JP3720596B2 - 現在位置検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、数値制御装置の現在位置検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
数値制御装置は、通常各軸を駆動するサーボーモータに対して速度指令や位置指令を出力し、速度フィードバック信号や位置フィードバック信号を帰還させることによって速度制御や位置制御を行っている。
【0003】
このような数値制御装置において、ある軸について該軸の現在位置が所定の範囲内にあるか、あるいは範囲外であるかの確認を要する場合がある。たとえば、数値制御装置によってプレス軸を制御する場合に、該プレス軸がワークに接触する位置範囲に達しているかを確認する必要がある。プレス加工では、ワークに接触するまでの移動動作と、ワークと接触した後のプレス動作では、その速度や加速度の制御態様が異なり、プレス軸の位置範囲に応じた制御を行う必要がある。また、安全性の点において、プレス軸や該プレス軸で駆動されるワークの位置確認が求められる。
【0004】
通常、数値制御装置では位置制御を行うために、リニアスケール等の位置検出装置で位置信号を検出し、この位置信号をフィードバックして位置制御を行っている。そこで、従来、この位置信号から現在位置を求め、該現在位置が所定の位置範囲内に達していた場合に現在位置出力信号を出力し、この現在位置出力信号によって現在位置の検出を行い、これによって位置範囲の確認を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の現在位置検出方法では、動作範囲の境界において、現在位置出力信号が変動するという問題がある。図10は従来の現在位置検出方法の動作を説明するための図である。図10(a)において、現在位置出力信号を出力する動作範囲の境界を定めるしきい値をP0とすると、従来の現在位置検出方法では、位置信号Pがしきい値P0よりも小さい値であり、位置信号Pが動作範囲内にある場合に現在位置出力信号を出力し(図10(b)中のAB,CE)、位置信号Pがしきい値P0よりも大きな値であり、位置信号Pが動作範囲外にある場合には現在位置出力信号の出力を停止する(図10(b)中のA以前,BC,E以降)。
【0006】
ここで、図10(a)に示すように、しきい値P0の付近で位置信号Pが変動すると、現在位置出力信号はオン,オフを繰り返し、不安定な信号となる。数値制御装置において、現在位置出力信号は、制御の態様を選択する信号や、安全確認の信号として用いている。そのため、この信号が不安定となると、制御が不安定となったり、安全性の点でも問題が生じることになる。
【0007】
特に、プレス軸では微妙な動作が要求されるため、現在位置出力信号によってプレス中であることの判別を行う場合には、この判定が困難となる。
【0008】
そこで、本発明は従来の問題点を解決し、安定した現在位置出力信号を得ることができる現在位置検出方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、数値制御装置の位置検出において、現在位置が設定された範囲内にあるとき現在位置出力信号を出力するものであり、設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、現在位置が設定範囲内あるいは設定範囲外の何れにあるかをしきい値を選択して行うことによって、現在位置が設定範囲の境界で変動する際に生じる現在位置出力信号の変動を除去して、安定した現在位置出力信号を出力するものである。
【0010】
なお、設定範囲は、数値制御装置の制御対象がおいてそれぞれ定める動作範囲とすることができ、例えば、数値制御装置の各軸について設定される動作範囲とすることができる。
【0011】
本発明の現在位置検出方法の第1の態様は、数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、現在位置と移動方向を基にしきい値を選択し、数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、検出した現在位置と選択したしきい値とを比較し、比較結果に基づいて現在位置が設定範囲内にあることを検出するものである。
【0012】
