JP3715083B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両用の自動変速機におけるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速の制御を行うための制御装置である。
【0002】
【従来の技術】
自動変速機の小型軽量化のために一方向クラッチを廃止することが行われている。その種の自動変速機では、走行中の変速段を設定するために係合している摩擦係合装置の一つを解放し、これとほぼ同時に他の摩擦係合装置を係合させるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することになる。
【0003】
通常、車両用の自動変速機においては、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を油圧によって係合させており、したがってクラッチ・ツウ・クラッチ変速の場合には、解放する摩擦係合装置からの解放圧と係合させる摩擦係合装置の係合圧とを同時に制御することになる。これらの油圧の制御が適正に行われることにより、例えば、解放側の摩擦係合装置がこれに掛かるトルクの減少に従ってトルク容量が低下し、負荷されるトルクがほぼゼロになると同時に解放すれば、この摩擦係合装置が一方向クラッチと同様に動作することになり、ショックの良好な変速を達成できる。しかしながら、実際には、変速を実行する摩擦係合装置や油圧機器あるいはオイルの粘性などの相違あるいは経時変化があるために、電気的な制御を所期どおりに行っても、目標どおりの変速を達成することは困難である。
【0004】
そこで従来、変速制御機器の個体差や経時変化などを制御に取り込んで、これらの影響を可及的に少なくするために、油圧の学習制御が行われている。その一例が特開平5−296323号公報に記載されている。この公報に記載された制御装置は、エンジンのオーバーシュートがないことおよび出力軸回転数の微分値すなわち加速度の低下量が所定値以上であることなどに基づいてタイアップを検出し、その検出結果に基づいて解放側の摩擦係合装置の油圧を学習補正するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
自動変速機の挙動すなわち変速の進行状況は、自動変速機を構成している摩擦係合装置やシャフトなどの回転要素の回転変化に基づいて検出するのが一般的である。したがって上述したクラッチ・ツウ・クラッチ変速の状況は、回転変化が顕著となるアンダーラップ状態に基づくエンジンのオーバーシュートを生じさせることによって検出することが容易である。そのためクラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の油圧の学習補正(学習制御)を行う場合には、先ず、それらの摩擦係合装置のアンダーラップ状態でのエンジンのオーバーシュートを検出し、その検出結果に基づいて油圧をオーバーラップ傾向に補正する。そして過度なオーバーラップによるタイアップ状態が検出された場合には、アンダーラップ傾向に油圧を補正する。
【0006】
上述した公報に記載されている制御装置は、このような学習制御におけるタイアップの検出を正確に行うように構成したものであるが、学習制御の開始時あるいは学習制御が終了していない時点では、摩擦係合装置をアンダーラップ状態に制御して回転変化を生じさせることになる。そのため、クラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の油圧の学習値が得られていない状態、例えばバッテリーを一時的に取り外したことにより記憶が消失した場合には、その直後のクラッチ・ツウ・クラッチ変速時にエンジンのオーバーシュートによる摩擦係合装置の過剰な滑りが生じ、その耐久性が低下する可能性があった。
