JP3760853B2 - ガスバリアー性積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種包装材料、成形材料として好適なガスバリアー性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品などの包装に用いられる包装材料においては、内容物の品質を保護する観点からガスバリアー性、特に酸素、水蒸気、二酸化炭素及び香気(アロマ、フレーバー)のバリアー性が重要な品質である。
このようなバリアー性素材を使用した包装材料は菓子袋、カツオパック、レトルトパウチ、ハムやソーセージなどの肉類包装、魚介類の包装、乳製品の包装、みそ類の包装、茶・コーヒー類の包装、炭酸ガス飲料容器、化粧品、農薬及び医薬品の包装など、多くの分野で利用されている。
一方、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂は強度、耐熱性、透明性などが優れているため広く包装材料として用いられている。
しかし、これらの熱可塑性樹脂からなるフィルムを包装素材として用いる場合、ガスバリアー性が不十分なため、ガスバリアー性を有する熱可塑性樹脂や、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、珪素蒸着フィルムなどと積層して包装材料とする方法が一般的である。
【0003】
ガスバリアー性の高い熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアルコール(以下PVA)、ポリエチレンビニルアルコール(EVOH、エチレン−酢酸ビニル共重合体のけん化物)、ポリアルコール(ポリケトンの還元物)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などが挙げられるが、PVAやEVOHのような水酸基による水素結合によってバリアー性を発揮している高水素結合性樹脂は、高湿度(例えば20℃・80%RH以上)でのバリアー性が急激に低下する問題がある。また、PVDCは高湿度条件下でのバリアー性は優れているが高温時でのバリアー性の低下が大きい。また、PVDCは塩素化合物であるため、焼却時にダイオキシンの発生などの問題が生じるおそれがあり、地球環境問題に対する意識の高まりのため包装材料としての使用を極力控えようとするのが最近の情勢である。
【0004】
高湿度条件下での高水素結合性樹脂のガスバリアー性向上の方法として、高水素結合性樹脂に無機層状化合物を加えたガスバリアー層(特開平7−251489号公報)が示されている。
しかし、この技術で得られるガスバリアー層は、高水素結合性樹脂が親水性の極性基を有し、この極性基が水分子と水素結合することにより、樹脂自体が膨潤しやすい。膨潤した分子鎖の中は酸素分子が通りやすいため、ガスバリアー性が悪化する。従って、無機層状化合物の添加されているものの、高湿度条件下における満足すべきガスバリアー性が得ることはできない。また、高湿度条件下でのガスバリアー性を向上させるため無機層状化合物の配合量を増やすと、ガスバリアー層の透明性が低下、曇り度(ヘーズ)が大きくなり、包装材料として限られた分野でしか使用できなくなる。
【0005】
また、珪酸アルカリ金属塩溶液によりガスバリアー層を形成する従来技術がある。例えば、珪酸アルカリ金属塩溶液とカップリング剤からなる水性液を重合体成形品の表面に塗布して薄膜を形成させてガスバリアー性積層体を得る方法(特開平8−238711号公報)や、珪酸ナトリウム水溶液と珪酸リチウム水溶液を混合し、この混合物からガスバリアー素材を得る方法が挙げられる(特開平7−18202号公報)。
前者は蒸着などの操作を施すことなく、ガスバリアー性積層体を安価に製造できる利点があるが、ガスバリアー性が未だ不十分な場合があり、また塗膜強度や耐水性が劣るという問題が残る。
また後者のような珪酸アルカリ金属塩を主剤としたガスバリアー層は、珪酸アルカリ金属塩被膜の耐水性不足、及びクラック発生の問題を、完全に解決しているとは言い難い。
【0006】
一方、金属アルコキシドの加水分解によりガスバリアー層を形成する従来技術がある。例えば、特許第2556940号公報には、アルコキシシラン、シランカップリング剤及びポリビニルアルコールを含有する組成物を重縮合し、主成分が直鎖状ポリマーよりなる複合ポリマーからガスバリアー性積層フィルムを形成する技術が記載されている。しかしこの方法でも、高湿度条件下におけるガスバリアー性については満足のいく結果が得られていない。
【0007】
更に特開平11−129379号公報には、無機層状化合物と樹脂と金属アルコキシドの加水分解物からなるガスバリアー性積層体が記載されている。この方法は、無機層状化合物と樹脂を主剤とした塗料に、金属アルコキシドの加水分解物を更に添加するものであるが、後添した金属アルコキシドの加水分解物は樹脂と急激に縮合、ランダムな3次元網目構造をとるように反応が進行するため、このように形成されたガスバリアー層はポーラスなものとならざるを得ず、無機層状化合物が添加されていても高バリアー性は期待できない。
【0008】
本発明者らは、珪酸縮合物を用いたガスバリアー層について鋭意検討した。
珪酸縮合物とは、珪酸アルカリ金属塩、もしくはコロイダルシリカのことをさす。珪酸アルカリ金属塩は別名水ガラスと呼ばれ、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどが挙げられる。コロイダルシリカは、珪酸アルカリ金属塩からイオン交換樹脂を用いて脱アルカリ処理したのち縮合させコロイダル粒子としたものに代表される。
【0009】
珪酸アルカリ金属塩やコロイダルシリカは、その一次粒子がナノメーター以下あるいはナノメーターレベルの超微粒子であり、溶液中ではモノマー、ダイマー、トリマー、オクトマーなどと、これらが縮合したオリゴマーなどを数多く含んでおり、これら粒子は反応性の官能基を表面に有し、被膜形成時に各粒子が敷き詰められるだけでなく、乾燥すると縮合反応を起こして均一なバリアー性の膜を作る。
【0010】
本発明者らは、鋭意検討の結果、珪酸縮合物と平板状顔料を組み合わせによりガスバリアー層のクラック発生を防止したガスバリアー性積層体(特開2001−336507号公報)を出願した。
しかし、珪酸縮合物と平板状顔料だけでは、高温高湿で長期に保持された場合に耐水性が不足し、支持体からの剥がれ脱落やクラックなどが発生する場合があり、使用条件に制約があった。
【0011】
この問題について更に検討した結果、珪酸縮合物と反応して縮合を促進する含窒素化合物を用い、ガスバリアー層の耐水性と支持体への密着性が向上したガスバリアー性積層体を得た(特願2000−067858号)。
しかし、珪酸縮合物の膜は無機質であるため、硬く、傷がつきにくいという利点があるが、一方で、包装用材料として使用する場合、使用用途によっては耐屈曲性が不足する場合がある。また、珪酸縮合物として珪酸アルカリ金属塩を使用する場合、珪酸アルカリ金属塩が強アルカリ性であるため、空気中の水分や炭酸ガスを吸収して塗膜が白変(白華現象)し、外観が損なわれるという欠点を有する。
【0012】
そこで本発明者らは、珪酸縮合物を含むガスバリアー層上に、更に高水素結合性樹脂を含むオーバーコート層を設けて柔軟性を付与し、塗膜の白変化が低減されたガスバリアー性積層体を提案した(特願2000−220059号)。
しかし、上記ガスバリアー性積層体においても、白華現象の防止は完全ではなく、更に、高湿度条件下でのガスバリアー性は短時間においては十分であるが、高湿度下で長時間(24時間以上)経過した後には不十分であった。
このように、珪酸縮合物と平板状顔料を主材として含むガスバリアー膜は、包装用材料として使用する場合、長期間高湿度条件下に放置されるとガスバリアー性が大きく低下するため、包装用材料としての使用範囲が限られていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高湿度条件下大気中に長期間放置した場合においても優れたガスバリアー性を有する、包装用材料として好適なガスバリアー性積層体を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために下記に示された手段をとる。
即ち、本発明の第1は、支持体の少なくとも片面にガスバリアー層を形成したガスバリアー性積層体において、ガスバリアー層が、下記の2層を支持体側から順次積層して形成されたガスバリアー性積層体である。
(1)珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれる少なくとも一種の珪酸縮合物を含む第一ガスバリアー層。
(2)高水素結合性樹脂と酸性物質を含む第二ガスバリアー層。
【0015】
本発明の第2は、珪酸縮合物が、一般式MO・nSiO(n>0、M=Na、K、Li)で表される珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムから選ばれた少なくともいずれか一種以上である本発明の第1に記載のガスバリアー性積層体である。
【0016】
本発明の第3は酸性物質が、リン酸化合物、硫酸化合物、炭酸化合物、ホウ素化合物から選ばれた少なくともいずれか一種以上である本発明の第1〜2のいずれかに記載のガスバリアー性積層体である。
【0017】
本発明の第4は、ガスバリアー層が平板状顔料を含む本発明の第1〜3のいずれかに記載のガスバリアー性積層体である。
【0018】
本発明の第5は、平板状顔料が、スメクタイト粘土及び雲母族から選ばれた少なくともいずれか一種以上である本発明の第4記載のガスバリアー性積層体である。
【0019】
本発明の第6は、第一ガスバリアー層が、珪酸以外の酸性物質を含む本発明第1〜5のいずれかに記載のガスバリアー性積層体である。
【0020】
本発明の第7は、珪酸以外の酸性物質が、リン酸化合物、硫酸化合物、炭酸化合物、硝酸化合物、ホウ素化合物から選ばれた少なくともいずれか一種以上である本発明の第6記載のガスバリアー性積層体である。
【0021】
本発明の第8は、ガスバリアー層が有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解縮合物を含む本発明の第1〜7のいずれかに記載のガスバリアー性積層体である。
【0022】
本発明の第9は、支持体とガスバリアー層の間にアンカー層が存在する本発明第1〜8のいずれかに記載のガスバリアー性積層体である。
【0023】
本発明の第10は、アンカー層が含窒素化合物あるいは高水素結合性樹脂から選ばれた少なくともいずれか一種以上を含む本発明第9記載のガスバリアー性積層体である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳述する。
本発明における第一ガスバリアー層とは、珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれるた少なくともいずれかの一種以上の珪酸縮合物を含むものである。
【0025】
珪酸縮合物のうち、珪酸アルカリ金属塩とはMO・nSiO(Mはアルカリ金属、n>0)で表される化合物である。通常は濃厚水溶液として取り扱われる。
アルカリ金属Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム等である。また、本発明においては、アンモニウムなどのカチオン性イオンもMの範疇に含まれるものとする。nはモル比ともいい、0.5〜10程度の範囲が好適である。モル比0.5未満では珪酸の縮合による膜形成能が低下したり、アルカリ金属塩の含有量が多すぎるため、耐水性、耐湿性が低下する場合が多く、白華現象も起きやすい。また、モル比が10を越えた場合には、クラックの発生などの塗工面の不具合が発生する恐れがある。
【0026】
尚、モル比が10を越える高モル比の珪酸アルカリ金属塩は一般には市販されていないが、無定形シリカやコロイダルシリカに各種アルカリ金属水酸化物を添加して溶解する方法や、市販の珪酸アルカリ金属塩に、無定形シリカやコロイダルシリカを溶解する方法にて調製することが可能であり、このように調製された珪酸アルカリ金属塩も本発明では使用可能である。高モル比の珪酸アルカリ金属塩を使用する場合は、特定の形状をした非常に薄い平板状顔料を使用したり、0.5μm以下の極薄膜を形成するとこにより、薄膜厚さ方向の収縮が表面の収縮と同程度になるようにすると、クラックは発生しにくくなる。
【0027】
