疎水性微粒子ポリマーを内包するマイクロカプセル、即ち、熱可塑性微粒子ポリマー、熱硬化性微粒子ポリマー、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー等を内包するマイクロカプセルが挙げられる。
【0205】
しかし、疎水性化前駆体として特に好ましいのは、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーまたは熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルである。
これらに共通に用いられる熱反応性官能基としては、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基等);付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等);付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基;縮合反応を行うカルボキシ基とヒドロキシ基またはアミノ基;開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基、ヒドロキシ基またはビニルオキシ基等を挙げることができる。しかし、加熱により化学結合が形成される機能を有するものであれば、どのような反応を行う官能基でもよい。
【0206】
このような熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーとしては、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、酸無水物;それらを保護した基を有するものを挙げることができる。これらの基のポリマー粒子への導入は、重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
【0207】
重合時に導入する場合は、これらの基を有するモノマーを乳化重合し、または懸濁重合するのが好ましい。
そのような基を有するモノマーの具体例として、例えば、特開2001−293971号公報の段落番号[0018]〜[0035]に記載されている化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル等を挙げることができるが、熱反応性官能基を有しないモノマーであれば、これらに限定されない。
熱反応性官能基の導入を重合後に行う場合に用いる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応を挙げることができる。
【0208】
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの凝固温度は、70℃以上であるのが好ましいが、経時安定性を考えると100℃以上であるのがより好ましい。
【0209】
疎水性微粒子ポリマーの含有量は、感熱層の全固形分に対して、50質量%以上であるのが好ましく、60質量%以上であるのがより好ましい。
【0210】
本発明に用いられるマイクロカプセルは、疎水性物質、好ましくは上記熱反応性官能基を有する化合物を内包している。この熱反応性官能基を有する化合物としては、重合性不飽和基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、酸無水物、アミノ基、エポキシ基およびイソシアネート基ならびにそのブロック体から選ばれた少なくとも一個の官能基を有する化合物を挙げることができる。
【0211】
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物が好ましく、このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらの化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体およびオリゴマーもしくはそれらの混合物またはそれらの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、特開2001−277742号公報の段落番号[0016]〜[0032]に記載されているものが挙げられる。
【0212】
重合性不飽和基を有する化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)、そのエステルおよびアミドが挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルおよび不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが挙げられる。
また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミドと、単官能もしくは多官能イソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、および、単官能または多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に挙げられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能または多官能のアルコール、アミンおよびチオールとの付加反応物、更に、ハロゲン基、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能または多官能アルコール、アミンおよびチオールとの置換反応物も好適に挙げられる。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
【0213】
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルである、重合性不飽和基を有する化合物のモノマーの具体例としては、フォトポリマータイプの感光層に用いられるエチレン性不飽和結合含有化合物として上記に例示した、各アクリル酸エステル、各メタクリル酸エステル、各イタコン酸エステル、各クロトン酸エステル、各イソクロトン酸エステルおよび各マレイン酸エステルが挙げられる。具体的には、例えば、特開2001−293971号公報の段落番号[0021]〜[0030]に記載されている化合物が挙げられる。
【0214】
その他の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、サーマルネガタイプの感熱層に用いられるラジカル重合性化合物として上記に例示したのと同様のものが挙げられる。
【0215】
エポキシ基を有する化合物としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテル等が好適に挙げられる。
【0216】
イソシアネート基を有する化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート;それらをアルコールまたはアミンでブロックした化合物が好適に挙げられる。
【0217】
アミノ基を有する化合物としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン等が好適に挙げられる。
ヒドロキシ基を有する化合物としては、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類等が好適に挙げられる。
【0218】
カルボキシ基を有する化合物としては、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸等が好適に挙げられる。
酸無水物を有する化合物としては、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物等が好適に挙げられる。
ビニルオキシ基を有する化合物としては、例えば、特開2002−29162号公報に記載されている化合物が好適に挙げられる。
【0219】
エチレン性不飽和結合を有する化合物の共重合体としては、アリルメタクリレートの共重合体が好適に挙げられる。具体的には、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
【0220】
疎水性物質を内包するマイクロカプセルの製造方法としては、カプセル膜を作る界面重合法、in−situ法、コンプレックスコアセルベート法、有機溶媒系からの相分離法等の公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、特開2001−293971号公報の段落番号[0036]に記載されている方法等を用いることができる。
【0221】
疎水性物質を内包するマイクロカプセルに用いられるマイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものであるのが好ましい。この観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはこれらの混合物が好ましく、中でも、ポリウレアおよび/またはポリウレタンがより好ましい。上記マイクロカプセル壁には、上記熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
【0222】
このような疎水性物質を内包するマイクロカプセルは、マイクロカプセル同士が熱により合体するものであってもよいし、合体しないものであってもよい。要は、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面またはマイクロカプセル外に滲み出したもの、または、マイクロカプセル壁に浸入したものが、熱により化学反応を起こせばよい。また、添加された親水性樹脂、または、添加された低分子化合物と反応してもよい。また、2種以上のマイクロカプセルに、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせることによって、マイクロカプセル同士を反応させてもよい。
したがって、熱によってマイクロカプセル同士が、熱で溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
【0223】
感熱層における疎水性物質を内包するマイクロカプセルの含有量は、感熱層の全固形分に対して、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度および耐刷性が得られる。
【0224】