【0007】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、摩擦係合装置を係合もしくは解放させる油圧の学習制御が実行もしくは終了する前の摩擦係合装置の滑りを防止してその耐久性を向上させることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、走行中の変速段を設定するために係合している摩擦係合装置を解放するとともに、他の摩擦係合装置を係合させて前記変速段から他の変速段へ変速し、その変速に関与する前記各摩擦係合装置の少なくともいずれか一方の摩擦係合装置の油圧を変速の進行状況に基づいて学習して補正する自動変速機の変速制御装置において、前記学習による学習値が得られているか否かを判定し、前記学習値が得られていない状態における前記変速段から前記他の変速段への変速の際に、前記少なくともいずれか一方の摩擦係合装置の油圧を、前記変速時における前記自動変速機の所定の回転部材の回転数が予め定めた回転数以上に増大しない油圧に設定するオーバーラップ制御手段を備え、かつ前記学習値が得られている状態における前記変速段から前記他の変速段への変速の際に、その学習値に基づいて前記摩擦係合装置と前記他の摩擦係合装置との少なくとも一方を制御して前記変速を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
したがってこの発明の制御装置によれば、いわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置が、その油圧の学習値が得られていない状態でのクラッチ・ツウ・クラッチ変速の際にオーバーラップ傾向に制御される。これは、自動変速機への入力回転数などの所定の回転部材の回転数が所定の回転数以上に増大しない状態であり、したがってクラッチ・ツウ・クラッチ変速時の摩擦係合装置の油圧の適正値が求められていない状態であっても、その摩擦係合装置の過度な滑りが生じることがなく、また学習値が得られている場合にはその学習値に基づいてクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行するので、その摩擦係合装置の過度な滑りが生じることなく、したがってその耐久性が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を図を参照してより具体的に説明する。先ずこの発明の制御装置で対象とする自動変速機の一例の概略的な構成を説明する。図4は、前掲の特開平5−296323号公報に記載されている自動変速機10を示しており、その機構部は、前置式オーバードライブ構成の副変速機構Dと、単純連結3プラネタリギヤトレーン構成の前進4速後進1速の主変速機構Mとを組み合わせた5速構成とされ、この機構部がロックアップクラッチL付のトルクコンバータTに連結されている。
【0011】
副変速機構Dは、サンギヤS0 、キャリヤC0 、リングギヤR0 に関連してワンウェイクラッチ(OWC)F−0とこれに並列する多板クラッチC−0およびこれと直列する多板ブレーキB−0を備えている。一方、主変速機構Mは、サンギヤS1 〜S3 、キャリヤC1 〜C3 、リングギヤR1 〜R3 からなる各変速要素を適宜直結した単純連結の3組のギヤユニットP1 〜P3 を備え、各ギヤユニットP1 〜P3 の変速要素に関連して多板クラッチC−1,C−2、バンドブレーキB−1、多板ブレーキB−2〜B−4、ワンウェイクラッチ(OWC)F−1,F−2が配設されている。なお、図において、符号SN1 はクラッチC−0のドラム回転を検出するC0 センサ、SN2 はクラッチC−2のドラム回転を検出するC2 センサを示す。また、図示していないが、各クラッチおよびブレーキは、それらの摩擦材を係合・解放操作するピストン・シリンダ機構からなる油圧サーボを備えている。
【0012】
図5に示すように、自動変速機10には上記の構成からなる機構部と、トルクコンバータおよびロックアップクラッチを制御する油圧制御装置20と、その油圧源として機構部に組み込まれた図示しないオイルポンプとが設けられている。車載状態において、自動変速機10はエンジンEに連結され、自動変速機10の油圧制御装置20は、それに組み込まれた各ソレノイドバルブSL1 〜SL4 および各リニアソレノイドバルブSLN,SLT,SLUを介して自動変速制御コンピュータ30に接続され、その自動変速制御コンピュータ30は、エンジンEおよび自動変速機10を含む車両の各部に配置された各種センサ40とエンジン制御コンピュータ50に接続されている。
