JP3759196B2 - トリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、トリボ帯電方式スプレーガンを用いた薄膜塗装に適した粉体塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粉体塗料は、溶剤塗料に比べ揮発分、臭気とも少なく、公害対策および環境規制の面で非常に有益であることは周知である。
従来より一般的用途として上市されている粉体塗料は、厳密な分級がなされていないため、粒子径分布は非常にブロードなものであった。また、平均粒子径は30μm前後であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
良好なレベリング性を得るためには均一な粉体付着層を形成させることが必須であり、そのためには粒子径の2〜3倍の付着層を必要とする。したがって、従来の粉体塗料では塗膜の厚さを60μmより厚くしなければ良好な塗面が得られなかった。
塗膜を薄膜化することにより、作業効率の向上、レベリング性の向上、およびトータルコストダウン等が期待できるため、塗膜の厚さを溶剤塗料並の30〜60μm程度とすることが望まれている。
【0004】
また、従来公知の粉体塗料は、原材料を混合し、熱溶融混練した後に粉砕して得られるため、形状が不定形である。真円度は約0.5位である。このため、被塗物に塗着された場合に空気を抱き込み易く、焼き付け後の塗膜内には微少な気泡が生じている。
このような気泡が多数存在すると塗膜の光沢が悪化するだけでなく、塗膜の強度が落ちてしまうことにもなる。
【0005】
従来より一般的に使用されてきた粉体塗料塗装方式にはコロナ帯電方式スプレーガンがある。この方式では、スプレーガンの先端に設けられたコロナ電極から生成されたコロナイオンによって帯電された粉体塗料が、導電体である被塗物と電極との間に形成された電界及び空気流にそって飛翔し、被塗物に付着する。
このようなコロナ帯電方式には、2つの大きな問題となる現象が発生することが分かっている。1つはファラデーケージ効果と呼ばれ、電界(電気力線)が被塗物の凹部に形成されないことによって、粉体塗料が凹部には少量しか付着せず、逆に電気力線が集中するエッジ部には多量に付着するという現象である。もう1つは逆電離現象と呼ばれ、被塗物上に堆積された粉体塗料及び遊離コロナイオンの蓄積電荷が大きくなりすぎて火花放電を生じ、塗装面にクレータ状の不良箇所を生じる現象である。
【0006】
これらの問題を解決するため、近年トリボ帯電方式スプレーガンが使用されつつある。この方式では、空気流によって搬送される粉体塗料がスプレーガン内壁との摩擦によって帯電し、空気流のみによって被塗物まで飛翔して付着する。 このトリボ帯電方式によれば、電界が形成されないので凹部にも粉体塗料が良好に付着する。また、遊離イオンが発生しないので逆電離現象も起きにくい。つまり、上記問題を解決することができる。
しかしながら、粉体塗料の帯電が摩擦だけによるため、絶対的な帯電量はコロナ帯電方式よりも低くなり、被塗物への塗着効率が充分でないという問題点が明らかになっている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、上記問題点を改善し、塗膜の薄膜化を可能ならしめる程に小粒径であり、トリボ帯電方式のスプレーガンに使用した場合には良好な塗着効率を示し、焼き付け後に優れた塗膜強度と均一な塗膜性とが得られるトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともポリエステル樹脂および硬化剤からなり、平均粒子径が5〜20μmのトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料であって、その真円度が0.70以上であることを特徴とするトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料である。
【0009】
以下、本発明のトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料(以下、粉体塗料と略す)を詳細に説明する。
本発明の粉体塗料は、結着樹脂および硬化剤を含有している。
該結着樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が使用できる。
前記硬化剤としては、イソシアネート、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素酸、酸ジヒドラジド、イミダゾール等が挙げられる。
