JP3719356B2 - 脱臭フィルターおよびその製造方法、空調装置 - Google Patents
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Description
【発明が関連する技術分野】
この発明は、空気清浄機あるいは空調機器等に搭載し、室内の汚染空気を脱臭することにより浄化する脱臭フィルターに関するものであり、特に人体臭、トイレ臭、腐敗臭を速やかに除去する脱臭フィルターの製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、冷暖房効果を高めるために居住空間の断熱化、気密化が進むにつれて室内空気の汚染が問題となってきた。室内空気を脱臭する方法として、換気機器を用いて新鮮な外気を導入して換気を行う方法および空気清浄機を用いて室内の汚染空気を脱臭することにより浄化する方法が考えられる。換気は脱臭効果以外に居住者が発生する二酸化炭素の排出効果と酸素の補給効果があり、換気機器と空気清浄機を同時に使用する方法が最も効果的である。空気清浄機や空調機器に搭載され、実用化されている脱臭方式には添着活性炭方式、オゾン脱臭方式、光触媒方式等がある。添着活性炭方式では添着活性炭を基材とする脱臭フィルターを送風機やダクトなどの風路に設置し、気流中の臭気ガスを速やかに化学吸着して除去するため、脱臭効果の速効性が高い。オゾン脱臭方式では風路に設置したオゾン発生器よりオゾンを発生し、気流中の臭気ガスを酸化分解することにより脱臭する。光触媒方式では微粒子状の酸化チタンに紫外線を照射して活性分子を発生させ、気流中の臭気ガスと化学反応を起こして脱臭する。上記オゾン脱臭方式および光触媒方式では化学吸着速度と比較して化学反応速度が遅いため、脱臭効果の速効性が低い。室内で発生する人体臭、トイレ臭、腐敗臭の主成分は硫化水素、メチルメルカプタンおよびアンモニアである。これらの臭気ガスを対象とし、脱臭効果の速効性が高い添着活性炭として銅イオン添着活性炭が出願されている。特開平5−7615号公報では繊維状活性炭に銅イオンを添着した消臭材料が出願されている。また、特開平9−47500号公報ではゼオライトおよび活性炭に銅イオンを添着した脱臭フィルタが出願されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
空気清浄機あるいは空調機器に搭載する脱臭フィルターは臭気ガスの除去効率が高いことと同時に風路に設置するため、圧力損失が低いことが要求される。特開平5−7615号公報に記載された繊維状活性炭に銅イオンを添着した消臭材料は図7のようにプリーツ状に成形しフィルター枠2で固定する脱臭フィルターとして用いられるが、圧力損失が高いと言う問題があった。また、特開平7−201193号公報に記載されたゼオライトおよび活性炭に銅イオンを添着した脱臭フィルターも図8のように活性炭5の粒子をフィルター枠2に充填して使用するため、圧力損失が高いと言う問題があった。本発明は空調装置との組み合わせに有効で、脱臭性能に優れると同時に圧力損失の低いフィルターを得るものである。また、本発明は、脱臭フィルターの脱臭性能および寿命に関する品質を向上させるものである。本発明は、早く且つ確実な消臭が行える脱臭フィルターの製造方法を提案するものである。また、銅イオンがフィルター全面に均一に添着される製造方法を提案するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
高分子化合物の繊維に活性炭を混抄した活性炭ペーパーを折り曲げて1平方インチあたり180個以上形成した風路を備える構造体と、活性炭ペーパーに添着した銅イオンとを備える。
【0006】
また、構造体に設けられた風路の長さは20mm以下である。
【0007】
さらに、高分子化合物の繊維であるセルロース繊維量が100%に対し活性炭量は100%乃至200%を混抄する。
【0008】
またさらに、基材にて形成した風路は、所定の長さを有する。
【0009】
高分子化合物の繊維と活性炭繊維および微粒子状活性炭の少なくとも一つとを混抄して活性炭ペーパーを形成するステップと、活性炭ペーパーを基材として用い、この基材に銅イオンを含む薬液を添着処理するステップと、基材を成形して風路を形成するステップと、を備え、薬液はロールに付着させて基材に転写させる。
【0010】
また、活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理する。
