JP3718075B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物およびその成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、成形加工性などに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂と略す)は優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性などエンジニアリングプラスチックとしては好適な性質を有しており、射出成形用を中心として各種電気・電子部品、機械部品および自動車部品などに使用されている。しかし、PPS樹脂はポリアミド樹脂等の他のエンジニアリングプラスチックに比べ、耐衝撃特性に劣るとの問題点を有する。
【0003】
かかる問題点を解決するため、PPS樹脂に各種エラストマーを配合する方法がこれまでにも提案されており、例えば特開昭58−154757号公報にはPPS樹脂にエポキシ基含有オレフィン系共重合体を配合する方法が、また特開平1−306467号公報にはPPS樹脂にエポキシ基含有オレフィン系共重合体およびエポキシ基、酸無水物基を含有しないエラストマーを配合する方法が、更に特開昭62−172056号公報にはPPS樹脂に不飽和カルボン酸またはその無水物で変性したα−オレフィン共重合体を配合する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、近年益々PPS樹脂材料に対する要求が厳しくなり、これら従来に提案されているPPS樹脂組成物でも材料特性、特に成形加工性の面では十分とは言えず、より高度な耐衝撃性、低温衝撃性等を同時に満足し、かつ成形加工の際の生産性に優れ、経済的にも有利な材料が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来のPPS樹脂材料より更に優れた耐衝撃性、低温衝撃性、成形加工性等の高度なバランスの実現を課題とし、更に耐衝撃性以外の機械的性質、耐熱水性等のPPS樹脂本来の特性にも均衡して優れ、工業生産性、経済性にも優れたPPS樹脂組成物を得ることを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記の課題を解決すべく検討した結果、(A)PPS樹脂と(B)特定の構造と分子量分布、密度を有する、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン系共重合体をエポキシ基を有するオレフィン化合物によって変性して得られる変性ポリオレフィンを組み合わせて使用することにより従来技術より成形加工性の大幅向上が達成され、上記課題が解決されることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、
1.(A)ポリフェニレンスルフィド100重量部に対し、(B)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン系共重合体であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0以下であるエチレン・α−オレフィン系共重合体をエポキシ基を有するオレフィン化合物によって変性して得られる変性ポリオレフィン1〜100重量部量を配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
【0010】
2.前記(B)成分のエチレン・α−オレフィン系共重合体がメタロセン系触媒を用いて重合された共重合体であることを特徴とする上記記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
【0012】
3.前記(A)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂の灰分率が0.2重量%以下である、上記1〜2いずれか記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物、
【0015】
4.上記1〜3いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド脂組成物を射出成形してなる成形体および
【0016】
5.上記1〜3いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド脂組成物を押出成形してなる成形体である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる(A)ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
【0018】
【化1】
【0019】
耐熱性の点から、かかる繰り返し単位が、好ましくは70モル%以上、さらに90モル%以上を含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満を、下記の構造式を有する繰り返し単位等で構成することが可能である。
【0020】
【化2】
【0021】
また特に、高い溶融粘度を有するPPSが所望の場合に、ジハロベンゼンを主モノマーとし、トリハロベンゼンを3モル%未満共重合した分枝状PPSを適用することも可能である。
【0022】
本発明で用いられるPPS樹脂の溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、より優れた耐衝撃性、特に低温衝撃性を得る意味で、400ポイズ(310℃、せん断速度1000/s)以上であることが好ましく、特に700ポイズ以上が好ましい。また特に押出成形用途で用いる場合には、1000ポイズ以上がより好ましい。
【0023】
かかるPPS樹脂は通常公知の方法即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法或は特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造できる。本発明において上記の様に得られたPPS樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など種々の処理を施した上で使用することももちろん可能である。
【0024】
PPS樹脂の加熱による架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が例示できる。加熱処理温度は通常、170〜280℃が選択され、好ましくは200〜270℃であり、時間は通常0.5〜100時間が選択され、好ましくは2〜50時間であるが、この加熱処理温度と時間の両者をコントロールすることにより目標とする粘度レベルを得ることができる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0025】