【0013】
ここでエンジンEは、その出力を電気的に制御するように構成されており、サーボモータ11によって駆動される電子スロットルバルブ12が吸気管路13に配置されている。一方、アクセルペダル14の踏み込み量がエンジン制御コンピュータ50に入力され、その入力信号に基づく出力信号によってサーボモータ11が制御され、アクセルペダル14の踏み込み量に応じてスロットル開度すなわちエンジン出力が得られるように構成されている。
【0014】
このようなエンジンEの制御と併せて自動変速機10の変速段や油圧が制御される。これらの制御を行うための各種センサ40からの入力信号を例示すると、エンジン制御コンピュータ50には、エンジン回転数、吸入空気量、吸入空気温度、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号などが入力されている。また自動変速制御コンピュータ30には、スロットル開度、車速、エンジン水温、ブレーキスイッチからの信号、シフトポジション、パターンセレトクスイッチからの信号、C0 センサSN1 からの信号、C2 センサSN2 からの信号、自動変速機10の油温、マニュアルシフトスイッチからの信号、クルーズコンピュータからのクルーズ信号などが入力されている。
【0015】
この自動変速機10において、図5に示すエンジンEの出力トルクは、図4に示すトルクコンバータTを経て副変速機構Dの入力軸Nに伝達される。そして入力軸Nのトルクは、上記の油圧制御装置20による制御下で、クラッチC−0を係合させて副変速機構Dを直結とし、かつ主変速機構MのクラッチC−1を係合し、他の摩擦係合装置を全て解放とした場合に、ギヤユニットP3 に入力され、ワンウェイクラッチF−2によってリングギヤR3 の逆回転が阻止され、キャリヤC3 から出力軸Uに第1速の回転として出力される。
【0016】
つぎに、第2速は、副変速機構Dが直結で、クラッチC−1およびブレーキB−3を係合したときに達成され、このとき、ギヤユニットP2 に入力されたトルクは、ギヤユニットP1 のキャリヤC1 を反力要素としてギヤユニットP2 のキャリヤC2 およびそれに直結するギヤユニットP1 のリングギヤR1 に出力され、出力軸Uに第2速の回転として出力される。
【0017】
また、第3速は、同様に、副変速機構Dが直結で、クラッチC−1およびブレーキB−2を係合させ、他の摩擦係合装置を解放させることにより達成される。そのとき、ギヤユニットP2 のリングギヤR2 に入力されたトルクは、サンギヤS2 を反力要素とし、キャリヤC2 を介して出力軸Uから第3速の回転として出力される。
【0018】
さらに、第4速は、同様に、副変速機構Dが直結で、クラッチC−1およびクラッチC−2が共に係合することにより達成される。このとき、リングギヤR2 およびサンギヤS2 に入力されるために、ギヤユニットP2 が直結状態となり、入力トルクがそのまま出力される。そして第5速は、主変速機構Mが上記の第4速と同様な状態になり、これに対して副変速機構DのクラッチC−0を解放するとともに、ブレーキB−0を係合させてサンギヤS0 を固定し、これにより副変速機構Dを増速回転させることにより達成される。
【0019】
そして後進段は、副変速機構Dを上記の状態とし、主変速機構MのクラッチC−2とブレーキB−4とを係合させることで達成される。このとき、ギヤユニットP2 のサンギヤS2 に入力されたトルクは、リングギヤR3 を反力要素とするギヤユニットP2 ,P3 のキャリヤC2 ,C3 の逆回転として出力される。
【0020】
上記の各変速段における各摩擦係合装置とワンウェイクラッチとの係合・解放の関係を図6にまとめて作動図表として示す。図において、〇印は係合すること、●印はエンジンブレーキ時に係合すること、◎印はトルクの伝達に関与しないで係合すること、空欄は解放状態にあることをそれぞれ示す。
【0021】