珪酸縮合物のうちコロイダルシリカは、珪酸ナトリウムを無機酸で中和したり、シリコンエステルやシリコンハライドを加水分解することによって得ることができる。また、珪酸ナトリウムなど珪酸アルカリ金属塩をカチオンイオン交換樹脂層に通した後、アルカリでpHを調整し、その後加熱してコロイダルシリカの核を生成し、その液に更に上記カチオン交換樹脂層を通した珪酸ナトリウム液をゆっくりと滴下することによりにより得られる。滴下の速度を急激にすると縮合が急激に進み、アグリゲーションが発生しポーラスな構造となるため好ましくない。ゆっくりと滴下することにより核表面のシラノール基に順次モノマーがデポジットして粒子が成長する。pHを適度に調整し、滴下速度をゆっくりとすることでコロイダルシリカを数nmから数μmの任意の大きさまで成長させることができる。本発明で用いるコロイダルシリカの粒子径は数nm〜数百nmの範囲が好ましい。また、異なる粒子径のコロイダルシリカを組み合わせて使用することにより、充填率を大きくすることもできる。
【0028】
コロイダルシリカは、珪酸アルカリ金属塩と比較すると、成膜性やガスバリアー性に劣る場合がある。その場合、コロイダルシリカにアルカリ金属塩を添加してコロイダルシリカの表面のシロキサン結合を開裂させることで成膜性とガスバリアー性を向上させることができる。
【0029】
本発明に使用する珪酸縮合物としては、珪酸アルカリ金属塩とコロイダルシリカでは、ガスバリアー性の面だけから考えると、珪酸アルカリ金属塩がより好ましい。
珪酸アルカリ金属塩としては、アルカリ金属がナトリウムである珪酸ナトリウムの場合、モル比0.5のオルト珪酸ナトリウム(NaO・1/2SiOあるいはNaSiO)、モル比0.67のセスキ珪酸ナトリウム(3NaO・2SiOあるいはNaSi)、モル比1のメタ珪酸ナトリウム(NaO・SiOあるいはNaSiO)、モル比2の二珪酸ナトリウム(NaO・2SiOあるいはNaSi)、モル比4の四珪酸ナトリウム(NaO・4SiOあるいはNaSi、別名:珪酸ソーダ4号)などがある、また、日本工業規格JIS−K−1408で定められた珪酸ソーダ1号(モル比2)、2号(モル比2.5)、3号(モル比3)、メタ珪酸ナトリウム1種、メタ珪酸ナトリウム2種がある。
【0030】
アルカリ金属がカリウムである珪酸カリウムにおいてもその組成は種々なものがあるが、一例としてメタ珪酸カリウム(KO・SiO)、四珪酸カリウム(KO・4SiO・HO、別名二珪酸水素カリウム)が挙げられる。アルカリ金属がリチウムである珪酸リチウムは、オルト珪酸リチウム(LiO・1/2SiO)、メタ珪酸リチウム(LiO・SiO)、3.5珪酸リチウム、7.5珪酸リチウム(LiO・7.5SiO)などがある。
【0031】
また、例えばテトラメチルアンモニウムイオンをカウンターイオンとする珪酸アンモニウムのようなアンモニウム塩も、本発明においては珪酸アルカリ金属塩の範疇とする。
【0032】
これら珪酸アルカリ金属塩は、モル比によって縮合度が異なり、粒子径も異なってくる。その大きさはモル比が小さくなると液中への溶解度が大きくなるなどして明確に決めることはできないが、動的光散乱法から類推すると数nm以下のものが大部分であり、ガスバリアー層として密にパッキングすることができる。
【0033】
これら珪酸アルカリ金属塩は、二種類上混合して使用してもかまわないし、珪酸アルカリ金属塩とコロイダルシリカを二種類以上混合して使用してもかまわない。また、成膜性を上げるためにアルカリ金属塩を加えて使用してもかまわない。
【0034】
本発明における第二ガスバリアー層とは高水素結合性樹脂と酸性物質を含むものである。
第二ガスバリアー層に使用できる高水素結合性樹脂は、成膜性を有する樹脂であれば特に制限はない。高水素結合性樹脂の一例を挙げれば、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリカルボン酸、ポリケトン、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、エリストリールなどの多価アルコール、デンプン、セルロースなどがある。
高水素結合性を示すには樹脂中に活性水素を有する基あるいは水素結合を形成しうる極性基をを有していればよい。活性水素を有する基の一例としては、水酸基(−OH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NH−)、カルボキシル基(−COOH)、アミド基(−CONH)、硫酸基(−SOH)、リン酸基(−POH)などが挙げられる。また、水素結合を形成しうる極性基としてはカルボニル基(−C=O)、ニトリル基(−CN)、エーテル基(−O−)、チオエーテル基(−S−)などが挙げられる。
【0035】
上記極性基を有する高水素結合性樹脂の中でも、ガスバリアー性の面からは、水酸基を有する樹脂が好ましい。例えばポリビニルアルコール(PVA)とエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が好ましい。
第二ガスバリアー層として、PVAやEVOHのような高水素結合性樹脂を用いると、第二ガスバリアー層が珪酸縮合物中心の第一ガスバリアー層に生じたクラックやピンホール等を埋めることができるだけでなく、第一ガスバリアー層を保護する役目を果たし、柔軟性や屈曲性に優れたガスバリアー積層体を提供できる。
【0036】
PVAとは、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解ないしエステル交換(けん化)して得られるポリマー(即ち、ビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体)や、トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体などをけん化して得られるポリマーが挙げられる(PVAの詳細は、ポバール会編、「PVAの世界」、1992年、(株)高分子刊行会;長野ら、「ポバール」1981年、(株)高分子刊行会等を参照)。
【0037】
本発明で使用するPVAの「けん化」の程度は、モル百分率で70%以上が好ましく、さらには85%以上のものが好ましく、98%以上のいわゆる完全けん化品が特に好ましい。また重合度は、100〜5000が好ましく、200〜3000がより好ましい。更に、本発明で使用するPVAは、本発明の目的が阻害されない限り、少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。
【0038】
上記PVAの変性体も本発明の範疇であり、これら変性体とはPVAの製造過程において、ビニルエステル類、特に酢酸ビニル単量体と、それと共重合可能な他の不飽和単量体とを共重合させたものである。上記他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテンなどのオレフィン類や、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和酸、およびそのアルキルエステルやアルカリ塩類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体及びそのアルカリ塩類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートや、トリメチル−2−(−1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロリド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロリド、1−ビニル−2−エチルイミダゾールその他4級化可能なカチオン性単量体、スチレン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、その他のものが挙げられる。
【0039】
これら共重合成分の比率は、特に限定はされるものではないが、ビニルアルコール単位に対し、50モル%以下、好ましくは30モル%以下の程度である場合が好ましく、その共重合の形態は、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合など任意の方法によって得られる各種の形態が用いられる。
中でも、これら共重合体のうち、ポリビニルアルコール成分に対し、ポリカルボン酸成分が共重合されたブロック共重合体特に好適に用いられ、該ポリカルボン酸成分がポリメタクリル酸である場合において特に好ましい。更に、該ブロック共重合体は、PVA鎖の片末端にポリアクリル酸鎖が延長されたようなA−B型ブロック共重合体である場合が特に好ましく、ポリビニルアルコールブロック成分(a)とポリアクリル酸ブロック成分(b)の質量比(a)/(b)が50/50〜95/5である場合が好ましく、60/40〜90/10である場合において特に好ましいガスバリアー性が完備され、基材層との結合特性が顕著に完備される。また、その他の変性体のうち、特に好ましい形態の1つとしては、分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種で変性されたビニルエステル系重合体けん化物からなるシリル基変性PVA系樹脂がある。
【0040】
かかる組成を有する変性重合体を得る方法としては、特に限定はないが、常法によって得られたPVAあるいは変性ポリ酢酸ビニルなどのビニルアルコール系重合体に、分子内にシリル基を有する化合物を反応させ、シリル基を重合体に導入する、あるいはPVAあるいはその変性体の末端を活性化し、分子内にシリル基を有する不飽和単量体を重合体末端に導入する、さらには該不飽和単量体をビニルアルコール系重合体分子鎖にグラフト共重合せしめるなど各種の変性による方法、ビニルエステル系単量体と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とから共重合体を得て、これをけん化する方法、又は、シリル基を有するメルカプタンなどの存在下でビニルエステルを重合し、これをけん化するなど末端にシリル基を導入する、などの各種の方法が有効に用いられる。
【0041】
このような各種の方法で得られる変性PVA系樹脂としては、結果的にその分子内にシリル基を有するものであればよいが、分子内に含有されるシリル基がアルコキシル基あるいはアシロキシル基及びこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩などの反応性置換基を有しているものが好ましく、中でもシラノール基である場合が特に好ましい。
【0042】
これらの変性PVA系樹脂を得るために用いられる分子内にシリル基を有する化合物としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、トリエチルフルオロシランなどのオルガノハロシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランなどのオルガノシリコンエステル、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのオルガノアルコキシシラン、トリメチルシラノール、ジエチルシランジオールなどのオルガノシラノール、N−アミエチルトリメトキシシランなどのアミノアルキルシラン、トリメチルシリコンイソジシアネートなどのオルガノシリコンイソシアネートその他のものが挙げられる。これらシリル化剤による変性度は用いられるシリル化剤の種類、量、反応条件によって任意に調節することができる。
【0043】
また、ビニルエステル系単量体と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とからの共重合体をけん化する方法において用いられる該不飽和単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、などに代表されるようなビニルアルコキシシランやビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどに代表されるようなビニルアルコキシシランのアルキルあるいはアリル置換体など多くのビニルシラン系化合物、更に、これらのアルコキシ基の一部又は全部をポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール置換したポリアルキレングリコール化ビニルシランなどが挙げられる。さらには、3−(メタ)アクリルアミノ−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシランなどに代表されるような(メタ)アクリルアミド−アルキルシランなども好ましく用いることができる。
