JP3745180B2 - 平版印刷版原版 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版原版に関し、より詳細には、レーザ製版用の平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、感光性平版印刷版原版はオフセット印刷に幅広く使用されている。近年、レーザーを利用した平版印刷版原版の製版方法が注目され、種々検討されている。例えば、可視光レーザーにより硬化する光重合性組成物を利用したフォトン方式のレーザ刷版や、レーザー光照射に伴って発生する熱等により書込みを行うヒートモード方式のレーザ刷版が知られている。これらの方式では、コンピュータ等のデジタルデータから直接製版することが可能であり、非常に有用である。レーザ刷版可能な平版印刷版原版(以下、「直描型の平版印刷版」という場合がある)は、一般的に、ウェブ状のアルミニウム板の表面を粗面化処理し、更に陽極酸化処理を施した後、感光層用塗布液を塗布・乾燥し感光層を形成することによって作製される。その後、ウェブ状の平版印刷版原版は、所望のサイズに裁断されてシート状になった後、複数枚重ねて梱包される。あるいは、ロールに巻かれた状態で保管された後、所望の大きさに裁断される。梱包出荷された平版印刷版は、ユーザによって、レーザ露光による画像焼き付け、現像処理を施された後、印刷機に取り付けられて印刷に供される。
【0003】
直描型の平版印刷版原版の前記梱包時には、所定のサイズに切りそろえた複数枚の平版印刷版原版を精度良く積み重ねる必要があり、そのためには、所定のサイズに切りそろえられた平版印刷版原版を精度良く搬送する必要がある。搬送には、通常、ベルトコンベアが使用されるが、ベルトコンベア上で、平版印刷版原版がスリップする場合があり、精度のよい搬送および積み重ねが困難であるという問題がある。また、ユーザにおいて行われるレーザ画像焼き付け、現像、印刷等、各種工程への平版印刷版原版の移動にも、搬送ベルトや搬送ローラが使用されているが、この搬送ベルトや搬送ローラ上でも、平版印刷版原版がスリップし、精度良い搬送が困難であるという問題がある。特に、レーザ露光では、極めて高い位置決め精度が要求されるため、搬送不良は、生産効率の低下のみならず、形成画像の画質低下を招くことになる。また、現像処理においても、その殆どが自動搬送式の現像機が使用されており、現像中についても搬送不良の改善の要求が高い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記諸問題に鑑みなされたものであって、搬送中のスリップや蛇行等の搬送不良を軽減し得る直描型の平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本発明の平版印刷版原版の第1の態様は、支持体と、該支持体の表面にレーザ光に感応性を有する感光層を設けた平版印刷版原版であって、
前記支持体の裏面が、支持体の長手方向と幅方向において異なる平均表面粗さRaを有し、平均表面粗さが大きい方向における平均表面粗さRaをRal、平均表面粗さが小さい方向における平均表面粗さRaをRasとした場合、RalとRasが下記関係式を満たす平版印刷版原版である。
1.1 ≦ Ral/Ras ≦ 5.0
【0006】
第1の態様の平版印刷版原版では、支持体の裏面が長手方向と幅方向とで相互に異なる表面粗さを有し、そのRalとRasとが前記関係式を満たしている。第1の態様の平版印刷版原版が、搬送ベルトや搬送ローラにより搬送される際、支持体の裏面には長手方向と幅方向で異なる摩擦力が作用する。支持体の裏面の長手方向と幅方向とに相互に異なる摩擦力が作用することによって、搬送時のスリップや蛇行が効果的に防止できる。
【0007】
また、前記課題を解決するため、本発明の平版印刷版原版の第2の態様は、支持体と、該支持体の表面にレーザ光に感応性を有する感光層を設けた平版印刷版原版であって、前記支持体の裏面が、少なくとも1辺の端部から10mm以上50mm以下に軽度の表面処理が施され、かつ前記表面処理された部分の表面平均粗さが0.3μm以上0.5μm以下である平版印刷版原版である。
【0008】
第2の態様の平版印刷版原版では、支持体の裏面は少なくとも1辺の端部に所定の幅の軽度に粗面化処理された領域を有する。第2の態様の平版印刷版原版が、搬送ベルトや搬送ローラにより搬送される際、支持体の裏面には、軽度に粗面化処理された領域と、粗面化処理されていない領域とでは、相互に異なる摩擦力が作用する。支持体の裏面の端部に大きく摩擦力が作用することによって、搬送時のスリップや蛇行が効果的に防止できる。
【0009】
第1および第2の態様の平版印刷版原版において、感光層が、30gの荷重を用いる引っかき試験器(サファイヤ針、0.5mmφ)による試験で表面に傷がつく感光層である場合は、支持体の裏面に、0.1g/m2以上の陽極酸化膜を形成するのが好ましい。
【0010】
本発明の第1および第2の態様の平版印刷版原版は、裏面が全面にわたって均一にある程度の凹凸を有するため、積み重ねられて保管された際、裏面が感光層と接触しても感光層を局部的に傷付けない。しかし、裏面の一部に傷が生じると、傷の部分が積み重ねられて保管される際、感光層に局部的な傷を付け易い。ロール状に巻かれて保管される場合も同様である。そこで、裏面に陽極酸化皮膜を0.1g/m2以上形成することによって、裏面の表面硬度が向上する結果、裏面に傷が付き難くなり、積み重ねられて保管される場合、あるいはロール状に巻かれて保管される場合に、感光層に傷が付くのを防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の平版印刷版原版の第1の実施の形態の斜視図を示す。