【0011】
さらに、活性炭ペーパーが生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理した。
【0012】
またさらに、薬液を添着処理した後で風路を形成する。
【0013】
さらにまた、風路を形成した後で薬液を添着処理する。
【0014】
ケーシングと、ケーシングに内蔵されたモータと、モータのモータ軸に固定されたファンと、ファンにより吸い込み吹き出される空気の通風路とを有し、この出願に係るの脱臭フィルターを備える。
【0015】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の脱臭フィルターの構造を示す斜視図である。図2はこの発明の製造方法の一つであるグラビア印刷方式の説明図である。7は風路、8は仕切り板、9は活性炭ペーパー1に銅イオンが添着処理されたハニカム形状を形成する処理された活性炭ペーパー、10は銅イオンを含む薬液、2はフィルターを形成するフィルター枠、3は印刷ロールである。
【0016】
図2の様に、セルロース繊維からなる薄い紙状のペーパーに、微粒子状活性炭を混抄した活性炭ペーパーで、先ず印刷ロール3の上に銅イオンを含む薬液が付着される。ロールを回転させることにより、印刷を行うように薬液10が活性炭ペーパー1に添着していく。この出来上がった処理済みの活性炭ペーパー9は、セルロース繊維と微粒子状活性炭を混抄した上に銅イオンが添着されている。処理された活性炭ペーパー9を加工紙としてコルゲート状に成形加工する。この成形加工された処理された活性炭ペーパー9を仕切り板8を介して積層していくことにより活性炭ペーパー9の折れ曲がった両側に風路7が形成される。活性炭ペーパー9の幅がフィルターの厚み方向長さであり、風路の長さに相当する。この様に、厚さ方向に貫通した多数の穴が空いた形の平板上の3次元構造体をハニカム状といい、この穴の中を風を通す構造である。穴の形状はコルゲート加工など加工方法にもよるが、比較的柔らかい紙状の基材のため変形し易く、ほぼ3−6角形をなす。
【0017】
この発明は、セルロース繊維と微粒子状活性炭を混抄した活性炭ペーパー1を基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路7を形成すると共に銅イオンを含む薬液10を添着処理したことを特徴とする脱臭フィルターである。セルロース繊維1に対し微粒子状活性炭を1−2混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。セルロース繊維100%に微粒子状活性炭を100%−200%混抄させるが、これは重量%で示しており、セルロース繊維を分散させた水溶液の中に充填物である微粒子状活性炭を混合して紙を漉くように薄い紙状の活性炭ペーパー1を得るものである。銅イオンの添着処理は基材の状態あるいはハニカム状に成形した後実施しても良い。基材の状態で銅イオンの添着処理を実施した場合には銅イオンの水溶液を吸い取り紙のように吸収し、銅イオンが基材全面に均一に添着された。また、同基材にコルゲート加工を施し、積層することによりハニカム状の成形品を得た後銅イオンの水溶液に浸漬することにより銅イオンの添着処理を実施することもできる。前者はコルゲート加工後積層してハニカム状に成形し、後者はそのままフィルター枠に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0018】
この発明においては基材をハニカム状に成形して風路を形成することにより、圧力損失を極めて低く抑えることができた。また、緻密なハニカム形状に成形することにより風路全体で脱臭するため臭気ガスの一過性除去効率を80%以上に保持することができた。なおハニカム状の材料では1平方インチあたりの穴の数を、セル数、と呼び、コルゲート加工では5号段すなわち約180セル/平方インチに対し、E号段、すなわち約320セル/平方インチのものを緻密なハニカム形状としている。本発明による脱臭フィルターは極めて低い静圧損失で高い一過性除去効率を実現しており、空気清浄機あるいは空調機器に搭載する脱臭フィルターに適するものである。特硫化水素、メチルメルカプタンおよびアンモニアの一過性除去効率に優れ、人体臭、トイレ臭、腐敗臭を速やかに除去する脱臭フィルターに適するものである。
【0019】