【0044】
一方、シリル基を有するメルカプタンなどの存在下でビニルエステルを重合した後けん化し、末端にシリル基を導入する方法には、3−(トリメトキシシリル)−プロピルメルカプタンなどのアルコキシシリルアルキルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0045】92
本発明の変性PVA系樹脂における変性度、即ち、シリル基の含有量、けん化度などによってその適性範囲は各々異なるが、本発明の目的であるガスバリアー性に対しては、重要な要因となる。シリル基の含有量は、通常、重合体中のビニルアルコール単位に対しシリル基を含む単量体として30モル%以下であり、10モル%以下が好ましく、5モル%以下である場合が特に好ましく用いられる。下限は特に限定されないが、0.1モル%以上である場合において効果が特に顕著に発揮される。
【0046】
尚、上記シリル化率は、シリル化前のPVA系樹脂に含まれていた水酸基の量に対する、シリル化後の導入されたシリル基の割合を示すものである。
【0047】
これら各種のPVA系樹脂は、もちろんそれ単独で用いられてもよいが、本発明の目的を阻害しない限り、共重合可能な他の単量体との共重合体としたり、混合可能な他の樹脂化合物と併用することができる。このような樹脂としては、例えばポリアクリル酸又はそのエステル類、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、その他のものを挙げることができる。
【0048】
本発明に用いるEVOHは、ビニルアルコール分率が40〜80モル%以下のものが好ましく、より好ましくは45〜75モル%のものである。更に、これらEVOHは、本発明の目的が阻害されない限り、少量の共重合モノマーで変性されていてもよい。
上記EVOHの変性は、自己架橋可能に変性されることが好ましい。更にアルコール可溶に変性されることが好ましい。このような性質を付与するためにEVOHにはシリル基が導入される。
上記シリル基の導入は、例えば、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、トリエチルフルオロオルガノハロシラン、トリメチルアセトキシシランのように、反応性シラン化合物をEVOHの水酸基と反応させることにより行われる。
【0049】
シリル基の導入、即ちシリル化は、少なくともEVOHがアルコールに可溶となるように行うことが必要である。具体的には、0.2モル%以上のシリル化率となるようにすることが好ましい。シリル化率の上限は、アルコール可溶性の観点からは特に制限はないが、本発明における無機層状化合物の配置の点から、好ましくは5モル%以下、より好ましくは2モル%以下とする。尚、上記シリル化率は、シリル化前のEVOH樹脂に含まれていた水酸基の量に対する、シリル化後の導入されたシリル基の割合を示すものである。
【0050】
上記シリル基が導入された変性EVOHは、アルコール、又はアルコール/水の混合溶媒で加熱溶解させることにより、導入されたシリル基の存在によってアルコール系溶媒に溶解する。そして、溶媒に溶解した変性EVOHは、一方で、導入されたシリル基の一部が脱アルコール反応及び脱水反応により反応して架橋する。尚、上記反応には、水の存在が必須であり、アルコール/水の混合溶媒を用いることが好ましい。
【0051】
本発明における第一ガスバリアー層のように、主として珪酸縮合物から構成されたガスバリアー層は、高湿度条件においてガスバリアー性が経時的に低下するが、本発明者らは、その原因を次のように仮定した。
即ち、高湿度下においては、ガスバリアー層中に含まれるアルカリ金属イオンが徐々に水を吸着吸収することにより、アルカリ金属イオンの水溶液が第一ガスバリアー層中を移動し徐々に珪酸縮合物やコロイダルシリカのシロキサン結合(Si−O−Si結合)を開裂させる。この開裂は、少ないうちはガスバリアー性にほとんど影響を与えない。しかし、時間経過と共に開裂数は増加する。シロキサン結合の開裂とは、水分子一個がシロキサン結合と加水分解反応を起こし二個のシラノール基(−SiOH)を生成するものである。また、シロキサン結合の加水分解反応は、アルカリ金属イオンの存在により加速されることが知られている。
開裂により生じたシラノール基は、高湿度条件下で水分を吸着する。
【0052】
このように、アルカリ金属イオンの存在により、まず水分が吸着され、吸着された水分がシロキサン結合を開裂させ、開裂により生じたシラノール基が、更に水分を吸着する。この繰り返しにより、塗膜に亀裂が生じたり、また、珪酸縮合物、あるいはコロイダルシリカを含む第一ガスバリアー層に過剰の水分が吸収され、ガスバリアー性が低下すると考えられる。
【0053】
また、ガスバリアー層にアルカリ金属イオンが含まれると、その周囲のシラノール基は、ガスバリアー層の塗工、乾燥過程では十分に縮合が形成されず、アルカリ金属塩の周囲をシラノール基が取り囲む形となる。そのため高湿度条件下で長時間放置すると、アルカリが徐々に水分を吸着する。吸着の初期はガスバリアー性に影響はないが、時間と共に水分の吸着量が増加すると、前記のようにシロキサン結合を開裂させたり、塗膜に亀裂が生じたりするため、ガスバリアー性が低下してしまう。
【0054】
また、上記のようなガスバリアー性積層体を40℃90%などの高湿度条件下で放置していると、ガスバリアー層中のアルカリ金属が、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸アルカリ金属塩を生成する。この炭酸アルカリ金属塩の生成によって塗膜が白く変化(白華)したり、ガスバリアー性が大きく低下してしまう。
この白華及び白華によるガスバリアー性低下は、高湿度条件下であるほど促進される。湿度が高いと水分がガスバリアー層中の塗膜に吸着される。水分の吸着は主にアルカリ金属塩及びシラノール基による。水分の吸着量が大きくなると、塗膜に亀裂が入ったり、水分の吸着により塗膜に連続的な欠陥が生成し、水分や酸素等が透過する恐れがある。
【0055】
白華現象のメカニズムは更に詳しくは次のように説明される。吸着された水分に二酸化炭素が溶解する。水に溶解した二酸化炭素は膜中のアルカリ金属塩と反応して炭酸アルカリ金属塩となる。例えば炭酸アルカリ金属塩の中でも炭酸リチウムは、水への溶解性が低いため、そのほとんどは結晶として成長する。結晶が可視光の波長の大きさの1/4以上(100nm以上)に成長し、その数が増えてくると可視光の乱反射によりフィルムが白く見えるようになる。また、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムのような水溶性の高い炭酸アルカリ金属塩は高湿度下では、炭酸アルカリ金属塩が水分中に溶解して目に見えて白華現象は現れないが、低湿度条件に晒されると、水分が蒸発して炭酸アルカリ金属塩の結晶や粉末が生成され白く見えるようになる。
【0056】
また、ガスバリアー層中のアルカリ金属イオンは、ガスバリアー層中の水分が増加すると、表面にブリードアウト(析出)する。析出したアルカリ金属イオンが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸アルカリ金属塩を生成する。この反応が続くとフィルムが白く見えたり表から炭酸アルカリ金属塩の粉末が脱落してしまう可能性がある。
また、吸湿により塗膜に微少な亀裂が入ると、その亀裂の断面から水分と二酸化炭素が進入して白華を促進したり、断面にアルカリ金属イオンが析出し、そこで白華が発生したりする。このような白華が発生するとガスバリアー性も大きく低下してしまう。
【0057】
更に吸着した水分によりシラノール基が縮合したシロキサン結合が開裂(加水分解反応)しやすくなる。アルカリ金属イオンが存在するとシロキサン結合の開裂が促進される。シロキサン結合が開裂してシラノール基が生成すると更に水分を吸着しやすくなる。水分吸着量が多いとそれだけ空気中の二酸化炭素と反応しやすくなる。
このように珪酸縮合物を主体とするガスバリアー層は、水分の吸着により白華現象を生じたりガスバリアー性が低下するといった欠点を有する。
【0058】
そこで、本発明者らは、珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれる少なくとも一種の珪酸縮合物を含む第一ガスバリアー層中に含まれるアルカリ金属イオンを、その上に高水素結合性樹脂と酸性物質を含む第二ガスバリアー層を形成することにより、その中に含まれる酸性物質によってアルカリ金属イオンを中和し、高湿度条件下における白華防止及びガスバリアー性の低下を防止することに成功した。
即ち、第一ガスバリアー層中に含まれるアルカリ金属イオンを第二ガスバリアー層の酸性物質によって中和塩とすることにより、アルカリ金属による水分の吸着や、シロキサン結合の開裂を防止し、ガスバリアー性の低下を防止するものである。
【0059】
本発明において、第二ガスバリアー層に使用する酸性物質は、アルカリ金属イオンを中和できるものであれば特に限定されない。具体的にはリン酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸化合物、酢酸、安息香酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、クエン酸などの有機酸、酸化ホウ素、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、無水ホウ酸などのホウ素化合物、珪酸、チタンやジルコニウムなどの金属酸化物などが挙げられる。
また、二価以上の酸の場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属で部分的に中和されている酸性物質を使用してもかまわない。例えば、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。
【0060】
本発明において、第二ガスバリアー層に含まれる酸性物質が、リン酸化合物、炭酸化合物、ホウ素化合物から選ばれた少なくとも一種以上であることが好ましい。特に、第一ガスバリアー層に含まれる珪酸縮合物が珪酸リチウムである場合は特に好ましい。
第二ガスバリアー層中に含まれる酸性物質が第一ガスバリアー層に含まれるアルカリ金属イオンを中和するとアルカリ金属塩が生成される。
しかし、アルカリ金属塩には、水溶性、吸湿性を示すものもあるため、第2のガスバリアー層によって中和されたアルカリ金属塩が水分を呼び込む作用が働き、結果として耐湿ガスバリアー性が改善されないおそれがある。
しかし、アルカリ金属塩の中でも、炭酸リチウム(LiCO)とリン酸リチウム(LiPO)は水への溶解性が極めて低く、吸湿性も小さい。第一ガスバリアー層に含まれる珪酸縮合物が珪酸リチウムの場合、このリチウムイオンを第二ガスバリアー層に含まれる炭酸イオンやリン酸イオンで中和した場合、非常に耐水性の強いガスバリアー性皮膜が形成される。
尚、本発明で、中和によって効率よく炭酸リチウム、もしくはリン酸リチウムを生成させるためには、第二ガスバリアー層中の酸性物質として、予めリチウムイオンと部分的に中和させた炭酸水素リチウム、もしくはリン酸水素二リチウムを用いることが特に好適である。
リン酸水素二リチウムは単体として存在が知られていないが、リン酸あるいはリン酸二水素リチウムの水溶液に必要量の水酸化リチウムを添加して製造可能である。
【0061】
また、本発明においては、上記酸性物質をアンモニアで中和した酸性物質のアンモニウム塩、及び尿素も、酸性物質に含まれるものとする。
酸性物質のアンモニウム塩は、加熱、及び水分の蒸発によってアンモニアを放出するため、第一ガスバリアー層上に第二ガスバリアー層を塗工した直後には中和は起こらないが、第二ガスバリアー層が乾燥する過程でアンモニアが発生するため、第一ガスバリアー層中のアルカリ金属イオンを中和することができる。
また、尿素は、加熱により、アンモニアと二酸化炭素に分解するため、同様に酸性物質として使用することができる。
アンモニアで中和された酸性物質の一例として、硫酸アンモニウムアルミニウム、硫酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0062】
