JP3740566B2 - 発泡耐火積層体及びその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な発泡耐火積層体及びその形成方法に関する。
【0002】
【従来技術】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等によって高温に晒された場合には、これら構造物の鉄骨及びコンクリートの物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、耐火性塗材を基材である鉄骨等に塗付し、基材の温度上昇を遅延させ、物理的強度の低下を一時的に抑える方法が採られている。
【0003】
その代表的な方法としては、例えばセメント等の無機質バインダーに 1)ロックウール、アスベスト、ガラス繊維等の無機質繊維状物質、2)パーライト、バーミキュライト等の軽量骨材、3)結晶水を含有する無機質粉体等を適宜混合し、水と混練し、ペースト状又はスラリー状とした塗材組成物を基材表面に厚付する湿式耐火被覆方法が知られている。
【0004】
しかし、この塗材組成物では、使用する材料の種類にもよるが、例えば鉄骨鉄筋コンクリート構造物の柱、梁等に対する1時間耐火性能(標準加熱曲線において1時間加熱した場合、鋼材温度が平均で350℃以下、最高温度で450℃以下であること)でみると、約20〜40mmという被覆厚みが必要となり、かなりの厚付が要求される。
【0005】
このため、比較的大量の資材を建築現場に搬入しなければならず、作業上・コスト上の負担が大きい。また、冬季等の乾燥しにくい条件下では塗材組成物の乾燥に時間を要する。また、厚付のため施工部が基材から大きくに突出し、外観上圧迫感を与えるおそれもある。さらに、厚付けとなればそれだけ被覆層の剥離、脱落等が生じやすくなるという問題もある。従って、より軽量な塗材組成物の開発が必要とされている。
【0006】
基材に耐火性を付与する他の方法として、火災等の温度上昇に伴い塗膜が発泡し、これによって基材に耐火性を与える発泡耐火塗料を各種の手法により基材に塗付する方法が知られている。発泡耐火塗料は、温度上昇により分解して不燃性ガスを発生する発泡成分と、炭素化して多孔質の炭化層を形成する成分とを含有している。すなわち、不燃性ガスの発生により火災の消火効果を発揮するとともに、炭素化成分による多孔質炭化層の形成によって断熱効果を発揮するものである。
【0007】
この発泡耐火塗料によれば、平常時の塗膜は通常数mm以下と薄くても、火災時における加熱等により数倍〜数十倍の倍率で発泡して有効な断熱層を形成できる。従って、湿式耐火被覆塗材に比べて塗膜は極端に薄くでき、圧迫感も少なく、すっきりとした感じに仕上がるという利点がある。また、湿式耐火被覆塗材に比べて使用材料が少なくて済み、作業上の問題等も解消できる。
【0008】
最近では、乾式シートによる耐火被覆も行われている。これは、予め用意された乾式シートを基材に被覆する方法である。この乾式シートとしては、例えば不燃性の繊維類を不織布状にしたもの、不燃性の不織布、織布等の布状物に発泡耐火塗料を含浸させたもの、アルミ箔等の不燃性物をシート状にしたものの上に発泡耐火塗料を積層したもの等が知られている。これら乾式シートは、いずれも厚み管理が容易であり、また養生等も必要ないことから、幅広く実用化されつつある。このような乾式シートによる耐火被覆のうち、特に施工時には厚みが少なく、火災時には発泡して炭化層を形成するタイプの発泡耐火シートが脚光を浴びている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら発泡耐火塗料又は発泡耐火シートを構成する成分は、必須成分として親水性の高いものを使用しなければならないため、形成された発泡耐火層は降雨、結露等により劣化が経時的に進行しやすく、その耐久性(特に耐水性)は十分なものとは言えない。かかる劣化が進行すれば、本来の発泡が行われず、当初設計していた耐火性能が発揮できなくなる。
【0010】
これに対し、発泡耐火層の耐久性を向上させるために、発泡耐火層上に保護仕上層をさらに設ける方法が提案されている。ところが、発泡耐火層の上に保護仕上層を設けた場合、保護仕上層が発泡耐火層の発泡炭化を阻害し、かえって耐火性能を損なわせる結果を招くことがある。
【0011】
従って、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、耐久性・耐候性に優れ、長期にわたり良好な耐火性能を発揮できる発泡耐火積層体を提供することを主な目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡耐火層上に特定の保護層を積層して一体化することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の発泡耐火積層体及びその形成方法に係るものである。
【0014】
1.発泡耐火性を有する主材層上に、樹脂成分及び顔料を含む保護層を積層してなる積層体であって、かつ、当該保護層の顔料容積濃度が10%以上であることを特徴とする発泡耐火積層体。
【0015】
2.発泡耐火塗料により主材層を基材上に形成させた後、樹脂成分及び顔料を含み、かつ、顔料容積濃度が10%以上である保護層を積層することを特徴とする発泡耐火積層体の形成方法。
