JP3747834B2 - シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド - Google Patents

シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド Download PDF

Info

Publication number
JP3747834B2
JP3747834B2 JP2001316593A JP2001316593A JP3747834B2 JP 3747834 B2 JP3747834 B2 JP 3747834B2 JP 2001316593 A JP2001316593 A JP 2001316593A JP 2001316593 A JP2001316593 A JP 2001316593A JP 3747834 B2 JP3747834 B2 JP 3747834B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cylinder
processing
intake
path
cylinder head
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001316593A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003120415A (ja
Inventor
弘明 楠木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP2001316593A priority Critical patent/JP3747834B2/ja
Priority to EP02022968A priority patent/EP1302557B1/en
Priority to DE60237949T priority patent/DE60237949D1/de
Priority to US10/270,076 priority patent/US20030089759A1/en
Publication of JP2003120415A publication Critical patent/JP2003120415A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3747834B2 publication Critical patent/JP3747834B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Cylinder Crankcases Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Pressure Welding/Diffusion-Bonding (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド、特に、複数の吸排気ポートを有する気筒を備えたエンジンの軽合金製シリンダヘッドの少なくとも上記吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いて摩擦攪拌処理を施すシリンダヘッドの表面処理方法、及びかかる表面処理を施したシリンダヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、例えば自動車用等の車両用のエンジンのシリンダヘッドは、例えばアルミニウム(Al)若しくはその合金等の軽合金材料を用いた鋳造品を素材とするものが一般的で、かかるシリンダヘッドをシリンダブロックに組み付けて使用される。
また、近年、車両用エンジンとしては、2気筒あるいは4気筒などの多気筒タイプで、しかも、各気筒毎に複数の吸排気ポートを有するものが多用されており、例えばディーゼルエンジンなどにおいては、シリンダヘッドの吸排気ポート間にグロープラグが取り付けられるものが一般的である。
【0003】
このようなシリンダヘッドでは、所謂、「バルブブリッジ部」或いは「弁間部」と称せられる、吸排気ポートのポート穴間の領域は、エンジン駆動時の気筒での燃焼による体積膨張と停止時の冷却による体積収縮とを繰り返すことから、一般に、熱疲労によるクラックが発生し易い。この問題に対して、従来では、弁間部に所謂リメルト処理を施して熱疲労強度の向上を図ることが行われている。
【0004】
しかしながら、このリメルト処理では、弁間部の熱容量が限られることから、シリンダヘッドへの熱負荷増加に対応して処理深さを増すために入熱量を増やすと肩型だれが生じてしまうので、処理深さに制約がある。また、入熱量を多くすると、処理部の凝固時間が長くなり、金属組織の微細化効果が低下すると共にピンホール欠陥も増加傾向となるため、処理深さ増加による表面改質効果が相殺され、狙いとする耐熱性向上効果を得ることは難しい。
更に、入熱量を増加させると、リメルト処理時の熱応力により部材にクラックが発生し易くなるため、部材の予熱処理が必要となる。その他、マグネシウムを含有する材料では、溶融時にマグネシウムが蒸発して減少し、リメルト処理後のТ6熱処理で強度向上代が小さくなり、所要の機械的特性が得られなくなる、などの問題がある。
【0005】
また、品質面においても、入熱量のバラツキや磁気吹きによる位置ずれなどにより、処理深さのバラツキが大きいことや、処理部のピンホール欠陥は、母材のガス含有量や鋳巣面積に影響を受けることなどから、処理部の品質安定性を確保することは、なかなかに難しい。
更に、生産性の面においても、処理部を溶融させることから、溶融部分の酸化防止のためにシールドガスが必要とされ、また、表面酸化物や不純物から発生するガスによるガス欠陥の発生防止のために、処理前に鋳肌部分を除去する工程が追加されることが多い。更に、処理部表面に発生する高い引張残留応力を解放するために、後熱処理が必要であるので、コスト高になるという問題もある。
【0006】
ところで、Al又はその合金等の軽金属製部材の表面処理方法として、高速で回転する回転工具を部材表面に接触させ、表面への押圧状態を保ちながら回転工具を表面に沿って移動させることで、当該部材表面及びその近傍領域を改質し機械的特性の向上を図る、所謂、摩擦撹拌処理が知られている。
例えば、特開2000−15426号公報には、エンジンのAl合金製シリンダヘッドのシリンダブロックに対するシール面(合わせ面)の表面処理に、かかる摩擦撹拌処理法を適用することが開示されている。
【0007】
上記摩擦撹拌処理法では、高速で回転する回転工具を部材表面に当接させ押圧することで、その際に生じる摩擦熱と回転体の撹拌作用により、部材表面の回転工具当接部分及びその近傍領域を軟化させて塑性流動を生じせしめる。そして、この塑性状態の材料部分(塑性流動層)が非溶融状態で撹拌され、その後に塑性流動部分が凝固することにより、当該部材の表面及びその近傍領域が改質される。
【0008】
Al合金等の軽金属製鋳造部材の表面に、この摩擦撹拌処理による表面改質処理を施すことにより、表面部分を溶融させて改質を図る所謂リメルト処理等による場合に比べて、鋳造部材の表面部分の金属組織をより緻密なものとし、また、鋳巣等による内部未充填欠陥を大幅に低減することができ、伸び及び靱性等の機械的特性並びに疲れ強さ(熱疲労強度)を向上させることができる。この場合において、リメルト処理等により表面部分を溶融させて改質を図る場合のように、鋳造部材内部のガス等によるブローホール或いはピンホールが形成される惧れもない。
【0009】
そこで、本願出願人は、特願2000−393328号において、かかる摩擦撹拌処理法を多気筒エンジンの軽合金製シリンダヘッドの吸排気ポート間(弁間部)の表面改質処理に適用することを提案した。