また、酸性物質としては、ホウ素化合物や珪酸化合物も好ましい。ホウ酸や珪酸はそれ自体弱い酸で、アルカリ金属イオンの中和が可能であるが、ホウ酸や珪酸は、それ自身で縮合脱水反応が起こる。従って、アルカリ金属イオンを中和するのみならず、ホウ酸や珪酸のネットワーク中に、アルカリ金属イオンを閉じ込める機能を有する。従って、ホウ酸や珪酸を酸性物質として使用すると、ガスバリアー層の耐水性が向上するという効果を有する。
珪酸は、水中では不安定であるため水溶液としては使用できないが、アルコキシドシラン(テトラエトキシシランやテトラメトキシシラン等)のアルコール溶液(水、酸、アルカリなどを含んでもよい)として使用するのが好ましい。
例えばテトラエトキシシランは乾燥工程において加熱や溶剤の蒸発に伴い、分解を起こし珪酸を生成する。この性質を利用して酸性物質として使用できる。
【0063】
上記酸性物質の中でも、リン酸あるいはリン酸のリチウムイオンやアンモニアによる部分中和物などのリン酸化合物、硫酸あるいは硫酸のリチウムイオンやアンモニアによる部分中和物などの硫酸化合物、炭酸あるいは炭酸のリチウムイオンやアンモニアによる部分中和物などの炭酸化合物、ホウ酸、酸化ホウ素、四ホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物が、耐湿バリアー性に優れるため特に好ましい。
【0064】
本発明で使用する第二ガスバリアー層中の酸性物質の量は、第一ガスバリアー層に含まれるアルカリ金属イオン量によって決まる。
即ち、第一ガスバリアー層のアルカリ金属イオン量に対して、第二ガスバリアー層中に、10〜500当モル%の酸性物質が含まれることが好ましく、20〜400当モル%が更に好ましく、50〜200当モル%が最も好ましい。酸性物質が10当モル%未満の場合、アルカリ金属イオンの中和による耐湿バリアー性の向上や白華防止効果が小さく、500当モル%を越えると、その効果が頭打ちとなるばかりでなく経済的でない。
【0065】
本発明においては、ガスバリアー層(第一ガスバリアー層及び/又は第二ガスバリアー層)に平板状顔料が含まれることがより好ましい。第一ガスバリアー層に平板状顔料が含まれることがさらに好ましい。
第一ガスバリアー層中に平板状顔料が含まれる場合、前記珪酸縮合物と平板状顔料の併用することにより、体積の収縮に対する抵抗力(クラック防止)を向上させることができる。このような概念はプラスチック成形の分野にある。例えば、ガラス繊維をプラスチックに混練することにより、衝撃が加わった際に破壊に至るクレーズの発生を防止し強化プラスチックとする方法がとられている。本発明でも、平板状顔料を混入することで珪酸縮合物の縮合に伴うクラックの発生を防止し、珪酸縮合物からなる膜の強度を高めるものとすることができる。このような効果を得るには、炭酸カルシウムに代表される球状顔料では難しく、平板状顔料に特有な効果である。
また、平板状顔料は比表面積が大きく、その表面は親水性であるため、平板状顔料の表面に接している珪酸縮合物のシラノール基は縮合することができない。結果として、大きな比表面積を持つ平板状顔料が珪酸の縮合を阻害してクラックを防止しているとも考えられる。
【0066】
また、平板状顔料は、珪酸縮合物の縮合に伴う収縮によるクラック発生の防止という効果のみならず、ガスバリアー性に特異な効果をもたらす。平板状顔料とは、おおむね平板性を有する顔料であり、本発明では特にその長径と厚みの比(アスペクト比)が5以上のものをさす。本発明ではガスバリアー層に珪酸縮合物と平板状顔料を配合し、平板状顔料をガスバリアー層中に魚鱗状に敷き詰めることによりガスの進入を防止するものである。平板状顔料は無機物で結晶性を有するものであり、その平面方向から厚み方向にはガス分子が透過することがない。本発明ではこのような平板状顔料を敷き詰め、平板状顔料が層の厚み方向に幾重にも積み重なることにより、透過しようとするガス分子が平板状顔料を迂回して透過する、いわゆる曲路効果が発揮される。従って、汎用の顔料である炭酸カルシウムのような球形に近い形状の顔料を使用した場合と比較すれば数倍優れたガスバリアー性を得ることができる。尚、このような効果は第二ガスバリアー層に平板状顔料が含まれる場合により顕著に表れる。
【0067】
このような平板状顔料は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している無機層状化合物が好ましい。「層状化合物」とは、層状構造を有する化合物ないし物質であり、「層状構造」とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファンデルワールス力等の弱い結合力によって平行に積み重なった構造やイオンで結合した平板性の高い顔料をいう。
【0068】
本発明に用いる平板状顔料としては、第1にはフィロケイ酸塩鉱物が挙げられる。フィロケイ酸塩鉱物に属するものは板状又は薄片状であり明瞭な劈開性を有し、雲母族、パイロフィライト、タルク(滑石)、緑泥石、セプテ緑石、蛇紋石、スチルプノメレーン、粘土鉱物などがある。これらの中でも産出される時の粒子が大きく産出量が多い鉱物、例えば雲母族やタルクが好ましい。雲母族には、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。もちろん、組成的にはタルクに類似する合成雲母などの合成品も本発明の範疇に含める。
【0069】
カオリンなどの粘土鉱物も一般的には平板結晶といわれているが、結晶一個をとれば平板の部分はあるが全体としては粒状である。しかし、カオリンのうち、意識的に結晶層を剥離し平板になるように切りだしたデラミカオリンなどは本発明に用いることができる。デラミカオリン等を顔料として使用した場合、ガスバリアー層に用いる顔料の粒子径は膜厚に対応して小さくする必要がある場合があり、これら顔料をボールミル、サンドグラインダー、コボルミル、ジェットミルなどの粉砕機で粉砕分級して所望の大きさにそろえる必要がある。
【0070】
本発明に用いる平板状顔料の第2は、積み重なった構造やイオンで結合した平板性の高い、いわゆる無機層状化合物も有効である。無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物)、カルコゲン化合物〔式MX2で表わされるジカルコゲン化合物が例示される。ここで、MはIV族(Ti、Zr、Hf)、V族(V、Nb、Ta)又はVI族(Mo、W)の元素を、Xはカルコゲン(S、Se、Te)を示す。〕が挙げられる。
【0071】
本発明に用いる平板状顔料の第3として、スメクタイト族、バーミキュライト族、などの粘土鉱物を挙げることができる。より具体的には、ディッカイト、ナクライト、スメクタイト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石、等を挙げることができる。また、層状ポリ珪酸塩である、カネマイト、マカタイト、アイラアイト、マカディアイト、ケニアイト等も挙げることができる。
【0072】
このうちスメクタイト粘土は特に好ましい。スメクタイト粘土は三層構造の結晶からなっており、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロライト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチプンサイト、ヘクタイトなどが知られている。また、モンモリロナイトを主成分とし他の成分を含む鉱物であるベントナイトや酸性白土などもスメクタイト粘土の範疇に入る。
【0073】
これらのスメクタイト粘土は、淡黄色あるいは白色の微粉末であり、その大きさは数nm〜数μmで、水中で膨張し独特のコロイド構造を作る。例えば、モンモリロナイトは、二つのシリカの間にアルミナ層がサンドイッチされた三層構造を一単位とし、このフレークが水を介して連なっており、水溶液中ではフレーク間の水のため、フレークはバラバラとなる。
【0074】
また、一般にスメクタイト粘土は水中に分散させると容易にコロイド状分散液、即ちゾルを形成するが、濃度が増すにつれてゲルを形成しやすくなり、顕著なチキソトロピー性を示す。このため、高濃度のスメクタイト粘土分散液を調製することが難しい。このような場合、解膠剤を添加すると安定した流動分散液(ゾル)となり塗料粘度が低下するため好ましい。解膠剤としては、多価リン酸塩、例えばヘキサメタリン酸塩、ポリリン酸塩(ピロリン酸ナトリウム等)が例示できる。特にピロリン酸ナトリウムは性能/価格比に優れ好ましい。
【0075】
平板状顔料の粒子径は10nmから10μmの間にあるものが好適であり、より好ましくは10nmから5μm程度である。10nm未満であると平板性が有効に働かず、塗工層の乾燥中に支持体に平行に並ぶことが難しく、曲路効果を示しにくい。一方10μmを越えるとヘーズの上昇等の外観不良の原因となったり、や珪酸縮合物の成膜性が低下するため好ましくない。
【0076】
また、本発明に使用可能な平板状顔料は、ガスバリアー性積層体の透明性の点からは、粒径1μm以下であることが好ましい。更にガスバリアー性積層体がフィルムであり、特に透明性が重要視される用途(例えば食品用途)に用いる場合には、この粒径は0.5μm以下であることが更に好ましい。
また、この透明性は、波長500nmの全光線透過率で、80%以上(更に好ましくは85%以上)、ヘーズが0.5〜10%の範囲内であることが好ましい。このような透明性は、例えば、市販の分光光度計(島津自記分光光度計UV−3100PC型:島津製作所社製)で好適に測定することが可能である。
【0077】
本発明における平板状顔料は、その平均粒子径を厚みで除したアスペクト比が5以上のものを任意に使用できるが、ガスバリアーの面からアスペクト比が20以上が更に好ましい。上記アスペクト比が20未満では、用途によっては曲路効果が小さくガスバリアー性の発現が不十分となる場合がある。一方アスペクト比が5000を越える平板状顔料を得ることは技術的に難しく、また経済的にも高価なものとなる。製造容易性の点からは、アスペクト比は5000以下であることが好ましい。このような平板状顔料の粒子径の測定には、光散乱法の測定装置を使用することもできるが、本発明においては透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いた直接観察でその平均粒子径を求めた。アスペクトは電子顕微鏡の視野にある鱗片以外の棒状のものを探し厚みとした。
【0078】
第一ガスバリアー層に平板状顔料を加える場合には、珪酸縮合物と平板状顔料の比率は状況に応じて任意に決定できる。平板状顔料の場合、例えばモンモリロナイトなどスメクタイト粘土はその平板性と表面電荷のため容易に被膜を作ることができる。もちろんその被膜の強度は弱く耐水性は少ないため、珪酸縮合物で補強する必要がある。一方、珪酸縮合物も単独では、その被膜は縮合に伴いクラックができやすいが、平板状顔料を添加することでクラックの発生を大幅に少なくすることができる。このように、珪酸縮合物と平板状顔料は互いにその欠点を補う働きをしている。このため珪酸縮合物と平板状顔料の比は上記のように広範囲の割合をとることが可能である。珪酸縮合物と平板状顔料の比は質量配合比で99/1〜10/90程度が好ましく、好ましくは99/2〜20/80でより好ましくは99/3〜30/70である。平板状顔料の比率が1質量%未満になるとクラック防止の効果が小さくなる。また平板状顔料の比率が90質量%を越えて大きくなるとガスバリアー性が低下する恐れがある。
【0079】
第二ガスバリアー層に平板状顔料を加える場合には、高水素結合性樹脂と平板状顔料の比率は状況に応じて任意に決定できる。アスペクト比が数百以上の平板状顔料を用いれば、平板状顔料の使用量が数%以下であってもガスバリアー性向上の効果がある。しかし、平板状顔料の使用量が多くなると、樹脂による第一ガスバリアー層の欠陥を埋めたり、柔軟性を向上させる効果が小さくなってしまう。そのため高水素結合性樹脂と平板状顔料の比率は質量配合比で99.9/0.1〜30/70が好ましく、より好ましくは99.5/0.5〜35/65、更に好ましくは99/1〜40/60である。
また、第二ガスバリアー層中に使用する平板状顔料はシランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などで表面処理を施したり、四級アンモニウム塩系化合物で表面処理を施した方が、樹脂と平板状顔料の密着性が向上するため好ましい。更に耐水性を向上させるために樹脂と反応するような架橋剤を添加してもかまわない。
【0080】