この作動表から知られるように第2速と第3速との間の変速が、ブレーキB−3とブレーキB−2との係合・解放状態を切り換えるクラッチ・ツウ・クラッチ変速となる。これらのブレーキB−2,B−3の係合・解放操作を行うための油圧の調圧と給排とに直接関与する油圧回路の部分には、図7に示すように、1−2シフトバルブ21、2−3シフトバルブ22、3−4シフトバルブ23、B−2リリースバルブ24、B−3コントロールバルブ25、リレーバルブ26およびB−2アキュームレータ27が配設されている。これらのシフトバルブを切り換える図5に示すソレノイドバルブSL1〜SL4、ロックアップ用リニアソレノイドバルブSLU、B−2アキュームレータ27およびその背圧を制御するアキュームレータコントロールバルブ用リニアソレノイドバルブSLN、リニアソレノイドバルブSLUにエンジン負荷に応じた制御信号を出力するリニアソレノイドバルブSLTなどにより制御される。
【0022】
これらのうちブレーキB−3に対する油圧の供給・排出油路に配設したB−3コントロールバルブ25は、ブレーキB−3の油圧をフィードバックして第1の向き(図では上向き)に印加され、それとは逆の第2の向き(図では下向き)に外部制御信号油圧(リニアソレノイドバルブSLUの出力する信号圧)PSLU を印加され、それらの圧力に応じてブレーキB−3の油圧を調圧するスプール251と、このスプール251と同軸的に配置され、ブレーキB−2を係合させてブレーキB−3を解放する掴み替え変速(クラッチ・ツウ・クラッチ変速)時に、ブレーキB−2の油圧を図での上向きに印加され、少なくとも前記変速時に、リニアソレノイドバルブSLUの信号圧を図での下向きに印加させるプランジャ252とからなり、ブレーキB−2の油圧が印加されることによってプランジャ252がスプール251に当接し、スプール251と連動して動作するように構成されている。
【0023】
そして、B−3コントロールバルブ25へのB−3ブレーキ圧を調圧するための油圧の供給は、掴み替え変速時に切り換え操作されないシフトバルブとしての1−2シフトバルブ21を介して行われる。さらに、B−3コントロールバルブ25とブレーキB−3との間にブレーキB−2からの油圧により制御されるリレーバルブ26が配置されている。
【0024】
さらに前記各バルブと油路の接続関係を詳述すると、図示しないマニュアルバルブに連なるDレンジ圧油路201は、1−2シフトバルブ21を経て分岐し、一方の油路201aは、2−3シフトバルブ22を経由してリレーバルブ26に接続され、このリレーバルブ26を経由してブレーキB−3の油路203bに接続されている。分岐した他方の油路201bは、3−4シフトバルブ23、B−2リリースバルブ24を経てB−3コントロールバルブ25の入力ポート254に連なり、そのB−3コントロールバルブ25から油路203aを経てリレーバルブ26に接続されている。
【0025】
マニュアルバルブに連なる他方のDレンジ圧油路202は、2−3シフトバルブ22を経て分岐し、一方の油路202aは、オリフィスを経てブレーキB−2の油路204に接続されている。この油路204は、B−2リリースバルブ24およびチェックバルブを経由して油路202aに接続されるとともに、オリフィスを経てアキュームレータ27に接続されている。分岐した他方の油路202bは、3−4シフトバルブ23を経てクラッチC−2に接続されている。
【0026】
3−4シフトバルブ23は、上記の両方の油路201b,202bの連通および遮断の他にソレノイドバルブSL3の信号圧(PSL3 )のB−2リリースバルブ24のスプール端への印加を行うべく、ソレノイドバルブ信号圧油路205(図には二点鎖線で示してある。)を介してB−2リリースバルブ24に接続されている。
【0027】
B−2リリースバルブ24は、ブレーキB−2の解放終期にアキュームレータ27の油圧のドレーンを迅速化するバイパス回路を形成するべく設けられており、スプリングの弾性力が負荷されたスプール241を有し、前記3−4シフトバルブ23を経由してソレノイドバルブSL3の信号圧(PSL3 )をスプール241の端部に印加されて、バイパス油路201dのブレーキB−2用油路204への連通および遮断と、前記Dレンジ圧油路201bのB−3コントロールバルブ25の入力ポート254への連通およぴプランジャ253の端部の信号ポートへの連通の切り換え、ならびに他のDレンジ圧油路201aから分岐する油路201eの油路201bへの連通および遮断を行う。したがってB−3コントロールバルブ25の入力ポート254へは2つの油路201b,201eから1−2シフトバルブ21を経て2−3シフトバルブ22および3−4シフトバルブ23を経由する並列的にDレンジ圧(PD )を供給することが可能である。
