JP3727660B2 - ３次元の歯の像を入手するための方法 - Google Patents

Description

発明の分野と背景
本発明は、概ね歯科医学の分野に属しており、歯の外形についての３次元像を入手するための方法に関する。以下において、「歯科用の像（dental image）」という用語は、入手した３次元の歯の像を表すために使用される。
「部分的な歯科用の像（partial dental image）」という用語は、歯の表面の部分の像、例えば歯の舌側面のみの像（「舌側の像（lingul image）」）、または歯の頬側面のみの像（「頬側の像（buccal image）」）を表すために使用される；「局部的な歯科用の像（sectional dental image）」という用語は、歯の局部の像、すなわちすべての歯を含まないものを表すために使用される。
歯科用の像を得ることは、例えば歯列矯正器の設計（デザインブレース）、冠（クラウン）など治療の意思決定をするため、また矯正治療の監視を可能にするため、多くの歯科および特に矯正処置にとって重要なことである。通常は、現行の方法に従って、適当な母型に歯の印象を得て、その印象から、通常、石膏の歯のポジ模型を準備する。そのような歯の模型は、それ自体しまって置くことができるし、写真に撮ることもでき、走査してコンピュータなどにディジタル方式で記憶さすこともできる。３次元の歯の像を走査したり、ディジタル化することは、比較的複雑な手順である。多くの方法が提案されてきており、それには頭蓋に固定する結像装置の一部を形成するポケット探針（プローブ）によって歯を直接走査することも含まれているが、しかし、そのような手順が広く行き渡って使用されることは難しい。
1989年10月5日発行されたDE-A1-第3810455号は、凹凸のある物体、特に歯の３次元像を入手するための装置を開示しており、その装置は、反射鏡および光学的受像器からなる光学装置を具備し、その光学装置で歯を走査することにより３次元像が得られる。
1990年1月19日の米国特4,935,635号は、３次元の歯の物体を入手するのに特に使用するつもりで、３次元測定装置を開示している。この装置は、レーザ・ダイオードを備え、そのレーザ・ダイオードは、三角法で測定する光線を、描こうとする物体の表面に発射して、その光線が表面全域を繰り返し走査する。三角法で測定することにより、Ｘ軸、すなわち奥行の情報が得られ、且つ相互関係を明らかにすることにより、走査線に沿う走査装置の位置で特定の箇所が、Ｙ軸の情報、すなわち幅方向の情報を与える。走査装置およびダイオードは、滑り面または台に装着され、それらは、「Ｙ」軸上を口腔内外においてステッパ−電動機による駆動で移動し、ステッパ−電動機の監視された位置は、各場所におけるその他の情報と調整され、Ｘ軸の情報をもたらす。
米国ニューヨークの1999１年のMedical ImagingのIEEE Transactionsの10の（3）453頁〜461頁にLaurendeau，D.他が、歯科用の像の入手および処理のためのコンピュータの映像技術を開示している。この文書によれば、標準的な３次元の歯のワックスの像を準備し、光学的に同時に両側面を走査して、それにより３次元の歯の像が得られる。
1993年8月24日の米国特許第5237988号は、歯列弓の像の３次元の相互関係を開示しており、それは咬合位置の印象を使用し、３つの互いに間隔をおいた基準点の形式に基準を提供している。その印象により３次元の観察をすることができ、その印象を移動させて、また基準点が得られ、観察もできる。基準点の像を基礎として使用し、次に相互関係を観察して、画一的な基準方式ができあがる。
1995年1月18日に発行されたEP-A1-第634150号は、歯または架工義歯（ブリッジ）の製作のための補助器具を開示している。この刊行物によると、模型は、回転保持器に配置され、回転の間、その模型は、ある角度を持つ走査装置により走査される。
発明の概要
本発明は、歯科用の像を入手するための新しい方法を提供することを目的とする。