疎水性物質を内包するマイクロカプセルを感熱層に含有させる場合、内包物を溶解させることができ、かつ、壁材を膨潤させることができる溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物等のマイクロカプセル外への拡散が促進される。このような溶剤の選択は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレアやポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
【0225】
具体的には、上述したコンベンショナルポジタイプに用いられる溶媒として例示したものと同様のものが挙げられるが、本発明はこれらに限られない。また、これらの溶剤を2種以上用いてもよい。
【0226】
また、マイクロカプセル分散液には溶解しないが、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。その添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが有効であり、10〜90質量%であるのが好ましく、15〜85質量%であるのがより好ましい。
【0227】
無処理タイプの感熱層が、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーおよび/または熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有する場合には、必要に応じて、これらの反応を開始させまたは促進させる化合物を添加してもよい。反応を開始させまたは促進させる化合物としては、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物を挙げることができる。例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、オニウム塩(ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩等)、アシルホスフィン、イミドスルホナート等が挙げられる。具体的には、例えば、サーマルネガタイプに用いられるラジカル発生剤として例示した化合物、および、コンベンショナルポジタイプに用いられる光酸発生剤として例示した化合物が挙げられる。
これらの化合物の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1〜20質量%であるのが好ましく、3〜10質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
【0228】
疎水性化前駆体としては、その周囲が親水性であり、水に分散しうる自己水分散型微粒子を用いるのが特に好ましい。自己水分散型微粒子は、自己水分散性を有するので、感熱層を形成する際に用いられる感熱層用塗布物中で、容易に、かつ、均一に分散し、また、該塗布物を塗布し乾燥させた後の感熱層(乾膜)中でも、親水性バインダーマトリックス中で粒子同士が凝集することなく均一に分散して存在する。したがって、高精細な印刷が可能であり、かつ、乾膜の経時安定性に優れる。
【0229】
自己水分散型微粒子としては、(1)分子内に親油性樹脂の構造部分と親水性基とを有する構造部分とを有する原料樹脂を、特開平3−221137号公報、特開平5−66600号公報等に記載されているような転相乳化法によって乳化剤や保護コロイドなしに水に分散させて得られる樹脂微粒子、(2)コア/シェル構造を有し、コア部は親油性樹脂、シェル部は親水性成分からなる樹脂で構成される微粒子、(3)疎水性物質を内包し、その表面を親水性の壁材料で保護して得られるマイクロカプセル微粒子が好適に挙げられる。
これらの微粒子の周囲を親水性とする方法は、特に限定されないが、例えば、特開2001−315452号公報の段落番号[0052]〜[0056]に記載されているのと同様の方法が挙げられる。
【0230】
上記微粒子ポリマーおよび/またはマイクロカプセルは、親水性樹脂からなるマトリックス中に分散させることで、機上現像する場合には機上現像性が良好となり、更に、感熱層自体の皮膜強度も向上する。また、親水性樹脂を架橋硬化させて、現像処理不要の平版印刷版原版を得ることができる。
親水性樹脂としては、例えば、特開2001−293971号公報の段落番号[0043]に記載されているヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものや、特開2000−335131号公報の段落番号[0063]〜[0077]に記載されている親水性のゾルゲル変換系結着樹脂が好ましい。
【0231】
親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜40質量%であるのが好ましく、10〜30質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像する場合にも良好な機上現像性が得られ、また、良好な皮膜強度が得られる。
【0232】
また、上記親水性樹脂は、架橋硬化させて用いてもよい。親水性樹脂を架橋硬化させる架橋剤としては、通常、架橋剤として用いられている化合物が挙げられる。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981年)、高分子学会編「高分子データハンドブック、基礎縮」培風館(1986年)等に記載されている化合物を用いることができる。具体的には、例えば、特開2002−36745号公報の段落番号[0053]に記載されている化合物が挙げられる。
そのほかに、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の架橋触媒を併用することができる。
【0233】
無処理タイプの感熱層においては、親水性樹脂の中でも、ゾルゲル変換系結着樹脂を用いるのが好ましい。以下、詳細に説明する。
無処理タイプの感熱層に好適に用いられるゾルゲル変換系結着樹脂としては、多価元素から出ている結合基が酸素原子を介して網目状構造を形成し、かつ、多価元素が未結合のヒドロキシ基、アルコキシ基等も有していて、これらが混在した樹脂状構造となっている高分子体であって、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が多い段階ではゾル状態であり、エーテル結合化が進行するのに伴って網目状の樹脂構造が強固となるような高分子体が挙げられる。
【0234】
ゾルゲル変換系結着樹脂は、樹脂組織の親水性度が変化する性質に加えて、ヒドロキシ基等の一部が固体微粒子に結合することによって固体微粒子の表面を修飾し、親水性度を変化させる働きをも併せ持っている。
ゾルゲル変換を行うヒドロキシ基、アルコキシ基等を有する多価元素は、アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。中でも、ケイ素を用いるシロキサン結合によるゾルゲル変換系が好ましい。以下、シロキサン結合によるゾルゲル変換系について説明するが、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を用いるゾルゲル変換系は、下記の説明のケイ素をそれぞれの元素に置き換えて実施することができる。
【0235】
シロキサン結合によるゾルゲル変換系は、ゾルゲル変換が可能な、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を含む系である。
【0236】
ゾルゲル変換によって形成される無機親水性結着樹脂は、好ましくはシロキサン結合およびシラノール基を有する樹脂である。無処理タイプの感熱層は、少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物を含むゾルの系である塗布液を平版印刷版用支持体に塗布し、塗布後、シラノール基の加水分解縮合が進んでシロキサン骨格の構造が形成され、ゲル化が進行することによって形成される。
また、このゾルゲル変換系によって形成される感熱層は、膜強度、柔軟性等の物理的性能の向上や、塗布性の改良等を目的として、後述する有機親水性ポリマー、架橋剤等を含有することもできる。
【0237】
ゲル構造を形成するシロキサン樹脂および少なくとも1個のシラノール基を有するシラン化合物の具体的の例としては、特開2002−6504号公報の段落番号[0054]〜[0057]に記載されている化合物が挙げられる。
【0238】
無機親水性結着樹脂の形成には、上記シラン化合物とともに、Ti、Zn、Sn、Zr、Al等のゾル−ゲル変換の際に樹脂に結合して成膜可能な金属化合物を併用することができる。
このような金属化合物としては、例えば、Ti(OR′)4 、TiCl4 、Zn(OR′)2 、Zn(CH3 COCHCOCH3 2 、Sn(OR′)4 、Sn(CH3 COCHCOCH3 4 、Sn(OCOR′)4 、SnCl4、Zr(OR′)4 、Zr(CH3 COCHCOCH3 4 、Al(OR′)3 、Al(CH3 COCHCOCH3 3 等が挙げられる。
【0239】
更に、上記シラン化合物、および、それと併用することができる上記金属化合物の加水分解反応および重縮合反応を促進するために、従来公知の無機酸、炭酸、カルボン酸等の酸性触媒またはアンモニア、有機アミン類等の塩基性触媒を併用することが好ましい。
触媒は、酸もしくは塩基性化合物をそのままで、または、水、アルコール等の溶媒に溶解させた状態として用いることができる(以下、酸を用いるものを「酸性触媒」、塩基性化合物を用いるものを「塩基性触媒」という。)。溶媒に溶解させる場合の濃度は、特に限定されないが、濃度が濃い方が加水分解反応および重縮合反応の速度が速くなる傾向がある。ただし、濃度の濃い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成することがあるため、塩基性触媒の濃度(水溶液での濃度換算)は1N以下であるのが好ましい。
【0240】
上述したように、無処理タイプの感熱層としては、ゾル−ゲル法によって作成される感熱層(親水性樹脂としてゾルゲル変換系結着樹脂を含有させた感熱層)が好ましい。上記ゾル−ゲル法の詳細は、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島碩「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記載されている。
【0241】
親水性樹脂の含有量は、感熱層の全固形分に対して、5〜70質量%であるのが好ましく、10〜50質量%であるのがより好ましい。上記範囲内であると、良好な機上現像性および皮膜強度が得られる。
