JP3748300B2 - X線コンピュータ断層撮影装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置に関し、例えば被検体への造影剤注入後において撮影領域のスキャンを開始するための最適なタイミングを得るようしたX線コンピュータ断層撮影装置(以下、「X線CT装置」と言う)に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる造影検査において、点滴あるいは血管注射によって被検体の血管内に注入された造影剤は血流に乗って体内を移動し、目的臓器に達する。造影剤が浸透する際の造影効果の有無もしくは程度の違いの観察、造影部位の形状の観察等により病変又は臓器の異常を発見することが可能になる。しかしながら、造影剤は流動性を有しており血流に乗って迅速に移動し拡散するので、経過時間とともに目的臓器から流れ去ってしまう。このため、造影剤の濃度が減少し造影効果が減少するという欠点がある。また、造影剤が目的の臓器に到達するまでの所要時間や造影効果の程度には個人差がある。
【0003】
目的臓器への造影剤の流入経路を異ならせて造影検査を行なうことがある。目的臓器への造影剤の流入経路は、造影剤注入時からの経過時間により変化する。例えば、ある時間帯においては目的臓器は動脈から流入する造影剤により造影され、また別の時間帯では目的臓器は静脈からの造影剤の流入によって造影される。造影剤の流入経路が異なると、たとえ同一臓器内であっても造影される組織が異なってくる。この現象を利用して、臓器内の病変部を発見したり、病変部の性質を見極める際に役立てることが行われている。
【0004】
従来ではシングルスライスCT、すなわち一度のスキャンで単一のスライス撮影が可能なCTを用い、上述したような造影検査における撮影が行われている。この場合に、造影剤注入後に最適なタイミングで撮影を開始し、適切なデータを収集するために次のような手法が採られている。
【0005】
すなわち、造影剤が注入された被検体の関心領域のCT値の変化をモニタスキャンにより監視し、このCT値の変化に基づいて検査領域(検査目的とする例えば臓器)のスキャン(ヘリカルスキャン)を開始するためのタイミングを得るようなスキャン制御を行う撮影手法がある。モニタスキャンは、被検体のX線透過データを収集しながら同時に画像再構成を行ない、スキャンを行いながら画像を動画的に表示するスキャン方法であって、ダイナミックスキャン又は透視スキャンと称されている。
【0006】
図12は、上記従来例に係るモニタスキャンを行なう場合の配置図、図13は、上記ヘリカルスキャンを行なう場合の配置図である。X線管1からスリット20を介し被検体に向けて曝射されたX線は、シングルスライスの放射線検出器90に入射する。モニタスキャンにおいては、モニタ部位30に対するスキャンが行われ、ヘリカルスキャンにおいては、検査部位40がスキャンされる。
【0007】
モニタスキャンにおいてCT値の変化を監視する関心領域(モニタ部位30)は、図14に示すように、モニタスキャンの前に得られた断層像上でROIマーカ等を用いて設定され、造影検査を行おうとする臓器への造影剤の流入路(血管など)の領域が設定される。この関心領域と臓器との位置関係としては、両者が体軸方向に離間して位置する場合、近接して位置する場合がある。
【0008】
被検体に造影剤を注入した直後においては、関心領域には造影剤は流入していないためそのCT値は低い。さらに時間が経過すると、造影剤が関心領域に流入してCT値が変化(増加)する。この関心領域のCT値が所定の閾値を超えると、検査領域である臓器にも造影剤が流入していると考えられ、この時点で検査領域のスキャンを開始するタイミング信号を発生するようにしている。したがって、造影剤が臓器に流入した最適な時期に撮影を開始することができる。
【0009】
上述したような造影検査における撮影手法においては、次のような問題点がある。
(1)モニタスキャンするスライス位置と検査領域のスライス位置とが離れている場合、モニタスキャンを終了した後に検査領域のスライス位置まで寝台(又は架台)を移動させる必要があり、係る移動時間によってスキャン開始のタイミングにズレ(遅れ)が生じるという問題点がある。
(2)検査領域が比較的大きい場合は、ヘリカルスキャンを行なっている。このヘリカルスキャンにおいては、寝台速度(寝台の移動速度)が一定になってから投影データを収集する必要がある。しかしながら、図15に示すように寝台速度を一定とするためには機構的な助走が必要であり、上記(1)と同様にスキャン開始のタイミングにズレが生じる。