以下の本文において、「歯の模型（teeth model）」という用語は、固体母型の有形の３次元である歯の表示を表すために使用される。その模型は、歯の複製、すなわちそれぞれの歯が、対応する歯に対し大きさ、形状が一致する外形を有する突起または***により表示される模型からなる「歯のポジ模型（positive teeth model）」であってもよいし：あるいはそれぞれの歯が、対応する歯の外形に対し大きさは一致するが、形状が反対である外形を有する空洞部または凹部により表示される「歯のネガ模型（negative teeth model）」であってもよい。
本発明は、３次元のコンピュータ処理された歯の像を得るための新しく且つ独特な考え方から生み出されている。本発明によれば、有形の３次元の歯の像を、最初に準備し、次にそれに制御破壊を加え、各段階で模型の１部分を除去するという段階を追う方法で進行する。そのような各段階で、像を、模型の除去部分または残存部分のいずれかから取り、かくして、多くの連続するディジタル像を得る。次に、異なった連続する像の間の関係に関するパラメータに、とりわけ、基礎をおいて、連続するディジタル像を適切に組み合わせることにより、歯の３次元のディジタル像を得る。
本発明は、歯の３次元像である歯科用の像を得る方法を提供するものであり、その方法は：
（ａ）顎の概ねすべての歯について、歯の境界に対応する境界を持つ多数の空洞部または凹部を有する母型をからなる歯のネガ模型を提供し；、該歯のネガ模型が、母型を切断できる切断工具により切断可能な物質で作られる堅固な母型保持部で保持され；
（ｂ）層部分を選択面から除去し、該選択面は、歯の頂部または歯の基部に対応する歯の模型の面であり、該層を平坦面を得るため前記切断工具で除去して、そして平坦面についての、または除去部分についての最初の２次元のディジタル像を入手し；
（ｃ）新しい平坦面を得るため、もう１つの層部分を選択面から除去し、また新しい平坦面についての、または除去部分についての連続する２次元のディジタル像を入手し；
（ｄ）歯の前記模型の層部分を充分に除去するまで多数回の段階（ｃ）を繰り返して歯科用の像を入手することができ、
（ｅ）前記最初の像においても、また前記連続する各像においても、前記歯のネガ模型の場合、その空洞部または凹部の境界を決定して、最初およびその後の像の多数の境界の表示を入手し；
（ｆ）少なくとも幾つかの前記境界の表示を３次元の歯科用のディジタル像に組み合わせる
ことからなる。
本発明の方法によれば、歯の印象からなる歯のネガ模型は、最初、歯科医や歯科技工士などにより準備される。歯の印象が得られた母型を、本明細書では「印象母型（impression matrix）」と呼ぶこととする。この歯のネガ模型を、それ自体でこの方法で使用してもよいし、あるいは代わりに、歯のポジ模型を準備するために使用してもよい。本発明の方法によれば、歯のポジ模型の使用もまた、本発明の実施可能な実施例ではあるが、歯のネガ模型の使用が、現時点では好ましい実施例である。必要な変更を加えた上で、同じ方法で、本発明が、歯のポジ模型を使用して実施できることは、熟練者にとってよく分かっていることではあるが、以下、本発明について、主として歯のネガ模型の使用に関連して述べることとする。
歯の模型を準備した後、その模型は、最初の平坦面を模型の表面のうちの１面で得るように先ず処理される（「選択面」（face of choice））。選択面は、歯の頂部に対応する面でもよいし、または歯の基部に対応する面でもよく、すなわち歯の模型の一般的な向きに関して水平な向きを有する。また、選択面は、模型の側面、背面または正面の内の１つの面に垂直でもよいし、模型の前述の水平の向き、または垂直の向きの間の中間の向き、すなわち斜めの向きを持っていてもよい。
最初の像を入手した後、次の層部分を除去し、そして再び１つの像を入手する。通常、除去しようとする部分は、その後に露出する平坦面が先の面に対して平行であるようにする。しかしながら、このことは本質的でなく、連続して露出する平坦面が、互いに関して僅かに異なった斜めの向きを有するように模型を処理することはまた、本発明の方法の実施例によって可能である。
異なった平坦面の像が、それぞれそのような面として、空洞部または凹部の境界を、若しくは突起または***の境界を提供するというような場合があるかもしれない。除去した層のそれぞれの厚さに関する公知のパラメータを基礎として（各平坦面が、前の平坦面と僅かに異なった向きを持っている時もまた、向きのそのような変化に関する公知のパラメータを基礎として）、且つ連続する像についてのコンピュータ処理の組み合わせによって、歯全体の３次元のディジタル像を得ることができる。