PPS樹脂を窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で、加熱処理温度150〜280℃、好ましくは200〜270℃、加熱時間は0.5〜100時間、好ましくは2〜50時間加熱処理する方法が例示できる。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よくしかもより均一に処理するためには回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
【0026】
本発明において、脱イオン処理などにより、PPS中の灰分率が0.2重量%以下に低減されたPPS樹脂を用いることは、より優れた靱性及び成形加工性を得る意味で好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いても良い。なお、ここで灰分量の測定は以下の方法に従った。乾燥状態のPPS原末約5gを坩堝に秤取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケーター中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分率を計算する。
【0027】
PPS樹脂を有機溶媒で洗浄する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、洗浄に用いる有機溶媒としては、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はないが、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホンなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などがあげられる。これらの有機溶媒のなかでN−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド、クロロホルムなどの使用が好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。また有機溶媒洗浄を施されたPPS樹脂は残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0028】
PPS樹脂を熱水で処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、常圧で或いは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多いほうが好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
【0029】
PPS樹脂を酸処理する場合の具体的方法としては以下の方法が例示できる。すなわち、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。用いられる酸はPPSを分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪族飽和モノカルボン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸などのハロ置換脂肪族飽和カルボン酸、アクリル酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸などのジカルボン酸、硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸などの無機酸性化合物などがあげられる。中でも酢酸、塩酸がより好ましく用いられる。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。また洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0030】
次に本発明の必須成分である(B)特定変性ポリオレインは、エチレンおよび炭素数3〜20を有する少なくとも1種以上のα−オレフィンを共重合してなり、特定の分子量分布および/または特定の密度を有するエチレン・α−オレフィン系共重合体をエポキシ基を有するオレフィン化合物によって変性して得られるものである。上記の炭素数3〜20のα−オレフィンとして、具体的にはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。これらα−オレフィンの中でも炭素数6から12であるα−オレフィンを用いた共重合体が機械強度の向上、改質効果の一層の向上が見られるためより好ましい。
【0031】
本発明でベースとして用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0以下であるか、もしくは密度が0.880g/cm3以下であるエチレン・α−オレフィン系共重合体であることが優れた機械特性と成形加工性を得るために必要であり、特にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0以下であり、かつ密度が0.880g/cm3以下であるエチレン・α−オレフィン系共重合体が最も好ましく用いられる。
【0032】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は3.0以下であることが好ましく、更に好ましくは2.9以下、特に好ましくは2.8以下である。分子量分布が3.0以下と極めて狭い範囲に限定された共重合体は低分子量成分が少なく、機械特性と成形加工性に優れるため、このものの使用により本発明の組成物の優れた特性をもたらすことが可能となるのである。
【0033】
また本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、密度が0.880g/cm3以下であることが好ましく、0.830〜0.880g/cm3の範囲がより好ましく、特に0.850〜0.875g/cm3の範囲が好ましい。かかるエチレン・α−オレフィン系共重合体を用いることにより、射出成形時の金型からの離型性が優れるなど成形加工性に優れ、かつ機械的特性、特に靱性に優れた組成物を得ることが可能となる。
【0034】
該エチレン・α−オレフィン系共重合体は、α−オレフィン含量が好ましくは4〜25モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは12〜22モル%である。上記の範囲にα−オレフィン含量があるエチレン・α−オレフィン系共重合体を用いることにより、柔軟性および耐衝撃性に優れた成形体を提供し得るPPS樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
かかるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、メタロセン系触媒を用いて重合することにより製造できる。メタロセン系触媒は、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒とで構成されている。メタロセン系触媒は高活性であり、チーグラー系触媒に代表される従来の触媒に比べ、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体のコモノマー成分であるα−オレフィンの分布が均一であるために柔軟性、耐衝撃性に優れるという特長を有する。