第1の態様において、現在位置が選択されたしきい値を超えて設定範囲内に移動すると、現在位置出力信号を出力する。この設定範囲を定めるしきい値の選択は、現在位置が設定範囲に対してどのような移動を経ているかの移動方向に基づいて行う。この移動方向に基づいてしきい値を設定することによって、現在位置が設定範囲を定める境界付近を変動した場合であっても、現在位置出力信号は変動せず、安定した出力を行うことができる。
【0013】
本発明の現在位置検出方法の第2の態様は、数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、現在位置と第1のしきい値との比較において、第1のしきい値が定める設定範囲内である場合に、現在位置出力信号の出力、及び第2のしきい値への切り換えを行い、現在位置と第2のしきい値との比較において第2のしきい値が定める設定範囲外である場合に、現在位置出力信号の出力の停止、及び第1のしきい値への切り換えを行うものである。第2の態様において、第1の態様と同様に、現在位置が設定範囲内に移動した場合に現在位置出力信号を出力する。
【0014】
第2の態様は、設定範囲を、現在位置と第1,2のしきい値との関係に基づいて設定するものであり、現在位置が第1のしきい値を超えて設定範囲内に移動した場合に、現在位置出力信号を出力するとともに、しきい値を第2のしきい値に切り換える。また、現在位置が第2のしきい値を超えて設定範囲外に移動した場合には、現在位置出力信号の出力を停止するとともに、しきい値を第1のしきい値に切り換える。
【0015】
この現在位置としきい値との関係に基づいて、現在位置出力信号の出力制御としきい値の切り換えを行うことによって、現在位置が設定範囲を定める境界付近を変動した場合であっても、現在位置出力信号は変動せず、安定した出力を行うことができる。
【0016】
本発明の現在位置検出方法の第3の態様は、数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、現在位置が第1のしきい値を第1の方向で通過する場合に現在位置出力信号の出力を開始し、現在位置が第2のしきい値を第2の方向で通過する場合に現在位置出力信号の出力を停止する。
【0017】
第3の態様は、設定範囲を、現在位置としきい値との値の比較と、現在位置がしきい値を超える際の移動方向とに基づいて設定するものである。
現在位置が第1のしきい値を超える場合に、その移動方向を判定することによって設定範囲内に向かう移動を検出し、この場合に現在位置出力信号を出力する。ここでは、設定範囲内に向かう方向を第1の方向としている。
【0018】
また、現在位置が第2のしきい値を超える場合に、その移動方向を判定することによって設定範囲外に向かう移動を検出し、この場合に現在位置出力信号の出力を停止する。ここでは、設定範囲外に向かう方向を第2の方向としている。
【0019】
移動方向の判定は、しきい値を挟んだ現在位置の増減によって判定することができる。
【0020】
この現在位置としきい値との値の比較と、現在位置がしきい値を超える際の移動方向とに基づいて、現在位置出力信号の出力制御を行うことによって、現在位置が設定範囲を定める境界付近を変動した場合であっても、現在位置出力信号は変動せず、安定した出力を行うことができる。
【0021】
本発明の現在位置検出方法の第4の態様は、数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、設定範囲を定める、第1のしきい値及び第1のしきい値よりも大きな第2のしきい値の少なくとも2つのしきい値と、経過時間を定める設定時間とを備え、数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、現在位置と第1のしきい値との比較において、第1のしきい値が定める設定範囲内への移動時に、現在位置出力信号の出力、第2のしきい値を有効とする時間を計時する時間計測の開始、及び第2のしきい値への切り換えを行い、時間計測が前記設定時間を経過した後に第1のしきい値への切り換えを行い、第1のしきい値に切り換えた後、現在位置と第1のしきい値との比較において、第1のしきい値が定める設定範囲外である場合に、現在位置出力信号の出力を停止する。
【0022】
第4の態様は、第2のしきい値から第1のしきい値への切り換えを、現在位置が第1のしきい値を超えた時点から設定時間が経過した後に行うものである。
【0023】