【0028】
B−3コントロールバルブ25は、フィードバック圧入力ポート256を経てスプール251の端部に印加されるフィードバック圧によりスプール251に設けられた2つのランドの一方で入力ポート254を開閉し、他方でドレーンポートEXを開閉することで出力ポート255に連なる油路203aの油圧を調圧する構成とされており、スプール251と同軸的に配設されたプランジャ252は差動ピストン形状とされ、径差部にリニアソレノイド信号圧(PSLU )、端面に2−3シフトバルブ22を介してブレーキB−2の油路204に連なる油路204aのブレーキB−2の係合圧を印加されて、スプール251に当接・離隔可能なストローク域を有する構成とされている。このB−3コントロールバルブ25には、さらにスプール251へのスプリング258の負荷を変更するプランジャ253がプランジャ252とは反対側に設けられており、このプランジャ253の一方の端面にはB−2リリースバルブ24を経由する油路201bのDレンジ圧(PD )の印加および解放が可能なように構成されている。
【0029】
なお、リレーバルブ26は、スプリング負荷されたスプールタイプの切換弁であり、スプリング負荷側のスプール端部に油路204のB−2ブレーキ圧を、また他のスプール端部にはライン圧(PL )を対向して印加され、ブレーキB−3の油路203bと油路201aおよび油路203aとの連通を切り換えるように構成されている。
【0030】
ここで、B−3コントロールバルブ25のリニアソレノイドバルブ圧(PSLU )の受圧面積を1→2、2→1および3→2変速時に対して2→3変速時に大きくする理由を図8を参照して説明する。なお、この図8に示すB−3コントロールバルブは、上述したものとはスプリング負荷の掛け方が若干相違しているが、スプール251とプランジャ252との関係は実質的に上記のものと同等である。
【0031】
B−3コントロールバルブ25の調圧機能としては、1→2、2→1および2→3変速時は、リニアソレノイドバルブ圧(PSLU )の油圧範囲でB−3ブレーキ圧を調圧し、ブレーキB−3のトルク容量を確保するだけでよい。そこで、プランジャ252の端面の受圧面積をA1 、径差部の受圧面積をA2 、スプール251の径差部の受圧面積をA3 、ランド端面の受圧面積をA4 として、B−3ブレーキ圧(PB3)は、
PB3=A4 ×PSLU /A3 …(1)
の関係が成り立てばよい。それに対して、2→3変速時は、B−2ブレーキ圧がリターンスプリングの弾性力に押し勝つまでの油圧がB−3コントロールバルブ25に作用した状態でのB−3ブレーキ圧でブレーキB−3のトルク容量を確保しなければならないため、そのときのB−3ブレーキ圧(PB3′)は、
PB3′=(A4 ′×PSLU −A1 ×PB2)/A3 …(2)
ただし、A4 ′=A4 +A2
の関係を保ってブレーキB−3のトルク容量を確保しなければならない。さらに、2→3変速時の回路の切り換えにより、B−3ブレーキ圧が一時的に落ち込むことが考えられるため、これを補正するためにも、B−3ブレーキ圧(PB3)を高く設定しておく必要がある。すなわち
PB3′>PB3 …(3)
上記の式(1),(2),(3)から2→3変速時のリニアソレノイドバルブ圧(PSLU )の受圧面積A4′は、1→2、2→1および3→2変速時より大きくする必要がある。
【0032】