平版印刷版原版10は、支持体12と、該支持体12の表面12aに直描型の感光層14を設けた構成である。支持体12の裏面12bが長手方向(図面中矢印x)と幅方向(図面中矢印y)において異なる平均表面粗さRaを有し、平均表面粗さが大きい方向における平均表面粗さRaをRal、平均表面粗さが小さい方向における平均表面粗さRaをRasとした場合、RalとRasが下記関係式を満たしている。
1.1 ≦ Ral/Ras ≦ 5.0
また、感光層14は、直描型のレーザ感応性を有する感光層であり、30gの荷重を用いる引っかき試験器(サファイヤ針、0. 5mmφ)による試験で表面にキズがつく感光層である。支持体12の表面12aには、粗面化処理および陽極酸化処理が施されていて、感光層14と支持体12との密着性が良化されている。
【0012】
感光層14は表面が、30gの荷重の引っかき試験器テストにおいて目視で傷がつく感光層である。前記引っかき試験器とは、図2に示す構成の試験器をいい、一定の荷重を積載したサファイヤ針(HEIDON社製、HEIDO−18)を、水平方向に一定の速度(10mm/秒)で引っかくことができる試験器である。引っかき試験器によって傷が生じたか否かについては目視で判断する。感光層14は、30gの重りを積載したサファイヤ針で、水平方向に10mm/秒で引っかくと、目視で認識できる傷を生じる感光層である。
【0013】
図3に、平版印刷版原版の長手方向および幅方向を説明するために、裁断時のロール状に巻き取られた状態の平版印刷版原版の斜視図を示す。
平版印刷版原版10は、例えば、後述する工程を経てウェブ状に作製された後、通常、図3に示す様にロール状に巻かれた状態10’で一時的に保管され、その後、長手方向において所望の長さに裁断されて作製される。平版印刷版原版10では、支持体12の裏面12bが、長手方向と幅方向とで相互に異なる平均表面粗さ(Ra)を有し、且つ、RalとRasが前記関係式を満たしている。その結果、ユーザにおいて、搬送ベルトや搬送ロールによって、レーザ露光、現像、印刷等の各工程に移行される際に、スリップや搬送不良等のトラブルが発生しない。
【0014】
搬送時のスリップや蛇行を防止する観点からは、RalおよびRasは大きい程好ましい。一方、図3に示す様に、平版印刷版原版は、ロール状に巻かれた状態10’、および積み重ねられた状態10''において、支持体12の裏面12bが、感光層14の表面14aと接触するので、支持体12の裏面12bが感光層14の表面14aに接触した場合に、表面14aにキズが発生するのを防止するには、RalおよびRasは小さい程好ましい。搬送性の改善および感光層へのキズ付き防止を両立するには、支持体12の裏面12bのRalは0.15μm以上0.40μm以下であるのが好ましく、0.20μm以上0.30μm以下であるのがより好ましい。一方、Rasは0.10μm以上0.35μm以下であるのが好ましく、0.12μm以上0.20μm以下であるのがより好ましい。
【0015】
図4に、第1の実施の形態の平版印刷版原版10を製造する一般的な製造工程の一例をフローチャートに示す。尚、図4に示す製造工程は、アルミニウム合金板を支持体として使用した例である。また、説明の便宜のため、工程を簡略化して記載した。
まず、アルミニウム合金の溶湯を清浄化処理して、溶湯中に混入している水素等の不要ガスや、固形の不純物を除去する。清浄化処理としては、不要ガスを除去する処理として、フラックス処理、アルゴンガスや塩素ガス等を使用した脱ガス処理等が挙げられる。また、不純物を除去する処理として、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルターや、アルミナフレーク、アルミナボール等を濾材とするフィルタや、グラスクロスフィルター等を使ったフィルタリング処理等が挙げられる。また、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた清浄化処理を行うこともできる。
【0016】
次に、アルミニウムの溶湯を鋳造する。鋳造方法としては、DC鋳造法に代表される、固定鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される、駆動鋳型を用いる方法とがある。例えば、DC鋳造を行った場合、固定鋳型を用いて、所定の板厚(例えば、300〜800mm)の鋳塊を製造する。得られた鋳塊に、常法に従い、面削を行い、表層の1〜30mm、好ましくは、1〜10mmを切削して、所望の板厚のアルミニウム合金の板状体を得ることができる。一方、連続鋳造法では、アルミニウム合金の溶湯を一対の双ベルト間に挿通させることにより、所定の厚みのアルミニウム合金の板状体を連続的に得ることができる。得られた前記板状体には、必要に応じて、均熱化処理を行ってもよい。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化してしまわないように、450〜620℃で1時間以上、48時間以下の熱処理で行うのが好ましい。1時間より短い場合は、均熱化処理の効果が不十分となる。
【0017】