現在位置出力信号は、現在位置が第1のしきい値が定める設定範囲内に移動した時点で出力し、現在位置が第1のしきい値が定める設定範囲外に移動した時点で出力を停止する。現在位置出力信号の出力中において、現在位置が第1のしきい値を超えた時点から設定時間内に、現在位置が第1のしきい値を超えて設定範囲外に移動する場合には、しきい値を十分に大きな値の第2のしきい値とすることによって、現在位置出力信号の出力の停止は行わない。
【0024】
一方、現在位置が第1のしきい値を超えた時点から設定時間が経過した後において、現在位置が第1のしきい値を超えて設定範囲外に移動する場合には、しきい値を第1のしきい値に切り換えておくことによって、現在位置出力信号の出力を停止する。
【0025】
なお、前記設定時間内において、現在位置が第1のしきい値を再度超えた場合には、この時点から計時を再開して、現在位置が第1のしきい値を超える最新の時点からの設定時間を用いる。
【0026】
第2のしきい値から第1のしきい値への切り換えを、現在位置が第1のしきい値を超えた時点から設定時間の間で制限することによって、現在位置が設定範囲を定める境界付近を変動した場合であっても、現在位置出力信号は変動せず、安定した出力を行うことができる。
【0027】
第2の〜第4の態様のいずれの態様も、設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、該しきい値を現在位置と移動方向に応じて選択し、数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、検出した現在位置と選択したしきい値とを比較し、比較結果に基づいて現在位置が所定範囲内にあることを検出するという第1の態様の特徴点を共通に備え、現在位置が設定範囲を定める境界付近を変動した場合であっても、現在位置出力信号は変動せず、安定した出力を行うことができる。
【0028】
したがって、本発明の現在位置検出方法によれば、プレス軸のような微妙な動作が要求される場合であっても、現在位置出力信号によってプレス中であるか否かの判別を容易に行うことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の現在位置検出方法を適用することができる装置の一構成例を示すブロック図である。図1において、数値制御装置(NC装置)1は各軸を駆動するモータ2に対して指令を出力して制御を行う。数値制御装置1はリニアスケール等の位置検出装置3で位置信号を検出し、この位置信号をフィードバックして位置制御を行っている。
【0030】
本発明の現在位置検出方法は、この位置信号を入力して現在位置出力信号を出力するものであり、図1中では該機能を現在位置出力信号形成手段4で表している。現在位置出力信号形成手段4は、現在位置出力部5及び動作形態判定部6の機能部分を備える。
動作形態判定部6は、異なる大きさのしきい値を備え、使用するしきい値を選択する機能部分である。また、現在位置出力部5は、入力した現在位置信号に基づいて位置を求め、動作形態判定部6で選択したしきい値に基づいて、求めた現在位置が設定範囲内か設定範囲外であるかを判定し、設定範囲内である場合には現在位置出力信号を出力する機能部分である。なお、動作形態判定部6によるしきい値の選択は、現在位置出力部5で求めた数値制御装置の現在位置の履歴や設定範囲との関係に基づいて行う。
【0031】
なお、図1において、現在位置出力信号形成手段4は、単独の装置で構成することも、数値制御装置1内に構成することもでき、また、ハードウエアで構成することもソフトウエアで構成することもできる。
【0032】
次に、本発明の現在位置検出方法の第1の形態を図2のフローチャート、図3の信号図、図4の設定範囲図を用いて説明する。
ここでは、第1の設定範囲のしきい値をP1とし、第2の設定範囲のしきい値をP2(P1<P2)とし、位置を表す値が各しきい値より大きい場合に各設定範囲の外側にあり、位置を表す値が各しきい値より小さい場合に各設定範囲の内側にあるものとしている。
【0033】
以下、位置信号が第1,第2の設定範囲の外側から内側に向かって移動する場合について説明する。したがって、位置信号は、はじめに第2の設定範囲内に移動した後、第1の設定範囲内に移動する。また、以下の動作例では、位置信号が第1の設定範囲内に移動した場合に現在位置出力信号を出力し、その後位置信号が第2の設定範囲外に移動した場合に現在位置出力信号の出力を停止する場合について説明する。
【0034】
