JP3717692B2 - 感光層用塗液、電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光層用塗液、それを用いた電子写真感光体、ならびにその電子写真感光体を用いた電子写真方法及び電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジに関し、詳しくは、繰り返し使用によっても感光体の帯電電位と残留電位の安定性に優れた電子写真感光体、ならびにそれを用いた電子写真方法、電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電子写真感光体、特に有機光導電体を使用する電子写真有機感光体は、それまでのセレン膜を真空蒸着法により作製した無機感光体に比べ、コストが低い、毒性がほとんどない、成膜が容易性であるなどの多くのメリットがあり、現在の電子写真感光体の主流となりつつある。
【0003】
有機感光体は、導電性支持体上に電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂などを含む感光層用塗液を浸漬塗工などで成膜するいわゆる単層感光体や、導電性支持体上に電荷発生物質を含む塗液を用いて電荷発生層を形成後、電荷輸送物質を含む塗液を用いて電荷輸送層を形成する積層感光体がある。積層感光体には、画質向上や耐久性の向上などの目的で下引き層や、保護層などが塗工される場合もある。
【0004】
しかし、このような単層型電子写真感光体にしろ、積層型電子写真感光体にしろ静電的な繰り返し特性に問題がないとはいえず、特に繰り返し使用するに従って電子写真特性の劣化、特に帯電電位が低下したり、帯電から現像までの時間に表面電位が低下する、いわゆる暗減衰の増加するという問題があった。
【0005】
ところで、感光層を形成するための光導電性物質である有機顔料は、比較的以前から塗料用のフィラーとして用いられてきた。特に、その色彩の豊かさは無機顔料には無い利点である。また、近年では有機顔料の応用例として、有機光電変換デバイス用材料として脚光を浴びるようになってから、様々な材料が生み出されている。
【0006】
このような有機顔料を含む膜が成膜されるに当たっては、大面積化が容易な湿式成膜法がその大半を占めている。湿式成膜法により成膜される塗膜の良否は、顔料を含む分散液の良否にほとんど左右されると言っても過言ではない。分散液の良否とは、顔料の分散性が一つの決め手となる。従って、良好な分散液とは顔料がビヒクル中に充分に分散され、その分散状態が長期にわたり継続されるものである。
【0007】
このような分散液を作製するために、ここまでには様々な分散機・分散システムが提案され、分散効率を上げる方法が考案されてきた。分散液中の顔料の粒子サイズを小さくするためには、一般論として分散メディアのサイズの小さいものを用いるが、顔料が分散されにくいものであると分散力が不足する。これを改良するためにはメディアサイズを大きくするか、分散されやすい顔料を用いる以外にない。前者では最終到達する粒子サイズに限界があるため、後者の方法を開発することが効率的である。しかしながら、分散に関して顔料側からのアプローチはほとんど見あたらない。
【0008】
一方、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展は目覚ましいものがある。特に情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行う光ブリンターは、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。このデジタル記録技術はプリンターのみならず通常の複写機にも応用され、所謂デジタル複写機が開発されている。また、従来からあるアナログ複写にこのデジタル記録技術を搭載した複写機は、種々様々な情報処理機能が付加されるため今後その需要性が益々高まっていくと予想される。
【0009】
光プリンターの光源としては現在のところ小型で安価で信頼性の高い半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)が多く使われている。現在よく使われているLEDの発光波長は660nmであり、LDの発光波長域は近赤外光領域にある。このため可視光領域から近赤外光領域に高い感度を有する電子写真感光体の開発が望まれている。
【0010】
電子写真感光体の感光波長域は感光体に使用される電荷発生物質の感光波長域によってほぼ決まってしまう。そのため従来から各種アゾ顔料、多環キノン系顔料、三方晶形セレン、各種フタロシアニン顔料等多くの電荷発生物質が開発されている。それらの内、チタニルフタロシアニン(TiOPcと略記される)は600〜800nmの長波長光に対して高感度を示すため、光源がLEDやLDである電子写真プリンターやデジタル複写機用の感光体用材料として極めて重要かつ有用である。
【0011】
また、カールソンプロセスおよび類似プロセスにおいてくり返し使用される電子写真感光体の条件としては、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光特性に代表される静電特性が優れていることが要求される。とりわけ、高感度感光体については、くり返し使用による帯電性の低下と残留電位の上昇が、感光体の寿命特性を支配することが多くの感光体で経験的に知られており、チタニルフタロシアニンもこの例外ではない。従って、チタニルフタロシアニンを用いた感光体の繰り返し使用による安定性は未だ十分とはいえず、その技術の完成が熱望されていた。また、これら特徴を持った感光体を長期的に安定に作製可能な分散液の製造も要望されていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真感光体を提供することにある。本発明の別の目的は、前記特性を維持したまま、耐摩耗性を向上した電子写真感光体を提供することにある。本発明の別の目的は、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真方法を提供することにある。本発明の更に別の目的は、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は電子写真感光体について次のように考察した。すなわち、前述のように、有機顔料は電子写真感光体の光キャリア発生材料として重要な役割を担っている。有機顔料は電子写真感光体中においては、一般に微粒子の形で存在している。これは、電子写真プロセスにおける画像書込み光を一定の割合で均一に吸収するためである。このため、粒子が大きすぎたり、粒度分布がまばらであったりすると、得られる電子写真感光体は有機顔料を含む感光層(電荷発生層)がきれいな塗膜にならないばかりか、電子写真プロセスにおいて異常画像が発生したりもする。
上記の点から言えば、電荷発生物質としての有機顔料は感光層(電荷発生層)を形成するための分散液中では粒度分布の幅が狭く、粒子サイズが出来る限り小さい方が好ましい。すなわち、分散安定性の高い分散液の作製が、電子写真感光体の成否を握っていると言っても過言ではない。
【0014】