以上、要するに、上記の制御装置によれば、掴み替え変速時に係合側の摩擦係合装置であるブレーキB−2からB−3コントロールバルブ25に印加される油圧分に対抗する力を外部制御信号圧(PSLU )自体ではなく、その信号圧の受圧面積を増大させることで確保することできるので、精度の低下を防ぎながら、制御装置のコンパクト化を達成することができる。また、B−3コントロールバルブ25へのブレーキB−3の油圧を調圧するための油圧の供給を掴み替え変速時に切り換え操作されない1−2シフトバルブ21を介してなされるようにすることで、掴み替え変速時にその変速に直接関与する2−3シフトバルブ22の切り換えにより発生する過渡的なブレーキB−3の油圧の低下を避けることができ、それにより変速ショックの軽減を図ることができる。さらに、ブレーキB−2からの油圧によるリレーバルブ26の制御で、ブレーキB−3の油圧の排出がB−3コントロールバルブ25の動作に関わりなく可能となるため、B−3コントロールバルブ25が閉じ込み状態でスティックした場合でもブレーキB−3の油圧の閉じ込みを防止できる。
【0033】
つぎに油圧回路の他の構成例を示す。図9に示す例は、前述した図7に示す油圧回路に図8に示すバルブを配置した例である。このように構成すれば、リニアソレノイドバルブSLUの信号圧(PSLU )とスプリング負荷とが直列に作用し、互いに打ち消し合うように作用するので、より高いリニアソレノイドバルブ圧PSLU での調圧が可能になり、調圧精度および応答性が向上する。また図10に示す例は、図7に示すB−3コントロールバルブ25にリニアソレノイドバルブSLUの信号圧PSLU の印加をB−2リリースバルブ24を介して行うように構成した例であり、図11は、これと同様の構成を図8に示すバルブに適用した例である。
【0034】
なお、上述した例においてブレーキB−3の供給・排出油路に関して、B−2リリースバルブ24、B−3コントロールバルブ25、リレーバルブ26を、ここに挙げた順に配列しているが、これは、B−3コントロールバルブ25の中間フェールによるB−3ブレーキ圧の閉じ込みに対してもリレーバルブ26でドレーンを補償でき、かつ第3速発進のためのN→D操作時に、B−2リリースバルブ24またはB−3コントロールバルブ25をソレノイドバルブSL3で制御することによりB−3コントロールバルブ25への供給を断つことで流量損失をなくすことができる利点を狙ったものである。また、上記のようにB−3コントロールバルブ25とブレーキB−3との間に直列にリレーバルブ26を設けた構成なので、フェール時にB−3コントロールバルブ25が供給状態でかつリレーバルブ26がドレーン状態でロックしたフェール時に、B−3ブレーキ圧がドレーンされてしまうなどの不都合が解消される。
【0035】
上記の自動変速機10では、第2速と第3速との間で変速する場合、ブレーキB−2とブレーキB−3との係合・解放状態を切り換える。例えば第2速から第3速にアップシフトする場合、ブレーキB−3を解放し、かつブレーキB−2を係合させるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することになる。その場合、エンジンEのオーバーシュートや変速ショックが生じないように、上記のB−3コントロールバルブ25の調圧レベルをリニアソレノイドバルブSLUの信号圧PSLU によって制御する。
【0036】
そのB−3ブレーキ圧は学習制御によって決定されるが、それ以前の状態では、図1に示すように制御される。先ず、信号の読み込みなどの入力信号の処理(ステップ1)を行った後に、イニシャル判定を行う(ステップ2)。これは、油圧の学習制御値が実質的に得られていない状態を判定するものであり、車両として走行開始直前の完全な初期状態だけでなく、例えばバッテリー(図示せず)を取り外したことにより学習値の記憶が失われて初期状態に戻った場合などがある。したがってステップ2の判断は、例えばバッテリー電圧が所定時間以上継続して印加されているか否かを判断することにより行われ、所定時間以上継続して印加されている場合には、ステップ2で否定判断され、また反対にバッテリー電圧が印加されない状態が所定時間以上継続した場合には、ステップ2で肯定判断される。
【0037】