(3)モニタスキャンを行っているスライス位置が撮影したいスライス位置に含まれる又は近接する場合は、モニタスキャンのスライス位置から検査領域の端の位置まで寝台を移動させ、当該スライス位置から折り返してスキャンを行なう必要がある。この場合は、寝台を検査領域の端に移動させるための所要時間により上記(1)と同様にスキャン開始のタイミングにズレが生じる。特に、ヘリカルスキャンを行なう場合は、所望のスライスを再構成可能な程度に体軸方向に幅広くスキャンを行なう必要がある。このため、折り返しまでの距離はより長くなる。
【0010】
ところで、モニタスキャンにおいて監視するCT値の閾値を、上記したような条件を考慮し、これを見越して設定するためには、かなりの経験を要し困難を極める。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、検査領域のスキャン開始のタイミングが与えられた時点から、実際にスキャンが開始されるまでの時間にズレが生じるという問題点がある。このような時間のズレは、迅速且つ適切に検査を行なうためにも抑制する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、被検体の関心領域のCT値の変化を監視し、このCT値の変化に応じて撮影開始のタイミングにズレが生じることがなく迅速且つ適切にスキャンを行ない得るX線コンピュータ断層撮影装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、被検体の関心領域のCT値の変化を監視し、このCT値の変化に応じて撮影を行なう場合に、被検体に対し不必要なX線が曝射されることが無く、被曝の低減を図り得るX線コンピュータ断層撮影装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、X線を曝射するX線管と、複数の検出器列を有する二次元検出器と、前記X線管の焦点を含むX線パスを中心軸として左右非対象に移動可能であり、前記二次元検出器の一部の検出器列のみにX線が曝射されるように該X線の一部を遮へいするX線遮へい手段と、被検体の関心領域のCT値の変化を監視するためのモニタスキャンを行い、当該CT値の変化に基づいて、前記被検体の検査部位のスキャンを開始するタイミングを制御するスキャン制御手段と、前記モニタスキャン時においては前記被検体の前記関心領域にX線が曝射されるように前記X線遮へい手段を移動制御し、且つ、前記検査スキャンが開始されるときに前記X線遮へい手段を移動制御して開口幅を変える手段とを具備する。
(2)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記スキャン制御手段は、前記被検体に対する造影剤の注入によるCT値の変化を監視することを特徴とする。
(3)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記スキャン制御手段は、ダイナミックスキャン又は透視スキャンを含むモニタスキャンにより前記被検体の関心領域のCT値の変化を監視することを特徴とする。
(4)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記モニタスキャンは、前記検査スキャン時よりも低いX線量により行われることを特徴とする請求項3又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
(5)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記CT値の変化に対する閾値を設定する閾値設定手段をさらに具備し、前記スキャン制御手段は、前記閾値設定手段により設定された閾値に基づいて前記被検体の検査部位のスキャンを開始することを特徴とする。
(6)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記CT値の変化を操作者に対して報知する報知手段と、前記報知手段による報知に基づく前記操作者からの指示を入力する入力手段とをさらに具備し、前記スキャン制御手段は、前記入力手段により入力された操作者からの指示に応じて前記被検体の検査部位のスキャンを開始することを特徴とする。
(7)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記被検体のスキャノグラム又は三次元画像を収集し、このスキャノグラム又は三次元画像に基づいて、前記被検体の検査部位を設定する検査部位設定手段をさらに具備し、前記スキャン手段は、前記検査部位設定手段により設定された検査部位をスキャンすることを特徴とする。
(8)本発明のX線コンピュータ断層撮影装置は、上記(1)に記載の装置であって、且つ前記検査スキャンによるスキャン結果を画像処理することにより、特定スライスの断層像をスキャンとほぼ同時に再構成する再構成手段と、前記再構成手段により再構成された断層像を表示する表示手段と、前記表示手段の表示内容に基づく前記操作者からの指示により、前記検査部位を変更する撮影領域変更手段とをさらに具備することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。本実施形態においては、以下のように検出器の種別及びスキャンの仕方がそれぞれ異なるX線CT装置の複数の実施形態を説明する。
