JP3715742B2 - 静圧ステージ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動ステージを定盤に対して静圧支持するとともに、その支持剛性を高めるために移動ステージを定盤に向けて吸引する磁石を用いた静圧ステージに関し、特に走査型露光装置用として好適な静圧ステージに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の露光装置として、ウエハ等の被露光基板を逐次移動、停止して露光を繰り返すいわゆるステッパが知られている。
図3にステッパのウエハステージの詳細を、図4にそのウエハステージの分解図を示す。図において、ベース定盤1上にYヨーガイド2が固定され、Yヨーガイド2の側面とベース定盤1の上面でガイドされるYステージ3がベース定盤1の上にY方向に不図示エアスライドにより滑動自在に支持されている。Yステージ3は主に2本のXヨーガイド3aと、Yスライダ(大)3bおよびYスライダ(小)3cとの4部材から構成され、Yスライダ(大)3bはその側面および下面に設けた不図示エアパッドを介してYヨーガイド2側面およびベース定盤1上面と対面し、Yスライダ(小)3cはその側面に設けた不図示エアパッドを介してベース定盤1上面と対面している。この結果Yステージ3全体としては前述のようにYヨーガイド2の側面とベース定盤1の上面でY方向に滑動自在に支持されることになる。
【0003】
一方、Yステージ3の構成部品である2本のXヨーガイド3aの側面とベース定盤1の上面とでガイドされるXステージ4がX軸まわりにYステージ3を囲むように設けられ、X方向に不図示エアスライドにより滑動自在に支持されている。Xステージ4は主に2枚のXステージ側板4aと、上下のXステージ天板4bおよびXステージ底板4cとの4部材から構成され、Xステージ底板4cはその下面に設けたエアパッド4dを介してベース定盤1上面と対面し、2枚のXステージ側板4aはその側面に設けた不図示エアパッドを介してYステージ3の構成部材である2本のXヨーガイド3aの側面と対面している。Xステージ天板4b下面とXヨーガイド3aの上面、およびXステージ底板4c上面とXヨーガイド3aの下面は非接触になっている。この結果Xステージ4全体としては前述のように2本のXヨーガイド3aの側面とベース定盤1の上面でX方向に滑動自在に支持されることになる。Xステージ天板4bの上部には不図示工作物保持機構が設けられウエハ等の工作物を保持できるようになっており、またここには不図示スコヤミラーが設けられ、XおよびYステージ4,3の位置をレーザ干渉計で精密に計測できるようになっている。
【0004】
駆動機構は、X駆動用に1本、Y駆動用に2本の多相コイル切り替え方式のリニアモータが用いられている。固定子6a,7aはストローク方向に並べた複数個のコイル6c,7cを枠に挿入したもので、可動子6b,7bは箱形の磁石ユニットで構成される。7dは磁石連結板、8はY固定子固定部材である。可動子6b,7bの位置によって固定子6a,7aのコイル6c,7cに選択的に電流を流すことにより推力を発生する。
【0005】
エアスライドの剛性を上げるにはギャップを5μm程度に保つことが必要で、このため、分解図に示すようにXステージ4はエアパッドの間に設けた2個の与圧磁石4eでベース定盤1に吸引されるようになっている。
Yステージ3も同様にYスライダ(大)3b側面において不図示与圧磁石でYヨーガイド2に吸引されるように、Yスライダ(大)3b下面とYスライダ(小)3c下面において不図示与圧磁石でベース定盤1に吸引されるようになっている。
【0006】
これらの与圧磁石は図5に示すように短冊状の磁石片9を複数個並べて正方形のユニットにしたものが用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする問題点】
ところで、エアギャップ保持のために設けた与圧磁石はエアスライドの浮力方向と逆向きの吸引力のみを発揮してくれるのが望ましいのであるが、実際はそれ以外にエアスライドの滑動方向に速度に比例した抵抗力をも発生するという問題がある。
【0008】
現状のステージ構成の特徴として、Xステージ4のチルト姿勢はベース定盤1で直接ガイドされる。よってXステージ4はベース定盤1と対面しながら2次元に動き、XY両方向に上記速度に比例した抵抗を受ける。
Yステージ3はY方向にのみ与圧磁石の抵抗を受ける。
【0009】
一方、与圧磁石は図5に示すような複数の短冊状磁石片9を1次元に並べて正方形のユニットに構成されたものが用いられている。