【0242】
無処理タイプの感熱層には、赤外線吸収剤を添加することが必要である。赤外線吸収剤は、波長700nm以上の光を吸収する物質であればよく、種々の顔料、染料および金属微粒子を用いることができる。
【0243】
顔料および染料としては、例えば、上述したサーマルポジタイプの感熱層に用いられるものと同様のものが挙げられる。
中でも、顔料としては、水溶性または親水性の樹脂と分散しやすく、かつ、親水性を損わないように、親水性樹脂やシリカゾルで表面がコートされたカーボンブラックが特に好ましい。
顔料の粒径は、0.01μm〜1μmの範囲にあることが好ましく、0.01μm〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。
また、染料としては、水溶性染料が特に好ましい。具体的には、例えば、特開2001−96936号公報の段落番号[0036]〜[0041]に記載されている化合物が挙げられる。
【0244】
前記金属微粒子としては、光熱変換性で光照射によって熱融着する金属微粒子であれば特に限定されないが、特開2001−293971号公報の段落番号[0081]〜[0082]に記載されているように、8〜11族(第VIII族および第IB族)に属する金属の単体または合金の微粒子であるのが好ましく、Ag、Au、Cu、PtおよびPdから選ばれる金属の単体または合金の微粒子であるのがより好ましい。
金属微粒子は、分散安定剤を含む水溶液に上記金属の塩または錯塩の水溶液を添加し、更に還元剤を添加して金属コロイドとした後、不要な塩類を除去して用いられる。具体的には、例えば、特開2002−29165号公報、特開2000−335131号公報等に記載されている。
【0245】
金属コロイドの平均粒子径は、1〜500nmであるのが好ましく、1〜100nmであるのがより好ましく、1〜50nmであるのが更に好ましい。その分散度は多分散でもよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
【0246】
赤外線吸収剤の含有量は、顔料または染料の場合、感熱層の全固形分に対して、30質量%以下であるのが好ましく、5〜25質量%であるのがより好ましく、7〜20質量%であるのが更に好ましい。また、金属微粒子の場合、感熱層の全固形分の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、20質量%以上であるのが更に好ましい。金属微粒子の含有量が5質量%未満であると、感度が低くなってしまう場合がある。
【0247】
無処理タイプの感熱層には、必要に応じて、上述した成分以外に、種々の化合物を含有することができる。例えば、耐刷性を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層のマトリックス中に含有させることができる。このような多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に内包されるモノマーとして例示したものを用いることができる。特に好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレートを挙げることができる。
【0248】
また、無処理タイプの感熱層には、画像形成後、画像部と非画像部との区別をつけやすくするため、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、上述したサーマルポジタイプの感熱層に用いられる画像着色剤と同様の化合物が挙げられる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタン等の顔料も、同様に好適に用いることができる。
これらの含有量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜10質量%であるのが好ましい。
【0249】
また、無処理タイプの感熱層がエチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する場合、その不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
好適な熱重合防止剤としては、例えば、上述したフォトポリマータイプの感光層の光重合性組成物に用いることができる熱重合禁止剤として例示した化合物が挙げられる。
熱重合防止剤の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0250】
また、無処理タイプの感熱層には、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の含有量は、感熱層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0251】
更に、無処理タイプの感熱層は、必要に応じて、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を含有することができる。可塑剤としては、上述したサーマルポジタイプの感熱層に用いられる可塑剤と同様の化合物が例示される。
【0252】
また、無処理タイプの感熱層は、無機微粒子を含有することができる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム等が挙げられる。これらは光熱変換性ではなくても、皮膜の強化、感熱層の表面粗面化による界面接着性の強化等の効果を奏する。
無機微粒子の含有量は、感熱層の全固形分に対して、1.0〜70質量%であるのが好ましく、5.0〜50質量%であるのがより好ましい。1%以下であると期待される効果が小さく、また、70質量%以上であると本来必要な赤外線吸収剤の含有量が制約される場合がある。
【0253】
また、無処理タイプの感熱層は、親水性ゾル状粒子を含有することができる。上記親水性ゾル状粒子の平均粒径は、1〜50nmであるのが好ましく、1〜40nmであるのがより好ましい。親水性ゾル状粒子の粒径が上記範囲内であると、親水性樹脂内において、赤外線吸収剤として含有される金属微粒子等や、上述した疎水性熱溶融性樹脂微粒子等の疎水性化前駆体(露光しない状態では疎水性であり、露光により疎水性となる成分)とともに安定に分散して、感熱層の膜強度を十分に保持することができ、また、レーザー光等により露光して製版し、平版印刷版として印刷したときに、非画像部へのインキの付着汚れを生じない、極めて親水性に優れたものになるという効果が得られる。
親水性ゾル状粒子としては、例えば、シリカゾル、アルミナゾル、酸化マグネシウムゾル、炭酸マグネシウムゾル、アルギン酸カルシウムゾルが好適に挙げられる。中でも、シリカゾル、アルミナゾル、アルギン酸カルシウムゾルまたはこれらの混合物が好ましい。
これらの親水性ゾル状粒子は、いずれも、市販品として容易に入手することができる。
【0254】
上記赤外線吸収剤と上記親水性ゾル状粒子の存在割合は、質量比で、100/0〜30/70であるのが好ましく、100/0〜40/60であるのがより好ましい。
また、赤外線吸収剤、疎水性化前駆体および親水性ゾル状粒子の合計の含有量は、感熱層の全固形分に対して、2〜95質量%であるのが好ましく、5〜85質量%であるのがより好ましい。
【0255】
感熱層は、通常、上記各成分を溶媒に溶かして得られる感熱層塗布液を、親水層(陽極酸化皮膜層または親水化処理後の陽極酸化皮膜層)上に塗布することにより製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、上述したフォトポリマータイプの感光層に用いられるのと同様の溶媒が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの溶剤は単独でまたは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(全固形分)の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。
【0256】
塗布する方法としては、上述したような種々の方法を用いることができる。
【0257】
また、感熱層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/m2 であるのが好ましい。上記範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性が低下する。
【0258】
本発明における感熱層には、塗布性を改善するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量は、感熱層の全固形分に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
【0259】
<オーバーコート層>
サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプ(以下、総称して「サーマルタイプ」ともいう。)の感熱層の上には、オーバーコート層を設けることができる。
本発明に用いられるオーバーコート層は水溶性層であり、現像処理時または印刷時に容易に除去されるものである。オーバーコート層は、平版印刷版原版を積み重ねて保存した場合におけるくっつきを防止するために、離型性を有する。
【0260】
オーバーコート層の主成分は、水溶性の有機または無機の高分子化合物であり、その水溶液等を塗布し乾燥させることによって形成される皮膜がフィルム形成能を有するものである。
具体的には、例えば、特開2001−162961号公報の段落番号[0011]に記載されている水溶性樹脂、特開2002−19315号公報に記載されているセルロース類等が挙げられる。
【0261】
また、オーバーコート層は、その他の添加物を必要に応じて含有していてもよい。例えば、離型性を増加させるために、水溶性または水分散性のフッ素原子および/またはケイ素原子を含有する化合物を含有するのが好ましい。
また、光熱変換物質を含有するのが好ましい。光熱変換物質としては、例えば、特開2001−162961号公報に記載されている化合物が好適に挙げられる。
【0262】
オーバーコート層は、表面の動摩擦係数(μk)が2.5以下であるのが好ましく、0.03〜2.0であるのがより好ましい。表面の動摩擦係数が上記範囲であると、平版印刷版原版の搬送性が良好であり、かつ、アルカリ現像性または機上現像性および耐刷性も良好となる。