層の除去、得た平坦面の像の入手などの処理を、模型全部を処理する深さまでこの方法で先行してもよい。しかしながら、時には、そのような深さまで処理する必要はないかも知れないし、またその処理を、層を充分除去した後に、終わらしてもよい。これは、例えば歯の頂部のみ、または歯の基部のみの模型をとることを希望する場合；あるいは層部分の除去が、歯の局部全体をカバーするような深さに達するまで模型の側面から先行する場合などである。
上述の好ましい実施例（そこでは、３次元像が歯のネガ模型を処理して得られる）によれば、境界をよりよく見ることができるように、印象母型に歯で印象された空洞部または凹部の壁が、対比して目立つ色で彩色されてもよく、または代わりに空洞部や凹部が、染料または適切に彩色した硬化物質（硬化物質の色彩は、境界をはっきり見ることができるように、印象母型の色と比べて異ならなければならない）により充填されてもよい。硬化物質は、硬化した時、本質的に印象母型と同じ程度の硬さを持つことが好ましい。
本発明の実施例によれば、歯のネガ模型または歯のポジ模型のいずれかの平面像を入手するというよりむしろ、薄片を注意深く除去して、次いで、その薄片の像を入手する。
本発明の方法の実施に利用される装置により入手する像は、完全な歯科用の像であってもよいし、または部分的な歯科用の像、例えば舌側の像または頬側の像であってもよい。さらに、入手する像はまた、歯の局部、例えば上部の右部分または上部の左部分の歯科用の像であってもよいし、若しくは全体的に局部についてすべての歯の像、または単に局部的な像などであってもよい。
実際の歯科用の像を得るために各段階で除去する層は、比較的薄く、例えば約0.05〜0.2mmでなければならないことに留意すべきである。
よくわかるように、上述の方法において、境界決定の段階である段階（ｅ）は、像の入手後直ちに、本質的に同時に実施するか、または像をすべて入手した後、時間をおいて実施するかのどちらでもよい。
本発明によれば、歯の印象を得るため、且つ歯の印象を容れている母型を保持する一方、薄片を前記装置において母型から除去するため、新しい工具を作って使用することが好ましい。一方、上述の方法中で、この工具を使用することは、方法についての好ましい装置例であり、それはまた、この工具は、印象母型を保持するための凹部を備える母型保持部を具備し、その凹部が、母型に歯のネガ印象を形成するため、印象母型の中に歯またはその部分を浸漬できる一般的な形状を有し、前記母型保持部が、母型を切断できる切断工具により切断可能な物質で作られる。本発明の方法の実施に利用する装置例によれば、工具は、その全体が、または少なくともその母型保持部が、切断工具により切断可能な物質で作られる。そのような物質は、例えばスタイロフォームでもよい。他の実施例では、その工具は、基部に固定される母型保持部を持つ堅い基部を具備する。堅い基部を具備する工具は、段階を追う層部分の除去が基部と平行な向きであるときに役立つものである。
母型保持部を、完全な歯の印象を得ることができるように設計してもよい。また、部分的な歯の印象、例えば歯の舌側面のみ、または歯の頬側面のみの印象を得るための母型保持部を設計することもできる。さらに、母型保持部を、局部的な歯の印象のみを得るように設計してもよい。
本発明の実施例によれば、上下顎の両方の歯の歯科用の像のみを同時に得るために、基部は、基部の背中合わせの側に固定される２つの母型保持部を保持する。
以下、本発明について、添付の図面を時々参照しながら、幾つかの特定の制限されない実施例と関連して図示することとする。
【図面の簡単な説明】
図面において：
図１は、上顎または下顎のいずれかの歯の完全な印象を得るための本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具の等角図であり；
図２は、母型に固定された歯の印象を持つ印象母型を容れた図１の工具を示し；図３は、図２の工具の平面図であり；
図４Ａは、図２の工具で続行されるブロックから水平層を薄く切り取る方法についての略図であり；
図４Ｂ−４Ｅは、図４Ａの向きと異なった向きでブロックから層を薄く切り取る方法についての略図であり；
