JP3721272B2 - 熱伝導性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱伝導性樹脂成形体の製造方法に関する。詳しくは、電子機器の放熱を行う際に、発熱電子部品とヒートシンクの間に介在させて使用される放熱部材として好適な熱伝導性成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器において、使用時に発生する熱をどのように除去するかが重要な課題となっており、従来よりトランジスタやサイリスタ等の発熱電子部品を、放熱フインや放熱板等のヒートシンクに、熱伝導性シートを介して取り付けることによって行われている。この熱伝導性シートは、樹脂に熱伝導性フイラーを分散含有させたものが用いられており、熱伝導性が良好であることから発熱電子部品の実装に広く賞用されている。また、最近に至り、熱伝導性シートの柔軟性を、例えばアスカC硬度で50以下までに著しく高めた、高柔軟性放熱スペーサーも使用されるようになっている。
【0003】
熱伝導性シートの熱伝導性を良くするためには、窒化ホウ素(BN)等の熱伝導性フイラーの充填率を多くすれば良いが、シートの機械的強度が低下するので高充填には限度があった。
【0004】
また、BNは鱗片状粒子であり、その粒子自身の熱伝導性は鱗片状の面方向では約110W/mKであるのに対し、その面に対して垂直方向では約2W/mK程度しかなくBN粒子の熱伝導性は面方向が数十倍優れていることが知られている。すなわち、BN粒子の熱伝導性に優れる方向である面方向を放熱シートが熱を伝達するシートの厚さ方向と同じにする(BN粒子をシート厚み方向に立てる)ことによって熱伝導性が飛躍的に向上することが期待されるが、従来の製造方法(カレンダーロール法、ドクターブレード法、押し出し法)では、シート成型時にBN粒子の配向が発生し、図3のように鱗片状粒子の面方向がシート面方向と同一となってBN粒子の面方向の優れた熱伝導性が活かされないままとなっていた。
【0005】
このような問題点を解決するため、特公平6−12643号公報には、BN粒子をランダムに配向させることが提案されているが、横に配向したBN粒子も依然として多く存在しており、BN粒子の面方向の優れた熱伝導性が十分に活かされているとは言い難い。
【0006】
そこで、図2のように、シート厚み方向に配向しているBN粒子の割合を、シート幅方向に配向している割合よりも多くして熱伝導性を向上させる方法としては、特公平6−38460号公報があるが、この方法では、BN粒子の充填されたシリコーン固化物を成型機でブロック化し、それを垂直方向にスライスしてシート化するものであるので、ブロック化時の断面積が広すぎて内部のBNの配向度合いが不十分であり、これまた熱伝導性の十分な向上は望めない。
【0007】
更には、いずれの方法においても、熱伝導性を向上させるためにBN粒子を高充填すると、シートは硬くなり、発熱電子部品が荷重に弱い場合には取り付け時の締め付け力によって損傷する問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、熱伝導性シート等の放熱部材を、発熱電子部品とヒートシンクとの間に、締め付け力によって介在させる際、余分な締め付け力を放熱部材内に形成させた連通孔で吸収させ、もって発熱電子部品の損傷を和らげることのできる高柔軟性かつ高熱伝導性の放熱部材を提供することである。また、図2に示すように、直立に近い状態で配向させた熱伝導性フイラー粒子を、放熱部材の幅方向よりも厚み方向に多く存在させることによって、更なる高熱伝導性を付与した放熱部材を提供することである。本発明の目的は、上記高柔軟性かつ高熱伝導性の放熱部材を生産性良く製造することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
(請求項1)熱伝導性フイラー含有の樹脂組成物を用いて未硬化の棒状成型物を成形し、それらの複数本を連通孔となる空隙を設けて集結させ、その集結物を所望長さに切断してから硬化させるか、又は硬化させてから切断することを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
(請求項2)熱伝導性フイラー含有樹脂組成物がBN粒子を20〜70体積%を含むシリコーンであり、棒状成型物の断面積が0.5〜300mm2 、集結物の気孔率が5〜50%、切断幅が0.05〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0011】