【0010】
上記抵抗の大きさは、速度と、磁石ユニットの移動方向に直角な辺の長さと、移動方向に数えた磁石の極数との3者の積に比例する。
図5の構成では磁石ユニットは正方形形状なので、X,Yどちらの方向でも移動速度が同じなら同じ大きさの抵抗を発生する。
【0011】
これらの速度に比例する抵抗があっても、ステッパは停止状態で露光するので露光時には抵抗はゼロであり、ステッパでにおいては問題にならなかった。
【0012】
次に次世代の露光装置の1つである、走査型露光装置全体図を図6に示す。
図6において、床(または地面)30から除振手段31を介して定盤1が支持されている。定盤1上にはXY平面内に移動可能なウエハステージ33が設けられ、また鏡筒支持部材34を介して縮小投影光学系35が固定されている。支持部材34の上方にはレチクルステージベース36が設けられ、レチクルステージベース36上をガイドに沿って1軸方向に走査可能なレチクルステージ37が設けられている。レチクルを通してウエハに露光エネルギを与えるための照明系38が破線で示されている。41は光学系35の外筒、42,43は干渉計基準である。
【0013】
この装置ではレチクルパターンの矩形の一部領域のみが照明される。このため全体を露光するにはウエハステージ33とレチクルステージ37を光学系35の縮小倍率に等しい速度比で同期スキャンし、スキャン中に露光する。ウエハステージ33はXYステージであるが露光中はレチクルステージ37の軸に平行な軸をスキャンしもう1つの軸は静止するように制御する。
【0014】
この改良型として図7に示すシステムもある。
鏡筒定盤45に支持される投影光学系35がウエハステージ定盤46とは機械的に分離されて直接床30から除振手段31で支持されている。このため投影光学系35や干渉計基準にはウエハステージ33からの振動が伝わらず光学系35や干渉計基準42,43の機械的変形および振動を極めて小さくできるという利点がある。
【0015】
また、ウエハステージ定盤46は除振手段31を介さず床30から直接支持されている。このためウエハステージ33を加減速したときの反力による定盤46の揺り戻しがきわめて小さく停止精度が向上したり制定時間が短縮されたりするという利点がある。
【0016】
このようなシステムでは露光はスキャン中に行なわれるので、スキャン方向においてはスキャン中に発生する走行抵抗のむらおよび絶対値が新たな問題となる。
【0017】
走行抵抗のむらは、駆動系との組み合わせで結果的に発生する。例えば駆動系に複数個のコイルを切り替えるタイプのリニアモータを用いたときに発生する。このタイプのモータは位置によって周期的に推力定数が変化する。したがって、定電流駆動した場合、仮に磁石からの抵抗が一定だったとしても推力定数の周期的むらがそのまま抵抗むらとなって作用し、スキャン方向の露光精度を低下させる。このむらの大きさは磁石が発生する抵抗の絶対値に比例するのでこれを減らすには磁石の抵抗の絶対値を減らす必要がある。
【0018】
また、走行抵抗の絶対値が大きいとこれに打ち勝つための余分な推力が必要になり、駆動系の発熱が増加したり、発熱を除去する冷却系が大型化したりする。
【0019】
本発明は、上記の従来例における問題点に鑑みてなされたもので、与圧磁石のスラスト抵抗の少ない静圧ステージを提供することを目的とする。
【0020】
【問題点を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明の静圧ステージでは、 スキャン中に露光を行う露光装置に用いられる静圧ステージであって、定盤上に設けられた第1のガイドに沿って該定盤上を第1の方向に移動可能な第1のステージと、第1のステージ上に設けられた第2のガイドに沿って該定盤上を第1の方向と交差する第2の方向に移動可能であるとともに第1のステージの移動に伴って第1の方向へも移動可能な第2のステージと、前記第1および第2のステージをそれぞれ前記定盤から浮上させる第1および第2の流体静圧付与手段と、前記第1および第2のステージをそれぞれ前記定盤へ向けて吸引する第1および第2の予圧磁石とを具備し、前記第1および第2の方向の一方を前記スキャン方向として設定される静圧ステージにおいて、前記第2の予圧磁石が複数の短冊型磁石片を前記スキャン方向には長く該スキャン方向と直角方向には短い矩形状に配列してなる磁石ユニットを有することを特徴とする
【0021】