またこの発明の実施の形態は、セルロース繊維と活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパー1を基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路7を形成すると共に銅イオンを添着処理したことを特徴とする脱臭フィルターでも良い。セルロース繊維100%に対し活性炭繊維を100−200%混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。銅イオンの添着処理は基材の状態あるいはハニカム状に成形した後実施しても良い。基材の状態で銅イオンの添着処理を実施した場合には銅イオンの水溶液を吸い取り紙のように吸収し、銅イオンが基材全面に均一に添着された。また、同基材にコルゲート加工を施し、積層することによりハニカム状の成形品を得た後銅イオンの水溶液に浸漬することにより銅イオンの添着処理を実施することもできる。前者はコルゲート加工後積層してハニカム状に成形し、後者はそのままフィルター枠に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0020】
この発明においては基材をハニカム状に成形して風路を形成することにより、圧力損失を極めて低く抑えることができた。また、比表面積が極めて大きい活性炭繊維を用いることにより、微粒子状活性炭を用いた場合よりもさらに高性能化され、緻密なハニカム形状に成形することにより臭気ガスの一過性除去効率を90%以上に保持することができた。
【0021】
またこの発明の実施の形態では、セルロース繊維と活性炭繊維に微粒子状活性炭を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に銅イオンを添着処理したことを特徴とする脱臭フィルターでも良い。セルロース繊維100%に活性炭繊維を50−100%、微粒子状活性炭を50−100%混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。銅イオンの添着処理は基材の状態あるいはハニカム状に成形した後実施しても良い。基材の状態で銅イオンの添着処理を実施した場合には銅イオンの水溶液を吸い取り紙のように吸収し、銅イオンが基材全面に均一に添着された。同基材にコルゲート加工を施し、積層することによりハニカム状の成形品を得た後銅イオンの水溶液に浸漬することにより銅イオンの添着処理を実施することもできる。前者はコルゲート加工後積層してハニカム状に成形し、後者はそのままフィルター枠に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0022】
この発明においては基材をハニカム状に成形して風路を形成することにより、圧力損失を極めて低く抑えることができた。また、高価であるが比表面積が極めて大きい活性炭繊維および低価格な微粒子状活性炭を配合して用いることにより、微粒子状活性炭のみを用いた場合よりも高性能化され、緻密なハニカム形状に成形することにより臭気ガスの一過性除去効率を85%以上に保持することができた。本発明の脱臭フィルターはセルロース繊維と微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に銅イオンを添着処理することにより、圧力損失を極めて低く抑えると共に臭気ガスの高い除去効率を発現することができた。以上の通り、この発明の風路は多数の小さい穴からなるが、ハニカムのセル数を300以上とし、フィルターの厚さ、すなわち風路の長さを20mm以下として、通風量に対し風速0.6m/秒で、圧損が2mmAq以下とし、三大悪臭である硫化水素、メチルメルカプタン、アンモニアに対し除去効率が80%以上で寿命1年以上を実現できた。またこの発明はセルロース繊維である高分子化合物の繊維をベースとして説明してきたが、セルロースはブドウ糖が環状のヘミアセタール構造を取りそのヒドロキシル基がアルコール分子や他の糖との間で水を失って縮合して配糖体を生成する時に出来る化学結合であり、繊維や粒子を水に分散して湿式方で抄紙する際に、このセルロース繊維は水分が抜ける時に繊維どおしが絡まりあい強度の強いペーパーが出来るので実用的な基材が得られる。但し、セルロース以外であっても強度の強い基材が得られる高分子化合物、例えば他の糖を使用した有機の高分子化合物の繊維や抄紙する際に繊維どおしが絡まり合う合成繊維であれば良いことは当然である。
【0023】
実施の形態2.