有機顔料を含有する電子写真感光体は、一般的に湿式法により形成される。特に大量生産に向いた浸漬塗工方法がドラム状感光体の製造方法の大半をしめる。浸漬塗工方法は、装置・方式が簡便であるため、マスプロダクト方式の製造には最も向いているが、少量の本数を塗工する場合でも、必要最低量の塗工液が必要となる。この最低必要量が、他の塗工方式、例えば、スプレー法、ノズルコートなど塗りきりの方式に比べると極めて多量である。
【0015】
有機顔料の分散方法は種々提案されているが、多量の分散液を作製する場合にはいくつかの制限が生じる。すなわち、ボールミル・振動ミルなどにおいては、ポットの容量が作製可能量を決めてしまう。このような観点から、一バッチで多量の分散液作製可能な分散システムとして、循環系の中に分散能を有する部位即ち分散チャンバー部(分散室)を有する分散システムが提案されている。
【0016】
このようなシステムは一般に、大容量のストックタンクに対し、分散室の容量が小さく設計されている。これは、システムをコンパクトにまとめる・省エネ・分散室内に使用する分散メディアを少なくする等の目的によるものである。分散方式の流れとしては、ストックタンクから分散室に送られ、分散室で分散された液が再びストックタンクに戻って来たときに、分散された液が分散前の液に完全に混ざる方式であるが、ストックタンクの容量に対し分散室の容量が余りにも小さい場合、ストックタンク内の液はほとんどが分散されていない液(1度も分散室を通っていない液)となってしまう。このため、分散するために非常に時間がかかってしまい、効率的でなくなる。更に、1部の液は何度も分散室を通ることになるため、過分散になったり、場合によっては結晶型を変えてしまうことすらある。このようにして作製した分散液を用いて感光体を作製した場合、粒度分布の不均一性による塗膜の不均一性、あるいは結晶型の変化・変質による静電特性の変化(所望の静電特性が得られない)などの不具合点を生じることがある。
【0017】
本発明者は、上述のように循環分散システムそのものの考え方は非常に好ましいものであるが、分散室を1度通過した液が多量の未分散の液に混ざって埋もれてしまうことが致命的な欠点であることを見いだした。この点を改良するために、すべての分散すべき液が分散室を通過した後に循環分散を行うことにより、分散効率が飛躍的に向上し、結晶型の安定した、均一な粒度分布を持った分散液を作製できることを見いだした。そしてこの分散液を用いることにより、成膜性が良好で、かつ静電特性が安定している電子写真感光体が形成される。
また本発明者は、上記技術を用いて作製した分散液を用いた感光体は、電子写真プロセス中で用いると、従来問題であった繰り返し使用における帯電性の低下・光感度の低下(残留電位の上昇)を起こすことなく、安定した表面電位を与えるものであることが分かった。これにより、地肌汚れあるいは画像濃度低下といった異常画像の発生が抑えられることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明によれば、第一に、一つの循環系の中に設けられた分散チャンバー部(分散室)を通過した、有機顔料、結着樹脂および溶剤を主成分とする分散液と、その分散液と同一成分であって該分散チャンバー部通過前の分散液とを分離しておき、すべての分散液が該分散チャンバー部を少なくとも一回通過した後に、連続循環分散して調製されることを特徴とする感光層用塗液が提供される。
【0019】
第二に、有機顔料がフタロシアニン系顔料であることを特徴とする上記第一の感光層用塗液が提供される。
【0020】
第三に、フタロシアニン系顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする上記第二の感光層用塗液が提供される。
【0021】
第四に、有機顔料が少なくともCuKaの特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角2θの最大回折ピークが27.2°±0.2°にあるチタニルフタロシアニンであることを特徴とする上記第一〜三のいずれかに記載の感光層用塗液が提供される。
【0022】
第五に、導電性支持体上に上記第一〜四のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
【0023】
第六に、感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層構成からなることを特徴とする上記第5記載の電子写真感光体が提供される。
【0024】
第七に、電荷輸送層に少なくともトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする上記第6記載の電子写真感光体が提供される。
【0025】
第八に、電子写真感光体に少なくとも帯電、画像露光、現像、転写、クリーニング、除電を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に上記第一〜四のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真方法が提供される。
【0026】
第九に、少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段及び電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が導電性支持体上に上記第一〜四のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真装置が提供される。
【0027】
第十に、少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が導電性支持体上に上記第一〜四のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジが提供される。
【0028】
【発明の実態の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で作製される電子写真感光体に用いられる有機顔料は、公知の有機顔料のいずれもが適用されるが、例えば、フタロシアニン系顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクエアリック酸系染料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。
【0029】
数多くの結晶型を有するフタロシアニン系顔料は非常に有効であり、中でもチタニルフタロシアニンは結晶型により特性が大きく変化するが顔料である。とりわけCuKαの特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角2θの最大回折ピークが27.2°±0.2°にあるチタニルフタロシアニンは、極めて高い光キャリア発生能を有するが、結晶型が不安定であり他の結晶型へと容易に変換してしまうものである。しかしながら、本発明においては安定に結晶型を維持したまま、分散液を作製することが出来、顔料本来の光キャリア発生能を維持したままの電子写真感光体が得られる。