【0016】
(第1実施形態)…検出器A+全幅モニタスキャン+全幅ヘリカルスキャン
(第2実施形態)…検出器A+絞りモニタスキャン+全幅ヘリカルスキャン
(第3実施形態)…検出器B+全幅モニタスキャン+全幅コンベンショナル スキャン
(第4実施形態)…検出器B+絞りモニタスキャン+絞りコンベンショナル スキャン
(第5実施形態)…検出器B+絞りモニタスキャン+絞りヘリカルスキャン
なお、上記検出器Aは体軸(セグメント)方向の幅が比較的狭い二次元検出器、検出器Bは同方向の幅が比較的広い二次元検出器である。
(第1実施形態)…検出器A+全幅モニタスキャン+全幅ヘリカルスキャン
図1は本発明の第1実施形態に係るX線CT装置のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態のX線CT装置は、X線管1、架台・寝台2、放射線検出器3、X線制御・高電圧発生装置4、架台・寝台駆動制御装置5、データ収集装置6、データ記憶装置7、画像再構成装置8、CPU9、画像記憶装置10、画像処理装置11、画像表示部12、操作部13から構成されている。
【0017】
X線管1から曝射されたX線は、寝台2上に載置された被検体を透過して減弱したのち放射線検出器3に到達する。放射線検出器3は、この透過X線を検出してデータ収集装置6に出力する。データ収集装置6は、放射線検出器3からの出力信号を処理することにより投影データを作成する。この投影データは画像再構成装置8に出力される。画像再構成装置8は、投影データに対し再構成演算処理を施して被検体の断層像を再構成する。再構成により得られた断層像は、CPU9を介して画像記憶装置10に記憶される。又は、画像処理装置11により種々の画像処理が施された後、画像表示部12において表示に供される。
【0018】
また、本実施形態のX線CT装置は、スキャノグラム撮影が行なえるように構成されている。このスキャノグラムは、X線管1と放射線検出器3とを定位置に固定させた状態において寝台2を移動させながらX線の曝射及びデータ収集を繰り返すことにより得られる。
【0019】
図2は、放射線検出器3の構成を概略的に示す斜視図である。
放射線検出器3は、複数の検出素子31が円周方向(チャンネル方向)に沿って配置されてなる検出器列が、体軸方向(スライス、又はセグメント)に沿って複数配列された二次元検出器により構成されている。この二次元検出器によれば、被検体の体軸方向に所定の幅を有する領域(すなわち二次元の検出領域)により検査部位のスキャンできる。ちなみに、この放射線検出器3は、セグメント方向の幅が比較的狭い二次元検出器Aから成る。
【0020】
このような放射線検出器を用い、1度のスキャンで複数スライスの投影データを同時に収集するようなスキャン方法を「マルチスライススキャン」と称する。なお、特にスライス幅を考慮しない場合は、「ボリュームスキャン」と称する。
【0021】
本実施形態のX線CT装置は、上述したような被検体の造影検査に用いられ、造影剤が注入された被検体の関心領域のCT値の変化を監視し、当該CT値の変化に基づいて被検体の検査部位(臓器)のスキャン開始のタイミングを制御するためのモニタスキャンを行い、このモニタスキャンの制御にしたがって検査部位をマルチスライススキャンするように構成されている。
【0022】
モニタスキャンは、被検体のX線透過データを収集しながら同時に画像再構成を行ない、スキャンを行いながら画像を動画的に表示するスキャン方法であって、ダイナミックスキャン又は透視スキャンである。またモニタスキャンにおいて被検体の関心領域のCT値の変化を監視する。この関心領域は、モニタスキャンの事前の撮影によって得られた断層像上でROIマーカ等を用いて設定され、造影検査を行おうとする検査部位への造影剤の流入路(血管など)の領域が設定される。関心領域と検査部位との位置関係としては、両者が体軸方向に離間して位置する場合を想定する。また、モニタスキャンは被曝低減のため最小限のX線量において行われる。モニタスキャンにおける画像再構成は、シングルスライススキャンに係るファンビーム再構成法、マルチスライススキャン又はボリュームスキャン等に係る3次元再構成法が適用される。
【0023】
なお、このようなモニタスキャンに係り、現実的な装置においてはスキャンデータの収集後において画像再構成処理、CRT表示処理、そして関心領域のCT値の計算からなる3つの処理時間を必要とする。
【0024】