この先行技術では、各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する直列4気筒エンジンのAl合金製シリンダヘッドについて、略十字状をなす各気筒の弁間部の表面部分に対する摩擦撹拌処理を施すに際し、回転工具の移動軌跡に対応する処理経路を、各気筒毎に設けられシリンダヘッドの幅方向に延びる4本の比較的短い処理経路と、全気筒を縦断してシリンダヘッドの長手方向に延びる1本の長い処理経路とで構成している。
【0010】
そして、これら処理経路に沿って4つの気筒の吸排気ポート弁間部の表面処理を一連の工程で処理するようにしている。この場合、各弁間部の表面部分をその全幅にわたってより有効に改質するために、より好ましくは、各処理経路には往復の経路が設定され、各弁間部に対し往路と復路の両方で摩擦攪拌処理による表面処理が繰り返して施される。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記摩擦撹拌処理法では、1つの処理経路を終える際の終端部分で、回転工具の移動を停止して引き抜く際に回転工具当接部分が深くなるので、不可避的に深い終端穴が残存することになる。そして、この終端穴が最終的に完成状態の製品に残ることがないように、終端穴の位置を表面処理後の後工程での加工により完全に除去されるべき部位に設定する必要がある。換言すれば、このような部位まで摩擦撹拌処理を延長して回転工具を移動する(以下、このような処理を「終端穴処理」と称する)必要がある。
従って、摩擦撹拌処理法による表面改質処理の処理効率の向上を図るためには、このような終端穴処理に費やされる時間を極力短縮することが求められる。
【0012】
ところが、上記先行技術では、4つの気筒の弁間部の表面処理を行うのに、各気筒毎の処理経路に加えて全気筒を縦断する処理経路の計5本の処理経路が設定されており、従って、回転工具の終端穴処理も計5箇所について必要とされることになる。
また、全気筒を縦断してシリンダヘッドの長手方向に延びる1本の長い処理経路に沿った表面処理を行う場合、回転工具は処理が不要な気筒間の繋ぎ部分をも移動するので、それだけ無駄な処理時間を費やすことになる。
【0013】
更に、全気筒を縦断する長い処理経路に往路と復路とが設定されている場合には、回転工具が往路から復路に折り返す部分の近辺では(従って、この折り返し部分に最も近いシリンダヘッド端部側の気筒では)、往路での処理領域が冷却し凝固する前に復路での処理がほぼ重ねて行われることになるため、当該領域の処理深さが他の処理領域に比して(つまり、他の気筒に比して)かなり深くなる。すなわち、複数の気筒間で表面処理の処理深さにバラツキが生じるという難点もあった。
【0014】
この発明は、上記諸問題に鑑みてなされたもので、軽金属製シリンダヘッドの吸排気ポート間の表面部分に摩擦撹拌処理による表面処理を施すに際して、処理効率の向上を図り、また、気筒間のバラツキを抑制することができる表面処理方法を提供し、更に、かかる表面処理を施したシリンダヘッドを提供することを、基本的な目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このため、本願請求項1の発明に係るシリンダヘッドの表面処理方法は、各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する多気筒ディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドの少なくとも上記吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いて摩擦攪拌処理を施すシリンダヘッドの表面処理方法であって、上記回転工具のシリンダヘッド表面に略沿った移動の軌跡に対応する摩擦攪拌処理の処理経路が、各気筒毎に独立して設定され、各気筒毎にそれぞれ独立して設定された上記処理経路のパターンが、全気筒にわたって実質的に同一であり、上記処理経路は、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部領域と排気ポートどうしの弁間部領域とグロープラグ取付孔が設けられる領域の各表面部を処理するように、平面視で略Т字形のパターンに設定されるとともに、上記吸排気ポートが、上記回転工具の進行方向と同方向となる当該回転工具の回転方向進み側に近接した側に位置するように、処理経路のパターンが設定されており、上記各気筒の処理経路には往路と復路とが設定され、上記各気筒毎に、処理経路のパターンにおける処理の開始部分から終了部分に至るまで連続的に処理が行われ、上記吸排気ポート間の処理経路の往路と復路とは、上記回転工具の回転領域が重複するように設定されている、ことを特徴としたものである。
【0021】
また、本願請求項2の発明に係るシリンダヘッドは、各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有し、少なくとも該吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いた摩擦攪拌処理による表面処理を施してなる多気筒ディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドであって、上記回転工具のシリンダヘッド表面に略沿った移動の軌跡に対応する摩擦攪拌処理の処理経路に従って、上記各気筒毎に独立した表面処理部が形成され、該表面処理部は、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部処理領域と排気ポートどうしの弁間部処理領域とグロープラグ取付孔が設けられる処理領域とで、平面視で略Т字形に形成されていることを特徴としたものである。
【0023】
に、本願請求項の発明に係るシリンダヘッドは、一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する気筒を備え、少なくとも上記吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いた摩擦攪拌処理による表面処理を施してなるディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドであって、上記吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部処理領域と排気ポートどうしの弁間部処理領域とグロープラグ取付孔が設けられる処理領域とで、平面視で略Т字形の表面処理部が形成されていることを特徴としたものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るシリンダヘッド及びその表面処理方法の説明に先立って、まず、かかる表面処理方法の基本をなす摩擦攪拌処理法について説明する。
図1及び図2は、上記摩擦攪拌処理による表面処理を説明するための表面処理対象部材および摩擦攪拌処理装置の要部を概略的に示す斜視図および断面説明図である。これらの図に示すように、本実施の形態に係る表面処理方法では、表面処理の処理対象たる軽金属部材1を基台(不図示)上に載置し固定した状態で、上記軽金属部材1の表面1fに回転工具10を接触させながら部材表面部1fに進入させることによって行われる。
【0025】
上記回転工具10は、所定直径の円柱体で成る回転基体部11と、その先端の中央部に一体的に固着された所定長さで比較的(上記回転基体部11よりも)小径の円柱体で成るプローブ部12とで構成されている。上記回転基体部11は、図示しないホルダによって軸線回りに回転自在に支持されており、このホルダ(不図示)を工具駆動手段5によって回転駆動することにより、回転工具10がその軸線回りに回転させられる。
【0026】
上記工具駆動手段5は、具体的には図示しなかったが、上記ホルダ(不図示)を介して回転工具10を高速で回転させるための駆動モータを備えるとともに、上記回転工具10を軽金属部材1の表面1fと略直角方向に(つまり、図1及び図2における上下方向に)駆動し、また、部材表面1fに略沿って移動させるための、駆動機構を備えている。