【0036】
本発明で用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体は、その全灰分量が0.01〜0.2重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%のものが好適に用いられる。
【0037】
本発明では上記の特定のエチレン・α−オレフィン系共重合体をエポキシ基を有するオレフィン化合物によって変性して得られる変性ポリオレフィンを(B)成分として用いる。
【0038】
かかる官能基含有オレフィン化合物の具体例としては、下記一般式で表され、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジルなどに代表されるα,β−不飽和酸のグリシジルエステル
【0039】
【化3】
【0040】
(ここでRは水素原子または低級アルキル基を示す)、
を挙げることができ、この中で本発明で好ましく用いられるのはメタクリル酸グリシジルである。
【0041】
これらオレフィン化合物を用いて上記のエチレン・α−オレフィン系共重合体を変性する方法については特に制限はなく、官能基含有オレフィン化合物とラジカル発生剤の存在下に溶液中で反応させてもよく、押出機等を用いて溶融状態で反応させても良いが一般に後者の方が簡便な方法としてよく用いられる。
【0042】
本発明では(B)成分の変性ポリオレフィンの使用量は(A)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲である。用いる変性ポリオレフィンの量が1重量部に満たないと得られる樹脂組成物の耐衝撃性が不足するので好ましくなく、逆に100重量部を越えるとポリフェニレンスルフィド樹脂が本来有する耐熱性が損なわれるので好ましくない。
【0043】
本発明において、より優れた耐衝撃性等を得る観点から、更に追加成分として、アルコキシシラン化合物を、(A)PPS樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部添加することは有効である。
【0044】
かかるアルコキシシラン化合物としては、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するアルコキシシランが好ましく、その具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられ、中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、が特に好ましい。
【0045】
本発明において、高い衝撃特性等と同時に、よりすぐれた剛性、寸法安定性などが必要な場合、更に(C)成分として、充填材を配合することが好ましい。
【0046】
かかる充填材の形状は繊維状、非繊維状のいずれでもよく、併用してもよい。充填材の具体例としては、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填剤、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、タルク、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、アルミナ、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素およびシリカなどの非繊維状充填剤が挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これら(C)充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤や有機アンモニウム塩などで予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。中でも繊維状充填材が好ましく、特にガラス繊維、ガラスミルドファイバーが好ましい。
【0047】
かかる(C)充填材を配合する場合の配合量は(A)PPS樹脂100重量部に対し、1〜400重量部の範囲が例示でき、20〜250重量部の範囲がより好適である。
【0048】
本発明のPPS樹脂組成物には本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物などの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物などの離型剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
【0049】
また、本発明のPPS樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲で、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエ−テルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリエ−テルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエ−テルエ−テルケトン、エポキシ樹脂、フェノ−ル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ、ポリアルキレンオキサイド等の他の樹脂を含んでも良い。
【0050】
本発明のPPS樹脂組成物の調製方法は特に制限はないが、原料の混合物を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
【0051】
本発明により得られたPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形、フィルム成形など各種成形に適用できるが、中でも射出成形、押出成形用途には特に好適に用いられる。
【0052】
この様にして得られた成形体は、耐熱性、耐熱水性、耐溶剤性などのPPSが本来有する特性に加え、耐衝撃性、成形加工性等にも優れており、その用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品等に代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスク等の音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品等に代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計等に代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、排気ガスバルブ等の各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナー等の自動車・車両関連部品、その他各種用途が例示できる。
【0053】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。また、以下の実施例において材料強度、流動性の評価は、次の方法により行なった。