図3は、本実施形態においてモニタスキャンを行っている様子を示す図である。X線管1からは略四角錘状のX線ビームがスリット20を介して被検体に向けて曝射される。このX線ビームのパス内にはモニタ部位30が含まれている。また、被検体を透過したX線ビームは二次元検出器Aの全面に入射する。これにより全幅モニタスキャンが行われる。
【0025】
なお、図3に示すようにモニタ部位30と検査部位40とが離間している場合は、検出器Aの体軸方向の端部のスライス位置においてモニタ部位30が検出されるモニタスキャンを行う。検査開始の信号が発せられると、図4に示すようにヘリカルスキャンを開始する。この場合、ヘリカルスキャンに必要な機構的な助走距離を検出器Aの幅によってカバーできるので、寝台をUターンさせる必要がなく、迅速且つ適切に検査部位のスキャンを開始できる。なお、検査部位40が検出器Aの幅内に収まる程度に小さい場合は、ヘリカルスキャンを行う必要はないので、コンベンショナルスキャンを行なう。なお、コンベンショナルスキャンは、寝台及び架台の両者の体軸方向の相対的な移動を伴わないスキャン方法である。
【0026】
なお、上記検査部位のスキャンによる特定スライスのスキャン結果を画像処理することにより、この特定スライスの断層像をスキャンとほぼ同時に再構成し、この断層像を表示部12によって表示し、この表示画像上において、検査部位の撮影領域を変更する撮影領域変更手段を備えても良い。これにより、任意の時点において撮影領域を変更可能になる。
【0027】
図5は、経過時間に応じた関心領域のCT値の変動を示すグラフである。
目的臓器への造影剤の流入経路は、造影剤注入時からの経過時間により変化する。例えば、ある時間帯において目的臓器は動脈から流入する造影剤により造影され(動脈相)、また別の時間帯において目的臓器は静脈からの造影剤の流入により造影される(静脈相)。後述する検査スキャン(ヘリカルスキャン)は、動脈相及び静脈相の両者又は少なくとも一方の時相において実施される。本実施形態においてはスキャン所要時間を考慮して高々2、3相とするが、高速スキャンを実現可能な場合には5〜10相のマルチフェーズ(多相)にすると良い。この場合臓器の機能診断に有利となる可能性がある。
【0028】
図6は以上のように構成された本実施形態の動作を示すフローチャートである。
先ずステップS1において、被検体のスキャノグラム撮影が行なわれる。この場合の撮影範囲は、少なくとも、続くステップにおいてモニタスキャンする部位及び検査部位の両者を含む程度に幅広く設定される。なお、スキャノグラム撮影の代わりに、管電流を低く抑えてボリュームスキャンを行うようにしても良い。
【0029】
ところで、ボリュームスキャンを行なう場合は、画像処理装置11により被検体の三次元画像(3D像)を得るように構成しても良い。当該三次元画像を用いることにより、立体的なROIを設定することが可能となる。これにより、ある断面だけでなく、体軸方向に幅の広い領域をROIとして設定すること可能となる。具体的には、血管のような円柱体をROIとして設定することが可能となる。
【0030】
次にステップS2において、モニタスキャンを行なうスライス位置が指定されるとともに、当該スライス位置がスキャンされて断層像(モニタ像)が再構成される。次にステップS3において、CT値の変化を監視(モニタ)する関心領域(ROI)が、前ステップで得られた断層像上において設定される。これは、操作者がROIマーカ等を用いて表示画面上において設定するようにしても良いし、いわゆる輪郭抽出処理等による自動設定としても良い。そして、設定された関心領域におけるCT値の閾値が指定される。この閾値は、検査部位のスキャンを開始するタイミングを与えるものである。
【0031】
次に、ステップS4において、検査部位の撮影範囲が上記ステップS1で撮影されたスキャノグラム上に基づいて指定される。
そしてステップS5〜S7においてモニタスキャンが行われる。モニタスキャンは、ステップS5において医師が被検体に造影剤を注入すると同時に開始される。ステップS6において上記ROIを含むモニタスライスが再構成される。ステップS7において、ROIのCT値が閾値を超えたか否かが判定される。
【0032】
CT値が閾値を超えたことが判定されると、モニタスキャンを終了してステップS8に移行する。ステップS8では、先に指定された検査部位の領域がヘリカルスキャンされる。ヘリカルスキャンが完了した後、検査が終了する。
【0033】
ところで、上記ヘリカルスキャンを行うに当たっては、本実施形態では単一のスライスのみしか撮影し得ない一次元検出器ではなく、二次元検出器Aを用いてスキャン(マルチスライススキャン)するように構成されている。このため、機械的又は再構成的な助走距離を考慮して離れた位置でモニタスキャンを実施しても、迅速且つ適切に検査部位のヘリカルスキャンを開始することができる。
【0034】
なお、モニタ部位30と検査部位40との位置関係に応じて、検出器Aの体軸方向のどの検出器列を利用するかを可変として構成しても良い。