ここで、表面の「動摩擦係数」は、標準ASTMD1894に従った測定法により測定したものである。即ち、下にある材料の表面が上にある材料の裏面と接触しているように平版印刷版原版が置かれる。「裏面」とは、平版印刷版用支持体の上に画像記録層およびオーバーコート層が設けられていない面を意味し、「表面」とは、平版印刷版用支持体の上に画像記録層およびオーバーコート層が設けられている面を意味する。動摩擦係数は、平版印刷版原版を3000枚積み重ねて、35℃、75%の条件下で3日間放置した後、一番下のサンプルを測定して求めることができる。
【0263】
このような好ましい態様のオーバーコート層は、水溶性樹脂、界面活性剤等の種類や、離型性を増加させるフッ素原子および/またはケイ素原子を含有する化合物の種類および添加量を適宜組み合わせることで得ることができる。例えば、フッ素原子および/またはケイ素原子を含有する化合物のオーバーコート層の全固形物に対する割合を、0.05〜5.0質量%とするのが好ましく、0.1〜3質量%とするのがより好ましい。
【0264】
<バックコート層>
このようにして、本発明の平版印刷版用支持体上に、各種の画像記録層を設けて得られた本発明の平版印刷版原版の裏面には、必要に応じて、重ねた場合における画像記録層の傷付きを防止するために、有機高分子化合物からなる被覆層(以下「バックコート層」という。)を設けることができる。
バックコート層の主成分としては、ガラス転移点20℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂および塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好適に用いられる。
飽和共重合ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸ユニットとジオールユニットとからなる。ジカルボン酸ユニットとしては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、シュウ酸、スベリン酸、セバチン酸、マロン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0265】
バックコート層は、更に、着色のための染料、顔料等;平版印刷版用支持体との密着性を向上させるためのシランカップリング剤、ジアゾニウム塩からなるジアゾ樹脂、有機ホスホン酸、有機リン酸、カチオン性ポリマー等;滑り剤として通常用いられる、ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、ジメチルシロキサンよりなるシリコーン化合物、変性ジメチルシロキサン、ポリエチレン粉末等を適宜含有することができる。
【0266】
バックコート層の厚さは、基本的には合紙がなくとも画像記録層を傷付けにくい程度であればよく、0.01〜8μmであるのが好ましい。厚さが0.01μm以下であると、平版印刷版原版を重ねて取り扱った場合の画像記録層の擦れ傷を防ぐことが困難となる。厚さが8μmを超えると、印刷中、平版印刷版の周辺で用いられる薬品によってバックコート層が膨潤して厚みが変動し、印圧が変化して印刷特性を劣化させることがある。
【0267】
バックコート層を平版印刷版原版の裏面に被覆するには種々の方法を適用することができる。例えば、上記各成分を適当な溶媒の溶液にして、または乳化分散液にして、塗布し乾燥させる方法、あらかじめフィルム状に成形したものを接着剤や熱で貼り合わせる方法、溶融押し出し機で溶融皮膜を形成し、貼り合わせる方法等が挙げられる。
中でも、上述した塗布量を確保するうえで好ましいのは、溶液にして塗布し乾燥させる方法である。溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独でまたは混合して用いられる。塗布の方式および条件としては、画像記録層を塗布する方式および条件の多くを利用することができる。即ち、例えば、コーティングロッドを用いる方法、エクストルージョン型コーターを用いる方法、スライドビードコーターを用いる方法が利用できる。
バックコート層は、画像記録層を設ける前に設けてもよく、設けた後に設けてもよく、画像記録層と同時に設けてもよい。
【0268】
[画像形成および現像処理]
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の種類に応じて、従来公知の画像形成(例えば、露光)および現像処理を行って平版印刷版とすることができる。
像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、ケミカルランプが挙げられる。放射線としては、例えば、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザビーム)が挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム・ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム・カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
また、サーマルタイプの感熱層の場合は、従来公知のサーマルヘッド方式を用いることもできる。
【0269】
中でも、デジタルデータに基づきレーザ光を照射して所望の画像様に露光した、フォトポリマータイプ、サーマルタイプの製版原版は、後述するようにアルカリ現像液を用いる方法で現像処理を行うのが好ましい。
このような方法で、露光および現像処理を行うと、ポジ型の平版印刷版原版(サーマルポジタイプ)の場合は、露光部の画像記録層に含有される赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部の画像記録層のみが発熱してアルカリ可溶性となり、アルカリ現像液を用いた現像処理により、露光部の画像記録層のみが除去されて所望の画像が形成される。また、ネガ型の平版印刷版原版(サーマルネガタイプ)の場合は、露光部の画像記録層に含有される赤外線吸収剤によりレーザー光が効率よく吸収され、露光による吸収エネルギーの蓄積により露光部の画像記録層のみが発熱して酸を発生し、この酸により共存する架橋剤が架橋反応を起こし、露光部の画像記録層のみがアルカリ不溶性となる一方、未露光部の画像記録層がアルカリ現像液を用いた現像処理により除去されて、所望の画像が形成される。
また、画像記録層がコンベンショナルポジタイプである場合は、同様に、後述するアルカリ現像液を好適に用いることができる。画像記録層がコンベンショナルネガタイプである場合は、例えば、特開平3−103857号公報に記載されているような現像液を用いることができる。
【0270】
以下、上記方法の現像処理に用いられるアルカリ現像液(以下、単に「現像液」ともいう。)について説明する。
現像処理に用いられるアルカリ現像液はアルカリ性水溶液であり、従来公知のアルカリ水溶液の中から適宜選択して用いることができるが、ケイ酸アルカリまたは非還元糖と、塩基とを含有するアルカリ水溶液が好適に挙げられ、特にpH12.5〜14.0のものがより好適に挙げられる。
【0271】
ケイ酸アルカリは、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであり、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム等のアルカリ金属ケイ酸塩;ケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0272】
ケイ酸アルカリを用いるアルカリ水溶液においては、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2 とアルカリ酸化物M2 O(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表す。)との混合比率および濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。
中でも、酸化ケイ素SiO2 とアルカリ酸化物M2 Oとの混合比率(SiO2 /M2 O:モル比)が0.5〜3.0のものが好ましく、1.0〜2.0のものがより好ましい。SiO2 /M2 Oが0.5未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版原版に用いられるアルミニウム板をエッチングしてしまうという弊害が生じることがあり、また、3.0を超えると、現像性が低下することがある。
【0273】
また、上記アルカリ水溶液におけるケイ酸アルカリの濃度は、1〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましく、4〜7質量%であるのが更に好ましい。濃度が1質量%未満であると、現像性および処理能力が低下することがあり、また、10質量%を超えると、沈殿や結晶を生成しやすくなり、更に廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0274】
非還元糖と塩基とを含有するアルカリ水溶液において、「非還元糖」とは、遊離性のアルデヒド基やケトン基を持たないために還元性を有しない糖類を意味する。非還元糖は、還元基同士の結合したトレハロース型少糖類と、糖類の還元基と非糖類が結合した配糖体と、糖類に水素添加して還元した糖アルコールとに分類され、これらのいずれも好適に用いることができる。具体的には、特開平8−305039号公報および特開平11−216962号公報に記載されている化合物が例示される。
【0275】
これらの非還元糖は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ水溶液における非還元糖の含有量は、0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。
【0276】
上記ケイ酸アルカリまたは上記非還元糖と組み合わせて用いられる塩基としては、従来公知のアルカリ剤を適宜選択することができる。
アルカリ剤としては、例えば、特開平11−216962号公報の段落番号[0083]〜[0084]に記載されている化合物が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0277】
中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これらを用いると、非還元糖に対する添加量を調整することにより、広いpH領域においてpH調整が可能となるためである。