本発明の好ましい実施の形態において、前記磁石ユニットを構成する各磁石片の長さが該磁石ユニットの長辺と同一長さである。すなわち、この磁石ユニットは、長辺方向には分割されず、短辺方向にのみ複数個に分割されている。また、第1の与圧磁石としても前記磁石ユニットと同一形状の第2の磁石ユニットを用いることができる。但し、この第2の磁石ユニットは、走査方向が第1および第2のいずれの方向であるかにかかわらず、その長辺が第1の方向を向くように配置する。
【0022】
本発明が適用される走査型露光装置としては例えば図6または図7に示す構成のものを用いることができる。
【0023】
【作用および効果】
走査型露光装置用静圧ステージにおいて与圧用磁石ユニットを複数の矩形磁石片を1次元に並べて構成し、構成された磁石ユニット全体の形状をスキャン方向に直角な辺の長さがスキャン方向に平行な辺の長さより短い長方形となるよう構成し、かつスキャン方向が矩形磁石片の並びに沿う方向(短手方向)と直角になるように、すなわち矩形磁石片の長手方向がスキャン方向と平行になるように配置した磁石ユニットを含むようにする。これにより、与圧磁石のスラスト力に起因するスキャン方向における走行抵抗を低減し、走行抵抗むらの低減および露光精度の向上を図ることができる。また、走行抵抗が低減する結果発熱も低減し、これも露光精度の向上に寄与する。
【0024】
【実施例】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
第1実施例
図1は本発明の第1実施例を説明するための図で、Xをスキャン方向、Yをステップ方向とするXステージ4およびYステージ3を下から眺めたものである。本実施例において、ステージの構成要素は図3および図4のものと同じである。
【0025】
Xステージ4の与圧磁石4eは、磁石全体の形状はスキャン方向(X方向)に直角な辺の長さがスキャン方向に平行な辺の長さより短い長方形となるよう構成されている。また磁石の極数は2極であるが矩形状磁石片の並びに沿う方向(磁石片の短辺方向)とスキャン方向とは互いに直交するようになっている。
【0026】
上述のように上記抵抗の絶対値はスキャン速度と、磁石ユニットのスキャン方向に直角な辺の長さと、スキャン方向に数えた磁石の極数の3者の積に比例する。
【0027】
したがって、抵抗の絶対値を減らすにはこれら3者を減らせばよい。しかしスキャン速度はスループットの観点から減らすことはできない。そこで磁石ユニットのスキャン方向に直角な辺の長さと、スキャン方向に数えた磁石の極数の2者を減らすことになる。図1のように磁石ユニット4eの形状を偏平な長方形としてその短辺をスキャン方向に直角に配置することにより磁石ユニットのスキャン方向に直角な辺の長さを従来例にくらべて大きく減らしている。また2極の磁石のならびに沿う方向をスキャン方向と直角に配置することによりスキャン方向に数えた磁石の極数を減らしている。この相乗効果により図1の例では従来例に比べてXステージ4のスキャン時の抵抗がきわめて小さくなる。磁石の極数が2極である必要は抵抗を減らすという観点からは特になく6極でも10極でも磁石の並びに沿う方向とスキャン方向とが直角に配置されていさえすればよいのだが、本実施例のような全体として偏平の長方形のユニットを構成しようとしたときには磁石の加工組み立て上の理由で極数が少ない方が有利である。
【0028】
一方、Yステージ3の磁石ユニット3eは従来例と変わっていない。本実施例ではスキャン時にはXステージのみがスキャンし、Yステージは静止しているのでYステージの磁石ユニットには特に対策をうつ必要がないからである。
【0029】
但し、図1に示すようなXスキャンYステップの場合はYステージ3の磁石において矩形磁石の並びに沿う方向とステップ方向とを互いに直角に配置することによりYステージ3のステップ時の発熱が少なくなるというメリットはある。このメリットは磁石ユニット全体の形を短辺がステップ方向と直角な偏平の長方形になるようにするとさらに顕著になる。
【0030】
第2実施例
図2は第2実施例を説明するための図で、Yをスキャン方向、Xをステップ方向とするXステージ4とYステージ3を下から眺めたものである。
この実施例ではスキャン時にはXステージ4とYステージ3が一体となってスキャンを行なう。したがってXステージ4の磁石ユニット4eにおいても、Yステージの磁石ユニットにおいてもスキャン方向に直角な辺の長さがスキャン方向に平行な辺の長さより短い長方形となるよう構成される。磁石の極数は2極であるが矩形磁石の並びに沿う方向とスキャン方向とは互いに直交するようになっている。磁石ユニットの構成の理由や利点は第1実施例とまったく同じである。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、多相モータと組み合わせたときの重ね合わせ精度向上や、与圧磁石のスラスト力に起因するスキャン抵抗の低減、さらにはモータなどの発熱の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例に係るウエハステージの底面図である。