この発明の別の実施の形態として製造方法について説明する。図2の説明で示したように、セルロース繊維に微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液を、先ず、グラビア印刷方式で添着処理し、この基材をハニカム状に成形して風路を形成した脱臭フィルターの製造方法である。また、セルロース繊維に微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液をグラビア印刷方式で添着処理することにより銅イオンがフィルター全面に均一に添着された。
【0024】
図2では印刷ロール3のみ示しているがこのグラビア印刷方式では、原料ロール3に巻かれた活性炭ペーパー1がこの印刷ロール3を通り送りロールで搬送されて乾燥炉で乾燥され最後は製品である薬品で処理されたペーパーとして製品ロールに巻き取られる。この印刷ロール3は両側からグラビアしても良いが、片側をプレイロールとし反対側をグラビアロールとしても良い。グラビアロールには薬液層に漬けられた転写ロールが接触しこの薬液をグラビアロールに添着させている。この発明においては銅イオンを含む薬液をグラビア印刷方式で塗布して添着することにより銅イオンが基材全面に均一に添着され、添着量を容易にコントロールすることができた。薬液を添着された後でコルゲート状に成形されると図2の幅方向の風路全体に薬液が付着することになる。
【0025】
次に、図3に活性炭ペーパーに薬液を噴霧して添着させる方法を示す。4は内部に薬液を内蔵させ圧力を加えることにより下方の吹出し口から噴霧させる噴霧器である。セルロース繊維に微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパー1が生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧して添着処理し、この基材をハニカム状に成形して風路を形成したことを特長とする脱臭フィルターの製造方法である。
【0026】
この発明においては活性炭ペーパーの抄紙工程において生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧して添着処理することにより、抄紙工程と添着工程が連続して実施できると言うメリットがある。また、生乾きの状態で添着処理を実施することにより銅イオンの水溶液が速やかに浸透し、基材全面に均一に添着することができた。また、セルロース繊維と微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーの製造工程において、活性炭ペーパーが生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧して添着処理することにより銅イオンがフィルター全面に均一に添着された。
【0027】
【実施例】
実施例1.
この発明によるセルロース繊維と微粒子状活性炭を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に銅イオンを添着処理した脱臭フィルターの斜視図を図1に示す。図中9は銅イオンを処理した活性炭ペーパー、2はフィルター枠を示す。セルロース繊維はパルプ原料を十分にフィブリル化して用いた。微粒子状活性炭は市販の粉末状活性炭を用いた。セルロース繊維1に対し微粒子状活性炭1を混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。同基材をコルゲートマシーンを用いて5号段(1平方インチ当たりのセル数は約180と目の粗いハニカム形状である。)およびE段(1平方インチ当たりのセル数は約320と目の緻密なハニカム形状である。)のコルゲートに加工した。同コルゲートを積層することによりハニカム状の成形品を得た。ハニカム状の成形品を厚さ20mmに切断した。銅イオンの添着処理は濃度が1モル/リットルの硫酸銅水溶液に切断したハニカム成形品を10分間浸漬することにより実施した。1時間自然乾燥した後80度の電気オーブンで30分間乾燥した後、フィルター枠2に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0028】
実施例2.
この発明によるセルロース繊維と活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に銅イオンを添着処理した脱臭フィルターの斜視図も図1と同様である。セルロース繊維はパルプ原料を十分にフィブリル化して用いた。活性炭繊維は市販の活性炭繊維を用いた。セルロース繊維1に対し活性炭繊維1を混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。銅イオンの添着処理は実施例4に記載したグラビア印刷方式で実施した。銅イオン添着活性炭ペーパーをコルゲートマシーンを用いて5号段およびE段のコルゲートに加工した。同コルゲートを積層することによりハニカム状の成形品を得た。ハニカム状の成形品を厚さ10mmおよび20mmに切断した後フィルター枠に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0029】
実施例3.
この発明によるセルロース繊維と活性炭繊維に微粒子状活性炭を混抄した活性炭ペーパーを基材として用い、同基材をハニカム状に成形して風路を形成すると共に銅イオンを添着処理した脱臭フィルターの斜視図も図1と同様である。セルロース繊維はパルプ原料を十分にフィブリル化して用いた。活性炭繊維は市販のものを用いた。微粒子状活性炭も市販の粉末状活性炭を用いた。セルロース繊維1に対し活性炭繊維を0.5、粉末状活性炭を0.5混抄することにより、紙のように薄くて成形性の良い基材を得た。銅イオンの添着処理は実施例5に記載した噴霧方式で実施した。銅イオン添着活性炭ペーパーをコルゲートマシーンを用いて5号段およびE段のコルゲートに加工した。同コルゲートを積層することによりハニカム状の成形品を得た。ハニカム状の成形品を厚さ10mmおよび20mmに切断した後フィルター枠に組み込むことにより脱臭フィルターを得た。
【0030】
実施例4.