【0016】
3.発泡耐火シートを基材上に積層した後、樹脂成分及び顔料を含み、かつ、顔料容積濃度10%以上である保護層を積層することを特徴とする発泡耐火積層体の形成方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明の発泡耐火積層体は、発泡耐火性を有する主材層上に、樹脂成分及び顔料を含む保護層を積層してなる積層体であって、かつ、当該保護層の顔料容積濃度が10%以上であることを特徴とする。
【0019】
1 発泡耐火積層体
(1)主材層
本発明の発泡耐火性を有する主材層(以下「主材層」ともいう)は、火災等により周囲温度が所定の発泡温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものである。その成分としては、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を主成分として含有するものである。
【0020】
樹脂成分としては、例えば、ビニルトルエン−ブタジエン共重合体、ビニルトルエン−アクリル酸エステル共重合体、ビニルトルエン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、あるいはこれらの共重合体を構成する2種のモノマーとアクリル酸モノマー、メタクリル酸モノマー等との三元共重合体等の樹脂が挙げられる。この場合において、アクリル酸エステル成分又はメタクリル酸エステル成分を含む共重合体中のアクリル酸モノマー又はメタクリル酸モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの樹脂は。単独で又は2種以上で使用することができる。
【0021】
バインダー以外の成分として、公知の発泡耐火塗料又は発泡耐火シートにおいて用いられる成分、例えば難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤等が含まれていても良い。これらの成分は、火災発生時において、相互の複合作用により主材層の発泡、炭化層形成、不燃性ガス発生等の機能を発現するものである。
【0022】
難燃剤は、一般に火災時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、バインダー炭化促進効果等の少なくとも一つの効果を発揮し、バインダーの燃焼を防止ないし抑制する作用を有する。難燃剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火塗料又は発泡耐火シートにおける難燃剤と同様のものが使用できる。例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。
【0023】
本発明では、特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。ポリリン酸アンモニウムを使用する場合には、脱水冷却効果と不燃性ガス発生効果とを特に良好に発揮できるので難燃効果が高く、しかも発泡剤の含有量を削減できる効果もあり、これらの点において他の難燃剤よりも有利である。
【0024】
発泡剤は、一般に、火災時に不燃性ガスを発生させて、炭化していくバインダー及び炭化剤を発泡させ、気孔を有する炭化断熱層を形成させる役割を果たす。発泡剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火塗料又は発泡耐火シートにおける発泡剤と同様のものも使用できる。例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。これらの中では、メラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が、不燃性ガスの発生効率に優れていることから好ましい。特にメラミンがより好ましく使用することができる。
【0025】
炭化剤は、一般に、火災によるバインダーの炭化とともにそれ自体も脱水炭化していくことにより、断熱性により優れた厚みのある炭化断熱層を形成する作用を有する。炭化剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火塗料又は発泡耐火シートにおける炭化剤と同様のものが使用できる。例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール;デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上で使用することができる。
【0026】
本発明では、特にジペンタエリスリトールが、脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。
【0027】
充填剤は、一般に、炭化断熱層の強度を改善し、かつ、耐火性を高める作用を有する。充填剤は、かかる作用を有する限り特に制限されず、公知の発泡耐火塗料又は発泡耐火シートにおける充填剤と同様のものが使用できる。例えば、タルク等の珪酸塩;炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩;酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;粘土、クレー、シラス、マイカ等の天然鉱物類等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上で使用することができる。これらの充填剤中では、二酸化チタンがより好ましい。