次いで、前記板状体に熱間圧延、冷間圧延を施し、アルミニウム合金の圧延板とする。板状体の圧延は、一対のロール間に、板状体を挿通させることによって行うことができる。熱間圧延の開始温度としては、350〜500℃が好ましい。冷間圧延前、冷間圧延後、または冷間圧延中に、中間焼鈍処理を施すこともできる。前記中間焼鈍処理はバッチ式焼鈍炉を用いて行うことができ、その場合は、通常、280℃〜600℃で2〜20時間、望ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱する。また、前記中間焼鈍処理は連続焼鈍炉を用いて行ってもよく、その場合は、通常、400〜600℃で360秒以下、望ましくは450〜550℃で120秒以下加熱する。連続焼鈍炉を用い、10℃/秒以上の条件で昇温すると、得られる成形体中の結晶組織を細かくすることができるので好ましい。熱間圧延後、所望により中間焼鈍処理し、冷間圧延を行い、最終的に、厚さ0.1〜0.5mmのアルミニウム合金板とする。得られたアルミニウム合金板を、さらに、ローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって処理すると、アルミニウム板の平面性が改善されるので好ましい。また、板巾を所定の巾にする必要がある場合は、スリッタラインを通して所定の巾に調整することができる。
【0018】
前記冷間圧延工程において、圧延ロールのパターンをアルミニウム合金板の裏面に転写することによって、アルミニウム合金板の裏面を前記平均表面粗さとすることができる。また、前記矯正工程において、所定の表面粗度のパターンを有するロールを使用して、該パターンを支持体の裏面に転写してもよい。前記方法にて、裏面を所定の平均表面粗さとすると、裏面に対する粗面化処理等の工程を別途設ける必要がなく、工程が簡略化できるので好ましい。支持体の裏面は、例えば、ロールの回転方向における平均表面粗さと、ロールの回転方向に対して垂直方向における平均表面粗さとが異なるパターンを有するロールを用いて、冷間圧延等を実施することによって、長手方向と幅方向とで異なる平均表面粗さとすることができる。
【0019】
前記冷間圧延工程または矯正工程において、裏面に所定の平均表面粗さが付加されたアルミニウム合金板は、その後、表面(感光層が設けられる側の面)が粗面化処理される。粗面化処理としては、機械的粗面化処理、化学的粗面化処理、および電気化学的祖面化処理が挙げられる。これらを単独で実施してもよいし、組み合わせて実施してもよい。例えば、ブラシ等を用いて機械的粗面化処理をした後、電気化学的粗面化処理を実施してもよい。前記機械的粗面化処理としては、ボールグレイン、ワイヤーグレイン、ブラッシングレイン、液体ホーニング法が挙げられる。その他、例えば、特開平6−135175号公報、および特公昭50−40047号公報に記載されている機械的粗面化処理方法を採用することもできる。機械的粗面化処理を行うと、通常、アルミニウム合金板の表面を、平均表面粗さ(Ra)0.35〜1.0μmにすることができる。前記化学的粗面化処理としては、アルミニウム合金板をアルカリ浴に浸漬する方法が挙げられる。
【0020】
前記電気化学的粗面化処理は、アルミニウム合金板の表面に微細な凹凸を付与することが容易であり、その結果、感光層14と支持体12との密着性を向上させることができる点で有効である。電気化学的粗面化処理は、通常、アルミニウム合金板に、硝酸または塩酸等の酸を電解液として、直流または交流電流を通じることによって行われる。前記電気化学的粗面化処理を行うと、通常、平均直径約0.5〜20μmのクレーターまたはハニカム状のピットを、アルミニウム合金板の表面に対して、30〜100%の面積率で形成することができる。形成されたピットは、平版印刷版の非画像部の汚れを軽減する作用と、耐刷力を向上する作用がある。前記電気化学的処理では、電解時の電気量、即ち電解時の電流の大きさと電流を流した時間の積を設定することにより、形成されるピットの形状、ピットの面積率等を調整することができる。
【0021】
粗面化処理に前後して、アルミニウム合金板の表面に、苛性ソーダまたは苛性カリ等のアルカリ剤によって、エッチング処理を施してもよい。さらに、前記エッチング処理を実施した場合は、エッチング処理後に、アルミニウム板の表面に残存するアルカリに不溶な物質(スマット)を除去する、酸によるデスマット処理を行ってもよい。特に、電気化学的粗面化処理を行う場合は、粗面化処理の前後に、前記エッチング処理およびデスマット処理を行うのが好ましい。
【0022】
アルミニウム合金板の表面を粗面化処理した後、さらに、陽極酸化処理を実施するのが好ましい。陽極酸化処理を行うと、アルミニウム合金板の表面に陽極酸化膜が形成され、耐磨耗性が向上するので好ましい。陽極酸化皮膜は、アルミニウム合金板を電極として電解液中に浸漬し、これに電流を通じることによって形成できる。通じる電流としては、直流、交流等、種々の波形の電流を目的に応じて選択する。用いる電解液としては、アルミニウム合金板の表面に、多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般的には、硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。電解液中の電解質の濃度は、電解質の種類によって適宣決定される。電解液中の電解質の濃度、電解時間等の諸条件は、使用する電解質等に応じて、その好ましい範囲が変わるので一概に規定し得ないが、一般的には、電解質の濃度 1〜80重量%、液温 5〜70℃、電流密度 1〜60A/dm2、電圧 1〜100V、および電解時間 10秒〜300秒であるのが適当である。陽極酸化処理によって形成される陽極酸化皮膜量は、通常、1〜6g/m2であるのが好ましい。
