JP3741951B2 - ドライクリーニング用洗浄剤組成物及びこれを使用するドライクリーニング方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は洗浄効果に優れ、オゾン層の破壊がなく、安全性に優れた新規のドライクリーニング用洗浄剤組成物及びこれを使用するドライクリーニング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
衣類などを溶剤を使用して洗浄するドライクリーニングの洗浄方法において、フロンやパークロロエチレン、トリクロロエタンに代表される塩素系溶剤やパラフィン、ナフテンに代表される石油系溶剤が広く使われてきた。しかし、フロン及び塩素系溶剤は不燃性で、乾燥速度が大きいなどの優れた性質を有している反面、オゾン層破壊及び地下水汚染の原因物質となっており、地球環境保護の立場からその使用は厳しく制限される方向にある。また、石油系溶剤は作業環境の観点から許容濃度が厳しく設定されており、溶剤中毒に対して充分な注意を払わなければならない。そのため代替用洗浄剤として揮発性シリコーンを用いた溶剤系が検討されている。例えば、特許第1502875号には環状シロキサン単独またはこれと石油系炭化水素溶剤との混合物をクリーニング用溶剤として用いる記載があり、特開平6−327888号には揮発性の直鎖状ポリシロキサンを用いてドライクリーニングを行なう方法について記載されている。しかし、シリコーンは体積抵抗率が大きいため静電気着火の原因となることが指摘されている。
そこで、発明者は特願平11−097202号において静電気着火を防止するために、シリコーンに溶解させる界面活性剤としてエーテルカルボン酸型アニオン界面活性剤を添加することを提案している。この中で衣類に付着したモータ油等の油脂系の汚れ除去が良好なことが記載されているが、汗などの水溶性の汚れの除去には不十分であった。また、ドライクリーニング用として通常使用されている界面活性剤はシリコーンに溶解せず、また、皮膚などへの刺激性が懸念され、よりマイルドでシリコーンに溶解能力のある界面活性剤が待望されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は上記問題点を改善し、油脂汚れ及び水溶性汚れの除去性能が良好で、安全性に優れ、衣類への残留溶剤臭が少なく、仕上がった衣類の風合いが良好で、オゾン層を破壊することなく、皮膚刺激性の少ないドライクリーニング用洗浄剤組成物及びこれを使用するドライクリーニング方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は1気圧における沸点が300℃以下のシリコーン95〜99.9重量%とこのシリコーンと相溶する、無臭化処理を施されたポリオキシアルキレン鎖を有する変性シリコーンであるシリコーン系界面活性剤0.1〜5重量%を含有してなるドライクリーニング用洗浄剤組成物及びこれを使用するドライクリーニング方法である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳しく説明する。
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物はシリコーンとシリコーン系界面活性剤からなるものであるが、本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物には石油系炭化水素溶剤を添加することもできる。
本発明において使用されるシリコーンは沸点が300℃以下のシリコーンであればよく、直鎖状オルガノポリシロキサン、環状オルガノポリシロキサン及び分岐状オルガノポリシロキサンが挙げられる。これらの中で、取り扱いの容易さ、人体への安全性及び経済性の観点から、オクタメチルシクロテトラシロキサン,オクタメチルトリシロキサン,デカメチルテトラシロキサン,ドデカメチルペンタシロキサン及びトリス(トリメチルシロキシ)メチルシランが好ましい。使用形態としては、これらの中の1種または2種以上の組み合わせで使用することができる。これらのシリコーンの沸点が300℃以下に限定されている理由は、溶剤を回収する際に、これが高沸点であると、エネルギーを大量に必要とすると同時に、回収装置が大型化且つ複雑化するためコスト高となるからである。
【0006】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物において、1気圧における沸点が300℃以下のシリコーンは95〜99.9重量%含有されることが必要である。
【0007】
本発明で使用されるシリコーン系界面活性剤としてはアニオン系シリコーン界面活性剤、ノニオン系シリコーン界面活性剤、カチオン系シリコーン界面活性剤及び両性シリコーン界面活性剤が挙げられる。
アニオン系シリコーン界面活性剤としてはカルボン酸塩変性シリコーン、スルホン酸塩変性シリコーン,硫酸エステル塩変性シリコーン及びリン酸エステル塩等が挙げられる。ノニオン系シリコーン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーン,ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル変性シリコーン,ポリエチレングリコール脂肪酸エステル変性シリコーンなどが挙げられる。カチオン系シリコーン界面活性剤の例としては4級アンモニウム変性シリコーンが挙げられ、両性シリコーン界面活性剤としてはベタイン変性シリコーンを挙げることができる。原料の入手の容易さ、人体への安全性及び経済性の点からポリオキシアルキレン基を有する変性シリコーンであるポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0008】
更に、ポリオキシアルキレン鎖を有する変性シリコーンが下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンが好ましい。
R1 pR2 qSiO(4-p-q)/2…………(1)