また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等もそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。
【0278】
アルカリ現像液は、上述したアルカリ水溶液に、界面活性剤を含有させて得られる。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0279】
本発明に用いられるノニオン性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。
好ましくは、特開平11−338126号公報の段落番号[0062]〜[0067]に記載されている化合物が挙げられる。
【0280】
その他の界面活性剤の具体例としては、特開平11−338126号公報の段落番号[0095]〜[0099]に記載されている化合物が挙げられる。
【0281】
界面活性剤の含有量は、現像液中、0.1〜15質量%であるのが好ましく、0.5〜8.0質量%であるのがより好ましく、1.0〜5.0質量%であるのが更に好ましい。含有量が少なすぎると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を招き、逆に多すぎると、平版印刷版の耐刷性を低下させる。
【0282】
アルカリ現像液は、キレート剤を含有することができる。キレート剤としては、例えば、Na2 2 7 、Na5 3 3 、Na3 3 9 、Na2 4 P(NaO3 P)PO3 Na2 、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)等のポリリン酸塩;エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩、トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等のアミノポリカルボン酸類;2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等の有機ホスホン酸類が挙げられる。
【0283】
キレート剤の含有量は、使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて決定されるが、使用時の現像液中、0.001〜5質量%であるのが好ましく、0.01〜1.0質量%であるのがより好ましく、0.05〜0.5質量%であるのが更に好ましい。
【0284】
本発明に用いられるアルカリ現像液には、更に現像性能を高める目的で、以下のような添加剤を添加することができる。
例えば、特開昭58−75152号公報に記載されているNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭58−190952号公報に記載されているEDTA、NTA等のキレート剤、特開昭59−121336号公報に記載されている[Co(NH3) 6]Cl3 、CoCl2 ・6H2 O等の錯体、特開昭50−51324号公報に記載されているアルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、n−テトラデシル−N,N−ジヒドロキシエチルベタイン等のアニオンまたは両性界面活性剤、米国特許第4,374,920号明細書に記載されているテトラメチルデシンジオール等の非イオン性界面活性剤、特開昭55−95946号公報に記載されているp−ジメチルアミノメチルポリスチレンのメチルクロライド第四級化合物等のカチオニックポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されているビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ソーダとの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭57−192951号公報に記載されている亜硫酸ソーダ等の還元性無機塩、特開昭58−59444号公報に記載されている塩化リチウム等の無機リチウム化合物、特開昭59−75255号公報に記載されている有機Si、有機Ti等を含有する有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報に記載されている有機ホウ素化合物等が挙げられる。
【0285】
また、アルカリ現像液には、現像カスの分散性や、平版印刷版用原版の画像部の親インキ性を高めるなどの目的で、必要に応じて、現像安定剤、有機溶剤、還元剤、有機カルボン酸、硬水軟化剤、防腐剤、着色剤、増粘剤、消泡剤等を添加してもよい。
例えば、特開平11−216962号公報の段落番号[0101]〜[0110]に記載されている化合物類が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0286】
本発明に用いられるアルカリ現像液の使用態様は、特に限定されない。
近年では、特に、製版・印刷業界において、製版作業の合理化および標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。
この自動現像機は、一般に現像部と後処理部とからなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とを有し、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理を行うものである。また、最近は、処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷版を浸せき搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量、稼動時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
【0287】
この場合、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液を補充液として現像液中に加えることによって、長時間現像タンク中に現像液を交換することなく多量の印刷版を処理することができる。本発明に用いられるアルカリ現像液を使用するに際しても、この補充方式を採用することが好ましい態様である。
補充液としては、例えば、上述したアルカリ現像液であって、現像用の現像液よりもアルカリ強度の高いものを用いることができる。
【0288】
現像液および補充液には、現像性の促進または抑制、現像カスの分散性および画像部の親インキ性を高める目的で、必要に応じて、上記以外の種々の界面活性剤、有機溶剤等を添加することもできる。界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤または両性界面活性剤が好ましい。有機溶剤としては、ベンジルアルコール等が好ましい。また、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリプロピレングリコールまたはその誘導体等の添加も好ましい。
更に、必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸または亜硫酸水素酸のナトリウム塩またはカリウム塩等の無機塩系還元剤;有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤等を添加することもできる。
【0289】
上述したアルカリ現像液および補充液を用いて現像処理されて得られる本発明の平版印刷版は、一般に、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガム、デンプン誘導体を含有する不感脂化液を用いて後処理がなされる。この後処理には、これらの処理液を種々組み合わせて行うことができる。
また、実質的に未使用のアルカリ現像液で処理する、いわゆる使い捨て処理方式とすることもできる。
【0290】
また、以下に示すような、平版印刷版原版に露光した後、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像する平版印刷版の処理方法も用いられる。この方法を用いると、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像する場合における問題、即ち、SiO2 に起因する固形物が析出しやすいこと、現像液の廃液を処理する際の中和処理においてSiO2 に起因するゲルが生成すること等の問題の発生を防止することができる。なお、本方法については、特開平11−109637号公報に詳細に記載されており、本発明においては、該公報に記載されている内容を用いることができる。
【0291】
▲1▼露光
本方法においては、現像処理の前に、像露光を行う。像露光に用いられる活性光線の光源としては、上記で例示したものを用いることができる。
【0292】
▲2▼現像
上記露光の後、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像を行うのが好ましい。
本方法に用いられる好ましい現像液は、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液であれば特に限定されないが、実質的に有機溶剤を含有しないアルカリ性の水溶液であるのが好ましい。ただし、必要により有機溶剤を含有してもよい。
また、この現像液は、糖類を含有するのが好ましい。例えば、主成分として、非還元糖から選ばれる少なくとも一つの化合物と、少なくとも一種の塩基とを含有し、pH9.0〜13.5である現像液が挙げられる。
【0293】
また、画像記録層が無処理タイプである場合には、露光して製版原版とした後、上述したようなアルカリ現像液で現像処理することなく、水または水溶液での簡易処理で平版印刷版とすることができる。この場合、実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない水溶液を用いるのが好ましい。
例えば、必要に応じて、有機溶剤を含有してもよいアルカリ性の水溶液が挙げられる。この水溶液は、更に、糖類(例えば、非還元糖類)から選ばれる化合物を含有してもよい。
また、この無処理タイプの平版印刷版原版は、露光して画像記録をした後、処理することなく、印刷機の版胴に取り付けられ、例えば、▲1▼平版印刷版原版に湿し水を供給し、機上で現像した後に、インキを供給して印刷を開始する方法、▲2▼平版印刷版原版に湿し水およびインキを供給し、機上で現像した後に、インキを供給して印刷を開始する方法、▲3▼平版印刷版原版にインキを供給し、湿し水を供給すると同時に紙を供給して印刷を開始する方法によって、印刷をすることができる。