はじめに、動作形態判定部6において、異なる値の第1,2にしきい値P1,P2を定め、このしきい値P1,P2によって二つの異なる第1,第2の設定範囲を設定する(ステップS1)。動作形態判定部6は、初期状態としてステップS1で定めたしきい値P1を用いて第1の設定範囲を設定する。この第1の設定範囲は、図3においてしきい値P1で定まる破線で示している(ステップS2)。
【0035】
現在位置出力部5は、位置検出装置3から位置信号を入力して位置Pを取り込む(ステップS3)。動作形態判定部6は、現在位置出力部5から位置Pを入力し、第2の設定範囲を定めるしきい値P2と比較した(ステップS4)後、第1の動作範囲を定めるしきい値P1と比較して、位置Pが第1の動作範囲内にあるか否かの判定を行う(ステップS6)。なお、ステップS4の判定において、位置Pがしきい値P2より大きい場合には、ステップS5の現在位置出力信号の出力を停止する工程に進むが、位置Pがしきい値P2よりも大きい位置にあるような初期状態(図3中のz)では、現在位置出力信号は未出力であるためステップS6に進む。
【0036】
位置Pが図3中のaの位置からしきい値P1を通過して(図3中のA)bの位置に達すると、動作形態判定部6はステップS6においてP<P1を判定して、第1のしきい値P1から第2のしきい値P2に切り換え、設定範囲を第1の設定範囲から第2の設定範囲に変更する(ステップS7)。現在位置出力部5は現在位置出力信号を出力する(ステップS8)。
【0037】
この状態で、位置信号Pが図3中のbの位置からしきい値P1を超えて(図3中のB)cの位置に移動したり、また、位置信号Pが図3中のcの位置からしきい値P1を通過して(図3中のC)dの位置に移動したり、さらに、位置信号Pが図3中のdの位置からしきい値P1を超えて(図3中のE)eの位置に移動する等、しきい値P1を境にして変動した場合には、位置信号Pがしきい値P2を超えない限り現在位置出力信号の出力を続行する。これによって、現在位置がしきい値付近で変動した場合であっても、現在位置出力信号を安定して出力することができる。
【0038】
現在位置が図3中のeの位置からしきい値P2を超えて(図3中のF)fの位置に移動した場合には、動作範囲選択部6は現在位置が2の動作範囲の外に出たものと判定し(ステップS4)、現在位置出力部6は現在位置出力信号の出力を停止する(ステップS5)。また、動作範囲選択部6はしきい値をP2からP1に変更する(ステップS2)。
【0039】
したがって、本発明の現在位置検出方法によれば、出力される現在位置出力信号は図3(b)に示すように、途中の段階で現在位置の変動が生じた場合であっても、断続することなく安定した出力を行うことができる。
【0040】
図4は、本発明の現在位置検出方法における設定範囲と位置Pの履歴との関係を説明するための図である。なお、図4中に示すしきい値P1,P2、及びa〜f,zの符号は、図3中の符号と対応して示している。
【0041】
位置Pがしきい値P2の外側から第1,2の設定範囲内に向かって移動する場合に(図4中のa)、現在位置出力信号を出力する設定範囲はしきい値をP1とする第1の設定範囲となる。位置Pがしきい値をP1に達すると、設定範囲はしきい値をP2とする第2の設定範囲に変更される。
【0042】
第2の設定範囲による判定は、位置Pがしきい値P2を超えない限り変更されない(図4中のb,c,d,e)。
【0043】
位置Pがしきい値P2を超えると、設定範囲はしきい値をP1とする第1の設定範囲に変更され(図4中のf)、初期の状態(図4中のz)に戻る。
【0044】
したがって、本発明の第1の形態におけるしきい値、及び設定範囲はしきい値P1,P2を変更するヒステリシス特性を備えたものとなる。位置Pは、第1のしきい値P1に達するまでは第1の設定範囲にしたがって現在位置出力信号を出力する。第1のしきい値p1に達した後は、第2のしきい値P2に達するまで第2の設定範囲にしたがって現在位置出力信号を出力する。第1のしきい値P1と第1のしきい値P2との間は、しきい値P1の近傍における位置の変動に対する不感帯を形成し、これによって、安定した現在位置出力信号の出力を行う。
【0045】
次に、本発明の現在位置検出方法の第2の形態を図5のフローチャート、図6,7の信号図を用いて説明する。