以上説明したように第1実施形態によれば、迅速且つ適切に検査部位のスキャンを行える。
(第2実施形態)…検出器A+絞りモニタスキャン+全幅ヘリカルスキャン
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では全幅モニタスキャンを行なったが、本実施形態においては、絞りモニタスキャンを行なう点において第1実施形態と異なっている。
【0035】
図7は、第2実施形態に係るモニタスキャンの様子を示す図である。モニタスキャンを行う際に、スリット20により被検体のモニタスライス(モニタ部位30を含むスライス)のみにX線が照射されるように構成されている。すなわち、モニタスキャン時において、データとして使用されることのない検出器列に向けて曝射されるX線はスリット20により遮蔽される。
【0036】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、迅速且つ適切にスキャンを行える上、モニタスキャン時における被検体に対する不必要な被曝を防止できる。
(第3実施形態)…検出器B+全幅モニタスキャン+全幅コンベンショナル
スキャン
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第1又は第2実施形態では、体軸方向の幅が比較的狭い二次元検出器Aを用いたが、本実施形態においては、同方向の幅が比較的広い二次元検出器Bを用いる。
【0037】
図8は、体軸方向にかなり幅の広い二次元検出器Bを用いて、モニタスキャンを行っている様子を示す図である。
本実施形態では、図8に示されるように、モニタスキャンにおいて、モニタ部位30と検査部位40の両者を含む広い領域にX線が曝射される。この場合のデータ収集は、原則として全領域について同時に収集する。また、本実施形態では第1又は第2実施形態のようにヘリカルスキャンを行わず、コンベンショナルスキャンを行う。
【0038】
このような第3実施形態によれば、モニタスキャン開始から検査終了、すなわちコンベンショナルスキャンの終了まで、全領域をスキャンし続けられるので、寝台2の移動に伴うスキャン開始のタイミングのずれが生じることがない。ここでは、検査過程において単にROIのCT値が閾値を超えたか否かを判定してコンベンショナルスキャンに切り替えれば良い。また、ROIのCT値が所定値を下回った時点で検査を終了すればよい。すなわち、検査開始と同様に、あらかじめ検査終了のCT値の閾値を設定しておき、自動的に検査を終了しても良い。先に述べたように、モニタスキャン時は被曝を低減するようにX線量を抑えてスキャンするように構成されるので、通常スキャンを行なう場合に比べてメリットがある。
【0039】
なお、モニタスキャンは、被検体内部の時間変化を監視しなければならないので、かなりのデータ収集速度が要求される。データ収集装置6の能力如何によっては、スキャンと同時に投影データを収集することが困難な場合も考慮される。この場合は、モニタ部位30のみのデータ収集を行なうように構成しても良い。そして、ROIのCT値が閾値を超えた時点で検査領域のデータ収集を開始する。
【0040】
コンベンショナルスキャン時に発生するデータ量が膨大となり、データ収集部6の処理能力が追いつかない場合は、スキャン速度を低下させる。また、収集されたデータの再構成も同様に、モニタスキャン時及び検査時も常に全領域を再構成し続けても良いし、画像再構成装置8の能力に合わせて、モニタスキャン時には、モニタ領域を再構成し、検査スキャン時には、検査領域のみを再構成するようにしても良い。この場合、領域に応じて再構成方法が切り替わるように構成しても良い。例えば、狭い領域にはファンビーム再構成法又は特殊な再構成法が適用され、広い領域にはFeldKamp法又は3次元再構成法又は特殊な再構成法が適用されるようにしても良い。
【0041】
このような第3実施形態によれば、モニタスキャンからコンベンショナルスキャンにスキャンに切り替わる際の時間のズレが殆ど生じることがなく、迅速且つ適切にスキャンを行える。
(第4実施形態)…検出器B+絞りモニタスキャン+絞りコンベンショナル スキャン
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0042】
実施例3
図9は、検出器Bを用いてモニタスキャンを行っている様子を示す図である。本実施形態においては、モニタスキャンを行っている最中は、モニタ部位30のみにX線が曝射され、検査スキャン(ここではコンベンショナルスキャン)を行っている最中は、検査部位40のみにX線が曝射されるようにX線の曝射制御が行われるように構成されている。すなわち、スリット20の開口幅の制御が行われる。モニタ部位30のCT値が閾値を超えるまでは、検査部位40に向けて曝射されるX線はスリット20により遮蔽される。これにより、被検体に対する不要なX線被曝を防止できる。図10は、ROIのCT値が閾値を超過し、検査スキャンを行っている様子を示す図である。検査開始の信号と同時に、あらかじめ設定された検査部位にX線が照射されるようにスリットの開口幅が変化する。すなわち、図中矢印S方向に向けてスリット20の開口部が広がる。ちなみに、スリット20は、X線を曝射するX線管1の焦点を含むX線パスを中心軸として左右非対象に運動可能なように構成されている。