本発明でいう樹脂とは、シリコーンゴム(付加反応により加硫する液状シリコーンゴム、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーンゴム)、エポキシ樹脂、オレフィン系樹脂等の一般的に電子材料用途として用いられている樹脂のことである。
【0012】
電子機器の放熱部材では、発熱電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、柔軟性を有する樹脂や、ゴム弾性を有する樹脂が望ましい。柔軟性樹脂としては、付加反応型液状シリコーンの固化物が好適であり、その具体例としては、一分子中にビニル基とH−Si基の両方を有する一液性のシリコーンや、末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと末端又は側鎖に2個以上のH−Si基を有するオルガノポリシロキサンとの二液性のシリコーンなどがある。このような付加反応型液状シリコーンの市販品としては、東レダウコーニング社製、商品名「SE−1885」等を例示することができる。樹脂の柔軟性は、シリコーンの架橋密度や熱伝導性フイラーの充填量によって調整することができる。
【0013】
本発明で使用される熱伝導性フイラーとしては、絶縁性が必要な場合には、窒化硼素、窒化珪素、窒化アルミニウム、アルミナ、マグネシア等のセラミックス粉末が用いられ、また絶縁性を問わない場合には、上記セラミックス粉末の他に、アルミニウム、銅、銀、金等の金属粉末や、炭化珪素粉末、炭素粉末などが用いられる。これらの熱伝導性フイラーは、一種又は二種以上が使用される。熱伝導性フイラーの形状は、破砕不規則形状、球状、繊維状、針状、鱗片状などの如何なるものでもよく、また粒度は、平均粒径1〜100μm程度のものが使用される。
【0014】
上記熱伝導性フイラーにあっても、熱伝導性シートや高柔軟性放熱スペーサー等の電子機器の放熱部材用途においては、BN粉末を単独又は他の熱伝導性フイラーと併用することが望ましい。何故ならば、BNは、上記のように六角環状網目面方向(a軸)と六角環状網目面に対して垂直方向(c軸)とでは熱伝導性が数十倍程度異なっており、うまく工夫することによってその面方向の高熱伝導性を利用することができるからである。
【0015】
BN粒子の厚み(c軸方向)は、0.1μm以上であることが好ましく、0.1μmを未満では、樹脂に分散させる際に粒子が破壊される恐れがある。また、BN粒子のアスペクト比(縦/横比)はできるだけ大きい方が熱伝導性を向上させる点で好ましく、アスペクト比としては20以上が好ましい。
【0016】
このようなBN粉末は、例えば粗製BN粉末をアルカリ金属又はアルカリ土類金属のほう酸塩の存在下、窒素雰囲気中、2000℃×3〜7時間加熱処理し、結晶を発達させたBNを粉砕後、必要に応じて硝酸等の強酸によって精製することによって製造することができる。
【0017】
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、上記樹脂が上記熱伝導性フイラーを含有してなる成形体であり、外力によって容易に変形し、しかも連通孔を有してなることが特徴である。熱伝導性フイラーの含有量は、20〜70体積%特に35〜45体積%であることが好ましい。20体積%未満では、樹脂成形体に十分な熱伝導性を付与することができず、また70体積%をこえると、樹脂成形体の機械的強度が低下し、用途に著しい制約を受ける。
【0018】
本発明において、「外力によって容易に変形する」とは、0.1MPa程度の小さい荷重でも外観からわかる程度に変形する高柔軟性であることを意味する。その程度は、0.1MPaの荷重をかけた時に厚みが5%以上変形するか、アスカーC硬度が100以下であることが好ましい。その調整は、樹脂の硬化程度、熱伝導性フイラーの充填量、更には後記する連通孔の大きさとその数などによって行うことができる。
【0019】
また、本発明における「連通孔」とは、図1に例示するように、樹脂成形体の一方の面から反対面にわたって貫通した気孔を意味する。連通孔の大きさとしては、気孔断面積の平均が0.1〜10mm2 であることが好ましく、またその本数は、単数でも複数でもよいが、樹脂成形体の気孔率が5〜50%特に10〜30%となる本数であることが好ましい。