ここでは、位置Pが第1のしきい値P1を第1の方向(負の方向)で通過したとき、現在位置出力信号が出力されるものとし、位置Pが第2のしきい値P2を第2の方向(正の方向)で通過したとき、現在位置出力信号の出力を停止するものとする。なお、図6は第1のしきい値P1を第2のしきい値P2より大きい値に設定した場合を示し、図7は第1のしきい値P1を第2のしきい値P2より小さい値に設定した場合を示す。図6(a),図7(a)において、時間を横軸に設定し、数値制御装置の制御対象の機械座標軸を縦軸に設定し、機械座標値である位置信号が時間変化とともに、a,b,・・・,gと移動する様子を示している。図6(b),図7(b)は、このときの現在位置出力信号を表している。
【0046】
以下、図6の場合を例として説明する。
はじめに、動作形態判定部6において、現在位置出力信号の基準となる、異なる値の第1,2にしきい値P1,P2を定める(ステップS11)。この第1,2のしきい値は、図6においてしきい値P1,しきい値P2定まる破線で示している。
【0047】
現在位置出力部5は、位置検出装置3から位置信号を入力して位置Pを取り込む(ステップS12)。動作形態判定部6は、現在位置出力部5から位置Pを入力し、第2のしきい値P2を通過したかを判定した(ステップS13)後、第1のしきい値P1を通過したかを判定し(ステップS16)、さらに、位置Pが第1のしきい値P1を負の方向で通過したかの確認を行う(ステップS17)。
【0048】
ステップS13の判定において、位置信号がしきい値P2を通過したことが判明すれば、位置信号が第2のしきい値P2を正の方向で通過したかの確認を行う(ステップS14)。該当すれば、ステップS15の現在位置出力信号の出力を停止する工程に進む。該当しない場合には、現在位置出力信号の変化はないため、再びステップS12に戻る。また、位置Pがしきい値P2通過していない状態(図6中のa)では、現在位置出力信号は未出力であるためステップS16に進む。
【0049】
機械座標値の位置信号が、図6(a)のaに位置から第1のしきい値を通過してbの位置に達すると、動作形態判定部6はステップS16において、位置信号Pが第1のしきい値P1を通過したことを判定し、さらに、位置信号Pが負の方向に第1にしきい値P1を通過したか否かの判定を行う(ステップS17)。該当する場合には、現在位置出力信号を出力する(ステップS18)。
【0050】
この状態で、位置信号Pが第2のしきい値P2を正の方向に通過するまで(図6中のE)、現在位置出力信号を出力を維持する。
【0051】
したがって、図6(a)のbの位置から第1のしきい値P1を正の方向に通過して(図6(a)のB)図6(a)のcの位置に移動したり、また、位置信号Pが図6(a)のdの位置から第2のしきい値P2を負の方向で通過して(図6(a)のD)図6(a)のeの位置に移動しても、現在位置出力信号の出力を続行する。これによって、境界付近で位置が変動した場合であっても、現在位置出力信号を安定して出力することができる。
【0052】
位置が図6(a)のeの位置から、第2のしきい値P2を超えて(図6(a)のE)図6(a)のfの位置に移動した場合には(ステップS13)、動作形態判定部6は位置が第2のしきい値P2を正の方向に通過したと判定し(ステップS14)、現在位置出力部6は現在位置出力信号の出力を停止する(ステップS15)。
【0053】
なお、図6に示すように、現在位置出力信号の出力を停止するための第2のしきい値P2を、現在位置出力信号を出力するための第1のしきい値P1よりも小さく設定した場合、位置信号Pによっては現在位置出力信号の出力が停止しない。この場合には、必要時に位置信号Pを取り込んで位置確認を行うことによって対処することができる。
【0054】
次に、図7の場合を例として説明する。なお、図6の場合と重複する部分は省略して記載する。
はじめに、動作形態判定部6において、現在位置出力信号の基準となる、異なる値の第1,2にしきい値P1,P2(P1<P2)を定める(ステップS11)。この第1,2のしきい値は、図7においてしきい値P1,しきい値P2定まる破線で示している。
【0055】
図7(a)中のzからaの移動において、ステップS13の判定で位置信号がしきい値P2を通過したことを確認し、ステップS14の判定で位置信号が第2のしきい値P2を負の方向で通過したことを確認すると、現在位置出力信号を出力することなくステップS16に進む。
【0056】
機械座標値の位置信号が、図7(a)のaに位置から第1のしきい値を通過してbの位置に達すると、動作形態判定部6はステップS16において、位置信号Pが第1のしきい値P1を通過したことを判定し、さらに、位置信号Pが負の方向に第1にしきい値P1を通過したか否かの判定を行う(ステップS17)。該当する場合には、現在位置出力信号を出力する(ステップS18)。