セルロース繊維に微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液をグラビア印刷方式で添着処理し、この基材をハニカム状に成形して風路を形成した脱臭フィルターの製造方法である。グラビア印刷方式による添着処理の原理図を図2に示す。図中1は活性炭ペーパー、3はグラビア印刷ロールを表す。グラビア印刷機に活性炭ペーパーを通し、グラビア印刷ロールに硫酸銅水溶液を所定量含ませて活性炭ペーパーに転写することにより全面に均一に添着することができる。この方式で得られた銅イオン添着活性炭ペーパーを実施例2で用いた。
【0031】
実施例5.
セルロース繊維に微粒子状活性炭あるいは活性炭繊維を混抄した活性炭ペーパーが生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧して添着処理し、この基材をハニカム状に成形して風路を形成したことを特長とする脱臭フィルターの製造方法である。噴霧方式による添着処理の原理図を図3に示す。図中1は活性炭ペーパー、4は噴霧器を表す。小型の抄紙機で活性炭ペーパーを抄紙し、乾燥工程から出てきた生乾きの活性炭ペーパーに硫酸銅水溶液を所定量噴霧することにより全面に均一に添着することができる。この方式で得られた銅イオン添着活性炭ペーパーを実施例3で用いた。この方式では活性炭ペーパーの抄紙と銅イオンの添着が同一ラインで製造できると言うメリットがある。
【0032】
比較例1.
従来例として粒子径が5mm程度の破砕炭を濃度が1モル/リットルの硫酸銅水溶液に10分間浸漬して乾燥し、銅イオン添着粒子状活性炭を得た。図8に示すような厚さが20mmで格子状のフィルター枠の下面に不織布を張り合わせ、各格子の中に上記粒子状活性炭を充填した後フィルター枠の上面にも不織布を張り合わせて脱臭フィルターを作製した。同脱臭フィルターの斜視図を図8に示す。
【0033】
比較例2.
従来例として活性炭繊維を濃度が1モル/リットルの硫酸銅水溶液に10分間浸漬して乾燥し、銅イオン添着活性炭繊維を得た。同活性炭繊維をプリーツ状に折り込んで厚さが20mmのフィルター枠に組み込んで脱臭フィルターを作製した。同脱臭フィルターの斜視図を図7に示す。
【0034】
上記実施例および比較例で得た脱臭フィルターの静圧損失および臭気ガスの一過性除去効率を測定し、性能を比較した。脱臭フィルターの静圧損失は微小圧力計を用い、0.6m/sの風速で脱臭フィルターの前後における静圧差を測定することにより求めた。実施例の5号段の脱臭フィルター(180セル)の静圧損失は約0.5mmAq、E段の脱臭フィルター(320セル)の静圧損失は約1.0mmAqと極めて低かった。比較例1および2の脱臭フィルターの静圧損失はそれぞれ3および5mmAqと高かった。次に脱臭フィルターの硫化水素、メチルメルカプタンおよびアンモニアに対する一過性除去効率を測定した。脱臭フィルターの一過性除去効率の測定は所定濃度の臭気ガスを含む空気を所定の風速で流せるようなダクトの下流側に臭気センサを設置した評価装置を用いて行った。硫化水素およびメチルメルカプタンは1ppm、アンモニアは10ppmの臭気濃度(入口濃度)の空気を0.6m/sの風速で上記ダクトに流し、10cm角にカットした脱臭フィルターを上記ダクトに挿入し、脱臭後の臭気濃度(出口濃度)を臭気センサーで測定して図4に示す式により一過性除去効率を算出した。
【0035】
実施例の5号段の脱臭フィルター(180セル)の一過性除去効率は60%程度であったが、E段の脱臭フィルター(320セル)の一過性除去効率は80%以上と高かった。図5に実施例のE段の脱臭フィルターの静圧損失および硫化水素、メチルメルカプタンおよびアンモニアに対する一過性除去効率の測定結果を
纏めて示す。また、比較例の脱臭フィルターの測定結果も図5に併記する。
【0036】
図5より明らかなように比較例1の脱臭フィルターは3mmAqの静圧損失で60−70%の一過性除去効率を実現している。比較例2の脱臭フィルターは5mmAqの静圧損失で90−100%の一過性除去効率を実現している。これに対して実施例1の脱臭フィルターは僅か1mmAqの静圧損失で80%以上の一過性除去効率を実現しており、実施例2および3の脱臭フィルターは僅か1mmAqの静圧損失で90%以上および85%以上の一過性除去効率を実現している。
【0037】
実施の形態3.