【0028】
各成分の配合比率は、火災発生時に発泡が良好に行われて、所望の断熱性を有する炭化断熱層を形成し得る限り特に限定されないが、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200〜600重量部、発泡剤40〜150重量部、炭化剤40〜150重量部、及び充填剤50〜160重量部とすれば良い。この範囲内においては、特に、炭化断熱層の発泡倍率が高く、発泡が均一であり、しかもより優れた断熱効果、強度等を得ることができる。
【0029】
本発明では、これらの成分以外にも、必要に応じて補強用繊維、着色用顔料等を適宜配合できる。補強用繊維としては、ロックウール、ガラス繊維、シリカーアルミナ繊維、カーボン繊維等の無機繊維、あるいはパルプ繊維、ポリプロピレン繊維、ビニル繊維、アラミド繊維等の有機繊維が挙げられる。
【0030】
また、着色顔料としては、一般の塗料顔料(有機顔料・無機顔料)が使用できる。本発明では、特にベンガラ、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、クロムグリーン、群青、コバルトブルー等の無機顔料が好ましい。さらに、耐火性能をより高めるために膨張性黒鉛、未膨張バーミキュライト等を配合しても良い。
【0031】
さらに、本発明では必要に応じて、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、塩素化パラフィン等の可塑剤を添加しても良い。但し、可塑剤の添加量が増加すると耐汚染性が低下するおそれがあるので、その添加量は可能な限り少なくすることが好ましい。
【0032】
主材層の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は0.2〜5mm程度、好ましくは0.5〜2mmとする。0.2mm未満の場合には、十分な耐火性能が得られないことがある。また、5mmを超える場合は、厚みに相当するだけの耐火性能の向上が十分得られないことがある。但し、必要に応じて5mmを超える厚みとしても差し支えない。
【0033】
(2)保護層
本発明における保護層は、樹脂成分及び顔料を含み、かつ、当該保護層の顔料容積濃度(PVC)10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。本発明において、顔料容積濃度は、顔料の容積が塗膜総容積中に占める割合を示す。顔料容積濃度が10%未満の場合は、主材層の発泡を阻害するため、十分な耐火性能が得られないことがある。なお、顔料容積濃度の上限は、通常80%程度とすれば良い。
【0034】
樹脂成分としては、特に制限されず、公知のもの又は市販品も使用できる。例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂、ケイ素系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。このうち、特に耐水性及び耐候性等に優れるという点でアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等が好ましく使用される。塗膜中の樹脂成分の含有量は、顔料容積濃度が10%以上となるように適宜設定すれば良い。
【0035】
本発明では、保護層が、主材層の発泡温度(通常270〜350℃に設定)よりも高い熱分解温度を有するような樹脂成分も好適に採用することができる。かかる樹脂成分は、一般に耐久性・耐候性に優れており、長期にわたり良好な耐火性能を発揮できる発泡耐火積層体を好適に製造できる。従って、本発明では、熱分解温度が主材層の発泡温度よりも5℃以上高い、特に10℃以上高い保護層を設けることもできる。例えば、主材層の発泡温度が330℃であれば、熱分解温度が340℃である保護層も採用することができる。これにより、本発明では、保護層の熱分解温度を高める傾向にある熱硬化性樹脂も使用することが可能となる。
【0036】
ここに「保護層の熱分解温度」とは、未発泡時の主材層上に形成された保護層の主構成成分である樹脂成分の分子結合がほぼ開裂する温度に相当するものである。このような保護層の熱分解温度は、未発泡状態の保護層について熱重量分析装置により熱重量曲線を描かせ、その熱重量曲線の急激な減少部分の発生温度から測定することができる。
【0037】
顔料としては、特に限定されず、公知のもの又は市販品も使用できる。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体質顔料が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。
【0038】
また本発明の顔料には、骨材等も包含される。骨材としては、特に限定されず、公知のもの又は市販品も用いることができる。従って、天然石の粉砕物、着色骨材等も使用することができる。例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器・セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等又はこれらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用することができる。