【0294】
また、無処理タイプの平版印刷版原版は、特許第2938398号明細書に記載されているように、版胴上に取り付けた後に、印刷機に搭載されたレーザまたはサーマルヘッドにより画像記録し、その後、湿し水および/またはインキを供給して機上現像することもできる。
即ち、無処理タイプの平版印刷版原版は、好ましくは、水または水溶液によって現像することができ、また、現像することなくそのまま印刷機に装着して印刷することができるものである。
【0295】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
<サーマルポジタイプの平版印刷版原版についての実施例>
1.平版印刷版原版の作成
(実施例1)
Si:0. 06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0. 005質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理およびろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作成した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmのアルミニウム板に仕上げた。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理を連続的に行った。
【0296】
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0297】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2 溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0298】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0299】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、温度50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
【0300】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0301】
(f)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
【0302】
(g)陽極酸化処理
図4に示す構造の二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一および第二電解部長各6m、第一および第二給電部長各3m、第一および第二給電電極長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0303】
前記陽極酸化装置においては、電源67aおよび67bからの電流は、第一給電部62aに設けられた第一給電電極65aに流れ、電解液を介してアルミニウム板11に流れ、第一電解部63aでアルミニウム板11の表面に酸化皮膜を生成させ、第一電解部63aに設けられた電解電極66aおよび66bを通り、電源67aおよび67bに戻る。
一方、電源67cおよび67dからの電流は、第二給電部62bに設けられた第二給電電極65bに流れ、前記と同様に電解液を介してアルミニウム板11に流れ、第二電解部63bでアルミニウム板11の表面に酸化皮膜を生成させる。
【0304】
電源67aおよび67bから第一給電部62aに給電される電気量と、電源67cおよび67dから第二給電部62bに給電される電気量とは等しく、また、第一電解部63aおよび第二電解部63bにおける電流密度はともに約30A/dm2 であった。第二給電部62bでは、第一電解部63aで生成した1.35g/m2 の酸化皮膜面を通じて給電したことになる。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2 であった。
【0305】
(h)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体(本発明の平版印刷版用支持体)を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用い、スプレーによる水洗を行った。
【0306】
(i)中間層(下塗り層)の形成
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体(本発明の平版印刷版用支持体)上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/m2 であった。
【0307】
<下塗り液組成>
・下記式で表される高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
【0308】
【化1】
Figure 0003761478
【0309】
(j)感熱層の形成
ついで、下記組成の感熱層塗布液1を調製し、下塗りしたアルミニウム支持体に、この感熱層塗布液1を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.0g/m2 になるよう塗布し、乾燥して感熱層(サーマルポジタイプの画像記録層)を形成させ、実施例1の平版印刷版原版を得た。
【0310】
<感熱層塗布液1組成>
・カプリン酸 0.03g
・後述する特定の共重合体1 0.75g
・m,p−クレゾールノボラック(m/p比=6/4、重量平均分子量3,500、未反応クレゾール0.5質量%含有) 0.25g
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03 g
・下記式で表されるシアニン染料A 0.017g
【0311】
【化2】
Figure 0003761478
【0312】
・ビクトリアピュアブルーBOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料 0.015g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.05g
・γ−ブチルラクトン 10g
・メチルエチルケトン 10g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1g
【0313】
<特定の共重合体1>
かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた500mL容の三つ口フラスコに、メタクリル酸31.0g(0.36mol)、クロロギ酸エチル39.lg(0.36mol)およびアセトニトリル200mLを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物をかくはんした。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36mol)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴を取り去り、室温下で30分間混合物をかくはんした。
【0314】
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30mol)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間かくはんした。反応終了後、この混合物を水1Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分間得られた混合物をかくはんした。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mLでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0315】
つぎに、かくはん機、冷却管および滴下ロートを備えた20mL容の三つ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g(0.0192mol)、メタクリル酸エチル2.94g(0.0258mol)、アクリロニトリル0.80g(0.015mol)およびN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物をかくはんした。この混合物に「V−65」(和光純薬社製)0.15gを加え、65℃に保ちながら窒素気流下で、混合物を2時間かくはんした。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド4.61g、メタクリル酸エチル2.94g、アクリロニトリル0.80g、N,N−ジメチルアセトアミドおよび「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、更に、得られた混合物を65℃で2時間かくはんした。反応終了後、メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2Lにこの水をかくはんしながら投入し、30分混合物をかくはんした後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体の特定の共重合体1を得た。
得られた特定の共重合体1の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、53,000(ポリスチレン標準)であった。
【0316】
(実施例2)
上記(g)陽極酸化処理において、電解液として、4質量%のホウ酸アンモニウム水溶液を用い、第一電解部63aおよび第二電解部63bにおける電流密度をともに0.1A/dm2 として低電流電解とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の平版印刷版原版を得た。
【0317】
(実施例3)
上記(d)電気化学的粗面化処理において、電解液を塩酸7.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)とし、電流密度を電流のピーク値で25A/dm2 とし、電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の平版印刷版原版を得た。
【0318】
(実施例4)
用いたアルミニウム板におけるCu含有量を0.017質量%とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の平版印刷版原版を得た。