【0023】
アルミニウム合金板の表面(感光層が設けられる側の面)を陽極酸化処理する際に、裏面についても陽極酸化処理を施すのが好ましい。裏面に陽極酸化皮膜を形成すると裏面に傷が付き難くなるため、平版印刷版原版を積み重ねた状態およびロールに巻き取った状態で保管する場合に、裏面の傷が感光層に転写されるのを防止できる。また、陽極酸化皮膜を形成すると、支持体の裏面の硬度が向上するので、裏面に搬送ベルトや搬送ロールとの間の摩擦力が加わった場合も、磨耗粉等が発生するのを防止できる。アルミニウム合金板の表面および裏面に対する陽極酸化処理は、例えば、図5に示す装置を用いて行うことができる。図5に示す陽極酸化処理装置20は、給電槽22と電解処理槽24とから構成されている。給電槽22には、電解液26が充填されていて、給電電極28が搬送されてくるアルミニウム合金板30の感光層形成側の面に対向して配置されている。一方、電解処理槽24には、電解液32が充填されていて、搬送されてくるアルミニウム合金板の感光層形成面側及び裏面側に各々対向して電解電極34が配置されている。アルミニウム合金板30は、搬送ローラ36によって、給電槽22および電解処理槽24を、通過し、アルミニウム合金板30の感光層形成側の面および裏面には、陽極酸化皮膜が成膜される。
【0024】
アルミニウム合金板の裏面に形成される陽極酸化皮膜は0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以上であるのがより好ましい。酸化皮膜の量が0.1g/m2未満であると、裏面の強度向上効果を奏さない場合がある。一方、上限については特に好ましい範囲はないが、強度向上効果と生産コストの双方の観点からは、4g/m2以下であるのが好ましい。
【0025】
陽極酸化処理後、所望により、封孔処理を実施してもよい。前記封孔処理は、陽極酸化処理された支持体を、熱水、または無機塩もしくは有機塩を含む熱水溶液へ浸漬する方法や、水蒸気浴に曝す方法等によって行われる。
【0026】
また、陽極酸化処理後、所望により、親水化処理等の界面制御処理を実施してもよい。前記界面制御処理としては、米国特許第2714066号、第3181461号、第3280734号、及び第3902734号各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば珪酸ナトリウム水溶液)法が挙げられる。この方法においては、支持体を珪酸ナトリウム水溶液中に浸漬するか、または電解処理する。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム、および、米国特許第3276868、第4153461号および第4689272号各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが挙げられる。
【0027】
次に、裏面12bを所定の平均表面粗さに粗面化し、且つ、表面12aを粗面化処理および陽極酸化処理した支持体12に、感光層14を形成する。感光層14は、感光層を構成する各成分を溶媒に溶解または分散して調製した塗布液を、前記支持体12の表面12a上に塗布して、乾燥することによって形成できる。塗布方法としては、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布方法等を利用することができる。塗布を適宜繰り返すことで、多層構造の感光層を形成することができる。また、複数の感光層を同時に塗布して形成することもできる。
【0028】
感光層14が形成された後、図3に示す様に、ロール状に巻き取られた後、所望の大きさに裁断される。
【0029】
図6に、本発明の平版印刷版原版の第2の実施の形態の斜視図および支持体の裏面を示す。尚、図1と同一の部材については、同一の番号を付し、詳細な説明は省略する。
平版印刷版原版40は、支持体42と、該支持体42の表面42aに直描型の感光層14を設けた構成である。支持体42の裏面42bには、図6(b)に示す様に、長手方向(図中x方向)の2辺に、端部から幅d(1mm≦d≦50mm)だけ、帯状に軽度の表面処理が施されている。支持体42の表面42aには、粗面化処理および陽極酸化処理が施されていて、感光層14と支持体42との密着性が良化されている。
【0030】
図6(b)には、軽度の粗面化処理を、支持体42の裏面42bの長手方向(図中x方向)の2辺の両端部に施した例を示したが、この構成に限定されず、例えば、図7(a)に示す様に、裏面42bの長手方向の1辺にのみ、端部から幅dで軽度の粗面化処理が施されていてもよい。また、幅方向(図中y方向)の1辺または2辺に、端部から幅dだけ、帯状に軽度の粗面化処理を施されたものであってもよい。
【0031】
第2の実施の形態の平版印刷版原版では、支持体の裏面の少なくとも1辺が、端部から所定の幅で軽度の粗面化処理を施されているので、ユーザにおいて、搬送ベルトや搬送ロールによって、レーザ露光、現像、印刷等の各工程に移行される際に、スリップや搬送不良等のトラブルが発生しない。軽度の粗面化処理が施されるのは、支持体の裏面の長手方向または幅方向いずれかの片端部または両端部から10mm以上50mmの幅の領域である。1mm未満ではスリップ防止の効果が期待できず、一方、50mmを越える場合は、裏面を粗面化するための機構が複雑になるだけでなく、粗面化にかかるコストが大きくなり経済上好ましくない。ここで、「軽度の粗面化処理」とは、少なくとも、表面(感光層が形成される側の面)に対する粗面化処理よりも、条件が緩やかな粗面化処理をいう。即ち、裏面の粗面化処理された領域の平均表面粗さは、粗面化処理された表面の平均表面粗さよりも、少なくとも小さくなる。軽度の粗面化処理された領域は、その平均表面粗さ(Ra)が0.3μm以上0.50μm以下である。さらに、ロール状態で保管される際、または積み重ねられて梱包される際の感光層14への傷付けを防止する観点からは、軽度に粗面化処理された領域の平均表面粗さ(Ra)は、0.3μm以上0.40μm以下であるのがより好ましい。