図５は、母型に固定された歯の印象を持つ印象母型を容れた本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具の等角図であり；
図６は、入手した歯の外形を示し；
図７は、舌側の歯の部分の印象を得るための本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具の等角図であり；
図８は、頬側の歯の部分の印象を得るための本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具の等角図であり；
図９は、上顎および下顎の両方の歯の舌側面のネガ印象を同時に得るために役立つ本発明の実施例に基づく工具の等角図であり；
図１０は、本発明に基づく方法を実施するに当たっての操作順序についての簡略ブロック図であり；
図１１は、本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく装置の簡略等角図であり；
図１２および１３は、それぞれ、図１０に示す装置の側面図および正面図であり；
図１４Ａ−Ｅは、異なった向きで層を歯の模型から切断するための工具例の一般的な略図であり；
図１５は、２次元で入手した像を３次元の歯科用の像に組み合わせるための通常のブロック図であり；
図１６Ａは、入手した２次元像を整列さすための整列機構を備えた本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具の略図であり；
図１６Ｂは、図１６Ａの工具の一部を形成する整列機構を分離した図であり；また
図１７は、整列機構と関連する電気制御の通常のブロック図を示す。
特定の実施例の説明
まず最初に、本発明の方法の実施に利用される装置例に基づく工具２０を示す図１について説明する。工具２０は、歯の像を得るために業界において従来から使用しているトレーに似た一般的な形状を備えている。工具２０は、金属、プラスチックなどのような硬質材料で作られる基部２２を具備し、その工具２０は、母型保持部２４を保持し、且つ溝のような凹部３０を間に画成する外壁部分２６と内壁部分２８とを有する。母型保持部２４は、顎の歯の配列の形状に近似する概ねＣ字のような形状を備えている。
溝３０は、全体として顎のすべての歯に順応できる形状を有しいる（溝３０が、歯と嵌合した時、歯の頂部が母型保持部の底部３２と接するか、または極めて接近し、また歯の基部が、壁部分２６および２８の上面とほぼ同一水準である）。凹部の内壁２８は、通常、ざらざらした、あるいは孔の開いた表面を持ち、そこへ印象母型を堅固に取り付けることができる。
また図１で分かるように、基部２２は、後方に伸びるフォーク状の部材３４と、２個の内側方向への突起部３６および３８とを備えている。部材３４および突起部３６および３８は、図１１〜１３と関連して下記で示されるように、薄く切り取って切断し且つ像を入手する装置の中に工具２０を固定するために使用される。歯のネガ模型を得るために、印象母型を凹部３２の中に配置し、工具を、口腔内に挿入し、歯を、印象母型に浸漬する。図２で分かるように印象母型４０の硬化後、歯とそれぞれ対応する多数の空洞部４２が母型に固定される。印象母型の硬化によって、本質的に一体的なブロック４４が、母型保持部２４と、歯のネガ模型４０を持つ硬化した印象母型とからなって形成される。図３で分かるように、この一体的なブロック４４を、上から見ると、空洞部の外形４６を、はっきりと見ることができる。
歯の外形を、硬化した印象母型から引き出すために、母型の選択面は、通常、歯の頂部と対応する面である（しかしながら、母型の任意の他の面を選ぶこともまた可能である）が、その選択面は、薄片をこの面から除去することによって先ず水平となり、本質的に平坦面を生ずる。像が入手されると、次に、連続する層を薄く切り取り、それぞれ薄く切り取った後、像が再び得られる。１実施例に基づくこの薄く切り取る操作は、図４Ａに概略示されている。ブロック４０を持つ工具２０は、水平に配置され、次に矢印４６で指し示すように、刃４８に向かってＸ方向に移動させられる。よくわかるように、工具２０を動かすというより反対方向に刃４８を移動さすことも可能である。工具２０が刃４８の通路を横切る時、工具２０の上面は、水平である。この段階で、最初の像が、ブロックの上面から入手され、次に、工具２０を、矢印４９で概略表示するように、少量の増加、例えば0.15mmだけ上方に移動させ、次に再び刃４８に向かって移動させ、それによって、層を上面から薄く切り取り、母型のより下側の層についてのもう一つの像を入手することができ、この場所の像は、歯の頂部に多少接近した水平面に対応する。