そして、該駆動手段5を駆動することにより、高速回転状態にある回転体工具10を軽金属部材1に対し、その表面1fと略直角方向に(つまり、部材1の深さ方向に)進入させ、また、部材表面1fに略沿って移動させることができるようになっている。
【0027】
尚、このような回転体(回転工具10)を部材表面1fと略直角方向(略上下方向)に駆動し、また、部材表面1fに沿って(略水平方向に)移動させる機構は、例えば送りネジ機構やロボットアームなど、従来公知のものであるので、その構造について詳細な説明および図示は省略する。また、このように、回転工具10を略上下方向に駆動し略水平方向に移動させる代わりに、処理対象部材1を固定した基台(不図示)側を駆動して、回転工具10に対し相対的な挙動を行なわせるようにしても良い。
【0028】
更に、上記回転体10は、図1及び図2に示されたように、回転基体部11の先端部(下端部)に小径のプローブ部12を備えたものに限定されるものではなく、上記プローブ部12が設けられていないフラットな(平坦な)下面のものを用いても良い。表面処理深さについて、ある程度の深さまで処理することが求められる場合には、上記プローブ部12を備えたタイプの回転体10を用い、余り深くまで処理する必要が無い場合には、プローブ部12が無いタイプの回転体を用いて効率良く表面処理を行うようにすれば良い。
【0029】
また、更に、回転基体部11の先端に設けるプローブ部12としては、図1及び図2に示した円柱形状のものに限定されることはなく、例えば、図3に示すように、先端部分が半球状等の曲面状に形成されたプローブ部15、或いは、図4に示すように、外周部に雄ネジ状のネジ溝が螺設されたプローブ部16など、種々の形態のものを用いることができる。
【0030】
本実施の形態に係る摩擦攪拌処理による表面処理法では、上記軽金属部材1の表面1fに対して高速で回転する回転工具10の下面側(つまり、プローブ部12及び回転基体部11下面)を当接させ押圧しながら、該回転工具10を部材表面部1fに対しその深さ方向へ所定深さに達するまで進入させる(図2参照)。そして、その際に発生する摩擦熱と回転工具10の撹拌作用により、上記部材表面部1fの回転工具当接部分及びその近傍領域を軟化させて塑性流動を生じせしめる。この塑性状態の材料部分(塑性流動層1a)が非溶融状態で撹拌され、その後に塑性流動部分1aが冷却凝固することにより、当該部材の表面及びその近傍領域が改質され、周囲の基材1bに比して緻密で硬度の高い金属組織が得られる。
【0031】
かかる摩擦撹拌処理による表面改質処理を、例えばAl合金等の軽金属製鋳造部材の表面に施した場合には、表面部分を溶融させて改質を図る所謂リメルト処理等による場合に比べて、鋳造部材の表面部分の金属組織をより緻密なものとし、また、鋳巣等による内部未充填欠陥を大幅に低減することができ、伸び及び靱性等の機械的特性並びに疲れ強さ(熱疲労強度)を向上させることができる。この場合において、リメルト処理等により表面部分を溶融させて改質を図る場合のように、鋳造部材内部のガス等によるブローホール或いはピンホールが形成される惧れもない。
【0032】
尚、軽金属部材1の表面部に上記摩擦攪拌処理による表面処理を施す場合、回転工具10の軸線を部材表面1fに対して完全に垂直に維持して工具10を移動させると、プローブ部12のサイズや形状によっては該プローブ部12の角部近傍の基材部分に未充填欠陥が生じる場合がある。かかる欠陥発生を防止するには、回転工具10を、その軸線が完全垂直状態(傾け角が0度)から若干(例えば、傾け角5度以下程度)傾むくようにその姿勢を保持しながら、部材表面1fに略沿って移動させることが好ましい。また、この場合、回転工具10の基体部11の下面について、その送り方向前側が後側に比して持ち上がるように、回転工具10を傾けることが、生産性の向上を図る上でより好ましい。
【0033】
次に、本発明の第1の実施の形態に係るシリンダヘッド及びその表面処理方法について説明する。
図5は、上記第1の実施の形態に係るシリンダヘッド鋳造素材のシリンダブロック(不図示)との合せ面を概略的に示す平面説明図である。この図に示すように、上記シリンダヘッドCH1は、直列4気筒タイプとされたディーゼルエンジン用のもので、長手方向に沿って一列に配置された各気筒毎に、一対の吸気ポートKcと一対の排気ポートEcとが設けられている。そして、各気筒毎にポート間の部材領域(つまり、弁間部)は略十字形を形成している。
【0034】
このシリンダヘッドCH1は、例えばAl合金を材料として鋳造プロセスにより製造され、シリンダブロック(不図示)との合せ面の特に弁間部に上述の摩擦攪拌処理法による表面処理が施される。
尚、上記シリンダヘッドCHの軽合金材料としては、例えば、JIS規格に規定されたAl合金AC4Dを用いた。この代わりに、AC4B又はAC2B更にはAC8A等も用いることができる。
【0035】
上記表面処理を施すに際しては、その前工程でシリンダブロックとの合せ面がフライス加工により荒加工される。図5は、この合せ面の荒加工状態を示すものである。従って、図5において実線で表示された上述の各吸気ポートKc及び各排気ポートEcは、全て鋳抜き穴の状態を示しており、実際には、図6に拡大して示すように、弁間部の表面処理後にドリル加工等の機械加工によって仕上げられ、所定の形状・寸法及び表面粗さを有する吸気ポートKh及び排気ポートEhが得られる(図5及び図6における破線表示参照)。
【0036】
また、上記シリンダヘッドCH1には、表面処理後に、長手方向に沿って配列される複数のテンションボルト孔Htが、ドリル加工によって穿設される。これらテンションボルト孔Htは、仕上げ加工を終えた後のシリンダヘッドCH1をシリンダブロックに組み付けて締結固定する際に、この締結固定用のテンションボルトを挿通させるもので、長手方向に配列された4つの気筒部分を挟むようにして、平行な一対の直線に沿って設けられる。これらテンションボルト孔Htは、各列毎に5箇所設けられ、長手方向における両端部の近傍および各気筒部分の間に位置設定されている。
【0037】
尚、上記図5において、実線曲線で示された穴部は全て鋳造プロセスで形成された、所謂、鋳抜き穴を示している。一方、同図において破線曲線で示された穴部は、全て、鋳物状態では穴部ではないが、弁間部等に対する表面処理を施した後に、ドリル加工等の機械加工により、所定形状及びサイズ更には表面粗さに仕上げられた穴部として形成されるものを示している。
【0038】
本実施の形態では、上記シリンダヘッドCH1の少なくとも吸排気ポート間(弁間部)の表面部分に上述の摩擦攪拌処理法による表面処理を施すに際して、この摩擦攪拌処理の処理経路R1が各気筒毎に独立して設定されており、従来方法のように全気筒を縦断する長い処理経路は設けられていない。
また、このように各気筒毎にそれぞれ独立して設定された上記処理経路R1のパターンが、全気筒にわたって実質的に同一のものとして設定されている。
【0039】
この処理経路R1は、摩擦攪拌処理に用いる前述の回転工具10のシリンダヘッド表面に略沿った移動の軌跡に対応するもので、図6に詳しく示すように、全体として略十字状をなす弁間部のうちで、比較的幅が狭く設定されている吸気ポートKcどうしの弁間部および排気ポートEcどうしの弁間部と、吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部でグロープラグ取付孔Hgが設けられる領域の各表面部を処理するように、平面視で略Т字形のパターン(図6における矢印を付した直線参照)に設定されている。
尚、上記グロープラグ取付孔Hgは、弁間部への表面処理を行った後に、ドリル加工等の機械加工を行って形成されるもので、各気筒毎に1個設けられる。
【0040】
本実施の形態では、吸気ポートKcどうしの弁間部および排気ポートEcどうしの弁間部の幅は共に約10.0mmに設定され、吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部の幅は約11.3mmに設定されている。