【0032】
図8に、第2の実施の形態の平版印刷版原版を製造する一般的な製造工程の一例をフローチャートに示す。尚、図8に示す製造工程は、アルミニウム合金板を支持体として使用した例である。また、説明の便宜のため、工程を簡略化して記載した。
アルミニウム合金の溶湯の清浄化処理から冷間圧延処理に至るまでの工程は、前記第1の実施の形態の平版印刷版原版の製造工程で示した各工程と同様である(但し、冷間圧延工程および矯正工程においては、表面にパターンが形成されていないロールを用いて行ってもよい)。図8に示す第2の実施の形態の平版印刷版の作製工程では、アルミニウム合金板の表面(感光層が設けられる側の面)を粗面化処理する際、あるいは粗面化処理するのに前後して、アルミニウム合金板の裏面の所定の位置に、軽度の粗面化処理を実施する。
【0033】
裏面の端部を所定の幅で粗面化するには、アルミニウム合金板の表面を電気化学的に粗面化する際に、適当な量の裏回りが発生するのを利用するのが好ましい。通常、アルミニウム合金板の表面(感光層が形成される側の面)に電気化学的粗面化処理を実施すると、粗面化処理中に、電気力線が裏回りして、裏面の一部が軽度に粗面化処理される場合がある。これを利用すれば、表面と裏面の粗面化処理を同時に実施することができ、工程が簡略化されるので好ましい。電気力線の裏回りを利用する場合は、電極の巾をアルミニウム合金板の巾より広くし、且つアルミニウム合金板の裏面に接する電解液が存在する領域の厚みを調節することによって、粗面化処理される範囲、および粗面化処理の程度を適切な範囲に調整することができる。その他、裏面の端部のみを機械的、化学的、または電気化学的に粗面化処理するために、別途工程を付加してもよい。
【0034】
その後の工程、陽極酸化処理から裁断に至るまでの工程は、前記第1の実施の形態の平版印刷版原版の製造工程で示した各工程と同様である。
【0035】
第2の実施形態の平版印刷版原版において、第1の実施の形態と同様、支持体の裏面が長手方向と幅方向で異なる平均表面粗さを有し、RalとRasが前記関係式を満たしていてもよい。この場合は、第1の実施の形態と同様、冷間圧延時等に、表面に所定のパターンを有する圧延ロールを用い、該パターンを裏面に転写する。
【0036】
本発明の平版印刷版原版において、感光層はレーザ感応性を有する。レーザ感応性の感光層は、デジタルデータから直接製版可能な直描型の感光層である。直描型の製版方式としては、主にレーザの光エネルギを利用するフォトンモード、および、主にレーザ光を熱エネルギに変換して利用するヒートモードの製版方式があり、本発明の原版は、どちらの方式で製版可能な感光層を有していてもよい。
【0037】
感光層中に含有させる材料は、目的とする製版方式に応じて、種々選択すればよい。例えば、赤外線レーザを用いてヒートモード製版方式を利用する場合は、ネガ型平版印刷版原版として、感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって架橋する化合物を含有する実施の形態、およびポジ型の平版印刷版原版として、感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって分解する結合部を持つ化合物を含有する実施の形態が挙げられる。
【0038】
前記ヒートモードネガ型およびポジ型の平版印刷版原版に、赤外線レーザにより画像様に赤外線が照射されると、光照射部の赤外線吸収剤が赤外線を吸収して熱を発生する。ネガ型の平版印刷版原版では、該熱によって酸を発生する化合物から酸が発生し、該酸によってバインダーが架橋して硬化する。次に、現像液により現像すると、感光層の非光照射部のみが支持体上から除去され、光照射部が支持体上に残存して、製版される。一方、ポジ型の平版印刷版原版では、赤外線吸収剤から発生される熱によって放出された酸により、バインダーの一部の結合が分解する。次に、現像液により現像すると、感光層の光照射部のみが支持体上から除去され、非光照射部が支持体上に残存して、製版される。その後、製版された平版印刷版にインクを塗布し、これを紙等の記録媒体に転写することによって、画像を形成することができる。
【0039】
前記ヒートモード製版方式のネガ型の平版印刷版原版に用いられる赤外線吸収剤としては、波長760nmから1200nmの赤外線を有効に吸収する染料または顔料が好ましい。染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体などの染料が挙げられる。顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0040】