その他に添加剤として、充填剤、流展剤、着色剤などを使用することもできる。
充填剤としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、およびケイ酸カルシウム等を例示できる。流展剤としては、アクリルオリゴマー、シリコーン等、着色剤としては、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、カーボンブラック等を例示することができる。発泡防止剤としては、ベンゾイン等を使用することができる。
【0010】
本発明の粉体塗料の平均粒子径は、コールターカウンターTAII型で測定される体積50%径であり、5〜20μmという範囲のものでなければならない。
該平均粒子径が5μm未満の粉体粒子はファンデルワールスカなどに起因する粒子間力が大きくなるため、凝集しやすく、粉体としての流動性が悪化するため粉体塗料として実用的でない。さらに、このような小粒径の粉体粒子を一般的な溶融混練、粉砕分級方法で製造しようとすると、粉砕分級工程で大きなエネルギーを必要とするため、製造コストがかなり高くなってしまう。逆に、平均粒子径が20μmを越えると、本発明の目的の一つである薄く均一な粉体付着層を被塗布面に得ることができない。
【0011】
本発明の粉体塗料は、その真円度が0.70以上であることが必要である。真円度が0.70以上であれば被塗物上に塗着させた時の粉体密度が向上し、空気を抱き込むことによる微少な気泡の発生を低減させることができる。すなわち、微少気泡を低減させることによって塗膜の密度を向上させ、塗膜強度を向上させることができる。また、真円度が0.70以上の場合には、トリボ帯電方式スプレーガンに適用した時に摩擦帯電部材との接触確率が向上することにより、帯電効率が向上するため、被塗物への塗着効率が向上する。
【0012】
なお、本明細書では、「真円度」とは下記一般式(1)で定義される。
【0013】
この真円度は、例えば粒子を透過型電子顕微鏡で撮影して投影像を得、それを画像解析装置(例えば日本アビオニクス社製、商品名:EXECLII)を用いて画像解析することにより得た上記A、Bから算出することができる。
上式から明らかなように、真円度は粒子が真球に近づけば1に近くなり、不定形の場合はそれより小さな値となる。
【0014】
本発明に使用される粉体塗料において、真円度を0.70以上にする方法としては、組成物を乾式混合し、熱溶融混練して素粒子を得た後、粉砕、分級した粒子に、熱、衝撃力、または摩擦力を付与する方法を例示できる。上記溶融混練法の他に、スプレードライ法、懸濁重合法、乳化重合法等を採用することもできる。
【0015】
粒子に熱を付与する方法には、熱気流中に粒子を分散・流動させる熱流動層や、日本ニューマチック社のサーフュージングシステムなどが用いられる。
また、粒子に衝撃力を付与する方法には、回転ロータを有する表面改質機である奈良機械製作所製のナラ・ハイブリダイゼーション・システムなどが使用できる。
さらに、粒子に摩擦力を付与する方法には、ロータ/ステータ間で粒子を圧縮・摩擦する構造の表面改質機であるホソカワミクロン社のメカノフュージョンシステムなどが利用できる。
【0016】
本発明の粉体塗料には、流動性向上などの目的で疎水性のシリカやアルミナなどの微粉末を表面に付着させることもできる。
上記微粉末を粉体粒子の表面に付着させるには、三井三池社製のヘンシェルミキサー、川田製作所社製のスーパーミキサー等の高速ミキサーにて両者を乾式混合すればよい。
【0017】
【実施例】
以下、実施例、および比較例に基づき、本発明の粉体塗料をより詳しく説明する。
<実施例1>
粉体塗料の製造
ポリエステル樹脂 55.8重量%
(日本エステル社製 商品名:ER−6680)
ブロックイソシアネート 10.2重量%
(ダイセルヒュルス社製 商品名:BF−1540)
二酸化チタン 33.0重量%
(石原産業社製 商品名:CR−90)
流展剤 0.66重量%
(BASF社製 商品名:アクロナール4F)
発泡防止剤 0.34重量%
(みどり化学社製 商品名:ベンゾイン)
上記の配合比からなる原料をスーパーミキサーで混合し、加圧ニーダーで
120℃で熱溶融混練後、ジェットミルで粉砕し、その後乾式気流分級機で平均粒子径が13μmとなるように分級した。
この粉体をナラ・ハイブリダイゼーション・システム(奈良機械製作所社製、商品名:NHS−1型)に投入し、6400rpmで3分間処理し、真円度
0.75の粉体とした。この時、材料温度は57℃であった。