耐湿ガスバリアー性を更に向上させるためには、第一ガスバリアー層中に、珪酸以外に、前述で定義した各種酸性物質を加えることができる。
具体的にはリン酸、炭酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸化合物、酢酸、安息香酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、クエン酸などの有機酸化合物、酸化ホウ素、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸、無水ホウ酸などのホウ素化合物、チタンやジルコニウムなどの金属の酸化物などが挙げられる。
これらの酸性物質は第一ガスバリアー層中では、塗膜中のアルカリ金属イオンと一部、あるいは全て中和した中和塩の形で存在する。
例えば、アルカリ金属イオンとしてリチウムイオンと上記酸性物質との中和塩の一例を挙げると、リン酸三リチウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、ホウ酸リチウム塩等がある。また、アルカリ金属イオンとしてナトリウムイオン、カリウムイオンが存在する場合には、各々ナトリウム塩、カリウム塩の形で存在する。
【0081】
珪酸アルカリ金属塩の代わりに珪酸アンモニウム塩を使用すると、アンモニウム塩となる。また、アルカリ土類金属などのアルカリ金属塩以外のアルカリ(例えばカルシウムやマグネシウム)との中和塩が存在してもかまわない。
上記中和塩の中で、ガスバリアー層の安定性や、耐水性を考慮するとリン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、硫酸アルカリ金属塩、硝酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ金属塩が好ましい。これらの中でもリン酸アルカリ金属塩、炭酸アルカリ金属塩、ホウ酸アルカリ金属塩が特に好ましい。これらの中和塩は耐水性の面でとりわけ好ましい。
本発明のガスバリアー性積層体を製造するためには、珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれる少なくとも一種の珪酸縮合物と、平板状顔料と、珪酸以外の酸性物質を含有するガスバリアー性塗料を支持体に塗工してガスバリアー性積層体とすることが好ましい。
【0082】
しかし、添加する酸性物質の種類によっては、ガスバリアー性塗料中のアルカリ金属イオンと酸性物質が急激に中和反応を起こす場合がある。塗料中で中和反応が起こると、塗料の粘度が増粘したり、また中和反応が激しいと、塗料がゲル化してしまうことがあり好ましくない。また、塗料中で中和反応が起こると珪酸縮合物同士の縮合反応が進んでしまい、塗料の成膜性が劣り結果として塗膜のバリアー性が悪化する可能性もあるため、塗料中では中和反応が起こらない、あるいは中和反応が起こってもその速度が極力遅い塗料が好ましい。従って、塗料に添加した状態では中和反応が起きず、基材に塗工した後、乾燥や加熱等の工程において中和反応が起きるような酸性物質を添加することが好適である。
このような酸性物質は、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアンモニウム塩、尿素、酸化ホウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種以上からなる酸性物質であることが好ましい。更に具体的には、リン酸、炭酸、塩酸、硫酸、ホウ酸等の酸性物質のアンモニウム塩、あるいは尿素、酸化ホウ素が挙げられる。
【0083】
例えば、酸性物質としてリン酸アンモニウムを使用した場合で例示すると、ガスバリアー性塗料は、塗料中ではリン酸がアンモニアで中和されているため、塗料中に含まれるアルカリ金属イオンとの中和反応を急激には起こさない。しかし、塗工、乾燥してガスバリアー層を形成する時に、乾燥の熱及び水分の蒸発によってアンモニアが蒸発してリン酸を生成する。このリン酸がガスバリアー塗膜中のアルカリ金属イオンと中和反応を起こしてアルカリ金属イオンをトラップする。この中和反応は塗料の成膜と中和反応が同時に起こるため、塗料の成膜性を維持したまま、塗膜中のアルカリ金属イオンを酸性物質で中和(トラップ)することができる。そのため耐水性及び耐湿ガスバリアー性が向上する。アルカリ金属イオンを中和することで珪酸(シラノール基)の脱水縮合反応を促進させる効果もある。シラノール基の縮合が進むと更に耐水性が向上し、酸性物質の添加はアルカリ金属イオンの中和(トラップ)とシラノール基の脱水縮合反応(シロキサン結合の形成)を促す。しかも、アルカリ金属イオンは塗膜中で酸性物質に中和されているため、シロキサン結合を加水分解を促進する力も弱くなっていると考えられる。
このように、本発明においては、珪酸縮合物(珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれる少なくとも一種)及び平板状顔料に、酸性物質のアンモニウム塩、尿素、酸化ホウ素から選ばれる少なくとも一種以上の組成物としてを加えたものを第一ガスバリアー層を形成する塗料(第一ガスバリアー性塗料)とし、前記塗料を支持体に塗工して第一ガスバリアー層を形成することが好ましい。
【0084】
第一ガスバリアー性塗料に添加する酸性物質のアンモニウム塩とは、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム等などの無機酸のアンモニウム塩や酢酸、安息香酸、ギ酸、酒石酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、クエン酸などの有機酸のアンモニウム塩が挙げられる。
上記のようなアンモニウム塩は、第一ガスバリアー性塗料を支持体に塗工、乾燥してガスバリアー層を形成する際に、乾燥時の加熱や水分の蒸発により、分解してアンモニアを放出し、同時にガスバリアー層中のアルカリ金属イオンと中和反応を起こし、アルカリ金属塩を形成する。尚、本発明で使用するアンモニウム塩は、その一部がナトリウム、カリウム、リチウムのようなアルカリ金属イオンで中和されていてもよい。
【0085】
また、尿素のように、加熱によりアンモニアと二酸化炭素を放出するものを使用してもよい。この場合には第一ガスバリアー層中の中和塩として炭酸アルカリ金属塩が生成する。
ホウ素を含む酸性物質を第一ガスバリアー性塗料に添加して使用する場合、ホウ酸を使用することもできるが、この場合塗料中でのアルカリ金属イオンとの反応による塗料のゲル化速度が比較的速いため、塗料の安定性の面で、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カリウムあるいは酸化ホウ素等の使用が好ましい。
四ホウ酸アンモニウムは、第一ガスバリアー性塗料に添加しても、そのままでは珪酸アルカリ金属塩のアルカリ金属イオンと中和反応を起こさない。塗料を塗工し、加熱乾燥の過程で四ホウ酸アンモニウムが分解し、アンモニアを放出することでホウ酸が生成され、アルカリ金属イオンと中和反応を起こして中和塩となる。
酸化ホウ素は、粉体としては二量体、三量体、もしくはそれ以上の縮合物として存在し、そのままでは酸としての働きは弱い。しかし、酸化ホウ素をガスバリアー性塗料中に溶解させ、該ガスバリアー性塗料を塗工、加熱乾燥することで、酸化ホウ素が熱により加水分解されモノマーのホウ酸や、ダイマー、トリマーなどのホウ酸が生成される。そしてこのホウ酸がアルカリ金属イオンと中和反応を起こして中和塩となる。
【0086】
本発明における珪酸以外の酸性物質の第一ガスバリアー性塗料への添加量は、塗料に含まれるアルカリ金属イオンに対して中和量含まれていることが理想的である。例えば、リン酸化合物は3価であるためアルカリ金属イオン3モルに対して1モルのリン酸が必要となる。同様に炭酸及び硫酸は2価、硝酸は1価として計算する。ホウ酸化合物は理論上3価の酸であるが、ホウ酸自体弱い酸であることと、ホウ酸自身が縮合したり、珪酸とホウ酸が縮合し、B−OH結合がB−O−B結合やB−O−Si結合となるため、全てのB−OHがアルカリ金属イオンを中和できない。本発明者らの検討により、ホウ酸は1価とみなしてよいことが判明した。
【0087】
尚、第一ガスバリアー性塗料への珪酸以外の酸性物質の添加量は、必ずしも中和量でなくともよく、塗料中のアルカリ金属イオンに対して10〜500モル当量、好ましくは20〜400モル当量、より好ましくは30〜300モル当量である。10モル当量未満の場合、アルカリ金属イオンの中和が十分に行われず、高湿度条件下におけるガスバリアー性向上効果が十分には得られない場合がある。逆に500モル当量を越えると、未反応の酸性物質が塗膜中に残存し、珪酸縮合物同士の成膜を阻害するためガスバリアー性が悪化する。
【0088】
ガスバリアー性積層体の柔軟性や、ガスバリアー層と支持体、もしくはガスバリアー層同士の密着性を向上させるため、有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解縮合物がガスバリアー層(第一ガスバリアー層及び/又は第二ガスバリアー層)に含まれていてもよい。有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解縮合物は、有機官能基を有する金属アルコキシドにはオルガノアルコキシシラン、オルガノチタネートやオルガノアルミニウネートやジルコニウム化合物などの金属化合物を加水分解することで得られる。ここでは金属アルコキシドには金属アルキレート(金属とアルキル基のエステル化物)も含まれる。
【0089】
第一ガスバリアー層に金属アルコキシドが含まれる場合、加水分解した有機官能基を有する金属アルコキシドは、塗料中の珪酸縮合物や平板状顔料と縮合反応を起こしたり、また、金属アルコキシド同士が縮合反応を起こす。この加水分解縮合反応は塗料中でも起きるが、塗料を支持体に塗工後、加熱乾燥するとより縮合が起きやすくなる。有機官能基を有する金属アルコキシドはガスバリアー塗膜中に平板状顔料や珪酸縮合物に取り囲まれ、ガスバリアー層内部に有機官能基が孤立した形で存在する。そのため、有機官能基周辺では珪酸縮合物の更なる縮合が進まず分子レベルでの空隙ができた形をとる。そのため塗膜に柔軟性を与える。空隙は分子レベルであるのでガスバリアーに対する悪影響は極めて小さい。また、有機官能基がエポキシなどの反応性の官能基であれば、シラノールとエポキシが反応を起こし柔軟性のみならず耐水性を向上させる効果もある。
一方、第二ガスバリアー層に金属アルコキシドが含まれる場合、加水分解した有機官能基を有する金属アルコキシドは、高水素結合性樹脂と相溶する。また、架橋性の有機官能基がある場合は、高水素結合性樹脂と架橋反応を起こす。
また、加水分解した金属アルコキシドはシラノール基を有するため、第一ガスバリアー層に含まれる珪酸縮合物のシラノール基と縮合反応を起こす。そのため、第一ガスバリアー層と第二ガスバリアー層の密着性が向上する。
【0090】
本発明に用いられるオルガノアルコキシシラン化合物は、その親水性部にSi原子を含むものであって、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランフェニルトリエトキシシラン、γ−フルオロプロピルトリメトキシシラン、及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、などが挙げられる。
これらオルガノアルコキシシラン化合物は一般にシランカップリング剤として使用される場合が多い。これらのオルガノアルコキシシランの中では、エポキシ基を有するシランカップリング剤が耐湿ガスバリアーの面で好ましい。また、有機官能基がメチルやビニル基などの比較的コンパクトなものも、柔軟性の面で好ましい。
【0091】
また本発明に用いられるオルガノアルコキシ金属化合物は、その親水性部分に多価金属原子(Ti、Al等)を含むものであって、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタノール、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、及びイソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネートなどのチタネート化合物、並びに、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートなどのアルミニウム化合物を包含する。