ここで再度、ブロック２０を上昇させるというより同じ上昇分だけ刃４８を下げることもまた可能であるということ分かる。
図４Ａでは、ブロック４４から連続的に除去される層は、水平、すなわち基部２２と一致する向きである。しかしながら、水平以外の他の向きで層を切り取ることもまた可能であり、限定されない幾つかの例を。図４Ｂ〜４Ｅに示すことができる。図４Ｂでは、刃が、傾斜し水平でない向きで層をブロックから薄く切り取り；図４Ｃでは、薄片を下方に傾斜した向きでブロックから切断し；図４Ｄでは、ブロックの１面から始まる異なる層を除去するように配置された刃で、ブロックを薄く切り取り；図４Ｅでは、刃が、ブロックの縦軸（Ｘ軸）に関して角度を持つ垂直層を切断するように、向いている。図４Ｂ〜Ｅでは，またブロックの基部が結局切断されるので、その基部は、刃で切断可能な物質で作らなければならないことを意味していることが分かる。これに対して、基部に平行に薄く切り取る場合の図４Ａでは、その基部は、硬い物質、例えば金属で作ってもよい。
図５は、本発明の方法の実施に利用する装置例に基づく工具５０（例えば、米国の3M unitekから商業的に入手できるスタイロフォームで作られた使い捨ての印象トレー）を描いている。工具５０は、母型保持部５１および柄部５２からなっており、それらにより、その工具を、上述のような歯の印象５３の準備の間中およびさらに処理の間中保持することができる。この工具を使用して薄く切り取る操作は、図４Ａで示した操作と同じである。この目的を達成するため、工具５０は、ブロック５４の上に配置され、例えば工具をブロック５４に接着したり、または工具５０の底端部を僅かに受容するように適合させられた調和する凹部５４に工具を配置する。明らかなように、ブロック５４は、それ自体公知の方法で机１０４（図１１で下の方を見よ）または机１３８（図１６Ａで下の方を見よ）と機械的に結合させられる。
以下に述べる像の入手および簡単な像の処理で、図６に示すような歯の外形が得られ、その多数の外形は、歯科用の像を得るため使用される。
いろいろな適用に当たって、部分的な歯科用の像、例えば舌側の像または頬側の像のみを得るだけで充分である。このことは、例えば矯正治療の監視のための場合であり、そこでは、通常、歯の頬側面が歯列矯正器によって被覆されているので、したがって他の面のみの印象を得ればよい。さらに、完全な歯の印象を得ることが常に必要とは限らず、また歯の形状が変化しないので、歯の外形および相対的な歯の位置の情報を得るためには、頬側の歯の面に舌側の印象を得るだけで充分である。
さて、舌側の歯の像を得るのに適している工具５６を示す図７について説明をする。工具５６は、基部５７を有し、その基部５７は、本質的に工具２０（図１）の基部２２と同じである。しかしながら、この工具は、母型保持部５８が工具２０と異なっており、その母型保持部５８は、この実施例によれば、２つの不揃いな壁部分５９および６０を備えており、外壁部分５９は、内壁部分６０より低い。使用に当たっては、印象母型を、溝６２の内に配置し、次に工具を、口腔内に配置し、それにより壁部分６０は、歯の舌側面に向かって押し付けられる。
図８に示す工具６４は、図７の工具５２と原理は同じであるが、頬側の歯の面の像のみを得ようとしているという点で異なる。外壁部分６６は、内壁部分６８よりも高く、そして頬側の像を得るために、工具５２に関連して使用される手順と同じ手順で、必要な変更を加えて、ここでは使用される。
さて、基部の上下面にそれぞれ固定される２つの背中合わせの印象母型保持部７４と７６とを持つ基部７２を備える歯の印象７０を得るための工具を示す図９について説明する。保持部７４および７６のそれぞれは、図７に示す工具５２の保持部５６と本質的に同じである。この工具７０は、上下の両方の顎の舌側面の歯科用の像を同時に得るのに役立つ。しかしながら、工具７０は、上顎歯と下顎歯とが、本質的に互いに部分的に重なり合ったリ、あるいはそれらの２組の歯の間に軽微なずれだけがある歯の印象を同時に得るのに適していることに、留意すべきである。人によっては、２組の歯の間にかなりの距離があるが、熟練者は、無論正しく認識できるので、その時は適切な工具を使用する必要があり、その場合、上下面の母型保持部材を、互いにずらし、そのようにずらした歯の組に対して同時に適応することができる。