特に、上記排気ポートEcどうしの弁間部は、エンジン駆動時には(吸気ポートKc側に比して)高温に曝され、しかも幅が狭く設定されているので、表面処理を施して熱疲労強度等の機械的特性を高める必要がある。また、吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部でグロープラグ取付孔Hgが設けられる側の弁間部については、グロープラグ取付孔Hgが設けられる部分の弁間部の幅がかなり狭くなると共に弁間部の面積が小さくなるので、やはり表面処理を施して機械的特性の向上を図る必要がある。
【0041】
また、図6において矢印を付した線分で示されるように、各気筒の吸排気ポート間(弁間部)の処理経路R1には往路と復路とが設定されている。特に、この弁間部の処理経路R1の往路と復路とは、図7からも良く分かるように、回転工具10の回転領域の少なくとも一部が重複するように設定されている(重複領域:Dw)。そして、各気筒毎に、処理経路R1のパターンにおける処理の開始部分Rsから終了部分Reに至るまで連続的に処理が行われるようになっている。尚、上記図6において、往路は矢印を付した1点鎖線の線分で示され、復路は矢印を付した実線の線分で示されている。また、処理経路R1上に描かれた小円は、回転工具10のプローブ部の移動の様子を仮想的に示したものである。
【0042】
すなわち、各気筒毎の摩擦攪拌処理を行うに際して、回転工具10は、まず最初に処理の開始部分Rsに位置設定され、処理の開始に伴い、1点鎖線に沿って進行する。つまり、吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部でグロープラグ取付孔Hgが設けられる側の弁間部を処理(往路の処理)した後、90度方向変換して吸気ポートKcどうしの弁間部を処理する。次に、該吸気ポートKcどうしの弁間部の終端部で折り返し、今度は実線に沿って吸気ポートKcどうしの弁間部を再度処理(復路の処理)する。
【0043】
更に、排気ポートEcどうしの弁間部に入り、1点鎖線に沿って当該弁間部を処理(往路の処理)し、その終端部で折り返す。そして、実線に沿って進行し、排気ポートEcどうしの弁間部を再度処理(復路の処理)した後、90度方向変換して吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部でグロープラグ取付孔Hgが設けられる側の弁間部を再度処理(復路の処理)する。
【0044】
そして、このように弁間部の表面処理を終えた後、終端穴処理として、回転工具10を処理経路R1のパターンにおける処理の終了部分Reに至るまで移動させ、この終了部分Reで工具10の回転を停止して上方へ引き上げられる。この表面処理の終了部分Reは、当該気筒部分の近傍に位置設定されたテンションボルト孔Htの穿設部の略中心に一致するように設定されている。
この部分は、上述のように弁間部の表面処理後に機械加工で孔加工されて除去されるので、摩擦攪拌処理の終端穴処理を行っても、その終端穴が最終製品に残ることはない。
【0045】
尚、具体的には図示しなかったが、回転工具10の工具駆動手段5は、より好ましくは、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御部を有する制御盤に対して信号授受可能に接続されており、所定の制御プログラムに基づいた制御盤からの命令信号に応じて、ワーク(処理対象部材)表面部に対する処理深さの設定およびワーク表面上での移動軌跡等が、自動的に設定されるようになっている。
【0046】
以上のように、本実施の形態では、摩擦攪拌処理の処理経路R1が各気筒毎に独立して設定されており、従来方法のように全気筒を縦断する長い処理経路は設けられていないので、終端穴処理も各気筒毎に1箇所、つまり計4箇所で済み、また、気筒間の繋ぎ部分の不要な処理も行わなくて済む。この結果、摩擦撹拌処理の処理時間を大幅に短縮でき、処理効率を大いに高めることができるのである。また、気筒間で表面処理の処理深さにバラツキが生じる惧れもない。
【0047】
特に、各気筒毎にそれぞれ独立して設定された処理経路R1のパターンが(つまり、回転工具10の移動の仕方が)全気筒にわたって実質的に同一であるように設定したことにより、各気筒毎に処理経路パターンが異なって回転工具10の移動の仕方を変えなければならない場合に比して、摩擦撹拌処理作業を容易で安定したものとすることができる。
【0048】
また、各気筒の弁間部の処理経路R1に往路と復路とが設定されているので、各弁間部の表面部分に対し往路と復路の両方で繰り返した処理を施し、その全幅にわたってより有効に表面処理することができる。この場合において、各気筒毎に処理経路パターンR1における開始部分Rsから終了部分Reに至るまで連続的に処理が行われるようにしたことにより、高い処理効率を維持することができる。
【0049】
特に、弁間部の処理経路R1の往路と復路とは、回転工具10の回転領域の少なくとも一部が重複するように設定されている(重複領域:Dw)ので、弁間部の幅方向における略中央領域については、往路と復路とで重複した処理が施されることになり、この領域Dwについてより深くて効果的な表面処理を施すことが可能になる。
【0050】
また、本実施の形態では、図6から良く分かるように、上記処理経路R1に沿って摩擦攪拌処理を施す際に、吸排気ポートKc,Ecが、回転工具10の進行方向と同方向となる当該回転工具10の回転方向進み側に近接した側に位置するように、処理経路R1のパターンが設定されている。
【0051】
すなわち、図8に模式的に示すように、例えば回転工具が平面視で中心軸に関して時計回り方向(図における右回り方向)に回転される場合、回転工具の進行方向に向かって左側では、回転の周速と工具進行速度とが同方向となるので、回転工具とワーク(処理対象部材)表面部との相対速度が大きくなる。これに対して、回転工具の進行方向に向かって右側では、回転の周速と工具進行速度とが反対方向となるので、回転工具とワーク表面部との相対速度は小さくなる。
【0052】
このような場合、回転工具によるワーク処理領域の断面を見ると、上記相対速度が大きくなる側(図における進行方向左側)では、処理範囲は狭いが幅方向について同一位置での塑性流動が深くなり(処理領域:B1)、一方、相対速度が小さくなる側(図における進行方向右側)では、処理範囲は広いが幅方向について同一位置での塑性流動が浅くなる(処理領域:B2)。この両者B1,B2の違いは、上記相対速度が大きい場合にはワーク母材が早く狭く攪拌され、相対速度が小さい場合には比較的ゆっくりと広範囲で攪拌されることによるものと考えられる。
【0053】
以上の特性を利用することにより、往路と復路とで回転工具の回転領域を重複(オーバラップ)させる際に、図9に示すように、処理範囲が広い領域B2どうしをオーバラップさせ、処理深さができるだけ均一になるように設定することができる。また、これとは逆に、図10に示すように、処理範囲が狭い(塑性流動が深い)領域B1どうしをオーバラップさせることにより、処理深さを抑えて素材の流出を抑制するように設定することもできる。
【0054】
シリンダヘッドCH1の弁間部を摩擦攪拌処理する場合、ポート端部のできるだけ近傍まで処理することが望まれるのであるが、例えば図11に模式的に示すように、ポート端部の薄肉側に処理範囲が広い領域B2が来るように設定したのでは、ポート端部の肩部やその近傍に変形が生じ、ひいては処理領域の内部に未充填欠陥の発生を招く惧れがある。
【0055】
そこで、本実施の形態では、吸排気ポートKc,Ecが、回転工具10の進行方向と同方向となる当該回転工具10の回転方向進み側に近接した側に位置するように、処理経路R1のパターンを設定することにより、つまり、工具10の回転方向を右回りとした場合、近接するポートが常に左側に位置するように設定することにより、図12に模式的に示すように、ポート端部の薄肉側に処理範囲が狭い領域B1が来るようにし、所要の処理深さを確保した上で、ポート端部の変形を抑えるようにした。
【0056】