【0319】
(実施例5)
(g)陽極酸化処理後、(h)アルカリ金属ケイ酸塩処理前に、下記のようにして加圧水蒸気を用いて封孔処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5の平版印刷版原版を得た。
封孔処理は、100℃、1気圧において飽和した蒸気チャンバーの中で10秒間処理することにより行った。
【0320】
(実施例6)
上記(d)電気化学的粗面化処理において、電解液として、硝酸10g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)を用い、電解液の温度を80℃とし、TPを0msecとし、電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で130C/dm2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例6の平版印刷版原版を得た。
【0321】
(比較例1)
上記(a)機械的粗面化処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1の平版印刷版原版を得た。
【0322】
(比較例2)
上記(d)電気化学的粗面化処理において、用いた交流電圧の周波数を3Hzとし、電解液の温度を35℃とし、電気量をアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で400C/dm2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の平版印刷版原版を得た。
【0323】
(比較例3)
上記(g)陽極酸化処理において、電解液の硫酸濃度を250g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)とし、電解液の温度を50℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の平版印刷版原版を得た。
【0324】
(比較例4)
上記(g)陽極酸化処理において、電解液として、50g/Lのリン酸水溶液を用い、第一電解部63aおよび第二電解部63bにおける電流密度をともに20A/dm2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例4の平版印刷版原版を得た。
【0325】
(比較例5)
上記(e)アルカリエッチング処理において、液温を調整してアルミニウム板の溶解量を1.0g/m2 とした以外は、実施例1と同様の方法により、比較例5の平版印刷版原版を得た。
【0326】
2.平版印刷版用支持体のピット(中波構造)の平均直径の測定およびピット内部の微細な凹凸(小波構造)の観察
平版印刷版用支持体の表面を、支持体に垂直な方向から、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率10000倍のSEM写真を撮影した。SEM写真において、30個のピットについて直径を測定し、ピットの平均直径を求めた。また、SEM写真において、ピット内部に微細な凹凸があるか否かを観察した。
結果を第1表に示す。
【0327】
3.平版印刷版用支持体の表面の大波構造の波長の測定
平版印刷版原版の感熱層をγ−ブチロラクトンで溶解除去した後、日本電子社製のT−20型走査型電子顕微鏡を用いて、法線方向から30℃の方向から、露出した表面を倍率2000倍で観察し、2μmより大きい波長成分を水平方向に30点測定して、その平均波長を求めた。
結果を第1表に示す。なお、第1表中、「−」は、該当する波長の凹部がなかったことを示す。
【0328】
4.マイクロポアの平均ポア径および平均ポア密度の測定
平版印刷版原版の感熱層をγ−ブチルラクトンで溶解除去し、更に、γ−ブチルラクトン中で30分間超音波洗浄した後、露出した表面をFE−SEM(S−900、日立製作所社製)により蒸着せずに倍率15万倍でSEM写真を撮影した。SEM写真で3視野観察し、100個のポアについてポア径を測定し、その平均値を平均ポア径とした。
また、前記SEM写真から、300nm四方の部分を3視野抜き取り、その中のポア数を数えてポア密度の平均値を求め、平均ポア密度とした。
結果を第1表に示す。
【0329】
5.平版印刷版原版の傷付きにくさの評価
上記のようにして得られた平版印刷版原版について、傷付きにくさの評価を行った。
平版印刷版原版の感熱層表面に合紙を置き、その上下を段ボール紙で挟み、25℃、50%RHの環境下で3日間放置した。その後、平版印刷版原版の感熱層表面を木綿製の手袋で5往復擦り、富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用いて、自動現像機900NPにより現像した。擦った部分が傷付いて白く抜けている程度を目視で観察して評価した。
現像前と全く変化なかったものを○、ほぼ支持体が見えてしまい感熱層の色がほとんど見えなかったものを×、その中間レベルを○△、△、△×で表した。
結果を第1表に示す。
【0330】
6.平版印刷版原版の感度の評価
平版印刷版原版をCREO社製のTrendSetter3244を用いて版面エネルギー量を変更して全面露光した後、富士写真フイルム(株)製のPS版用現像液DT−1を標準使用条件で用いて、自動現像機900NPにより現像した。感熱層が完全に除去されたと目視で観察されたときの版面エネルギー量により感度を評価した。
結果を第1表に示す。
【0331】
7.平版印刷版原版の耐汚れ性の評価
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nmビーム径17μm(1/e2 )の半導体レーザーを装備したCREO社製TrenndSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cm2 で像様露光した。
その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムK2 Oよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィンAK−02(日信化学社製)0.015質量%を含有する水溶液1LにC1225N(CH2 CH2 COONa)2 を1g添加したアルカリ現像液を用いて現像処理を行った。現像処理は、上記アルカリ現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
このようにして得られた平版印刷版を用いて、三菱ダイヤ型F2印刷機(三菱重工業社製)で、DIC−GEOS(s)紅のインキを用いて印刷し、1万枚印刷した後におけるブランケットの汚れを目視で評価した。
【0332】
8.平版印刷版原版の耐刷性の評価
耐汚れ性の評価と同様の方法で得られた平版印刷版を用いて、小森コーポレーション社製のリスロン印刷機で、大日本インキ化学工業社製のDIC−GEOS(N)墨のインキを用いて印刷し、ベタ画像の濃度が薄くなり始めたと目視で認められた時点の印刷枚数により、耐刷性を評価した。
【0333】
本発明の平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版は、傷付きにくく、かつ、感度に優れることが分かる(実施例1〜6)。特に、用いたアルミニウム板におけるCu含有量が0.005質量%である場合(実施例1〜3、5および6)は、中波構造を構成するピットの平均直径が小さく均一になりやすく、特に傷付きにくい。
これに対して、比較例1〜5は、実施例1〜6と同様に、感熱層表面の凹凸を少なくして滑らかにしたものであるが、以下のような欠点がある。即ち、平版印刷版用支持体の表面に大波構造がない場合(比較例1)および大波構造の波長が長すぎる場合(比較例2)は、感熱層と支持体との間ではく離を起こし、傷付きやすい。また、陽極酸化皮膜のマイクロポアの平均ポア密度が高すぎる場合(比較例3)および平均ポア径が大きすぎる場合(比較例4)は、感度に劣る。更に、ピット内部に微細な凹凸を有しない場合(比較例5)は、感熱層と支持体との間ではく離を起こし、傷付きやすい。
また、本発明の平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版は、比較例1〜5の平版印刷版原版に比べて、耐汚れ性および耐刷性にも優れていた。
【0334】
【表1】
Figure 0003761478
【0335】
<サーマルネガタイプの平版印刷版原版についての実施例>
1.平版印刷版原版の作成
(実施例7〜12および比較例6)
上記(h)、(i)および(j)を行わず、下記(k)、(l)および(m)を行った以外は、実施例1〜6および比較例5と同様の方法により、各平版印刷版原版を得た。
【0336】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られた各アルミニウム支持体(本発明の平版印刷版用支持体)を温度25℃のケイ酸ソーダの2質量%水溶液の処理層中へ、15秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0337】
(l)中間層(下塗り層)の形成
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体(本発明の平版印刷版用支持体)上に、後述する下塗り液を塗布し、支持体上のSi量が3mg/m2 となるように塗設した。
【0338】
下塗り液は、以下のようにして調製した。
まず、下記の各化合物を混合し、かくはんした。約5分で発熱が認められた。60分間反応させた後、内容物を別の容器へ移し、メタノール3000gを加えることにより、SG法の液状組成物(ゾル液)を得た。得られたゾル液をメタノール/エチレングリコール=9/1(質量比)で希釈して、下塗り液を得た。
【0339】
<ゾル液組成>
・メタノール 130g
・水 20g
・85質量%リン酸 16g
・テトラエトキシシラン 50g
・3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 60g
【0340】
(m)感熱層の形成
ついで、中間層を設けた各アルミニウム支持体に、下記組成の感熱層塗布液[NL−1]をワイヤーバーを用いて、乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が1.3g/m2 となるように塗布し、115℃で45秒間乾燥させて、感熱層(サーマルネガタイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版[N−1]を得た。