【0039】
本発明の保護層では、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて各種の添加剤が含有されていても良い。例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0040】
保護層の厚みは、主材層又は保護層の種類、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は少なくとも10μm以上、好ましくは20μm以上とする。10μm未満の場合には、耐久性、耐候性等が不十分となることがある。
【0041】
(3)仕上層
また、本発明では、必要に応じて保護層上に仕上層をさらに積層させることもできる。仕上層の形成により、主材層の経時的な劣化進行をより効果的に抑制し、耐火性能を維持する役割を担うとともに、美観を付与することができる。従って、仕上層を構成する主な成分としては、主として上記機能を有するものであれば特に限定されることなく使用できる。
【0042】
仕上層としては、通常、樹脂成分及び顔料を主成分とすることができるが、樹脂成分のみで構成されるクリヤー層であっても良い。また、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。これら樹脂成分、顔料、添加剤等は、保護層で用いる成分と同様のものを採用できる。
【0043】
仕上層の厚みは、主材層、保護層又は仕上層の種類、適用部位等により適宜設定すれば良いが、通常は少なくとも10μm以上、好ましくは20μm以上とする。10μm未満の場合には、耐久性、耐候性等が不十分となることがある。
【0044】
2 発泡耐火積層体の形成
本発明の発泡耐火積層体は、いずれの方法でも形成することができる。各層の形成は、基本的には、各層の必須成分を含む塗料を調製し、その塗膜を形成させることにより実施することができる。例えば、上記塗料を用い、スプレーガン、エアレススプレーガン、ローラー塗り、刷毛塗り、圧送機による吹付塗装、コテ塗り等の公知の塗装方法により塗布し、乾燥すれば主材層、保護層又は仕上層を形成することができる。塗料の調製に際し、必要に応じて希釈用溶剤を用いることもできる。このような溶剤として、各成分と反応を起こさず均一な塗料を調製できる限り特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;ケトン類、グリコールエステル類、ミネラルスピリット等の脂肪族系溶剤等が挙げられる。塗料は、常法に従って調製することができる。例えば、樹脂成分を混合タンク内に投入し、ディゾルバー等により撹拌しつつ、他の成分を順次投入することにより塗料を調製することができる。
【0045】
特に、主材層については、上記のように塗料組成物を基材上に塗付することにより形成することもできるが、予めシート状に加工したものも用いることができる。塗料組成物で形成する場合は、形状の複雑な部分であっても被覆することができる。一方、シートの形態で形成する場合は、厚み管理が容易で、養生等が不要となる。
【0046】
従って、本発明の発泡積層体は、例えば、発泡耐火塗料により主材層を基材上に形成させた後、上記保護層を積層したり、あるいは発泡耐火シートを基材上に積層した後、上記保護層を積層することにより発泡耐火積層体を形成できる。また、発泡耐火シートを用いる場合は、発泡耐火シートを基材上に積層するに先立って、予め発泡耐火シート上に保護層を形成することもでき、必要に応じてさらに仕上層も形成することができる。このように、本発明では、上記発泡積層体を構成できる限り、いずれの順序で各層を形成しても良い。
【0047】
基材としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄骨(柱、梁等)、間仕切壁、耐火扉、耐火金庫、トンネル内壁、燃料タンク、溶剤貯蔵タンク、ガス・石油パイプライン又はこれらの支持体;モーター、ポンプ、発電機等の火花が発生する可能性のある設備の防護カバー;防火区画の貫通部のシール材、電線等が挙げられる。これらの中でも、特に金属で形成されている部位、例えばH鋼、鉄骨丸柱、鉄骨角柱等においては、防錆処理として予め防錆塗料を塗付しておくのが好ましい。また、本発明の発泡耐火積層体は、コンクリート・金属だけでなく、木質部材、樹脂系部材等への適用も可能である。
【0048】
本発明の発泡耐火積層体は、耐火性能向上のために、耐火性材料に積層することも可能である。耐火性材料としては、例えば、けい酸カルシウム板、パーライトセメント板、石膏ボード、ロックウール板、グラスウール保温板、石綿スレート板、気泡軽量コンクリート板、気泡モルタル板、気泡石膏ボード、軽量コンクリート板、セメント系押出成形板、無機系サイディング、金属サイディング、等の成形板、あるいはロックウール、セラミックウール、グラスウール、スラグウール等からなるシート、マット、ブランケット等が挙げられる。発泡耐火積層体は、公知の方法に従って耐火性材料上に積層すれば良い。
【0049】