【0030】
図1は、本発明の電子写真感光体の感光層を形成するための塗工液を作製するのに好適な装置の一例を示した図である。図1において、51は分散室(分散チャンバー部)で内部にモーター52によって高速回転するローターと分散を行うビーズが入っている。
ビーズとしては直径0.3mmから1mm程度のジルコニアビーズ、ガラスビーズなどが使用される。53Aおよび53Bはストックタンクであり、内部に分散する液が貯えられている。
図1の例ではストックタンクは2基であるが、3基あるいはそれ以上でもかまわない。、また、ストックタンク53A,53Bは同一の形状をしているが、それはかならずしも同一の形状である必要はない。54Aおよび54Bはストックタンク内の液を攪拌する攪拌機であり、55はストックタンクの液を分散室に送るポンプである。また、58は三方弁であり、分散室1に送る液としてストックタンク3Aの液か或いはストックタンク3Bの液かを切り替えることを可能にする。
【0031】
図1ではストックタンクが2基の例を示したが、ストックタンクの数が増えた場合は図1の58に示す弁は三方弁ではなく、四方あるいはそれ以上の切り替え弁となる。弁59も三方弁であり、分散室から出た液をストックタンク53Aあるいは53Bのどちらに入れるかの切り替えを可能にする。弁59も弁58と同様にストックタンクの数に応じて切り替え数は増し、切り替えが可能となる。
【0032】
このような装置を用いて、はじめに片側のストックタンクに分散前の液を入れ、ポンプにより分散室に送り、分散された液はもう片方のストックタンクのみに収納する様に弁58,59により調節する。その後に、片側のタンクには分散液が入らないように弁58,59の調節し、循環分散を開始する。
循環前の分散室通過を2回以上にする場合には、上記の操作(ストックタンク同士の分散液の片側通行)を2回以上繰り返せばよい。この操作が多いほど、粒度分布が均一になるが、分散に時間と手間がかかるため、材料により操作回数を調節すればよい。
【0033】
図2は、本発明に用いられる電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生材料と電荷輸送材料を主成分とする単層感光層33が設けられている。図3および図4は本発明に用いられる電子写真感光体の別の構成例を示す断面図であり、電荷発生材料を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。
【0034】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
【0035】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。
また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0036】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロンなどの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0037】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から述べる。
【0038】
電荷発生層35は、有機顔料を主成分とする層である。これは前述の方法により作製された分散液を製膜してなる層である。
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0039】
ここで用いられる溶剤としては、例えばイソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられる。塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0040】
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0041】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電荷輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2-b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0042】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−ガルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラジン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
【0043】
結着樹脂としてはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0044】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は5〜100μm程度とすることが好ましい。ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0045】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、(1)〜(10)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられ、これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0046】
【化1】
式中、R1,R2,R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5,R6は置換もしくは無置換のアリール基、o,p,qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k,jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。
【化2】
式中、R101,R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l,mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−,−S−,−SO−,−SO2−,−CO−,−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)または、
【化3】
式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。ここで、R101とR102,R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0047】
【化4】
式中、R7,R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1,Ar2,Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0048】