【0341】
<感熱層塗布液[NL−1]組成>
・下記式で表される赤外線吸収剤 0.10g
・下記式で表される重合開始剤(ラジカル発生剤) 0.30g
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 1.00g
・アリルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体(モル比80:20、重量平均分子量12万) 1.00g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.04g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−176、大日本インキ化学工業社製) 0.01g
・メチルエチルケトン 9.0g
・メタノール 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.0g
【0342】
【化3】
Figure 0003761478
【0343】
(実施例13〜18および比較例7)
上記(m)において、感熱層塗布液[NL−1]の変わりに、下記組成の感熱層塗布液[NL−2]を用いた以外は、実施例7〜12および比較例6と同様の方法により、平版印刷版原版[NL−2]を得た。
【0344】
<感熱層塗布液[NL−2]組成>
・上記[NL−1]で用いた赤外線吸収剤 0.10g
・下記式で表される酸発生剤(X) 0.15g
・フェノールとホルムアルデヒドとから得られるノボラック樹脂(重量平均分子量10000) 1.5g
・下記式で表される架橋剤MM−1 0.50g
・フッ素系界面活性剤(メガファックF−177、大日本インキ化学工業社製) 0.03g
・メチルエチルケトン 15g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10g
・メタノール 5g
【0345】
【化4】
Figure 0003761478
【0346】
2.平版印刷版原版の傷付きにくさの評価
上述したようにして各支持体から得られた平版印刷版原版[N−1]および[N−2]について、傷付きにくさの評価を行った。
平版印刷版原版の感熱層表面に合紙を置き、その上下を段ボール紙で挟み、25℃、50%RHの環境下で3日間放置した。その後、平版印刷版原版の感熱層表面を木綿製の手袋で5往復擦り、後述する耐汚れ性および耐刷性の評価と同様の方法で、露光および現像処理を行って画像形成した。擦った部分が傷付いて白く抜けている程度を目視で観察して評価した。
【0347】
3.平版印刷版原版の感度の評価
上述したようにして各支持体から得られた平版印刷版原版[N−1]および[N−2]を、版面エネルギー量を変化させて露光した以外は、後述する耐汚れ性および耐刷性の評価と同様の方法で、露光および現像処理を行った。画像を形成することができた版面エネルギー量により感度を評価した。
【0348】
4.平版印刷版原版の耐汚れ性および耐刷性の評価
上述したようにして各支持体から得られた平版印刷版原版[N−1]および[N−2]を、版材供給装置(SA−L8000)、露光装置(Luxel T−9000CTP)、コンベア(T−9000 Conveyor)、自動現像機(LP−1310H)およびストッカー(ST−1160)を具備する富士写真フイルム(株)製のCTP出力システムを用いて露光および現像処理を行って画像形成し、平版印刷版を得た。ここで、自動現像機の現像処理槽の第一浴には、ケイ酸アルカリを主成分とする現像液(富士写真フイルム(株)製DP−4の水希釈液(1:7))を仕込み、30℃に保温した。第二浴には、水道水を仕込んだ。第三浴には、フィニッシングガム液(富士写真フイルム(株)製FP−2Wの水希釈液(1:1)を仕込んだ。
得られた平版印刷版を用いて、サーマルポジタイプの平版印刷版原版についての実施例と同様の方法で、印刷し、耐汚れ性および耐刷性の評価を行った。
【0349】
本発明の平版印刷版用支持体を用いた本発明の平版印刷版原版(実施例7〜18)は、比較例6および7の平版印刷版原版に比べて、傷付きにくく、かつ、感度に優れていた。
また、実施例7〜18の平版印刷版原版[N−1]および[N−2]は、いずれも耐汚れ性が良好であり、かつ、耐刷性が5万枚以上と優れていた。これは、サーマルネガタイプの平版印刷版原版においては、加熱または放射線の照射により画像記録層が硬化して画像部となるが、この際に、支持体の表面形状が本発明の平版印刷版用支持体のような特定の表面形状であると、画像記録層と支持体との密着性が高くなり、耐刷性が優れたものになるからであると考えられる。
【0350】
<無処理タイプの平版印刷版原版についての実施例>
1.平版印刷版原版の作成
上記(h)、(i)および(j)を行わず、下記(n)を行った以外は、実施例1〜6と同様の方法により、平版印刷版原版を得た。
【0351】
(n)感熱層の形成
陽極酸化処理により得られた各アルミニウム支持体(本発明の平版印刷版用支持体)に、下記組成の感熱層用塗布液[ML]を乾燥後の塗布量(感熱層塗布量)が0.8g/m2 になるようワイヤーバーで塗布し、90℃で2分間乾燥させて、感熱層(無処理タイプの画像記録層)を形成させ、平版印刷版原版を得た。
【0352】
<感熱層用塗布液[ML]組成>
・水 70g
・後述する合成例(1)で得られた、熱で外壁が破れるマイクロカプセル 5g(固形分換算)
・ポリヒドロキシエチルアクリレート 0.5g
・p−ジアゾジフェニルアミン硫酸塩 0.3g
・下記式F1で表されるε−フタロシアニン(赤外線吸収剤)の分散物 0.3g
【0353】
【化5】
Figure 0003761478
【0354】
<合成例(1)>
油相成分として、キシリレンジイソシアネート40g、トリメチロールプロパンジアクリレート10g、アリルメタクリレートとブチルメタクリレートとの共重合体(モル比60/40)10gおよびパイオニンA41C(竹本油脂社製)10gを酢酸エチル60gに溶解した。水相成分として、PVA205(クラレ(株)製)の4%水溶液120gを調製した。油相成分と水相成分とをホモジナイザーを用いて10000rpmで乳化した。その後、水を40g添加し、室温で30分、更に40℃で3時間かくはんした。このようにして得られたマイクロカプセル分散液の固形分濃度は20質量%であり、マイクロカプセルの平均粒径は0.5μmであった。
【0355】
2.平版印刷版原版の耐汚れ性および耐刷性の評価
上述したようにして各支持体から得られた平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザを搭載したCreo社製Trendsetter 3244VFSを用いて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、版面エネルギー100mJ/cm2 、解像度2400dpiの条件で露光した後、何ら処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、更に紙を供給して印刷を行った。
各平版印刷版原版について、このようにして、問題なく機上現像をすることができ、印刷することができた。印刷10枚目の印刷物を20倍のルーペを用いて評価したところ、地汚れはなく、ベタ画像部の濃度の均一性は極めて良好であった。更に印刷を継続したところ、細線や細文字の欠落およびベタ画像濃度のムラはなく、非画像部の汚れも発生せず、良好な印刷物が2万枚以上得られた。
これは、無処理タイプのネガ型の平版印刷版原版においては、加熱または放射線の照射により画像記録層の有するマイクロカプセルが破れて内包物が流出した後に硬化するなどの機構で画像部となるが、この際に、支持体の表面形状が本発明の平版印刷版用支持体のような特定の表面形状であると、流出した内包物等が支持体表面の微細な凹凸にひっかかった状態で硬化し、画像記録層と支持体との密着性が高くなり、耐刷性が優れたものになるからであると考えられる。
【0356】
【発明の効果】
本発明の平版印刷版原版は、耐汚れ性および耐刷性に優れ、好ましくは、更に、傷付きにくく、感度が高く、印刷性能に優れ、通常作業での取り扱いが容易である。本発明の平版印刷版用支持体は、本発明の平版印刷版原版に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図2】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的な粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。
【図3】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的な粗面化処理に用いられる二つ以上のラジアルドラムローラを連結した装置の概略構成図である。
【図4】 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる二段給電電解法の陽極酸化処理装置の概略図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40、41 主電解槽
50、51 補助陽極槽
62a 第一給電部
62b 第二給電部
63a 第一電解部
63b 第二電解部
64a、64b ニップローラ
65a 第一給電電極
65b 第二給電電極
66a、66b、66c、66d 電解電極
67a、67b、67c、67d 電源

Claims (2)

  1. アルミニウム板に粗面化処理、アルカリエッチング処理および陽極酸化処理を行って得られる平版印刷版用支持体上に画像記録層を設けてなる平版印刷版原版であって、
    前記平版印刷版用支持体の表面に、波長が2〜10μmの大波構造と、平均直径が0.1〜1.5μmのピットからなる中波構造と、ピット内部の面積円相当径が0.005〜0.1μmである凹凸からなる小波構造とを有し、かつ、該陽極酸化処理によって生成する陽極酸化皮膜において、マイクロポアの平均ポア径が0〜15nm、平均ポア密度が0〜400個/μm2であり、
    前記画像記録層が、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプおよび無処理タイプのいずれかの感熱層である平版印刷版原版。
  2. 前記アルミニウム板におけるCuの含有量が0〜0.005質量%である請求項1に記載の平版印刷版原版
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