【0020】
連通孔は、目視又は顕微鏡観察によって確認することができ、その気孔断面積広さは、顕微鏡写真の画像処理によって測定することができる。また、樹脂成形体の気孔率は、樹脂成形体の単位断面積当たりの気孔断面積の割合を測定することによって求めることができる。
【0021】
本発明の熱伝導性樹脂成形体の形状については全く任意であり、用途に応じて適切な形状が選択される。シート状ないしは矩形状のものは、熱伝導性シートや高柔軟性放熱スペーサーとして使用される。この場合において、連通孔は樹脂成形体の厚み方向に形成されていることが好ましい。更には、図2に示すように、シートの厚み方向に配向しているBN粒子の割合が、シートの幅方向に配向している割合よりも多くすることが更に好ましい。具体的には、シートの厚み方向にX線を照射して得られたX線回折図において、<100>面(a軸)に対する<002>面(c軸)のピーク比(<002>/<100>)が6以下であることが好ましい。このような状態にしてBN粒子を樹脂に充填する方法については後記する。
【0022】
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、電子機器の放熱部材として好適であり、連通孔のそれぞれの開気孔面を発熱電子部品面とヒートシンク面に接触させ、両者間に介在させて使用されることが好ましい。放熱部材の介在には、通常、締め付け外力が加わるので、それによって連通孔の一部又は全部が押しつぶされた状態となっている。
【0023】
次に、本発明の熱伝導性樹脂成形体の製造方法について説明する。
【0024】
先ず、樹脂と熱伝導性フイラーを混合する。両者の割合は、樹脂30〜80体積%、熱伝導性フイラー70〜20体積%であることが好ましい。混合は、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー等を用いて行われる。次いで、この混合物を複数穴を有するダイスより押し出して未硬化の棒状成型物を成形し、それらの複数本を連通孔となる空隙を設けて集結する。一本の棒状成型物の断面積(ダイスの穴径に相当)は、0.5〜300mm2 とすることが好ましく、これによって、熱伝導性フイラーがBN粉末である場合、混合物がダイスの狭い流路を通過する際にBN粒子を一定方向に配向させることができ、もって本発明の熱伝導性樹脂成形体の厚み方向に配向しているBN粒子の割合が、幅方向に配向している割合よりも容易に多くすることが可能となる。
【0025】
次に、未硬化の棒状成型物の複数本を、本発明の熱伝導性樹脂成形体の連通孔となる空隙を設けて集結し、所望長さに切断してから硬化させるか、又は硬化させてから所望長さに切断することによって、本発明の熱伝導性樹脂成形体を製造することができる。
【0026】
未硬化棒状成型物の集結物の外観形状は柱状体であり、その平面(断面)形状は連通孔を有する矩形、楕円、円などである。その平面形状の大きさについては、対角線、直径、長径等の最大長さが30cm程度であることが、切断の容易さや樹脂の硬化の点で好ましい。
【0027】
未硬化棒状成型物の集結物の硬化は、遠赤外乾燥炉内を通過させる、熱風乾燥機に入れて加熱するとによって行われる。なお、棒状成型物の切断幅、すなわち本発明の熱伝導性樹脂成形体の厚みは、0.05〜5mm特に0.2〜2mmであることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例と比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0029】
実施例1
ミラブル型シリコーンゴム(東芝シリコーン社製、商品名「TSE2913U」)に、平均粒子径15μm、平均粒子厚み1μmのBN粉末(電気化学工業社製、商品名「デンカボロンナイトライド」)を表1に示す割合で配合し、ミキサー(神戸製鋼社製「BBミキサー」)で混合し、更にシリコーンゴム用加硫剤(2、4−ジクロロパーオキサイド)、シリコーンゴム用難燃付与剤(白金含有イソプロピルアルコール)、フイラー分散剤(日本ユニカー社製、商品名「A−173」)をそれぞれ少量添加して熱伝導性コンパウンドを調製した。
【0030】
次いで、直径3mmの穴が縦に17列、横に17列設けられたダイスから、上記コンパウンドを押し出して未硬化の棒状成型物を成形し、それらの全てを自重と側面ロールによって集結しながら(集結体の平面形状は50×50mm程度である)、150℃の遠赤外乾燥炉を5分間通過させて加硫硬化させた後、幅(厚み)1mmに切断して、図1に示すような本発明の熱伝導性樹脂成形体を製造した。