図6は天井直付け扇風機の構造を説明する図である。11はモータ15とファン16を内蔵する扇風機のケーシング、12はケーシング11の表面に取り付けられ吸込み口19と吹出し口20を有するグリル、13はこの発明で説明されてきたグリルの内側に取り付けられた脱臭フィルター、14はケーシング内部を吸込み側の中央部と吹出し側の外周部を区分けしている内板、18はファン16の内部でモーター軸17を固定しファン16とモーター15を一体に回転させるファン取付ボルト、22はケーシング11を天井21に固定する送風機固定ねじである。モーターの固定子はケーシング11に固定され、モーター15の回転子が回転するとファン16が回転して室内から空気を吸込み口19と脱臭フィルター13を通して吸込まれ、プロペラファンの外周側に設けた遠心ディフューザー回路を通して吹出し口20から空気を吹出す。
【0038】
この構造ではケーシング11はほぼ正方形の周囲を有し、吸込みは中央全体から吸込み、吹出しは4角形の2面の吹出し口20から吹出し、他の2面はグリルで蓋をされている。プロペラファンを使用し遠心ディフューザー回路を通すことにより少ない電力で大風量を得るとともに低騒音の扇風機が得られる。更に脱臭フィルター13は中央全体に設けられ面積を広く取れるので風速を押さえるとともにハニカム状に形成された風路に設けられ銅イオン処理された活性炭ペーパーにより効果的な脱臭が行われる。吹出し口が対象の2面に絞られているので吹出した大風量は天井から床に向かい高速で吹出される。更に絞られた2面の側から空気が中央に回り易いので部屋全体を空気が循環する。
【0039】
平べったいプロペラファンと遠心ディフューザー回路を使用して高さを押さえることができ、幅のあるすなわち風路の長い脱臭フィルターを利用することが出来る。この結果病院や高齢者施設など公共の広い部屋や廊下、トイレなどに後から天井にねじで簡単に取り付けることが出来る。これにより、体臭、トイレ臭、不は異臭など気になる匂いを取り除くことが出来る。家庭内の居室に対しても簡単に後から取り付けて扇風機による涼風による人のからだに良い冷却を行うことが出来る。
【0040】
この天井直付け扇風機の代りに同じ送風機構造で天井に埋め込まれ、外部につながる換気ファンが設けられたダクトをケーシングの横から直接ファンの吸い込み部であるファンと脱臭フィルターの間にケーシングと内板を貫通して外気を導くことでもよい。冷暖房効果を高めるために居住空間の断熱化、気密化が進むにつれて室内空気の汚染が問題となって来ているが、この構成で、室内空気を脱臭する方法として、換気ファンとダクトを介して新鮮な外気を導入して換気を行う方法および脱臭フィルターを用いて室内の空気を循環させて汚染空気を脱臭することにより浄化する方法の組み合わせが得られる。換気は脱臭効果以外に居住者が発生する二酸化炭素の排出効果と酸素の補給効果があり、このような換気機器と脱臭フィルターを同時に使用する方法が最も効果的である。
【0041】
【発明の効果】
高分子化合物の繊維と粒子状および繊維状の少なくとも一つの活性炭とを混抄した活性炭ペーパーを用いた基材と、基材を成形して厚さ方向に貫通した多数の穴を設け平板状を形成させた構造体と、を備え、この構造体の穴を風路とするとともに基材に銅イオンを添着処理したので、低圧損で効果的に脱臭できる装置が得られる。
【0042】
また、活性炭量はセルロース量100%に対し100%−200%を混抄するので、紙のように薄い活性炭ペーパーが得られ小型化が可能になる。
【0043】
さらに、基材にて形成した風路は、所定の長さを有するので、十分な脱臭効果が得られる。
【0044】
高分子化合物の繊維と活性炭繊維および微粒子状活性炭の少なくとも一つとを混抄して活性炭ペーパーを形成するステップと、活性炭ペーパーを基材として用い、この基材に銅イオンを含む薬液を添着処理するステップと、基材を成形して風路を形成するステップと、を備え、薬液はロールに付着させて基材に転写させるので、活性炭ペーパーに薬液を均一に添着させることが出来る。
【0045】
また、活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理したので、薬液を確実に全面に添着できる。