前記実施の形態のヒートモード製版方式のネガ型の平版印刷版原版に用いられる熱によって酸を発生する化合物としては、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている公知の酸発生剤等、公知の熱分解して酸を発生する化合物、及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。また、ハロゲン化物やスルホン酸などを対イオンとするオニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、およびジアゾニウム塩のいずれかの構造を有するものが挙げられる。
【0041】
前記ヒートモード製版方式のネガ型の平版印刷版原版に用いられる酸によって架橋する化合物としては、架橋されていない状態では、アルカリ性の現像液に対して溶解性を有し、酸によって架橋される化合物が挙げられる。この様な化合物としては、ノボラック樹脂や側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマーなどが挙げられる。前記ポリマーは単重合体であっても、他の構成単位を含む共重合体であってもよい。他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーより導入される構成単位が挙げられる。
【0042】
前記ヒートモード製版方式のネガ型の平版印刷版原版では、感光層のバインダー樹脂が、酸によって架橋される化合物であったが、これに限定されず、酸によって架橋される化合物の他に、バインダー樹脂を別途含有させてもよい。また、前記実施の形態では、酸発生剤を含有させ、酸により架橋反応を進行させたが、これに限定されず、ラジカル重合等により架橋反応が進行する場合は、酸発生剤の代わりにラジカル発生剤等を含有させてもよい。さらに、架橋剤を別途含有させてもよい。
【0043】
一方、前記ヒートモード製版方式のポジ型の平版印刷版原版に用いられる酸によって分解する結合部を有する化合物としては、酸によって前記結合部が分解される前は、アルカリ性の現像液に対して不溶性であり、前記結合部が分解した後は、アルカリ性の現像液に対して溶解する化合物である。この様な化合物としては、フェノール基を有するポリマー、スルホンアミド基を有するポリマー、置換スルホンアミド系酸基(−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R)を有するポリマー、カルボン酸基を有するポリマー、スルホン酸基を有するポリマー、およびリン酸基を有するポリマー等が挙げられる。
【0044】
前記ヒートモード製版方式のポジ型の平版印刷版原版に用いられる赤外線吸収剤および熱によって酸を発生する化合物としては、前記ネガ型の感光層に使用される材料と同様のものが挙げられる。尚、前記実施の形態では、酸によって感光層の現像液に対する溶解性に差を生じさせているが、この実施の形態に限定されず、いずれの分子間あるいは分子内相互作用を利用して、現像液に対する溶解性に差を生じさせた実施の形態も含まれる。
【0045】
その他、光重合を利用したフォトンモードの製版方式に使用する平版印刷版原版としては、感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダー、および多官能性のモノマーあるいはプレポリマーを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む実施の形態が挙げられる。銀塩拡散転写を利用したレーザ製版方式に使用される平版印刷版原版としては、感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる実施の形態が挙げられる。銀トリガを利用した重合型のレーザ製版方式に使用される平版印刷版原版としては、感光層が、多官能性モノマーおよび多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む実施の形態が挙げられる。ハイブリッド製版方式に使用される平版印刷版原版としては、感光層が、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む実施の形態が挙げられる。
【0046】
また、電子写真法を利用したレーザ製版方式に使用される平版印刷版原版としては、感光層が、有機光導電体を含む実施の形態が挙げられる。その他、感光層が、レーザー光照射によって除去されるレーザー光吸収層と、親油性層および/または親水性層とからなる2〜3層を含む実施の形態や、感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物、および可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する実施の形態が挙げられる。
【0047】
前記感光層は、前記支持体上に直接形成してもよいし、支持体上に下塗り層を形成し、該下塗り層上に形成してもよい。下塗り層は、特開昭60−149491号公報に開示されているアミノ酸及びその塩類(Na塩、K塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、塩酸塩、蓚酸塩、酢酸塩、リン酸塩等)、特開昭60−232998号公報に開示されている水酸基を有するアミン類及びその塩類(塩酸塩、蓚酸塩、リン酸塩等)、特開昭63−165183号公報に開示されているアミノ基及びホスホン酸基を有する化合物またはその塩を含む塗布液を調製し、該塗布液を支持体上に塗布・乾燥することによって形成することができる。また、特開平4−282637号公報に開示されているホスホン酸基を有する化合物を下塗り層中に含有させてもよい。さらに、支持体を界面制御処理として、アルカリ金属珪酸により処理した場合は、特願平9−264309(特開平11−109637号公報)に記載されている酸基とオニウム基を含有する高分子化合物を下塗り層に含有させることもできる。