上述の回転工具10の進行方向と回転方向の組み合わせによる処理範囲及び塑性流動深さの違いは、回転工具10のプローブ部が、例えば図4に示されるように、外周部に雄ネジ状のネジ溝が設けられたタイプの場合に、非常に顕著に表れる。すなわち、プローブ部16のネジ溝が例えば左ネジで回転工具10が右回転される場合、つまり、ネジ溝の螺設方向と工具回転方向とが逆の場合には、当該プローブ部16を中心にしてワーク素材が内部に押し付けられるように攪拌され、上記特性の違いが顕著に表れる。
尚、プローブ部の形状が円柱タイプ(図1及び図2参照)或いは半球状タイプ(図3参照)の場合でも、程度に若干の差はあるものの、上記特性の違いについて同様の傾向が得られる。
【0057】
本実施の形態に係るシリンダヘッドCH1の弁間部の表面処理方法について、全気筒を縦断してシリンダヘッド長手方向に延びる長い処理経路が設定された比較例に係るシリンダヘッドの弁間部の表面処理方法と比較する比較試験を行った。次に、この比較試験について説明する。
尚、以下の説明において、上述の第1の実施の形態に係るシリンダヘッドCH1における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0058】
図15は、比較例1に係るシリンダヘッドCH4の鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。この図に示すように、この比較例1のシリンダヘッドCH4では、摩擦攪拌処理による弁間部の表面処理経路が、各気筒毎に設けられシリンダヘッドCH4の略幅方向に延びる比較的短い処理経路R4に加えて、全気筒を縦断してシリンダヘッドCH4の長手方向に延びる長い処理経路L4とが設けられ、計5つの処理経路で構成されている。そして、これら処理経路に沿って4つの気筒の吸排気ポート弁間部の表面処理を一連の工程で処理するようにしている。
【0059】
上記長手方向の長い処理経路L4は、シリンダヘッドCH4の長手方向における一端側(図15における左端側)の近傍の処理開始部Lsから、各気筒の吸気ポートKcどうしの弁間部および排気ポートEcどうしの弁間部を順次処理(往路の処理)して、反対側の端部近傍で折り返して復路の処理を行い、処理終了部Leで終端穴処理が行われる。
すなわち、この比較例1では、各気筒毎の処理経路R4における終端穴処理に加えて、上記長手方向の長い処理経路L4についての終端穴処理を行わなければならない。また、この長い処理経路L4に沿った表面処理では、弁間部だけでなく、各気筒間の繋ぎ部分についても、回転工具10の移動に伴って処理が行われることになる。
【0060】
本比較試験においては、処理経路の違いによる処理効率(つまり、処理時間)及び処理結果の相違が明確になるように、回転工具10やそのプローブ部の形状等を含めて同一の処理装置を用い、同一の摩擦攪拌処理条件で、両シリンダヘッドCH1,CH4の弁間部に対する表面処理を施した。尚、プローブ部の形状は、図4に示したように、外周部に雄ネジ状のネジ溝が設けられたタイプのもの16とし、左ネジのネジ溝のプローブ部16が右回りに回転されるように設定して処理を行った。
【0061】
供試材として、同一の材料及び仕様で鋳造され、弁間部に対する表面処理前の荒加工が施された直列4気筒タイプの直噴ディーゼルエンジン用シリンダヘッド鋳造部材を60個用意し、その内30個を本発明実施例として図5に示す処理経路R1に沿って表面処理し、残り30個を比較例として図15に示す処理経路R4及びL4に沿って表面処理し、1台当りの処理に要した時間や処理深さの平均値及びバラツキ等を比較した。
尚、この各供試材の弁間部に対する摩擦攪拌処理による表面処理は、本発明実施例の供試材(30個)及び比較例の供試材(30個)に対して摩擦攪拌処理を行う順にNo.1〜No.30の順序符号をそれぞれ付しておき、本発明実施例の供試材(30個)及び比較例の供試材(30個)毎にまとめて行った。
【0062】
比較試験の結果、1台当りの処理に要した時間の平均値は、比較例については4分強であり、本発明実施例については3分弱であった。つまり、本発明の処理方法を採用することにより、比較例の処理方法に比して、処理時間を25%以上短縮できることが分かった。
これは、本発明実施例の処理経路では、比較例の処理経路に比して、終端穴処理の回数が1回少なくて済み、また、気筒間の繋ぎ部分の処理が不要であることによるものである。
【0063】
表面処理終了後の各供試材について、各気筒毎に各弁間部の摩擦攪拌処理深さ(改質層の深さ)を調べて比較した。この処理深さの調査は、本発明実施例の供試材30個および比較例の供試材30個からそれぞれ4個ずつをサンプリングする抜き取り調査とした。この抜き取り調査では、本発明実施例および比較例の各供試材について、弁間部に対する摩擦攪拌処理を行う順に付されたNo.1〜No.30の順序符号に基づいて、各No.1のもの(処理開始のもの)を各抜取サンプルS1とし、各No.10のものを各抜取サンプルS2とし、各No.20のものを各抜取サンプルS3とし、各No.30のもの(処理最終のもの)を各抜取サンプルS4として、抜き取りを行った。
【0064】
そして、表面処理を終了した各抜取サンプルの処理表面を約2mm程度フライス加工した上で、摩擦攪拌処理部を切断し、その切断面を研磨した後に、投影機を用いて20倍の倍率で改質層深さを計測した。測定データを表1に示す。尚、研磨した切断面について、金属顕微鏡を用いて50倍の倍率でミクロ組織観察を行ったところ、本発明実施例及び比較例ともに、内部に未充填欠陥は認められなかった。
【0065】
【表1】
Figure 0003747834
【0066】
表1において、”IN−IN”は吸気ポートどうしの弁間部を、”EX−EX”は排気ポートどうしの弁間部を、また、”IN−EX”は吸気ポートと排気ポートとの弁間部を、それぞれ示している。尚、表1における第1気筒〜第4気筒は、各シリンダヘッド抜取サンプルについての気筒部分の並び順序を示しており、図5(本発明実施例)及び図15(比較例)において、それぞれ右端のものを第1気筒とし、左側に向かって順番に第2,第3及び第4気筒とした。従って、比較例においては、全気筒にわたって縦断する長い処理経路L4は、第4気筒から往路の処理を開始し、第1気筒の往路の処理を終えて折り返すことになる。
【0067】
表1の測定データから分かるように、本発明の処理方法を採用することにより、比較例の処理方法に比して、改質層の深さを平均で約0.11mm(約3%)深くすることができ、また、バラツキを偏差で約0.02小さくすることができた。量産品の精度等についてのバラツキ管理を行う場合、通常、[平均値−4×偏差]の値でバラツキの大小が評価されるので、偏差で約0.02の違いは、バラツキ管理の上で有意な差を示すものである。
この改質層深さの安定化(バラツキの抑制)は、全気筒に渡って縦断する長い処理経路を設けずに各気筒毎に独立した処理経路としたことによる、各弁間部処理時のワーク温度バラツキ低減効果によるものと考えられる。
【0068】
上記のような直列4気筒タイプの直噴ディーゼルエンジン用シリンダヘッド鋳造部材の弁間部に対する摩擦攪拌処理による表面処理方法としては、図5に示した処理経路R1によるものに限らず、例えば、図13に示す形態(第2の実施の形態)に係るシリンダヘッドCH2のように、グロープラグ取付孔が設けられた側の吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部と、排気ポートどうしの弁間部の2箇所の弁間部のみについて表面処理を処理経路R2を、各気筒毎に独立して設定するようにしても良い。
この場合についても、図15に示した比較例1に比べて、処理時間や処理深さ及びそのバラツキ抑制の点で、図5に示した第1の実施の形態における場合と同様の効果を奏することができる。
【0069】
また、図14に示す形態(第3の実施の形態)に係るシリンダヘッドCH3のように、一対の吸気ポートKcと一対の排気ポートEcでなる4つポートの全ての弁間部について表面処理を行う処理経路R3を、各気筒毎に独立して設定するようにしても良い。