【0057】
この状態で、位置信号Pが第2のしきい値P2を正の方向に通過するまで(図7中のE)、現在位置出力信号を出力を維持する。
【0058】
したがって、図7(a)のbの位置から第1のしきい値P1を正の方向に通過して(図7(a)のB)図7(a)のcの位置に移動したり、また、位置信号Pが図7(a)のcの位置から第1のしきい値P1を負の方向で通過して(図6(a)のC)図7(a)のdの位置に移動したり、図7(a)のdの位置から第1のしきい値P1を正の方向に通過して(図7(a)のD)図7(a)のeの位置に移動しても、現在位置出力信号の出力を続行する。これによって、境界付近で位置が変動した場合であっても、現在位置出力信号を安定して出力することができる。
【0059】
位置が図7(a)のeの位置から、第2のしきい値P2を超えて(図7(a)のE)図7(a)のfの位置に移動した場合には(ステップS13)、動作形態判定部6は位置が第2のしきい値P2を正の方向に通過したと判定し(ステップS14)、現在位置出力部6は現在位置出力信号の出力を停止する(ステップS15)。
【0060】
したがって、現在位置検出方法の第2の形態によれば、出力される現在位置出力信号は図6(b)に示すように、途中の段階で位置変動が生じた場合であっても、断続することなく安定した出力することができる。
【0061】
したがって、本発明の第2の形態における現在位置出力信号は、第1,2のしきい値P1,P2を、それぞれ第1,2の方向で通過した場合のみ信号が変更されるヒステリシス特性を備えたものとなる。位置Pは、第1のしきい値P1を第1の方向で通過した場合にみ現在位置出力信号を出力し、その後は、第2のしきい値P2を第2の方向で通過するまで現在位置出力信号を出力し続ける。これにより、第1のしきい値の近傍における位置変動に対して不感帯を形成し、これによって、安定した現在位置出力信号の出力を行う。
【0062】
次に、本発明の現在位置検出方法の第3の形態を図8のフローチャート、図9の信号図を用いて説明する。
ここでは、位置Pが第1のしきい値P1を通過したとき、現在位置出力信号が出力及び出力の停止が行われるものとし、第2のしきい値P2は第1のしきい値P1よりも十分に大きな値とする。図9(a)時間を横軸に設定し、数値制御装置の制御対象の機械座標軸を縦軸に設定し、機械座標値である位置信号が時間変化とともに、a,b,c,dと移動する様子を示している。図9(b)はタイマーの計時状態を示し、図9(c)は、このときの現在位置出力信号を表している。
【0063】
はじめに、動作形態判定部6において、現在位置出力信号の基準となる、異なる値の第1,2にしきい値P1,P2(P1<<P2)、及び時間T0を定める(ステップS21)。この第1,2のしきい値は、図9においてしきい値P1,しきい値P2定まる破線で示している。
【0064】
現在位置出力部5は、位置検出装置3から位置信号を入力して位置Pを取り込む(ステップS22)。動作形態判定部6は、現在位置出力部5から位置Pを入力し、第1のしきい値P1を通過したかを判定する(ステップS23)。
【0065】
図9(a)中のaからbの移動において、ステップS23の判定により位置信号がしきい値P1を通過したことが判明すれば、図9(a)のAの現在位置出力信号を出力し(ステップS24)、しきい値を第2のしきい値P2とし(ステップS25)、タイマーの計時を開始する。タイマーは、ステップS21で設定した時間T0を計時するものであり、図9(b)では計時ごとに時間T0から減少する状態で示している(ステップS26)。
【0066】
タイマーによる計時を続行しながら、位置Pを入力し(ステップS27)、第1のしきい値P1を通過したかを判定する(ステップS28)。
【0067】
ステップS28の判定では、図9(a)中のbからcの移動を検出する(図9(a)中のB)。このとき、しきい値は第2のしきい値P2に変更されているため、現在位置出力信号は変化しない。
【0068】
取り込んだ位置信号P(ステップS29)を第1のしきい値P1と比較する(ステップS30)。位置信号Pが第1のしきい値P1以下と判定され、しきい値P1を超えたと判定すると、タイマーの計時時間Tが設定時間T0を超えているか否かを判定する(ステップS31)。
【0069】
タイマーの計時時間Tが設定時間T0を超えていない場合(図7(a)のC)には、しきい値は第2のしきい値P2のままとするとともに、ステップS25に戻ってタイマーをリセットし、計時を再開する。