【化5】
式中、R9,R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4,Ar5,Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0049】
【化6】
式中、R11,R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7,Ar8,Ar9は同一又は異なるアリレン基、pは1〜5の整数を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0050】
【化7】
式中、R13,R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10,Ar11,Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1,X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0051】
【化8】
式中、R15,R16,R17,R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13,Ar14,Ar15,Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1,Y2,Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なっていてもよい。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0052】
【化9】
式中、R19,R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17,Ar18,Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0053】
【化10】
式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20,Ar21,Ar22,Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0054】
【化11】
式中、R22,R23,R24,R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24,Ar25,Ar26,Ar27,Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0055】
【化12】
式中、R26,R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29,Ar30,Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X,k,jおよびnは、(1)式の場合と同じである。
【0056】
本発明において電荷輸送層37中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなど一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂に対して0〜30重量%程度が適当である、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は結着樹脂に対して0〜1重量%が適当である。
【0057】
次に感光層が単層構成33の場合について述べる。単層感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に上述の方法により分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。さらに、この感光層には上述した電荷輸送材料を添加した機能分離タイプとしても良く、良好に使用できる。また、必要により、可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0058】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂をそのまま用いるほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する、電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましくさらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を必要ならば電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は5〜100μm程度が適当である。
【0059】
本発明の電子写真感光体には、導電性支持体31と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0060】
これらの下引き層は前述の感光層の如く適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、A12O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2,SnO2,TiO2,ITO,CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0061】
本発明の電子写真感光体には、感光層保護の目的で、保護層が感光層の上に設けられることもある。保護層に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。保護層にはその他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらの樹脂に酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等を添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される、なお保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。また、以上のほかに真空薄膜作成法にて形成したa−C,a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0062】
本発明においては感光層と保護層との間に中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく通常の塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0063】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法ならびに電子写真装置を詳しく説明する。
【0064】
図5は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
【0065】