この場合については、図16に示す比較例2に係るシリンダヘッドCH4のように、グロープラグ取付孔が設けられていない側の吸気ポートKcと排気ポートEcの弁間部をも処理する各気筒毎の処理経路R5に加えて、全気筒にわたって縦断する長い処理経路L5が設定されている場合に比べて、処理時間を短縮し、処理深さの平均値を深くし、また、処理深さのバラツキを抑制することが可能である。
【0070】
尚、以上の各実施の形態は、Al合金を材料に用いたシリンダヘッドについてのものであったが、本発明は、例えばマグネシウム又はその合金など、他の軽金属を材料に用いた場合でも、有効に適用することが可能である。
また、シリンダヘッドは、直噴ディーゼルエンジン用のものに限らず、他の種類のエンジンに用いられるものでも良く、更に、直列4気筒タイプ用、或いは多気筒タイプ用のものに限られるものでもない。
【0071】
また更に、以上の実施の形態では、シリンダヘッドの弁間部のみを表面処理する場合についてのものであったが、本発明は、かかる場合に限らず、弁間部以外の他の所要の表面部についても、併せて摩擦攪拌処理による表面処理を施すようにしても良い。
このように、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0072】
【発明の効果】
本願請求項1の発明に係るシリンダヘッドの表面処理方法によれば、摩擦撹拌処理の処理経路が各気筒毎に独立して設定され、従来方法のように全気筒を縦断する長い処理経路は設けられていないので、終端穴処理も各気筒毎に1箇所で済み、また、気筒間の繋ぎ部分の不要な処理も行わなくて済むようになる。この結果、摩擦撹拌処理の処理時間を大幅に短縮でき、処理効率を大いに高めることができる。また、気筒間で表面処理の処理深さにバラツキが生じる惧れもない。
特に、各気筒毎にそれぞれ独立して設定された処理経路のパターンが(つまり、回転工具の移動の仕方が)全気筒にわたって実質的に同一であるので、各気筒毎に処理経路パターンが異なって回転工具の移動の仕方を変えなければならない場合に比して、摩擦撹拌処理作業が容易で安定したものとなる。
また、(回転工具の進行方向と同方向となる)回転工具の回転方向進み側に近接した側に吸排気ポートが位置するように、処理経路パターンが設定されていることにより、ポート端部の薄肉側に処理範囲が狭い処理領域が来るようにでき、所要の処理深さを確保した上で、ポート端部の変形を抑制することができる。
更に、各気筒の処理経路に往路と復路とが設定されているので、各弁間部の表面部分に対し往路と復路の両方で繰り返した処理を施し、その全幅にわたってより有効に表面処理することができる。この場合において、各気筒毎に処理経路パターンにおける開始部分から終了部分に至るまで連続的に処理が行われるので、高い処理効率の維持を図ることができる。
また更に、処理経路の往路と復路とは、回転工具の回転領域が重複するように設定されているので、弁間部の幅方向における略中央領域については、往路と復路とで重複した処理が施されることになり、この領域についてより深くて効果的な表面処理を施すことが可能になる。
また特に、各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有するディーゼルエンジン用のシリンダヘッドについて、とりわけ熱疲労強度を含む機械的特性の向上が求められる弁間部、つまり、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部領域と排気ポートどうしの弁間部領域とグロープラグ取付孔が設けられる領域の各表面部を、確実に摩擦攪拌処理することができる。
【0078】
また、本願請求項2の発明に係るシリンダヘッドによれば、摩擦攪拌処理の処理経路に従って各気筒毎に独立した表面処理部が形成されており、従来方法のように全気筒を縦断する長い処理経路に沿った表面処理は行われていないので、気筒間の繋ぎ部分の不要な表面処理が無く、終端穴処理も各気筒毎に1箇所で済み、摩擦撹拌処理の処理効率が高く、また、気筒間における表面処理の処理深さのバラツキが抑制される。
特に、各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有するディーゼルエンジン用のシリンダヘッドにおいて、とりわけ熱疲労強度を含む機械的特性の向上が求められる弁間部、つまり、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部領域と排気ポートどうしの弁間部領域とグロープラグ取付孔が設けられる領域の各表面部が、確実に摩擦攪拌処理され機械的特性が向上したシリンダヘッドが得られる。
【0080】
に、本願請求項の発明に係るシリンダヘッドによれば、一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する気筒を備えたディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドにおいて、とりわけ熱疲労強度を含む機械的特性の向上が求められる弁間部、つまり、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部領域と排気ポートどうしの弁間部領域とグロープラグ取付孔が設けられる領域の各表面部が、確実に摩擦攪拌処理され機械的特性が向上したシリンダヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る摩擦攪拌処理による表面処理方法を説明するための表面処理対象部材および摩擦攪拌処理装置の要部を概略的に示す斜視図である。
【図2】 上記表面処理対象部材および摩擦攪拌処理装置の要部を概略的に示す断面説明図である。
【図3】 プローブ部の変形例を示す回転工具先端部分の拡大正面図である。
【図4】 プローブ部の他の変形例を示す回転工具先端部分の拡大正面図である。
【図5】 本発明の第1の実施の形態に係るシリンダヘッドの鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。
【図6】 上記シリンダヘッドの気筒部分の一つを拡大して示す平面説明図である。
【図7】 図6のY7‐Y7線に沿った弁間部の断面説明図である。
【図8】 回転工具の進行方向と回転方向の組み合わせとワークの処理領域断面との関係を模式的に示す説明図である。
【図9】 回転工具の進行方向と回転方向の組み合わせパターンの一例に従ったワークの処理領域断面を模式的に示す説明図である。
【図10】 回転工具の進行方向と回転方向の組み合わせパターンの他の例に従ったワークの処理領域断面を模式的に示す説明図である。
【図11】 シリンダヘッド弁間部のポート端部を摩擦攪拌処理する際の比較例における弁間部断面を模式的に示す説明図である。
【図12】 シリンダヘッド弁間部のポート端部を本発明方法に従って摩擦攪拌処理する場合における弁間部断面を模式的に示す説明図である。
【図13】 本発明の第2の実施の形態に係るシリンダヘッドの鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。
【図14】 本発明の第3の実施の形態に係るシリンダヘッドの鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。
【図15】 比較例1に係るシリンダヘッドの鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。
【図16】 比較例2に係るシリンダヘッドの鋳造素材のシリンダブロックとの合せ面を概略的に示す平面説明図である。
【符号の説明】
10…回転工具
CH1,CH2,CH3…シリンダヘッド鋳造部材
Dw…(摩擦攪拌処理の)重複領域
Ec…排気ポート(鋳抜き穴)
Eh…吸気ポート(仕上げ状態)
Hg…グロープラグ取付孔
Kc…吸気ポート(鋳抜き穴)
Kh…吸気ポート(仕上げ状態)
R1,R2,R3…摩擦攪拌処理の処理経路
Re…処理経路の処理終了部分
Rs…処理経路の処理開始部分