この処理粉体100重量部に対し、疎水性シリカ微粉末0.4重量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合して実施例1の粉体塗料を得た。
【0018】
<実施例2>
分級後の粉体を、メカノフュージョンシステム(ホソカワミクロン社製、商品名:AM−35F型)に投入し、材料温度が55℃になるようにロータの回転数を調整しながら20分間処理し真円度0.72の粉体とした以外は実施例1と同様にして、本実施例の粉体塗料を得た。
【0019】
<比較例1>
分級後の平均粒子径を4.5μmとした以外は実施例1と同一にして真円度0.70からなる比較例1の粉体塗料を得た。
本比較例においては、粉砕工程でのエネルギー消費が多く、歩留まりも悪かった。
<比較例2>
分級後の平均粒子径を26.0μmとした以外は実施例1と同一にして真円度0.76からなる比較例2の粉体塗料を得た。
<比較例3>
ナラ・ハイブリダイゼーション・システムでの処理を行わない以外は実施例1と同一にして真円度0.58からなる比較例3の粉体塗料を得た。
【0020】
実施例1、2および比較例1〜3で得られた粉体塗料を使用して下記評価、および確認を行った。
1.平均粒子径
実施例および比較例で分級して得られた粉体塗料をコールターカウンターTAII型を使用して体積50%径を測定し、それぞれ所望の粒子径が得られていることを確認した。
【0021】
2.塗着効率
トリボ帯電方式のスプレーガン(松尾社製)を使用し、下記の塗装条件にて1000mm四方のブライト仕上げしたリン酸亜鉛処理鋼板(SPCC−SB板)の中央部に垂直方向に吊り下げた300mm四方の前記鋼板を仮着したものに得られた粉体塗料を塗着させた。
次に、各吐出量により塗着された被塗着体から30mm四方の鋼板を剥離し、鋼板上の粉体塗料の付着量(X)と、吐出量から得られる理論上の全付着量から塗着効率を導出した。
塗着効率(%)=(X/Y)×100
【0022】
3.塗膜強度
トリボ帯電方式のスプレーガン(松尾社製)を使用し、300mm四方のブライト仕上げしたリン酸亜鉛処理鋼板(SPCC−SB板)に焼き付け後の膜厚が30μmになるように吹き付けし、200℃で焼き付けをおこなった。
得られた塗面について、JIS−K5400によるエリクセン値、耐衝撃性、および鉛筆硬度を測定した。
【0023】
4.焼き付け後の塗面状態
前記塗膜強度測定用試料の表面を視覚判定により評価した。
5.真円度
得られた粉体塗料粒子を透過型電子顕微鏡で撮影して投影像を得、それを画像解析装置(日本アビオニクス社製、商品名:EXECLII)を用いて画像解析し、得られた値から上記式(1)により真円度を算出した。
以上の各特性の評価結果を下記表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表1から明らかなように、本実施例の粉体塗料によれば、真円度が0.70以上であるため、塗物への塗着効率が良好であり、焼付け後の塗膜状態、および塗膜強度も優れていた。
これに対して、比較例1で得られた粉体塗料は、平均粒子径が4.5μmであるため、塗着効率が低く、実用には問題があった。これは平均粒子径が小さすぎて、粒子同士が凝集し易くなり、流動性が悪化したためであると思われる。
また、比較例2で得られた粉体塗料は、平均粒子径が26.0μmであるため、粒子間に空隙が形成され易く、強度測定を行える程度にまで塗面状態が至らなかった。
さらに、比較例3で得られた粉体塗料は、真円度が0.58であるため、塗膜強度に問題があった。これは、粉体塗料が不定形であるため、空気を抱き込み易いためであると思われる。
【0026】
【発明の効果】
本発明の粉体塗料は、ポリエステル樹脂および硬化剤を含有し、平均粒子径が5〜20μmであって、その真円度が0.70以上であることを特徴とする粉体塗料である。粉体塗料の平均粒子径が5〜20μmであるため塗膜の薄膜化が可能である。
さらに、その真円度が0.70以上であるために、摩擦帯電部材との接触確率が向上する。このため、トリボ帯電方式スプレーガンに適用した場合にも充分な帯電性が得られる。
したがって、本発明の粉体塗料によれば、噴霧した塗料の大部分が被塗物に付着し、さらに焼付け後も良好な塗面状態及び塗膜強度を得ることができる。
Claims (1)
- ポリエステル樹脂および硬化剤を含有し、平均粒子径が5〜20μmのトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料であって、その真円度が0.70以上であることを特徴とするトリボ帯電方式スプレーガン用粉体塗料。
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