ステップ2で肯定判断された場合、すなわちイニシャル状態の場合には、油圧の学習が成立しているか否かが判断される(ステップ3)。この油圧の学習は、例えば前掲の特開平5−296323号公報に記載されているように実施される。すなわち一例として、第2速から第3速へのアップシフトの際に、自動変速機10の出力軸Uの回転数の微分値すなわち加速度の低下量が、予め設定した基準値以下となった場合に、入力回転数および出力回転数ならびに変速比に基づいてエンジンのオーバーシュートを判断する。エンジンのオーバーシュートが検出された場合には、解放側の摩擦係合装置であるブレーキB−3の油圧を高くする。具体的には、B−3コントロールバルブ25に印加するリニアソレノイドバルブSLUの信号圧を高くする補正を行う。この制御は、変速に関与する摩擦係合装置のアンダーラップ傾向をオーバーラップ傾向に補正する制御である。
【0038】
またエンジンのオーバーシュートが検出されない場合には、トルク相開始時の出力軸回転数の微分値が記憶される。その後、イナーシャ相の開始までにエンジンのオーバーシュートが生じなければ、出力回転数の変化状態からイナーシャ相の開始を判断し、その時点の出力回転数の微分値を記憶する。そしてこれらトルク相開始時およびイナーシャ相開始時の出力回転数の各微分値を比較し、その差が所定の基準値以上であれば、変速に関与する摩擦係合装置のタイアップが発生したとして、ブレーキB−3の油圧を予め定めた一定値だけ低下させる。
【0039】
このようにしてエンジンのオーバーシュートおよびタイアップが生じない状態、すなわちオーバーシュートおよびタイアップが基準範囲以内に収まる状態にブレーキB−3の油圧を定める。具体的には、リニアソレノイドバルブSLUのデューティ比が学習による所定の値に収束し、これを記憶する。
【0040】
また他方のブレーキB−2の油圧は、リニアソレノイドバルブSLNによってアキュームレータ27の背圧を変化させることにより制御することができ、したがってこのブレーキB−2の油圧も学習制御することができる。そしてこれらのブレーキB−3,B−2の油圧の学習値は、マップとして記憶される。その場合、例えば図2に示すように、スロットル開度θの大きさごとに区分してマップ化する。
【0041】
このようにして各ブレーキB−2,B−3の油圧の学習値が得られていない状態は、学習が成立していない状態であり、このような場合にはステップ3で否定判断され、ステップ4に進む。このステップ4では、変速に関与する摩擦係合装置の油圧を予め定めた初期油圧に設定する。この初期油圧は、摩擦係合装置における摩擦材の耐久性を向上させるためにエンジンのオーバーシュート量を所定値以内に抑制するべく、各ブレーキB−2,B−3の油圧PB2,PB3をオーバーラップ側に設定する圧力である。このオーバーラップとは、図3に示すように、これらのブレーキ圧PB2,PB3が共にある程度以上の圧力になる状態であり、したがって係合側のブレーキB−2と解放側のブレーキB−3とがトルク容量を持つ状態である。なお、このような初期油圧は、実験的に求めておくことができる。したがってこのステップ4が請求項1の発明のオーバーラップ制御手段に相当することになる。
【0042】
ステップ4での初期油圧の設定と併せて、エンジントルクのリアルタイムの低減制御を実行する(ステップ5)。これは、何らかの原因でエンジントルクが増大してオーバーシュートとなることを防止するためであり、エンジン回転数の検出値に基づいて例えば点火時期の遅角制御を行う。
【0043】
なお、学習が終了していることによりステップ3で肯定判断された場合には、学習後の油圧制御を実行する(ステップ6)。すなわち学習の結果として得られた制御値に基づいて油圧の制御を行う。その場合、クラッチ・ツウ・クラッチ変速時のオーバーシュート量が小さい値(例えば50rpm程度)となるように制御値が設定されているので、変速に関与する摩擦係合装置の過渡な滑りやそれに起因する耐久性の低下が回避される。またイニシャル状態ではないことによりステップ2で否定判断された場合には、ステップ7に進んで通常の油圧制御を実行する。
【0044】
したがってこの発明に係る上記の変速制御装置によれば、クラッチ・ツウ・クラッチ変速の際の油圧の学習制御値が得られていない状態であっても、エンジンのオーバーシュートすなわち入力回転数の上昇が過度には発生しない。そのため、クラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の滑りが抑制され、その耐久性の向上を図ることができる。