【0092】
有機官能基を有する金属アルコキシドは、その分子構造において、Si、Ti、Zr又はAl原子を含み、無機物質に対して高い反応性又は親和性を有する無機部分(SiOH、TiOH、ZrOH、AlOHなどの金属性水酸基=高い親水性を示す)と、有機化合物に対して高い反応性又は親和性を有する有機部分とを有する。
有機官能基を有する金属アルコキシドは、珪酸アルカリ縮合物あるいは樹脂を100質量部とした時に1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜75質量部、より好ましくは5〜50質量部である。有機官能基を有する金属アルコキシドの使用量が1質量部未満の場合、有機官能基を有する金属アルコキシドによる柔軟性向上あるいは密着性向上の効果が不十分になることがあり、またそれが100質量部を越える場合、ガスバリアー性の低下を招く可能性がある。
【0093】
第一及び第二ガスバリアー層の厚さは特に限定されないが、各々1nm〜5μmが好適である。ガスバリアー層が1nm未満になるとガスバリアー性が悪くなる。また5μmより厚くなると、ガスバリアー性の効果が頭打ちになり不経済である。ガスバリアー層のより好適な範囲は10nm〜1μmであり、50nm〜500nmが更に好適な範囲である。
【0094】
本発明で使用できる支持体は合成樹脂フィルム、シート、成形体から適宜選択できる。合成樹脂の具体例を挙げるとポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、脂環式構造を有するポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリコハク酸エステル、ポリ乳酸エステル、ポリ酪酸エステルなどのポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリスルファンなどの樹脂がある。またこれらの樹脂を任意の方法で積層したフィルムやシート、成形体なども使用可能である。
これらの樹脂の中でもポリプロプレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66などのフィルムやシートが好適に使用される。また、フィルムは一軸延伸や二軸延伸のフィルムを使用することもできる。
【0095】
尚、上記の支持体には酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤、難燃剤、無機充填材、例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、クレー、ゼオライト、マイカ、カーボンブラック、ガラス繊維などが含まれていてもよい。
【0096】
これら合成樹脂フィルムなどに第一ガスバリアー層を積層する場合、合成樹脂フィルムに直接積層させてもよいし、密着性を向上させるために合成樹脂フィルムを表面処理して用いてもかまわない。
合成樹脂表面の活性化方法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロ混酸液処理、発煙硫酸処理、硫酸液処理、電子線処理、紫外線処理などを施して、合成樹脂フィルムなどの表面に水酸基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸基、エーテル結合、アミノ基、イミノ基、アミド基、硫酸基、アミド基などの親水性成分を導入することができる。このような方法で処理した合成樹脂フィルムなどの表面にガスバリアー性塗料を塗工すると、ハジキやブツが発生するの防ぐと共にガスバリアー層と基材との密着を良好にする効果がある。
【0097】
また、このような表面処理だけでは密着性が十分に得られない場合(基材がポリオレフィン系樹脂の場合など)は基材表面にアンカー層を設けたり、表面処理した基材に更にアンカー層を設けることができる。
含窒素化合物は支持体表面の親水性極性基と水素結合によって強固に接着する。特に支持体表面の極性基がアニオン性の場合、含窒素化合物はカチオン性を有するため、支持体表面のアニオン性極性基と含窒素化合物のカチオン性基と強固にイオン結合し、更にガスバリアー層に含まれるアニオン性の珪酸縮合物やアニオン性の平板状顔料ともイオン結合や脱水縮合反応により強固に接着するため、支持体とガスバリアー層の密着性が大幅に向上する。また、含窒素化合物を含むアンカー層と珪酸縮合物を含むガスバリアー層はそれぞれが混合して濃度が連続的に変化する傾斜構造をとる方が好ましい。含窒素化合物が有機化合物の場合、有機質/無機質の組成が傾斜構造となるため、有機質層による支持体との密着性向上と無機質層の持つガスバリアー性の特性が両立するのみならず、耐水性や応力歪みに対してもある程度抵抗力ができる。(特願2000−067858)。
【0098】
本発明のアンカー層に用いる含窒素化合物としては、カチオン性有機化合物が挙げられる。珪酸アルカリ金属塩などの珪酸縮合物は、アルカリ領域ではシラノール基と解離したシラノールイオンを併せ持ち、これらの官能基が縮合してシロキサン結合を形成する。本発明者らが検討を重ねた結果、カチオン性有機化合物を使用した場合、カチオン性有機化合物は珪酸縮合物とイオン結合や共有結合といった反応を起こすだけでなく、カチオン性有機化合物によって生じる水酸イオンによって珪酸縮合物の縮合反応を促進させるということを見出した。
カチオン性有機化合物がポリアミンの場合を一例として示すと、珪酸縮合物のシラノールイオンとポリアミンのカチオンはイオン反応(〜SiO…N〜)〜SiOHN〜もしくは共有結合(〜SiON〜)〜SiON〜によりゲル化する。また一方では、アミンの作用により生じたOHが珪酸縮合物のシラノール基の縮合を促し、新たなシロキサン結合を生成させシロキサン結合のネットワークを拡大するものと考えられる。
【0099】
これらの含窒素化合物としてはイミン化合物やアミン化合物と称せられるものが代表である。これらのうちイミン化合物としてはポリアルキレンイミンが代表であり、ポリエチレンイミン、アルキルあるいはシクロペンチル変性ポリエチレンイミン、エチレン尿素のイミン付加物、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又は、これらのアルキル変性体、アルケニル変性体、ベンジル変性体、もしくは、脂肪族環状炭化水素変性体、ポリアミドイミド、ポリイミドワニス、からなる群より選ばれたポリイミン系化合物がある。
【0100】
また、アミン化合物としてはポリアルキレンポリアミンがある。例えばポリエチレンポリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの化合物である。また同様の効果を示すものとしては、ポリアミドのポリエチレンイミド付加物などの化合物などのポリアミド、ヒドラジン化合物、ポリアミンポリアミドのエピクロロヒドリン付加物(炭素数3〜10の飽和二塩基性カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとからポリアミドをエピクロルヒドリンと反応させて得られる水溶性で陽イオン性の熱硬化性樹脂)などのポリアミンアミド化合物、4級窒素含有アクリルポリマー、4級窒素含有ベンジルポリマー、ウレタン、カルボン酸アミン塩基を有する化合物、メチロール化メラミン、カチオン性ポリウレタンなどの化合物などの含窒素4級塩化合物がある。また、カチオン変性ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、第3級窒素含有アクリル系樹脂等などのカチオン樹脂が挙げられる(カチオン樹脂については特開平8−90898号公報、特開昭63−162275号公報、特開昭62−148292号公報を参照されたい)。更に、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素などの尿素化合物やジシアンジアミド誘導体なども本発明の範疇である。
【0101】
これらのものを更に詳述すると、本発明で使用されるポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン及びポリプロピレンイミンが好ましく、特にポリエチレンイミンが好ましい。これらのポリアルキレンイミンは単独で使用しても、また酢酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸等との塩を形成して使用してもよい。
【0102】
有機アミン化合物としては第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、及び第4級アンモニウム塩化合物のいずれであってもよく、また、有機モノアミン及び有機ポリアミンのいずれであってもよい。更に有機アミン化合物は、アミノ基以外の異種官能基、例えばエポキシ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、ニトリル基などを有するものを包含する。
【0103】
変性有機アミン化合物としては、モノエポキシ化合物やジエポキシ化合物などのエポキシ基を有する化合物とアミン化合物の付加物、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのヒドロキシル基を有する化合物とアミン化合物の付加物、アクリルニトリルとアミン化合物のマイケル付加物、フェノール化合物とアルデヒド化合物とアミン化合物のマンニッヒ反応で得られる付加物などが挙げられる。
【0104】
上記のような変性には、1)アミン化合物の有する刺激臭や皮膚刺激性などの毒性を低下させること、2)アミン化合物の粘度を低下させること、及び3)分子量を大きくし秤量誤差を小さくすることなどの効果がある。アミン化合物の変性の程度には、特に制限はない。
【0105】
本発明に用いられる有機アミン化合物を例示すれば下記の通りである。
1)脂肪族ポリアミン(ポリアルキレンポリアミン)又はモノアミン:エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビス−プロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、メンタンジアミン−3、N−アミノエチルピペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、トリエチレンジアミン、ポリビニルアミン、ステアリルアミン、ラウリルアミンなど。
2)芳香族ポリアミン又はモノアミン:m−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、ベンジジン、ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−チオジアニリン、ジアニシジン、2,4−トルエンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−(o−トルイジン)、o−フェニレンジアミン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、m−アミノベンジルアミン、アニリンなど。
3)芳香族環基を有する脂肪族ポリアミン又はモノアミン:メタキシリレンジアミン、テトラクロロキシレンジアミン、トリメチルアミノメチルフェノール、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミンなど。
4)第2級アミン:N−メチルピペラジン、ピペリジン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピロリジン、モルホリンなど。
5)第3級アミン:テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルモルホリン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンジアミン、1−ヒドロキシエチル−2−ヘプタデシルグリオキサリジン、ピリジン、ピラジン、キノリンなど。
6)第4級アンモニウム塩:ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−エチルヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、1,3−ビス(トリメチルアンモニオメチル)シクロヘキサンジクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドなど。