【0043】
このような第4実施形態によれば、モニタスキャンからコンベンショナルスキャンにスキャンに切り替わる際の時間のズレが殆ど生じることがなく、迅速且つ適切にスキャンを行える上、被検体に対する不必要なX線被曝を防止することができる。
(第5実施形態)…検出器B+絞りモニタスキャン+絞りヘリカルスキャン
次に、本発明の第5実施形態を説明する。本実施形態は第4実施形態の変形例に関する。
【0044】
図11は、検出器Bの検出器列の一部を利用し、ヘリカルスキャンによる検査を行っている様子を示す図である。現在、主流となっている再構成方法によれば、体軸方向に幅広くデータを収集するよりも、検出幅を狭くしてヘリカルスキャンによってデータを収集した方が画質が良い場合がある。また、全体のデータが膨大になる場合、又は検出器ピッチもしくはデータ収集系の都合により検出幅を狭くした方が有利な場合がある。その他にも、検査領域が不確定な場合など、検査領域をヘリカルスキャンして再構成し、画像を確認しながら必要と思われる検査領域のデータを収集し終わった時点で検査を終了させるように構成しても良い。
【0045】
以上のような様々な条件に応じて、本実施形態においては、体軸方向に比較的幅の広い二次元検出器Bを用いる場合において、敢えてヘリカルスキャンを実施する。
【0046】
このような第5実施形態によれば、第4実施形態と同様に、モニタスキャンからコンベンショナルスキャンにスキャンに切り替わる際の時間のズレが殆ど生じることがなく、迅速且つ適切にスキャンを行える上、被検体に対する不必要なX線被曝を防止することができ、さらに、高画質の検査画像が得られる。
(変形例)
本発明は上述した実施形態に限定されず、種々変形して実施可能である。例えば、上述した実施形態は、造影検査、すなわち被検体に造影剤を注入して画像撮影を行なうものであったが、造影剤を用いない場合の撮影にも本発明は適用可能である。また、造影剤によるCT値の変化を監視する構成について説明したが、モニタスキャンにより得られた画像に輪郭抽出等の画像処理を施し、これにより被検体の動きをモニタし、このモニタ結果に基づいて検査領域のスキャンを開始するようなスキャン手順を構築しても良い。この場合は、被検体の呼吸の状態、あるいは対象物の動態をダイナミックスキャン等でモニタし、これらが撮影に適した状態になった時点、又は遅くともスキャン中には適した状態になると思われる時点で検査スキャンを開始する。被検体の特定の動態に伴って繰り返し発生する症例や、特定の呼吸位置でのみ観察しやすい病変等をとらえる場合に有効となる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、X線CTの検査において、モニタスキャンによって検査のためのスキャン開始のタイミング信号が発せられた時点から、実際に検査領域のスキャンが開始されるまでの時間の遅れを減少することができる。これによって、検査開始のタイミング信号を与えるCT値の閾値の設定がより容易なものとなり、最適なタイミングで迅速に検査を行える。
【0048】
また、モニタスキャン時に二次元検出器の1部のスライスのみにX線が曝射されるように構成されているので、被検体に対する不必要なX線被曝を防止することができる。
また、被検体のある状態をモニタしておき、その状態をトリガとして常に同じ状態の被検体を繰り返し検査可能となるため、検査効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【図2】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置において用いられる二次元検出器の構成を模式的に示す斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置においてモニタスキャンを行っている様子を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置において検査部位のヘリカルスキャンを行っている様子を示す図。
【図5】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置において経過時間に対する関心領域のCT値の変動を示すグラフ。