【0045】
なお、上述した例では、バッテリーを一時的に取り外すことによって油圧の学習値が消失する場合を例に採って説明したが、この発明では、油圧の学習が終了した際にその学習値を不揮発性メモリーに記憶させるように構成してもよい。また上記の例では、第2速から第3速へのアップシフトの際の解放側のブレーキB−3の油圧を学習制御する場合について説明したが、この発明は、他のクラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の油圧を学習制御する場合に適用することができる。さらにこの発明は、上述した自動変速機以外の自動変速機を対象とする制御装置に適用することができる。そしてこの発明は、エンジン以外にモータやモータおよびエンジンを動力源とした車両の自動変速機を対象とする制御装置にも同様に適用することができる。また上記の例では、エンジン回転数が予め定めた所定値を超えた回転数にならないように油圧を制御することとしたが、この発明では、これに替えて、適宜の回転部材の回転数が予め定めた回転数以上にならないように油圧を制御するように構成してもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、クラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の油圧を学習制御するにあたり、その学習制御が終了もしくは行われていない状態で、これらの摩擦係合装置を、入力回転数などの所定の回転部材の回転数が予め定めた値以上に増大しないようにオーバーラップ側に制御するから、たとえ油圧の学習制御が行われていなくても摩擦係合装置の過度な滑りが生じることがなく、したがって摩擦係合装置の熱的な負荷を軽減してその耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる制御装置による制御例を説明するためのフローチャートである。
【図2】クラッチ・ツウ・クラッチ変速に関与する摩擦係合装置の油圧の学習値のマップを概念的に示す図表である。
【図3】この発明の制御装置で初期油圧制御を行った場合のブレーキ圧の変化を概略的に示すタイムチャートである。
【図4】その自動変速機における歯車変速装置のスケルトン図である。
【図5】その全体的な制御系統を示すブロック図である。
【図6】その自動変速機で各変速段を設定するための摩擦係合装置の作動状態を示す図表である。
【図7】この発明で対象とする自動変速機における油圧回路の一部を示す油圧回路図である。
【図8】そのB−3コントロールバルブを示す断面図である。
【図9】他の油圧回路の構成例を示す部分油圧回路図である。
【図10】更に他の油圧回路の構成例を示す部分油圧回路図である。
【図11】他の油圧回路の構成例を示す部分油圧回路図である。
【符号の説明】
10 自動変速機
30 自動変速制御コンピュータ
B−2,B−3 ブレーキ
SLU リニアソレノイドバルブ
Claims (1)
- 走行中の変速段を設定するために係合している摩擦係合装置を解放するとともに、他の摩擦係合装置を係合させて前記変速段から他の変速段へ変速し、その変速に関与する前記各摩擦係合装置の少なくともいずれか一方の摩擦係合装置の油圧を変速の進行状況に基づいて学習して補正する自動変速機の変速制御装置において、
前記学習による学習値が得られているか否かを判定し、前記学習値が得られていない状態における前記変速段から前記他の変速段への変速の際に、前記少なくともいずれか一方の摩擦係合装置の油圧を、前記変速時における前記自動変速機の所定の回転部材の回転数が予め定めた回転数以上に増大しない油圧に設定するオーバーラップ制御手段を備え、かつ前記学習値が得られている状態における前記変速段から前記他の変速段への変速の際に、その学習値に基づいて前記摩擦係合装置と前記他の摩擦係合装置との少なくとも一方を制御して前記変速を実行するように構成されていることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
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