図5において、感光体1は導電性支持体上に前述の方法により作製された分散液を用いて製膜した感光層が設けられてなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャー3、転写前チャージャー7、転写チャージャー10、分離チャージャー11、クリーニング前チャージャー13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。
【0066】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0067】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0068】
かかる光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0069】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0070】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0071】
図6には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は前述の方法により作製された分散液を用いて製膜した感光層を有しており、駆動ローラ22a,22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による画像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図6においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0072】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図6において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、画像露光、除電露光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0073】
一方、光照射工程は、画像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、画像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0074】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。感光体16は、導電性支持体上に前述の方法により作製された分散液を用いて製膜した感光層を有してなるものである。
【0075】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0076】
まず、ブラッグ角2θの最大回折ピークが27.2°±0.2°にある結晶形(いわゆるY型)のチタニルフタロシアニン顔料の具体的な合成例を述べる。
(顔料製造例)
フクロジニトリル525部と1−クロロナフタレン4000部を撹拌混合し、窒素気流下で四塩化チタン190部を滴下する。滴下終了後、徐々に200℃まで昇温し、反応温度を190℃〜210℃の問に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷し130℃になったところで熱時ろ過し、ついで1−クロロナフタレンで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後、乾燥し422部の粗チタニルフタロシアニン顔料を得た。得られた熱水洗浄処理した粗チタニルフタロシアニン顔料のうち60部を96%硫酸1000部に3〜5℃下で撹拌し、溶解し、ろ過した。得られた硫酸溶液を氷水35000部中に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料の水ペーストを得た。この水ぺーストに1,2−ジクロロエタン1500部を加え、室温下2時間撹拌した後、メタノール2500部をさらに加え撹拌し、ろ過した。これをメタノール洗浄し、更に乾燥してチタニルフタロシアニン顔料49部を得た。
【0077】
顔料製造例で得られたチタニルフタロシアニン顔料についてのX線回折スペクトルを以下に示す条件で測定した。
X線管球 Cu、 電圧40kV、 電流20mA、
走査速度1°/分、 走査範囲3°〜40° 時定数2秒、
【0078】
顔料製造例で得られたチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを図8に示す。得られたチタニルフタロシアニン顔料はブラッグ角2θの最大ピークが少なくとも27.2°±0.2°にある結晶形を有していることが分かる。
【0079】
(実施例1)
顔料製造例で作製した顔料は大きな塊を含んでいたため、市販のミキサーにより粗粉砕を行った。この結果、約200μm以下程度の粉体を得た。
この顔料を用い、図1に示すようなビーズミル分散機を用いて、下記組成の液の分散を行った。循環分散の前に行う全液の分散室の通過操作(仮分散と呼ぶ)を1回行ってから、循環分散を行った。
上記顔料 370部
ブチラール樹脂 250部
2−ブタノン 5000部
ブチラール樹脂はあらかじめ別の容器で2一ブタノンに溶解しておいたものを使用した。仮分散を1回行った後、循環分散を30分行った。これを分散液1とする。
【0080】
(実施例2)
実施例1における仮分散を2回行った以外は、実施例1と全く同様に分散液を作製した。これを分散液2とする。
【0081】
(比較例1)
実施例1における仮分散を行わなかった以外は、実施例1と全く同様に分散液を作製した。これを分散液3とする。
【0082】
(比較例2)
実施例1における仮分散を行わず、分散時間を180分とした以外は実施例1と全く同様に分散液を作製した。これを分散液4とする。
【0083】
上記のように作製した分散液を以下のように評価した。粒度分布はCAPA700(堀場製作所社製)にて測定した。また、分散液を乾固し、粉末とした後、X線回折スペクトルを測定した。結果を表1に示す。
表1より、分散液1〜2は平均粒径も細かく、結晶型の変化のない分散液であることが分かる。
【0084】
【表1】
【0085】
(実施例3〜4および比較例3)
電鋳ニッケルベルト上に下記組成の下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、積層感光体を作製した。
〔下引き層塗工液〕
二酸化チタン粉末 15部
ポリビニルブチラール 6部
2−ブタノン 150部
〔電荷発生層塗工液〕
実施例3には前記分散液1を用い、実施例4には前記分散液2を用い、比較例3には前記分散液3を用いた。
〔電荷輸送層塗工液〕
ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化13】
塩化メチレン 80部
【0086】
このようにしてなる電子写真感光体を図6に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780mmの半導体レーザー(ポリゴンミラーによる画像書き込み)とした。連続して10000枚の印刷を行い、その時の画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