Claims (3)

  1. 各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する多気筒ディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドの少なくとも上記吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いて摩擦攪拌処理を施すシリンダヘッドの表面処理方法であって、
    上記回転工具のシリンダヘッド表面に略沿った移動の軌跡に対応する摩擦攪拌処理の処理経路が、各気筒毎に独立して設定され、
    各気筒毎にそれぞれ独立して設定された上記処理経路のパターンが、全気筒にわたって実質的に同一であり、
    上記処理経路は、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部領域と排気ポートどうしの弁間部領域とグロープラグ取付孔が設けられる領域の各表面部を処理するように、平面視で略Т字形のパターンに設定されるとともに、
    上記吸排気ポートが、上記回転工具の進行方向と同方向となる当該回転工具の回転方向進み側に近接した側に位置するように、処理経路のパターンが設定されており、
    上記各気筒の処理経路には往路と復路とが設定され、上記各気筒毎に、処理経路のパターンにおける処理の開始部分から終了部分に至るまで連続的に処理が行われ、
    上記吸排気ポート間の処理経路の往路と復路とは、上記回転工具の回転領域が重複するように設定されている、
    ことを特徴とするシリンダヘッドの表面処理方法。
  2. 各気筒毎に一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有し、少なくとも該吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いた摩擦攪拌処理による表面処理を施してなる多気筒ディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドであって、
    上記回転工具のシリンダヘッド表面に略沿った移動の軌跡に対応する摩擦攪拌処理の処理経路に従って、上記各気筒毎に独立した表面処理部が形成され
    該表面処理部は、吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部処理領域と排気ポートどうしの弁間部処理領域とグロープラグ取付孔が設けられる処理領域とで、平面視で略Т字形に形成されていることを特徴とするシリンダヘッド。
  3. 一対の吸気ポートと一対の排気ポートとを有する気筒を備え、少なくとも上記吸排気ポート間の表面部分に所定の回転工具を用いた摩擦攪拌処理による表面処理を施してなるディーゼルエンジンの軽合金製シリンダヘッドであって、
    上記吸排気ポート間のうちで、吸気ポートどうしの弁間部処理領域と排気ポートどうしの弁間部処理領域とグロープラグ取付孔が設けられる処理領域とで、平面視で略Т字形の表面処理部が形成されていることを特徴とするシリンダヘッド。
JP2001316593A 2001-10-15 2001-10-15 シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド Expired - Fee Related JP3747834B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001316593A JP3747834B2 (ja) 2001-10-15 2001-10-15 シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド
EP02022968A EP1302557B1 (en) 2001-10-15 2002-10-14 Surface treatment method for a cylinder head and a cylinder head to which the surface treatment has been applied
DE60237949T DE60237949D1 (de) 2001-10-15 2002-10-14 Verfahren zur Oberflächenbehandlung eines Zylinderkopfes und Zylinderkopf so behandelt
US10/270,076 US20030089759A1 (en) 2001-10-15 2002-10-15 Surface treatment method for a cylinder head and a cylinder head to which the surface treatment has been applied