[R1は脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の炭素数1〜10の1価炭化水素基、R2は一般式−CfH2fO(CgH2gO)hR3で示される有機基、R3は水素原子もしくは脂肪族不飽和基を有しない置換又は非置換1価炭化水素基、またはアセチル基である。fは2〜6の整数、gは2~4の整数、hは1〜200の整数である。p及びqはそれぞれ0≦p<3.0、0<q<3.0であり、0<(p+q)≦3.0を満たす正数である]
【0009】
更に、シリコーンとの相溶性からポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーン中のポリオキシエチレンの含有量は5〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%である。ポリオキシエチレンの含有量が5重量%未満では界面活性力が不十分であり、ポリオキシエチレンの含有量が30重量%を超えるとシリコーンとの相溶性が悪くなり、界面活性剤としての機能を果たさなくなる。また、水とシリコーンとの分離性の点からポリオキシエチレンの含有量は20重量%未満が好ましい。
【0010】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物において、シリコーンと相溶するシリコーン系界面活性剤は0.1〜5重量%含有されることが必要である。0.1重量%未満では洗浄力が不足したり、被洗浄物にシミを生じる可能性がある。5重量%を超えて含有させると界面活性剤が被洗浄物に残存付着し、仕上り品の風合いが損なわれる可能性がある。
【0011】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、溶剤に浸漬して衣料の洗浄を行いその後、脱液、乾燥する、従来の石油系炭化水素溶剤を使用するドライクリーニング方法に使用可能である。洗浄方法としては浸漬、洗浄の他、噴霧洗浄、超音波洗浄などが挙げられ、脱液方法としては遠心脱液、ローラーによる絞り脱液等が挙げられ、乾燥法としては風乾、減圧乾燥、温風乾燥及び加熱乾燥などが挙げられる。
【0012】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物においては、ドライクリーニング後の衣類への溶剤臭の残存量を極力低減させるために、使用するポリオキシアルキレン鎖を有する変性シリコーンに無臭化処理を施した後、ドライクリーニング用のシリコーン界面活性剤として使用する。無臭化の方法は公知の手法で行えばよく、その方法は日本特許2137062号、特開平7−304627号、特開平7−330907号に記載されている。
【0013】
【実施例】
以下実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
(合成例1 無臭化ポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンの合成)
内容積10リットルの反応器に下記の平均組成式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン900重量部と、
【化1】
下記の平均組成式(3)で示されるポリオキシアルキレン化合物
CH2=CHCH2O(C2H4O)4H ………………(3)
250重量部及びエタノール4,500重量部を混合し、これに塩化白金酸2重量%含有のエタノール溶液0.2重量部を加え、溶剤の還流下に5時間反応させた。続いて無臭化処理を行うため加圧容器に上記反応済みの溶液を仕込み、続いてこれに10%Pd-Cを250g投入し、水素ガス0.5MPaを吹き込みながら、120℃/3時間反応させた。反応物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、続いて濾過して、下記の平均組成式(4)で示される目的物を得た。
【化2】
[但し、R: −(CH2)3O(C2H4O)4H]
この生成物は淡黄色透明で臭いのない液体であり、ポリオキシエチレンの含有量は16重量%であり、粘度は150mm2/sであった。この合成サンプル1をシリコーンとの相溶性試験及び洗浄性試験に供した。
【0015】
(合成例2 無臭化ポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンの合成)
内容積7リットルの反応器に下記の平均組成式(5)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン250重量部と、
【化3】
下記の平均組成式(6)で示されるポリオキシアルキレン化合物
CH2=CHCH2O(C2H4O)22(C3H6O)22(CH2)3CH3・・・・・・・・・・・・(6)
670重量部及びエタノール3,500重量部を混合し、これに塩化白金酸2重量%含有のエタノール溶液0.2重量部を加え、溶剤の還流下に5時間反応させた。続いて無臭化処理を行うため加圧容器に上記反応済みの溶液を仕込み、10%Pd-Cを220g投入し、水素ガス0.5MPaを吹き込みながら120℃/3時間反応させた。反応物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、続いて濾過して、下記の平均組成式(7)で示される目的物を得た。
【化4】
[但し、R: −(CH2)3O(C2H4O)22(C3H6O)22(CH2)3CH3]
この生成物は淡黄色透明で臭いのない液体であり、ポリオキシエチレンの含有量は30重量%であり、粘度は2,000mm2/sであった。この合成サンプル2をシリコーンとの相溶性試験及び洗浄性試験に供した。
【0016】
(合成例3 無臭化ポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンの合成)
内容積10リットルの反応器に下記の平均組成式(8)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン1,000重量部と、
【化5】
下記の平均組成式(9)で示されるポリオキシアルキレン化合物