多くの矯正治療では、その目的は、歯の位置または向きを変えることである。図７に示す工具６０のような工具は、当初の位置の像を得て治療の進行の監視を可能にするのに特に適している。
図１０は、本発明の方法を実施する通常のやり方についての簡略ブロック図である。上方の部分８０は、始めての像の入手に関しており；下方の部分８２は、定期的な継続管理に関する。例えば、矯正治療の開始前に始めての像を入手するに当たっては、、上顎８４、下顎８６についての完全像および両方の列８８を同時に、歯の関係位置についての完全像を入手する（２つの前者の像を、図１に示すような工具の使用により入手し；後者の像を、図７に示すような工具の使用により入手する）。本質的に同じ操作順序に従い各像を入手するので、したがって全体の像の入手方法を、３つの像すべての入手に関し同時に説明することとする。
適当な工具の使用により歯のネガ模型を入手する８９に当たって、歯の印象を備えた印象母型を持つ工具が装置に配置され、その装置は、母型から薄片を切断し、歯の印象の像を入手することができる。その順序は、上面から薄片を除去すること９０、次いで最初の像を入手すること９１から始まる。母型のブロックからの上層を薄く切り取ることおよび像を入手することについての順序は、囲み欄９２で表示されているように、層を充分に除去するまで繰り返される。繰り返えし段階９２の間に入手した個々の像を、次に処理装置の中でディジタル化して処理し９４、３次元の歯の像に組み立てること９６ができる。次に処理装置は、３つの個々の像を１つの完全な歯科用の像に組み合わす９８。かくして、得られた歯科用の像は、適当な治療、個人用の歯列矯正器の設計、架工義歯の設計、冠、人工歯根（インプラント）の形状などを計画するために使用される。
治療の進行を監視する枠組みの中では、歯の舌側面のみを得れば充分である。実際の像は、歯の位置および向きの情報を提供し、歯の３次元の構造体は、変化しないので、完全な歯の像を入手することは実際に必要でない。このため、継続管理に当たって、図７に示すような工具を使用してもよい。像の入手の進行順序は、始めての像の入手に関して上述したものと同様である。
さて、歯科用の像を入手するための本発明の方法の実施に利用される装置例を示す図１１〜１３について説明する。この装置は、薄く切り取られた像を入手する装置１００とコンピュータ１０２とからなっている。装置１００は、印象工具１０８を保持する台１０６を備えるテーブル１０４を具備し、その印象工具１０８は、図１、７、８および９に示すような工具である。テーブル１０４は、図９で矢印１１０により概略を示す縦（Ｘ）方向に往復運動をすることが可能で、その往復運動は、電動機１１２で作動させられる。テーブル１０４を具備する全体の構造体は、テーブル１１３に保持される。テーブル１１３は、ねじ部分（図示せず）を有し、それぞれ１個で回転可能な４個の支持部材１１４に支持される。支持部材１１４の回転は、ステップ電動機１１６で付勢され、そのステップ電動機１１６は、伝導ベルト１１８でその力をすべての支持部材に転送する。各支持部材１１４が回転すると、その方向により左右されるが、テーブル１１３が上昇または下降する。
さらに、装置１００は、スピンドル電動機１２２で付勢される回転可能刃１２０を具備し、また、装置１００は、テーブル１０４が、図１１および１２に示すように引っ込んだ位置にある時、工具１０８の上に位置するビデオカメラ１２４を具備する。
電動機１１２、１１６および１２２の運転は、コンピュータ１０２により制御され、そのコンピュータ１０２は、またビデオカメラ１２４に連結され、かくして受像し、次いでビデオカメラにより入手される像を処理することができる。
工具１１８を台１１６の上に固定した後に、また任意に印象の空洞部または凹部を染料で充填したり、若しくは色を印象または空洞部の壁につけたりした後、最初の像をカメラ１２４で入手することができる。次に、テーブル１０４を、前方に押し進め、それにより工具９８の上にあるブロック（母型および支持部材を備えてブロックが工具の上に保持される）の上面が、刃１２０の通路を横切り、必然的にその上層は、薄く切り取られる。テーブル１０４を引っ込め、図１１および１２に示す位置までテーブル１１４を元に戻すと、次に２番目の像をカメラ１２４で入手できる。次に、ステップ電動機１１６を回転させ、テーブル１１２を所定の１段階まで上昇させ、次いで上面を薄く切り取り、像を入手する順序を繰り返す。ブロック全体を薄く切り取るまで、通常、この順序を繰り返えす。次に、電動機１１６がテーブル１１２を当初の位置まで引き下げ、それによりその順序を、新しい母型保持工具で再び繰り返す。
テーブル１０４と刃１２０との相対的垂直位置を変えるよりもむしろ、この明細書で前に説明した方法または任意の他の方法で段階を追って刃を下げることも可能であることに留意しなければならない。
図１１の装置１００は、回転可能刃１２０を使用しているが、熟練者はよく分かっているように、またいろいろな他の形式の刃を使用してもよい。そのような刃の例を、図１４Ａ〜Ｅで見ることができる。１４Ａの刃は、装置１１０で使用されている刃と同じような水平な刃先を持つ回転刃であり；１４Ｂの刃は、ぎざぎざの刃先を持つ回転刃であり；図１４Ｃでは、水平な刃先を持つ振動刃であり；１４Ｄの刃では、ぎざぎざの刃先を持つ振動刃であり；図１４Ｅの刃は、水平な刃先を持つ回転帯金である。
異なる緯線における物体の外形についての連続する２次元の表示から３次元の物体の外形を生じさせるためのコンピュータ処理技術およびアルゴリズムは、それ自体概ね公知である。例として、本明細書に引例として組み込む次の刊行物を見るとよい：SRI Internationalの1988年7月号の31頁にあるH.Harlyn Bakerの「Buildeing,Visualizing，and Computing on surfaces of Evolution」。
連続する外形を３次元の歯の表示に組み合わすため、本発明に基づいて使用可能である典型的でしかも他にもあるアルゴリズムは、図１５に示されており、それは、当業者にとって、前述の説明および利用できる知識から見て自明である。
考察中の実施例に拘らず、正確に組み立てられた３次元像を得るためには、連続して入手する２次元像を確実に整列させること、すなわちそれらの２次元像を、互いにずらさないことが望ましい。
さて、典型的でしかも他にもある工具１３０の例を示す図１６ＡおよびＢに注意を向けることとし、その工具１３０は、整列機構１３２を具備する。はっきりさせるために、整列機構を図解するに当たって、工具１３０の本質的でない部分をすべて取り除いている。それにも拘らず、工具１３０は、水平の向きに作られており、垂直の向きに作られている図１１に示す工具１００と大いに似かよっていることに留意すべきである。
図に示すように、回転可能刃１３４は、電動機１３６により付勢される。テーブル１３８は、縦のＸ方向に滑り棒１４０に沿って往復運動をすることができる。図１６Ａに示していないが、テーブル１３８は、台および印象工具、例えば図１１の参照数字１０６、１０８で示すような種類の工具を運搬する。前に説明したように、工具と台をテーブルに固定した後、また任意に印象の空洞部または凹部を染料で充填したり、もしくは印象または空洞部の壁に色を付けたりした後、最初の像をビデオカメラで入手する。図１６Ａでは示していないが、図１６Ｂで描いているように、テーブル１３８が極端に右側の位置にある時、カメラを、そのテーブル１３８の反対側に位置させる。
次に、テーブル１３８を、前方に押し進め、それによりブロック（母型および支持部材を備えたブロックが工具の上に保持される−図示せず）の上面が、刃１３４の通路を横切り、必然的にブロックの上層は、薄く切り取られる。テーブル１３８を引っ込め、図１６Ｂに示す位置までテーブルを元に戻すと、次に２番目の像をカメラで得られる。整列機構は、２番目の像を確実に前の像と１列に整列させる。