【図2】 本発明の第2実施例に係るウエハステージの底面図である。
【図3】 従来例であり本発明の適用対象であるウエハステージの全体図である。
【図4】 図3のウエハステージの分解図である。
【図5】 与圧磁石としての磁石ユニット図である。
【図6】 本発明のステージの適用対象例としての走査型露光装置の全体図である。
【図7】 本発明のステージの適用対象例としての他の走査型露光装置の全体図である。
【符号の説明】
1:ベース定盤、2:Yヨーガイド、3:Yステージ、3a:Xヨーガイド、3b:Yスライダ(大)、3c:Yスライダ(小)、3e:与圧磁石、4:Xステージ、4a:Xステージ側板、4b:Xステージ天板、4c:Xステージ底板、4d:エアパッド、4e:与圧磁石、6a,7a:固定子、6b,7b:可動子、6c,7c:コイル、7d:磁石連結板、8:Y固定子固定部材、9:磁石片、30:床(または地面)、31:除振手段、33:ウエハステージ、34:鏡筒支持部材、35:縮小投影光学系、36:レチクルステージベース、37:レチクルステージ、38:照明系、41:外筒、42,43:干渉計基準、45:鏡筒定盤。
Claims (9)
- スキャン中に露光を行う露光装置に用いられる静圧ステージであって、定盤上に設けられた第1のガイドに沿って該定盤上を第1の方向に移動可能な第1のステージと、第1のステージ上に設けられた第2のガイドに沿って該定盤上を第1の方向と交差する第2の方向に移動可能であるとともに第1のステージの移動に伴って第1の方向へも移動可能な第2のステージと、前記第1および第2のステージをそれぞれ前記定盤から浮上させる第1および第2の流体静圧付与手段と、前記第1および第2のステージをそれぞれ前記定盤へ向けて吸引する第1および第2の予圧磁石とを具備し、前記第1および第2の方向の一方を前記スキャン方向として設定される静圧ステージにおいて、前記第2の予圧磁石が複数の短冊型磁石片を前記スキャン方向には長く該スキャン方向と直角方向には短い矩形状に配列してなる磁石ユニットを有することを特徴とする静圧ステージ。
- 前記磁石ユニットを構成する各磁石片の長さが該磁石ユニットの長辺と同一長さであることを特徴とする請求項1記載の静圧ステージ。
- 前記第2の方向がスキャン方向であり、前記第1の与圧磁石が複数の短冊型磁石片を前記スキャン方向には短く該スキャン方向と直角方向には長い矩形状に配列してなる第2の磁石ユニットを有することを特徴とする請求項1または2記載の静圧ステージ。
- 前記第1の方向がスキャン方向であり、前記第1の与圧磁石が複数の短冊型磁石片を前記スキャン方向には長く該スキャン方向と直角方向には短い矩形状に配列してなる第2の磁石ユニットを有することを特徴とする請求項1または2記載の静圧ステージ。
- 前記第2の磁石ユニットを構成する各磁石片の長さが該磁石ユニットの長辺と同一長さであることを特徴とする請求項3または4記載の静圧ステージ。
- 前記定盤が床に除振手段を介して設置され、該定盤上に前記走査型露光装置を構成する投影光学系およびレチクルステージが搭載されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静圧ステージ。
- 前記定盤が除振手段を介さず床と直結され、前記走査型露光装置を構成する投影光学系およびレチクルステージは除振手段を介して床に設置された他の定盤上に搭載されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静圧ステージ。
- 前記静圧を発生するための流体が空気であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の静圧ステージ。
- スキャン中に露光を行う露光装置に用いられる静圧ステージであって、定盤上を前記スキャン方向に移動可能なステージと、前記定盤から浮上させる流体静圧付与手段と、前記ステージをそれぞれ前記定盤へ向けて吸引する予圧磁石とを具備し、前記予圧磁石が複数の短冊型磁石片を前記スキャン方向には長く該スキャン方向と直角方向には短い矩形状に配列してなる磁石ユニットを有することを特徴とする静圧ステージ。
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