分散液3を用いた感光体の電荷発生層は、分散液中に粗大粒子が存在しているため、塗膜欠陥(ポチ、スジなど)を生じた。表2より分散液1〜2を用いた感光体は、繰り返し使用後にも良好な画像を与えていることが分かる。
【0088】
(実施例5〜6および比較例4)
アルミニウムシリンダー表面を陽極酸化処理した後封孔処理を行った。この上に、下記電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥して各々0.2μm厚の電荷発生層、20μm厚の電荷輸送層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
〔電荷発生層塗工液〕
実施例5には前記分散液1を用い、実施例6には前記分散液2を用い、比較例4には前記分散液4を用いた。
〔電荷輸送層塗工液〕
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【化14】
ポリカーボネート 10部
塩化メチレン 80部
【0089】
このようにしてなる電子写真感光体を図7に示す電子写真用プロセスカートリッジに装着した後、画像形成装置に搭載した。画像露光光源を780mmの半導体レーザー(ポリゴンミラーによる画像書き込み)として、現像直前の感光体の表面電位が測定できるように表面電位計のプローブを挿入した。連続して5000枚の印刷を行い、その時の画像露光部と画像非露光部の表面電位を初期と5000枚後に測定した結果を表3に示す。
【0090】
【表3】
表3より、分散液1〜2を用いた感光体は、繰り返し使用後にも安定した表面電位を維持していることが分かる。
【0091】
実施例7
実施例1における支持体を電鋳ニッケル・ベルトからアルミシリンダーに変えた以外は実施例1と全く同様に感光体を作製した。
【0092】
実施例8
実施例1の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変えた以外は、実施例1と全く同様に感光体を作製した。
〔電荷輸送層塗工液〕
下記構造式の高分子電荷輸送物質 10部
【化15】
塩化メチレン 100部
【0093】
実施例9
実施例1の電荷輸送層塗工液を以下の組成に変えた以外は、実施例1と全く同様に感光体を作製した。
〔電荷輸送層塗工液〕
下記構造式の高分子電荷輸送物質 10部
【化16】
塩化メチレン 100部
【0094】
上記の実施例7〜9の各電子写真感光体を図5に示す電子写真プロセスに装着し(ただし、画像露光光源を780nmに発光を持つLDとした)、連続して一万枚の印刷を行い、その時の画像を初期と一万枚後に評価した。また、電荷輸送層の膜厚の変化(減少量)を測定した。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、分散液作製にあたり非常に効率的に、かつ結晶型を変えることない分散液の作製する方法が提供され、これを用いることにより、特定の結晶型を維持したまま、粒径の細かい分散液が提供される。この分散液は、電子写真感光体用分散液として非常に有用であり、特定の感光体特性を与え、かつ塗膜欠陥の少ない感光体を作製することが可能である。これにより、特定の特性(高感度・繰り返し使用によっても安定な表面電位)を維持しつつ、耐摩耗性の高い感光体が提供される。更に、高感度を失うことなく繰り返し使用によっても帯電性の低下と残留電位の上昇を生じない安定な電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における感光層を形成するための分散液を得るのに好適な装置の概略図。
【図2】本発明で用いられる電子写真感光体の模式断面図。
【図3】本発明で用いられる別の電子写真感光体の模式断面図。
【図4】本発明で用いられる更に別の電子写真感光体の模式断面図。
【図5】本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図。
【図6】本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図。
【図7】本発明の代表的な電子写真装置を説明するための概略図。
【図8】本発明の合成例により得られるチタニルフタロシアン顔料のX線回折スペクトル。
Claims (10)
- 一つの循環系の中に設けられた分散チャンバー部を通過した、有機顔料、結着樹脂および溶剤を主成分とする分散液と、その分散液と同一成分であって該分散チャンバー部通過前の分散液とを分離しておき、すべての分散液が該分散チャンバー部を少なくとも一回通過した後に、連続循環分散して調製されることを特徴とする感光層用塗液。
- 有機顔料がフタロシアニン系顔料であることを特徴とする請求項1記載の感光層用塗液。
- フタロシアニン系顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項2記載の感光層用塗液。
- 有機顔料が少なくともCuKαの特性X線(波長1.541Å)に対するブラッグ角2θの最大回折ピークが27.2°±0.2°にあるチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光層用塗液。
- 導電性支持体上に請求項1〜4のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
- 感光層が電荷発生層と電荷輸送層との積層構成からなることを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
- 電荷輸送層に少なくともトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートを含有することを特徴とする請求項6記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に少なくとも帯電、画像露光、現像、転写、クリーニング、除電を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に請求項1〜4のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真方法。
- 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段及び電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が導電性支持体上に請求項1〜4のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が導電性支持体上に請求項1〜4のいずれかに記載の感光層用塗液を塗工して形成された感光層を有するものであることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
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