【0048】
【実施例】
[実施例1〜実施例8および比較例1〜2]
アルミニウム以外に、下記の元素を含むアルミニウム合金の溶湯(以下、「Al溶湯」と記す)を調製した。
Si : 0.06 重量%
Fe : 0.30 重量%
Cu : 0.017重量%
Mn : 0.001重量%
Mg : 0.001重量%
Zn : 0.001重量%
Ti : 0.03 重量%
前記Al溶湯濾過により清浄化した後、厚さ500mm幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。得られた鋳塊の表面を平均10mm、面削機で削り取った。その後、約5時間550℃で均熱保持し、温度が400℃まで下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を使って熱処理を500℃で行った後、冷間圧延機により、厚さ0.24mmのアルミニウム合金板とした。冷間圧延機の圧延ロールとして、種々の表面粗度を有するロールを使用し、冷間圧延を実施して、アルミニウム合金板の裏面(感光層を形成する側の面と反対の面)の平均粗さが種々異なるアルミニウム合金板を作製した。
【0049】
次に、種々のアルミニウム合金板の表面(前記冷間圧延処理で、粗面化しなかった面)を、アルカリエッチング処理(アルミニウム溶解量は5.5g/m2)した後、引き続き硝酸スプレイによるデスマット処理を実施した。電気量270C/dm2で交流電解粗面化処理を実施して、表面を粗面化した。その後、再びアルカリエッチング処理(アルミニウム溶解量は0.2g/m2)、硝酸スプレイによるデスマット処理を実施した。さらに、図5に示すのと同様の構成の陽極酸化処理装置を用いて、アルミニウム合金板の表面および裏面に陽極酸化皮膜を形成した(表面皮膜量:2.6g/m2、裏面皮膜量:0.1g/m2)。その後、ケイ酸ナトリウムを用いて界面処理を実施した後、オニウム基および酸基を含むポリマーを用いて、表面に下塗り層を形成した(EP0904954A2の明細書に記載された方法に順じて行った)。
この様にして、裏面が種々の表面粗度を有する平版印刷版用支持体を各々作製した。
【0050】
次に、作製した平版印刷版用支持体の下塗り層上に、下記に示す組成の感光層用塗布液を塗布・乾燥し、感光層を形成して、平版印刷版原版を各々作製した。各々の平版印刷版原版は、その大きさを650mm×550mmとした。
<感光層用の塗布液の組成>
・カプリン酸 0.03g
・フェノール性水酸基を有するモノマーとp−アミノベンゼンスルホンアミドと
の共重合体 0.75g
(モル比50:50、重量平均分子量50,000)
・m、pクレゾールノボラック樹脂 0.25g
(m,p比=6/4)
・p−トルエンスルホン酸 0.003g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.03g
・シアニン染料 0.017g
・ビクトリアピュアブルー 0.017g
(BOHの対イオンを1−ナフタレンスルホン酸アニオンにした染料)
・界面活性剤 0.05g
(「メガファックF−177」、大日本インキ化学工業社製)界面活性剤)
・γ―ブチルラクトン 10.0 g
・メチルエチルケトン 10.0 g
・1−メトキシ−2−プロパノール 1.0 g
【0051】
作製した平版印刷版原版の各サンプルを、ベルトコンベヤにより搬送し、搬送時のスリップの発生および蛇行の有無について評価した。評価結果を下記表1に示す。尚、支持体裏面の幅方向の平均表面粗さおよび長手方向の平均表面粗さは、東京精密社製の「サーフコム」により測定した(下記実施例9以降においても同様である)。また、表1中、スリップ評価の欄の「〇」はスリップが発生しなかったことを示し、「△」は若干発生したが許容範囲であったことを示し、「×」は頻繁に発生したことを示す。蛇行評価の欄の「〇」は蛇行しなかったことを示し、「△」は若干蛇行したが許容範囲であったことを示し、「×」は頻繁に蛇行したことを示す。下記表2においても同様である。
【0052】
【表1】
Figure 0003745180
【0053】
[実施例9〜実施例11および比較例3]
アルミニウム以外に、下記の元素を含むアルミニウム合金の溶湯(以下、「Al溶湯」と記す)を調製した。
Si : 0.10 重量%
Fe : 0.30 重量%
Cu : 0.02 重量%
Mn : 0.001重量%
Mg : 0.015重量%
Zn : 0.001重量%
Ti : 0.03 重量%
前記Al溶湯濾過により清浄化した後、厚さ500mm幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。得られた鋳塊の表面を平均10mm、面削機で削り取った。その後、約5時間550℃で均熱保持し、温度が400℃まで下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を使って熱処理を500℃で行った後、冷間圧延機により、厚さ0.24mmのアルミニウム合金板とした。冷間圧延時に、所定のパターンを有する圧延ロールを用い、幅方向平均表面粗さ(Ral)を0.17、長手方向の平均表面粗さ(Ras)を0.16(Ral/Ras=1.06)とした。
【0054】