また、アミン類としては、特開平10−226989号公報に記載のあるアミン類も例示することができる。
【0106】
本発明でアンカー層として用いられる、上述したような珪酸縮合物と反応する含窒素化合物は水溶性であることが好ましいが、水不溶性であっても乳化や分散処理して使用することもできる。上記含窒素化合物を2種以上混合して用いてもかまわない。
【0107】
本発明においては、上記したような含窒素化合物を含むアンカー層に、高水素結合性樹脂を加えることでアンカー層にもガスバリアー性を付与しガスバリアー性を向上させることができる。使用できる高水性結合性樹脂は、前述した第二ガスバリアー層に好適に用いられる高水素結合性樹脂と同様のものが好適である。また、アンカー層に高水素結合性樹脂を使用した場合、高水素結合性樹脂と第一ガスバリアー層が相互に混合し有機/無機(高水素結合性樹脂と珪酸縮合物)の複合体(有機と無機化合物からなる傾斜構造をとるのが理想的)を形成し、ガスバリアー性積層体の柔軟性を向上させることができる。
【0108】
また、耐水性を向上させる目的でアンカー層に耐水性向上剤を加えることもできる。
耐水性向上剤としては第一にエポキシ化合物がある。エポキシ化合物は、モノ、ジ、トリなどエポキシ基をいくつか含有するエポキシ化合物である。このエポキシ化合物は、脂肪族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物を包含し、例えばブチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ラウリルアルコールポリエチレングリコールグリシジルエーテルなどがある。
【0109】
また、ポリアミドアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミン−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミドポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、ポリアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物、及びポリアミドアミンポリ尿素−エピハロヒドリン又はホルムアルデヒド縮合反応生成物を単独あるいは併用して用いることもできる。
【0110】
上記縮合反応生成物は、その分子骨格中にアミノ基を含み、その側鎖にエポキシ環又はメチロール基を有するものであり、一般に下記成分:(i)ポリアルキレンポリアミン、(ii)尿素類、(iii)二塩基性カルボン酸類、(iv)エピハロヒドリン類又はホルムアルデヒドを反応させて合成することができる(例えば、特公昭52−22982号、特公昭60−31948号、特公昭61−39435号、特開昭55−127423号公報を参照されたい)。
【0111】
また、その他の耐水化剤としては、酸(例えば塩酸、硫酸、ホウフッ化水素酸、酢酸、グリコール酸、マレイン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸など)、金属塩(例えば塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、ホウフッ化マグネシウム、ホウフッ化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、重硫酸ナトリウム)、塩化アンモニウムなどがあり、これらは単独もしくは併用して使用される。
【0112】
アンカー層で用いる含窒素化合物の塗液は、含窒素化合物の種類により、水やイソプロピルアルコール・メタノールなどの有機溶媒、またその混合液などで適宜希釈して使用できる。塗液濃度は0.01〜20%、好ましくは0.1〜5%程度である。
【0113】
これら含窒素化合物と耐水性向上剤との配合比は質量比で99.9/0.1〜5/95であり、好ましくは99/1〜20/80程度である。好適な比率は各含窒素化合物の反応性と共重合した場合の窒素原子のモル比などにより大幅に変動するため適宜確かめて使用するのが最も好ましい。
本発明のアンカー層の厚さは1nm〜5μmが好ましい。1nm未満であるとアンカー層の効果である密着性や耐水性が悪くなる。また、5μmを越えて厚くなるとアンカー層の効果が頭打ちとなり不経済である。
【0114】
本発明におけるガスバリアー性積層体の23℃・90%RHにおける酸素透過度は測定開始後72時間後で50cc/m・day・atm以下であることが好ましく、より好ましくは30cc/m・day・atmであり、更に好ましくは15cc/m・24hr以下である。
酸素透過度が50cc/m・day・atm以下の場合、十分酸素透過度が低くガスバリアー性積層体として実用に供することができるものであり、30cc/m・day・atm以下であればより使用できる用途が広がる。
酸素透過度はMOCON社のOX−TRAN/100型で測定した値である。本発明ガスバリアー積層体の酸素透過度は時間と共に変化するが、およそ72時間でほぼ安定しする。
【0115】
本発明のガスバリアー性積層体は、支持体を透明(ヘーズ6%以下)なフィルムとした場合は、ヘーズ8%以下が好ましく、6%以下となることがより好ましい。言い換えれば、ガスバリアー層、及びアンカー層、オーバーコート層を設けたことによるヘーズの上昇値がゼロに近いほど好ましい。積層体のヘーズが8%を越えて高い場合、フィルムが曇っているのが明らかに判るため、包装用フィルムとしては用途が限定されてしまう。ヘーズが6%以下だと包装用フィルムとしての用途が拡大する。
尚、ヘーズ(曇り度)は拡散透過率(Td)/全光線透過率(Tt)より算出した(反射・透過率計:HR−100、MURAKAMI COLOR RESERCH LABORATORY製)値であり、ヘーズが小さいほど透明性に優れる。
【0116】
第一及び第二ガスバリアー性塗料を塗工、乾燥する工程においては、30℃以上に加熱し、その状態である程度長時間保持し、エージング処理すると、珪酸の縮合が更に促進され、形成されたガスバリアー層のガスバリアー性が更に向上する。室温において乾燥させても珪酸の縮合は進行するが、反応に長時間必要となる。尚、この加熱処理は、前述の加湿処理後に行うと、ガスバリアー性の向上の上で更に効果的であり、また加熱エージング時間を短縮できる。もちろん加湿処理を行わずに、加熱エージング処理してもよい。
尚、エージング処理時の加熱温度は30〜100℃が好適であり、より好適には35〜90℃、最も好適には40〜80℃である。エージング温度が30℃未満であるとエージング時間が一ヶ月以上必要になる場合もあり、工業的生産が困難となる。また、エージング温度が100℃以上にしても、縮合反応促進の効果が頭打ちとなるため不経済となる。また、エージング時間は長いほどガスバリアー性向上の効果が大きいが、好ましくは3時間〜1週間、より好ましくは12〜72時間、より好ましくは24〜48時間である。エージング時間が3時間未満だとエージングの効果が小さいため好ましくない。エージング時間が1週間を越えるとエージングの効果が頭打ちとなるため不経済である。
【0117】
尚、加熱処理中は、ガスバリアー層中のアルカリ金属と、空気中の二酸化炭素との反応による白華を防ぐため、ガスバリアー層が直接空気に接しない方法で加熱処理することが好ましい。
尚、第一ガスバリアー層を加熱エージングしてから第二ガスバリアー層を形成させてもよく、第二ガスバリアー層を形成させた後に加熱エージング処理してもよい。
【0118】
本発明においては、第一ガスバリアー層に高水素結合性樹脂やスチレンブタジエンラテックス、アクリルエステル、アクリルスチレン、ポリエステルなどの水性エマルジョンや、その他水溶性樹脂が含まれていてもよい。このような樹脂をガスバリアー層に添加することでガスバリアー層の柔軟性を向上させることができる。しかし、上記樹脂を加えることにより、ガスバリアー性は低下する傾向にあるので、添加量は、必要な柔軟性とガスバリアー性のバランスにより決定する。
【0119】
また本発明においては、第一及び第二ガスバリアー層、及びアンカー層の各層に、色合い調整剤、粘度調整剤、無機顔料、有機顔料、硬化剤や架橋剤等の添加剤を必要に応じて任意に加えることができる。
【0120】
本発明のガスバリアー性積層体は、支持体表面に前述の第一及び第二ガスバリアー性塗料を塗工、乾燥して得られるものである。
塗工方法には、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、ドクターナイフ法、ダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法、キス塗工、リップ塗工、ブレード塗工、エアナイフ塗工、浸漬、刷毛塗り等が状況に応じて任意に使用できる。また、これら塗工方法を組み合わて使用することができる。また、これらの方法に限定されるものではない。
【0121】
また、乾燥方法としては、熱風、乾燥空気、赤外線、マイクロ波、ガスバーナー等を用いた乾燥方法が任意に使用できる。また、これら2種以上組み合わせた乾燥方法も使用できるが、これらの方法に限定されるものではない。
乾燥温度に特に制限はないが、好ましくは50〜300℃、より好ましくは70〜200℃、最も好ましくは90℃〜150℃である。乾燥温度が50℃未満の場合、珪酸の縮合反応が十分に起こらない可能性がある。また、300℃を越えた場合には、ガスバリアー層の表層だけ先に反応が進行して皮膜が形成されることによりブリスター現象が発生する恐れがある。尚、ブリスター現象とは、塗膜の表面のみが成膜し、塗膜の内部が未乾燥の状態になり、その状態で加熱されると内部の水分が蒸発しようとして塗膜が膨れたり発泡したりする現象である。
また、熱可塑性樹脂を支持体に使用する場合には、該樹脂の融点以下で乾燥する必要がある。支持体としてOPPフィルムを選択した場合で例示すると、乾燥温度は70〜120℃が好ましい。120℃を越えた場合には、OPPフィルムの強度的劣化や色調の変化が発生し好ましくない。
【0122】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
配合、濃度、添加量などを示す数値は固形分又は有効成分の質量基準の数値である。
【0123】
<実施例1>
モル比3.5の珪酸リチウム塩溶液(珪酸リチウム35、固形分LiO・SiOとして23%、日本化学工業(株)製)をイオン交換水で希釈して得た珪酸リチウム塩水溶液(固形分LiO・SiOとして4%)と、モル比3.2の珪酸ナトリウム塩溶液(珪酸ナトリウム3号、固形分NaO・SiOとして38%、(株)トクヤマ製)をイオン交換水で希釈して得た珪酸ナトリウム塩水溶液(固形分NaO・SiOとして4%)をそれぞれ固形分換算で100/50(珪酸リチウム塩/珪酸ナトリウム塩)になるように混合して、第一ガスバリアー性塗料となる固形分が4%の水系液を調製した。
得られた第一ガスバリアー性塗料を、ポリエチレンテレフタレートのフィルム(厚さ12μm)のコロナ処理表面に、メイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μm(塗工量として約0.4g/m)になるように塗工し、100℃で2分間乾燥して第一ガスバリアー層を形成した
次いで、イオン交換水を用いてポリビニルアルコール(PVA117、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度1700、(株)クラレ製)の3%水溶液を調製した。
別に、リン酸(特級、和光純薬)を、イオン交換水でリン酸濃度で3%になるように希釈し、3%水酸化リチウム水溶液(水酸化リチウム試薬をイオン交換水で希釈したもの)を、リン酸と水酸化リチウムのモル比が1:2になるように混合して、リン酸水素二リチウムの3%水溶液を調製した。
PVA117の3%水溶液とリン酸水素二リチウムの3%水溶液を、それぞれの固形分で100/20(PVA/リン酸水素二リチウム)になるように混合して第二ガスバリアー性塗料を調製した。
第二ガスバリアー性塗料を第一ガスバリアー層上にメイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μm(塗工量として約0.3g/m)になるように塗工し、100℃で2分間乾燥して第二ガスバリアー層を形成してガスバリアー性積層体を得た。
【0124】
<実施例2>