【0054】
[測定方法]
(1)引張特性:ASTM D638法に準じた。
【0055】
(2)モールドノッチ付きIZOD衝撃強度:ASTM D256法に準じた。
【0056】
(3)成形下限圧力:本発明のPPS樹脂組成物を用い、機械的強度特性評価用試験片(曲げ試験片、衝撃試験片及び引張試験片)を射出成形した。射出成形機としては住友重機械工業(株)社製SG−HIPRO・MIIIを用い、金型設定温度140℃、シリンダー設定温度300〜320℃で成形を行なった。上記試験片を樹脂で完全に充填するのに必要な最低射出圧力を成形下限圧力とした。この成形下限圧力が低いほど流動性が優れることを意味する。
【0057】
(4)離型性:上記射出成形において射出圧力を成形下限圧力+5kgf/cm2−Gの条件で試験片を連続射出成形した際に試験片が自動落下する最短の冷却時間(秒)を測定して離型性の目安とした。この測定値が小さいほど離型性良好となる。
【0059】
[参考例(PPS樹脂の重合)]
(1)攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.656kg(8モル)およびN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.756kg(25.55モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄した。その後、100℃に加熱されたNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥してPPS−1、2.45kgを得た。このPPSの灰分量は0.07重量%、溶融粘度900ポイズ(310℃、1000/s)であった。
【0061】
(2)攪拌機付きオートクレーブに硫化ナトリウム9水塩6.005kg(25モル)、酢酸ナトリウム0.11kg(1.35モル)およびN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略す)5kgを仕込み、窒素を通じながら徐々に205℃まで昇温し、水3.6リットルを留出した。次に反応容器を180℃に冷却後、1,4−ジクロロベンゼン3.756kg(25.55モル)ならびにNMP3.7kgを加えて、窒素下に密閉し、270℃まで昇温後、270℃で2.5時間反応した。冷却後、反応生成物を温水で5回洗浄し、次に100℃に加熱されNMP10kg中に投入して、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、さらに熱湯で数回洗浄した。これを90℃に加熱されたpH4の酢酸水溶液25リットル中に投入し、約1時間攪拌し続けたのち、濾過し、濾液のpHが7になるまで約90℃のイオン交換水で洗浄後、80℃で24時間減圧乾燥してPPS−2、2.43kgを得た。このPPSの灰分量は0.04重量%、溶融粘度は300ポイズ(310℃、1000/s)であった。
【0062】
[実施例及び比較例で用いた配合材]
(B)特定のエチレン・α−オレフィン系共重合体
B−1:メタロセン触媒を用いて重合したMw/Mn=2.8、α−オレフィン含有量=6モル%、密度0.894g/cm3のエチレン・オクテン共重合体100重量部、3重量部のメタクリル酸グリシジルおよび0.3重量部の過酸化物(2,5−ジメチルー2,5−t−ブチルヘキサン)の混合物を30mm径単軸押出機で250℃の条件下混練して得られた変性ポリオレフィン。
なおMFRはASTM D1238に準じ、荷重2.16kg、190℃で測定した値である。
【0063】
(B’)比較用ポリオレフィン
B’−2(比較例):メタロセン系触媒を使用していない、Mw/Mn=3.8の線状低密度ポリエチレン(密度0.915g/cm3)を用いて上記B−1記載の方法で無水マレイン酸変性して得られた変性ポリオレフィン。
【0065】
実施例1、比較例1、2
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、280〜320℃の温度条件に設定したスクリュー式単軸押出機(スクリュー:ダルメージ)により溶融混練後ペレタイズした。得られたペレットを用い機械特性及び成形下限圧力、離型性を測定した。測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
比較例1
(B)特定のエチレン・α−オレフィン系共重合体の替わりに、B’−4メタロセン系触媒を使用していない、Mw/Mn=3.8の線状低密度ポリエチレンベースの変性ポリオレフィンを用いたこと以外は実施例1と同様にして溶融混練、ペレタイズ、各物性測定を行った。結果を表1に示す。
B’−4メタロセン系触媒を使用していない、Mw/Mn=3.8の線状低密度ポリエチレンを用いると明らかに衝撃特性等が劣る結果となった。
【0068】
比較例2
(B)成分として市販の変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学製”タフマー”MP0610を用いた以外は実施例1と同様にして溶融混練、ペレタイズ、各物性測定を行った。結果を表1に示す。
ここで得られた樹脂組成物は離型性の点で不十分であった。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のPPS樹脂組成物によれば、耐衝撃性、成形加工性などに優れたポリフェニレンスルフィド樹脂組成物及びその成形体が得られる。
Claims (5)
- (A)ポリフェニレンスルフィド100重量部に対し、(B)エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとからなるエチレン・α−オレフィン系共重合体であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により算出される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が3.0以下であるエチレン・α−オレフィン系共重合体をエポキシ基を有するオレフィン化合物によって変性して得られる変性ポリオレフィン1〜100重量部量を配合してなることを特徴とするポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(B)成分のエチレン・α−オレフィン系共重合体がメタロセン系触媒を用いて重合された共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 前記(A)成分のポリフェニレンスルフィド樹脂の灰分率が0.2重量%以下である、請求項1または2記載のポリフェニレンスルフィド樹脂組成物。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド脂組成物を射出成形してなる成形体。
- 請求項1〜3いずれかに記載のポリフェニレンスルフィド脂組成物を押出成形してなる成形体。
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