CH2=CHCH2O(C2H4O)5H…………………………(9)
157重量部及びエタノール4,500重量部を混合し、これに塩化白金酸2重量%を含有するエタノール溶液0.2重量部を加え、溶剤の還流下に5時間反応させた。続いて無臭化処理を行うため加圧容器に上記反応済みの溶液を仕込み、続いて10%Pd-Cを280g投入し、水素ガス0.5MPaを吹き込みながら120℃/3時間反応させた。反応物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、続いて、濾過して下記の平均組成式(10)で示される目的物を得た。
【化6】
[但し、R:−(CH2)3O(C2H4O)5H]
この生成物は淡黄色透明で臭いのない液体であり、ポリオキシエチレンの含有量は11重量%であり、粘度は180mm2/sであった。この合成サンプル3をシリコーンとの相溶性試験及び洗浄性試験に供した。
【0017】
(合成例4 無臭化ポリオキシアルキレンアルキルエーテル変性シリコーンの合成)
内容積3リットルの反応器に下記の平均組成式(11)で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン500重量部と、
【化7】
下記の平均組成式(12)で示されるポリオキシアルキレン化合物
CH2=CHCH2O(C2H4O)10H………………………(12)
457重量部及びエタノール650重量部を混合し、これに塩化白金酸2重量%を含有するエタノール溶液0.1重量部を加え、溶剤の還流下に5時間反応させた。続いて無臭化処理を行うため加圧容器に上記反応済みの溶液を仕込み、続いて10%Pd-Cを100g投入し、水素ガス0.5MPaを吹き込みながら120℃/3時間反応させた。反応物を減圧下で加熱して溶剤を溜去し、続いて、濾過して下記の平均組成式(13)で示される目的物を得た。
【化8】
[但し、R:−(CH2)3O(C2H4O)10H]
この生成物は淡黄色透明で臭いのない液体であり、ポリオキシエチレンの含有量は42重量%であり、粘度は400mm2/sであった。この合成サンプルをシリコーンとの相溶性試験に供した。
【0018】
(実施例1及び比較例1~2、相溶性試験)
下記段落[0020]に記載されているシリコーン及び前記で得られた合成例1~4のシリコーン系界面活性剤を下記表1に記載された割合で混合して得た各組成物について、相溶性を目視観察し,その結果を表1に示した。なお、相溶性は下記の基準で評価した。
○:相溶した、×:相溶しなかった。
【0019】
【表1】
【0020】
D5:オクタメチルシクロペンタシロキサン
M2D:オクタメチルトリシロキサン
M2D2:デカメチルテトラシロキサン
M2D3:ドデカメチルペンタシロキサン
M3T:トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン
【0021】
(実施例2及び比較例3、洗浄性試験)
1gの食用油もしくは醤油を付着させたポリエステル布または綿布(15cm×15cm)を表1の組成物1〜8の組成物及び比較例3の組成物の各1リットル中に浸し、錨型攪拌羽で、40℃で15分間,100rpmで攪拌、洗浄した。洗浄後、遠心脱水機で脱水後、60℃の乾燥機で1時間かけて乾燥した。乾燥後の被洗浄物の洗浄結果を表2〜3に示した。
洗浄効果の評価は目視で付着物(汚れ)の残存の有無を洗浄性として評価し、風合い及び溶剤臭(残臭)については官能性試験により評価した。なお、食用油を付着させた場合の洗浄試験結果を表2に示し、醤油を付着させた場合の洗浄試験結果を表3に示した。洗浄後の素材の変色および変質はいずれの揚合も観察されなかった。
洗浄効果(目視)、風合い、残存溶剤臭の有無は下記の基準で評価した。
○:食用油もしくは醤油が全く残存せず、×:食用油もしくは醤油が若干残存している。
風合い(感触) ○:良好、×:悪い。
溶剤臭 ○:臭いなし、△:やや臭いあり、×:臭いあり。
【0022】
(比較例3)
石油系炭化水素溶剤のブライトソル[昭和シェル石油(株)製商品名]99.5重量%と石油系炭化水素溶剤用の界面活性剤オリジンMS[花王(株)製]0.5重量%からなる組成物を比較例3の組成物として洗浄性試験に供した。
【0023】
(実施例3、水分離性試験)
栓付き50ミリリットルのメスシリンダーに水15ミリリットル及び下記(表4)のシリコーン洗浄剤組成物9〜13の組成物各15ミリリットルを入れ、1分間振蕩後、静置して分離性を目視観察し、下記の基準で評価し、結果を表4に示した。
○:3分以内に分離した。 △:分離に5〜20分を要した。
×:分離に20分を超える時間を要した。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
【表4】
【0027】
【発明の効果】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物及びこれを使用するドライクリーニング方法は油脂汚れ及び水溶性汚れの除去性能が良好で、その組成物は安全性に優れ、衣類への残留溶剤臭が少なく、仕上がった衣類の風合いが良好で、オゾン層を破壊することがなく、皮膚刺激性も少なく、衣類のドライクリーニング用洗浄剤組成物として好適である。
Claims (5)
R 1 p R 2 q SiO (4-p-q)/2 …………(1)
[R 1 は脂肪族不飽和結合を有しない置換または非置換の炭素数 1 〜 10 の 1 価炭化水素基、 R 2 は一般式− C f H 2f O(C g H 2g O) h R 3 で示される有機基、 R 3 は水素原子もしくは脂肪族不飽和基を有しない置換又は非置換 1 価炭化水素基またはアセチル基である。 f は 2 〜 6 の整数、 g は 2 〜 4 の整数、 h は 1 〜 200 の整数である。p及び q はそれぞれ 0 ≦ p<3.0 、0 <q<3.0 であり、 0< ( p+ q)≦ 3.0 を満たす正数である ]
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