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001316593A JP3747834B2 (ja) 2001-10-15 2001-10-15 シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003120415A JP2003120415A (ja) 2003-04-23
JP3747834B2 true JP3747834B2 (ja) 2006-02-22

Family

ID=19134586

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001316593A Expired - Fee Related JP3747834B2 (ja) 2001-10-15 2001-10-15 シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3747834B2 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9095927B2 (en) 2011-08-19 2015-08-04 Nippon Light Metal Company, Ltd. Friction stir welding method
JP5957720B2 (ja) * 2011-08-30 2016-07-27 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP5957719B2 (ja) * 2011-08-19 2016-07-27 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP5962807B2 (ja) * 2015-04-01 2016-08-03 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP5915796B2 (ja) * 2015-04-27 2016-05-11 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP6080890B2 (ja) * 2015-04-27 2017-02-15 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP5915799B2 (ja) * 2015-05-15 2016-05-11 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP6153964B2 (ja) * 2015-05-25 2017-06-28 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法
JP5915802B2 (ja) * 2015-06-04 2016-05-11 日本軽金属株式会社 摩擦攪拌接合方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003120415A (ja) 2003-04-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3747834B2 (ja) シリンダヘッドの表面処理方法及び該表面処理を施したシリンダヘッド
US8006890B2 (en) Friction stir processing apparatus with a vibrator
KR20040022416A (ko) 마찰 교반 표면 처리 방법 및 장치
US6634199B2 (en) Surface treating method, and treating member therefor
JP2003136256A (ja) 摩擦攪拌用回転工具及びそれを用いた処理方法
JP2003048083A (ja) 回転工具、当該回転工具を用いた部材の処理方法及び表面処理方法
JP2003048084A (ja) 回転工具及びその製造方法、並びに当該回転工具を用いた処理方法
JP2003048064A (ja) 表面処理方法、表面処理装置並びに当該表面処理が施された部材
EP1302557B1 (en) Surface treatment method for a cylinder head and a cylinder head to which the surface treatment has been applied
JP3721454B2 (ja) シリンダヘッドの表面処理方法
JP4605489B2 (ja) 表面処理方法及びエンジンの鋳物製シリンダヘッド
JP4457330B2 (ja) 表面処理方法及びエンジンのシリンダヘッド
JPH0577042A (ja) 鋳鉄部品の表面改質方法
JP2003048060A (ja) 表面処理工具及び当該工具を用いた表面処理方法
JP2003048061A (ja) 表面処理方法及び表面処理装置
JP2001182609A (ja) シリンダヘッドの製造方法
JP4206662B2 (ja) 軽合金製部材の表面処理方法
JP2004225591A (ja) エンジン用シリンダヘッドの表面処理方法及び表面処理を施したエンジン用シリンダヘッド
JP2003048058A (ja) 表面処理方法及び表面処理装置
JP2003048059A (ja) 表面処理方法、表面処理装置並びに当該表面処理が施された部材
JP3572590B2 (ja) 金属表面の再溶融処理方法
JPH04198739A (ja) Al合金製シリンダヘッドのリメルト処理深さの検査方法
JP3149619B2 (ja) 金属表面の再溶融処理方法
JP2001347361A (ja) 金属部材の表面処理方法
JPH04228253A (ja) アルミニウム合金鋳物製シリンダヘッドの弁間強化処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040519

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20050518

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050524

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050713

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20050816

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20050928

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20051108

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20051121

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091209

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091209

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101209

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111209

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111209

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121209

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131209

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees