JP3724132B2 - 無機化合物微粒子含有含フッ素単量体組成物及び減反射フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い表面硬度と低屈折率とを有し、各種基材表面等に使用可能な低屈折率材料の原材料として利用できる単量体組成物、該単量体組成物を重合硬化してなる低屈折率材料、及び該低屈折率材料を設けた減反射フィルムに関する。
【0002】
【従来技術】
フッ素原子を有する化合物は低屈折率を示すため反射防止膜や光ファイバーのクラッド材料等への使用が可能である。いずれも屈折率の低下に伴い性能は向上する。例えば含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体、他モノマーとの共重合体、テトラフルオロエチレン重合体、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体又はフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等の光ファイバーへの応用が提案されている(特開昭59−84203号公報、特開昭59−84204号公報、特開昭59−98116号公報、特開昭59−147011号公報、特開昭59−204002号公報)。
最近ではアクリル酸含フッ素アルキルエステル重合体、メタクリル酸含フッ素アルキルエステル重合体、又は商品名「サイトップ」(旭硝子株式会社製)、商品名「テフロンAF」(アメリカ・デュポン社製)等の非結晶性ペルフルオロ樹脂等の溶媒可溶性の低屈折率含フッ素重合体の減反射フィルムへの応用が試みられている(特開昭64−16873号公報、特開平1−149808号公報、特開平6−115023号公報)。
しかし、これらの含フッ素樹脂はいずれも非架橋性樹脂であり硬化後の表面硬度が低く、耐摩耗性に劣り、密着力も不十分であるという欠点がある。
【0003】
表面硬度を向上させるために含フッ素単官能(メタ)アクリル酸エステル又は含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルと、非含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとの適当な配合から得られる架橋重合体が提案されている(特開昭58−105943号公報、特開昭62−199643号公報、特開昭62−250047号公報)。これらの架橋重合体は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル中のフッ素含量や非含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルとの配合比を調整することで、ある程度の範囲内で低屈折率と表面硬度を調節しうる。しかし、含フッ素単官能(メタ)アクリル酸エステルと多官能(メタ)アクリル酸エステルとは相溶性が悪く任意の割合では相溶しない。そのため十分な低屈折率を達成できない。一方、含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルと多官能(メタ)アクリル酸エステルとは任意の割合で相溶する。しかし屈折率を下げるために架橋重合体中のフッ素原子含量を増やすと架橋密度が低下してしまう。そのため低屈折率と表面硬度とを満足に両立することはできず、光ファイバー及び減反射フィルムへ表面硬度を付与することは困難である。更に密着力にも問題がある。
【0004】
密着力の向上、並びに他の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの原材料としての使用を目的として、含フッ素ヒドロキシ(メタ)アクリル酸エステルが提案されている(特開平4−321660号公報、特開平4−356443号公報、特開平4−356444号公報)。しかし、これらは単官能(メタ)アクリル酸エステルであるので、硬化後の表面硬度が低く、耐摩耗性に劣るという欠点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低屈折率と優れた表面硬度を満足しうる低屈折率材料、及び減反射フィルム並びにこれらの原材料として利用できる含フッ素単量体組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記式(1)で表わされる含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを5〜100重量%と、重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマー ( ただし、式 ( 1 ) で表わされる含フッ素多官能 ( メタ ) アクリル酸エステルである場合を除く ) を95重量%未満と、無機化合物微粒子を90重量%未満とを含む、無機化合物微粒子含有単量体組成物が提供される。
【0007】
【化2】
【0008】
(式中R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なる基であって、水素原子、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示し、且つR1及びR2の少なくとも一方及びR3及びR4の少なくとも一方は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を示す。Rは、フッ素原子を2以上有する炭素数2〜12のフルオロアルキレン基を表す。) また本発明によれば、前記無機化合物微粒子含有単量体組成物を重合硬化させてなる、屈折率1.49以下の低屈折率材料が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、透明基板と、前記低屈折率材料の層とを備えた減反射フィルムが提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、透明基板と、前記低屈折率材料の層との間に少なくとも1層以上の材料層を備えた前記減反射フィルムが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の無機化合物微粒子含有単量体組成物(以下、単に「本発明の単量体組成物」と称す。)は、前記式(1)で表される含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物(以下、「成分A」と称す。)を含む。
【0012】
前記成分A中に含まれる、前記式(1)で表される含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、具体的には、R1及びR2の一方がアクリロイル基又はメタクリロイル基、他方が水素原子を表し、R3及びR4の一方がアクリロイル基又はメタクリロイル基、他方が水素原子を表す、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステル(以下ジエステルAと称する);R1、R2、R3及びR4のうち1個は水素原子を、残る3個はアクリロイル基又はメタクリロイル基を表す、(メタ)アクリロイル基と水酸基とを有する含フッ素三官能(メタ)アクリル酸エステル(以下トリエステルAと称する);及びR1、R2、R3及びR4が同一又は異なる基であり、アクリロイル基又はメタクリロイル基を表す、含フッ素四官能(メタ)アクリル酸エステル(以下テトラエステルAと称する)である。式(1)において、Rの炭素数が12を超えると製造が困難である。
【0013】
ジエステルAとしては、1,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,7−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,8−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、2,8−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、2,10−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,12−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,11−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−2,12−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン又は2,11−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)−1,12−ジヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等を好ましく挙げることができる。
【0014】
トリエステルAとしては、1,2,8−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−7−ヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,7−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−8−ヒドロキシ−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,2,9−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−8−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,8−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−9−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,10−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−9−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−10−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−10−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,10−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−11−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,12−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−11−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン又は1,2,11−トリス((メタ)アクリロイルオキシ)−12−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等を好ましく挙げることができる。
【0015】
テトラエステルAとしては、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5−テトラフルオロオクタン−1,2,7,8−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン−1,2,8,9−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン−1,2,9,10−テトラオール、テトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン−1,2,10,11−テトラオール又はテトラ(メタ)アクリル酸−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン−1,2,11,12−テトラオール等を好ましく挙げることができる。これらジエステルA、トリエステルA及びテトラエステルAは使用する際に単独若しくは混合物として用いられる。
【0016】
ジエステルAは、例えば、相当する含フッ素ジエポキシドと(メタ)アクリル酸とを通常の開環反応により反応させることにより容易に得ることができる。また、トリエステルA又はテトラエステルAは、例えば、相当するジエステルAと(メタ)アクリル酸クロリドとを通常のエステル化反応により反応させることによって容易に得ることができる。ジエステルA及びトリエステルAはいくつかの構造異性体の混合物として得られるが、実際の使用に際しては混合物のまま使用しても差し支えない。
【0017】
本発明の単量体組成物において、前記含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの含有割合は、前記成分A全量に対して5〜100重量%、好ましくは10〜100重量%である。
【0018】
前記成分Aには、必要に応じて他の硬化性材料として通常用いられる熱硬化性単量体、エネルギー線硬化性単量体等を、成分A中に95重量%未満、特に90重量%未満配合することができる。熱硬化性単量体、エネルギー線硬化性単量体としては、重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマー、例えば、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、1,1,1−トリス(アクリロイルオキシエトキシエトキシ)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシエトキシフェニル)メタン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート又はポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いられる。
【0019】
前記成分Aには、必要に応じて単官能(メタ)アクリル酸エステルを本発明の所望の効果を損ねない範囲で配合することもできる。単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、単量体組成物の屈折率を低下させる目的から含フッ素単官能(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル、(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸−3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチル−3,3,3−トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸−3−トリフルオロメチル−4,4,4−トリフルオロブチル、(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル又は(メタ)アクリル酸−1−メチル−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル等が好ましく挙げられ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。
【0020】
前記成分Aには、硬化性材料として更に必要に応じてジエステルA以外の含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルを本発明の所望の効果を損ねない範囲で配合することもできる。ジエステルA以外の含フッ素二官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,2−トリフルオロエチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,5−ノナフルオロペンチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−ウンデカフルオロヘキシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−トリデカフルオロヘプチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナデカフルオロデシルエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3−テトラフルオロブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカンジオール、ジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカンジオール又はジ(メタ)アクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカンジオール等が好ましく挙げられ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。
【0021】
前記成分Aには、必要に応じて塗膜形成能の向上のために、重合体が添加できる。添加用重合体としては特に限定されないが、例えば、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体等が挙げられる。添加用重合体の配合割合は、前記成分A中の硬化性材料100重量部に対して、25重量部以下、特に10重量部以下が望ましい。
【0022】
本発明の単量体組成物中の前記成分Aの含有割合は、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜90重量%である。
【0023】
本発明の単量体組成物は、前記成分Aに加えて、無機化合物微粒子を含む。
【0024】
前記無機化合物微粒子としては特に限定されないが、屈折率が1.5以下の化合物が好ましい。具体的にはフッ化マグネシウム(屈折率1.38)、酸化珪素(屈折率1.46)、フッ化アルミニウム(屈折率1.33〜1.39)、フッ化カルシウム(屈折率1.44)、フッ化リチウム(屈折率1.36〜1.37)、フッ化ナトリウム(屈折率1.32〜1.34)、フッ化トリウム(屈折率1.45〜1.50)等の微粒子が望ましい。微粒子の粒径については、低屈折率材料の透明性を確保するために可視光の波長に比べて充分に小さいことが望ましい。具体的には100nm以下、特に50nm以下が好ましい。
【0025】
前記無機化合物粒子を本発明の単量体組成物に含有させるにあたっては、組成物中での分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を低下させないために、予め有機分散媒中に分散した有機ゾルの形態で使用するのが望ましい。更に、組成物中において、無機化合物粒子の分散安定性、低屈折率材料中での密着性等を向上させるために、予め無機微粒子化合物の表面を各種カップリング剤等を用いて修飾することができる。各種カップリング剤としては、例えば、有機置換された珪素化合物;アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、アンチモン又はこれらの混合物等の金属アルコキシド;有機酸の塩;配位性化合物と結合した配位化合物等が挙げられる。
【0026】
本発明の単量体組成物中の前記無機化合物微粒子の含有割合は、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは10〜60重量%である。含有割合が10重量%未満では無機化合物微粒子を添加することによる本発明の単量体組成物の屈折率低下を十分に発現することができず好ましくない。また90重量%を超えると本発明の単量体組成物を重合硬化して得られる低屈折率材料の耐擦傷性が低下し好ましくない。
【0027】
本発明の低屈折率材料は、前記単量体組成物を重合硬化させてなる、屈折率1.49以下、好ましくは1.35〜1.49を示す材料である。
前記重合硬化は、例えば前記単量体組成物に必要に応じて硬化開始剤とイソプロピルアルコール又はトルエン等の溶媒等とを添加混合した後、通常行われる塗布方法、例えばロールコート法、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法等により透明基板等の基板に塗布し、乾燥後、加熱硬化、若しくは紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線の照射等の方法により行うことができる。重合硬化条件は、組成物中の硬化性材料に応じて適宜選択できる。低屈折率材料を膜状に形成する場合の膜厚は、目的に応じて適宜選択できる。
【0028】
硬化開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル又はアゾビスバレロニトリル等のアゾ系のラジカル重合開始剤;過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロパーオキシド、クメンパーオキシド又はジアシルパーオキシド等の有機過酸化物系のラジカル重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル又はベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;ベンジル、ベンゾフェノン、アセトフェノン又はミヒラーズケトン等のカルボニル化合物;アゾビスイソブチロニトリル又はアゾジベンゾイル等のアゾ化合物、若しくはα−ジケトンと三級アミンとの混合物等の光重合開始剤等が使用できる。硬化開始剤の使用量は、単量体組成物中の硬化性材料と硬化開始剤との合計量に対して、0.01〜10重量%が好ましい。
【0029】
本発明の減反射フィルムは、透明基板と前記低屈折率材料の層とを備える。この低屈折率材料の層は、適切な膜厚であるのが好ましい。適切な膜厚は、減反射フィルムの反射率の最小値を示す波長が、通常420〜720nm、より好ましくは520〜620nmとなるように膜厚を設定するのが望ましい。
【0030】
透明基板としては、透明であれば特に限定されないが、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム等が用いられる。
【0031】
本発明の減反射フィルムには、前記透明基盤と前記低屈折率材料の層を設けたものであっても、前記透明基盤と前記低屈折率材料の層との間に少なくとも1層以上の材料層を設けたものであってもよい。この材料層としては、減反射効果を高めるために高屈折率材料の層を設けることができる。高屈折率材料の層は、屈折率が1.55以上が好ましく、その膜厚は50〜500nmであることが好ましい。
【0032】
前記低屈折率材料の層及び前記高屈折率材料の層は、透明基板面上に1層づつ設けても良いが、それぞれ2層以上設けても良い。2層以上の層を設ける場合、低屈折率材料の層と高屈折率材料の層とを交互に積層し、最外層に前記低屈折率材料の層を設けることができる。2層以上の層を設ける場合、前記低屈折率材料又は前記高屈折率材料のそれぞれの層は、同一の材料からなるものであっても、異なる材料からなるものであっても良い。
【0033】
また、前記材料層として、前記高屈折率材料の層の他に、中屈折率材料(屈折率1.49〜1.55)の1層以上の層を設けることもできる。本発明の減反射フィルムには、低屈折率材料の層と共に、中屈折率材料の層及び/又は高屈折率材料の層を設けることができる。
【0034】
前記低屈折率材料の層を設けるには、前記含フッ素単量体組成物に必要に応じて硬化開始剤;イソプロピルアルコール又はトルエン等の溶媒等を添加混合した後、通常行われる塗布方法、例えばロールコート法、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法等により透明基板等の基材に塗布し、乾燥後、加熱硬化、若しくは紫外線、電子線又は放射線等の活性エネルギー線の照射等の方法により行うことができる。重合硬化条件は、組成物中の硬化性材料に応じて適宜選択できる。
【0035】
前記高屈折率材料の層を設けるには、前記低屈折率材料の層を設ける方法に準じた方法、あるいは無機化合物のスパッタリング法、蒸着法等により行うことができる。
【0036】
本発明の減反射フィルムにおいて、耐擦傷性を更に向上させるために、ハードコート膜を設けることができる。ハードコート膜は、前記低屈折率材料及び前記高屈折率材料の各積層体と、前記透明基板との間に設けることができる。ハードコート膜としては、特に限定されず、前記重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマー等により得られる、通常のハードコート用樹脂を用いることができるが、前記透明基板とハードコート膜との屈折率が大きく異なると界面で反射が生じるため、両者の屈折率差は極力小さい方が好ましい。ハードコート膜の膜厚は1〜10μm、特に3〜5μmが好ましい。ハードコート膜の形成方法は特に限定されず、通常行われる塗布方法、例えばロールコート法、グラビアコート法、ディップコート法、スピンコート法等により透明基板等の基材に塗布し、乾燥後、エネルギー線又は熱等を用いる通常の硬化方法で形成する方法等が用いられる。
【0037】
本発明の減反射フィルムにおいて、防眩性をさらに向上させるために、アンチグレア膜を設けることができる。アンチグレア膜は、前記低屈折率材料及び前記高屈折率材料の各積層体と、前記透明基盤との間に設けることができる。アンチグレア膜としては、特に限定されないが、前記透明基盤とアンチグレア膜との屈折率が大きく異なると界面で反射が生じるため、両者の屈折率差は極力小さい方が好ましい。アンチグレア膜の膜厚は1〜10μm、特に3〜5μmが好ましい。アンチグレア膜の形成方法は特に限定されず、通常行われる方法、例えば微粒子を含む樹脂を塗工する方法、あるいは塗工後にエンボスロール等を用いて表面を凹凸状にする方法等を用いることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の単量体組成物は、前記特定の含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル及び前記特定の無機化合物微粒子を含むので、その重合硬化物は、低屈折率、(メタ)アクリレートの硬さ、及び高い耐擦傷性を合わせ持ち、基材等にコーティングして重合硬化させることにより膜状に形成でき、本発明の低屈折率材料等とすることができる。この低屈折率材料は、低屈折率、(メタ)アクリレートに基づく固さ、及び高い耐擦傷性を合わせ持ち、低屈折率と高い表面硬度とを示すと共に、水酸基を有するジエステルA又はトリエステルAの使用により、他の物質への密着力を更に向上させることができる。
【0039】
本発明の減反射フィルムは、前記低屈折率材料の層を備えるので、低屈折率、高い表面硬度、高い耐擦傷性及び高い密着力を併せ持ち、各種用途に応用できる。即ち、本発明の単量体組成物を用いることによって、従来のフッ化マグネシウムの蒸着法に比べて、低コストで大面積化した低屈折率材料の層を備えた減反射フィルムを連続的に効率良く得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
合成例1
撹拌機、冷却管、ガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g、tert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液を500mlのクロロホルムに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶を更に酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:2)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィにより精製し、更に溶媒を減圧留去することで生成物Aを得た。生成物Aは下記式(2)、(3)及び(4)に示す構造を有する化合物の混合物であった。
【0042】
【化3】
【0043】
合成例2
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は合成例1と同様にして、生成物Bを得た。生成物Bは下記式(5)、(6)及び(7)に示す構造を有する化合物の混合物であった。
【0044】
【化4】
【0045】
合成例3
撹拌機、冷却管及びガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g及びtert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液をクロロホルム500mlに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。得られたクロロホルム溶液には、前記式(2)、(3)及び(4)に示す構造を有する化合物が存在しているものと考えられる。
撹拌機、温度計、ガス導入管及び滴下ロートを備えた5リットル反応器に上記クロロホルム溶液及びトリエチルアミン152g(1.5mol)を仕込み、氷冷下でアクリル酸クロリド136g(1.5mol)をクロロホルム150mlに溶解して、滴下ロートから反応液の温度が5℃を超えないよう滴下した。滴下終了後氷冷のまま2時間撹拌した後、30mlのメタノールを添加し、さらに10分間撹拌した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶を更に酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:4)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、更に溶媒を減圧留去することで生成物Cを得た。生成物Cは下記式(8)及び(9)に示す構造を有する化合物の混合物であった。
【0046】
【化5】
【0047】
合成例4
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は合成例3と同様にして、前記式(5)、(6)及び(7)に示す化合物を経て生成物Dを得た。生成物Dは下記式(10)及び式(11)に示す構造を有する化合物の混合物であった。
【0048】
【化6】
【0049】
合成例5
撹拌機、冷却管及びガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g、tert−ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とし、同温度で4時間撹拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液をクロロホルム500mlに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。得られたクロロホルム溶液には、前記式(2)、(3)及び(4)に示す構造を有する化合物が存在していると考えられる。
撹拌機、温度計、ガス導入管及び滴下ロートを備えた5リットル反応器に、上記クロロホルム溶液及びトリエチルアミン607.2gを仕込み、氷冷下でアクリル酸クロリド362g(4mol)をクロロホルム300mlに溶解して、滴下ロートから反応液の温度が5℃を超えないよう滴下した。滴下終了後氷冷のまま2時間撹拌した後、80mlのメタノールを添加し、更に10分間撹拌した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶をさらに酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:4)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーにより精製し、更に溶媒を減圧留去することで下記式(12)に示す構造を有する生成物Eを得た。
【0050】
【化7】
【0051】
合成例6
1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)の代わりに、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロエタン214.2g(1mol)を用いた以外は合成例5と同様にして、前記式(5)、(6)及び(7)に示す化合物を経て、下記式(13)に示す生成物Fを得た。
【0052】
【化8】
【0053】
合成例7
撹拌機、冷却管及びガス導入管を備えた反応器に、30%シリカゾル(商品名「XBA−ST」、日産化学社製) 500重量部、シランカップリング剤として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM−5103」、東芝シリコーン社製) 100重量部、水 20重量部を仕込み、油浴中で徐々に加熱して、油浴温度100℃とし2時間撹拌した後、冷却管を取り外し油浴温度120℃とし更に2時間撹拌し、室温まで冷却して反応液Gを得た。反応液G中では、シランカップリング剤がコロイダルシリカの表面の一部を修飾したと考えられる。反応液Gの一部をシャーレにとり、120℃で2時間乾燥した前後の重量を精秤することで固形分濃度を測定したところ44.6%であった。
【0054】
製造例1
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日立化成社製)45重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(商品名「A−400」、新中村化学社製)30重量部、硬化開始剤として「イルガキュア184」(商品名、チバガイギー社製)4重量部、溶媒としてイソプロピルアルコール20重量部を混合し、マイクログラビアコーター(康井精機社製)を用いてPETフィルム上に膜厚が5μmになるように塗布した。紫外線照射器(岩崎電気社製)により800mJ/cm2の紫外線を照射し硬化を行ってハードコート膜を形成しハードコート膜形成PETフィルム(以下HC−PETと略す)を作製した。
【0055】
製造例2
製造例1と同様にハードコート膜をTACフィルム上に形成しハードコート膜形成TACフィルム(以下HC−TACと略す)を作製した。次に30%酸化亜鉛微粒子トルエン分散液(商品名「ZS−300」、住友大阪セメント社製)240重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(以下TMPTAと略す)28重量部、硬化開始剤として「DAROCUR1116」(商品名、メルク社製、アセトフェノン系化合物)(以下単に「DAROCUR1116」と略す)1重量部、溶媒としてトルエン900重量部を混合し塗液を調製した。次いでこの塗液を、マイクログラビアコータを用いてHC−TACに塗布した。紫外線照射器により1000mJ/cm2の紫外線を照射し硬化を行って高屈折率材料の層が形成された高屈折率材料層形成TACフィルム(以下HR−TAC−Aと略す)を作製した。この際、0°正反射測定装置を備えた瞬間マルチ測光システム(大塚電子IMUC−7000)を用いて反射率が最大値を示す波長が550〜600nmになるように高屈折率材料の層の膜厚を調整した。
【0056】
製造例3
瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最大値を示す波長が750〜800nmになるように高屈折率材料の層の膜厚を調整した以外は、製造例2と同様に高屈折率材料層形成TACフィルム(以下、HR−TAC−Bと略す)を作製した。
【0057】
実施例1−1及び1−2
合成例1で合成した生成物A、テトラメチロールメタンテトラアクリレート(以下TMMTAと略す。)、及び合成例7で合成した反応液Gを表1に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、マイクログラビアコーターを用いて製造例1で作製したHC−PET上に各塗液を塗布した。電子線照射器(岩崎電気社製)により加速器電圧125kV、ビーム電流35mAで吸収線量15Mradの電子線を照射し、コーティングされた単量体組成物の硬化を行って低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。評価試験として、得られたフィルムについて以下の(ア)分光反射率、(イ)耐擦傷性及び(ウ)密着性を、また得られた塗液については以下の(エ)低屈折率材料の屈折率の測定を行った。
【0058】
( ア ) 分光反射率
5°正反射測定装置を備えたUVスペクトル(日本分光社製、商品名「U−best35」)により測定した。但し、塗布面を測定面とし裏面は反射を遮るためサンドペーパーで荒らして測定した。結果を図1及び図2に示す。また最小反射率を表1に示す。
【0059】
( イ ) 耐擦傷性
番手0000のスチールウール硬度(SW硬度)を測定することによって、以下の評価基準によって評価した。結果を表1に示す。
【0060】
A:強く擦っても傷が付かない、B:強く擦ると僅かに傷が付く、C:軽く擦ると僅かに傷が付く、D:軽く擦っても著しく傷が付く。
【0061】
( ウ ) 密着性
碁盤目剥離試験をJIS K 5400に従って行った。結果を表1に示す。
【0062】
( エ ) 低屈折率材料の屈折率
塗液を、乾燥後の厚さが100μmになるようガラス上に塗布し、電子線照射器により加速電圧175kV、ビーム電流5mAで吸収線量5Mradの電子線を照射、硬化し、得られた膜をガラスから剥離し、アッベ屈折計(アタゴ株式会社製)を用いて屈折率を測定した。結果を表1に示す。
【0063】
実施例1−3及び1−4
合成例2で合成した生成物B、TMMTA、及び10%フッ化マグネシウムゾル(商品名「MFS-10P」、日産化学社製)(以下「MFS-10P」と略す。)を表1に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、マイクログラビアコーターを用いて製造例1で作製したHC−PET上に各塗液を塗布した。電子線照射器(岩崎電気社製)により加速器電圧125kV、ビーム電流35mAで吸収線量15Mradの電子線を照射し、コーティングされた単量体組成物の硬化を行って低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。得られた塗液及び減反射フィルムについて、実施例1−1及び1−2と同様に評価試験の測定を行った。結果を図3、図4及び表1に示す。
【0064】
実施例1−5及び1−6
合成例1で合成した生成物A、TMMTA、MFS-10P、及びDAROCUR1116を表1に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、マイクログラビアコーターを用いて製造例2で作製したHR−TAC−A上に各塗液を塗布した。紫外線照射器により1000mJ/cm2の紫外線を3回照射し、コーティングされた単量体組成物の硬化を行って低屈折率材料及び高屈折材料の層が積層された減反射TACフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。得られた塗液及び減反射フィルムについて、実施例1−1及び1−2と同様に評価試験の測定を行った。結果を図5、図6及び表1に示す。
【0065】
実施例1−7及び1−8
合成例1で合成した生成物A、合成例5で合成した生成物E、合成例7で合成した反応液G及びDAROCUR1116を表1に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、マイクログラビアコーターを用いて製造例3で作製したHR−TAC−B上に各塗液を塗布した。紫外線照射器により1000mJ/cm2の紫外線を3回照射し、コーティングされた単量体組成物の硬化を行って低屈折率材料及び高屈折材料の層が積層された減反射TACフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。得られた塗液及び減反射フィルムについて実施例1−1及び1−2と同様に評価試験の測定を行った。結果を図7、図8及び表1に示す。
【0066】
比較例1及び2
製造例1及び2で作製したHC−PET及びHC−TACの分光反射率、最小反射率及び耐擦傷性を、実施例1−1及び1−2と同様に測定した。結果を図9、図10及び表1に示す。
【0067】
比較例3
ジアクリル酸−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9−ヘプタデカフルオロノニルエチレングリコール(以下F17EDAと略す。)とTMMTAとを表1に示す配合割合で混合し、溶媒としてトルエン900重量部を混合し塗液を調製した。次いでマイクログラビアコーターを用いて製造例1で作製したHC−PET上に各塗液を塗布した。電子線照射器(岩崎電気社製)により加速器電圧125kV、ビーム電流35mAで吸収線量15Mradの電子線を照射し、塗液の硬化を行って低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。得られた塗液及び減反射フィルムについて、実施例1−1及び1−2と同様に評価試
験の測定を行った。結果を図11及び表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1〜3中D.1116は、「DAROCUR1116」商品名、メルク社製、(1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン)を示す。
【0070】
実施例2−1及び2−2
合成例3で合成した生成物Cと合成例7で合成した反応液Gとを表2に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれにトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、実施例1−1及び1−2と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製し、各評価試験の測定を行った。結果を図12、13及び表2に示す。
【0071】
実施例2−3及び2−4
合成例4で合成した生成物D、F17EDA、TMMTA、及びMFS-10Pを表2に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、実施例1−3及び1−4と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製し、各評価試験の測定を行った。結果を図14、15及び表2に示す。
【0072】
実施例2−5及び2−6
合成例3で合成した生成物C、TMMTA、MFS-10P及びDAROCUR1116を表2に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、実施例1−5及び1−6と同様に低屈折率材料及び高屈折材料の層が積層された減反射TACフィルムを作製し、各評価試験の測定を行った。結果を図16、17及び表2に示す。
【0073】
実施例2−7及び2−8
合成例3で合成した生成物C、合成例5で合成した生成物E又はF17EDA、合成例7で合成した反応液G、及びDAROCUR1116を表2に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで、実施例1−7及び1−8と同様に低屈折率材料及び高屈折材料の層が積層された減反射TACフィルムを作製し、各評価試験の測定を行った。結果を図18、19及び表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
実施例3−1及び3−2
合成例5で合成した生成物Eと、F17EDA又はTMMTAと、合成例7で合成した反応液Gとを表3に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれにトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで実施例1−1及び1−2と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製し、前記(ア)分光反射率及び(イ)耐擦傷性の試験と、得られた塗液についての(エ)屈折率の測定とを行った。結果を図20、21及び表3に示す。
【0076】
実施例3−3及び3−4
合成例6で合成した生成物Fと、F17EDAと、MFS-10Pとを表3に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで実施例1−3及び1−4と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製し、実施例3−1及び3−2と同様な評価試験を行った。結果を図22、23及び表3に示す。
【0077】
実施例3−5及び3−6
合成例5で合成した生成物E、TMMTA、MFS-10P及びDAROCUR1116を表3に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで実施例1−5及び1−6と同様に低屈折率材料及び高屈折率材料の層が積層された減反射TACフィルムを作製し、実施例3−1及び3−2と同様な評価試験を行った。結果を図24、25及び表3に示す。
【0078】
実施例3−7及び3−8
合成例5で合成した生成物E、F17EDA、合成例7で合成した反応液G、及びDAROCUR1116を表3に示す配合割合で混合し単量体組成物を得た。組成物それぞれにトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。ついで、実施例1−7及び1−8と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射TACフィルムを作製し、実施例3−1及び3−2と同様な評価試験を行った。結果を図26、27及び表3に示す。
【0079】
比較例4
ヘプタデカフルオロデシルアクリレート(以下F17Aと略す。)100重量部、溶媒としてトルエン900重量部を混合し塗液を調製した。次いで、マイクログラビアコーターを用いて製造例1で作製したHC−PET上に、各溶液を塗布した。電子線照射器(岩崎電気社製)により加速器電圧125kV、ビーム電流35mAで吸収線量15Mradの電子線を照射し、コーティングされた単量体組成物の硬化を行って低屈折率材料の層が形成された減反射PETフィルムを作製した。この際、瞬間マルチ測光システムを用いて反射率が最小値を示す波長が550〜600nmになるように低屈折率材料の層の膜厚を調整した。得られた塗液及び減反射フィルムについて、実施例3−1及び3−2と同様な評価試験を行った。結果を図28及び表3に示す。
【0080】
比較例5及び6
F17EDA又はTMMTAと、DAROCUR1116とを表3に示す配合割合で混合しそれぞれに溶媒としてトルエン900重量部を混合し2種類の塗液を調製した。次いで実施例1−5及び1−6と同様に低屈折率材料の層が形成された減反射TACフィルムを作製した。得られた塗液及び減反射フィルムについて、実施例3−1及び3−2と同様な評価試験を行った。結果を図29及び表3に示す。
【0081】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1−1の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図2】実施例1−2の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例1−3の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図4】実施例1−4の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1−5の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例1−6の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例1−7の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1−8の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図9】比較例1の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図10】比較例2の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図11】比較例3の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例2−1の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図13】実施例2−2の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図14】実施例2−3の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図15】実施例2−4の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図16】実施例2−5の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図17】実施例2−6の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図18】実施例2−7の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図19】実施例2−8の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図20】実施例3−1の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図21】実施例3−2の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図22】実施例3−3の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図23】実施例3−4の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図24】実施例3−5の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図25】実施例3−6の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図26】実施例3−7の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図27】実施例3−8の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図28】比較例4の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
【図29】比較例5及び6の分光反射率の測定結果を示すグラフである。
Claims (4)
- 下記式(1)で表わされる含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルを5〜100重量%と、重合性不飽和基を2個以上有する多官能性モノマー ( ただし、式 ( 1 ) で表わされる含フッ素多官能 ( メタ ) アクリル酸エステルである場合を除く ) を95重量%未満と、無機化合物微粒子を90重量%未満とを含む、無機化合物微粒子含有単量体組成物。
- 請求項1に記載の無機化合物微粒子含有単量体組成物を重合硬化させてなる、屈折率1.49以下の低屈折率材料。
- 透明基板と、請求項2に記載の低屈折率材料の層とを備えた減反射フィルム。
- 透明基板と、請求項2に記載の低屈折率材料の層との間に少なくとも1層以上の材料層を備えた請求項3に記載の減反射フィルム。
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