【図6】本発明の第1実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の第2実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置においてモニタスキャンを行っている様子を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置においてモニタスキャンを行っている様子を示す図。
【図9】本発明の第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置においてモニタスキャンを行っている様子を示す図。
【図10】本発明の第4実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置において検査部位のコンベンショナルスキャンを行っている様子を示す図。
【図11】本発明の第5実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置において検査部位のヘリカルスキャンを行っている様子を示す図。
【図12】従来例に係り、モニタスキャンを行っている様子を示す図。
【図13】従来例に係り、検査部位のヘリカルスキャンを行っている様子を示す図。
【図14】従来例に係り、CT値のモニタ領域を示す図。
【図15】従来例に係り、経過時間に対する寝台速度の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1…X線管
2…架台・寝台
3…放射線検出器
4…X線制御・高電圧発生装置
5…架台・寝台駆動制御装置
6…データ収集装置
7…データ記憶装置
8…画像再構成装置
9…CPU
10…画像記憶装置
11…画像処理装置
12…画像表示部
13…操作部
Claims (8)
- X線を曝射するX線管と、
複数の検出器列を有する二次元検出器と、
前記X線管の焦点を含むX線パスを中心軸として左右非対象に移動可能であり、前記二次元検出器の一部の検出器列のみにX線が曝射されるように該X線の一部を遮へいするX線遮へい手段と、
被検体の関心領域のCT値の変化を監視するためのモニタスキャンを行い、当該CT値の変化に基づいて、前記被検体の検査部位のスキャンを開始するタイミングを制御するスキャン制御手段と、
前記モニタスキャン時においては前記被検体の前記関心領域にX線が曝射されるように前記X線遮へい手段を移動制御し、且つ、前記検査スキャンが開始されるときに前記X線遮へい手段を移動制御して開口幅を変える手段とを具備することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。 - 前記スキャン制御手段は、前記被検体に対する造影剤の注入によるCT値の変化を監視することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記スキャン制御手段は、ダイナミックスキャン又は透視スキャンを含むモニタスキャンにより前記被検体の関心領域のCT値の変化を監視することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記モニタスキャンは、前記検査スキャン時よりも低いX線量により行われることを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記CT値の変化に対する閾値を設定する閾値設定手段をさらに具備し、前記スキャン制御手段は、前記閾値設定手段により設定された閾値に基づいて前記被検体の検査部位のスキャンを開始することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記CT値の変化を操作者に対して報知する報知手段と、前記報知手段による報知に基づく前記操作者からの指示を入力する入力手段とをさらに具備し、前記スキャン制御手段は、前記入力手段により入力された操作者からの指示に応じて前記被検体の検査部位のスキャンを開始することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記被検体のスキャノグラム又は三次元画像を収集し、このスキャノグラム又は三次元画像に基づいて、前記被検体の検査部位を設定する検査部位設定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
- 前記検査スキャンによるスキャン結果を画像処理することにより、特定スライスの断層像をスキャンとほぼ同時に再構成する再構成手段と、
前記再構成手段により再構成された断層像を表示する表示手段と、
前記表示手段の表示内容に基づく前記操作者からの指示により、前記検査部位を変更する検査部位変更手段とをさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
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