【0031】
実施例2
樹脂としてA液(ビニル基を有するオルガノポリシロキサン)とB液(H−Si基を有するオルガノポリシロキサン)の二液性の付加反応型液状シリコーン(東レダウコーニング社製、商品名「SE−1885」)をA液対B液の混合比を表1に示す配合(体積%)で混合してコンパウンドを調製したこと以外は実施例1と同様にして熱伝導性樹脂成形体を製造した。
【0032】
実施例3
遠赤外乾燥機を通さなかったこと以外は実施例2と同様にして熱伝導性樹脂成形体を製造した。
【0033】
比較例1〜2
押し出し口が平面形状であるダイスを用いたこと以外は、実施例1又は実施例2と同様にして樹脂成形体を製造した。
【0034】
比較例3
実施例1で調製された熱伝導性コンパウンドを、圧力50kg/cm2 、温度150℃、30分間の加圧プレスを行って樹脂成形体を製造した。
【0035】
上記で得られた樹脂成形体について、以下に従う熱伝導率、「外力によって容易に変形する」指標としての硬度、連通孔の有無、及び気孔率を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0036】
(1)熱伝導率
樹脂成形体を25×25mmに切断し、これに15×15mmの銅製ヒーターケースと銅板との間にはさみ、締付けトルク5kgf−cmにてセットした後、銅製ヒーターケースに電力15Wをかけて4分間保持し、銅製ヒーターケースと銅板との温度差を測定し、熱抵抗(℃/W)=温度差(℃)/電力(W)、にて熱抵抗を算出した。次いで、銅製ヒーターケースと銅板の伝熱面積を2.25cm2 を用い次式により、熱伝導率を算出した。
【0037】
熱伝導率(W/mK)={電力(W)×シート厚(m)}/{伝熱面積(m2)×温度差(℃)}
【0038】
(2)「外力によって容易に変形する」指標としての硬度硬度
樹脂成形体を数枚重ね厚みを10mmとし、アスカーC硬度計にて硬度を測定した。
【0039】
(3)連通孔の有無
目視と顕微鏡写真によって行った。
【0040】
(4)気孔率
樹脂成形体の単位断面積当たりの気孔断面積の割合を測定した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1より、実施例の熱伝導性樹脂成形体は、比較例の樹脂成形体に比べて、熱伝導性が大幅に向上し、しかも高柔軟性であることがわかる。
【0043】
次に、実施例で製造された本発明の熱伝導性樹脂成形体を、ボールグッリドアレイ式のSRAMとヒートシンクの間にわずかの荷重をかけて介在させたところ良く密着し、作動時の温度上昇の少ない高信頼性の電子機器を作製することができた。
【0044】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、高柔軟性かつ高熱伝導性の樹脂成形体を生産性良く製造することができる。製造された熱伝導性樹脂成形体は、熱伝導性シート、柔軟性放熱スペーサー等の電子機器の放熱部材として好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱伝導性樹脂成形体の斜視図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】従来の熱伝導性シートの厚み方向における断面図
【符号の説明】
1 熱伝導性樹脂成形体
2 樹脂
3 熱伝導性フイラー
4 連通孔
Claims (2)
- 熱伝導性フイラー含有の樹脂組成物を用いて未硬化の棒状成型物を成形し、それらの複数本を連通孔となる空隙を設けて集結させ、その集結物を所望長さに切断してから硬化させるか、又は硬化させてから切断することを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
- 熱伝導性フイラー含有樹脂組成物がBN粒子を20〜70体積%を含むシリコーンであり、棒状成型物の断面積が0.5〜300mm2 、集結物の気孔率が5〜50%、切断幅が0.05〜5mmであることを特徴とする請求項1記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
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