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)のコロナ処理表面に、ポリエチレンイミン(エポミンP−1000、30%ポリエチレンイミン樹脂の水溶液を水で3%に希釈した水溶液、分子量70,000、比重1.04、アミン価18(mgeq/g・solid)、アミン比 1級/2級/3級=25/50/25、日本触媒(株)製)の水溶液とPVA(PVA117、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度1700、(株)クラレ製)の3%水溶液を、ポリエチレンイミンとPVAの固形分質量比が10/90になるように混合して得たアンカー用塗料(固形分3%)を乾燥後の膜厚が0.2μmとなるよう塗工し、80℃の熱風乾燥機で2分乾燥してアンカー層を形成した。
実施例1と同様に作製した珪酸リチウム塩水溶液(固形分LiO・SiOとして4%)に、合成スメクタイト(ルーセンタイトSWN、固形分91%、平均粒子径30〜50nm、コープケミカル(株)製)をイオン交換水にホモミキサーで30分以上分散させて得た合成スメクタイト水分散液(固形分2%)を、各々の固形分比が75/25となるように混合し、更にイオン交換水を加えて珪酸リチウム塩と合成スメクタイトを合わせた固形分が3%である水系液を調製した。
酸化ホウ素(B、和光純薬(株)製)とイオン交換水を使用して酸化ホウ素の3%水溶液を作製した。
酸化ホウ素固形分と、珪酸リチウムと合成スメクタイトを合わせた固形分の比が15/100(酸化ホウ素の固形分15質量部、珪酸リチウムと合成スメクタイトの合計固形分が100質量部)になるように、上記酸化ホウ素3%水溶液を、珪酸リチウムと合成スメクタイトの固形分3%水系液に攪拌しながら添加、更に30分間攪拌して第一ガスバリアー性塗料とした。
得られた第一ガスバリアー性塗料を、前述のアンカー層上に、メイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥して第一ガスバリアー層を得た。
次いで、イオン交換水を用いてポリビニルアルコール(PVA117、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度1700、(株)クラレ製)の3%水溶液を調製した。
別に、リン酸(特級、和光純薬)をイオン交換水でリン酸濃度で3%になるように希釈し、これに3%の水酸化リチウム水溶液(水酸化リチウム試薬をイオン交換水で希釈したもの)を、リン酸と水酸化リチウムのモル比が1:2になるように混合して、リン酸水素二リチウムの3%水溶液を調製した。
PVA117の3%水溶液とリン酸水素二リチウムの3%水溶液を、それぞれの固形分で100/20(PVA/リン酸水素二リチウム)になるように混合して第二ガスバリアー性塗料を調製した。
第二ガスバリアー性塗料を第一ガスバリアー層上にメイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μm(塗工量として約0.3g/m)になるように塗工し、100℃で2分間乾燥して第二ガスバリアー層を形成してガスバリアー性積層体を得た。
【0125】
<実施例3>
二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ25μm)のコロナ処理表面に、ポリエチレンイミン(エポミンP−1000、30%ポリエチレンイミン樹脂の水溶液を水で3%に希釈した水溶液、分子量70,000、比重1.04、アミン価18(mgeq/g・solid)、アミン比 1級/2級/3級=25/50/25、日本触媒(株)製)の水溶液とPVA(PVA117、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度1700、(株)クラレ製)の3%水溶液を、ポリエチレンイミンとPVAの固形分質量比が10/90になるように混合して得たアンカー用塗料(固形分3%)を、乾燥後の膜厚が0.2μmとなるよう塗工し、80℃の熱風乾燥機で2分乾燥してアンカー層を形成した。
次いで、実施例1と同様に作製した珪酸リチウム塩水溶液(固形分LiO・SiOとして4%)に、実施例2と同様に作製した合成スメクタイト水分散液(固形分2%)を、各々の固形分比90/10で混合し、更にイオン交換水を加えて、珪酸リチウムと合成スメクタイトを合わせた固形分が3%である水系液を調製した。
実施例2と同様にして四ホウ酸アンモニウム水溶液(固形分3%)を作製した。
四ホウ酸アンモニウムの固形分と、珪酸リチウムと合成スメクタイトを合わせた固形分の比が15/100(四ホウ酸アンモニウムの固形分15質量部、珪酸リチウムと合成スメクタイトの合計固形分が100質量部)になるように、上記四ホウ酸アンモニウム水溶液を、珪酸リチウムと合成スメクタイトの3%水系液に攪拌しながら添加し、更に30分間攪拌した。
上記3%水系液に、エポキシ系シランカップリング剤(KBM403、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学(株)製)をイオン交換水で希釈して得た3%水溶液を、エポキシ系シランカップリング剤の固形分と珪酸リチウムと合成スメクタイトの固形分の比が20/100になるように添加し、更に攪拌して3%水溶液とし、第一ガスバリアー性塗料とした。
第一ガスバリアー性塗料を、前記アンカー層上に、メイヤーバーを用いて、乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥して第一ガスバリアー層を形成した。
第一ガスバリアー層上に、実施例1の第二ガスバリアー性塗料をメイヤーバーで乾燥後の膜厚が0.2μmになるように塗工し、熱風乾燥機を用いて100℃1分間乾燥した。
得られたOPP/アンカー層/第一ガスバリアー層/第二ガスバリアー層からなる積層体を、ポリプロピレン袋に入れて密封し、40℃で24時間加熱エージングし、ガスバリアー性積層体を得た。
【0126】
<実施例4>
実施例2と同様にアンカー層と第一ガスバリアー層を形成した。
イオン交換水を用いてポリビニルアルコール(PVA117、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度1700、(株)クラレ製)の3%水溶液を調製した。
別に、尿素(HNCONH、分子量60.1、融点132〜136℃、和光純薬(株)製)をイオン交換水で希釈し、3%の尿素水溶液を調製した。
PVA117の3%水溶液と尿素の3%水溶液をそれぞれの固形分で100/20(PVA/尿素)になるように混合して第二ガスバリアー性塗料を調製した。
第二ガスバリアー性塗料を第一ガスバリアー層上にメイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μm(塗工量として約0.3g/m)になるように塗工し、100℃で2分間乾燥した。
得られたOPP/アンカー層/第一ガスバリアー層/第二ガスバリアー層からなる積層体を、ポリプロピレン袋に入れて密封し、40℃で24時間加熱エージングし、ガスバリアー性積層体を得た。
【0127】
<実施例5>
尿素の代わりに炭酸アンモニウム((NHCO、分子量96.1、和光純薬(株)製)を用いてたこと以外は、実施例4と全く同様にしてガスバリアー性積層体を得た。
【0128】
<実施例6>
実施例2と同様にアンカー層と第一ガスバリアー層を形成した。
イオン交換水を用いてポリビニルアルコール(PVA105、ケン化度99%、完全けん化PVA、重合度500、(株)クラレ製)の3%水溶液を調製した。
別に、酸化ホウ素(B、和光純薬(株)製)とイオン交換水を使用して酸化ホウ素の3%水溶液を作製した。
PVA105の3%水溶液と酸化ホウ素の3%水溶液をそれぞれの固形分で100/10(PVA/酸化ホウ素)になるように混合して第二ガスバリアー性塗料を調製した。
第二ガスバリアー性塗料を第一ガスバリアー層上にメイヤーバーを用いて乾燥後のガスバリアー層の厚さが0.2μm(塗工量として約0.3g/m)になるように塗工し、100℃で2分間乾燥した。
得られたOPP/アンカー層/第一ガスバリアー層/第二ガスバリアー層からなる積層体を、ポリプロピレン袋に入れて密封し、40℃で24時間加熱エージングし、ガスバリアー性積層体を得た。
【0129】
<比較例1>
第二ガスバリアー層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にガスバリアー積層体を得た。
【0130】
<比較例2>
リン酸水素二リチウムを添加しないこと以外は、実施例2と全く同様にしてガスバリアー性積層体を得た。
【0131】
<比較例3>
第二ガスバリアー層を設けなかったこと以外は、実施例2と全く同様にしてガスバリアー積層体を得た。
【0132】
<試験方法>
1)酸素透過度
JIS−K−7126 B法(等圧法)で塗工面を酸素検出器側にして23℃90%RH条件で測定した(酸素透過度測定装置:OX−TRAN100型、MOCON社製)。酸素透過度はサンプルをセットして72時間後の値を酸素透過度とした。酸素透過度は50cc/m・24hr以下が好ましく、40cc/m・24hr以下がより好ましく、30cc/m・24hr以下が更に好ましい。
また、ガスバリアー性積層体を40℃90%RH条件下で72時間放置した後、上記のように酸素透過度を測定した(大気中で高湿度条件下に放置後の酸素透過度)。高湿度条件下に放置後の酸素透過度は放置しない場合の酸素透過度の4倍以下あるいは100cc/m・24hr以下が好ましい。
【0133】
【表1】
Figure 0003760853
【0134】
【発明の効果】
本発明によって、高湿度条件下、大気中でで長期間経過した場合においても優れたガスバリアー性を有し、白華現象を防止して、包装用材料として好適なガスバリアー性積層体を提供することが可能となった。

Claims (10)

  1. 支持体の少なくとも片面にガスバリアー層を形成したガスバリアー性積層体において、ガスバリアー層が、下記の2層を支持体側から順次積層して形成されたことを特徴とするガスバリアー性積層体。
    (1)珪酸アルカリ金属塩あるいはコロイダルシリカから選ばれる少なくとも一種の珪酸縮合物を含む第一ガスバリアー層。
    (2)高水素結合性樹脂と酸性物質を含む第二ガスバリアー層。
  2. 珪酸縮合物が、一般式MO・nSiO(n>0、M=Na、K、Li)で表される珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムから選ばれた少なくともいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1記載のガスバリアー性積層体。
  3. 酸性物質が、リン酸化合物、硫酸化合物、炭酸化合物、ホウ素化合物から選ばれた少なくともいずれか一種以上であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のガスバリアー性積層体。
  4. ガスバリアー層が平板状顔料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリアー性積層体。
  5. 平板状顔料が、スメクタイト粘土及び雲母族から選ばれた少なくともいずれか一種以上であることを特徴とする請求項4記載のガスバリアー性積層体。
  6. 第一ガスバリアー層が、珪酸以外の酸性物質を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリアー性積層体。
  7. 珪酸以外の酸性物質が、リン酸化合物、硫酸化合物、炭酸化合物、硝酸化合物、ホウ素化合物から選ばれた少なくともいずれか一種以上であることを特徴とする請求項6記載のガスバリアー性積層体。
  8. ガスバリアー層が有機官能基を有する金属アルコキシドの加水分解縮合物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリアー性積層体。
  9. 支持体とガスバリアー層の間にアンカー層が存在することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリアー性積層体。
  10. アンカー層が含窒素化合物あるいは高水素結合性樹脂から選ばれた少なくともいずれか一種以上を含むことを特徴とする請求項9記載のガスバリアー性積層体。
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