さて、整列機構の特有な構造に目を向けると、その整列機構は、テーブル１４１に装着される緩衝部材１４２を具備し、その緩衝部材１４２は、右方向へのテーブル１３８の移動を停止するため平坦な側面部１４３を備える。極端に右に位置するこのテーブルは、緩衝部材の側面部に向かって押し付けられ、それにより、連続する像を入手する間、そのテーブルは、固定された同じ位置に確実に保持される。台および印象工具は、テーブルに対してそれらが動かないように、テーブルに堅固に固定されていることを想起すれば、またさらにカメラが、固定空間の位置に固着されていることを考え合わせれば、任意の連続して入手される２つの像を、互いに一列に整列させるようにすることは容易である。
適切な電気制御操作は、それ自体公知であり、また図１７を参照すれば概ね述べられている。かくして、また段階１５０で示すように、最初の像は、テーブルが極端に右の場所に位置したとき（図１６Ｂ）、入手される。像が入手されると、段階１５２に示すように、テーブル１３８は、電動機（図１６に示さず）に高電圧（＋２４Ｖ）を印加することにより、すべり棒１４０に沿って刃に向かって急速に移動する。テーブルが刃を通過し、印象の上層が薄く切り取られると、テーブルは、テーブル１４１に固定して取り付けられたセンサー１４４（例えば、それ自体公知であり、商業的に入手可能な近接スイッチ）に近づき、それにより、「刃を通過」の状態（段階１５４）の電気信号の指示がセンサーに発生する。テーブルが、カメラに向かって反対方向へ急速に移動するにつれて、刃と印象との間の望ましくない摩擦を避けるために、特定の電気信号に応じて、テーブル１３８は、ステップ電動機（図１６Ａに示さず）で僅かに下降させられることが好ましい。テーブルが下降させられ、電動機に印加される直流電圧の極性が、逆になり（−２４Ｖ）、その結果、テーブルが、カメラに向かって急速に移動する（段階１５６）。テーブル１３８がテーブル１４１に固定してまた取り付けられたセンサー１４６を横切ると、「カメラに近接」の状態（段階１５８）の専用電気信号の指示がそのセンサー（例えば、特有の近接スイッチである）に発生する。電気信号の発生に応じて、電動機に印加される直流電圧は弱められ（例えば−３Ｖ）、その結果、テーブルは、緩衝部材１４３に向ってゆっくりと移動する（段階１６０）。テーブルが停止部材１４１に突き当たると、電動機の主軸にかかる負荷は増大し、その結果、電動機に供給される電流は増大する。適当な、それ自体公知である制御回路（図示せず）は、電流の増大を感知し（段階１６２）、そして電流を例えば０．５Ａに制限し、それにより、次の像を入手した時、停止部材１４３に向かうテーブル１３８の前進する圧力を確実に制御する（段階１６４）。
その後、ステップ電動機（１６Ａに図示せず）が回転し、所定の範囲でテーブル１４１を上昇させ、次にブロックが全部薄く切り取られるまで、上層を連続して薄く切り取り、且つ像を入手する順序が、通常繰り返される。

Claims (3)

1. 歯科用の像を得るための方法において：
   （ａ）顎の概ねすべての歯について、歯の境界に対応する境界を持つ多数の空洞部または凹部を有する母型をからなる歯のネガ模型を提供し；、該歯のネガ模型が、母型を切断できる切断工具により切断可能な物質で作られる堅固な母型保持部で保持され；
   （ｂ）層部分を選択面から除去し、該選択面は、歯の頂部または歯の基部に対応する歯の模型の面であり、該層を平坦面を得るため前記切断工具で除去して、そして平坦面についての、または除去部分についての最初の２次元のディジタル像を入手し；
   （ｃ）新しい平坦面を得るため、もう１つの層部分を選択面から除去し、また新しい平坦面についての、または除去部分についての連続する２次元のディジタル像を入手し；
   （ｄ）歯の前記模型の層部分を充分に除去するまで多数回の段階（ｃ）を繰り返して歯科用の像を入手することができ、
   （ｅ）前記最初の像においても、また前記連続する各像においても、前記歯のネガ模型の場合、その空洞部または凹部の境界を決定して、最初およびその後の像の多数の境界の表示を入手し；
   （ｆ）少なくとも幾つかの前記境界の表示を３次元の歯科用のディジタル像に組み合わせる
   ことからなる方法。
2. 模型の歯の前記境界を対比して目立つ色で彩色し、若しくは前記空洞部または前記凹部を彩色した硬化物質で充填することからなる請求項１に記載の方法。
3. 対比して目立つ色を有する物質で前記空洞部を充填することからなる請求項１または２に記載の方法。

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