また、防火性を向上させる目的で、有機系断熱材に積層することも可能である。有機系断熱材としては、例えばポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム又はこれらと金属箔、無機成形板等の面材とを一体化したもの等が挙げられる。発泡耐火積層体は、公知の方法に従って有機系断熱材上に積層すれば良い。
【0050】
【作用】
本発明では、特に保護層の形成により、主材層に耐久性・耐候性を付与することができる。その一方で、保護層は、主材層の発泡炭化を妨げることなく、本来の耐火性能を発揮することができる。その結果、長期にわたって良好な耐火性能を維持することが可能となる。
【0051】
加熱時に、本発明の保護層が主材層の発泡を阻害しない作用機構については、1)温度が上昇した際に、保護層中に含まれる顔料が比較的多いので、保護層の内部応力が緩和あるいは分散されること、あるいは2)保護層中の顔料容積濃度を高めることにより、加熱下での主材層と仕上層に対する密着性を下げることができること等が関係していると考えられる。
【0052】
【発明の効果】
本発明の発泡耐火積層体によれば、主材層と保護層が一体化して積層されているので、優れた耐久性・耐候性を発揮できる結果、長期にわたり良好な耐火性能を発揮することができる。
【0053】
特に、本発明における保護層は、そのPVCが制御されている限り、主材層の発泡を妨げないので、保護層中の樹脂成分の種類が限定されることなく使用可能となる結果、耐候性・耐久性に優れた樹脂成分を採用できる。これにより、長期にわたり所望の発泡耐火性能を維持することができる。
【0054】
さらに、本発明で仕上層を採用する場合には、主材層の経時的な劣化進行をより効果的に抑制できる。また、仕上層の形成により、美観の向上にも寄与することができる。
【0055】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0056】
実施例及び比較例
アクリル系樹脂100重量部、メラミン87重量部、ジペンタエリスリトール87重量部、ポリリン酸アンモニウム315重量部、酸化チタン52重量部を主成分とする、膜厚1.5mmの発泡耐火シートを主材層として作製した。この主材層の発泡温度を熱機械分析装置「TMA8140C」(理学電機(株)製)にて測定したところ、300℃であった。
【0057】
この発泡耐火シート上に、表1に示す保護層用塗料、仕上層用塗料を順にそれぞれ塗付量0.15kg/m2にて塗付し、室温にて7日間養生させて発泡耐火積層体を得た。なお、保護層及び仕上層の熱分解温度は、熱重量分析装置「TG8101D」(理学電機(株)製)を用いて測定した。
【0058】
得られた発泡耐火積層体の裏面(発泡耐火シート)にアクリル系接着剤を塗付し、熱間圧延鋼板(300mm×300mm×2.3mm)に取り付け、室温にて24時間養生し試験体とした。
【0059】
【表1】
【0060】
作製した試験体をJIS A 1304 「建築構造部分の耐火試験方法」の4.「加熱等級;付図1」に規定する標準曲線に基づいて、加熱炉にて試験体を加熱昇温し、熱間圧延鋼鈑の平均裏面温度が550℃に達した時点での経過時間(分)を耐火性能とし、また、その試験体について、加熱前の膜厚に対する発泡倍率を測定した。保護層及び仕上層の組み合わせ及び試験結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1〜3は、本発明の発泡耐火積層体であり、耐火性能に優れていた。これに対し、比較例1及び2は保護層の顔料容積濃度が低く、十分な耐火性能が得られなかった。
Claims (9)
- 発泡耐火性を有する主材層上に、樹脂成分及び顔料を含む保護層を積層してなる積層体であって、かつ、当該保護層の顔料容積濃度が30%以上であり、前記保護層が、主材層の発泡温度よりも高い熱分解温度を有することを特徴とする発泡耐火積層体。
- 当該保護層の顔料容積濃度が30〜80%である請求項1に記載の発泡耐火積層体。
- 樹脂成分がアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、エポキシ系樹脂及びフッ素系樹脂の少なくとも1種である請求項1又は2に記載の発泡耐火積層体。
- 保護層上に仕上層がさらに積層されている請求項1〜3のいずれかに記載の発泡耐火積層体。
- 発泡耐火塗料により主材層を基材上に形成させた後、樹脂成分及び顔料を含み、かつ、顔料容積濃度が30%以上であり、前記主材層の発泡温度よりも高い熱分解温度を有する保護層を積層することを特徴とする発泡耐火積層体の形成方法。
- 当該保護層の顔料容積濃度が30〜80%である請求項5に記載の発泡耐火積層体の形成方法。
- 発泡耐火シートを基材上に積層した後、樹脂成分及び顔料を含み、かつ、顔料容積濃度が30%以上であり、前記主材層の発泡温度よりも高い熱分解温度を有する保護層を積層することを特徴とする発泡耐火積層体の形成方法。
- 当該保護層の顔料容積濃度が30〜80%である請求項7に記載の発泡耐火積層体の形成方法。
- 保護層上に仕上層をさらに積層させる請求項5〜8のいずれかに記載の発泡耐火積層体の形成方法。
Priority Applications (1)
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