【0046】
さらに、活性炭ペーパーが生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理したので、薬液が浸透し品質の安定した製品を製造できる。
【0047】
またさらに、薬液を添着処理した後で風路を形成するので、単純な行程で量産できる製造方法が得られる。
【0048】
さらにまた、風路を形成した後で薬液を添着処理するので、装置の大きさなどの変更に対応できるフレキシブルな製造が可能である。
【0049】
本願発明の脱臭フィルターを送風機の通風路に配置したので、確実な脱臭が簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態の例を示す脱臭フィルターの斜視図である。
【図2】 この発明の実施の形態の例を示すグラビア印刷方式の説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態の例を示す噴霧方式の説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態の例の一過性除去効率の式を説明する図である。
【図5】 この発明の実施の形態の例の試験結果を示す図である。
【図6】 この発明の他の実施の形態の例を示す空調装置の説明図である。
【図7】この発明の従来例を示す説明図である。
【図8】この発明の従来例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 活性炭ペーパー、 2 フィルター枠、 3 グラビア印刷ロール、 4 噴霧器、 5 活性炭、 6 活性炭繊維、 7 風路、 8 処理された活性炭ペーパー、 9 仕切り板、 10 薬液、 11 送風機ケーシング、 12 グリル、 13 フィルター、 14 内板、 15 モーター、 16 ファン、 17 モーター軸、 18 ファン取付ボルト、 19 吸込み口、 20 吹出し口、 21 天井、 22 送風機固定ねじ。
Claims (10)
- 高分子化合物の繊維に活性炭を混抄した活性炭ペーパーを折り曲げて1平方インチあたり180個以上形成した風路を備える構造体と、
前記活性炭ペーパーに添着した銅イオンとを備える脱臭フィルター。 - 構造体に設けられた風路の長さは20mm以下であることを特徴とする請求項1記載の脱臭フィルター。
- 高分子化合物の繊維であるセルロース繊維量が100%に対し活性炭量は100%乃至200%を混抄することを特徴とする2記載の脱臭フィルター。
- 基材にて形成した風路は、所定の長さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の脱臭フィルター。
- 高分子化合物の繊維と活性炭繊維および微粒子状活性炭の少なくとも一つとを混抄して活性炭ペーパーを形成するステップと、
前記活性炭ペーパーを基材として用い、この基材に銅イオンを含む薬液を添着処理するステップと、
前記基材を成形して風路を形成するステップと、
を備え、前記薬液はロールに付着させて前記基材に転写させることを特徴とする脱臭フィルターの製造方法。 - 活性炭ペーパーに銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理することを特徴とする請求項5記載の脱臭フィルターの製造方法。
- 活性炭ペーパーが生乾きの状態で銅イオンを含む薬液を噴霧または浸漬して添着処理したことを特徴とする請求項6記載の脱臭フィルターの製造方法。
- 薬液を添着処理した後で風路を形成することを特徴とする請求項7記載の脱臭フィルターの製造方法。
- 風路を形成した後で薬液を添着処理することを特徴とする請求項8記載の脱臭フィルターの製造方法。
- ケーシングと、
前記ケーシングに内蔵されたモータと、
前記モータのモータ軸に固定されたファンと、
前記ファンにより吸い込み吹き出される空気の通風路とを有し、
前記通風路に請求項1乃至4のうちの少なくとも1記載の脱臭フィルターを備える空調装置。
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