次に、実施例1と同様にして作製したアルミニウム合金板にアルカリエッチング処理、デスマット処理実施した。その後、電気量300C/dm2で、アルミニウム合金板の表面(感光層を形成する側の面)に電気化学的粗面化処理を実施した。この際、電気力線の一部が裏面に回る様にして、裏面の長手方向両端部から所定の幅で、帯状に軽度に電気化学的粗面化処理が実施される様にした。また、裏面において電解液が存在するスペースの厚み条件をかえることによって、裏面の粗面化された幅を種々代えた。電気化学的粗面化処理によって表面は平均表面粗さRaが0.40μmとなり、裏面の端部の所定の領域は、平均表面粗さRaが0.30μmとなった。
【0055】
再びアルカリエッチング処理(アルミニウム溶解量は0.2g/m2)、硝酸スプレイによるデスマット処理を実施した。さらに、図4に示すのと同様の構成の陽極酸化処理装置を用いて、アルミニウム合金板の表面および裏面に陽極酸化皮膜を形成した(表面皮膜量:2.6g/m2、裏面皮膜量:0.1g/m2)。その後、ケイ酸ナトリウムを用いて界面処理を実施した後、オニウム基および酸基を含むポリマーを用いて、表面に下塗り層を形成した(EP0904954A2の明細書に記載された方法に順じて行った)。
この様にして、裏面が種々の幅で軽度に粗面化された平版印刷版用支持体を各々作製した。
【0056】
実施例1と同様にして、感光層を形成し、実施例1と同様にスリップ評価、蛇行評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
【0057】
【表2】
Figure 0003745180
【0058】
次に、実施例1と実施例9と同様にして各々平版印刷版原版を作製し、裁断せずに、再び、コイル状に巻き取って2週間保管した。別途、裏面の酸化皮膜を0.05g/m2にした以外は、実施例1および実施例9と各々同様にして作製した平版印刷版原版(実施例1’および実施例9’)についても、裁断せずに、再び、コイル状に巻き取って2週間各々保管した。
尚、前記4種の平版印刷版原版の感光層を図2に示すのと同様の構成の引っかき試験器で試験したところ、30gの荷重において、目視で確認できる傷が発生した。
【0059】
2週間保管後、再度巻きほぐし、長手方向800mmに裁断し、平版印刷版原版のシート1000枚を各々作製した。各シートについて感光層表面を観察したところ、傷の発生率は1000枚のシートについて平均すると、裏面の酸化皮膜量が0.1g/m2のシート(実施例1および実施例9)では0.1個/1シートであり、裏面の酸化皮膜量が0.05g/m2のシート(実施例1’および実施例9’)では4.8個/1シートであった。
従って、保管時に支持体の裏面によって感光層が傷つくのを防止するには、支持体の裏面に、0.1g/m2以上の陽極酸化皮膜を形成するのが有効であることが実証された。
【0060】
【発明の効果】
搬送中のスリップや蛇行等の搬送不良を軽減し得る直描型の平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の平版印刷版原版の一実施形態の斜視図である。
【図2】 引っかき試験器の構成の概略を示す模式図である。
【図3】 平版印刷版原版の長手方向および幅方向を説明するために用いた観念図である。
【図4】 本発明の平版印刷版原版の製造工程の一例を示すフローチャート図である。
【図5】 本発明の平版印刷版原版の製造工程に用いられる陽極酸化処理装置の一例を示す模式図である。
【図6】 本発明の平版印刷版原版の他の実施形態の斜視図である。
【図7】 本発明の平版印刷版原版の裏面を模式的に示す図である。
【図8】 本発明の平版印刷版原版の製造工程の他の例を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
10 40 平版印刷版原版
12 42 支持体
14 感光層
20 陽極酸化処理装置
22 給電槽
24 電解処理槽
26 32 電解液
28 34 電極
30 アルミニウム合金板
36 搬送ローラ

Claims (4)

  1. 支持体と、該支持体の表面に、レーザ光に感応性を有する感光層を設けた平版印刷版原版であって、
    前記支持体の裏面が、支持体の長手方向と幅方向において異なる平均表面粗さRaを有し、平均表面粗さが大きい方向における平均表面粗さRaをRal、平均表面粗さが小さい方向における平均表面粗さRaをRasとした場合、RalとRasが下記関係式を満たす平版印刷版原版。
    1.1 ≦ Ral/Ras ≦ 5.0
  2. 感光層が30gの荷重を用いる引っかき試験器(サファイヤ針、0.5mmφ)による試験で表面に傷がつく感光層であり、且つ、支持体の裏面に、0.1g/m2以上の陽極酸化膜が形成されている請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 支持体と、該支持体の表面に、レーザ光に感応性を有する感光層を設けた平版印刷版原版であって、前記支持体の裏面が、少なくとも1辺の端部から10mm以上50mm以下に軽度の表面処理が施され、かつ前記表面処理された部分の表面平均粗さが0.3μm以上0.5μm以下である平版印刷版原版。
  4. 感光層が30gの荷重を用いる引っかき試験器(サファイヤ針、0.5mmφ)による試験で表面に傷がつく感光層であり、且つ支持体の裏面に、0.1g/m2以上の陽極酸化膜が形成されている請求項3に記載の平版印刷版原版。
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