【0070】
ステップS31において、タイマーの計時時間Tが設定時間T0を超えた場合には(図7(b)のD)、しきい値を第1のしきい値P1に変更する(図7(a)のe)(ステップS32)。しきい値を第1のしきい値P1に変更した後、取り込んだ位置信号P(ステップS33)を第1のしきい値P1と比較する(ステップS34)。位置信号Pが第1のしきい値P1を超えた場合には、現在位置出力信号の出力を停止する(図9(a),(c)中のE)(ステップS35)。
【0071】
したがって、タイマーが計時を続行している間では、しきい値は十分に大きな値の第2のしきい値P2に変更されているため、この間に、図9(a)のbの位置から第1のしきい値P1を正の方向に通過して(図9(a)のB)図9(a)のcの位置に移動したり、また、位置信号Pが図9(a)のcの位置から第1のしきい値P1を負の方向で通過して(図9(a)のC)図9(a)のdの位置に移動しても、現在位置出力信号の出力を続行する。これによって、境界付近で位置が変動した場合であっても、現在位置出力信号を安定して出力することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、安定した現在位置出力信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の現在位置検出方法を適用することができる装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の現在位置検出方法の第1の形態を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の現在位置検出方法の第1の形態を説明するための信号図である。
【図4】本発明の現在位置検出方法の第1の形態における動作範囲と現在位置の履歴との関係を説明するための図である。
【図5】本発明の現在位置検出方法の第2の形態を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の現在位置検出方法の第2の形態を説明するための信号図である。
【図7】本発明の現在位置検出方法の第2の形態を説明するための信号図である。
【図8】本発明の現在位置検出方法の第3の形態を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の現在位置検出方法の第3の形態を説明するための信号図である。
【図10】従来の現在位置検出方法の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
1 数値制御装置
2 モータ
3 位置検出装置
4 現在位置出力信号形成手段
5 現在位置出力部
6 動作状態判定部
Claims (2)
- 数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、
設定範囲を定めるしきい値を少なくとも2つ備え、
数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、
現在位置が第1のしきい値を第1の方向で通過する場合に、現在位置出力信号の出力を開始し、
現在位置が第2のしきい値を第2の方向で通過する場合に、現在位置出力信号の出力を停止する、現在位置検出方法。 - 数値制御装置の制御対象の現在位置が設定範囲内にあることを検出する現在位置検出方法において、
設定範囲を定める、第1のしきい値及び第1のしきい値よりも大きな第2のしきい値の少なくとも2つのしきい値と、経過時間を定める設定時間とを備え、
数値制御装置の制御対象の現在位置を検出し、
現在位置と第1のしきい値との比較において、第1のしきい値が定める設定範囲内への移動時に、現在位置出力信号の出力、第2のしきい値を有効とする時間を計時する時間計測の開始、及び第2のしきい値への切り換えを行い、
前記時間計測が前記設定時間を経過した後に第1のしきい値への切り換えを行い、
前記第1のしきい値への切り換えの後、現在位置と第1のしきい値との比較において、第1のしきい値が定める設定範囲外である場合に、現在位置出力信号の出力の停止を行う、現在位置移動検出方法。
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-
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